(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686356
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】乾燥システム、および、乾燥システムの起動方法
(51)【国際特許分類】
F26B 3/088 20060101AFI20200413BHJP
F26B 21/12 20060101ALI20200413BHJP
F26B 17/10 20060101ALI20200413BHJP
C10L 9/08 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
F26B3/088
F26B21/12
F26B17/10 C
C10L9/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-199063(P2015-199063)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-72307(P2017-72307A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 志宏
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−192778(JP,A)
【文献】
特開2006−132886(JP,A)
【文献】
特公昭38−024943(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 3/088
C10L 9/08
F26B 17/10
F26B 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも褐炭を含む被収容物を収容する収容部と、
前記収容部の底面から水蒸気を供給して、該収容部内において前記被収容物を流動させ流動層を形成するとともに、該水蒸気によって前記褐炭を乾燥させる水蒸気供給部と、
少なくとも前記褐炭を前記収容部に導入する導入部と、
を備え、
前記褐炭の乾燥を開始する際に、
前記水蒸気供給部は、前記収容部に水蒸気を供給して、該収容部内において、前記褐炭より質量密度が大きく、該水蒸気の温度で反応しない前記被収容物である蓄熱粒子の流動層を形成し、
前記蓄熱粒子の温度が予め定められた温度以上になったら、前記導入部は、前記収容部に前記褐炭を導入し、
前記水蒸気供給部は、前記収容部内において前記蓄熱粒子および前記褐炭が混在した流動層が形成されるように、該収容部に供給する水蒸気の流速を調整し、
前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記水蒸気供給部は、前記収容部内において前記蓄熱粒子の固定層と前記褐炭の流動層とが形成されるように、該収容部に供給する水蒸気の流速を調整することを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記水蒸気供給部は、
前記蓄熱粒子を流動させ得る第1の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子の流動層を形成し、
前記第1の流速未満であって前記蓄熱粒子の最小流動化速度以上の第2の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子および前記褐炭の流動層を形成し、
前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記蓄熱粒子の最小流動化速度未満であって該褐炭の最小流動化速度以上の第3の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子の固定層と該褐炭の流動層を形成することを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部から前記蓄熱粒子を抜き出す抜出部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記蓄熱粒子は、アルミナであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥システム。
【請求項5】
収容部の底面から水蒸気を供給して、該収容部内において、少なくとも褐炭を含む被収容物を流動させ流動層を形成するとともに、該水蒸気によって該褐炭を乾燥させる乾燥システムの起動方法であって、
前記収容部に水蒸気を供給して、該収容部内において、前記褐炭より質量密度が大きく、前記水蒸気の温度で反応しない前記被収容物である蓄熱粒子の流動層を形成し、
前記蓄熱粒子の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部に前記褐炭を導入し、
前記収容部に供給する水蒸気の流速を調整して、該収容部内において前記蓄熱粒子および前記褐炭が混在した流動層を形成し、
前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部に供給する水蒸気の流速を調整して、該収容部内において前記蓄熱粒子の固定層と前記褐炭の流動層を形成することを特徴とする乾燥システムの起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気を用いて褐炭を乾燥させる乾燥システム、および、乾燥システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は、可採年数が150年程度と、石油の可採年数の3倍以上であり、また、石油と比較して埋蔵地が偏在していないため、長期に亘り安定供給が可能な天然資源として期待されている。石炭は、炭素含有量の低い順に、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭に分類され、泥炭、亜炭、褐炭、亜瀝青炭(以下、含水石炭と称する)は、瀝青炭、半無煙炭、無煙炭(以下、無煙炭等と称する)と比較して水の含有率(含水率)が高い。
【0003】
含水石炭のうち、褐炭は、世界の石炭埋蔵量の半分を占めると言われているため、褐炭の有効利用が検討されている。しかし、上述したように、褐炭等の含水石炭は、無煙炭等と比較して含水率が高いため、単位重量あたりの発熱量が低く、輸送コストに対する燃料としてのエネルギー効率が低い。
【0004】
そこで、含水石炭を収容した収容槽の底面から高温の流動化ガスを供給することで、収容槽内において含水石炭の流動層を形成するとともに、含水石炭に流動化ガスの熱を加えて含水石炭を乾燥させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−117661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
褐炭は、揮発性有機物を多く含んでいるため、褐炭を乾燥させる際の流動化ガスとして、酸素(O
2)を含むガス(例えば、空気)を用いると、酸素によって褐炭が燃焼してしまうおそれがある。このため、流動化ガスとして酸素を含まないガスを利用する必要があるが、例えば、窒素はコストがかかるという問題がある。
【0007】
そこで、流動化ガスとして水蒸気を用いることが考えられる。しかし、水蒸気を用いると、褐炭の乾燥を開始する際に褐炭の粒子同士が凝集して、褐炭の粒子の流動性が損なわれ、効率的な乾燥ができなくなるおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、褐炭の凝集を抑制して、褐炭を効率よく乾燥させることが可能な乾燥システムおよび乾燥システムの起動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の乾燥システムは、少なくとも褐炭を含む被収容物を収容する収容部と、前記収容部の底面から水蒸気を供給して、該収容部内において前記被収容物を流動させ流動層を形成するとともに、該水蒸気によって前記褐炭を乾燥させる水蒸気供給部と、少なくとも前記褐炭を前記収容部に導入する導入部と、を備え、前記褐炭の乾燥を開始する際に、前記水蒸気供給部は、前記収容部に水蒸気を供給して、該収容部内において、前記褐炭より質量密度が大きく、該水蒸気の温度で反応しない前記被収容物である蓄熱粒子の流動層を形成し、前記蓄熱粒子の温度が予め定められた温度以上になったら、前記導入部は、前記収容部に前記褐炭を導入し、前記水蒸気供給部は、前記収容部内において前記蓄熱粒子および前記褐炭
が混在した流動層が形成されるように、該収容部に供給する水蒸気の流速を調整し、前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記水蒸気供給部は、前記収容部内において前記蓄熱粒子の固定層と前記褐炭の流動層とが形成されるように、該収容部に供給する水蒸気の流速を調整することを特徴とする。
【0010】
また、前記水蒸気供給部は、前記蓄熱粒子を流動させ得る第1の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子の流動層を形成し、前記第1の流速未満であって前記蓄熱粒子の最小流動化速度以上の第2の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子および前記褐炭の流動層を形成し、前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記蓄熱粒子の最小流動化速度未満であって該褐炭の最小流動化速度以上の第3の流速で水蒸気を供給して、前記収容部内において該蓄熱粒子の固定層と該褐炭の流動層を形成するとしてもよい。
【0011】
また、前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部から前記蓄熱粒子を抜き出す抜出部を備えるとしてもよい。
【0012】
また、前記蓄熱粒子は、アルミナであるとしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の乾燥システムの起動方法は、収容部の底面から水蒸気を供給して、該収容部内において、少なくとも褐炭を含む被収容物を流動させ流動層を形成するとともに、該水蒸気によって該褐炭を乾燥させる乾燥システムの起動方法であって、前記収容部に水蒸気を供給して、該収容部内において、前記褐炭より質量密度が大きく、前記水蒸気の温度で反応しない前記被収容物である蓄熱粒子の流動層を形成し、前記蓄熱粒子の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部に前記褐炭を導入し、前記収容部に供給する水蒸気の流速を調整して、該収容部内において前記蓄熱粒子および前記褐炭
が混在した流動層を形成し、前記褐炭の温度が予め定められた温度以上になったら、前記収容部に供給する水蒸気の流速を調整して、該収容部内において前記蓄熱粒子の固定層と前記褐炭の流動層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、褐炭の凝集を抑制して、褐炭を効率よく乾燥させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】乾燥システムを起動する際の制御部による制御を説明するための図である。
【
図3】乾燥システムの起動方法の処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、乾燥システム100を説明するための図である。なお、
図1中、褐炭の流れを実線の矢印で、水蒸気の流れを白抜き矢印で、熱媒体の流れを一点鎖線の矢印で、制御指令の流れを破線の矢印で示す。
図1に示すように、乾燥システム100は、導入部110と、収容部120と、水蒸気供給部130と、伝熱管140と、制御部150と、分離装置160とを含んで構成される。
【0018】
導入部110は、後述する制御部150による制御に応じて、褐炭を収容部120に導入する。なお、通常運転時において、導入部110は、褐炭を予め定められた速度(kg/h)で連続的に収容部120に導入する。
【0019】
収容部120には、導入口122aが設けられており、導入口122aを通じて導入部110から褐炭が導入される。そして、収容部120は、導入部110によって導入された褐炭(被収容物)を収容する。また、収容部120の底面には、抜出管124a、および、抜出管124aに設けられたバルブ124bで構成された抜出部124が設けられている。バルブ124bは、通常運転時には、閉じられており、制御部150によって開閉制御される。
【0020】
水蒸気供給部130は、風箱132と、風箱132に水蒸気を送り込む水蒸気送出部134とを含んで構成される。風箱132は、収容部120の下方に設けられ、乾燥システム100を運転する際には、風箱132を通じて収容部120の底面から当該収容部120内に水蒸気が供給されることとなる。
【0021】
具体的に説明すると、風箱132の上部は、収容部120の底面としても機能し、通気可能である分散板132aで形成されている。分散板132aは、例えば、被収容物(褐炭および後述する蓄熱粒子)の粒径よりも小さい径の開孔が複数設けられた板や、被収容物の粒径よりも小さい径の開孔が設けられたノズルを設置した板で構成される。水蒸気送出部134は、分散板132aの開孔を介して水蒸気を収容部120内に供給する。こうして収容部120に供給された水蒸気は、収容部120内で被収容物を流動させて、流動層を形成するとともに、高温(100℃以上、例えば、110℃)の水蒸気を被収容物と接触させることで褐炭を乾燥させる。
【0022】
また、収容部120内には伝熱管140が設けられており、伝熱管140には、不図示の供給源より熱媒体(例えば、水蒸気)が供給される。伝熱管140を備える構成により、収容部120内において、熱媒体と、水蒸気との間で熱交換が行われ、上方に移動する水蒸気をさらに加熱することができる。これにより、水蒸気による褐炭の乾燥がより促進されることとなる。
【0023】
制御部150は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して乾燥システム100全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部150は、導入部110、水蒸気供給部130(水蒸気送出部134)、抜出部124(バルブ124b)を制御する。制御部150による導入部110、水蒸気供給部130、および、抜出部124の制御については、後に詳述する。
【0024】
また、収容部120には、上部に設けられたガス排出口122b、ガス排出口122bに接続されたガス排出管122cを介して、分離装置160が接続されている。収容部120は、収容部120内のガス(水蒸気供給部130から供給された水蒸気、および、褐炭から蒸発した水蒸気)とともに、収容部120内において飛散した粒子状の褐炭を分離装置160に送出する。分離装置160は、固気分離装置(サイクロン)であり、気体(水蒸気)と固体(粒子状の褐炭)とを分離し、分離された粒子状の褐炭は、下降管162から排出される。
【0025】
さらに、収容部120には、排出口122dが設けられており、導入口122aから未乾燥の褐炭が導入されると、それによって流動層の体積が増し、乾燥された褐炭が排出口122dからオーバーフローして収容部120外に排出されることで、乾燥した褐炭を得ることができる。
【0026】
以上説明したように、乾燥システム100では、水蒸気によって褐炭が乾燥されることとなるが、褐炭の乾燥を開始する際(乾燥システム100を起動する際)に、褐炭が凝集して、流動性が損なわれることがある。具体的に説明すると、褐炭のうち、予め定められた粒径(以下、「凝集粒径」と称する)以下の褐炭は、水(液体)によって凝集することがあり、塊状の凝集体(所謂アグロメ)となる。凝集体は、流動性が極めて低いため、収容部120内において凝集体が生じてしまうと、流動層の形成が困難となり、褐炭が乾燥できなくなる事態が生じる。
【0027】
また、乾燥システム100の起動前は、収容部120内が空であり(収容部120に褐炭等の固形物が収容されておらず)、収容部120内の雰囲気温度は、常温(例えば、5℃〜35℃)である。そして、乾燥システム100を起動する際には、水蒸気供給部130が収容部120内に高温の水蒸気を供給するとともに、導入部110が常温の褐炭を収容部120内に導入する。そうすると、収容部120に収容された固形物は、常温の褐炭のみとなり、常温の褐炭と水蒸気とが接触することによって、水蒸気が凝縮して水(液体)となる。そうすると、上記凝集粒径以下の褐炭が凝集して塊状の凝集体となり、流動層が形成されなくなってしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、乾燥システム100において、主たる被収容物である褐炭を乾燥させる前に、被収容物として他の粒子を収容部120に導入して、収容部120内を予め加熱する。
【0029】
図2は、乾燥システム100を起動する際の制御部150による制御を説明するための図である。なお、理解を容易にするために、
図2では、抜出部124、伝熱管140、分離装置160を省略する。また、
図2中、蓄熱粒子を白い丸で、褐炭を黒い丸で示す。
【0030】
図2(a)に示すように、褐炭の乾燥を開始する前に、制御部150は、導入部110を制御して、収容部120に蓄熱粒子(被収容物)を導入させるとともに、水蒸気供給部130(水蒸気送出部134)を制御して、高温(100℃以上、例えば、110℃)の水蒸気を収容部120に供給させる。ここで、蓄熱粒子は、褐炭より質量密度が大きく、水蒸気の温度で反応しない固体粒子であり、例えば、アルミナである。
【0031】
なお、この際、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して、蓄熱粒子を流動させ得る第1の流速で水蒸気を供給させて、収容部120内において蓄熱粒子の流動層を形成する。ここで、第1の流速は、蓄熱粒子の最小流動化速度Umf以上の任意の流速(例えば、3Umf_蓄熱粒子)である。
【0032】
そうすると、高温の水蒸気によって、収容部120内に、蓄熱粒子の流動層が形成されるとともに、蓄熱粒子が加熱されることとなる。また、本実施形態において、導入部110は、排出口122dからオーバーフローしない量の蓄熱粒子を収容部120に導入しているため、排出口122dから蓄熱粒子が排出されることはない。
【0033】
そして、不図示の温度測定部によって測定された蓄熱粒子の温度が、予め定められた乾燥温度になったら、
図2(b)に示すように、制御部150は、導入部110を制御して、収容部120に褐炭を導入させる。ここで、乾燥温度は、水蒸気の飽和温度より高い温度(例えば、110℃)である。蓄熱粒子を乾燥温度とすることで、常温の褐炭に水蒸気が接触することで生じる凝縮した水(液体)を蒸発させ、結果的に褐炭の凝集を防止できる。
【0034】
また、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して、収容部120内において蓄熱粒子および褐炭の流動層が形成されるように、収容部120に供給する水蒸気の流速を調整させる。具体的に説明すると、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して、第1の流速未満であって蓄熱粒子の最小流動化速度以上の第2の流速で水蒸気を供給させる。第2の流速が蓄熱粒子の最小流動化速度以上であることにより、褐炭および蓄熱粒子が混在した流動層を形成できる。また、第2の流速が第1の流速未満であることにより、流動層の表面からの褐炭の飛散を抑制することが可能となる。
【0035】
続いて、褐炭の温度が乾燥温度になったら、
図2(c)に示すように、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して、収容部120内において蓄熱粒子の固定層と褐炭の流動層とが形成されるように、収容部120に供給する水蒸気の流速を調整させる。具体的に説明すると、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して、蓄熱粒子の最小流動化速度未満であって褐炭の最小流動化速度以上の第3の流速で水蒸気を供給させる。第3の流速が蓄熱粒子の最小流動化速度未満であることにより、収容部120の下部に蓄熱粒子の固定層を形成することができる。また、第3の流速が褐炭の最小流動化速度以上であることにより、蓄熱粒子の固定層の上に褐炭の流動層を形成することが可能となる。
【0036】
そして、制御部150は、バルブ124b(
図1参照)を開き、固定層となっている蓄熱粒子を収容部120から抜き出す。
【0037】
こうして、乾燥システム100の起動が完了し、通常運転へと移行する。そうすると、未乾燥の褐炭の導入によって、褐炭で形成された流動層の体積が増し、加熱され乾燥された褐炭が排出口122dからオーバーフローして収容部120外に排出されることとなる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、水蒸気で褐炭を乾燥させる前に、蓄熱粒子を収容部120に導入して流動させ加熱する。蓄熱粒子は、水蒸気で凝集しないため、収容部120内において、乾燥温度の褐炭の流動層を形成することができる。そして、乾燥温度に加熱された蓄熱粒子(固形物)が収容され、水蒸気が供給される収容部120に、褐炭が導入されたとしても、蓄熱粒子の熱、および、水蒸気の熱を褐炭に伝達することができるため、褐炭に水蒸気が接触しても、凝縮しない、もしくは、凝縮する水の量を低減することが可能となる。また、蓄熱粒子は、質量密度が大きく、運動慣性も大きいため、凝集した褐炭の塊を破壊する役割も担っている。これにより、褐炭の凝集を抑制することが可能となり、褐炭を効率よく乾燥させることができる。
【0039】
また、褐炭が乾燥温度に到達したら、収容部120内において蓄熱粒子の固定層と褐炭の流動層とが形成されるように、水蒸気の流速を調整する構成により、蓄熱粒子が排出口122dからオーバーフローすることなく、褐炭のみをオーバーフローさせて外部に排出することが可能となる。
【0040】
(乾燥システム100の起動方法)
続いて、乾燥システム100の起動方法について説明する。
図3は、乾燥システム100の起動方法の処理の流れを説明するための図である。なお、乾燥システム100の起動方法において、ユーザによって停止指示が入力された場合、制御部150は、そのときに遂行している処理を停止する。
【0041】
図3に示すように、まず、制御部150は、導入部110を制御して蓄熱粒子を収容部120に導入させ、水蒸気供給部130を制御して収容部120に水蒸気を供給させて、収容部120内において蓄熱粒子の流動層を形成する(S110)。
【0042】
そして、制御部150は、蓄熱粒子の温度が乾燥温度以上になったか否かを判定し(S120)、乾燥温度以上になるまで(S120におけるNO)、蓄熱粒子の流動層を維持する。
【0043】
蓄熱粒子の温度が乾燥温度以上になったら(S120におけるYES)、制御部150は、導入部110を制御して収容部120に褐炭を導入させ、水蒸気供給部130を制御して収容部120に供給する水蒸気の流速を調整させて、収容部120内において蓄熱粒子および褐炭が混在した流動層を形成する(S130)。
【0044】
そして、制御部150は、褐炭の温度が乾燥温度以上になったか否かを判定し(S140)、乾燥温度以上になるまで(S140におけるNO)、蓄熱粒子および褐炭が混在した流動層を維持して、蓄熱粒子の熱を褐炭に伝達させる。
【0045】
褐炭の温度が乾燥温度以上になったら(S140におけるYES)、制御部150は、水蒸気供給部130を制御して収容部120に供給する水蒸気の流速を調整させ、収容部120内において蓄熱粒子の固定層と褐炭の流動層を形成する(S150)。
【0046】
そして、制御部150は、抜出部124のバルブ124bを開いて、蓄熱粒子を収容部120から抜き出す(S160)。
【0047】
以上説明したように、本実施形態にかかる乾燥システム100および乾燥システム100の起動方法によれば、乾燥システム100を起動する際に、まず、蓄熱粒子を導入して水蒸気で流動層を形成するといった簡易な構成で、褐炭の凝集を抑制して、褐炭を効率よく乾燥させることが可能となる。これにより、褐炭の輸送コストを低減し、エネルギー効率を向上することができる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上記実施形態において、乾燥システム100が抜出部124を備え、褐炭の温度が乾燥温度以上になったら、蓄熱粒子を収容部120内から抜き出す構成について説明した。しかし、抜出部124は必須の構成ではない。抜出部124を備えない構成において、蓄熱粒子は、収容部120内に収容されたままとなり、導入部110が蓄熱粒子を導入することはない。なお、この場合、制御部150による水蒸気供給部130の制御により、収容部120内において蓄熱粒子の流動層が形成されたり、蓄熱粒子の固定層が形成されたりすることとなる。
【0050】
また、上記実施形態において、抜出部124が蓄熱粒子を抜き出した後に、導入部110が、褐炭を連続的に収容部120に導入する通常運転へと移行する場合を例に挙げて説明した。しかし、通常運転へ移行してから蓄熱粒子を抜き出してもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、蓄熱粒子としてアルミナを例に挙げて説明したが、褐炭より質量密度が大きく、水蒸気の温度で反応しない固体粒子であればよい。例えば、シリカ、鉄等の金属で蓄熱粒子を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、水蒸気を用いて褐炭を乾燥させる乾燥システム、および、乾燥システムの起動方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 乾燥システム
110 導入部
120 収容部
124 抜出部
130 水蒸気供給部