(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軌道を走行する列車と、前記軌道の近傍に設置した地上装置と、前記列車及び前記地上装置と通信制御を行う運行管理装置とから構成される列車運行管理システムであって、
前記運行管理装置は、第1列車の目的地である到着点を設定した場合に、前記第1列車の出発点又は前記第1列車から前記到着点までの経路を抽出し、該経路上において走行の妨げとなる支障地点を抽出し、前記第1列車の進路上の最初の支障地点を支障点として抽出し、該支障点までの区間のみを前記第1列車の占有区間として進路鎖錠して前記支障点を設定し、前記第1列車以外の第2列車が前記占有区間内に進入できないように運行制御を行い、
前記最初の支障地点として前記到着点を抽出し、該到着点を前記支障点として設定した場合に、前記第1列車が前記到着点に到着した判定を行うまで前記支障地点の抽出を繰り返して行うことを特徴とする列車運行管理システム。
前記支障点には、前記地上装置である転てつ機に基づく支障点、踏切で発生する支障点、軌道が十字状に交差する個所で発生する支障点の何れかの固定型支障点を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の列車運行管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の列車運行管理システムの構成図であり、この列車運行管理システムは、軌道Rを走行する列車10と、各列車10及び軌道Rの近傍に設置した地上装置と通信制御を行う中央制御部20と、中央制御部20と接続され、地上装置である転てつ機30及び踏切装置40と、中央制御部20と接続され、各列車10と無線通信回線を介した通信を行う無線通信部50とから構成されている。
【0013】
転てつ機30及び踏切装置40と、中央制御部20とは、第1の通信ネットワークL1によって接続され、無線通信部50と、中央制御部20とは第2の通信ネットワークL2によって接続されている。
【0014】
なお、第1の通信ネットワークL1と第2の通信ネットワークL2は、有線ネットワークとして図示しているが、無線ネットワークであってもよく、更には第1の通信ネットワークL1と第2の通信ネットワークL2は1つのネットワークであってもよい。
【0015】
所定範囲の通信エリアを有する基地局である無線通信部50は、例えば一定距離間隔毎に設置されており、通信エリアが一部重複することで、列車10と中央制御部20間の通信が途切れることのないようになっている。列車10と中央制御部20との通信は、無線通信回線を介して行う以外に、軌道Rに沿ってループアンテナや敷設した漏洩同軸ケーブルを無線通信部50として通信を行うように構成することもできる。
【0016】
列車10には、無線通信部50と各種情報の送受信を行うアンテナ部11と、このアンテナ部11と接続した車上装置12とが設けられている。車上装置12によって処理される列車10の列車IDや走行速度、走行位置等を含む車上情報を、アンテナ部11、無線通信部50を介して、中央制御部20に随時に送信している。
【0017】
車上情報の走行速度は、例えば車軸に取り付けられた回転計が検出する回転数を基に算出される。また、走行位置は例えばキロ程として算出される。或いは、GPS端末を搭載して、緯度経度情報を走行位置として送信するようにしてもよい。更に、車上装置12は中央制御部20から送信される速度制御情報等の指令情報に従って列車10の速度制御等を行っている。
【0018】
列車運行管理システム内の何れかの駅等に設置される中央制御部20は、第1の通信ネットワークL1及び第2の通信ネットワークL2と接続された運行管理装置21と、この運行管理装置21と接続され、オペレータにより操作される操作端末22とから構成されている。
【0019】
運行管理装置21は図示しない演算処理部と記憶部を内蔵する所謂サーバ装置であり、列車10、転てつ機30及び踏切装置40から各種情報を随時受信し、これらの各種情報を記憶部で記憶し、後述する演算処理部による運行管理制御の演算処理を経て、各種の指令情報を随時に列車10及び転てつ機30に対して送信している。
【0020】
操作端末22は、運行管理装置21と接続した所謂クライアント装置であり、図示しないモニタ装置に表示される路線図等により、各列車10からの車上情報に基づく各列車の位置や運行管理状態や転てつ機30の鎖錠状態等の地上装置の状態を随時にモニタすることが可能である。更に、図示しないキーボード、マウス等の入力部を介して、各種の設定処理等をオペレータによって行うことができる。
【0021】
転てつ機30は、軌道Rの分岐個所のトングレールを移動させる転換部31と、この転換部31に対して操作指令を行い、鎖錠状態を保持するてっ査鎖錠部32とから構成されている。
【0022】
てっ査鎖錠部32は第1の通信ネットワークL1を介して、中央制御部20の運行管理装置21に接続されている。そして、てっ査鎖錠部32は運行管理装置21からの指令情報に基づいて、転換部31の転換操作を行うと共に、後述する定位、反位の鎖錠状態を示すてっ査鎖錠情報を中央制御部20の運行管理装置21に送信している。
【0023】
図2は軌道Rの分岐個所に配置された転てつ機30a、30bの説明図であり、転てつ機30aは主軌道R1と副軌道R2とが合流する個所に配置され、転てつ機30bは主軌道R1から副軌道R3が分岐する個所に配置されている。
【0024】
転てつ機30a、30bは、中央の直線状の主軌道R1に対して鎖錠状態が定位になるように配置されている。この定位状態とは、主軌道R1に沿って列車10が直進するようにトングレールを転換した状態であり、逆に主軌道R1に対して分岐する側である副軌道R2、R3に進むようにトングレールを転換した状態を反位の鎖錠状態という。
【0025】
また、転てつ機30a、30bの設置個所に図示した斜線は定位側を表しており、矢印は現在の定位、反位の鎖錠状態を示している。従って、
図2の説明図においては、転てつ機30a、30bは、何れも定位状態で鎖錠していることを示している。
【0026】
図3は中央制御部20の運行管理装置21における列車10の運行管理制御のフローチャート図である。
図4に示すように、例えば副軌道R2に自列車10aが存在する場合の自列車10aに対する運行管理制御について、
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
自列車10aを含む各列車10から送信される車上情報、及び転てつ機30から送信されるてっ査鎖錠情報を中央制御部20の運行管理装置21の記憶部で記憶する。そして、運行管理装置21の演算処理部で運行管理制御を行い、随時に軌道上の自列車10aを含む各列車10に対して指令情報を送信し、また、随時に転てつ機30の転換、鎖錠制御の指令情報を送信することで、自列車10aを設定した目的地である到着点まで安全に運行させることが可能である。
【0028】
運行管理制御のフローチャートである運行管理制御プログラムを中央制御部20の運行管理装置21にて起動後に、
図3のステップST1において、先ず自列車10aの進行方向にある出発点Aと到着点Bを設定し、経路を抽出する。
【0029】
これは操作端末22を用いて、モニタ画面を操作して設定入力してもよいし、予め条件を運行管理装置21に入力しておいてもよい。なお、出発点Aは自列車10aが存在する軌道上の走行位置であってもよく、この場合には到着点Bのみを入力することになる。このようにして出発点A、到着点Bを設定した後に、運行管理装置21の演算処理部において到着点Bまでの軌道R上を進行する経路を抽出する。
【0030】
続いて、ステップST2に移行し、抽出した経路上を自列車10aが走行するうえで、走行の妨げとなる支障地点を抽出し、これらの支障地点の中で自列車10aの現在地である出発点Aから出発して最初に存在する支障地点を支障点Sとして抽出する。
【0031】
この支障点Sは軌道上の他の列車10のように移動する移動型支障点Saと、軌道上で位置が固定された固定型支障点Sbに分けることができる。なお、到着点Bまでの間に移動型支障点Sa又は固定型支障点Sbが存在しない場合は、到着点Bが支障点Sとして抽出されることになる。
【0032】
移動型支障点Saは、自列車10aが走行する軌道Rを、接近する他列車10bや先行する他列車10cが該当し、時間と共に支障点位置が軌道R上を移動することになる。また、他の列車10自体を移動型支障点Saとして処理する他に、他の列車10が占有する占有区間Tを移動型支障点Saとして処理することもできる。
【0033】
これに対して、転てつ機30のような固定型支障点Sbは、軌道R上の所定位置に固定されている。更に、固定型支障点Sbは、転てつ機30に基づく支障点Sc、踏切装置40を設置した踏切Fで発生する支障点Sd、軌道Rが十字状に交差する個所で発生する支障点Se等に分けることができる。また、固定型支障点Sbはこれらに限定されるものではなく、軌道R上に検出可能な障害に対して適宜に発生するものである。
【0034】
転てつ機30に基づく支障点Scは、進行方向に対する定位、反位の鎖錠状態に応じて、支障点Scとして抽出されるか否かが変化する。転てつ機30の定位、反位の鎖錠状態による進行方向が、列車10の進行方向と一致しない状態、つまり現在の転てつ機30の鎖錠状態では転てつ機30を通過することができない場合に、支障点Scとして抽出し、転てつ機30の列車10側の軌道R上の所定個所に支障点Scが発生することになる。
【0035】
逆に、転てつ機30の定位、反位の鎖錠状態による進行方向が、列車10の進行方向と一致する状態、つまり現在の鎖錠状態で転てつ機30を通過することができる場合に、支障点Scとして抽出されることはない。
【0036】
このように、自列車10aが軌道R上を走行するうえで、転てつ機30、踏切Fや軌道Rが十字状に交差する個所が進行の妨げになる状態になった場合は、これらが支障地点として抽出され、軌道R上で自列車10aの現在地から最初に存在する支障地点を支障点Sとして抽出されることになる。また、自列車10aにとって走行の妨げにならない場合は、支障地点及び支障点Sとして抽出されることはない。
【0037】
図5は、
図3のステップST2の経路及び転てつ機30に基づく支障点Scとして支障点Sを抽出した際の路線図である。自列車10aの前方の転てつ機30aは、現在の定位、反位の鎖錠状態を示す矢印の向きから定位状態を保持していることが分かる。
【0038】
従って、転てつ機30aの鎖錠状態は、自列車10aの進行方向である反位の鎖錠状態と異なるので、転てつ機30aは自列車10aの進路上で最初の支障地点である支障点Scと判断され、支障点Sに該当することになる。この支障点Sは転てつ機30aの手前であって、後述する支障点Sとして確定し設定されると、副軌道R2上に支障点Sを表す三角形のマークとして提示されることになる。
【0039】
また、上述の踏切Fで発生する支障点Sdとは、踏切Fへの自列車10aの接近に伴って作動する遮断機が完全に車両や通行人の通行を遮断した後に、線路内に物体検出器等によって物体を検知した際に、踏切装置40から中央制御部20に緊急信号が送信されることで発生するものである。
【0040】
或いは、踏切Fに設けた緊急ボタンを押すことでも、踏切装置40から中央制御部20に緊急信号が送信され、支障地点が発生することになる。この支障地点が経路上の最初に存在する支障点Sとして抽出された場合には、支障点Sdとして踏切Fの自列車10a側の軌道R上の所定個所に発生することになる。最初の支障地点である支障点Sとして確定し設定されると、支障点Sc同様に軌道上に三角形のマークとして提示されることになる。
【0041】
また、軌道Rが十字状に交差する個所で発生する支障点Seとは、自列車10aが走行する軌道Rに対して、交差する交差軌道が存在し、この交差軌道を他の列車10による占有区間Tにより進路鎖錠されている場合に、発生するものである。この支障点Seは交差個所の自列車10a側の軌道R上の所定個所に発生することになり、支障点Sとして確定し設定されると、支障点Sc同様に軌道上に三角形のマークとして提示されることになる。
【0042】
これらの予め発生個所が固定されている固定型支障点Sbは、転てつ機30a、30bの設置位置、踏切Fの設置位置、軌道Rが十字状に交差する個所より、所定距離手前、例えば30m手前の位置として運行管理装置21で管理されることになる。
【0043】
同様に、移動型支障点Saは、接近する他列車10bの場合は車両の先端から例えば30m手前、先行する他列車10cの場合は車両の後端から例えば30m手前の位置として、運行管理装置21で管理されることになる。
【0044】
このように、最初の支障地点である支障点Sを抽出した後に、
図3のステップST3に移行する。そして、ステップST3では、支障点Sまでの進路が占有可能か否かを判定する。なお、進路の占有とは、従来の軌道Rを利用した軌道回路に基づくロック状態ではなく、ソフトウェア上で進路を鎖錠することを意味する。
【0045】
そして、支障点Sまでの進路を占有可能な場合には、
図3のステップST4に移行し、出発点Aから支障点Sまでの進路を占有し、この占有区間Tのみを進路鎖錠する。
【0046】
逆に、何かしらの理由により、支障点Sまでの進路を占有することができない場合、例えば支障点Sまでの距離が非常に短い場合等には、
図3のステップST4に移行することができず、ステップST2の支障点Sの抽出処理からステップST3の占有判定処理を繰り返し、占有可能となるまで自列車10aは待機することになる。
【0047】
自列車10aによって出発点Aから支障点Sまでの区間を、
図5で示す占有区間T1として進路鎖錠することで、占有区間T1に自列車10aが進入可能となる。
【0048】
そして、自列車10aによって進路鎖錠された占有区間T1に対して、他の列車10が進入できないように、他の列車10に対しては、占有区間T1の一部又は全部を含む占有区間Tの設定及び進路鎖錠を不許可とする運行制御を行うことになる。
【0049】
従って、他の列車10は、自列車10aが占有区間T1を通過して占有区間T1が解除されるまで、占有区間T1の一部又は全部を含む進路を占有区間Tとして設定することはできない。
【0050】
支障点Sまでの区間を占有区間T1として進路鎖錠すると、副軌道R2上に支障点Sを表す三角形のマークとして提示され、支障点Sが設定される。
【0051】
次に、
図3のステップST5に移行し、自列車10aの占有区間T1への進入を許可する指令情報を、運行管理装置21から無線通信部50及びアンテナ部11を介して自列車10aに送信する。
【0052】
自列車10aは受信した指令情報に基づいて、操作卓等に設けられたモニタ装置に出発点A、到着点B、経路及び支障点Sを含む走行情報を表示し、占有区間T1に進入し、走行を開始する。
【0053】
次に、
図3のステップST6に移行し、運行管理装置21は支障点Sの停止判定地点Pの設定を行う。この停止判定地点Pとは、支障点Sからの停止距離d手前に配置された地点であり、停止距離dは固定距離であってもいいし、自列車10aから送信される車上情報の走行速度等に応じて、適宜に停止距離dが可変になるようにしてもよい。この停止距離dは、停止判定地点Pから通常の減速パターンに従って停止した際に支障点Sを越えない距離であって、多少距離に余裕をもって設定されている。
【0054】
なお、停止距離dを自列車10aの走行速度等に応じて可変させる場合、運行管理装置21は停止判定地点Pの情報を随時自列車10aに送信する。そして、自列車10aは受信した停止判定地点Pの情報を操作卓等に設けられたモニタ装置に表示する。
【0055】
次に、
図3のステップST7に移行し、中央制御部20の運行管理装置21は自列車10aから随時送信される車上情報の走行位置に基づいて、自列車10aが支障点Sより所定の距離手前の停止判定地点Pを通過したか否かの監視を行う。
【0056】
自列車10aが停止判定地点Pに到着し、通過した場合には、
図3のステップST8に移行する。ステップST8では、自列車10aを減速して停車制御を行うように、運行管理装置21から減速停止処理を行う減速停止指令情報を自列車10aに対して送信する。
【0057】
自列車10aは受信した減速停止指令情報に基づいて車上装置12に記憶された減速パターン等に従って減速を開始して、転てつ機30aの支障点Sの手前で停止する減速停止処理を行うことになる。
【0058】
或いは、中央制御部20の運行管理装置21から送信する減速停止指令情報に、自列車10aの速度や位置等から算出した減速パターンを含ませ、自列車10aは受信した減速停止指令情報の減速パターンに従って支障点Sの手前で停止する減速停止処理を行うようにしてもよい。
【0059】
次に、
図3のステップST9に移行し、自列車10aが到着点Bに到着したか判定を行う。自列車10aが到着点Bに到着して停止すると、運行管理装置21は運行管理制御プログラムを終了する。
【0060】
また、
図3のステップST9において、到着点Bに到着していない場合には、
図3のステップST2に移行する。支障点Sが解除されずに、同じ支障位置の支障点Sが継続する場合は、このステップST2〜ステップST9のループ処理は、繰り返して行われることになる。自列車10aは直近の支障点Sの転てつ機30aの手前で停止する減速停止処理が継続することになり、自列車10aは転てつ機30aを通過することはできない。
【0061】
減速停止指令中に直近の支障点Sが解除され、この直近の支障点Sと異なる支障地点である新たな支障点Sを抽出した場合には、この新たな支障点Sに対して、
図3のステップST2〜ステップST7までの処理を行うことになる。
【0062】
このような場合であって、ステップST3において、新たな支障点Sまでの進路の占有が不可能である場合は、ステップST2の支障点Sの抽出処理からステップST3の占有判定処理を繰り返すことになる。
【0063】
また、ステップST3において、新たな支障点Sまでの進路の占有が可能である場合は、直近の支障点Sの設定を解除する。そして、ステップST4で現在の車両位置から新たな支障点Sまでの新たな占有区間T1を進路鎖錠して、新たな支障点Sを設定した後、ステップST6で新たな停止判定地点Pを設定する。
【0064】
また、ステップST7において、自列車10aが停止判定地点Pを通過していない場合には、ステップST10に移行して運行管理装置21から減速停止処理を指令中か否かの判定を行う。
【0065】
図3のステップST10は、ステップST8で運行管理装置21から減速停止処理を指令した後に新たな支障点S及び新たな停止判定地点Pを設定したときに、新たな停止判定地点Pを未通過である自列車10aに対して、減速停止処理を解除するためのステップである。
【0066】
そして、
図3のステップST10で、運行管理装置21から減速停止処理を指令中と判定された場合には、ステップST11に移行する。ステップST11において、運行管理装置21から減速停止処理の解除を行う減速停止解除指令情報を自列車10aに対して送信する。自列車10aは受信した減速停止解除指令情報に基づいて減速停止処理を解除して、通常走行に戻ることになる。その後、ステップST2に戻ることになる。
【0067】
図3のステップST10では、運行管理装置21から減速停止処理を指令中でないと判定された場合もステップST2に戻ることになり、これらのループ処理も繰り返して行われることになる。
【0068】
自列車10aが支障点Sの停止判定地点Pを通過していない場合、つまり停止判定地点Pに向けて自列車10aが走行中である場合には、ステップST2〜ステップST7、ステップST10からステップST2に戻る処理を繰り返すことになり、このループ処理の際に、
図6に示すように踏切Fで発生する支障点Sdが
図5の支障点Scの手前で割り込んで発生することがある。
【0069】
このような場合には、割り込んで発生した支障点Sdが新たな支障点Sとなる。同時に占有区間T1も支障点Sdまでの占有区間Tに変更され、割り込む前の支障点Sの設定を解除し、新たな占有区間T1を進路鎖錠して新たな支障点Sを設定した後、新たな停止判定地点Pを設定して自列車10aが占有区間T1を走行することになる。
【0070】
そして、踏切Fで発生する支障点Sdすなわち支障点Sが解除されない場合は、
図3のステップST2〜ステップST9のループ処理を繰り返すことになり、最終的に自列車10aは支障点Sである踏切Fの手前で停止することになる。
【0071】
図7は、
図5における自列車10aが占有区間T1を走行し、停止判定地点Pに到着した際の路線図である。自列車10aが転てつ機30aの接近に伴って、運行管理装置21からの指示により転てつ機30aを定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換した状態を示している。
【0072】
運行管理装置21は他の列車10の進路鎖錠によって転てつ機30aが定位の鎖錠状態を保持していないことを条件として、自列車10aが転てつ機30aに接近した場合に、自列車10aを通過可能とするために、転換部31のトングレールを移動させる指令情報を転てつ機30aに送信し、転てつ機30aを定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換させる。
【0073】
このように制御することで、転てつ機30aの支障点Sは解除され、繰り返しなされる
図3のステップST2〜ステップST6に従って、転てつ機30bの支障点Scを次の支障点Sとして新たに抽出することになる。
【0074】
転てつ機30aの支障点Sの設定を解除し、新たな支障点Sまでの占有区間T1を進路鎖錠することで、新たな支障点Sが設定される。そして、新たな停止判定地点Pが設定され、自列車10aは占有区間T1の走行を開始することになる。
【0075】
図8及び
図9は、自列車10aが停止判定地点Pに到着した時点で、例えば副軌道R3方面から副軌道R2方面に走行する他列車10bが、既に主軌道R1を走行する占有区間Tである占有区間T2を進路鎖錠している状態の路線図である。
【0076】
他列車10bが、既に他列車10bの占有区間T2を進路鎖錠している場合には、自列車10aは停止判定地点Pを通過後に、減速停止処理を開始することになる。そして、転てつ機30aの支障点Sが解除されない限り、自列車10aは支障点Sの手前で停車するように減速停止制御を行うことになる。
【0077】
他列車10bの占有区間T2は、他列車10bが通過することで随時、開放されてゆくことから、転てつ機30aを他列車10bが通過することで、転てつ機30aは定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換することが可能となる。
【0078】
中央制御部20の運行管理装置21からの指示により、転てつ機30aを定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換することで、転てつ機30aの支障点Sは解除される。そして、
図7の路線図と同様に転てつ機30bの支障点Scを、新たな支障点Sとして抽出することになる。
【0079】
中央制御部20の運行管理装置21は、転てつ機30aの支障点Sの設定を解除し、新たな支障点Sまでの占有区間T1のみを進路鎖錠して、新たな支障点Sを設定した後、新たな停止判定地点Pが設定され、占有区間T1の走行を開始することになる。
【0080】
図10〜
図12は、例えば自列車10aの出発点A、主軌道R1上の到着点Bを設定し、副軌道R2方面から副軌道R3方面に走行する他列車10cが、既に主軌道R1を走行する他列車10cの占有区間Tである占有区間T3を占有している状態の路線図である。
【0081】
中央制御部20の運行管理装置21は、自列車10aの進路上で最初の支障地点である支障点Sを抽出し、支障点Sまでの占有区間T1を進路鎖錠して支障点Sを設定した後、運行管理装置21から走行許可の指令情報を自列車10aに送信する。この指令情報を受信した自列車10aは走行を開始する。
【0082】
そして、停止判定地点Pを設定し、自列車10aが走行して停止判定地点Pを通過した際に、他列車10cが転てつ機30aを通過していない場合は、転てつ機30aの鎖錠状態は定位状態から転換されず、支障点Sが解除されることはない。従って、自列車10aは支障点S手前で停止することになる。
【0083】
図11に示すように、他列車10cが転てつ機30aを通過することで、転てつ機30aは定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換することが可能となる。運行管理装置21からの指示により転てつ機30aを定位の鎖錠状態から反位の鎖錠状態に転換することで、転てつ機30aの支障点Sは解除される。
【0084】
そして、運行管理装置21は他列車10cの移動型支障点Saを新たな支障点Sとして抽出することになり、転てつ機30aの支障点Sの設定を解除する。運行管理装置21は移動型支障点Saである新たな支障点Sまでの占有区間T1を進路鎖錠して、新たな支障点Sを設定する。
【0085】
更に新たな停止判定地点Pが設定され、自列車10aは占有区間T1の走行を開始することになる。この移動型支障点Saは移動しているため、停止判定地点Pも他列車10cの移動に合わせて移動することになる。
【0086】
従って、移動型支障点Saを支障点Sとした場合には、移動型支障点Saである他列車10cが停車を続けた場合に、自列車10aは停止判定地点Pを通過するとステップST8に移行し、運行管理装置21から減速停止処理の指令を自列車10aに対して送信する。
【0087】
減速停止処理の指令を受信した自列車10aは、車上装置12に記憶された減速パターン等に従って、減速停止処理を開始して他列車10cの手前で自列車10aも停車することになる。
【0088】
また、他列車10cに自列車10aが追従している間に、他の固定型支障点Sbが割り込んで発生した場合は、固定型支障点Sbが新たな支障点Sとして抽出されることになる。
【0089】
図12の路線図においては、他列車10cがこのまま走行すると最後の支障地点である到着点Bが割り込みで支障点Sとして発生することが予想され、到着点Bまでの占有区間T1を進路鎖錠して、到着点Bを支障点Sとして設定した後、停止判定地点Pを設定することで、到着点Bに自列車10aは到着することができる。
【0090】
列車運行管理システムの変形例を、例えば
図13に示すように、踏切Fで発生する支障点Sdが
図5の支障点Scの手前で割り込んで発生した場合を例示して説明する。図示するように、既に設定されている転てつ機30aの支障点S、占有区間T1及び停止判定地点Pを保持したままで、踏切Fで発生した支障点Sdが割り込み処理を行うようにする。
【0091】
このような場合には、
図13に示す転てつ機30aの支障点Sは解除せずに、割り込んで発生した支障点Sdを支障点S’として設定する。占有区間T1は、自列車10aから支障点S’を含んだ支障点Sまでを進路鎖錠しているので、支障点S’のために改めて進路鎖錠する必要はない。
【0092】
従って、支障点S’に対する停止判定地点P’を設定して、運行管理装置21は停止判定地点P’に基づいた減速停止処理の指令又は減速停止処理解除の指令の制御を行うことになる。
【0093】
また、支障点S’が解除された場合は、運行管理装置21は新たに転てつ機30aの支障点Sの抽出、占有区間T1の進路鎖錠、支障点S及び停止判定地点Pの設定を行わずに、保持している支障点S等の情報に基づいて自列車10aは通常の制御に戻ることが可能である。
【0094】
このように、各列車10は、列車運行管理システムにより進路上に最初に存在する支障点Sまでの占有区間T1のみを進路鎖錠し、停止判定地点Pを設定して、占有区間T1を走行する運行管理制御を繰り返すことで、他の列車10による進路鎖錠に基づく無駄な通過待ちを防止することができる。そして、自列車10aは、他の列車10が到着するまでに通過できる区間を、通過待ちすることなく走行することができる。
【0095】
最初に通過区間に到達する列車10に対して、優先的に進路鎖錠して通過させる運行管理制御を行うと共に、安全に各列車10を到着点Bまで移動させることが可能である。
【0096】
また、軌道回路を利用せずに運行管理装置21のソフトウェア上で各列車10の運行管理制御を行うため、任意の地点を出発点A、到着点Bとして設定することが可能である。