特許第6686268号(P6686268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6686268シリンジ用組立体、シリンジ用組立体包装体、外筒用シールキャップおよびプレフィルドシリンジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686268
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】シリンジ用組立体、シリンジ用組立体包装体、外筒用シールキャップおよびプレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-547801(P2016-547801)
(86)(22)【出願日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2015073416
(87)【国際公開番号】WO2016039111
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-185429(P2014-185429)
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】福士 景子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 吉彦
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/114917(WO,A1)
【文献】 特開昭61−106172(JP,A)
【文献】 特開2010−131153(JP,A)
【文献】 特開2006−314554(JP,A)
【文献】 米国特許第5000994(US,A)
【文献】 特開昭64−70055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、
前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面には、ポリパラキシリレン被膜が設けられており、
前記外筒に前記シールキャップが装着され、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、かつ、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面と前記外筒の前記穿刺針取付部の外面は、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっており、かつ、
前記シールキャップは、弾性材料により形成され、
前記外筒の前記穿刺針取付部は、環状頭部を有し、
前記外筒の前記穿刺針取付部への前記シールキャップの装着時に、前記穿刺針取付部収納部の内面が、前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面に合わせて弾性変形し、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面とが、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっていることを特徴とするシリンジ用組立体。
【請求項2】
前記外筒の前記穿刺針取付部は、前記環状頭部の基端に形成された環状凹部とを備え、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部は、内面に形成された突出部を備え、かつ、前記穿刺針取付部の前記環状凹部と前記穿刺針取付部収納部の前記突出部とが係合し、かつ、両者が前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっている請求項1に記載のシリンジ用組立体。
【請求項3】
前記シールキャップの前記突出部は、頂点部と、前記頂点部より先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する先端側傾斜部を有し、前記先端側傾斜部は、前記環状頭部の外面に前記ポリパラキシリレン被膜を介して押し付けられて密着した状態となっている請求項2に記載のシリンジ用組立体。
【請求項4】
前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されている請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項5】
前記外筒は、環状ポリオレフィンにより形成されており、前記シールキャップは、熱可塑性エラストマーにより形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられ、かつ、環状頭部と前記環状頭部の基端に形成された環状凹部とを有する筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着される外筒用シールキャップであって、
前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部を収納する穿刺針取付部収納部と前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記穿刺針取付部収納部の内面に形成された突出部とを備え、さらに、前記穿刺針取付部収納部の内面には、ポリパラキシリレン被膜が形成されており、
前記シールキャップが前記外筒に装着された際に、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、さらに、前記突出部と前記環状凹部とが係合したとき、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の外面とが前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となるものであり、かつ、
前記シールキャップは、弾性材料により形成され、
前記外筒の前記穿刺針取付部への前記シールキャップの装着時に、前記穿刺針取付部収納部の内面が、前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面に合わせて弾性変形し、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面とが、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となることを特徴とする外筒用シールキャップ。
【請求項8】
前記突出部は、頂点部と、前記頂点部より先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する先端側傾斜部を有し、前記シールキャップが前記外筒に装着された際に、前記先端側傾斜部は、前記環状頭部の外面に前記ポリパラキシリレン被膜を介して押し付けられて密着した状態となる請求項7に記載の外筒用シールキャップ。
【請求項9】
前記シールキャップは、熱可塑性エラストマーにより形成されている請求項7または8のいずれかに記載の外筒用シールキャップ。
【請求項10】
複数の請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、
前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されていることを特徴とするシリンジ用組立体包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外筒用シールキャップ、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体が複数収納された包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
インシュリンシリンジなどの少量の薬剤投与用シリンジとして、外筒先端部に穿刺針が固定されているものが使用されている。そして、このようなタイプのシリンジを用いて、予め内部に薬剤を充填したプレフィルドシリンジを構成する場合、針先をシールする必要がある。このような、針先シール可能なシールキャップとしては、例えば、特表2010−534546(特許文献1)、USP6719732(特許文献2)のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−534546
【特許文献2】USP6719732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシールキャップ(シールド10)は、注射器(特許文献1の図2に一部が示される)の末端を覆うようになっている。注射器3の末端は、針6が固定されるハブ2を備える。シールド10は、開口した基端11と、閉塞した末端12と、基端11から閉塞した末端12まで延在する壁13とを有する。壁13の内面14は、注射器3の末端の一部を収容する空洞15を画定する。例えば、使用前、注射装置を輸送する間、該末端を保護するためにシールド10が注射器の末端に固定される場合、内面14の一部14aは、注射器3の末端のハブ2と接触するようになっている。
【0005】
そして、特許文献1の図3に示すものでは、壁13の内面14の一部14aが複数の溝16を備えている。溝16は、一部14aの周縁に沿って規則的に配置され、それらは、シールド10の縦軸線Aに対して平行である。それらによって、ハブ2にシールドを組付ける間、空気が流れることが可能になる。シールドの粘着面がより小さくなり、したがって、組付けが容易になり、シールド10と注射装置3との双方のそれぞれの縦軸線AとB(図2を参照)を有し交絡を維持することが容易になる。従って、本発明のシールド10は、注射装置3の先端に完全にかつ正確に固定される。壁13の内面14の一部14aにおける特有の粗さによって形成された溝により、それから、注射装置3の使用時に、シールド10を注射装置3の先端から取り外すのがより簡単になる。
【0006】
特許文献2(USP6719732)のシールキャップ(シリンジ針を保護する装置)は、特許文献2の図1〜5に示すように、開放基端22と閉鎖末端24の間に長手方向に伸びる弾性針キャップ20は、横方向の壁28および端壁30によって区切られる内部ハウジング26を有する。さらに、第1および第2の部分40とハウジング26のうちの42との間に、近位端22に向かっている第2部分42の端に、内側に膨張するように形成された環状ビード70(リブ)が設けられている。そして、この環状ビード70の変形性を改善するため、およびに加圧水蒸気の通過を容易にするために、ビード70には長手方向に伸びる4つのスロット72が設けられている。
【0007】
特許文献1のものでは、シールキャップ(シールド10)の内面と外筒の先端部の外面とが直接密着しているため、シールド10を外筒に装着したまま保管すると、シールド10が外筒に張り付くおそれがあった。さらに、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合、シールド10が外筒に押しつけられるため、シールド10の内面と外筒の先端部の外面とが直接密着している面積が増え、シールド10が外筒により張り付き易くなるおそれがあった。
【0008】
特許文献2のものでは、シールキャップ(弾性針キャップ20)の内面に内側に膨張するように形成された環状ビード70(リブ)を備え、さらに、ビード70には、長手方向に伸びる4つのスロット72が設けられている。そして、弾性針キャップ20の内面と外筒の先端部の外面は直接密着する部分が多く、弾性針キャップ20を外筒に装着したまま保管すると、弾性針キャップ20が外筒に張り付くおそれがあった。さらに、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合、弾性針キャップ20が外筒に押しつけられるため、弾性針キャップ20の内面と外筒の先端部の外面とが直接密着している面積が増え、弾性針キャップ20が外筒により張り付き易くなるおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、外筒にシールキャップを装着したまま保管したり、シールキャップを装着したシリンジ用組立体の滅菌方法として、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を選択した場合においても、シールキャップの内面と外筒の先端部の外面間の張り付きがなく、キャップの離脱障害を生じることがない外筒用シールキャップ、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジおよびシリンジ用組立体が複数収納された包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面には、ポリパラキシリレン被膜が設けられており、前記外筒に前記シールキャップが装着され、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、かつ、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面と前記外筒の前記穿刺針取付部の外面は、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっており、かつ、前記シールキャップは、弾性材料により形成され、前記外筒の前記穿刺針取付部は、環状頭部を有し、前記外筒の前記穿刺針取付部への前記シールキャップの装着時に、前記穿刺針取付部収納部の内面が、前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面に合わせて弾性変形し、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面とが、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっているシリンジ用組立体。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
上記のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられ、かつ、環状頭部と前記環状頭部の基端に形成された環状凹部とを有する筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着される外筒用シールキャップであって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部を収納する穿刺針取付部収納部と前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記穿刺針取付部収納部の内面に形成された突出部とを備え、さらに、前記穿刺針取付部収納部の内面には、ポリパラキシリレン被膜が形成されており、前記シールキャップが前記外筒に装着された際に、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、さらに、前記突出部と前記環状凹部とが係合したとき、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の外面とが前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となるものであり、かつ、前記シールキャップは、弾性材料により形成され、前記外筒の前記穿刺針取付部への前記シールキャップの装着時に、前記穿刺針取付部収納部の内面が、前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面に合わせて弾性変形し、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の前記環状頭部の外面とが、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となることを特徴とする外筒用シールキャップ。
【0013】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
複数の上記のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されているシリンジ用組立体包装体。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態のプレフィルドシリンジの正面図である。
図2図2は、図1のA−A線断面図である。
図3図3は、図1および図2のプレフィルドシリンジに用いられている本発明のシリンジ用組立体の拡大断面図である。
図4図4は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている本発明の外筒用シールキャップの拡大正面図である。
図5図5は、図4に示した外筒用シールキャップの底面図である。
図6図6は、図4のB−B線拡大断面図である。
図7図7は、図1および図2のプレフィルドシリンジおよび図3のシリンジ用組立体に用いられている外筒の正面図である。
図8図8は、図7のC−C線拡大断面図である。
図9図9は、図7に示した外筒の斜視図である。
図10図10は、本発明の外筒用シールキャップの作用を説明するための説明図である。
図11図11は、本発明のシリンジ用組立体包装体の斜視図である。
図12図12は、図11に示したシリンジ用組立体包装体の内部形態を説明するための説明図である。
図13図13は、図11に示したシリンジ用組立体包装体の正面図である。
図14図14は、図13に示したシリンジ用組立体包装体の平面図である。
図15図15は、図14のD−D線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の外筒用シールキャップ、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体、外筒用シールキャップが装着されたシリンジ用組立体を用いたプレフィルドシリンジを図面に示す実施形態を用いて説明する。
【0016】
本発明のプレフィルドシリンジ1は、シリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤8とからなる。
【0017】
そして、本発明のシリンジ用組立体(言い換えれば、キャップが装着された穿刺針付き外筒)10は、外筒2と、外筒2に装着されたシールキャップ3とからなる。
外筒2は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた筒状の穿刺針取付部22と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針取付部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える。
シールキャップ3は、閉塞先端部31と、開口基端部32と、開口基端部32より先端側に位置し穿刺針取付部22の先端部を収納する穿刺針取付部収納部35と、穿刺針取付部収納部35の先端と連続し、穿刺針6を収納する穿刺針収納部34とを有する中空部30と、穿刺針収納部34に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33とを備える。
【0018】
そして、シールキャップ3の穿刺針取付部収納部35の内面には、ポリパラキシリレン被膜が設けられている。なお、ポリパラキシリレン被膜は、シールキャップ3の穿刺針取付部収納部35の内面ではなく外筒2の穿刺針取付部22の外面に設けてもよい。さらには、ポリパラキシリレン被膜は、穿刺針取付部収納部35の内面と外筒2の穿刺針取付部22の外面の両者に儲けてもよい。さらに、このシリンジ用組立体10では、外筒2にシールキャップ3が装着され、穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、かつ、シールキャップ3の穿刺針取付部収納部35の内面と外筒2の穿刺針取付部22の外面は、ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっている。
【0019】
プレフィルドシリンジ1は、図1および図2に示すように、外筒2と、穿刺針の針先をシールするように外筒2に装着されたシールキャップ3とからなるシリンジ用組立体10と、シリンジ用組立体10内に収納され、かつシリンジ用組立体10内を液密に摺動可能なガスケット4と、シリンジ用組立体10とガスケット4により形成された空間内に充填された薬剤8と、ガスケット4に取り付けられたもしくは使用時に取り付けられるプランジャー5とからなる。
【0020】
そして、薬剤8は、外筒2とガスケット4とシールキャップ3内により形成される空間内に充填されている。
充填される薬剤8としては、どのようなものでもよいが、例えば、高濃度塩化ナトリウム注射液、ミネラル類、ヘパリンナトリウム水溶液、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリンのような抗血栓剤、インスリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正用電解質、抗ウイルス剤、免疫賦活剤等、いかなるものでも良い。
【0021】
外筒2は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられた筒状(中空状)の穿刺針取付部22と、外筒本体部21の基端部に設けられたフランジ23と、基端部が穿刺針取付部22内に挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える。穿刺針6は、先端に穿刺用針先61を有する。穿刺針6の基端部は、穿刺針取付部22の中空部内に挿入されかつ固定されるとともに、穿刺針6の内部は、外筒2の内部空間20と連通している。なお、穿刺針6は、予め成形した外筒2の穿刺針取付部22の中空部内に挿入し、接着剤、熱溶着等により穿刺針取付部22に固定してもよい。また、外筒2に穿刺針6を直接インサート成形することで固定してもよい。インサート成形の場合、外筒2を成形することで、穿刺針取付部22は、穿刺針6が挿入された筒状(中空状)となり、穿刺針6は、その基端部が穿刺針取付部22の中空部内に挿入されかつ固定されたものとなる。
【0022】
外筒2は、透明もしくは半透明である。外筒本体部21は、ガスケット4を液密かつ摺動可能に収納するほぼ筒状の部分である。また、穿刺針取付部22は、外筒本体部の先端部(肩部)より、前方に突出するとともに、外筒本体部より小径の中空筒状となっている。また、穿刺針取付部22は、図7および図8に示すように、先端に設けられた環状頭部24と、環状頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径する短いテーパー状縮径部25と、テーパー状縮径部25の基端部と外筒本体部21の先端部とを連結する連結部27とを有し、テーパー状縮径部25により、環状凹部が形成されている。環状頭部24には、先端面から基端側に向かって窪んだ凹所26と、凹所26内に位置し、先端側に頂点を有する中空の円錐状部とが形成されている。連結部27の外面には、外筒2の軸方向に延びる複数の溝が形成されている。なお、環状凹部は、テーパー状でなく、環状頭部24の基端との間に段差が形成されるように単に縮径した形状であってもよい。また、連結部27を省略し、環状凹部(テーパー状縮径部25)の基端部と外筒本体部21の先端部とが直接連結されていてもよい。また、環状頭部24は、凹所26および円錐状部を省略した中空の円柱形状(円筒形状)でもよい。
【0023】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマーのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン(例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー)が好ましい。
穿刺針6としては、先端に穿刺用針先61を有する中空状のものが用いられる。穿刺針6の形成材料としては、金属が一般的である。金属としては、ステンレス鋼が好適である。
【0024】
ガスケット4は、図1および図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施形態では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒2の内面に液密に接触する。また、ガスケット4の先端面は、外筒2の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒2の先端内面形状に対応した形状となっている。
【0025】
ガスケット4の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、イソプレンゴム、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0026】
そして、ガスケット4には、その基端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー5の先端部に形成された突出部52の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー5は、ガスケット4より離脱しない。なお、プランジャー5は、取り外しておき、使用時に取り付けるようにしてもよい。また、プランジャー5は、先端の円盤部より前方に筒状に突出する突出部52を備え、突出部の外面にはガスケット4の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー5は、断面十字状の軸方向に延びる本体部51と、基端部に設けられた押圧用の円盤部53を備えている。
【0027】
本発明の外筒用シールキャップ3は、外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に設けられ、かつ、環状頭部24と環状頭部24の基端に形成された環状凹部25とを有する筒状の穿刺針取付部22と、先端に穿刺用針先61を有し、穿刺針取付部22に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針6とを備える外筒に装着されて用いられるものである。
【0028】
シールキャップ3は、閉塞先端部31と、開口基端部32と、穿刺針取付部22を収納する穿刺針取付部収納部35と穿刺針取付部収納部35に連続する穿刺針収納部34とを有する中空部30と、穿刺針収納部34に収納された穿刺針6の穿刺用針先61が刺入可能な刺入可能部33と、穿刺針取付部収納部35の内面に形成された突出部36とを備える。そして、穿刺針取付部収納部35の内面には、外筒2の穿刺針取付部22との張付きを抑制するポリパラキシリレン被膜9が形成されている。そして、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入しシールされ、さらに、突出部36と外筒2の穿刺針取付部22の環状凹部25とが係合し、かつ、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とがポリパラキシリレン被膜9を介して密着した状態となる。
【0029】
具体的には、シールキャップ3は、開口基端部32より所定長先端側に位置する内面に設けられた突出部36を備えている。突出部36は、最も突出した頂点部36aと、頂点部36aより先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する傾斜部(テーパー部)36bとを有している。特に、この実施例は、突出部36が、環状突出部となっており、傾斜部36bは、穿刺針取付部収納部35の内径が先端方向に向かって縮径するテーパー部となっている。
【0030】
頂点部36aにおける穿刺針取付部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針取付部22の環状凹部25の先端部の外径より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、突出部36と環状凹部25とが係合する。また、先端側傾斜部36bは、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された状態で、環状凹部24よりも先端側まで延びている。そして、先端側傾斜部36bの少なくとも基端部近傍における穿刺針取付部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より若干小さいものとなっている。これにより、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、先端側傾斜部36bは、環状頭部24の外面にポリパラキシリレン被膜9を介して押し付けられて密着した状態となり、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。
【0031】
なお、この実施形態のシールキャップ3では、先端側傾斜部の先端部における穿刺針取付部収納部35の内径が、外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より若干小さくなっている。このため、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、先端側傾斜部36bは、その内面全体が環状頭部24の外面にポリパラキシリレン被膜9を介して押し付けられて密着した状態となる。これにより、ポリパラキシリレン被膜9を介して環状頭部24の外面に押し付けられて密着する先端側傾斜部36bの面積が大きくなり、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がさらに少なくなる。
【0032】
また、この実施形態のシールキャップ3では、突出部36は、穿刺針取付部収納部35の内面に沿って環状に形成されている。このため、突出部36が穿刺針取付部収納部35の内面に間欠的に形成されている場合と比べて、ポリパラキシリレン被膜9を介して環状頭部24の外面に押し付けられて密着する先端側傾斜部36bの面積が大きくなり、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がさらに少なくなる。なお、突出部36は、穿刺針取付部収納部35の内面に間欠的に形成されていてもよい。
【0033】
また、この実施形態のシールキャップ3では、さらに突出部36は、頂点部36aより開口端(基端)方向に向かって延びかつ突出高さが開口端(基端)方向に向かって漸次低下する基端側傾斜部36cを有している。これにより、シールキャップ3を外筒2の穿刺針取付部22に装着する際、突出部36の頂点部36aが穿刺針取付部22の環状頭部24を先端側から乗り越え易くなる。
特に、この実施形態では、突出部36が、環状突出部となっており、基端側傾斜部36cは、穿刺針取付部収納部35の内径が基端方向に向かって拡径する基端側テーパー部となっている。なお、この実施形態のシールキャップ3では、基端側傾斜部(基端側テーパー部)36cは、先端側傾斜部(先端側テーパー部)36bに比べて、短く、かつテーパー角が大きいものとなっている。
【0034】
また、この実施形態のシールキャップ3では、穿刺針取付部収納部35は、突出部36の先端側傾斜部36bの先端部より先端方向に向かって所定長(具体的には穿刺針収納部34の基端部まで)延びる直線部36dを有している。この直線部36dにおける穿刺針取付部収納部35の内径は一定、かつ、外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より若干小さくなっている。このため、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、直線部36dは、環状頭部24の外面にポリパラキシリレン被膜9を介して押し付けられて密着した状態となる。なお、直線部36dにおける穿刺針取付部収納部35の内径は、外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より大きくてもよい。また、直線部36dを省略し、先端側傾斜部36bを穿刺針収納部34の基端部まで延ばしてもよい。
【0035】
そして、シールキャップ3の外筒2からの離脱抵抗は、1.5N〜20Nであることが好ましく、特に、5〜8Nが好ましい。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱を防止しながら、プレフィルドシリンジ1の使用時に、シールキャップ3を外筒2から簡単に離脱させることができる。
また、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bの傾斜角度(テーパー角度)は、1〜10度が好ましく、特に、1〜6°が好ましい。また、突出部36の頂点部の突出高さは、0.1〜0.5mmであることが好ましく、特に、0.05〜0.25mmが好ましい。
【0036】
また、この実施例では、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bの基端部は、外筒2の穿刺針取付部22の環状凹部24の周囲に位置し、先端側傾斜部36bの少なくとも基端部近傍における穿刺針取付部収納部35の内径は、環状凹部24の外径より若干小さいものとなっている。よって、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bは、環状凹部25の外面にポリパラキシリレン被膜9を介して押し付けられて密着するものとなっている。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱をより少なくすることができる。
【0037】
また、この実施例では、環状凹部25は、環状頭部24の基端に設けられ、基端方向に向かって縮径するテーパー状縮径部からなる。これにより、シールキャップ3を外筒2から離脱させる際、シールキャップ3の突出部36が、環状凹部25に沿って外側に押し拡げられ、環状頭部24を乗り越え易くなる。
そして、シールキャップ3の突出部36の先端側傾斜部36bの環状頭部24の外面にポリパラキシリレン被膜9を介して押し付けられて密着する部分の、環状頭部24の軸方向における長さは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、特に、0.3〜1.5mmが好ましい。これにより、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱を少なくするとともに、シールキャップ3の外筒2からの離脱抵抗が必要以上に大きくなるのを抑えることがでる。
【0038】
さらに、この実施形態のシールキャップ3では、中空部30は、シールキャップ3の開口基端部32から穿刺針取付部収納部35(突出部36)の基端にかけて形成され、ほぼ同一内径にて延びる穿刺針取付部導入部38を備えている。穿刺針取付部導入部38は、穿刺針取付部収納部35の最大内径よりも若干広い内径を有しており、外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より若干大きいものとなっている。このため、シールキャップ3を外筒2の穿刺針取付部22に装着する際の穿刺針取付部22の導入部として機能する。また、穿刺針取付部導入部38は、穿刺針取付部収納部35(突出部36)の基端との境界に、開口基端部32方向を向いて起立した環状起立面39を有している。よって、シールキャップ3の穿刺針取付部導入部38内に、外筒2の先端部が挿入されると、外筒2の穿刺針取付部22は、穿刺針取付部導入部38内に進入した後、図10に示すように、穿刺針取付部22の環状頭部24の環状先端面が、上記の環状起立面39に当接するものとなり、この状態にて、穿刺針6は、シールキャップ3の中心軸とほぼ平行なものとなり、穿刺針収納部34の小径先端部34a内に進入する状態となる。
【0039】
なお、穿刺針取付部導入部は、少なくとも基端部の内径が外筒2の穿刺針取付部22の環状頭部24の外径より大きければ穿刺針取付部22の導入部として機能する。このため、上述した実施形態とは異なり、穿刺針取付部導入部の内径は先端方向に向かって縮径していてもよい。また、穿刺針取付部導入部から環状起立面39を省略し、穿刺針取付部導入部の内径が穿刺針取付収納部35(突出部36)の基端に向かって縮径するようにしてもよい。これにより、穿刺針取付部22の環状頭部24の環状先端面が、穿刺針取付部収納部35(突出部36)の基端と穿刺針取付部導入部の境界まで進入した際に、穿刺針6は、シールキャップ3の中心軸とほぼ平行なものとなり、穿刺針収納部34の小径先端部34a内に進入する状態となる。
【0040】
この実施形態のシールキャップ3では、穿刺針収納部34は、基端が穿刺針取付部収納部35の直線部36dの先端に位置し、先端に向かって急激に内径が縮径するものとなっている。さらに、穿刺針収納部34の基端部は、内側に向かって湾曲する湾曲環状面となっており、穿刺針6の刺入を防止するとともに先端への誘導を確実なものとしている。穿刺針収納部の本体部(中央部)は、先端に向かって縮径するテーパー部となっており、その先端に、穿刺針6の外径より、若干大きい内径を有し、ほぼ同一内径にて延びる小径先端部34aが形成されている。
【0041】
また、図10に示すように、この実施形態のシールキャップは、外筒2の穿刺針取付部22が、シールキャップ内に挿入され、穿刺針取付部22の環状頭部24の環状先端面が、シールキャップ3の穿刺針取付部導入部38の環状起立面39に当接した状態にて、穿刺針6の穿刺用針先61は、穿刺針収納部34の小径先端部34a内に進入し、かつ、刺入可能部33には、到達しないように構成されている。刺入可能部33は、穿刺針取付部導入部38の前方(先端側)、正確には、穿刺針収納部34の小径先端部34aの前方かつ延長線上に位置している。なお、穿刺針収納部34の形状は、穿刺針6を収納できれば特に限定されず、例えば単なる筒状でもよい。
【0042】
また、シールキャップ3の基端部には、外方に環状に突出する把持用のフランジ37が形成されており、さらに、フランジ37には、環状凹部71が設けられている。フランジ37の先端側位置は、中空部30の環状起立面39より先端側に位置し、かつ、突出部36の頂点部36a付近(図6に示すものでは、頂点部36aより若干基端開口部32側)に位置するものとなっている。
【0043】
シールキャップ3の形成材料としては、少なくとも刺入可能部33が、穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成されていることが必要である。穿刺針の刺入可能な弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなどが好ましい。また、弾性材料としては、例えば、ブチルゴム、イソプレンゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなどのゴムであってもよい。
【0044】
また、この実施形態のシールキャップ3では、少なくとも穿刺針取付部収納部35および刺入可能部33(この実施形態においては、シールキャップの全体)が上述の穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成されたものとなっている。このため、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3が装着された際に、穿刺針取付部収納部35の内面が、穿刺針取付部22の環状頭部24の外面に合わせて弾性変形する。これにより、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の環状頭部24の外面とが、ポリパラキシリレン被膜9を介してより密着した状態となり、外筒2からのシールキャップ3の不本意な離脱がより少なくなる。
【0045】
なお、シールキャップ3としては、刺入可能部33またはその付近のみを上述した穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成し、その外側を硬質もしくは半硬質材料により形成してもよい。シールキャップの外側部分の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられる。また、シールキャップとしては、少なくとも穿刺針取付部収納部および刺入可能部を上述の穿刺針の刺入可能な弾性材料により形成し、その外側の少なくとも一部を上述した硬質もしくは半硬質材料により形成したカバー部材で覆ってもよい。
【0046】
そして、シールキャップ3の少なくとも穿刺針取付部収納部35の内面には、外筒2の穿刺針取付部22の外面との張付きを抑制するポリパラキシリレン被膜9が形成されている。なお、ポリパラキシリレン被膜9は、穿刺針取付部収納部35の内面全体ではなく、穿刺針取付部22の外面と密着する部分のみに形成されていてもよい。また、本発明は、シールキャップ3が、熱可塑性エラストマーにより形成され、外筒2が、環状ポリオレフィンにより形成されている場合に特に、有効である。
【0047】
なお、この実施形態のシールキャップ3では、ポリパラキシリレン被膜9は、穿刺針収納部34の内面の全体に形成されている。このため、穿刺針6の穿刺用針先61が、穿刺針収納部34の内面と接触しても張付くことがない。これにより、外筒2の穿刺針取付部22にシールキャップ3を装着する際に、穿刺針収納部34内に進入した穿刺針6の穿刺用針先61は、穿刺針収納部34の内面に張付くことなく穿刺針収納部34の先端(小径先端部34a)まで誘導され、確実に刺入可能部33に刺入される。
【0048】
さらに、この実施形態のシールキャップ3では、ポリパラキシリレン被膜9は、穿刺針取付部導入部38の内面全体に形成されているため、穿刺針取付部22が穿刺針取付部導入部38に進入した際に、穿刺針取付部22の外面が穿刺針取付部導入部38の内面に張付くことがない。これにより、シールキャップ3を外筒2の穿刺針取付部22にスムーズに装着することができる。
【0049】
そして、本発明のシリンジ用組立体10では、図3に示すように、外筒2の先端部(穿刺針取付部22)にシールキャップ3が装着され、かつ、穿刺針6の穿刺用針先61がシールキャップ3の刺入可能部33に刺入し、液密状態にシールされ、かつ、穿刺針取付部22の環状凹部25と穿刺針取付部収納部35の内面に形成された突出部36とが係合し、かつ、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とがポリパラキシリレン被膜9を介して密着した状態となっている。
【0050】
そして、このシリンジ用組立体10は、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とがポリパラキシリレン被膜9を介して密着した状態となっているため、外筒2にシールキャップ3を装着したまま保管した場合、および高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合でも、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面との張付きを抑制することができる。同様に、本発明のプレフィルドシリンジ1は、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とがポリパラキシリレン被膜9を介して密着した状態となっているため、外筒2にシールキャップ3を装着したまま保管した場合、および高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合でも、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面との張付きを抑制することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、ポリパラキシリレン被膜9は、穿刺針取付部収納部35の内面に形成されていたが、これに限定されるものではなく、ポリパラキシリレン被膜は、外筒の穿刺針取付部の外面に形成されていてもよい。また、ポリパラキシリレン被膜は、穿刺針取付部収納部の内面および穿刺針取付部の外面の両方に形成されていてもよい。
ポリパラキシリレンとしては、下記化学式により示されるものが好適に使用できる。
【0052】
【化1】
【0053】
本発明に使用されるポリパラキシリレンとしては、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)、芳香族環もしくはメチレン基に官能基が導入されたものいずれでもよい。例えば、芳香族環に塩素が置換されたポリ(クロロパラキシリレン)、芳香族環にメチル基が置換されたポリメチルパラキシリレン、メチレン基にフッ素が置換されたポリフルオロパラキシリレンなどのいずれでもよい。また、上記のポリパラキシリレン単独で構成されるホモポリマーだけでなく、パラキシリレンモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体であってもよい。特に、好ましくは、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)、ポリ(クロロパラキシリレン)である。なお、ポリパラキシリレン被膜9は、上記ポリパラキシリレンもしくは共重合体の単層で形成されていてもよく、上記ポリパラキシリレンおよび/もしくは共重合体の多層で形成されていてもよい。
本明細書において、ポリパラキシリレンは、芳香族環に官能基が置換していないポリ(パラキシリレン)のみを示すものではなく、上記の化学式1によって示されるものを意味する。
【0054】
そして、本発明に使用されるポリパラキシリレンは、上記化学式1で示されるパラキシリレンダイマーを原料とし、このパラキシリレンダイマーを熱分解させて得られるパラキシリレンモノマーが重合することにより形成される積層膜であることが好ましい。このようなものであれば、被膜として、ピンホールの発生がなく、膜厚の安定したものとなる。ポリパラキシリレン被膜におけるポリパラキシリレンの厚さは、1μm〜10μmが好ましく、特に、2μm〜8μmが好ましい。
【0055】
次に、ポリパラキシリレン被膜形成工程について説明する。
ポリパラキシリレンからなる被膜の形成は、シールキャップの内面に上述した化学式1のパラキシリレンモノマーを重合させて形成することが好ましい。また、被膜形成工程としては、化学蒸着法(C.V.D.法)、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより、ポリパラキシリレンの薄膜を形成することにより行うことが好ましい。特に、パラキシリレンモノマーを用いて、シールキャップの内面に化学蒸着することにより、重合と被膜形成が同時において行われる。このため、化学蒸着により形成されるポリパラキシリレン被膜は、シールキャップの内面に対しても均一に形成される。
【0056】
ポリパラキシリレン膜形成装置としては、パラキシリレンダイマー気化室、パラキシリレンダイマー熱分解室およびポリパラキシリレン蒸着室を備えるものが用いられる。ポリパラキシリレン膜の製膜は、例えば、蒸着室にシールキャップを入れ、装置内を5〜50mTorr、好ましくは、10〜30mTorrに減圧し、原料であるパラキシリレンダイマーを気化室にて100〜200℃で気化させ、次に熱分解室で650〜700℃の加熱によりパラキシリレンダイマーをパラキシリレンモノマーに熱分解させたものを蒸着室に流入させることにより、シールキャップにモノマーが接触すると、その界面で重合し、ポリパラキシリレン膜が形成される。このようにして得られたポリパラキシリレン膜は、耐薬品性、ガスバリア性に優れており、均一かつ連続的に形成されており、またピンホールも発生しない。また、ポリパラキシリレン層の厚さは、減圧度、気化室の温度および蒸着時間により制御することができる。
【0057】
また、ポリパラキシリレン被膜形成工程は、ポリパラキシリレンの液状物もしくはペースト状物をシールキャップ3の内面に薄く塗布して薄膜を形成することにより行ってもよい。また、ポリパラキシリレン被膜形成工程は、ポリパラキシリレンにより作製されたフィルムもしくは薄膜を熱融着、高周波融着、接着剤等によりシールキャップの内面に貼り付けることにより行ってもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
シールキャップとして熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリパラキシリレン用材料としては、モノクロロパラキシレンダイマー[ジクロロ−(2, 2)−パラシクロファン]、(商品名:dix−c、第三化成株式会社製)を用いて、シールキャップの少なくも開口部より所定長先端側となる部分までの内面にポリパラキシリレン被膜を形成した。具体的には、気化室、熱分解炉、蒸着チャンバーから構成される化学蒸着装置(型式S、タンブラー容量25L、第三化成株式会社株式会社製)を用い、熱可塑性エラストマー(具体的には、スチレン系エラストマー)で作製されたシールキャップの内面および外面にポリ(クロロパラキシリレン)の被覆を形成させた。
【0059】
より、具体的には、ダイマーであるジクロロ−(2,2)−パラシクロファンを気化室に投入し、装置内を30mTorrの真空度に調整した。次に、150〜170℃に加熱して気化室のダイマーであるジクロロ−(2,2)−パラシクロファンを昇華させ、続いてダイマーを650〜690℃の熱分解炉を通過させモノマーに熱分解させ、最終的には、シールキャップが500個が入っているタンブラーを具備した蒸着チャンバー(室温)にモノマーを誘導させ、25分間処理し、ポリパラキシリレン層の形成を行い、本発明のポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップを作成した。なお、タンブラーは2rpmで回転させ、シールキャップを攪拌しながら張付抑制層の形成を行った。ポリパラキシリレン被膜の形成後、シールキャップを任意に30個選択し、シールキャップの内面における被膜の厚さを測定したところ、平均厚みは1μmであった。
【0060】
(実施例2)
チャンバー内での処理時間を125分とした以外は、実施例1と同様に行い、本発明のポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップを作成した。ポリパラキシリレン層の形成後、シールキャップを任意に30個選択し、内面の膜厚を測定したところ、平均厚みは、5μmであった。
【0061】
(実施例3)
シールキャップとしてシリコーンオイルをドープした熱可塑性エラストマー(具体的には、スチレン系エラストマー)を投入した以外は、実施例1と同様に行い本発明のポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップを作成した。シールキャップを任意に30個選択し、シールキャップの内面における被膜の厚さを測定したところ、平均厚みは1μmであった。
【0062】
(実施例4)
シールキャップとして脂肪族アミド(具体的には、ステアリン酸アミド)をドープした熱可塑性エラストマー(具体的には、スチレン系エラストマー)を投入したこと、パラキシリレン用材料としては、モノクロロパラキシレンダイマー[1,4-ビス(ジクロロメチル)ベンゼン]、(商品名:dix−d、第三化成株式会社製)を使用したこと以外は、実施例2と同様に行い本発明のポリパラキシリレン被膜を備えたシールキャップを作成した。シールキャップを任意に30個選択し、内面の膜厚を測定したところ、平均厚みは、5μmであった。
【0063】
(比較例1)
ポリパラキシリレン被膜の形成を行わない以外は、実施例1と同様にしてシールキャップを作製した。
(比較例2)
ポリパラキシリレン被膜の形成の代わりに、反応性シリコーンオイルを主成分とする液状コーティング剤(商品名:東レ・ダウコーニング(株)/MDX4-4159)を用いて、シールキャップの内面に常温または加熱により重合(架橋を含む)させたこと以外は、実施例1と同様にして、シリコーン重合被膜を有するシールキャップを100個作成した。シールキャップを任意に30個選択し、内面におけるシリコーン重合被膜厚を測定したところ、平均厚みは1μmであった。
【0064】
(実験1:離脱強度試験)
穿刺針の針先にシリコーンを塗布した後、外筒にシールキャップを所定の位置まで装着した。なお、装着時にシールキャップ内の内圧が上昇する為、シールキャップの開口部付近を変形させることにより外筒、シールキャップ間に隙間を作り、内圧解除を行った。外筒へのシールキャップの装着後、オートクレーブ処理(123℃、85分)を行った。続いて、シールキャップの先端にフックをかけ、オートグラフ(ロードセルMAX100N)を用い、外筒のフランジを固定し引張試験を実施して、シールキャップの離脱強度を測定した。結果は、表1の通りであった。
なお、上記離脱強度は低い方が好ましい。実施例のものでは、離脱強度が低く、優れた張付抑制効果を有することが確認できた。
【0065】
(実験2:滅菌性試験)
BI菌(106CFU/ml)を封入後、実験1と同様にシールキャップを所定の位置まで外筒に装着した。装着後、滅菌パックを用い、オートクレーブ処理(123℃、10分)を行った。滅菌後、7日間培地処理を行ったところ、表1に示す結果を得た。○:滅菌できた(全て菌死滅)、×:滅菌できず(全ての菌が死滅せず)を示す。実施例のシールキャップおよびシリンジ組立体は、オートクレーブ滅菌性を有することが確認できた。
【0066】
(実験3:耐圧試験)
JIS T 3210(2011/07/29改定)に記載されている「気密性」試験に基づき、試験を実施した。十分水を拭き取った外筒に、3/4の位置まで水を吸い入れ、シールキャップで封止後、押し子に400kPaの圧力を加えることにより、耐圧性能を測定した。結果は、表1に示す通りであった。○:耐圧性あり(漏れなかった)、×:耐圧性なし(漏れた)を示す。実施例のシールキャップは十分な耐圧性を有することが確認できた。
【0067】
(実験4:刺通抵抗試験)
穿刺針の針先にシリコーンを塗布した後、外筒にシールキャップを所定の位置まで装着した。装着後、オートクレーブ処理(123℃、85分)を行った。続いてシールキャップを取り外し、オートグラフを用いて、シリコーンゴム(t=0.5mm)に対する刺通抵抗を測定した。なお、刺通抵抗は低い方が好ましいと言える。結果は、表1に示す通りであった。実施例のシールキャップに穿刺後の針先は、十分な刺通性を有することが確認できた。
【0068】
(実験5:水分蒸散性試験)
新有効性分含有医薬品の安定性試験ガイドライン(2003/06/03医薬審発0603001)に記載されている「半透過性の容器に包装された製剤」の水分損失について試験した。その結果、下記表1のようになった。○:医薬品容器として要求される機能を満たす、×:医薬品容器として要求される機能を満たさない。実施例のシールキャップは十分な耐圧性を有することが確認できた。
【0069】
【表1】
【0070】
次に、本発明のシリンジ用組立体が複数収納された包装体について、図面に示した実施形態を図11ないし図15を用いて説明する。
本発明の複数のシリンジ用組立体を収納した滅菌可能もしくは滅菌されたプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体102と、容器体102内に収納された複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104と、外筒保持部材104に保持された複数のシリンジ用組立体10と、容器体102の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材103とを備える。
【0071】
本発明のプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、滅菌可能もしくは滅菌されたプレフィルドシリンジ用組立体包装体である。滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌、放射線もしくは電子線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌が用いられる。
本発明のプレフィルドシリンジ用組立体包装体100は、図11図12および図15に示すように、容器体102と、複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104と、外筒保持部材104に保持された複数のシリンジ用組立体10と、容器体102の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材103とからなる。さらに、包装体100は、容器体102もしくはシート状蓋部材103に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備えている。
【0072】
容器体102は、図11ないし図15に示すように、ある程度の強度と保形性を有する所定の深さを有するトレー状のものとなっており、本体部121と、本体部121の上部に形成され、複数のシリンジ用組立体10を保持した外筒保持部材104の周縁部を保持するための外筒保持部材保持部126と、上面開口に設けられた環状フランジ124とを備えている。
【0073】
さらに、環状フランジ124の上面には、シート状蓋部材103との固着のための環状のヒートシール用凸部125が設けられている。そして、フランジ124より所定長底面側となる位置に、外筒保持部材保持部126が形成されている。この第1の実施形態の容器体102では、外筒保持部材保持部126は、環状の段差部となっており、複数のシリンジ用組立体10を保持した外筒保持部材104の周縁部を載置可能となっている。
【0074】
容器体102は、ある程度の保形性と剛性を備えることが好ましい。また、高圧蒸気滅菌に対応するために、耐熱性(120℃以上)を有する熱可塑性材料を用いることが望ましい。ある程度の保形性と、ある程度の剛性と、耐熱性と熱可塑性を有する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン/ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン/アイオノマー(例えば、エチレン系、スチレン系、フッ素系)/ポリエチレン、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファス−ポリエチレンテレフタレート)、PP/EVOH/PP(ラミネート)等が挙げられる。この場合の容器体102の厚さとしては、0.05〜4.00mm程度が好ましく、特に、1.00〜2.00mmがより好適である。
【0075】
さらに、容器体102を放射線もしくは電子線滅菌を可能としてもよく、この場合には、耐放射線性材料と呼ばれるものを使用することが望ましい。耐放射線性材料(例えば、耐放射線性ポリオレフィン)としては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)に、ヒンダードアミンさらには酸化防止剤、核剤などが添加されることにより、対放射線性が付与されたものを用いることができる。ヒンダードアミンとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)フマレートなどが例示される。酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−T−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンなどが例示される。核剤としては、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどが例示される。
【0076】
複数のシリンジ用組立体10を保持可能な外筒保持部材104は、図12および図15に示すように、基板部141と、この基板部141より上方に突出する複数の筒状部142を備えている。そして、筒状部142内に外筒保持用開口部143が形成されており、また、基板部141の側部には、把持用の切欠部144が形成されている。筒状部142および外筒保持用開口部143の内径は、保持されるシリンジ用組立体10の最大径部分の外径より大きいものとなっており、また、保持されるシリンジ用組立体10のフランジ部23の通過が不能なものとなっている。
【0077】
このため、図15に示すように、シリンジ用組立体10は、筒状部142を貫通するとともに、外筒保持用開口部143によりシリンジ用組立体10のフランジ23が吊り下げられた状態となっている。また、図15に示すように、外筒保持部材104により保持されたシリンジ用組立体10の下端(シールキャップ3の先端)は、容器体102の底面に接触しないものとなっている。言い換えれば、容器体102の底面と外筒保持部材104により保持されたシリンジ用組立体10の下端(シールキャップ3の先端)間は、離間し、水蒸気の流通を阻害しないものとなっている。この外筒保持部材104の形成材料も高圧蒸気滅菌に対応するために、耐熱性(120℃以上)を有するものであることが望ましい。
【0078】
シート状蓋部材103としては、高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌のために菌やウイルスなどの微粒子が透過不可能で、水蒸気やエチレンオキサイドガスなどの滅菌ガスが透過可能な滅菌ガス流通性を有する部材が望ましい。また、容器体102にヒートシール可能であることが好ましい。シート状蓋部材103としては、例えば、合成樹脂製不織布、具体的には、タイベック(登録商標)として知られているポリオレフィン等の合成樹脂材料からなる不織布、合成樹脂製多孔質膜などが好適に使用できる。
【0079】
そして、シート状蓋部材103は、容器体102の環状フランジ124に設けられたヒートシール用凸部125にその周縁部が剥離可能にヒートシールされている。なお、この第1の実施形態では、シート状蓋部材103の外縁は、容器体102の環状フランジ124には、ヒートシールされておらず、剥離を容易なものとしている。また、ヒートシール用凸部125の角部に設けられた突出部125aが、剥離開始部として機能する。シート状蓋部材103としては、厚さ0.05〜1.00mm程度が好ましく、0.10〜0.50mm程度がより好適である。
なお、上述した第1の実施形態では、通気部は、シート状蓋部材103に設けられているが、これに限定されるものではなく、容器体102に設けてもよい。
【0080】
そして、このプレフィルドシリンジ用組立体包装体100においても、プレフィルドシリンジ用組立体包装体100内に収納されたシリンジ用組立体10は、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面とがポリパラキシリレン被膜9を介して密着した状態となっている。このため、外筒2にシールキャップ3を装着したままプレフィルドシリンジ用組立体包装体100を保管した場合、およびプレフィルドシリンジ用組立体包装体100に対して高圧蒸気滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合でも、穿刺針取付部収納部35の内面と穿刺針取付部22の外面との張付きを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のシリンジ用組立体は、以下のものである。
(1) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられた筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒と、前記外筒に装着されたシールキャップとからなるシリンジ用組立体であって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部の先端部を収納する穿刺針取付部収納部と、前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部とを備え、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面または/および前記外筒の前記穿刺針取付部の外面には、ポリパラキシリレン被膜が設けられており、前記外筒に前記シールキャップが装着され、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、かつ、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部の内面と前記外筒の前記穿刺針取付部の外面は、前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっているシリンジ用組立体。
特に、本発明のシリンジ用組立体では、上記のポリパラキシリレン被膜を備え、かつ、シールキャップの穿刺針取付部収納部の内面と外筒の穿刺針取付部の外面は、ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっているので、外筒にシールキャップを装着した状態での保管後、また、シールキャップを装着した状態でのシリンジ用組立体の高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌などの圧力負荷を伴う滅菌を行った場合においても、シールキャップの内面と外筒の先端部の外面間の張り付きがなく、キャップの離脱障害を生じることがない。
【0082】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記外筒の前記穿刺針取付部は、環状頭部と前記環状頭部の基端に形成された環状凹部とを備え、前記シールキャップの前記穿刺針取付部収納部は、内面に形成された突出部を備え、かつ、前記穿刺針取付部の前記環状凹部と前記穿刺針取付部収納部の前記突出部とが係合し、かつ、両者が前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となっている上記(1)に記載のシリンジ用組立体。
(3) 前記シールキャップの前記突出部は、頂点部と、前記頂点部より先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する先端側傾斜部を有し、前記先端側傾斜部は、前記環状頭部の外面に前記ポリパラキシリレン被膜を介して押し付けられて密着した状態となっている上記(2)に記載のシリンジ用組立体。
(4) 前記シリンジ用組立体は、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
(5) 前記外筒は、環状ポリオレフィンにより形成されており、前記シールキャップは、熱可塑性エラストマーにより形成されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のシリンジ用組立体。
【0083】
本発明のプレフィルドシリンジは、以下のものである。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシリンジ用組立体と、前記外筒内に収納されかつ前記外筒内を液密に摺動可能なガスケットと、前記外筒と前記ガスケットにより形成された空間内に充填された薬剤とからなるプレフィルドシリンジ。
【0084】
本発明の外筒用シールキャップは、以下のものである。
(7) 外筒本体部と、前記外筒本体部の先端部に設けられ、かつ、環状頭部と前記環状頭部の基端に形成された環状凹部とを有する筒状の穿刺針取付部と、先端に穿刺用針先を有し、前記穿刺針取付部に基端部が挿入されかつ固定された穿刺針とを備える外筒に装着される外筒用シールキャップであって、前記シールキャップは、閉塞先端部と、開口基端部と、前記開口基端部より先端側に位置し前記穿刺針取付部を収納する穿刺針取付部収納部と前記穿刺針取付部収納部の先端と連続し前記穿刺針を収納する穿刺針収納部とを有する中空部と、前記穿刺針収納部に収納された前記穿刺針の前記穿刺用針先が刺入可能な刺入可能部と、前記穿刺針取付部収納部の内面に形成された突出部とを備え、さらに、前記穿刺針取付部収納部の内面には、ポリパラキシリレン被膜が形成されており、前記シールキャップが前記外筒に装着された際に、前記穿刺用針先が前記シールキャップの前記刺入可能部に刺入し、さらに、前記突出部と前記環状凹部とが係合したとき、前記穿刺針取付部収納部の内面と前記穿刺針取付部の外面とが前記ポリパラキシリレン被膜を介して密着した状態となる外筒用シールキャップ。
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(8) 前記突出部は、頂点部と、前記頂点部より先端方向に向かって延びかつ突出高さが先端方向に向かって漸次低下する先端側傾斜部を有し、前記シールキャップが前記外筒に装着された際に、前記先端側傾斜部は、前記環状頭部の外面に前記ポリパラキシリレン被膜を介して押し付けられて密着した状態となる上記(7)に記載の外筒用シールキャップ。
(9) 前記シールキャップは、熱可塑性エラストマーにより形成されている上記(7)または(8)のいずれかに記載の外筒用シールキャップ。
【0085】
本発明のシリンジ用組立体包装体は、以下のものである。
(10) 複数の上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシリンジ用組立体を収納したシリンジ用組立体包装体であって、前記包装体は、上面が開口し、かつ保形性を有する容器体と、複数の前記シリンジ用組立体を保持可能な外筒保持部材と、前記外筒保持部材に保持された複数のシリンジ用組立体と、前記容器体の上面開口を気密に封止するとともに剥離可能なシート状蓋部材とを備え、さらに、前記包装体は、前記容器体もしくは前記蓋部材に設けられた菌不透過性かつ滅菌ガス流通性を有する通気部を備え、高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌されているシリンジ用組立体包装体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15