【文献】
MA, Z. et al.,"TEMPO-mediated glycoconjugation: a sheme for the controlled synthesis of polysaccharide conjugates",Carbohydrate Res.,2011年 2月 1日,Vol.346,No.2,P.343-347,ISSN 0008-6215
【文献】
EINHORN, J. et al.,"Efficient and Highly Selective Oxidation of Primary Alcohols to Aldehydes by N-Chlorosuccinimide Me,J. Org. Chem.,1996年10月18日,Vol.61,No.21,P.7452-7454
【文献】
BOBBITT, J.M. et al.,CHAPTER2 "OXOAMMONIUM- AND NITROXIDE-CATALYZED OXIDATIONS OF ALCOHOLS",Organic Reactions,2010年 2月15日,Vol.74,P.103-106,142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細菌莢膜多糖を含み、ここにおいて、細菌莢膜多糖の分子量が10kDa〜2,000kDaの間である、あるいは、50kDa〜1,000kDaの間である、請求項1−11のいずれか一項に記載の複合糖質。
追加抗原をさらに含む、ここにおいて、前記追加抗原が、Pn−血清型1、4、5、6A、6B、7F、8、9V、11A、14、15B、18C、19A、19F、22F、および23F莢膜多糖から選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、請求項15に記載の免疫原性組成物。
対象において、細菌性の感染、疾患、または状態を予防、治療、または改善する方法において使用するための、ここにおいて、前記感染、疾患、または状態が、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細菌と関連する、請求項15−19のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、本開示の種々の実施形態についての以下の詳細な説明、および本明細書に含まれる実施例を参照することで、より容易に理解することができる。別段定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様または同等のどんな方法および材料を使用してもよいが、ある特定の好ましい方法および材料を本明細書に記載する。実施形態について述べる際、また請求項において、ある特定の術語は、以下で述べる定義に従って使用する。
【0037】
本明細書で使用するとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別段指摘しない限り、複数の言及を包含する。したがって、たとえば、「方法」への言及は、本明細書に記載されている、かつ/または本開示を読めば当業者に明白となる種類の、1つまたは複数の方法および/またはステップを包含する。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「約」とは、記載された濃度範囲、時間枠、分子量、温度、pHなどの値の統計的に意味のある範囲内の意味である。このような範囲は、所与の値または範囲の、一桁分内、典型的には20%以内、より典型的には10%以内、さらに典型的には5%以内または1%以内でよい。時として、このような範囲は、所与の値または範囲の測定および/または定量に使用される標準の方法に特有である実験誤差内でよい。用語「約」によって包含される許容可能なばらつきは、研究中の特定の系次第となり、当業者なら容易に認識しうる。本出願内で範囲を列挙するときは常に、その範囲内の一つ残らずの整数を、本開示の実施形態であると考える。
【0039】
本開示において、「含む(comprises)」、「含まれた(comprised)」、「含む(comprising)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」などの用語は、米国特許法においてこれらにあるとされる意味を有してよく、たとえば、こうした用語は、「含む(includes)」、「含まれた(included)」、「含む(including)」などを意味しうることを、特に言及する。このような用語は、他の成分を除外することなく、特定の成分または成分一式を含むことを指す。「本質的に、〜からなる(consisting essentially of)」や「本質的に、〜からなる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてこれらにあるとされる意味を有し、たとえば、こうした用語は、本開示の新規または基本的な特徴から逸脱しない追加成分またはステップが含まれることを見込んでいる、すなわち、これらの用語によって、本開示の新規または基本的な特徴から逸脱する列挙されない追加成分またはステップは除外される。用語「〜からなる(consists of)」および「〜からなる(consisting of)」は、米国特許法においてこれらにあるとされる意味を有する、すなわち、こうした用語は、排他的(closed ended)である。したがって、こうした用語は、特定の一成分または成分一式を含み、他のすべての成分を除外することを指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「糖」は、多糖、オリゴ糖、または単糖を指すのに使用することがある。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「酸化度」は、糖に関して、アルデヒド1モルあたりの糖繰返し単位のモルの比を指す。糖の酸化度は、当業者に知られている型通りの方法を使用して求めることができる。
【0042】
本明細書で使用する用語「複合物」または「複合糖質」とは、担体タンパク質と共有結合を介して複合化された糖を指す。本開示の複合糖質およびそれを含む免疫原性組成物は、多少の量の遊離糖を含有してよい。
【0043】
本明細書で使用する用語「遊離糖」とは、担体タンパク質と共有結合を介して複合化されていないが、それにもかかわらず、複合糖質組成物中に存在する糖を意味する。遊離糖は、複合化された糖−担体タンパク質複合糖質と非共有結合を介して関連していてよい(すなわち、非共有結合を介して結合し、吸着され、またはそこに閉じ込められていてよい)。用語「遊離多糖」および「遊離莢膜多糖」は、本明細書では、糖がそれぞれ多糖または莢膜多糖である複合糖質に関して、同じ意味を伝えるのに使用することができる。
【0044】
本明細書で使用するとき、「複合化する(to conjugate)」、「複合化された(conjugated)」、および「複合化する(conjugating)」とは、糖、たとえば、細菌莢膜多糖を、担体分子または担体タンパク質に共有結合を介して付着させ取り付ける方法を指す。複合化は、以下で述べる方法に従って、または当技術分野で知られている他の方法によって実施することができる。複合化によって、細菌莢膜多糖の免疫原性は増強される。
【0045】
用語「対象」とは、ヒトを含めた哺乳動物、または鳥、魚、爬虫類、両生類、もしくは他のいずれかの動物を指す。用語「対象」は、家庭用愛玩動物または研究動物も包含する。家庭用愛玩動物および研究動物の非限定的な例としては、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス、アレチネズミ、ハムスター、モルモット、フェレット、サル、鳥、ヘビ、トカゲ、魚、カメ、およびカエルが挙げられる。用語「対象」は、家畜動物も包含する。家畜動物の非限定的な例としては、アルパカ、バイソン、ラクダ、ウシ、シカ、ブタ、ウマ、ラマ、ラバ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、トナカイ、ヤク、ニワトリ、ガチョウ、およびシチメンチョウが挙げられる。
【0046】
複合糖質
本開示は、特に、安定なニトロキシルまたはニトロキシド遊離基化合物を使用し、さらに酸化体を使用して、糖の第一級アルコールを選択的にアルデヒドに酸化することによる、担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の調製方法に関する。一態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、ピペリジン−N−オキシまたはピロリジン−N−オキシ化合物である。前記化合物は、酸化体の存在下で、カルボン酸へ過酸化することなく、また第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに、第一級アルコールを選択的にアルデヒドに酸化する能力を有することが好ましい。一態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOまたはPROXYL(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ)部分を有する分子である。前記分子は、酸化体の存在下で、第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することが好ましい。前記分子は、酸化体の存在下で、カルボキシル基へ過酸化することなく第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することがより好ましい。一態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPO、2,2,6,6−テトラメチル−4−(メチルスルホニルオキシ)−1−ピペリジノオキシ、4−ホスホノオキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO、4−イソチオシアナト−TEMPO、4−(2−ヨードアセトアミド)−TEMPOフリーラジカル、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−シアノ−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−(2−ブロモアセトアミド)−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルからなる群から選択される。前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOであることが好ましい。別の態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、3β−DOXYL−5α−コレスタン、5−DOXYL−ステアリン酸、16−DOXYL−ステアリン酸、5−DOXYL−ステアリン酸メチル、3−(アミノメチル)−PROXYL、3−カルバモイル−PROXYL、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリン−1−オキシル、3−カルボキシ−PROXYL、3−シアノ−PROXYLからなる群から選択される。一態様では、酸化体は、N−ハロ部分を有する分子である。前記分子は、ニトロキシルラジカル化合物の存在下で第一級アルコールを選択的に酸化する能力を有することが好ましい。一態様では、前記酸化体は、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、ジクロロイソシアヌル酸、1,3,5−トリクロロ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジブロモイソシアヌル酸、1,3,5−トリブロモ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジヨードイソシアヌル酸、および1,3,5−トリヨード−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオンからなる群から選択される。前記酸化体は、N−クロロスクシンイミドであることが好ましい。
【0047】
一態様では、本開示は、特に、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)を使用し、N−クロロスクシンイミド(NCS)を共酸化体として使用して、糖の第一級アルコールをアルデヒドに酸化することによる、担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の調製方法に関する。
【0048】
本開示の複合糖質において、糖は、多糖、オリゴ糖、および単糖からなる群から選択され、担体タンパク質は、本明細書でさらに説明するまたは当業者に知られているような適切ないずれかの担体から選択される。一部の実施形態では、糖は、多糖、特に、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型10A(Pn−血清型10A)、Pn−血清型12F、またはPn−血清型33Fなどの、細菌莢膜多糖である。一部のこのような実施形態において、担体タンパク質は、CRM
197である。
【0049】
莢膜多糖は、当業者に知られている標準技術によって調製することができる。たとえば、莢膜多糖は、様々な血清型、たとえば、1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、および33Fの肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)から調製することができる。こうした肺炎球菌複合物を、別の方法で調製し、単一投与製剤に製剤する。たとえば、一実施形態では、各肺炎球菌多糖血清型をダイズ系培地で成長させる。次いで、個々の多糖を、遠心分離、沈殿、限外濾過、およびカラムクロマトグラフィーによって精製する。精製された多糖を化学的に活性化させて、担体タンパク質と反応しうる糖(すなわち、活性化した糖)を作製する。活性化させたなら、各莢膜多糖を、別々に担体タンパク質と複合化して、複合糖質を生成する。一実施形態では、各莢膜多糖を、同じ担体タンパク質と複合化する。多糖の化学的活性化、および後続の担体タンパク質との複合化は、従来の手段によって実現することができる。たとえば、米国特許第4,673,574号、第4,902,506号、第7,709,001号、および第7,955,605号を参照されたい。
【0050】
一実施形態では、本開示の複合糖質は、分子量が約50kDa〜約20,000kDaの間である。別の実施形態では、複合糖質は、分子量が約200kDa〜約10,000kDaの間である。別の実施形態では、複合糖質は、分子量が約500kDa〜約5,000kDaの間である。一実施形態では、複合糖質は、分子量が約1,000kDa〜約3,000kDaの間である。他の実施形態では、複合糖質は、分子量が約600kDa〜約2800kDaの間、約700kDa〜約2700kDaの間、約1000kDa〜約2000kDaの間、約1800kDa〜約2500kDaの間、約1100kDa〜約2200kDaの間、約1900kDa〜約2700kDaの間、約1200kDa〜約2400kDaの間、約1700kDa〜約2600kDaの間、約1300kDa〜約2600kDaの間、約1600kDa〜約3000kDaの間である。上記範囲のいずれかの内にあるいかなる整数も、本開示の実施形態であると考える。
【0051】
本開示の複合糖質の新規な特色として、糖および得られる複合物の分子量プロファイル、担体タンパク質あたりの結合型リシンの比率および多糖に共有結合連結したリシンの数、糖の繰返し単位に応じた、担体タンパク質と糖の間の共有結合連結の数、ならびに遊離糖の全糖に対する相対量が挙げられる。
【0052】
別の実施形態では、多糖は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の莢膜多糖である。一部のこのような実施形態において、莢膜多糖は、髄膜炎菌(N.meningitidis)の血清型A、B、C、W135、X、およびY莢膜多糖からなる群から選択される。あるこのような実施形態において、莢膜多糖は、血清型C莢膜多糖である。別のこのような実施形態において、莢膜多糖は、血清型W135莢膜多糖である。別のこのような実施形態において、莢膜多糖は、血清型Y莢膜多糖である。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の複合糖質は、分子量が10kDa〜2,000kDaの間または50kDa〜1,000kDaの間である細菌莢膜多糖を含む。一部のこのような実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)由来である。一部のこのような実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)由来であり、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、および33F莢膜多糖からなる群から選択される。他のこのような実施形態において、莢膜多糖は、髄膜炎菌(N.meningitidis)由来であり、血清型A、B、C、W135、X、およびY莢膜多糖からなる群から選択される。
【0054】
一実施形態では、本開示は、担体タンパク質と共有結合を介して複合化された莢膜多糖を含み、次の特色、すなわち、多糖の分子量が50kDa〜1,000kDaの間である、複合糖質の分子量が1,000kDa〜3,000KDaの間である、および複合物が含む遊離多糖が全多糖の約45%未満である、のうちの1つまたは複数を有する複合糖質を提供する。一部の実施形態では、多糖は、分子量が10kDa〜2,000kDaの間である。一部の実施形態では、複合糖質は、分子量が50kDa〜20,000kDaの間である。他の実施形態では、複合糖質は、分子量が200kDa〜10,000kDaの間である。他の実施形態では、複合物は、全多糖の約30%、20%、15%、10%、または5%未満の遊離多糖を含む。遊離多糖の量は、時間に応じて、たとえば、複合物を調製してから10、20、30、40、50、60、70、80、90、もしくは120日後、または一層長時間後に測定することができる。
【0055】
糖と複合化された担体タンパク質中のリシン残基の数は、結合型リシンの範囲として特徴付けることができ、モル比として示すことができる。たとえば、CRM
197の4〜15個のリシン残基が糖に共有結合連結している免疫原性組成物では、複合糖質における結合型リシンのCRM
197に対するモル比は、約10:1〜約40:1の間である。CRM
197の2〜20個のリシン残基が糖に共有結合連結している免疫原性組成物では、複合糖質における結合型リシンのCRM
197に対するモル比は、約5:1〜約50:1の間である。
【0056】
一実施形態では、結合型リシンの担体タンパク質に対するモル比は、約10:1〜約25:1である。一部のこのような実施形態において、担体タンパク質は、CRM
197である。
【0057】
一実施形態では、糖:担体タンパク質比(w/w)は、0.2〜4の間である。別の実施形態では、糖:担体タンパク質比(w/w)は、1.1〜1.7の間である。一部の実施形態では、糖は、細菌莢膜多糖であり、糖:担体タンパク質比(w/w)は、0.2〜4の間である。他の実施形態では、糖は、細菌莢膜多糖であり、糖:担体タンパク質比(w/w)は、1.1〜1.7の間である。一部のこのような実施形態において、担体タンパク質は、CRM
197である。
【0058】
糖鎖が担体タンパク質上のリシンに付く頻度は、本開示の複合糖質を特徴付ける別のパラメーターである。たとえば、一実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結が、多糖の100個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ存在する。一実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結が、多糖の50個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ存在する。一実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結が、多糖の25個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ存在する。別の実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の4個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。別の実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の10個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。さらなる実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の15個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。
【0059】
高頻度の実施形態では、担体タンパク質は、CRM
197であり、CRM
197と多糖の間の共有結合連結は、多糖の4、10、15、または25個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。一部のこのような実施形態において、多糖は、細菌莢膜多糖、たとえば、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌由来の莢膜多糖である。
【0060】
他の実施形態では、複合物は、担体タンパク質と糖の間の共有結合連結を、5〜10個の糖繰返し単位毎、2〜7個の糖繰返し単位毎、3〜8個の糖繰返し単位毎、4〜9個の糖繰返し単位毎、6〜11個の糖繰返し単位毎、7〜12個の糖繰返し単位毎、8〜13個の糖繰返し単位毎、9〜14個の糖繰返し単位毎、10〜15個の糖繰返し単位毎、2〜6個の糖繰返し単位毎、3〜7個の糖繰返し単位毎、4〜8個の糖繰返し単位毎、6〜10個の糖繰返し単位毎、7〜11個の糖繰返し単位毎、8〜12個の糖繰返し単位毎、9〜13個の糖繰返し単位毎、10〜14個の糖繰返し単位毎、10〜20個の糖繰返し単位毎、または4〜25個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ含む。
【0061】
別の実施形態では、担体タンパク質と糖の連結は、多糖の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の糖繰返し単位毎に、少なくとも1回生じる。
【0062】
一実施形態では、本開示の複合糖質は、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結を、多糖の25個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ含む。別の実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の4個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。別の実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の10個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。別の実施形態では、担体タンパク質と多糖の間の共有結合連結は、多糖の15個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる。
【0063】
一実施形態では、複合糖質は、糖の総量に対して約45%未満の遊離糖を含む。別の実施形態では、複合糖質は、糖の総量に対して約30%未満の遊離糖を含む。別の実施形態では、複合糖質は、糖の総量に対して約20%未満の遊離糖を含む。さらなる実施形態では、複合糖質は、糖の総量に対して約10%未満の遊離糖を含む。別の実施形態では、複合糖質は、糖の総量に対して約5%未満の遊離糖を含む。
【0064】
別の実施形態では、複合糖質は、複合糖質の総量に対して約20モル%未満の担体タンパク質残基を含む。
【0065】
別の態様において、本開示は、本開示の複合糖質と、アジュバント、希釈剤、または担体の少なくとも1つとを含む免疫原性組成物を提供する。
【0066】
一実施形態では、本開示は、本開示の複合糖質と、アジュバント、希釈剤、または担体の少なくとも1つとを含む免疫原性組成物であって、複合糖質が、担体タンパク質と共有結合を介して複合化された細菌莢膜多糖を含む、免疫原性組成物を提供する。一部のこのような実施形態において、莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)由来である。
【0067】
一部の実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントを含む。一部のこのような実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウム系アジュバントである。一実施形態では、免疫原性組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントを含む。
【0068】
一部の実施形態では、本開示の複合糖質または免疫原性組成物は、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食作用死滅検定での細菌の死滅によって測定したときに機能しうる抗体の生成に使用することができる。
【0069】
一実施形態では、本開示は、対象において免疫応答を誘発する方法であって、本明細書に記載のとおりの本開示の免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。別の態様において、本開示は、対象において病原性細菌に対する免疫応答を誘発する方法であって、本明細書に記載のとおりの免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象において、病原性細菌が引き起こす疾患または状態を予防、または改善する方法であって、本明細書に記載のとおりの免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象において、病原性細菌による感染によって引き起こされた疾患または状態の少なくとも1つの症状の重症度を軽減する方法であって、本明細書に記載のとおりの免疫原性組成物の免疫学的有効量を対象に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、病原性細菌は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)である。
【0070】
加えて、本開示は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌に対する免疫応答を誘発する方法、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌が引き起こす疾患を予防する方法、および肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌による感染によって引き起こされた疾患の少なくとも1つの症状の重症度を軽減する方法を提供する。
【0071】
糖
糖には、多糖、オリゴ糖、および単糖が含まれる。一部の実施形態では、糖は、多糖、特に細菌莢膜多糖である。
【0072】
莢膜多糖の分子量は、免疫原性組成物中への使用に関して考慮すべき事項である。高分子量の莢膜多糖は、抗原表面に存在するエピトープの結合価がより高いために、ある特定の抗体免疫応答を誘発しうる。高分子量莢膜多糖の単離および精製は、本開示の複合物、組成物、および方法における使用のために考慮される。
【0073】
一実施形態では、莢膜多糖は、分子量が10kDa〜2,000kDaの間である。一実施形態では、莢膜多糖は、分子量が50kDa〜1,000kDaの間である。別の実施形態では、莢膜多糖は、分子量が50kDa〜300kDaの間である。別の実施形態では、莢膜多糖は、分子量が70kDa〜300kDaの間である。さらなる実施形態では、莢膜多糖は、分子量が、90kDa〜250kDa、90kDa〜150kDa、90kDa〜120kDa、80kDa〜120kDa、70kDa〜100kDa、70kDa〜110kDa、70kDa〜120kDa、70kDa〜130kDa、70kDa〜140kDa、70kDa〜150kDa、70kDa〜160kDa、80kDa〜110kDa、80kDa〜120kDa、80kDa〜130kDa、80kDa〜140kDa、80kDa〜150kDa、80kDa〜160kDa、90kDa〜110kDa、90kDa〜120kDa、90kDa〜130kDa、90kDa〜140kDa、90kDa〜150kDa、90kDa〜160kDa、100kDa〜120kDa、100kDa〜130kDa、100kDa〜140kDa、100kDa〜150kDa、100kDa〜160kDaの間、および同様の所望の分子量範囲である。上記範囲のいずれかの内にあるいかなる整数も、本開示の実施形態であると考える。
【0074】
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型12F(Pn−血清型12F)の莢膜多糖は、
図1に示す構造を有する。肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型10A(Pn−血清型10A)の莢膜多糖は、
図3に示す構造を有する。肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型33F(Pn−血清型33F)の莢膜多糖は、
図4に示す構造を有する。肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型3(Pn−血清型3)の莢膜多糖は、
図5に示す構造を有する。
【0075】
一部の実施形態では、抗体による細菌の死滅を実証する動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食作用死滅検定での細菌死滅によって測定したときに機能しうる抗体の生成に、本開示の莢膜多糖、複合糖質、または免疫原性組成物を使用する。莢膜多糖は、当業者に知られている単離手順を使用して、細菌から直接取得することができる。たとえば、それぞれ、その全体が明示されたかのごとく参照により本明細書に援用される、Fournierら(1984)、前掲;Fournierら(1987)、Ann.Inst.Pasteur/Microbiol.138:561〜567;米国特許出願公開第2007/0141077;および国際特許出願公開第WO00/56357号を参照されたい。加えて、莢膜多糖は、合成プロトコールを使用して製造することもできる。さらに、莢膜多糖は、これも当業者に知られている遺伝子工学手順を使用して、組換え産生することもできる(それぞれ、その全体が明示されたかのごとく参照により本明細書に援用される、Sauら(1997)、Microbiology 143:2395〜2405および米国特許第6,027,925号を参照されたい)。確立された培養物コレクションまたは臨床検査材料から取得した、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)または髄膜炎菌(N.menigitidis)株を、それぞれの多糖の作製に使用することができる。
【0076】
担体タンパク質
本開示の複合糖質の別の構成要素は、糖が複合化される担体タンパク質である。用語「タンパク質担体」、「担体タンパク質」、または「担体」とは、免疫応答が所望される(莢膜多糖などの)抗原と複合化することのできる、いずれかのタンパク質分子を指す。
【0077】
担体との複合化により、抗原の免疫原性を増強することができる。抗原用のタンパク質担体は、破傷風、ジフテリア、百日咳、シュードモナス属(Pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、および連鎖球菌属(Streptococcus)からの毒素、トキソイド、またはその毒素のいずれかの突然変異体交差反応性材料(CRM)でよい。一実施形態では、担体は、CRM
197タンパク質を産生するジフテリア菌(C.diphtheriae)株C7(β197)由来のジフテリアトキソイドCRM
197のものである。この菌株は、ATCC受入番号53281を有する。CRM
197の産生方法は、その全体が明示されたかのごとく参照により本明細書に援用される、米国特許第5,614,382号に記載されている。別法として、タンパク質担体または他の免疫原性タンパク質の断片またはエピトープを使用することができる。たとえば、ヘパテン抗原は、細菌毒素、トキソイド、またはCRMのT細胞エピトープに結合させることができる。適切な他の担体タンパク質として、不活化細菌毒素、たとえば、コレラトキソイド(たとえば、国際特許出願第WO2004/083251号に記載のとおり)、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素Aが挙げられる。細菌外膜タンパク質、たとえば、外膜複合体c(OMPC)、ポリン、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌接着タンパク質(PsaA)、またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)タンパク質Dを使用することもできる。卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはツベルクリン精製タンパク質誘導体(PPD)などの他のタンパク質も、担体タンパク質として使用できる。
【0078】
本明細書で予め論述したとおり、糖と複合化される担体タンパク質中のリシン残基の数は、結合型リシンの範囲として特徴付けることができる。たとえば、所与の免疫原性組成物において、CRM
197は、39個のうち、糖に共有結合連結した1〜15個のリシン残基を含むことがある。このパラメーターを示す別の手段は、約2.5%〜約40%のCRM
197リシンが、糖に共有結合連結しているということである。たとえば、所与の免疫原性組成物において、CRM
197は、39個のうち、糖に共有結合連結した1〜20個のリシン残基を含むことがある。このパラメーターを示す別の手段は、約2.5%〜約50%のCRM
197リシンが、糖に共有結合連結しているということである。
【0079】
複合糖質の作製方法
複合糖質を作製するために、多糖は、まず活性化(すなわち、化学修飾)しなければならず、その後、タンパク質などの担体に化学的に連結することができる。活性化ステップの前に、糖を、加水分解して、または加圧均質化によって機械的にサイズ調整して、活性化および後続の複合化に適正な分子量(たとえば、50kDa〜500kDa)にすることができる。多糖における炭水化物の部分的な酸化は、アルデヒド基の生成に有効に利用されてきており、アルデヒド基を、次いで、担体タンパク質のリシン残基などのアミン基に結合させて、免疫原性複合物が生成される。重要なのは、多糖を担体タンパク質と複合化するのに使用した方法の結果として、安定な共有結合連結が生じ、また反応条件が、個々の構成要素の構造上の完全性が保たれるほど十分に穏やかであることである。多糖を活性化させ、担体タンパク質に結合させるのに一般に使用される方法としては、還元的アミノ化化学(RAC)、シアニル化、およびカルボジイミドの使用が挙げられる。還元的アミノ化には、通常、ビシナルな−OH基を選択的に酸化して活性アルデヒド基にするために、過ヨウ素酸ナトリウムもしくはカリウムまたは過ヨウ素酸の使用が伴う。シアニル化は、−OH基を活性−CN基にランダムに変換するのに使用される。カルボジイミドは、−OH基をカルボジイミドで置き換えることによる、カルボキシル基の活性化に使用される。
【0080】
還元的アミノ化化学(RAC)は、結果として生じる多糖のカルボニル基と担体タンパク質のアミノ基の反応によって、対応するシッフ塩基を生成することができ、次いでこれが、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)の存在下で選択的に還元されて、非常に安定な飽和炭素−窒素結合となりうるので、多糖をタンパク質に結合させるのに使用される最も一般的な方法の1つである。さらに、還元的アミノ化は、糖およびタンパク質構成要素の構造上の完全性が保たれるほど十分に穏やかな条件下で、水溶液中で実施することができる。複合化の後、未反応のアルデヒドは、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)還元によって、次いでキャッピングすることができる。次いで、複合物を(たとえば、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって)精製して、コハク酸緩衝溶液中に最終バルク複合糖質を得ることができる。
【0081】
しかし、特定の多糖次第では、上記の一般的な方法を使用することで、必ずしも妥当な結果は得られない。たとえば、多糖を過ヨウ素酸ナトリウムで直接酸化すると、多糖主鎖が切断される場合がある。
【0082】
たとえば、標準の過ヨウ素酸塩酸化条件(に続く還元的アミノ化)を使用して調製された複合物について、25℃以上では、代表的なバッチで、遊離多糖の増加および分子量の低下が示されたことが観察された。本開示は、N−オキソアンモニウム塩を主体とした酸化方法の使用によって、いくつかの肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)多糖複合物、特に血清型12Fの安定性が向上したという知見を提供する。特に、実施例1〜7でさらに詳しく示すとおり、フリーラジカル2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)をN−クロロスクシンイミド(NCS)と組み合わせて使用すると、血清型12F、10A、3、および33Fの第1ヒドロキシル基が有効に酸化されて、得られる複合物の安定性が向上した。TEMPO/NCSを使用して第一級アルコールを選択的にアルデヒドに酸化することは、有機溶媒中で低分子を使用する有機化学反応に関連して示されてはいるが(たとえば、Einhornら、J.Org.Chem.
61、7452〜7454頁(1996)を参照されたい)、本開示は、安定な多糖タンパク質複合物を生成するために、TEMPO/NCSを酸化剤として使用して、複雑な多糖を水溶液中で選択的に酸化できるという新規な知見を提供する。
【0083】
したがって、一実施形態では、本開示は、担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の作製方法であって、a)糖を安定なニトロキシルラジカル化合物および酸化体と反応させて、活性化した糖を生成するステップと、b)活性化した糖を、1つまたは複数のアミン基を含む担体タンパク質と反応させるステップとを含む方法を提供する。
【0084】
一態様では、担体タンパク質との複合化後に、未反応のアルデヒド基が、キャッピングステップの際に、水素化ホウ素を使用して、第一級アルコールに元通り変換され、その結果、酸化に続く複合化を含む修飾ステップの間の糖エピトープ修飾が最小限に抑えられる。
【0085】
一態様では、ステップa)の反応は、水性溶媒中で実施する。別の態様では、ステップa)は、非プロトン性溶媒中で実施する。一態様では、ステップa)は、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ジメチルアセトアミド(DMA)、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、またはDMF(ジメチルホルムアミド)溶媒中で実施する。
【0086】
一態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、ピペリジン−N−オキシまたはピロリジン−N−オキシ化合物である。前記化合物は、酸化体の存在下で、第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することが好ましい。前記化合物は、酸化体の存在下で、カルボキシル基へ過酸化することなく第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することがより好ましい。一実施形態では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOまたはPROXYL(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ)部分を有する分子である。前記分子は、酸化体の存在下で、第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することが好ましい。前記分子は、酸化体の存在下で、カルボキシル基へ過酸化することなく第一級アルコールを選択的に酸化して、アルデヒド基を生じる能力を有することがより好ましい。一態様では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOまたはその誘導体である。一実施形態では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPO、2,2,6,6−テトラメチル−4−(メチルスルホニルオキシ)−1−ピペリジノオキシ、4−ホスホノオキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO、4−イソチオシアナト−TEMPO、4−(2−ヨードアセトアミド)−TEMPOフリーラジカル、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−シアノ−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−(2−ブロモアセトアミド)−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルからなる群から選択される。前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、TEMPOであることが好ましい。さらなる実施形態では、前記安定なニトロキシルラジカル化合物は、3β−DOXYL−5α−コレスタン、5−DOXYL−ステアリン酸、16−DOXYL−ステアリン酸、5−DOXYL−ステアリン酸メチル、3−(アミノメチル)−PROXYL、3−カルバモイル−PROXYL、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリン−1−オキシル、3−カルボキシ−PROXYL、3−シアノ−PROXYLからなる群から選択される。一実施形態では、前記酸化体は、N−ハロ部分を有する分子である。前記分子は、ニトロキシルラジカル化合物の存在下で第一級アルコールを選択的に酸化する能力を有することが好ましい。一実施形態では、前記酸化体は、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、ジクロロイソシアヌル酸、1,3,5−トリクロロ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジブロモイソシアヌル酸、1,3,5−トリブロモ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジヨードイソシアヌル酸、および1,3,5−トリヨード−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオンからなる群から選択される。前記酸化体は、N−クロロスクシンイミドであることが好ましい。
【0087】
一態様では、糖を0.1〜10モル当量の酸化体と反応させる。糖は、0.2〜5、0.5〜2.5、または0.5〜1.5モル当量の酸化体と反応させることが好ましい。一態様では、多糖を、約0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、1.4、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3、3.2、3.4、3.6、3.8、4、4.2、4.4、4.6、4.8、または5モル当量の酸化体と反応させる。
【0088】
一態様では、安定なニトロキシルラジカル化合物は、触媒量で存在する。一態様では、糖を、約0.3モル当量未満の安定なニトロキシルラジカル化合物と反応させる。一態様では、糖を、約0.005モル当量未満の安定なニトロキシルラジカル化合物と反応させる。一態様では、糖を、約0.005、0.01、0.05、または0.1モル当量の安定なニトロキシルラジカル化合物と反応させる。
【0089】
一実施形態では、本開示は、担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の作製方法であって、a)水性溶媒中で、糖を2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)およびN−クロロスクシンイミド(NCS)と反応させて、活性化した糖を生成するステップと、b)活性化した糖を、1つまたは複数のアミン基を含む担体タンパク質と反応させるステップとを含む方法を提供する。
【0090】
他の実施形態では、方法は、複合糖質を、たとえばダイアフィルトレーションによって精製するステップをさらに含む。
【0091】
各場合において、糖は、多糖、オリゴ糖、および単糖からなる群から選択される。
【0092】
各場合において、前記糖は、発酵培地から精製しても、または合成して得てもよい。
【0093】
高頻度の実施形態において、担体タンパク質は、CRM
197である。一実施形態では、細菌莢膜多糖は、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)由来の莢膜多糖である。別の好ましい実施形態では、細菌莢膜多糖は、髄膜炎菌(N.meningitides)由来の莢膜多糖である。
【0094】
一実施形態では、本開示の複合糖質の製造方法は、糖−担体タンパク質複合物を生成した後にそれを単離するステップを含む。高頻度の実施形態において、複合糖質は、限外濾過によって単離する。
【0095】
一実施形態では、単離された肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)莢膜多糖−担体タンパク質複合物の製造方法において使用される担体タンパク質は、CRM
197を含む。一実施形態では、単離された髄膜炎菌(N.meningitidis)莢膜多糖−担体タンパク質複合物の製造方法において使用される担体タンパク質は、CRM
197を含む。
【0096】
一実施形態では、約1:1の重量比で、CRM
197を、活性化した多糖と反応させる。
【0097】
一実施形態では、単離された肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)莢膜多糖:担体タンパク質複合物の製造方法は、多糖−担体タンパク質複合物反応混合物をキャッピングして、未反応の活性化基を除去するステップを含む。
【0098】
一実施形態では、莢膜多糖−CRM
197複合物の製造方法におけるCRM
197は、約0.4:1のCRM
197:莢膜多糖分子の重量比で加える。他の実施形態では、CRM
197:莢膜多糖の重量比は、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約1:1、約1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、または約1.5:1である。
【0099】
一実施形態では、本開示の複合糖質の製造方法において使用する糖は、分子量が約10kDa〜約2,000kDaの間である。他の実施形態では、分子量は、約50kDa〜約1,000kDaの間、約50kDa〜約20,000kDaの間、約200kDa〜約10,000kDaの間、約1,000kDa〜約3,000kDaの間である。
【0100】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかによって製造された複合糖質を含む免疫原性組成物を提供する。
【0101】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法のいずれかによって取得可能な複合糖質を含む免疫原性組成物を提供する。
【0102】
免疫原性組成物
用語「免疫原性組成物」は、抗原、たとえば、微生物またはその成分を含有し、対象において免疫応答を惹起するのに使用できる、いずれかの医薬組成物に関する。
【0103】
本明細書で使用するとき、「免疫原性」とは、細菌莢膜多糖などの抗原(もしくは抗原のエピトープ)または抗原を含む複合糖質もしくは免疫原性組成物が、哺乳動物などの宿主において、免疫応答を、体液性もしくは細胞媒介性のいずれかまたは両方で惹起する能力を意味する。
【0104】
したがって、本明細書で使用する「複合糖質」または「複合物」とは、免疫応答を惹起するのに使用できる、細菌莢膜多糖の抗原または抗原決定基(すなわち、エピトープ)が担体分子と複合化されたものを含有する、いずれかの複合糖質を意味する。
【0105】
複合糖質は、細胞表面でのMHC分子と共同した抗原の提示によって、宿主を感作するように働きうる。加えて、抗原に特異的なT細胞または抗体が生成されて、免疫化された宿主の以後の防御を可能にすることができる。したがって、複合糖質は、細菌による感染と関連する1つまたは複数の症状から宿主を防御することができ、または莢膜多糖と関連付けられる細菌の感染による死亡から宿主を防御する場合もある。複合糖質を使用して、対象への受動免疫の付与に使用することのできる、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成してもよい。複合糖質はまた、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食作用死滅検定での細菌の死滅によって測定したときに機能しうる抗体の生成に使用してもよい。
【0106】
「抗体」とは、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に、自身の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することのできる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用するとき、文脈によりそうでなく示唆されない限り、この用語は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、改変抗体(たとえば、エフェクター機能、安定性、および他の生物学的活性を変化させるためにキメラ化、ヒト化、および/または誘導体化されたもの)およびその断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(ScFv)および単ドメイン抗体(サメおよびラクダ科動物抗体を含める)、抗体部分を含む融合タンパク質、多価抗体、多特異性抗体(たとえば、所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)、本明細書に記載のとおりの抗体断片、ならびに、抗原認識部位を含む他のいずれかの変更された立体配置の免疫グロブリン分子も包含するものである。抗体には、IgG、IgA、IgMなどのいずれかのクラス(またはそのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り振ることができる。5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、たとえば、ヒトにおけるIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元配置は、よく知られている。
【0107】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部分だけを含み、その部分は、無傷の抗体中に存在するときその部分と通常関連付けられる機能の少なくとも1つ、好ましくは大部分またはすべてを保持することが好ましい。
【0108】
用語「抗原」とは、一般に、動物に注射または吸収される組成物を含めて、動物内で抗体産生もしくはT細胞応答または両方を刺激しうる、生物学的分子、通常は、免疫原性組成物中のタンパク質、ペプチド、多糖、もしくは複合物、または免疫原性物質を指す。免疫応答は、完全な分子に対して生じても、または分子の様々な部分(たとえば、エピトープまたはハプテン)に対して生じてもよい。この用語は、個々の分子、または抗原分子の均質もしくは不均質な集団を指すのに使用することができる。抗原は、抗体、T細胞受容体、または特異的な体液性および/もしくは細胞性免疫の他の要素によって認識される。「抗原」は、関係のあるすべての抗原エピトープも包含する。所与の抗原のエピトープは、当技術分野でよく知られている、いくつものエピトープマッピング技術を使用して特定することができる。たとえば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻(Glenn E.Morris編、1996)、Humana Press(ニュージャージー州トトワ)を参照されたい。たとえば、線状エピトープは、たとえば、固体支持体上に、タンパク質分子の諸部分に対応する多数のペプチドを同時に合成し、ペプチドがなお支持体に付着している間、ペプチドを抗体と反応させることにより、突き止めることができる。このような技術は、当技術分野で知られており、たとえば、それぞれその全体が明示されたかのごとく参照により本明細書に援用される、米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998〜4002;Geysenら(1986)、Molec.Immunol.23:709〜715に記載されている。同様に、立体構造的なエピトープは、たとえばx線結晶学や二次元核磁気共鳴によって、アミノ酸の空間的な立体配座を求めることにより特定することができる。たとえば、Epitope Mapping Protocols、前掲を参照されたい。
【0109】
さらに、本開示の目的では、「抗原」は、タンパク質が免疫応答を惹起する能力を維持する限り、自然配列に対する欠失、付加、置換などの修飾を含むタンパク質(一般に、保存的な性質ではあるが、保存的でないといえる)を指すのにも使用することがある。こうした修飾は、部位特異的突然変異誘発、特定の合成手順、または遺伝子工学手法を手段とするような、意図的なものでもよいし、または抗原を産生する宿主の突然変異によるなどの偶発的なものでもよい。さらに、抗原は、微生物、たとえば、細菌から引き出し、取得し、もしくは単離することもでき、または完全な生物とすることもできる。同様に、核酸免疫化適用分野におけるような、抗原を発現させるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、この定義に含まれる。合成抗原、たとえば、ポリエピトープ、フランキングエピトープ、および他の組換え抗原または合成によって得られた抗原も含まれる(Bergmannら(1993)、Eur.J.Immunol.23:2777 2781;Bergmannら(1996)、J.Immunol.157:3242〜3249;Suhrbier(1997)、Immunol.Cell Biol.75:402 408;Gardnerら(1998)、第12回世界エイズ会議、スイス国ジュネーブ、1998年6月28日〜7月3日)。
【0110】
「防御」免疫応答とは、免疫原性組成物が、対象を感染から防御する働きをする免疫応答を、体液性もしくは細胞媒介性のいずれかまたは両方で惹起する能力を指す。もたらされる防御は、絶対である必要はない、すなわち、対照対象集団、たとえば、ワクチンまたは免疫原性組成物を投与されない感染動物と比べて、統計的に有意な向上が存在するなら、感染は、完全に予防または根絶される必要はない。防御は、感染の症状の重症度または発症の速さを緩和することに限定されてもよい。一般に、「防御免疫応答」は、各抗原に対する、多少のレベルの測定可能な機能的抗体応答を含みながら、少なくとも50%の対象における、特定の抗原に特異的な抗体レベルの増大の誘発を包含することになる。特定の状況では、「防御免疫応答」は、各抗原に対する、多少のレベルの測定可能な機能的抗体応答を含みながら、少なくとも50%の対象における、特定の抗原に特異的な、抗体レベルの2倍の増大または抗体レベルの4倍の増大の誘発を包含しうることになる。ある特定の実施形態では、オプソニン化する抗体は、防御免疫応答と相互に関係がある。すなわち、防御免疫応答は、オプソニン化貪食作用検定、たとえば、以下で述べるものにおいて、細菌カウントの減少パーセントを測定して検定することができる。細菌カウントの減少が、少なくとも10%、25%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上あることが好ましい。組成物中の特定の複合物の「免疫原性量」は、一般に、その複合物について複合化されたおよび複合化されていない全多糖を基準にして投薬される。たとえば、20%の遊離多糖を伴う莢膜多糖複合物は、用量100mcg中に、複合化された多糖約80mcgと、複合化されていない多糖約20mcgを有する。タンパク質の複合物への寄与は、複合物の用量を算出するとき、普通は考慮に入れない。一般に、各用量は、0.1〜100mcg、特に0.1〜10mcg、より特段には1〜10mcgの多糖を含む。
【0111】
本開示の一実施形態は、上述の担体タンパク質と複合化された肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)莢膜多糖を含む複合糖質のいずれかを含む免疫原性組成物を提供する。
【0112】
本開示の免疫原性組成物は、免疫原性組成物を全身、経皮、もしくは粘膜経路で投与することによって、たとえば肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細菌または髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌による細菌感染に罹りやすいヒトの防御もしくは治療に使用することもでき、または別の対象への受動免疫の付与に使用できることになるポリクローナルもしくはモノクローナル抗体の調製に使用することもできる。こうした投与には、筋肉内、腹腔内、皮内、もしくは皮下経路による注射、または口腔/消化、呼吸、もしくは尿生殖器路への粘膜投与を含めることができる。免疫原性組成物は、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食作用死滅検定での細菌の死滅によって測定したときに機能しうる抗体の生成に使用してもよい。
【0113】
特定の免疫原性組成物についての成分の最適量は、対象における妥当な免疫応答の観察を含む標準の研究によって突き止めることができる。対象は、最初のワクチン接種に続いて、十分に間隔をおいた1回または数回の追加免疫を受けることができる。
【0114】
一実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、アジュバント、緩衝剤、凍結保護物質、塩、二価カチオン、非イオン性界面活性剤、フリーラジカル酸化防止剤、希釈剤、または担体の少なくとも1つをさらに含む。一実施形態では、本開示の免疫原性組成物内のアジュバントは、アルミニウム系アジュバントである。一実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウム系アジュバントである。一実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。
【0115】
アジュバントは、免疫原または抗原と一緒に投与されたとき免疫応答を増強する物質である。限定はしないが、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、12(たとえば、米国特許第5,723,127号を参照のこと)、13、14、15、16、17、および18(およびその突然変異体型);インターフェロン−α、β、およびγ;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(たとえば、米国特許第5,078,996号およびATCC受入番号39900を参照のこと);マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを含めて、いくつかのサイトカインまたはリンホカインは、免疫変調活性を有することが示されており、したがって、アジュバントと同じくまたは同様にして使用可能である。本明細書に記載の免疫原性組成物と共に有用である、さらに他のアジュバントとしては、限定はせず、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTES;セレクチン、たとえば、L−セレクチン、P−セレクチン、およびE−セレクチンなどの接着分子;ムチン様分子、たとえば、CD34、GlyCAM−1、およびMadCAM−1;LFA−1、VLA−1、Mac−1、p150.95などの、インテグリンファミリーの構成員;PECAM、ICAM、たとえばICAM−1、ICAM−2、およびICAM−3、CD2、LFA−3などの、免疫グロブリンスーパーファミリーの構成員;B7−1、B7−2、CD40、CD40Lなどの同時刺激分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を含む成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を含む受容体分子;ならびにICEを含むカスパーゼを含めたケモカインが挙げられる。
【0116】
免疫応答を増強するのに使用される適切なアジュバントとして、限定はせず、米国特許第4,912,094号に記載のMPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA、Corixa;モンタナ州Hamilton)をさらに挙げることができる。アジュバントとしての使用には、Corixaから入手可能である、合成リピドA類似体またはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)またはその誘導体もしくは類似体、および米国特許第6,113,918号に記載のものも適する。あるそのようなAGPは、529としても知られる(以前はRC529として知られていた)、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−b−D−グルコピラノシドである。この529アジュバントは、水性形態(AF)または安定なエマルション(SE)として製剤される。
【0117】
さらに他のアジュバントとして、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などのムラミルペプチド;水中油型エマルション、たとえば、MF59(米国特許第6,299,884号)(5%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.5%のSpan85を含有(種々の量のMTP−PEを場合により含有)し、マイクロフルイダイザー、たとえば、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics、マサチューセッツ州ニュートン)を使用してミクロン以下の粒子に製剤されたもの)、およびSAF(10%のスクアレン、0.4%のポリソルベート80、5%のプルロニックブロックポリマー(pluronic−blocked polymer)L121、およびthr−MDPを含有し、顕微溶液化されてミクロン以下のエマルションになっているか、またはボルテックスされてより大きい粒度のエマルションが生成されている);不完全フロイントアジュバント(IFA);水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);Amphigen;アブリジン;L121/スクアレン;D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド;プルロニックポリオール;死滅したボルデテラ(Bordetella);サポニン、たとえば、米国特許第5,057,540号に記載のSTIMULON(商標)QS−21(Antigenics、マサチューセッツ州フレーミングハム)、米国特許第5,254,339号に記載のISCOMATRIX(商標)(CSL Limited、オーストラリア国Parkville)、および免疫賦活複合体(ISCOMS);結核菌(Mycobacterium tuberculosis);細菌リポ多糖;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチド(たとえば、米国特許第6,207,646号)などの合成ポリヌクレオチド;欧州特許第1,296,713号および第1,326,634号に記載のIC−31(Intercell AG、オーストリア国ウィーン);百日咳毒素(PT)もしくはその突然変異体、コレラ毒素もしくはその突然変異体(たとえば、米国特許第7,285,281号、第7,332,174号、第7,361,355号、および第7,384,640号);または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)もしくはその突然変異体、特にLT−K63、LT−R72(たとえば、米国特許第6,149,919号、第7,115,730号、および第7,291,588号)が挙げられる。
【0118】
免疫原性組成物は、薬学的に許容できる担体を場合により含んでもよい。薬学的に許容できる担体には、ヒトに加えて非ヒト動物を含めた動物における使用について、連邦の規制機関、州政府、もしくは他の規制機関によって認可され、または米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に記載されている担体が含まれる。担体という用語は、医薬組成物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を指すのに使用することがある。水、食塩水、デキストロースおよびグリセロール水溶液を、特に注射溶液用の液体担体として用いることができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は、投与方式にかなっているべきである。
【0119】
本開示の免疫原性組成物は、1種または複数の追加の免疫調節薬をさらに含んでよく、その免疫調節薬とは、体液性および/または細胞媒介性免疫の上方調節または下方調節のいずれかが認められるように、免疫系を混乱または変化させる薬剤である。一実施形態では、免疫系の体液性および/または細胞媒介性の力の上方調節がなされる。
【0120】
ある特定の免疫調節薬の例として、たとえば、アジュバントもしくはサイトカイン、または特に、米国特許第5,254,339号に記載のISCOMATRIX(商標)(CSL Limited、オーストラリア国Parkville)が挙げられる。本開示の免疫原性組成物中に使用することのできるアジュバントの非限定的な例としては、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.、モンタナ州Hamilton)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲルなどのミネラルゲル、水中油型エマルション、油中水型エマルション、たとえば、フロイント完全および不完全アジュバント、ブロックコポリマー(CytRx、ジョージア州アトランタ)、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、SAF−M(Chiron、カリフォルニア州Emeryville)、AMPHIGEN(商標)アジュバント、サポニン、Quil Aまたは他のサポニン画分、モノホスホリルリピドA、およびアブリジン(N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン)脂質−アミンアジュバントが挙げられる。本開示の免疫原性組成物中に有用な水中油型エマルションの非限定的な例としては、改変SEAM62およびSEAM1/2製剤が挙げられる。改変SEAM62は、5%(v/v)のスクアレン(Sigma)、1%(v/v)のSPAN(商標)85界面活性剤(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)のポリソルベート80界面活性剤(ICI Surfactants)、2.5%(v/v)のエタノール、200mcg/mLのQuil A、100mcg/mlのコレステロール、および0.5%(v/v)のレシチンを含有する水中油型エマルションである。改変SEAM1/2は、5%(v/v)のスクアレン、1%(v/v)のSPAN(商標)85界面活性剤、0.7%(v/v)のポリソルベート80界面活性剤、2.5%(v/v)のエタノール、100mcg/mlのQuil A、および50mcg/mlのコレステロールを含む水中油型エマルションである。免疫原性組成物中に含めることのできる他の免疫調節薬としては、たとえば、1種または複数のインターロイキン、インターフェロン、または他の既知のサイトカインもしくはケモカインが挙げられる。一実施形態では、アジュバントは、それぞれ、米国特許第6,165,995号および第6,610,310号に記載のものなどの、シクロデキストリン誘導体またはポリアニオンポリマーでよい。使用する免疫調節薬および/またはアジュバントは、免疫原性組成物が投与される対象、注射の経路、およびなされる注射の回数に応じて決まることを理解されたい。
【0121】
本開示の免疫原性組成物は、複数の莢膜多糖−タンパク質複合物に加えて、1種または複数の保存剤をさらに含んでよい。FDAは、複数回用量(多用量)バイアル中の生物学的製剤は、少数だけを例外として、保存剤を含有することを義務付けている。保存剤を含有するワクチン製品としては、塩化ベンゼトニウム(炭疽)、2−フェノキシエタノール(DTaP、HepA、ライム、ポリオ(非経口))、フェノール(肺炎、腸チフス(非経口)、ワクシニア)、およびチメロサール(DTaP、DT、Td、HepB、Hib、インフルエンザ、JE、髄膜炎、肺炎、狂犬病)を含有するワクチンが挙げられる。注射用薬物における使用が認可されている保存剤としては、たとえば、クロロブタノール、m−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、2−フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、フェノール、チメロサール、および硝酸フェニル水銀が挙げられる。
【0122】
包装および投薬形態
本開示の製剤は、緩衝剤、塩、二価カチオン、非イオン性界面活性剤、糖などの凍結保護物質、およびフリーラジカル捕捉剤やキレート剤などの酸化防止剤の1つまたは複数、またはその多様ないずれかの組合せをさらに含んでよい。いずれか1つの成分、たとえば、キレート剤の選択によって、別の成分(たとえば、捕捉剤)が望ましいかどうかが決まる場合もある。投与に向けて製剤された最終組成物は、無菌および/または発熱性物質不使用にすべきである。当業者なら、要求された特定の貯蔵および投与条件などの様々な要素に応じて、これらおよび他の成分のどの組合せが、本開示の保存剤含有免疫原性組成物中に含めるのに最適となるか、経験的に判断することができる。
【0123】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、限定はしないが、トリス(トリメタミン)、リン酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グリシン、ヒスチジン、およびコハク酸から選択される、生理学的に許容できる1種または複数の緩衝剤を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.4〜約7.4のpH範囲内に緩衝剤処理される。
【0124】
ある特定の実施形態では、本開示の免疫原性組成物または製剤のpHを調整することが望ましい場合がある。本開示の製剤のpHは、当技術分野の標準技術を使用して調整することができる。製剤のpHは、3.0〜8.0の間に調整することができる。ある特定の実施形態では、製剤のpHは、3.0〜6.0、4.0〜6.0、もしくは5.0〜8.0の間でよい、またはこの数値の間に調整することができる。他の実施形態では、製剤のpHは、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約5.8、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0でよい、またはこの数値に調整することができる。ある特定の実施形態では、pHは、4.5〜7.5、4.5〜6.5、5.0〜5.4、5.4〜5.5、5.5〜5.6、5.6〜5.7、5.7〜5.8、5.8〜5.9、5.9〜6.0、6.0〜6.1、6.1〜6.2、6.2〜6.3、6.3〜6.5、6.5〜7.0、7.0〜7.5、または7.5〜8.0の範囲にあってよい、またはこの範囲に調整することができる。特定の実施形態では、製剤のpHは、約5.8である。
【0125】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、限定はしないが、MgCl
2、CaCl
2、およびMnCl
2を含む1種または複数の二価カチオンを、約5mMまでが好ましい、約0.1mM〜約10mMの範囲の濃度で含む。
【0126】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、非経口投与後に対象に生理学的に許容されるイオン強度で存在し、選択されたイオン強度または容量オスモル濃度を生じる最終濃度で最終製剤中に含まれる、限定はしないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カリウムを含む、1種または複数の塩を含む。製剤の最終イオン強度または重量オスモル濃度は、いくつもの成分(たとえば、緩衝化合物および他の非緩衝塩からのイオン)によって決まる。好ましい塩であるNaClは、約250mMまでの範囲から存在し、塩濃度は、他の成分(たとえば、糖)を補完するように選択され、その結果、製剤の最終総容量オスモル濃度は、非経口投与(たとえば、筋肉内または皮下注射)と適合し、免疫原性組成物製剤の免疫原性成分の長期安定性を様々な温度範囲において促進する。無塩製剤では、所望の最終容量オスモル濃度レベルを維持するのに、1種または複数の選択された凍結保護物質の範囲の増大が許容される。
【0127】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、限定はしないが、二糖(たとえば、ラクトース、マルトース、スクロース、またはトレハロース)およびポリヒドロキシ炭化水素(たとえば、ズルシトール、グリセロール、マンニトール、およびソルビトール)から選択される1種または複数の凍結保護物質を含む。
【0128】
ある特定の実施形態では、製剤の容量オスモル濃度は、約200mOs/L〜約800mOs/Lの範囲であり、約250mOs/L〜約500mOs/L、または約300mOs/L〜約400mOs/Lが好ましい範囲である。無塩製剤は、たとえば、約5%〜約25%のスクロース、好ましくは約7%〜約15%、または約10%〜約12%のスクロースを含有してよい。別法として、無塩製剤は、たとえば、約3%〜約12%のソルビトール、好ましくは約4%〜7%、または約5%〜約6%のソルビトールを含有してもよい。塩化ナトリウムなどの塩を加える場合、スクロースまたはソルビトールの有効範囲は、相対的に低減する。これらおよび他のこのような重量オスモル濃度および容量オスモル濃度検討事項は、申し分なく当技術分野の技量の範囲内である。
【0129】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、1種または複数のフリーラジカル酸化防止剤および/またはキレート剤を含む。様々なフリーラジカル捕捉剤およびキレート剤が当技術分野で知られており、本明細書に記載の製剤および使用方法に適用される。例としては、限定はしないが、エタノール、EDTA、EDTA/エタノールの組合せ、トリエタノールアミン、マンニトール、ヒスチジン、グリセロール、クエン酸ナトリウム、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸、アスコルビン酸/アスコルベート、コハク酸/スクシネート、リンゴ酸/マレエート、desferal、EDDHA、およびDTPA、ならびに上記の2種以上の種々の組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、少なくとも1種の非還元性フリーラジカル捕捉剤を、製剤の長期安定性を有効に強化する濃度で加えてよい。1種または複数のフリーラジカル酸化防止剤/キレート剤は、捕捉剤と二価カチオンなどの様々な組合せにして加えてもよい。キレート剤の選択により、捕捉剤を加える必要があるかどうかが決まる。
【0130】
ある特定の実施形態では、非経口投与と適合する本開示の製剤は、限定はしないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート80(TWEEN(商標)80)、ポリソルベート60(TWEEN(商標)60)、ポリソルベート40(TWEEN(商標)40)、およびポリソルベート20(TWEEN(商標)20)、限定はしないがBrij58、Brij35を含めたポリオキシエチレンアルキルエーテル、ならびに他のもの、たとえば、TRITON(商標)X−100、TRITON(商標)X−114、NP40(ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール)、SPAN(商標)85、およびPLURONIC(商標)シリーズの非イオン性界面活性剤(たとえば、PLURONIC(商標)121)を始めとして、1種または複数の非イオン性界面活性剤を含み、好ましい成分は、約0.001%〜約2%の濃度(約0.25%までが好ましい)のポリソルベート80、または約0.001%〜1%の濃度(約0.5%までが好ましい)のポリソルベート40である。
【0131】
ある特定の実施形態では、本開示の製剤は、非経口投与用に適切な1種または複数の追加安定剤、たとえば、少なくとも1つのチオール(−SH)基を含む還元剤(たとえば、システイン、N−アセチルシステイン、還元型グルタチオン、チオグリコール酸ナトリウム、チオスルフェート、モノチオグリセロール、またはこれらの混合物)を含む。別法としてまたは場合により、本開示の保存剤含有免疫原性組成物製剤は、貯蔵容器から酸素を除去し、(たとえば、琥珀色のガラス容器を使用することにより)製剤を光から保護することによってさらに安定化することができる。
【0132】
本開示の保存剤含有免疫原性組成物製剤は、それ自体で免疫応答を誘発しない、いかなる賦形剤も包含する、薬学的に許容できる1種または複数の担体または賦形剤を含んでよい。適切な賦形剤としては、限定はしないが、タンパク質、糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース(Paolettiら、2001、Vaccine、19:2118)、トレハロース、ラクトース、脂質凝集体(油滴やリポソームなど)などの巨大分子が挙げられる。このような担体は、当業者によく知られている。薬学的に許容できる賦形剤については、たとえば、Gennaro、2000、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472において論述されている。
【0133】
本開示の組成物は、凍結乾燥されていても、または水性形態、すなわち、溶液もしくは懸濁液でもよい。液体製剤は、有利なことに、その包装された形態から直接投与することができ、したがって、さもなければ本開示の凍結乾燥組成物に必要となるような、水性媒質中での復元の必要がなく、注射に理想的である。
【0134】
本開示の免疫原性組成物の対象への直接の送達は、(筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、もしくは組織の間質腔への)非経口投与によって、または直腸、経口、膣内、局所、経皮、鼻腔内、眼内、耳内、肺内、または他の粘膜投与によって実現することができる。好ましい実施形態では、非経口投与は、たとえば、対象の大腿または上腕への筋肉内注射によるものである。注射は、針(たとえば、皮下注射針)を介してもよいが、別法として、無針注射を使用してもよい。典型的な筋肉内用量は、0.5mLである。本開示の組成物は、様々な形態で、たとえば、注射用には、液体の液剤または懸濁剤として調製することができる。ある特定の実施形態では、組成物は、肺内投与用の散剤またはスプレー剤として、たとえば、吸入器中に調製することができる。他の実施形態では、組成物は、坐剤もしくは膣坐剤として、または鼻内、耳内、もしくは眼内投与用に、たとえば、スプレー剤、滴剤、ゲル剤、もしくは散剤として調製することができる。特定の免疫原性組成物についての成分の最適量は、対象における妥当な免疫応答の観察を含む標準の研究によって突き止めることができる。対象は、最初のワクチン接種に続いて、十分に間隔をおいた1回または数回の追加免疫を受けることができる。
【0135】
本開示の免疫原性組成物は、単位用量または多用量形態(たとえば、2用量、4用量、またはそれ以上)で包装することができる。多用量形態については、充填済み注射器よりバイアルが通常は好まれるが、必ずしもそうでない。適切な多用量フォーマットとして、限定はしないが、1用量あたり0.1〜2mLで、1容器あたり2〜10用量が挙げられる。ある特定の実施形態では、用量は、0.5mL用量である。たとえば、参照により本明細書に援用される国際特許出願WO2007/127668を参照されたい。
【0136】
組成物は、バイアルもしくは適切な他の貯蔵容器の体裁にしてもよいし、または充填済みの送達デバイス、たとえば、有針もしくは無針で供給してよい単成分もしくは多成分注射器の体裁にしてもよい。注射器は、必ずしもそうである必要はないが、通常、単一用量の本開示の保存剤含有免疫原性組成物を収容し、とはいえ、多用量充填済み注射器も構想される。同様に、バイアルも、単一用量を含むこともあるが、別法として、複数の用量を含むこともある。
【0137】
有効投与体積は、型通りに定めることができるが、注射用の組成物の典型的な用量は、0.5mLの体積を有する。ある特定の実施形態では、用量は、ヒト対象への投与用に処方される。ある特定の実施形態では、用量は、成人、13〜19才、青年、幼児、または乳児(すなわち、1才以下)のヒト対象への投与用に処方され、好ましい実施形態では、注射によって投与してよい。
【0138】
本開示の液体免疫原性組成物は、凍結乾燥形態の体裁である他の免疫原性組成物を復元するのにも適する。免疫原性組成物をそのような即座の復元に使用する場合では、本開示は、2本以上のバイアル、2本以上の充填準備済み注射器、またはそれぞれの1つまたは複数を備え、注射器の中身は、注射前にバイアルの中身を復元するのに使用され、または逆も同様である、キットを提供する。
【0139】
別法として、本開示の免疫原性組成物は、たとえば、平均直径サイズなどの粒子特性が、その調製に使用される正確な方法を多様にすることで選択および制御できる、マイクロペレットやマイクロスフェアなどの、規則的形状(たとえば、球形)の乾燥粒子の生成に、当技術分野でよく知られている多数の凍結乾燥方法の1つを使用して、凍結乾燥し、復元してもよい。免疫原性組成物は、マイクロペレットやマイクロスフェアなどの、別個の規則的形状(たとえば、球形)の乾燥粒子と場合により一緒に調製され、またはその中に含まれていてもよい、アジュバントをさらに含んでよい。このような実施形態において、本開示はさらに、安定化された乾燥免疫原性組成物を含み、本開示の1種または複数の保存剤を場合によりさらに含む、第1の構成要素と、第1の構成要素を復元するための滅菌水溶液を含む第2の構成要素とを含む免疫原性組成物キットを提供する。ある特定の実施形態では、水溶液は、1種または複数の保存剤を含み、少なくとも1種のアジュバントを場合により含んでもよい(たとえば、WO2009/109550(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0140】
さらに別の実施形態では、多用量フォーマットの容器は、限定はしないが、一般実験用ガラス器具、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、管材料、パイプ、袋、広口瓶、バイアル、バイアルクロージャー(たとえば、ゴム栓、ねじ式キャップ)、アンプル、注射器、二重または多重チャンバー注射器、注射器ストッパー、注射器プランジャー、ゴムクロージャー、プラスチッククロージャー、ガラスクロージャー、カートリッジ、および使い捨てペンなどからなる群の1つまたは複数から選択される。本開示の容器には、製造の材料による制限はなく、ガラス、金属(たとえば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、ポリマー(たとえば、熱可塑性樹脂、エラストマー、熱可塑性エラストマー)などの材料が含まれる。特定の実施形態では、フォーマットの容器は、ブチル栓付きの5mLのSchott 1型ガラスバイアルである。当業者なら、上述のフォーマットは、決して網羅的なリストでなく、本開示に利用可能なフォーマットの多様性について、当業者への手引きとして役立つものに過ぎないことは理解される。本開示における使用が企図される追加のフォーマットは、United States Plastic Corp.(オハイオ州ライマ)、VWRなどの、実験器具の供給業者および製造業者の公開カタログにおいて見ることができる。
【0141】
免疫応答を誘発し、感染を防御する方法
本開示は、本明細書に記載の免疫原性組成物の使用方法も包含する。たとえば、本開示の一実施形態は、病原性細菌、たとえば、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)に対する免疫応答を誘発する方法であって、病原性細菌由来の細菌莢膜多糖などの細菌抗原を含む本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかの免疫原性量を対象に投与することを含む方法を提供する。本開示の一実施形態は、対象の肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)による感染を防御する方法、または肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)による感染を予防する方法、または肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)が引き起こす感染と関連する少なくとも1つの症状の重症度を軽減もしくは発症を遅らせる方法であって、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)由来の細菌莢膜多糖などの細菌抗原を含む本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかの免疫原性量を対象に投与することを含む方法を提供する。本開示の一実施形態は、対象において、連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.)と関連する連鎖球菌感染、疾患、または状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載の免疫原性組成物の治療または予防有効量を対象に投与するステップを含む用法を提供する。一部の実施形態では、連鎖球菌感染、疾患、または状態の治療または予防方法は、ヒト、獣医学、動物、または農学の処置を含む。別の実施形態は、対象において、連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.)と関連する連鎖球菌感染、疾患、または状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載の免疫原性組成物からポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を生成するステップと、前記抗体調製物を使用して、対象に受動免疫を付与するステップとを含む方法を提供する。本開示の一実施形態は、外科的手順を受けている対象において連鎖球菌感染を予防する方法であって、外科的手順の前に、本明細書に記載の免疫原性組成物の予防有効量を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0142】
抗原または免疫原性組成物に対する「免疫応答」は、問題の抗原またはワクチン組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞媒介性免疫応答の、対象における展開である。本開示の目的では、「体液性免疫応答」とは、抗体を媒介とする免疫応答であり、本開示の免疫原性組成物中の抗原を認識し、それにいくらかの親和性で結合する抗体の誘導および生成が伴うのに対し、「細胞性免疫応答」とは、T細胞および/または他の白血球を媒介とするものである。「細胞媒介性免疫応答」は、主要組織適合複合体(MHC)のクラスIもしくはクラスII分子、CD1、または他の非古典的MHC様分子と共同しての抗原エピトープの提示によって惹起される。これによって、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球(「CTL」)が活性化される。CTLは、古典的または非古典的MHCによってコードされ、細胞の表面に発現されたタンパク質と共同して提示されているペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内での破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解の誘導および促進を助ける。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による、抗原特異的な応答を伴う。ヘルパーT細胞は、古典的または非古典的MHC分子と共同してその表面にペプチドまたは他の抗原を提示している細胞に対して、非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのを助ける働きをする。「細胞媒介性免疫応答」は、サイトカイン、ケモカイン、ならびに、CD4+およびCD8+T細胞から派生するものを含めて、活性化型T細胞および/または他の白血球によって産生される他のそうした分子の産生にも関連している。特定の抗原または組成物が細胞媒介性免疫応答を刺激する能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)検定やCTL細胞傷害性細胞検定などによるいくつかの検定によって、感作された対象において抗原に特異的なTリンパ球について検定することによって、または抗原による再刺激に応じたT細胞によるサイトカイン産生の測定によって求めることができる。このような検定は、当技術分野でよく知られている。たとえば、Ericksonら(1993)、J.Immunol.151:4189〜4199;およびDoeら(1994)、Eur.J.Immunol.24:2369〜2376を参照されたい。
【0143】
本明細書で使用するとき、「治療」(その変形語、たとえば、「治療する」または「治療される」を含める)とは、次のいずれか1つまたは複数を意味する。(i)伝統的なワクチンでのような、感染または再感染の予防、(ii)症状の重症度の軽減または除去、および(iii)問題の病原体または障害の実質的または完全な除去。したがって、治療は、(感染前に)予防的に行ってもよいし、または(感染後に)治療的に行ってもよい。本開示において、予防的治療は、好ましい方式である。本開示の特定の実施形態によれば、宿主動物を微生物感染(たとえば、連鎖球菌(Streptococcus)などの細菌)に対して予防的および/または治療的に免疫化することを含めて治療する組成物および方法が提供される。本開示の方法は、対象に予防的および/または治療的な免疫を付与するのに有用である。本開示の方法は、生物医学的研究用途のための対象において実施することもできる。
【0144】
本明細書で使用するとき、「哺乳動物」とは、ヒトまたは非ヒト動物を意味する。より詳細には、哺乳動物は、ヒト、家畜、ならびに研究、動物園、競技、および愛玩用の伴侶動物、たとえば、限定はしないが、ウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコなどを含む、家庭用愛玩動物および他の家畜化された動物を含めて、哺乳動物として分類されるいかなる動物も指す。好ましい伴侶動物は、イヌおよびネコである。哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。
【0145】
本明細書ではどちらも区別なく使用される「免疫原性量」および「免疫学的有効量」は、当業者に知られている標準の検定によって測定したとき、細胞性(T細胞)もしくは体液性(B細胞もしくは抗体)応答のいずれかまたは両方の免疫応答を惹起するのに十分な、抗原または免疫原性組成物の量を指す。
【0146】
組成物中の特定の複合物の量は、一般に、その複合物について複合化されたおよび複合化されていない全多糖を基準にして算出される。たとえば、20%の遊離多糖を伴う複合物は、多糖用量100mcg中に、複合化された多糖約80mcgと、複合化されていない多糖約20mcgを有する。タンパク質の複合物への寄与は、複合物の用量を算出するとき、普通は考慮に入れない。複合物の量は、連鎖球菌の血清型に応じて様々となりうる。一般に、各用量は、0.1〜100mcg、特に0.1〜10mcg、より特段には1〜10mcgの多糖を含む。免疫原性組成物中の種々の多糖成分の「免疫原性量」は、相違することもあり、それぞれが、特定のいずれかの多糖抗原1mcg、2mcg、3mcg、4mcg、5mcg、6mcg、7mcg、8mcg、9mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcg、90mcg、または約100mcgを含んでよい。
【0147】
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)「侵襲性疾患」は、疾患の関連する臨床徴候/症状が存在する場合において、通常は無菌の部位から細菌が分離されることである。通常は無菌の身体部位には、血液、CSF、胸水、心膜液、腹水、関節/滑液、骨、内部身体部位(リンパ節、脳、心臓、肝臓、脾臓、硝子体液、腎臓、膵臓、卵巣)、または通常は無菌の他の部位が含まれる。侵襲性疾患を特徴付ける臨床状態には、菌血症、肺炎、蜂巣炎、骨髄炎、心内膜炎、敗血症性ショックなどが含まれる。
【0148】
免疫原としての抗原の有効性は、増殖検定、またはT細胞がその特異的な標的細胞を溶解する能力を測定する、クロム放出検定などの細胞溶解性検定、または血清中の抗原に特異的な循環抗体のレベルを測定することによる、B細胞活性のレベルの測定のいずれかによって測定することができる。免疫応答は、抗原が投与された後に誘導された、抗原に特異的な抗体の血清レベルの測定によって、より詳細には、そのように誘導された抗体が本明細書に記載のとおりの特定の白血球のオプソニン化貪食作用能を増強する能力を測定することによって検出してもよい。免疫応答の防御のレベルは、免疫化された宿主に、投与したことのある抗原を負荷することによって測定することができる。たとえば、免疫応答が所望される抗原が細菌である場合、免疫原性量の抗原によって誘発された防御のレベルは、動物に細菌細胞を負荷した後の生存パーセントまたは死亡パーセントを検出することによって測定される。一実施形態では、防御の量は、細菌感染と関連する少なくとも1つの症状、たとえば、感染と関連する発熱の計測によって測定することができる。多抗原または多成分ワクチンまたは免疫原性組成物中の抗原それぞれの量は、他の成分それぞれに対して様々となり、当業者に知られている方法によって決定することができる。そのような方法には、免疫原性および/またはin vivo効力を測定する手順が含まれるであろう。ある特定の実施形態では、用語「約」とは、示した値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0149】
本開示はさらに、本開示の莢膜多糖または複合糖質に特異的かつ選択的に結合する抗体および抗体組成物を提供する。一部の実施形態では、抗体は、本開示の莢膜多糖または複合糖質が対象に投与されると生成される。一部の実施形態では、本開示は、本開示の莢膜多糖または複合糖質の1つまたは複数に向けられた、精製または単離された抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示の抗体は、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食作用死滅検定での細菌の死滅によって測定したときに機能しうる。一部の実施形態では、本開示の抗体によって、対象に受動免疫が付与される。本開示はさらに、当業者によく知られている技術を使用して、本開示の抗体もしくは抗体断片をコードするポリヌクレオチド分子、細胞、細胞系(ハイブリドーマ細胞または抗体を組換え産生するための他の操作された細胞系など)、または本開示の抗体または抗体組成物を産生するトランスジェニック動物を提供する。
【0150】
本開示の抗体または抗体組成物は、対象において、連鎖球菌感染、連鎖球菌属の種(Streptococcus sp.)と関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を生成するステップと、前記抗体または抗体組成物を使用して、対象に受動免疫を付与するステップとを含む方法において使用することができる。本開示の抗体は、たとえば、莢膜多糖もしくはその複合糖質の存在を検出し、またはそのレベルを定量化する、診断方法にも有用となりうる。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の作製方法であって、
a)糖を安定なニトロキシルラジカル化合物および酸化体と反応させて、活性化した糖を生成するステップと、
b)前記活性化した糖を、1つまたは複数のアミン基を含む担体タンパク質と反応させるステップと
を含む方法。
[態様2]
前記安定なニトロキシルラジカル化合物が、酸化体の存在下で、第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに第一級アルコールを選択的に酸化してアルデヒド基を生じる能力を有するピペリジン−N−オキシまたはピロリジン−N−オキシ化合物である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記安定なニトロキシルラジカル化合物が、酸化体の存在下で、カルボキシル基へ過酸化することなく第一級アルコールを選択的に酸化してアルデヒド基を生じる能力を有するピペリジン−N−オキシまたはピロリジン−N−オキシ化合物である、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記安定なニトロキシルラジカル化合物が、酸化体の存在下で、第二級ヒドロキシル基に影響を及ぼさずに第一級アルコールを選択的に酸化してアルデヒド基を生じる能力を有する、TEMPOまたはPROXYL(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ)部分を有する分子である、態様1に記載の方法。
[態様5]
前記安定なニトロキシルラジカル化合物が、酸化体の存在下で、カルボキシル基へ過酸化することなく第一級アルコールを選択的に酸化してアルデヒド基を生じる能力を有する、TEMPOまたはPROXYL(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシ)部分を有する分子である、態様1または4に記載の方法。
[態様6]
前記ニトロキシルラジカル化合物が、TEMPO、2,2,6,6−テトラメチル−4−(メチルスルホニルオキシ)−1−ピペリジノオキシ、4−ホスホノオキシ−TEMPO、4−オキソ−TEMPO、4−メトキシ−TEMPO、4−イソチオシアナト−TEMPO、4−(2−ヨードアセトアミド)−TEMPOフリーラジカル、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−シアノ−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−(2−ブロモアセトアミド)−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルからなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様7]
前記ニトロキシルラジカル化合物が、3β−DOXYL−5α−コレスタン、5−DOXYL−ステアリン酸、16−DOXYL−ステアリン酸、5−DOXYL−ステアリン酸メチル、3−(アミノメチル)−PROXYL、3−カルバモイル−PROXYL、3−カルバモイル−2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリン−1−オキシル、3−カルボキシ−PROXYL、3−シアノ−PROXYLからなる群から選択される、態様1に記載の方法。
[態様8]
前記ニトロキシルラジカル化合物が、TEMPOまたはその誘導体である、態様1に記載の方法。
[態様9]
前記酸化体が、ニトロキシルラジカル化合物の存在下で第一級アルコールを選択的に酸化してアルデヒド基を生じる能力を有する、N−ハロ部分を有する分子である、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
前記酸化体が、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、ジクロロイソシアヌル酸、1,3,5−トリクロロ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジブロモイソシアヌル酸、1,3,5−トリブロモ−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、ジヨードイソシアヌル酸、および1,3,5−トリヨード−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオンからなる群から選択される、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]
前記酸化体がN−クロロスクシンイミドである、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
前記反応ステップa)を水性溶媒中で実施する、態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[態様13]
前記反応ステップa)を非プロトン性溶媒中で実施する、態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[態様14]
前記反応ステップa)を、DMSO(ジメチルスルホキシド)溶媒中で実施する、態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[態様15]
前記糖を0.1〜10モル当量の酸化体と反応させる、態様1から14のいずれか一項に記載の方法。
[態様16]
前記糖を0.5〜1.5モル当量の酸化体と反応させる、態様15に記載の方法。
[態様17]
前記安定なニトロキシルラジカル化合物が、触媒量で存在する、態様1から16のいずれか一項に記載の方法。
[態様18]
前記糖を、約0.3モル当量未満の安定なニトロキシルラジカル化合物と反応させる、態様1から16のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
担体タンパク質と複合化された糖を含む複合糖質の作製方法であって、
a)水性溶媒中で、糖を2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)およびN−クロロスクシンイミド(NCS)と反応させて、活性化した糖を生成するステップと、
b)前記活性化した糖を、1つまたは複数のアミン基を含む担体タンパク質と反応させるステップと
を含む方法。
[態様20]
前記活性化した糖の酸化度が3〜40の範囲である、態様1から19のいずれか一項に記載の方法。
[態様21]
前記活性化した糖の酸化度が6〜14の範囲である、態様20に記載の方法。
[態様22]
前記糖が細菌莢膜多糖である、態様1から21のいずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記莢膜多糖が肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)由来である、態様22に記載の方法。
[態様24]
前記莢膜多糖が、Pn−血清型3、Pn−血清型10A、Pn−血清型12F、およびPn−血清型33F莢膜多糖から選択される、態様23に記載の方法。
[態様25]
前記莢膜多糖がPn−血清型12F莢膜多糖である、態様24に記載の方法。
[態様26]
前記莢膜多糖が髄膜炎菌(N.meningitidis)由来である、態様22に記載の方法。
[態様27]
前記莢膜多糖が、髄膜炎菌(Mn)−血清型A、C、W135、およびY莢膜多糖から選択される、態様26に記載の方法。
[態様28]
前記莢膜多糖が髄膜炎菌(Mn)−血清型X莢膜多糖である、態様26に記載の方法。
[態様29]
前記莢膜多糖がB群連鎖球菌(Group B Streptococcus)(GBS)由来である、態様22に記載の方法。
[態様30]
前記莢膜多糖が、GBS血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIIIから選択される、態様29に記載の方法。
[態様31]
前記担体タンパク質が、破傷風、ジフテリア、百日咳、シュードモナス属(Pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、または連鎖球菌属(Streptococcus)の毒素である、態様1から30のいずれか一項に記載の方法。
[態様32]
前記担体タンパク質がCRM
197である、態様1から30のいずれか一項に記載の方法。
[態様33]
前記糖が、合成によって得られたものである、態様1から32のいずれか一項に記載の方法。
[態様34]
ステップa)の前に、前記糖をサイズ調整する、態様1から33のいずれか一項に記載の方法。
[態様35]
前記糖を加水分解または機械的にサイズ調整する、態様34に記載の方法。
[態様36]
前記糖を、加水分解し、または加圧均質化によって機械的にサイズ調整して、50kDa〜500kDaの分子量を実現する、態様34に記載の方法。
[態様37]
ステップa)の前に、前記糖を、100〜400kDaの範囲の分子量に加水分解する、態様1から33のいずれか一項に記載の方法。
[態様38]
前記糖を、150〜350kDaの範囲の分子量に加水分解する、態様37に記載の方法。
[態様39]
ステップb)の前に、前記活性化した多糖を精製するステップをさらに含む、態様1から38のいずれかに記載の方法。
[態様40]
ステップb)の後に、還元剤を加えるステップをさらに含む、態様1から39のいずれかに記載の方法。
[態様41]
前記還元剤がNaCNBH
3である、態様40に記載の方法。
[態様42]
NaCNBH
3を加えた後にNaBH
4を加えるステップをさらに含む、態様41に記載の方法。
[態様43]
NaBH
4を加えた後に、精製ステップをさらに含む、態様42に記載の方法。
[態様44]
態様1から43のいずれか一項に記載の方法によって製造された複合糖質。
[態様45]
態様1から43のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な複合糖質。
[態様46]
分子量が約50kDa〜約20,000kDaの間である、態様44または45に記載の複合糖質。
[態様47]
分子量が約500kDa〜約5,000kDaの間である、態様44または45に記載の複合糖質。
[態様48]
分子量が約1,000kDa〜約3,000kDaの間である、態様44または45に記載の複合糖質。
[態様49]
分子量が、約600kDa〜約2800kDaの間、約700kDa〜約2700kDaの間、約1000kDa〜約2000kDaの間、約1800kDa〜約2500kDaの間、約1100kDa〜約2200kDaの間、約1900kDa〜約2700kDaの間、約1200kDa〜約2400kDaの間、約1700kDa〜約2600kDaの間、約1300kDa〜約2600kDaの間、または約1600kDa〜約3000kDaの間である、態様44または45に記載の複合糖質
[態様50]
分子量が10kDa〜2,000kDaの間である細菌莢膜多糖を含む、態様44から49のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様51]
分子量が50kDa〜1,000kDaの間である細菌莢膜多糖を含む、態様44から49のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様52]
全多糖に対して約30%未満の遊離糖を含む、態様44から51のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様53]
全多糖に対して約20%、15%、10%、または5%未満の遊離多糖を含む、態様44から51のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様54]
前記担体タンパク質がCRM197である、態様44から53のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様55]
糖:担体タンパク質比(w/w)が、0.2〜4の間である、態様44から54のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様56]
糖:担体タンパク質比(w/w)が1.1〜1.7の間である、態様44から54のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様57]
前記担体タンパク質と前記多糖の間の共有結合連結が、前記多糖の100個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ存在する、態様44から56のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様58]
前記担体タンパク質と前記多糖の間の共有結合連結が、前記多糖の4個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる、態様57に記載の複合糖質。
[態様59]
前記担体タンパク質と前記多糖の間の共有結合連結が、前記多糖の10個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる、態様57に記載の複合糖質。
[態様60]
前記担体タンパク質と前記多糖の間の共有結合連結が、前記多糖の15個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる、態様57に記載の複合糖質。
[態様61]
前記担体タンパク質と前記多糖の間の共有結合連結が、前記多糖の20個の糖繰返し単位毎に少なくとも1回生じる、態様57に記載の複合糖質。
[態様62]
前記担体タンパク質と糖の間の共有結合連結を、5〜10個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ含む、態様57に記載の複合糖質。
[態様63]
前記担体タンパク質と糖の間の共有結合連結を、2〜7個の糖繰返し単位毎、3〜8個の糖繰返し単位毎、4〜9個の糖繰返し単位毎、6〜11個の糖繰返し単位毎、7〜12個の糖繰返し単位毎、8〜13個の糖繰返し単位毎、9〜14個の糖繰返し単位毎、10〜15個の糖繰返し単位毎、2〜6個の糖繰返し単位毎、3〜7個の糖繰返し単位毎、4〜8個の糖繰返し単位毎、6〜10個の糖繰返し単位毎、7〜11個の糖繰返し単位毎、8〜12個の糖繰返し単位毎、9〜13個の糖繰返し単位毎、10〜14個の糖繰返し単位毎、10〜20個の糖繰返し単位毎、または4〜25個の糖繰返し単位毎に少なくとも1つ含む、態様57に記載の複合糖質。
[態様64]
態様44から63のいずれか一項に記載の複合糖質と、薬学的に許容できる賦形剤、担体、または希釈剤とを含む免疫原性組成物。
[態様65]
追加抗原をさらに含む、態様64に記載の免疫原性組成物。
[態様66]
前記追加抗原が、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)由来の、タンパク質抗原または莢膜多糖の複合糖質を含む、態様65に記載の免疫原性組成物。
[態様67]
前記追加抗原が、Pn−血清型1、4、5、6A、6B、7F、8、9V、11A、14、15B、18C、19A、19F、22F、および23F莢膜多糖から選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様66に記載の免疫原性組成物。
[態様68]
前記追加抗原が、髄膜炎菌(N.meningitidis)由来の、タンパク質抗原または莢膜多糖の複合糖質を含む、態様65に記載の免疫原性組成物。
[態様69]
前記追加抗原が、血清型A、C、W135、およびY莢膜多糖から選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様68に記載の免疫原性組成物。
[態様70]
前記追加抗原が、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)(GBS)由来の莢膜多糖の複合糖質を含む、態様65に記載の免疫原性組成物。
[態様71]
前記追加抗原が、GBS血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIIIから選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様70に記載の免疫原性組成物。
[態様72]
アジュバントをさらに含む、態様64から71のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様73]
前記アジュバントがアルミニウム系アジュバントである、態様72に記載の免疫原性組成物。
[態様74]
前記アルミニウム系アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムからなる群から選択される、態様73に記載の免疫原性組成物。
[態様75]
担体タンパク質と複合化されたPn−血清型12Fを含む免疫原性組成物であって、前記組成物中の遊離Pn−血清型12F多糖の量が、調製されてから120日後に35%未満である、免疫原性組成物。
[態様76]
遊離Pn−血清型12F多糖の量が、調製されてから120日後に30%未満である、態様75に記載の免疫原性組成物。
[態様77]
前記担体タンパク質が、破傷風、ジフテリア、百日咳、シュードモナス属(Pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、または連鎖球菌属(Streptococcus)の毒素である、態様75または76に記載の免疫原性組成物。
[態様78]
前記担体タンパク質がCRM
197である、態様75または76に記載の免疫原性組成物。
[態様79]
薬学的に許容できる賦形剤、担体、または希釈剤をさらに含む、態様75から78のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様80]
追加抗原をさらに含む、態様75から79のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様81]
前記追加抗原が、肺炎連鎖球菌(S.pneumonia)由来の、タンパク質抗原または莢膜多糖の複合糖質を含む、態様80に記載の免疫原性組成物。
[態様82]
前記追加抗原が、Pn−血清型1、4、5、6A、6B、7F、8、9V、11A、14、15B、18C、19A、19F、22F、および23F莢膜多糖から選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様81に記載の免疫原性組成物。
[態様83]
前記追加抗原が、髄膜炎菌(N.meningitidis)由来の、タンパク質抗原または莢膜多糖の複合糖質を含む、態様82に記載の免疫原性組成物。
[態様84]
前記追加抗原が、血清型A、C、W135、およびY莢膜多糖から選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様83に記載の免疫原性組成物。
[態様85]
前記追加抗原が、血清型X莢膜多糖の複合糖質を含む、態様83に記載の免疫原性組成物。
[態様86]
前記追加抗原が、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)(GBS)由来の莢膜多糖の複合糖質を含む、態様80に記載の免疫原性組成物。
[態様87]
前記追加抗原が、GBS血清型Ia、Ib、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIIIから選択される莢膜多糖の複合糖質を含む、態様86に記載の免疫原性組成物。
[態様88]
アジュバントをさらに含む、態様75から87のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様89]
前記アジュバントがアルミニウム系アジュバントである、態様88に記載の免疫原性組成物。
[態様90]
前記アルミニウム系アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムからなる群から選択される、態様89に記載の免疫原性組成物。
[態様91]
対象において、細菌性の感染、疾患、または状態を予防、治療、または改善する方法であって、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物の免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む方法。
[態様92]
前記感染、疾患、または状態が、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)細菌と関連する、態様91に記載の方法。
[態様93]
前記感染、疾患、または状態が、髄膜炎菌(N.meningitidis)細菌と関連する、態様91に記載の方法。
[態様94]
前記感染、疾患、または状態が、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus)細菌と関連する、態様91に記載の方法。
[態様95]
対象において防御免疫応答を誘発する方法であって、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物の免疫学的有効量を前記対象に投与することを含む方法。
[態様96]
医薬として使用するための、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様97]
医薬として使用するための、態様44から63のいずれか一項に記載の複合糖質。
[態様98]
ワクチンとして使用するための、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様99]
対象において、細菌性の感染、疾患、または状態を予防、治療、または改善する方法において使用するための、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
[態様100]
対象において防御免疫応答を誘発する方法において使用するための、態様64から90のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【0151】
以下の実施例は、実例として、限定する目的でなく提供する。略語:MW=分子量、WFI=注射用水、TEMPO=2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル、NCS=N−クロロスクシンイミド。
【実施例】
【0152】
(実施例1)
TEMPO/NCSを使用してのPn血清型−12Fの複合化
血清型12F−CRM
197複合糖質の安定性を向上させるために、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル(TEMPO)および共酸化体としてのN−クロロスクシンイミド(NCS)を使用して第一級アルコールをアルデヒド基に酸化する、代替化学事象を探索した。GC/MS分析では、酸化の部位が、過ヨウ素酸塩を媒介とする酸化の部位と異なっていたことが示された。TEMPO−NCS酸化の場合では、α−D−Glcpおよび2−Glcpが酸化されたが、過ヨウ素酸塩を使用したとき、α−D−Galpが酸化の主要部位であった(
図1を参照のこと)。本明細書でさらに詳述するとおり、TEMPOを触媒量(≦0.1モル当量)で使用し、NCSの使用量を様々にすることにより、所望の酸化度(DO)が実現された。引き続いて、いくつかの複合物を合成し、特徴付けた。一般に、血清型12F複合糖質の製造は、次のとおりのいくつかの段階で実施した。
1)血清型12多糖を分子量50〜500kDaにする加水分解
2)TEMPO/NCSによる血清型12F多糖の活性化
3)活性化した多糖の精製
4)活性化した血清型12FのCRM
197タンパク質との複合化
5)血清型12F−CRM複合物の精製
【0153】
(実施例2)
血清型12Fの加水分解および酸化
多糖の加水分解は、通常、酸性条件下で加熱しながら行って、100〜350kDaの所望の範囲の平均分子量を実現した。典型的な実験を以下に記載する。
【0154】
加水分解
血清型12F多糖溶液をジャケット付き反応容器に加えた。これに、必要な体積の0.30M酢酸および注射用水(WFI)を加えて、約0.1Mの酢酸濃度を維持した。1N NaOHまたは氷酢酸を使用して、溶液のpHを3.2±0.3に調整した。反応混合物の温度を70±5℃に上昇させた。反応混合物を70±5℃で90〜120分間撹拌した。反応混合物を23±2℃に冷却し、1M NaOH溶液を加えて中和した(pH7.0)。加水分解された多糖は、30K MWCO膜を使用する、WFIに対する限外濾過/ダイアフィルトレーションによって精製した。溶液を0.22μmフィルターで濾過し、酸化まで2〜8℃で貯蔵した。加水分解多糖の分子量をSEC−MALLSによって分析して、分子量が100〜350kDaの目標範囲に確実に適合するようにした。
【0155】
部分的酸化
ある実験では、マイクロフルイダイザーを使用する加圧均質化を使用して、血清型12F多糖を機械的にサイズ調整して、分子量をおよそ100〜500kDaに低下させた。サイズ調整された多糖を4.0mg/mLの濃度で反応容器に加え、炭酸水素塩/炭酸塩緩衝液(0.5M NaHCO
3/0.05M Na
2CO
3緩衝液、pH8.6)と1:1v/vの比で混合した。撹拌した混合物に、0.1mol当量以下のTEMPOを加えた。0.6〜1.0mol当量のNCSを加えて、反応を開始した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、その後、活性化した多糖を、30K限外濾過膜を使用するWFIでのダイアフィルトレーションによって精製した。精製された多糖を集め、アルデヒド(3−メチル−2−ベノチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)検定を使用する)および多糖(アントロン検定を使用する)の定量的測定によって、酸化度(DO)を求めた。
【0156】
別の実験では、血清型12F多糖を加水分解して、分子量をおよそ100〜500kDaの分子量に低下させた。血清型12F多糖を反応容器に加え、0.5M NaHCO
3/0.05M Na
2CO
3緩衝液(pH8.6)と1:1v/vの比で混合した。撹拌した混合物に、WFIに溶解した0.6〜1.0モル当量のNCSを加えた。WFIに溶解したおよそ0.1モル当量のTEMPOを加えて、活性化を開始した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、その後、活性化した多糖を、30K限外濾過膜を使用するWFIでのダイアフィルトレーションによって精製した。精製した活性化多糖を0.2μmフィルターで濾過し、使用前に4℃で貯蔵した。
【0157】
TEMPO/NCSを媒介とする酸化は、pH6.5、7.0、7.5、および8.0のリン酸ナトリウム緩衝液中でも好結果に行われた。一部の活性化実験では、糖の過酸化を回避するために、n−プロパノールなどの第一級アルコールを使用して、試薬を失活させた。別の組の実験では、化学的に加水分解した多糖をそのまま酸化にかけ、限外濾過/ダイアフィルトレーション精製ステップを無しとした。
【0158】
(実施例3)
酸化した血清型12F多糖の複合化
ある実験では、精製された酸化した血清型12F多糖を反応容器に加えた後、0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を加えて、最終緩衝液濃度を0.1Mとした。この溶液に、予め凍結乾燥したCRM
197を加え、十分に混合して、均質な溶液を得た。希HClまたは1N NaOH溶液を使用して、pHを6.8に調整した。これに続いて、1.5モル当量のNaCNBH
3を加えた。反応混合物を室温(23℃)で24時間、37℃で2.5日間撹拌した。次いで、反応混合物を1×0.9%食塩水で希釈し、未反応のアルデヒド基を、2モル当量の水素化ホウ素ナトリウムで「キャッピング」した。キャッピング反応時間は、3時間とした。
【0159】
別の実験では、精製された活性化血清型12Fを反応容器に加えた後、0.5Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を加えて、最終緩衝液濃度を0.1Mとした。この溶液に、予め凍結乾燥したCRM
197を加え、十分に混合して、均質な溶液を得た。希HClまたは1N NaOH溶液を使用して、pHを6.8に調整した。これに続いて、3モル当量のNaCNBH
3を加えた。反応混合物を23℃で24時間、37℃で48時間撹拌した。次いで、反応混合物を、撹拌しながら1×0.9%食塩水で希釈し、未反応のアルデヒド基を、1モル当量の水素化ホウ素ナトリウムNaBH
4で「キャッピング」した。キャッピング反応時間は、3時間とした。
【0160】
別の実験では、精製された活性化血清型12Fを反応容器に加え、CRM
197溶液と混合した。混合物を凍結乾燥し、粉末を0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に溶解させて、最終糖濃度を5mg/mLとした。必要なら、希HClまたは1N NaOH溶液を使用してpHを6.8に調整した。これに続いて、3モル当量のNaCNBH
3を加えた。反応混合物を23℃で24時間、37℃で48時間撹拌した。次いで、反応混合物を1×0.9%食塩水で希釈し、未反応のアルデヒド基を、1モル当量の水素化ホウ素ナトリウムNaBH
4で「キャッピング」した。キャッピング反応時間は、3時間とした。
【0161】
(実施例4)
複合物の精製
キャッピングされた反応混合物は、5μmフィルターを使用して濾過し、次いで、100K MWCO限外濾過膜を使用して精製した。複合物は、最初に、10mMコハク酸塩/0.9%食塩水(pH6.0)緩衝液を使用してダイアフィルトレーションにかけた。次いで、精製された複合物を0.45/0.22μmフィルターで濾過して、バルク複合物を得た。
【0162】
(実施例5)
酸化度
血清型12F多糖における第一級アルコールの好結果の酸化を、TEMPO/NCS系を使用して実現した。NCS共酸化体の量を調整することにより、加水分解された血清型12F多糖を、様々な酸化度(DO)レベルに酸化した。異なる多糖バッチおよび分子量を使用しての、様々な量のNCSによるDOへの影響を
図2に示す。通常、0.5〜2.5モル当量のNCSを使用して、目標酸化度を実現した。通常、2時間後にDOの有意な変化が認められなかったとき、酸化反応を2時間で終えた。
【0163】
TEMPO/NCSで酸化した多糖を使用して、いくつかの血清型12F複合物を作製し、特徴付けた。結果を表1に要約する。TEMPO/NCS系で活性化させた他の肺炎球菌血清型を使用しても、いくつかの代表的な複合物が好結果に作製された。他の肺炎球菌血清型についての複合物の作製手順は、血清型12Fに使用した方法と同じであった。結果を表2〜4に記載する。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
(実施例6)
TEMPO/NCS酸化方法を使用してのPn−血清型12F−CRM197複合物の免疫原性
血清型12F−CRM
197複合物についてのマウスにおけるオプソニン化貪食作用活性(OPA)力価を、標準条件下のマウスにおいて求めた。4週間および7週間の時点のOPA力価(信頼区間(CI)95%の幾何平均力価(GMT))を表5に示しており、血清型12F−CRM
197複合物(バッチ12F−97B、この複合物の特徴付けデータについては表1も参照のこと)が、ネズミ免疫原性モデルにおいてOPA力価を引き出したことが実証されている。TEMPO−NCSによって生成した複合物は、過ヨウ素酸塩酸化から生成された対照複合物(171B)よりも免疫原性を有していた。
【0169】
【表5】
【0170】
(実施例7)
Pn−血清型12F複合物について、TEMPO/NCSなどの酸化体の存在下でニトロキシルラジカルを使用する推定上の機序
Pn−血清型12Fの酸化/複合化の推定上の機序を
図6に示す。多糖の第1ヒドロキシル基は、化学量論的酸化体としてのNCSなどの酸化体を伴う、触媒量のTEMPOなどのニトロキシルラジカルによって酸化される。触媒回路において、実際の酸化体は、N−オキソアンモニウム塩である。C−6第1ヒドロキシル基の酸化によってアルデヒド基が生じ、これが、担体タンパク質(CRM
197)のリシンの第一級アミノ基と引き続いて反応して、複合糖質が生成する。
【0171】
(実施例8)
安定性比較
過ヨウ素酸塩酸化とTEMPO/NCS酸化によって生成した複合物の(25℃での)安定性の比較(
図7を参照のこと)によって、Pn−12F多糖の酸化によって生成した複合物が相対的により安定であることが実証された。
図7に示されるとおり、Pn−12F多糖の過ヨウ素酸塩酸化によって生成した複合糖質では、25℃で、遊離糖の経時的な増加が認められた。対照的に、Pn−12F多糖のTEMPO/NCS酸化を使用して調製した複合糖質では、同様の条件下で、有意な遊離糖傾向は示されなかった。