特許第6686070号(P6686070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6686070持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの液状製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686070
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの液状製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20200413BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20200413BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200413BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20200413BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200413BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20200413BHJP
   C07K 14/46 20060101ALN20200413BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   A61K38/28ZNA
   A61K38/17
   A61P3/10
   A61P5/50
   A61K9/08
   A61K47/68
   A61K47/56
   A61K47/12
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61K47/02
   A61K47/60
   A61K47/58
   A61K47/61
   A61K47/59
   A61K47/20
   A61K47/18
   !C07K14/62
   !C07K14/46
   !C07K19/00
【請求項の数】25
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-104433(P2018-104433)
(22)【出願日】2018年5月31日
(62)【分割の表示】特願2015-524185(P2015-524185)の分割
【原出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-138615(P2018-138615A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0081478
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】リム ヒュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒュン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リー ミ キョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】ペ スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】クォン セ チャン
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510675(JP,A)
【文献】 特表2008−519807(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/090305(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/090306(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/008779(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/057525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 39/00−39/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体、並びにアルブミン-非含有安定化剤を含み、前記安定化剤は、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含有し、
前記持続型インスリン結合体は、インスリンが免疫グロブリンFc領域に非ペプチド性重合体を介して連結された形態であり、
前記持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、インスリン分泌性ペプチドが免疫グロブリンFc領域に非ペプチド性重合体を介して連結された形態であり、
前記インスリン分泌性ペプチドが、エキセンジン-3、エキセンジン-4、又はその誘導体であり、
前記緩衝溶液が、5.6〜6.5であるpHを有する酢酸緩衝溶液であり、
前記糖アルコールが、マンニトール又はソルビトールであり、
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマーであり、
前記等張化剤が塩化ナトリウムである、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の液状製剤。
【請求項2】
前記インスリンは、天然型インスリンと同様のアミノ酸配列を持つ請求項1に記載の液状製剤。
【請求項3】
前記インスリンは、天然型インスリンのアミノ酸の置換、挿入 又は欠失によって生産されたインスリン誘導体ある請求項1に記載の液状製剤。
【請求項4】
前記インスリン分泌性ペプチドは、N-末端のアミン基が欠失された、N-末端のアミン基がヒドロキシ基に置換された、N-末端のアミン基が2つのメチル基に修飾された、N-末端のアミン基がカルボキシ基に置換された、若しくはN-末端ヒスチジン残基のα炭素が欠失されたエキセンジン-3又はエキセンジン-4である請求項1に記載の液状製剤。
【請求項5】
前記インスリン分泌性ペプチドは、イミダゾアセチル-エキセンジン-4である請求項4に記載の液状製剤。
【請求項6】
前記免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgMから由来するFc領域である請求項1に記載の液状製剤。
【請求項7】
前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMからなる群より選択される免疫グロブリンから由来する異なる起源を持つドメインのハイブリットである請求項6に記載の液状製剤。
【請求項8】
前記免疫グロブリンFc領域が、同様の起源を持つドメインからなる単鎖免疫グロブリンからなる2量体又は多量体である請求項6に記載の液状製剤。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc領域が、IgG4Fc領域である請求項6に記載の液状製剤。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc領域が、ヒト非糖鎖化IgG4Fc領域である請求項9に記載の液状製剤。
【請求項11】
前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコールである請求項1に記載の液状製剤。
【請求項12】
前記非ペプチド性重合体が、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)などの生分解性高分子;脂質重合体;キチン類;ヒアルロン酸;及びそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の液状製剤。
【請求項13】
前記薬理学的有効量の持続型インスリン結合体の濃度が、10mg/ml〜200mg/mlであり、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の濃度が、0.5mg/ml〜150mg/mlである請求項1に記載の液状製剤。
【請求項14】
前記糖アルコールの濃度が、全体溶液に対して1%(w/v)〜15%(w/v)である請求項1に記載の液状製剤。
【請求項15】
前記緩衝溶液の濃度が、全体溶液に対して5〜50mMである請求項1に記載の液状製剤。
【請求項16】
前記等張化剤の濃度が、0.5mg/ml〜30mg/mlである請求項1に記載の液状製剤。
【請求項17】
前記非イオン性界面活性剤の濃度が、0.001%(w/v)〜0.05%(w/v)である請求項1に記載の液状製剤。
【請求項18】
前記安定化剤は、メチオニンをさらに含む請求項1に記載の液状製剤。
【請求項19】
前記メチオニンの濃度が、全体溶液に対して0.005%(w/v)〜0.1%(w/v)である請求項18に記載の液状製剤。
【請求項20】
前記安定化剤が、糖類、多価アルコール及びアミノ酸からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む請求項1に記載の液状製剤。
【請求項21】
前記インスリンとインスリン分泌性ペプチドが、それぞれポリエチレングリコールを通じて免疫グロブリンFc領域に連結された持続型インスリン結合体と持続型インスリン分泌性ペプチド結合体及びアルブミン-非含有安定化剤を含み、前記安定化剤が酢酸緩衝溶液、マンニトール、ポリソルベート20及び塩化ナトリウムを含む請求項1に記載の液状製剤。
【請求項22】
さらにメチオニンを含む請求項21に記載の液状製剤。
【請求項23】
さらに保存剤を含む請求項1に記載の液状製剤。
【請求項24】
前記保存剤が、ベンジルアルコール、フェノール又はm−クレゾールである請求項23に記載の液状製剤。
【請求項25】
持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含む安定化剤と混合することを含む請求項1〜24のいずれかに記載の液状製剤の製造方法であって、
前記持続型インスリン結合体は、インスリンが免疫グロブリンFc領域に連結された形態であり、
前記持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、インスリン分泌性ペプチドが免疫グロブリンFc領域に連結された形態であり、
前記緩衝溶液のpH範囲が、5.6〜6.5である製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性ペプチドであるインスリン及びインスリン分泌性ペプチド並びにアルブミン-非含有の安定化剤を含み、前記安定化剤は、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含有する持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの組み合わせの液状製剤;及び前記液状製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌され、体内の血糖を調節する重要な役割を担う。もし、インスリンの分泌量が不足したり、分泌されたインスリンが体内で正常に機能しない場合、血糖値が上昇して糖尿病という代謝疾患を引き起こす。インスリンが正常に分泌されなかったり、体内で正常に機能しない場合、体内の血糖値が調節されず上昇し、このタイプの糖尿病を2型糖尿病という。1型糖尿病は、膵臓が血糖の増加を調節するインスリンの分泌を十分に生産できない場合に起こる。2型糖尿病は、普通、主に化学物質で構成される経口用の血糖値降下剤を投与して治療し、一部の患者に投与され得る。一方、1型糖尿病を治療するためには、インスリンの投与が必須である。
【0003】
現在、広く利用されるインスリン治療は、食事前後のインスリン注射である。インスリンは、現在、非経口の注射製剤として利用可能で、皮下投与を原則としており、治療期間によって投与方法が異なる。注射によるインスリンの投与は、経口薬に比べ、血糖値を下げることにより効果的であり、経口薬を使用できない環境でも安全に用いることができる。また、インスリンの非経口投与は、容量の制限がないものの、1日に3回持続的に投与しなければならないため、注射針に対する拒否感、投与方法の難しさ、低血糖の症状、長期的なインスリンの投与による体重増加の症状などの短点を持つ。特に、体重増加は、心血管疾患を発生させるリスクを高め、体内における血糖値の調節機能を破壊しかねない。一方で、体内に薬物を投与した後に、薬物を高濃度で血中に長く維持させて、インスリンペプチド薬物の治療効果を最大化するための多くの試みがなされてきた。その結果、持続型インスリンが開発されて製造及び商業化された。持続型インスリン薬剤の例としては、ランタス(insulin glargine;Sanofi Aventis)とレベミル(insulin detemir;Novo Nordisk)が含まれる。中間型(NPH)インスリンとは違って、前記持続性薬物は、睡眠状態の間、低血糖のリスクがより低い。特に、レベミルは、体重増加の症状を緩和する。しかし、1日に1回又は2回の注射に関連する投与方法は、依然として短点となっている。
【0004】
一方、インスリン分泌性ペプチドの一種であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、回腸と大腸のL-細胞から分泌されるインクレチンホルモンである。GLP-1の主な機能は、インスリン分泌を増加させて体内のグルコース依存的なインスリン分泌が成立し、低血糖を防ぐ。このような効果から、GLP-1は、2型糖尿病を治療するために利用することができる。しかし、GLP-1の血中半減期が、2分以内で短いため、薬剤として開発するには大いに制限される。従って、エキセンジン-4と呼ばれる新しいGLP-1アゴニストが、開発されて製造された。エキセンジン-4は、アメリカドクトカゲ(gila monster)の唾腺で生成されるGLP-1アゴニストである。さらに、エキセンジン-4は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV)に対して抵抗性があり、GLP-1より高い生理活性を持つ。従って、エキセンジン-4は、GLP-1より遥かに長い、2〜4時間の長い体内半減期を持つ(特許文献1)。しかし、薬物の生理活性の十分な持続期間は、単にDPPIVに対する抵抗性を増加させるだけでは達成できない。例えば、現在入手可能なエキセンジン-4(exenatide、エキセナチド)は、注射で患者に1日に2回投与しなければならず、依然として嘔吐と吐き気を引き起こす短点を持つ。
【0005】
従って、前記のような問題点を解決するために、タンパク質薬剤の活性を維持し、生体内のそれらの安定性を同時に増進させるための方法として、本発明者らは、以前に既知の生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc領域をリンカーとして非ペプチド性重合体を用いて共有結合で結合させた持続型タンパク質結合体の開発を提案した(特許文献2)。特に、以前に、それぞれの持続型インスリン結合体と持続型エキセンジン-4結合体が、生体内で持続性が著しく増加したことを確認した(特許文献3、特許文献4)。しかし、安定的な血糖値を維持するために、インスリン又はエキセンジン-4の治療有効量を投与すると;体重増加又は嘔吐と吐き気の症状を起こしかねない。従って、糖尿病に対する優れた治療効果を提供しながら、薬物の1回投与量と頻度を減らすことができる治療方法の開発が高く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5424286号明細書
【特許文献2】韓国特許公告第10−0725315号明細書
【特許文献3】韓国特許公告第10−1058290号明細書
【特許文献4】韓国特許公告第 10−2011−0134210号明細書
【特許文献5】韓国特許公告第10−2011−0134209号明細書
【特許文献6】韓国特許公告第10−2011−0111267号明細書
【特許文献7】韓国特許公告第10−0725315号明細書
【特許文献8】韓国特許公告第10−2009−0008151号明細書
【特許文献9】韓国特許公告第10−1058290号明細書
【特許文献10】国際特許公開WO97/34631号明細書
【特許文献11】国際特許公開WO96/32478号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景下で、長期間におけるウィルスによる汚染のリスクなしに、前記2つの結合体の組み合わせを貯蔵できる持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定的な液状製剤を提供する努力において、本発明者らは、緩衝溶液、糖アルコール、等張化剤としての塩化ナトリウム及び非イオン性界面活性剤を含む安定化剤を利用して前記2つの結合体の組み合わせの安定性を増加させ、経済的かつ安定的な液状製剤を開発させることによって、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの目的は、生理活性ペプチドであるインスリン及びインスリン分泌性ペプチド、並びにアルブミン-非含有の安定化剤を含み、前記安定化剤は、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含有する持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの組み合わせの液状製剤を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記液状製剤を製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、インスリン及びインスリン分泌性ペプチドを含む、糖尿病を予防又は治療するための薬学的組成物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、糖尿病を患う個体に前記組成物を投与することを含む、糖尿病を治療する方法を提供することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせは、糖尿病を治療するための優れた治療効果を示す。さらに、本発明の持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの液状製剤は、緩衝溶液、糖アルコール、等張化剤及び非イオン性の界面活性剤を含有する安定化剤を含むが、ヒト血清アルブミン及び体内に対して他の潜在的に有害な因子を含まないため、ウィルスによる汚染のリスクがない。また、液状製剤は、インスリン又はインスリン分泌性ペプチド及び免疫グロブリンFc領域からなり、天然型に比べ、より大きい分子量及び生体内における持続期間が増大した持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体に対して優れた貯蔵安定性を提供する。特に、本発明は、前記持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定的な液状製剤を提供する。本発明のこのような液状製剤は、優れた貯蔵安定性を提供する簡単な製剤であり、従って、他の安定化剤又は凍結乾燥製剤に比べて、より経済的である。また、本液状製剤は、他の通常のインスリン及びインスリン分泌性ペプチド製剤に比べて、体内において、長期間にわたってタンパク質活性を維持することができ、従って、効率的な薬物製剤として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】40℃で1週間、表3の組成で製造された持続性インスリン分泌性ペプチド結合体の製剤における沈澱発生の測定結果を示す。
図2】表4の組成で製造し、40℃で4週間貯蔵した持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体のIE-HPLC分析の結果を示す。
図3】表4の組成で製造し、40℃で4週間貯蔵した持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体のRP-HPLC分析の結果を示す。
図4】単独製剤に比べて、異なる組成を持つそれぞれの組み合わせの製剤におけるタンパク質の沈殿発生の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記本発明の一態様として、生理活性ペプチドであるインスリン及びインスリン分泌性ペプチド、並びにアルブミン-非含有の安定化剤を含み、前記安定化剤は、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含む持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの組み合わせの液状製剤を提供する。本発明の液状製剤は、インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの組み合わせが同時投与されることを特徴とする。
【0016】
前記インスリンは、インスリンが免疫グロブリンFc領域に結合した薬理学的有効量の持続型インスリン結合体の形態で液状製剤に含まれ得る。前記インスリン分泌性ペプチドは、インスリン分泌性ペプチドが免疫グロブリンFc領域に結合した薬理学的有効量の持続型のインスリン分泌性ペプチド結合体の形態で液状製剤に含まれ得る。
【0017】
本発明における「持続型インスリン結合体」とは、誘導体、変異体、前駆体及び断片を含む生理活性インスリンが免疫グロブリンFc領域に結合した結合体を意味し、天然型インスリンに比べ、生体内の増加した生理活性の持続期間を持つ結合体を意味する。本発明における、持続型インスリン結合体とは、インスリンが免疫グロブリンFc領域と非ペプチド性リンカー又はペプチド性リンカーを通じて結合したことを意味する。本発明における「持続型インスリン分泌性ペプチド結合体」とは、誘導体、変異体、前駆体及び断片を含む生理活性インスリン分泌性ペプチドが、免疫グロブリンFc領域に結合した結合体を意味し、天然型インスリン分泌性ペプチドに比べ、増加した生理活性の生体内持続期間を持つ結合体を意味する。
【0018】
本発明における、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体とは、インスリン分泌性ペプチドが免疫グロブリンFc領域と非ペプチド性リンカー又はペプチド性リンカーを通じて結合したことを意味する。
【0019】
本発明における「持続型」とは、天然型ペプチドに比べ、生理活性の持続期間の 増進を意味する。前記用語「結合体」とは、インスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、免疫グロブリンFc領域に結合したペプチドの形態を意味する。
【0020】
本発明の持続型インスリン結合体又はインスリン分泌性ペプチド結合体は、天然型インスリン又はインスリン分泌性ペプチドに比べ、効力の増加した持続性を持つ。前記持続型インスリン結合体又はインスリン分泌性ペプチド結合体のタイプは、天然型インスリン又はインスリン分泌性ペプチドからのアミノ酸が、修飾、置換、挿入又は欠失によって生成されたインスリン又はインスリン分泌性ペプチドの形態;インスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、PEGなどの生分解性重合体と結合した結合体;インスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、アルブミン又は免疫グロブリンなどの高い持続性を持つタンパク質と結合した結合体;インスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、体内のアルブミンと結合親和力を持つ脂肪酸と結合した結合体;又は生分解性ナノ粒子に封入されたインスリン又はインスリン分泌性ペプチドの形態を含むが、それらに制限されるものではない。
【0021】
本発明で使用される持続型インスリン又はインスリン分泌性ペプチド結合体は、 合成されたインスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、免疫グロブリンFc領域と結合することによって製造される。前記2つを結合させる方法は、インスリン又はインスリン分泌性ペプチドと免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性重合体を通じて架橋結合させたり、インスリン又はインスリン分泌性ペプチドが、免疫グロブリンFc領域と遺伝子組み換えによって結合する融合タンパク質の製造であり得る。
【0022】
本発明における「インスリン」とは、体内の血糖値が高いときに体内の増加した血糖値に反応して膵臓から分泌され、グルコースを肝臓、筋肉又は脂肪組織に取り込んで、グリコーゲンに変えて、エネルギー源として脂肪を使用することを止めることで、血糖を調節する機能をするペプチドを意味する。このようなペプチドは、天然型インスリン、基礎インスリン及び前記アゴニスト、前駆体、誘導体、断片及びそれらの変異体を含む。
【0023】
本発明における「天然型インスリン」とは、膵臓から分泌され、細胞内のグルコース吸収を促進し、一方で脂肪の分解を抑制することで、血糖値を調節する機能をするホルモンである。インスリンは、血糖値を調節する機能を持たないプロインスリンという前駆体のプロセッシングを経て生成される。インスリンのアミノ酸配列は、以下のようである。

α鎖:
Gly-Ile-Val-Glu-Gln-Cys-Cys-Thr-Ser-Ile-Cys-Ser-Leu-Tyr-Gln-Leu-Glu-Asn-Tyr-Cys-Asn (配列番号1)

β鎖:
Phe-Val-Asn-Gln-His-Leu-Cys-Gly-Ser-His-Leu-Val-Glu-Ala-Leu-Tyr-Leu-Val-Cys-Gly-Glu-Arg-Gly-Phe-Phe-Tyr-Thr-Pro-Lys-Thr (配列番号2)
【0024】
本発明における「基礎インスリン(basal insulin)」とは、毎日正常な血糖値の変動を調節するペプチドを意味し、このようなペプチドの例としては、レベミル、ランタス及びデグルデクを含む。本発明における「インスリンアゴニスト」とは、インスリンの構造的違いとは関係なく、インスリンと同様の生物学的活性を示すインスリンの生体内受容体に結合する物質を意味する。本発明における「インスリン変異体」とは、天然型インスリンと1つ以上異なるアミノ酸配列を持ち、体内において血糖値を調節する機能を保持するペプチドを意味する。インスリン誘導体は、天然型インスリン又はそれらの組み合わせから、一部のアミノ酸が、置換、挿入、欠失及び修飾のいずれか1つによって製造され得る。本発明における「インスリン誘導体」とは、天然型インスリンと少なくとも80%のアミノ酸配列の相同性を持ち、アミノ酸残基の一部の基が化学的に置換(例;α-メチル化、α-ヒドロキシル化)、欠失(例;脱アミノ化)又は修飾(例;N-メチル化)された、体内で血糖値を調節する機能を保持したペプチドを意味する。本発明における「インスリンの断片」とは、天然型インスリンのN-末端又はC-末端において1つ以上付加又は欠失されたアミノ酸を持つ断片を意味し、天然に存在しないアミノ酸(例;D型アミノ酸)も付加され得る。前記インスリンの断片は、体内で血糖値を調節する機能を保持する。
【0025】
インスリンのアゴニスト、誘導体、断片及び変異体を製造するために用いる各方法は、単独的に又は組み合わせて利用することができる。例えば、本発明の範囲は、天然型ペプチドと1つ以上異なるアミノ酸配列を持ち、体内で血糖値を調節する機能を保持する、脱アミノ化されたN-末端のアミノ酸残基を持つペプチドを含む。
【0026】
本発明で使用されるインスリンは、組み換え技術によって製造されるか又は固相合成によって合成され得る。また、本発明で使用されるインスリンは、非ペプチド性重合体と結合され得る。このような非ペプチド性重合体は、本発明でリンカーとして使用することができる。インスリンをリンカーとして非ペプチド性重合体と連結させることによって、それらの活性を保持しながらインスリンの安定性を増進させることができる。ペプチドは、遺伝子組み換え技術を利用することで、リンカーとして利用することができる。
【0027】
本発明における「非ペプチド性重合体」とは、1つ以上の繰り返し単位から構成される生体適合性重合体を意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく、任意の共有結合を通じてお互い連結される。本発明における「前記非ペプチド性重合体」とは、「非ペプチド性リンカー」と混用して使用することができる。
【0028】
本発明で使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)などの生分解性高分子;脂質重合体;キチン類;ヒアルロン酸;及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、ポリエチレングリコールが、非ペプチド性重合体として用いられることである。本発明の範囲は、当分野に公知のそれらの誘導体及び当分野において利用可能な技術を用いることで容易に製造することができる誘導体も含む。
【0029】
従来のインフレーム融合方法によって製造される融合タンパク質で使用されるペプチド性リンカーは、体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断されるという制限を持つため、担体を利用するとき、活性薬物の血中半減期を十分に多く増大できなかった。しかし、本発明で、前記ペプチドの血中半減期は、タンパク質分解酵素に対して抵抗性のある重合体を使用して、担体を利用するときと同様のレベルを維持することができる。従って、本発明で使用できる非ペプチド性重合体は、前記の機能を持つ限り、タンパク質分解酵素に抵抗性のある任意のタイプの重合体を含む。非ペプチド性重合体は、分子量1〜100kDaであり、好ましくは1〜20kDaである。また、免疫グロブリンFc領域に連結される本発明の非ペプチド性重合体は、一種類の重合体又は異なる種類の重合体の組み合わせであり得る。
【0030】
本発明で使用される非ペプチド性重合体は、免疫グロブリンFc領域及びタンパク質薬物と連結できる反応基を有してもよい。前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、フチルアルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群より選択されるのが好ましい。スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルプロピオン酸、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートであり得る。特に、前記非ペプチド性重合体が、両末端に反応アルデヒド基を持つ場合、非特異的結合を最小化でき、各末端で非ペプチド性重合体と、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンを効果的に連結することができる。アルデヒド結合を形成する還元性アルキル化によって生成された最終産物は、アミド結合によって結合されたものより遥かに安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHのN-末端に選択的に結合し、例えば、pH9.0という高いpHのリジン残基と共有結合を形成する。
【0031】
前記非ペプチド性重合体の2つの末端の反応基は、同じか又は異なることがある。例えば、非ペプチド性重合体は、一方の末端にマレイミド基を、他の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を有してもよい。両末端にヒドロキシ基を持つポリエチレングリコールが、非ペプチド性重合体として利用される場合、前記ヒドロキシ基が、公知の化学反応によって多様な反応基に活性化されたり、又は商業的に利用可能な修飾された反応基を持つポリエチレングリコールが、本発明の持続型インスリン結合体を製造するために利用され得る。
【0032】
好ましくは、前記非ペプチド性重合体が、インスリンのβ鎖N-末端に結合され得る。
【0033】
本発明のインスリンは、非ペプチド性重合体で修飾され得る。
【0034】
免疫グロブリン断片を利用して持続型インスリン結合体を開発する際、生理活性ポリペプチドが、低血糖を引き起こすことなく、薬物の持続時間を増加させるために、PEGにより修飾されると、力価が減少する。しかし、力価の減少は、持続型インスリン結合体の利点になり、従って、PEGで修飾されたインスリンは、非ペプチド性重合体を通じて免疫グロブリンFc領域と結合され得る。インスリンの修飾に利用できる非ペプチド性重合体の種類は、前記に述べたとおりであり、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)である。前記PEG修飾されたインスリンにおいて、PEGは、インスリンのα鎖N-末端又はβ鎖の特異的なリジン残基に選択的に結合する。前記インスリンを修飾するPEGは、好ましくは、末端にアルデヒド基又はスクシニル基を、より好ましくは、スクシニル基を含む。
【0035】
本発明の持続型インスリン結合体の製造方法及び効果は、特許文献4,5,6に開示されている。当分野の当業者らは、これらの文献の説明によって本発明で使用される持続型インスリン結合体を製造することができる。また、本発明者らは、以前に、免疫グロブリンFc領域のN-末端をモノペグ化し、インスリンβ鎖の1番位置のフェニルアラニンに同様に取り付けることによって、持続型インスリン結合体を製造する方法を提供した。
【0036】
本発明における「インスリン分泌性ペプチド」とは、インスリンを分泌する機能を持つペプチドを意味し、膵臓のβ細胞におけるインスリンの合成又は発現を刺激することができる。前記インスリン分泌性ペプチドは、好ましくは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-2、エキセンジン-3又はエキセンジン-4であるが、それらに制限されるものではない。前記インスリン分泌性ペプチドは、その前駆体、アゴニスト、誘導体、断片又はそれらの変異体だけでなく、天然型インスリン分泌性ペプチドをも含む。
【0037】
本発明のインスリン分泌性ペプチドの誘導体は、インスリン分泌性ペプチドのN-末端のアミノ基(又はアミン基)が、欠失されることによって生成される誘導体(例;デスアミノ-ヒスチジル誘導体);インスリン分泌性ペプチドのアミノ基が、ヒドロキシ基に置換されることによって生成される誘導体(例:βヒドロキシイミダゾプロピオニル誘導体);インスリン分泌性ペプチドのアミノ基が、2つのメチル基に修飾されることによって生成される誘導体(ジメチル-ヒスチジル誘導体)、インスリン分泌性ペプチドのN-末端アミノ基が、カルボキシ基に置換されることによって生成される誘導体(βカルボキシイミダゾプロピオニル誘導体)又はN-末端ヒスチジン残基のα炭素を欠失させて、イミダゾールアセチル基のみを残し、インスリン分泌性ペプチドのアミノ基の陽電荷を除去することによって生成される誘導体を意味する。さらに、本発明の範囲は、N-末端アミノ基の変異誘導体の他の形態も含む。
【0038】
本発明において、インスリン分泌性ペプチド誘導体は、好ましくは、エキセンジン-4のN-末端アミノ基又はアミノ酸残基が化学修飾によって生成された誘導体であり、より好ましくは、エキセンジン-4のN-末端の1番目のアミノ酸であるヒスチジン残基α炭素に存在するαアミノ基又はα炭素基(エキセンジン-4誘導体が)が置換又は欠失されたエキセンジン-4誘導体である。さらに好ましくは、インスリン分泌性ペプチド誘導体は、エキセンジン-4のN-末端のアミノ基を欠失させることによって生成されるデスアミノ-ヒスチジルエキセンジン-4(DA-exendin-4);エキセンジン-4が、ヒドロキシ基又はカルボキシ基に置換されることによって生成されるβヒドロキシイミダゾプロピオニル-エキセンジン-4(HY-exendin-4);βカルボキシイミダゾプロピオニル-エキセンジン-4(CX-exendin-4);エキセンジン-4が2つのメチル残基に修飾されることによって生成されるジメチル-ヒスチジル-エキセンジン-4(DX-exendin-4);又はN-末端のヒスチジン残基のα炭素を欠失させることによって生成されるイミダゾアセチル-エキセンジン-4(CA-exendin-4)である。
【0039】
GLP-1は、小腸から分泌されるホルモンであり、一般に、インスリン生合成及び分泌を促進してグルカゴン分泌を抑制し細胞内のグルコースの吸収を促進する。小腸でグルカゴン前駆体は、3つのペプチドであるグルカゴン、GLP-1、GLP-2に分解される。ここで、GLP-1は、GLP-1(1〜37)を意味し、インスリンを分泌する機能を持たないが、GLP-1(7〜37)の形態にプロセッシングされると、活性型になる。GLP-1(7〜37)のアミノ酸配列は、以下のようである:

GLP-1(7〜37):
HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EFIAW LVKGR G (配列番号3)
【0040】
本発明における「GLP-1誘導体」とは、天然型GLP-1と少なくとも80%のアミノ酸配列の相同性を持ち、化学的に修飾された形態であり得え、同時に、少なくとも同等又は増進したインスリン分泌活性を示すペプチドを意味する。本発明における「GLP-1断片」とは、天然型GLP-1のN-末端又はC-末端に1つ以上のアミノ酸が挿入又は欠失されたペプチドの形態を意味し、挿入されたアミノ酸は、天然に存在しないアミノ酸(例:D型アミノ酸)であり得る。本発明における用語、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体とは、天然型インスリン分泌性ペプチドに比べ、増加した持続性効果を持つペプチドを意味する。前記持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、天然型インスリン分泌性ペプチドのアミノ酸が、修飾、置換、挿入又は欠失された形態;インスリンが、PEGなどの生分解性重合体と結合した結合体の形態;インスリンが、アルブミン、免疫グロブリン及びそれらの断片などの高い持続性を持つタンパク質と結合した結合体の形態;インスリン分泌性ペプチドが、体内のアルブミンと結合親和力を持つ脂肪酸と結合した結合体の形態;又は生分解性ナノ粒子に封入されたインスリン分泌性ペプチドの形態であり得るが、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の種類は、本発明に制限されるものではない。
【0041】
本発明における「GLP-1変異体」とは、天然型GLP-1と1つ以上異なるアミノ酸配列を持ち、インスリン分泌の機能を保持するペプチドを意味する。
【0042】
エキセンジン-3とエキセンジン-4は、39個のアミノ酸からなり、GLP-1と53%のアミノ酸配列の相同性を持つインスリン分泌性ペプチドである。エキセンジン-3とエキセンジン-4のアミノ酸配列は、以下のようである。

エキセンジン-3
HSDGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS (配列番号4)

エキセンジン-4
HGEGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS (配列番号5)
【0043】
エキセンジンアゴニストは、エキセンジンとの構造的な類似性とは関係なく、生体内でエキセンジンの受容体に結合してエキセンジンと同様の生物学的活性を持つ物質を意味する。エキセンジン誘導体は、天然型エキセンジンに対して、少なくとも80%の配列で相同性を示し、アミノ酸残基の一部が化学的に置換(例:α-メチル化及びα-ヒドロキシル化)、欠失(例:脱アミノ反応)又は修飾(例:N-メチル化)され得るペプチドを意味し、このようなエキセンジン誘導体は、インスリン分泌の機能を持つ。
【0044】
エキセンジン断片は、天然型エキセンジンのN-末端又はC-末端に1つ以上のアミノ酸が挿入又は欠失されたペプチドの形態を意味し、天然に存在しないアミノ酸(D-型アミノ酸)の挿入もあり得、このようなエキセンジン断片は、インスリン分泌の機能を持つ。
【0045】
エキセンジン変異体は、天然型エキセンジンとアミノ酸配列が1つ以上異なり、インスリン分泌の機能を持つペプチドを意味する。前記エキセンジン変異体は、エキセンジン-4の12番目のアミノ酸であるリジンが、セリン又はアルギニンに置換されることによって生成されるペプチドを含む。エキセンジンアゴニスト、誘導体、断片及び変異体のそれぞれを製造する方法は、単独的に又は組み合わせて用いることができる。例えば、インスリン分泌性ペプチドの範囲は、天然型ペプチドと1つ以上異なるアミノ酸配列を持ち、N-末端のアミノ酸残基が脱アミノ化されたインスリン分泌性ペプチドを含む。本発明で使用される天然型インスリン分泌性ペプチド及び変形されたインスリン分泌性ペプチドは、固相合成によって合成され得る。また、天然型インスリン分泌性ペプチドを含む大部分の天然型ペプチドは、組み換え方法によって生成することができる。
【0046】
本発明で使用される持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、遺伝子組み換え技術を用いることによって、非ペプチドリンカー又はペプチドリンカーを通じた免疫グロブリンなどの免疫グロブリン断片と結合したインスリン分泌性ペプチドの形態を持つ。前記非ペプチド性リンカーについては、前記説明したとおりである。前記持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、持続型インスリン結合体のように免疫グロブリン断片を用いて製造される。前記持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、インスリン合成及び分泌を促進、食欲抑制、体重減少を誘導、血中グルコースに対するβ細胞の敏感度の増加、β細胞の増殖を促進、胃内容排出の遅延及びグルカゴンを抑制などの既存のインスリン分泌性ペプチドの生体内活性を維持し、インスリン分泌性ペプチドの血中半減期の増加によって生体内の効力の持続性が増加した。従って、インスリン分泌性ペプチド結合体は、糖尿病及び肥満の治療に有効的である。
【0047】
本発明で使用される持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の製造のために、以下の参考文献を参考することができる:特許文献7、8及び9。当分野の当業者らは、前記の文献に従い本発明で使用される持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を製造することができる。
【0048】
さらに、本発明者らは、イミダゾ-アセチルエキセンジン-4(CA exendin-4)のリジン(Lys)残基にまずPEGを取り付け、PEG修飾されたエキセンジン-4を免疫グロブリンFcと結合させることによって、持続型エキセンジン-4結合体を製造する方法を以前に開発した。
【0049】
本発明で使用されるインスリン及びインスリン分泌性ペプチドは、担体とリンカーとして非ペプチド性重合体を通じて結合する。本発明で使用可能な担体は、免疫グロブリンFc領域、アルブミン、トランスフェリン及びPEGからなる群より選択され得るが、好ましくは、免疫グロブリンFc領域である。
【0050】
本発明の前記持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体のそれぞれは、非ペプチド性リンカーを通じて免疫グロブリンFc領域と結合したインスリン及びインスリン分泌性ペプチドを持ち、持続性及び安定性を示す。本発明で免疫グロブリンFcは、免疫グロブリン断片と混用して使用することができる。
【0051】
さらに、免疫グロブリンFc領域は、全体の免疫グロブリン分子に比べ、比較的に低分子量であるため、それらの利用は、高収率を得られるだけでなく、結合体を製造及び精製するにも有利であり得る。さらに、免疫グロブリンFc領域は、抗体のサブクラスによって異なるアミノ酸配列のため、高い非均質性を示すFab断片を含まない。従って、免疫グロブリンFc領域は、増進された同質性を持ち抗原性が少ないことが期待できる。
【0052】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(CH1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた、免疫グロブリンの重鎖不変領域2(CH2)及び重鎖不変領域3(CH3)部位を含むペプチドを意味する。さらに、重鎖不変領域にヒンジ領域を含んでもよい。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型タンパク質より実質的に同程度又はよりよい生理機能を持つ限り、重鎖と軽鎖可変領域を除いて、重鎖不変領域1(CH1)及び/又は軽鎖不変領域1(CL1)を含むFc領域の一部又は全体を含んでもよい。また、CH2及び/又はCH3の比較的に長い部分のアミノ酸配列の欠失を持つ断片であり得る。すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)1つ以上のドメインと免疫グロブリンのヒンジ領域との組み合わせ(又はヒンジ領域の一部)、及び6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の2量体を含んでもよい。
【0053】
さらに、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列及びそれらの配列誘導体(mutant)を含む。アミノ酸配列の誘導体は、1つ以上のアミノ酸残基の欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はそれらの組み合わせによって、天然アミノ酸配列と異なる配列を持つ。例えば、IgG Fcにおいて、結合に重要であると知られる214〜238、297〜299、318〜322又は327〜331番位置のアミノ酸残基が、修飾に適した標的として利用され得る。
【0054】
さらに、ジスルフィド結合を形成できる領域の欠失、天然型Fc形態のN-末端の数個のアミノ酸残基の欠失、又は天然型Fc形態のN-末端のメチオニン残基の付加を持つ誘導体を含む、他の様々な誘導体が可能である。さらに、エフェクター機能を無くすため、C1q結合部位及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)部位などの補体結合部位で、欠失が起こり得る。免疫グロブリンFc領域のこのような配列の誘導体を製造する技術は、特許文献10、11などに記載されている。
【0055】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸の交換は、当分野で知られている(非特許文献1)。最も通常に起きる交換は、アミノ酸残基 Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu及びAsp/Gly)の両方向である。前記Fc領域は、場合によっては、リン酸化、硫酸化、アクリル化、グリコシル化、メチル化、ファルネシル化、アセチル化及びアミド化などに修飾され得る。
【0056】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同様の生物活性を持ち、又は例えば、熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0057】
さらに、このようなFc領域は、ヒト又は牛、羊、豚、マウス、ラビット、ハムスター、ラット又はモルモットを含む他の動物から分離された天然型から得てもよく、又は形質転換された動物細胞或いは微生物から得られた組み換え型又はそれらの誘導体であり得る。ここで、全体免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離及びタンパク質分解酵素を処理することによって、天然型から得ることができる。パパインは、天然型免疫グロブリンをFab及びFc領域に切断し、ペプシン処理で、pF'c及びF(ab)2断片が生じる。これらの断片は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーに供され、Fc又はpF'cに分離され得る。好ましくは、ヒト由来のFc領域を微生物から取得した組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0058】
さらに、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖又は天然型に比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であり得る。前記免疫グロブリンFc糖鎖の増加、減少又は欠失は、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を利用した遺伝工学的方法などの当分野の通常の方法で達成され得る。Fc領域からの糖鎖の除去は、補体(C1q)との結合親和力が著しく低下及び抗体依存性細胞傷害の減少又は喪失をもたらし、よって、生体内に不要な免疫反応を誘発させない。このような点で、糖鎖が欠失されたり非糖化された形態の免疫グロブリンFc領域は、薬物の担体としての本来の目的により適切であり得る。
【0059】
本発明における「糖鎖の除去(deglycosylation)」とは、Fc領域から酵素的に除去した糖の部分を意味し、「非糖鎖化(Aglycosylation)」とは、原核動物、好ましくは、大腸菌によって糖鎖化されてない形態で製造されるFc領域を意味する。
【0060】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト又は牛、羊、豚、マウス、ラビット、ハムスター、ラット及びモルモットなどの動物から由来され得るが、好ましくは、ヒトから由来され得る。
【0061】
さらに、免疫グロブリンFc領域は、Fc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgM由来又はそれらの組み合わせ又はそれらのハイブリットによって製造されたものである。好ましくは、ヒト血液に最も豊富なタンパク質の中のIgG又はIgM由来であり、最も好ましくは、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが知られるIgG由来である。
【0062】
一方で、本発明における「組み合わせ」とは、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが、異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合し、2量体又は多量体を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなる群より選択される2つ以上の断片から2量体又は多量体が形成され得る。
【0063】
本発明における「ハイブリット」とは、2つ以上の異なる起源の免疫グロブリンFc断片をコードする配列が、単鎖免疫グロブリンFc領域内に存在することを意味する。本発明において、様々な形態のハイブリットが可能である。すなわち、ハイブリットドメインは、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群より選択される1つ〜4つのドメインを含んでもよく、ヒンジ領域を含んでもよい。
【0064】
一方で、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明では、組み合わせ又はそれらのハイブリットを含む。好ましくは、IgG2及びIgG4のサブクラスであり、最も好ましくは、補体依存性細胞障害(CDC)などのエフェクター機能をほとんど持たないIgG4のFc領域である。
【0065】
本発明の薬物の担体として、最も好ましい免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖化Fc領域である。前記ヒト由来のFc領域は、ヒト生体内で抗原として作用して、抗原に対して新しい抗体の生成などの好ましくない免疫反応を起こし得る非ヒト由来のFc領域より好ましい。
【0066】
本発明の持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の 組み合わせの液状製剤は、治療学的な有効量の持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を含む。本発明で使用される持続型インスリン結合体の濃度は、0.1mg/ml〜200mg/mlであり、好ましくは、10mg/ml〜200mg/mlである。本発明で使用される持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の濃度は、0.1mg/ml〜200mg/mlであり、好ましくは、0.5mg/ml〜150mg/mlである。本発明の前記持続型インスリン結合体及びインスリン分泌結合体の高濃度の液状製剤は、既存の低濃度の液状製剤に比べて、用量当たりに高濃度のインスリン結合体およびインスリン分泌性ペプチド結合体を含む。従って、安定的に体内にインスリンを供給することができ、既存の液状製剤とは違って、高濃度のインスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチドを同時に投与でき、沈殿なしに安定的に貯蔵することができる。
【0067】
本発明における「安定化剤」とは、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチドが安定的に貯蔵できるようにする物質を意味する。前記用語「安定化」とは、一定の時間の間、特定の貯蔵条件下で活性成分の損失が特定量未満、一般的に10%未満であることを意味する。製剤は、5±3℃で2年、25±2℃で6ヶ月又は40±2℃で1〜2週間保存された後、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチドが90%以上、より好ましくは、92〜95%の残存率の場合、安定的な製剤として見なされる。持続型インスリン結合体又は持続型インスリン分泌性ペプチドのようなタンパク質において、貯蔵安定性は、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチドに対する抗原性物質の潜在的な形成を抑制するためだけでなく、正確な投与量も提供する上で重要である。貯蔵の間、持続型インスリン結合体又は持続型インスリン分泌性ペプチドの10%の損失は、抗原性化合物の形成をもたらす組成物内の凝集体又は断片の形成を起こさない限り、実質的な投与時に許容される。
【0068】
本発明の前記安定化剤は、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせを安定化するための緩衝溶液、糖アルコール、等張化剤としての塩化ナトリウム及び非イオン性界面活性剤を含むのが好ましく、さらにメチオニンを含んでもよい。
【0069】
緩衝溶液は、液状製剤の急激なpH変化を防ぐための溶液のpHを維持する働きをして、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせを安定化する。緩衝溶液は、アルカリ塩(リン酸ナトリウム又はカリウム又はこれらの水素又は二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸及び当業者に公知の任意の他の薬学的に許容可能なpH緩衝剤、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。このような緩衝溶液の好ましい例は、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液及びリン酸緩衝溶溶液などを含む。これらの中で、酢酸ナトリウム緩衝液又はクエン酸ナトリウム緩衝溶液が好ましい。酢酸ナトリウム緩衝溶液を構成する酢酸の濃度は、好ましくは、全体溶液の5mM〜100mMであり、より好ましくは、5mM〜50mMである。緩衝溶液のpHは、好ましくは、4.0〜8.0であり、より好ましくは、5.0〜7.0であり、さらに好ましくは、5.0〜6.5である。
【0070】
糖アルコールは、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性を増加させる役割をする。本発明において、糖アルコールの濃度は、好ましくは、製剤の全体量の1〜20%(w/v)、より好ましくは、製剤の全体量の1〜15%(w/v)である。本発明の糖アルコールの有用な例としては、マンニトール及びソルビトールを含み、好ましい例としては、マンニトールである。
【0071】
等張化剤は、溶液内の持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせを体内に投与するとき、適切な浸透圧を維持する効果を持つ。また、等張化剤は、溶液内で組み合わせをさらに安定化させる効果を持つ。一般に、等張化剤は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び好ましくは、塩化ナトリウムを含む水溶性無機塩である。等張化剤の含量は、全ての混合物が含まれた液状製剤が等張液になるように、製剤に含まれた成分の種類と量によって適切に調節され得る。このような等張化剤の濃度は、全体溶液の0.5mg/ml〜30mg/mlであり得るが、それらに制限されるものではない。
【0072】
非イオン性界面活性剤は、タンパク質溶液の表面張力を下げ、疎水性表面におけるタンパク質の吸収又は凝集を防止する。本発明における非イオン界面活性剤の有用な例としては、ポリソルベート系、ポロキサマー系及びそれらの組み合わせを含み、ポリソルベート系が好ましい。ポリソルベート系の非イオン性界面活性剤の中で、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60及びポリソルベート80があり、最も好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0073】
前記非イオン性界面活性剤を液状製剤の中で高濃度で使用することは、不適切であり、これは、高濃度の非イオン性界面活性剤が、UV-分光法又は等電焦点法などの分析法でタンパク質の濃度を測定又はタンパク質の安定性を評価するとき、干渉効果を誘導するためであり、よって、正確なタンパク質の安定性を評価するのに困難が生じる。従って、本発明の液状製剤は、好ましくは、0.2%(w/v)以下の低濃度で、より好ましくは、0.001〜0.05%(w/v)の前記非イオン性界面活性剤を含む。
【0074】
本発明の安定化剤に含まれるメチオニンは、溶液内のタンパク質の酸化によって起こり得る不純物の生成を抑制して標的タンパク質をさらに安定化させる効果がある。メチオニンの濃度は、全体溶液の0.005%〜0.1%(w/v)であり、好ましくは、全体溶液の0.01%〜0.1%(w/v)であり得る。
【0075】
本発明の一実施例によると、緩衝溶液、糖アルコール及び非イオン性界面活性剤の存在下で、等張化剤として塩化ナトリウムが添加される場合、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの貯蔵安定性が著しく増加されることが証明された。これは、緩衝溶液、糖アルコール及び非イオン性界面活性剤と同時に等張化剤としての塩化ナトリウムの使用が、シナジー効果を誘導することを示し、よって、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせに高い安定性を提供する。
【0076】
本発明の前記安定化剤は、アルブミンを含有しないのが好ましい。タンパク質の安定化剤として利用可能なヒト血清のアルブミンは、ヒトの血清から製造されるため、ヒト由来の病原性ウィルスに汚染され得る可能性が常にある。ゼラチン又はウシ血清のアルブミンは、疾患を起こしたり又は一部患者に、アレルギー反応を誘発しやすい。本発明の前記安定化剤は、ヒト又は動物由来の血清アルブミン又は精製されたゼラチンなどの異種タンパク質を含有しないため、ウィルスによる汚染を起こす可能性がない。
【0077】
さらに、本発明の前記安定化剤は、糖類、多価アルコール又は中性アミノ酸をさらに含んでもよい。持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの貯蔵安定性を増大させるためにさらに添加してもよい糖類の好ましい例としては、マンノース、グルコース、フコース及びキシロースなどの単糖類と、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース及びデキストランなどの多糖類を含む。多価アルコールの好ましい例は、プロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量のポリプロピレングリコール及びそれらの組み合わせを含む。
【0078】
本発明の液状製剤は、前記説明した緩衝溶液、等張化剤、糖アルコール及び非イオン界面活性剤の他に、本発明の効果が影響されない限り、当分野に公知のその他の成分又は物質を選択的にさらに含んでもよい。
【0079】
持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせに安定性を提供する本発明における高濃度の組み合わせのアルブミン-非含有の液状製剤は、ウィルスによる汚染のリスクがなく、一方、簡単な製剤で優れた貯蔵安定性を提供し、よって、本製剤は、他の安定化剤又は凍結乾燥製剤に比べ、より経済的に提供され得る。
【0080】
また、本発明の液状製剤は、天然型ペプチドに比べ、生理活性の持続期間が増大した持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体を含むため、通常のインスリン及びインスリン分泌性ペプチド製剤に比べ、体内でタンパク質活性を長期間維持させることによって、効率的な薬物製剤として利用することができる。また、本液状製剤は、高濃度の持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせを貯蔵するための優れた安定性を提供する。
【0081】
好ましくは、本発明の液状製剤は、インスリン及びインスリン分泌性ペプチドがポリエチレングリコールを通じて免疫グロブリン断片に結合した持続型インスリン結合体;持続型インスリン分泌性ペプチド;及びアルブミン-非含有の安定化剤を含み、前記安定化剤は、酢酸緩衝液、マンニトール、ポリソルベート20及び塩化ナトリウムを含む。また、液状製剤は、さらにメチオニンを含んでもよい。
【0082】
他の態様として、本発明は、本発明の液状製剤を製造する方法を提供する。
【0083】
持続型インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定的な液状製剤は、持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチド結合体の生成及び前記製造した持続型インスリン及びインスリン分泌結合体と、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含む安定化剤とを混合を通じて製造され得る。
【0084】
他の様態として、本発明は、前記インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体を含む、糖尿病を予防又は治療するための組成物を提供する。
【0085】
本発明の前記組成物は、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の同時投与を許容することを特徴とする。
【0086】
前記持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を同時に投与する場合、前記持続型インスリン結合体は、インスリン受容体に作用し、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、グルカゴン様ペプチド-1受容体に同時に作用する。従って、2つの結合体の同時投与は、2つの結合体の単独投与に比べ、血糖値をより効果的に減少させ安定的に変化を示す。さらに、前記結合体を同時投与する場合、インスリン単独投与時に現れ得る低血糖のリスクを下げ、体重を減少させ、また、インスリン分泌性ペプチドを含むことによってインスリンの全体投与量も下げる。さらに、エキセンジン-4などのインスリン分泌性ペプチドの容量を下げることができ、よって、同時投与は、エキセンジン-4を単独で投与する際に見られる吐き気及び嘔吐などの副作用を下げるという長点がある。持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の使用は、薬物の半減期及び生体内の持続性を著しく増加させることができるため、毎日投与を必要とする慢性患者のために投与頻度を減らすことによって、糖尿病を治療するのに大いに有利であり、従って、患者の生活の質を向上させることができる。さらに、本発明の薬学的組成物は、優れた生体内の持続性及び力価を持ち、それらの使用は、同時投与の方法を利用して、容量を著しく減らすことができる。
【0087】
持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体は、同時に、連続的に又は逆順に投与され得る。また、有効量で2つを組み合わせて同時に投与され得る。好ましくは、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体が1つの容器に入れた後に同時投与され得る。
【0088】
さらに、本発明の持続型インスリン結合型及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の同時投与のための組成物は、1つの容器に用意される糖尿病治療のためのキットの形態であり得る。このようなキットは、薬学的に許容可能な担体及びキットを使用するための説明書を含んでもよい。
【0089】
ストレプトゾトシン(STZ)-誘導性高血糖マウスに、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を同時投与し、血糖の変化を調査した。その結果、前記結合体を同時投与した場合、血糖値の変化が、結合体を単独に投与した場合より、より安定的であった。他の実験において、2型糖尿病のモデルマウスで、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を1週間に1回ずつ同時投与し、その後、投与前後の空腹血糖値の違いを比較した。その結果、同時投与は、2つの結合体の単独投与に比べ、血糖値の調節においてより高い効果を示し、インスリン投与後の体重増加は、観察されなかったため、同時投与は、インスリンによる体重増加の副作用を減少できることを確認した。
【0090】
本発明における「糖尿病」とは、インスリンの分泌が不足したり、インスリンが正常に機能できない代謝疾患を意味する。本発明の組成物を個体に同時投与することによって、血糖値を調節して糖尿病を治療することができる。
【0091】
本発明における「予防」とは、本発明の組成物を同時投与して、糖尿病の発病を予防又は遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物を同時投与して、糖尿病の症状を緩和又は好転できる全ての行為を意味する。糖尿病の治療は、糖尿病を発生し得るどんな動物にも適用され得る。そのような動物の例としては、ヒト及び霊長類だけでなく、牛、豚、羊、馬、犬及び猫などの家畜をも制限なく含み、好ましくは、ヒトであり得る。
【0092】
本発明における「投与」とは、ある適した方法で患者に所定量の物質を導入することを意味し、前記組成物は、薬物が標的組織に到達できるものであれば、任意の一般経路を通じて投与され得る。前記投与経路は、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与を含むが、それらに制限されるものではない。しかし、ペプチドは、経口投与で消化されるため、経口投与する組成物の活性成分は、胃による分解から保護するためにコーティングしたり、製剤化する必要がある。好ましくは、結合体は、注射剤の形態で投与され得る。さらに、前記組成物は、活性物質を標的細胞に輸送できる任意の装置を用いて投与され得る。
【0093】
さらに、本発明の薬学的組成物は、薬物の活性組成物の種類だけでなく、治療する疾患の種類、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、並びに疾患の重症度を含む様々な要因によって決定され得る。
【0094】
さらに、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。本発明における「薬学的に許容可能な担体」とは、個体を刺激することなく、投与される物質の生物活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤を意味する。経口投与の場合、薬学的に許容可能な担体は、結合剤、滑澤剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁剤、色素及び香料を含んでもよい。注射用製剤の場合、薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤を含んでもよい。局所投与用製剤の場合、薬学的に許容可能は担体は、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を添加することで様々な形態に製剤され得る。例えば、経口投与の場合、薬学的組成物は、錠剤、トローチ、カプセル、エリクサー、懸濁液、シロップ又はウエハースに製剤され得る。注射剤の場合、薬学的組成物は、単回投与アンプル又は複数回投与の形態として製剤され得る。薬学的組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル及び徐放剤製剤に製剤され得る。
【0095】
他の態様として、本発明は、前記持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を含む組成物を糖尿病を発生し得たり又は既に糖尿病である個体に投与することを含む、糖尿病を予防又は治療する方法を提供する。
【0096】
前記投与する段階は、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体が同時投与され得、複合体の適した有効量は、組み合わせて同時に投与される。
【0097】
前記持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体を両方含む本発明の組成物は、投与頻度の減少でも血糖値を効果的に下げ、体重増加などの副作用を引き起こさないため、糖尿病を予防又は治療するのに効果的に使用され得る。
【0098】
(発明を実施するための形態)
以下、本発明は、実施例に関連してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、単に目的を例示するためのものであって、本発明は、これらの実施例によって制限されることを意図しない。
【0099】
実施例1:持続型インスリン結合体の安定性の評価
持続型インスリン結合体は、薬剤の血中半減期の増加及び体内の低血糖を防ぐための方法として開発された。従って、共有結合を通じた免疫グロブリンFc領域、非ペプチド性重合体及びインスリンの部位特異的結合によって生成されたインスリン結合体は、血中半減期が著しく増加され、低血糖のリスクを減らす。
【0100】
このような持続型インスリン結合体の安定性を測定するために、前記製剤が、下記表1の組成で製造し、40℃で2週間貯蔵した後、その中のペプチドの安定性をイオン交換クロマトグラフィー(IE-HPLC)により分析した。
【0101】
この際、ペプチドの安定性に寄与する主要な因子は、pH、緩衝溶液の種類及び濃度、等張化剤の種類、マンニトールからなる糖アルコールの濃度、界面活性剤の種類、ポリソルベート20からなる界面活性剤の濃度、その他の添加剤の有無及びメチオニンと塩化ナトリウムの同時添加に設定した。それぞれの組成物の持続型インスリン結合体の濃度は、61.1mg/mlであり、それらの製剤を実験に使用した。
【0102】
表1のIE-HPLC(%)は、初期結果と比べた持続型インスリン結合体の残存率を示すArea%/Start Area%の値を表す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示すように、持続型インスリン結合体は、pH5.6又は6.0で、酢酸ナトリウムからなる緩衝溶液、塩化ナトリウムからなる等張化剤、マンニトールからなる糖アルコール及びポリソルベート20からなる界面活性剤を含む液状製剤で最も安定的である。
【0106】
実施例2:持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の安定性の評価
様々なpH及び安定化剤の有無による持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の溶解度を確認するために、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の異なる液状製剤が下記の表3のような組成で製造し、40℃で1週間貯蔵した。次いで、肉眼によりタンパクの沈殿をチェックして結合体の安定性を比較した。各々の組成物において、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の濃度は、10mg/mlであり、これらの製剤を使用して実験を行った。
【0107】
【表3】
【0108】
図1のタンパク質の沈殿の非存在状態の持続期間(日)は、40℃で製剤を貯蔵した後、タンパク質の沈殿が発生しない時点を表す。前記に示すように、酢酸ナトリウム、pH5.0〜5.4(#1、#2、#3)で、又は5%(w/v)マンニトール(#5)、40℃で貯蔵の4日以内に、タンパク質の沈澱が発生した。しかし、pH5.6で、10%(w/v)マンニトールが添加された製剤の場合は、溶解度が増加して7日間沈澱が生成しなかった(図1)。
【0109】
実施例3:持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性の評価
個々の液状製剤を基に、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性を比較した。また、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体をそれぞれ安定化する上で重要なメチオニンと塩化ナトリウムが、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性にどのように影響を及ぼすかを測定した。
【0110】
持続型インスリン結合体、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体又はその2つの組み合わせの液状製剤が、表4に示す下記の組成物で製造し、40℃で4週間貯蔵した。次いで、タンパク質の沈澱の測定によって、及びイオン交換クロマトグラフィー(IE-HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー及び液状クロマトグラフィーを利用することによって、個々の結合体と比較し、2つの組み合わせの製剤の安定性の評価を行った。
【0111】
各液状製剤において、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体(対照群-1、#1〜#4)及び持続型インスリン結合体(対照群-2、#1〜#4)の濃度は、それぞれ10mg/ml及び61.1mg/mlである。
【0112】
【表4】
【0113】
図2〜3において、IE-HPLC及びRP-HPLC分析は、初期結果と比較した持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の残存率を示すArea%/Start Area%値を表す。その中で、図2は、持続型インスリン結合体のIE-HPLC及びRP-HPLC分析の結果を示し、一方、図3は、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体のIE-HPLC及びRP-HPLCの分析結果を示す。
【0114】
前記に示すように、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性を、持続型インスリン結合体又は持続型インスリン分泌性ペプチド結合体と比較した場合、持続型インスリン結合体は、組み合わせの製剤(3番製剤と4番製剤)及び単独の製剤で同様の純度と安定性を持つことが確認された(図2)。
【0115】
しかしながら、10mM酢酸ナトリウム、pH6.0、10mg/mlの塩化ナトリウム、10%(w/v)マンニトール、0.02%(w/v)ポリソルベート20(例:4番製剤)を含有する0.01%(w/v)メチオニンが液状製剤に含まれる場合、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の安定性が、製剤内にメチオニンを欠けている場合に比べ、増進したことを確認した(図3)。これは、メチオニンが、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の酸化を防ぐ働きをするためである。持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の単独製剤との比較は、過剰量の沈澱物のため、行うことができなかった。
【0116】
図4で示したように、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の単独製剤は、2週間以内にタンパク質の沈澱ができ、持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの製剤(3番製剤と4番製剤)は、溶解度が増加して、その中の沈澱が、4週まで相対的により長い期間阻害された。
【0117】
このような結果は、本発明の液状製剤の組成が、高濃度のインスリン分泌性ペプチド結合体及びインスリン結合体の組み合わせの高い安定性を維持させることができることを支持するものである。
【0118】
実施例4:等張化剤及び糖アルコールの濃度による持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性の評価
持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの安定性は、等張化剤として4.8mg/ml〜6.7mg/ml塩化ナトリウム、糖アルコールとして1〜2%(w/v)のマンニトール及びマンニトールを含む液状製剤の中の結合体の組み合わせと、前記実施例3で確認された液状製剤(10mM酢酸ナトリウム、pH6.0、10mg/ml塩化ナトリウム、10%(w/v)マンニトール、0.02%(w/v)ポリソルベート20、0.01%(w/v)メチオニン)中の組み合わせ間で比較された。
【0119】
持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの液状製剤は、表5に示す以下の組成物で製造し、25℃で4週間貯蔵した後、結合体の安定性を、IE-HPLC、SE-HPLC及びRP-HPLCにより測定した。
【0120】
表6〜7のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、初期結果と比較した持続型インスリン結合体及び持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせの残存率を示す(Area%/Start Area%)%の値を表す。その中で、表6は、持続型インスリン結合体のIE-HPLC及びRP-HPLC分析の結果を示し、一方、表7は、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体のIE-HPLC及びRP-HPLC分析の結果を示す。
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
前記に示すように、実施例2で確認された液状製剤(10mM酢酸ナトリウム、 pH6.0、10mg/ml塩化ナトリウム、10%(w/v)マンニトール、0.02%(w/v)ポリソルベート20、0.01%(w/v)メチオニン)に比べ、塩化ナトリウムの濃度が4.8mg/mlに減少し、マンニトールの濃度が1〜2%(w/v)に減少した場合(1番製剤、2番製剤)及び塩化ナトリウムの濃度が6.7mg/ml減少し、マンニトールの濃度が1〜2%(w/v)に減少した場合(3番製剤、4番製剤)、4つの全てのテスト製剤は、実施例3で確認された液状製剤と同程度の高い安定性を示した。
【0125】
このような結果は、本発明の液状製剤の組成物が、等張化剤として塩化ナトリウム及び糖アルコールとしてマンニトールを含むものであれば、等張化剤として塩化ナトリウム及び糖アルコールとしてマンニトールの濃度が低い場合でも、インスリン結合体及びインスリン分泌性ペプチド結合体の組み合わせに同程度の安定性を提供できるということを支持する。
【0126】
以上の説明を基に、本発明が属する当分野の当業者は、本発明の範囲と思想から逸脱することなく、様々な修正及び変更できるであろう。従って、前記具体例は、制限的ではないが、全ての態様において例示的なものであると理解されるべきであろう。本発明の範囲は、それらに先行している説明より、添付した特許請求の範囲によって定義される。従って、請求範囲の意味と範囲、又はそのような意味と範囲の等価概念を含む全ての変更と修正は、従って、請求項に含まれることを意図している。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 生理活性ペプチドであるインスリン及びインスリン分泌性ペプチド、並びにアルブミン-非含有安定化剤を含み、前記安定化剤は、緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含有する持続型インスリン及びインスリン分泌性ペプチドの複合体の液状製剤。
2. 前記インスリンは、インスリンと免疫グロブリンFc領域が結合した薬理学的有効量の持続型インスリンの結合体であり、インスリン分泌性ペプチドは、インスリン分泌性ペプチドが免疫グロブリンFc領域に連結された薬理学的有効量の持続型インスリン分泌性ペプチド結合体である上記1に記載の液状製剤。
3. 前記インスリンは、天然型インスリンと同様のアミノ酸配列を持つ上記1に記載の液状製剤。
4. 前記インスリンは、天然型インスリンのアミノ酸の置換、挿入 又は欠失によって生産されたインスリン誘導体又は天然型インスリンと同程度の活性を示すペプチドアゴニストである上記1に記載の液状製剤。
5. 前記インスリン分泌性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、エキセンジン-3、エキセンジン-4、その前駆体、アゴニスト、誘導体、断片、変異体及びそれらの組み合わせからなる群より選択される上記1に記載の液状製剤。
6. 前記インスリン分泌性ペプチド変異体は、イミダゾアセチル-エキセンジン-4である上記5に記載の液状製剤。
7. 前記免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgE又はIgMから由来するFc領域である上記2に記載の液状製剤。
8. 前記免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMからなる群より選択される免疫グロブリンから由来する異なる起源を持つドメインのハイブリットである上記7に記載の液状製剤。
9. 前記免疫グロブリンFc領域が、同様の起源を持つドメインからなる単鎖免疫グロブリンからなる2量体又は多量体である上記7に記載の液状製剤。
10. 前記免疫グロブリンFc領域が、IgG4Fc領域である上記7に記載の液状製剤。
11. 前記免疫グロブリンFc領域が、ヒト非糖鎖化IgG4Fc領域である上記10に記載の液状製剤。
12. 前記結合体が、非ペプチド性重合体又は組み換え技術を利用することによって連結された上記2に記載の液状製剤。
13. 前記非ペプチド性重合体が、ポリエチレングリコールである上記12に記載の液状製剤。
14. 前記非ペプチド性重合体が、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、ポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)などの生分解性高分子;脂質重合体;キチン類;ヒアルロン酸;及びそれらの組み合わせからなる群より選択される上記12に記載の液状製剤。
15. 前記薬理学的有効量の持続型インスリン結合体の濃度が、10mg/ml〜200mg/mlであり、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体の濃度が、0.5mg/ml〜150mg/mlである上記2に記載の液状製剤。
16. 前記糖アルコールが、マンニトール及びソルビトールからなる群より選択される1つ以上の上記1に記載の液状製剤。
17. 前記糖アルコールの濃度が、全体溶液に対して1%(w/v)〜15%(w/v)である上記16に記載の液状製剤。
18. 前記緩衝溶液が、クエン酸、酢酸又はリン酸緩衝溶液である上記1に記載の液状製剤。
19. 前記緩衝溶液の濃度が、全体溶液に対して5〜50mMである上記1に記載の液状製剤。
20. 前記緩衝溶液のpH範囲が、5〜6.5である上記1に記載の液状製剤。
21. 前記等張化剤は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムからなる群より選択される上記1に記載の液状製剤。
22. 前記等張化剤の濃度が、0.5mg/ml〜30mg/mlである上記1に記載の液状製剤。
23. 前記非イオン性の界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマーである上記1に記載の液状製剤。
24. 前記非イオン性界面活性剤の濃度が、0.001%(w/v)〜0.05%(w/v)である上記23に記載の液状製剤。
25. 前記安定化剤は、メチオニンをさらに含む上記1に記載の液状製剤。
26. 前記メチオニンの濃度が、全体溶液に対して0.005%(w/v)〜0.1%(w/v)である上記25に記載の液状製剤。
27. 前記安定化剤が、糖類、多価アルコール及びアミノ酸からなる群より選択される1つ以上の成分をさらに含む上記1に記載の液状製剤。
28. 前記インスリンとインスリン分泌性ペプチドが、それぞれポリエチレングリコールを通じて免疫グロブリン断片に連結された持続型インスリン結合体、持続型インスリン分泌性ペプチド結合体及びアルブミン-非含有安定化剤を含み、前記安定化剤が酢酸緩衝溶液、マンニトール、ポリソルベート20及び塩化ナトリウムを含む上記1に記載の液状製剤。
29. さらにメチオニンを含む上記1に記載の液状製剤。
30. a)インスリン及びインスリン分泌性ペプチドを製造すること;及び
b) a)段階で製造されたインスリン及びインスリン分泌性ペプチドを緩衝溶液、糖アルコール、非イオン性界面活性剤及び等張化剤を含む安定化剤と混合することを含む上記1〜29のいずれかに記載の液状製剤の製造方法。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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