特許第6686295号(P6686295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6686295-回転電機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686295
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   H02K9/06 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-93922(P2015-93922)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-213936(P2016-213936A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(72)【発明者】
【氏名】江島 正一
(72)【発明者】
【氏名】江尻 光良
(72)【発明者】
【氏名】本間 優人
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−135499(JP,A)
【文献】 特開2003−219605(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/001645(WO,A1)
【文献】 実開昭57−143874(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
この回転軸と共に回転する回転子と、
この回転子の径方向外側にエアギャップを介して配置され固定子と、
この固定子のコイルエンドの径方向内側に配置されると共に前記回転軸の軸方向両側に取り付けられる遠心ファンと、
前記固定子と離間して設けられ、前記遠心ファンにより循環される空気を冷却する冷却器と、
この冷却器から前記固定子の表面までの間の空間と前記コイルエンド側の空間とを隔てるように配設され、当該冷却器により冷却された空気を固定子鉄心の表面へ誘導するガイド板と
を備え、
前記遠心ファンの送風は、前記コイルエンドに対して径方向内側から径方向外側に向かい、さらに、前記コイルエンド側の空間を通過した後、前記冷却器に供され、
この冷却器により冷却された空気、前記固定子鉄心及び前記固定子コイルサイドを冷却した後、前記回転子を冷却し、その後、前記コイルエンドを冷却する
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の流れによってコイルを冷却する冷却構造を備えた回転電機に関し、とくに通風回路を制御する風制御板を有する冷却構造を備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機等の回転電機においては、運転に伴ってモータ内部で発生した熱を通風によって冷却することが行われている。
図3は従来の冷却構造を備えた発電機の一例を示す概略断面図である。図3に示すように、従来の発電機では、熱交換器10と軸流ファン13との間にステータコイル9のコイルエンドを覆うように風制御板200を設け、熱交換器10により冷却されケーシング1の上部に流出した空気(以下、冷却風)が軸流ファン13を通過した後に、ローター4及びステーター5側と、ステータコイル9のコイルエンド側とを冷却する構成となっていた(例えば、下記特許文献1)。なお、図3中、2はベアリング、3はシャフト、6はロータコア、7はロータコイル、8はステータコアである。
【0003】
また、冷却器からの冷却風を固定子コイルエンドの軸方向内側から外側へと導く案内板を設けた冷却構造(例えば、下記特許文献2参照)や、冷却風を回転軸の一方側から吸引し、回転子および固定子を冷却して回転軸の他方側から排気するように回転軸の他方側に遠心ファンを設けた冷却構造(例えば、下記特許文献3参照)、回転子の軸方向端部に遠心ファンを設けるとともに当該遠心ファンよりも軸方向内側に軸流ファンを設けて、軸方向端部側から吸引した冷却風をコイルエンド側と回転子側とに分流させるようにした回転電機の冷却構造(例えば、下記特許文献4参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−35319号公報
【特許文献2】特開2013−34332号公報
【特許文献3】特開2000−41361号公報
【特許文献4】実開昭54−26006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図3に示す従来の発電機(特許文献1)では、軸流ファン13を通過した冷却風の流路がローター4及びステーター5側とコイルエンド9側とに分かれるため、コイルエンド9周辺を流れる風量が少なく、また、冷却回路の構造によってコイルエンド9周辺(例えば、図3に示すA1〜A4参照)で風がよどみ、コイルエンド9を効率的に冷却することができずにコイルエンド9の温度が上昇するおそれがあるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載された発明では、固定子コイルエンドの内径側に近接して案内板が設置されているが、このような位置に案内板を設置することは現実的には困難であるという問題があった。
また、特許文献3,4に記載された発明についても、冷却風をコイルエンド側とステータダクト側とに分けて冷却しているため、冷却の効率が十分とはいえなかった。
また、冷却風を分流する場合には風量バランスを考慮する必要があるが、風量のバランスをとることは容易ではなく、設計作業の負担になるという問題もあった。
【0007】
このようなことから本発明は、設計時の負担を低減することができ、且つ、コイルエンドを効率よく冷却することが可能な回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る回転電機は、
回転軸と、
この回転軸と共に回転する回転子と、
この回転子の径方向外側にエアギャップを介して配置され固定子と、
この固定子のコイルエンドの径方向内側に配置されると共に前記回転軸の軸方向両側に取り付けられる遠心ファンと、
前記固定子と離間して設けられ、前記遠心ファンにより循環される空気を冷却する冷却器と、
この冷却器から前記固定子の表面までの間の空間と前記コイルエンド側の空間とを隔てるように配設され、当該冷却器により冷却された空気を固定子鉄心の表面へ誘導するガイド板と
を備え、
前記遠心ファンの送風は、前記コイルエンドに対して径方向内側から径方向外側に向かい、さらに、前記コイルエンド側の空間を通過した後、前記冷却器に供され、
この冷却器により冷却された空気、前記固定子鉄心及び前記固定子コイルサイドを冷却した後、前記回転子を冷却し、その後、前記コイルエンドを冷却する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る回転電機によれば、熱交換器を通り冷却された空気の全風量が、固定子、回転子を順に冷却した後、コイルエンドを冷却することとなるため、コイルエンドの冷却を効率よく行うことができ、熱交換器によって冷却された空気を分流させる必要がないため設計時の負担を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る発電機の概略構造を示す断面図である。
図2図1のII−II矢視断面図である。
図3】従来の発電機の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る回転電機について詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1及び図2を用いて本発明の一実施例に係る回転電機について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る回転電機は、ケーシング1内にベアリング2を介して回転自在に支持されるシャフト(回転軸)3と、シャフト3の外周部に固定されたローター(回転子)4と、ローター4の外周部にエアギャップを介して対向配置され、ケーシング1の内面に固定されたステーター(固定子)5とを備えて構成された密閉型の発電機である。
【0015】
ローター4は、ロータコア(回転子鉄心)6と、このロータコア6に巻着されたロータコイル(回転子コイル)7とを備えている。また、ステーター5は、ステータコア(固定子鉄心)8と、このステータコア8に巻着されたステータコイル(固定子コイル)9とを備えている。以下、このステータコイル9のステータコア8内にある部分をコイルサイド(固定子コイルサイド)9in、ステータコア8から軸方向両側に突出している部分をコイルエンド(固定子コイルエンド)9outと称する。
【0016】
また、本実施例の回転電機には、ステーター5の上方に、ケーシング1及びステーター5とは離間して設けられた冷却器としての熱交換器10と、シャフト3の軸方向両側に取り付けられた遠心ファン11とが設けられている。
【0017】
遠心ファン11は、コイルエンド9outの径方向内側に設置され、コイルエンド9outに対して径方向内側から径方向外側へ向かって送風を行う。また、熱交換器10は、遠心ファン11によって循環させられることによって熱交換器10を上から下へ通過する空気(冷却風)を、熱交換により冷却する。
さらに、本実施例に係る回転電機は、熱交換器10を通った冷却風が、ステータコア8の表面へ誘導されるように設けられたガイド板12を備えている。具体的には、ガイド板12は、熱交換器10からステータコア8の表面までの間の空間と、コイルエンド9out側の空間とを隔てるように配設されている。
【0018】
このように構成されることにより、本実施例においては、遠心ファン11によって循環される冷却風が、以下の流れで発電機の冷却を行う。すなわち、
(1)熱交換器10を通って冷却されたあと、ガイド板12によってコイルエンド9out側への移動を規制され、ステータコア8及びコイルサイド9inを径方向外側から内側へと流れて、当該ステータコア8及びコイルサイド9inを冷却する。
(2)続いて、ローター4部分を軸方向外側へ向かって流れ、ローター4を冷却する。
(3)続いて、図2に示すようにコイルエンド9out部分を径方向内側から径方向外側へ向かって流れ、当該コイルエンド9outを冷却する。
(4)上述した(1)に戻る。
なお、図1,2中、12aはガイド板12のシャフト1側の端縁、12bはガイド板12の上端縁を示す。
【0019】
このように、本実施例に係る回転電機によれば、ガイド板12を設け、遠心ファン11によって循環されて熱交換器10を通った冷却風の全てがステータコア8の表面へ導かれ、ステータコア8及びコイルサイド9in、ローター4を順に冷却した冷却風の全てが、コイルエンド9outを径方向内側から外側へ通過してコイルエンド9outを冷却するようにしたので、従来のように冷却風を分流させる必要がなくなり、冷却風を分流させる場合に生じる風量バランスの調整等の煩雑な作業が不要となる。
【0020】
また、全体の風量を従来より少なくしても、ステータコア8及びコイルサイド9in、ローター4、コイルエンド9outそれぞれを冷却する風量を従来よりも増加させることができるため、従来よりも低コストで、且つステータコア8及びコイルサイド9in、ローター4、コイルエンド9outそれぞれに対する冷却効果を向上させることができる。つまり、熱交換器10から出てすぐの風がステータコア8及びコイルサイド9inへ当たるため、ステータコア8及びコイルサイド9inに対する冷却効果は増大する。また、コイルエンド9outには熱交換されたやや温まった風が流れるが、遠心ファン11で直接風を当てて冷却するため、従来と比較して冷却性能は向上する。
【0021】
なお、本発明に係る回転電機は、上述した実施例に限定されるものではなく、例えば、図1に示す遠心ファン11に代えて、遠心ファンの羽根をコイルエンド9outの径方向外側に配設し、ステータコア8及びコイルサイド9in、ローター4を順に冷却した冷却風がコイルエンド9を径方向内側から径方向外側へと通過するようにする、または、シャフト3の軸方向両側に軸流ファンを設けるとともに、この軸流ファンによって送り出される冷却風がコイルエンド9outを径方向内側から径方向外側へと通過するように、冷却風を誘導するガイドを設けて、冷却風がステータコア8及びコイルサイド9in、ローター4を順に冷却した後、コイルエンド9outの冷却を行うようにする等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、冷却器と軸流ファンとを備えて送風によりローター、ステーターおよびコイルエンドの冷却を行う密閉型の発電機等の回転電機に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0023】
1 ケーシング
2 ベアリング
3 シャフト
4 ローター
5 ステーター
6 ロータコア
7 ロータコイル
8 ステータコア
9 ステータコイル
in コイルサイド
out コイルエンド
10 熱交換器
11 遠心ファン
12 ガイド板
図1
図2
図3