特許第6686391号(P6686391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686391
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】車両用ハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20200413BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20200413BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20200413BHJP
【FI】
   E05B77/06 A
   B60J5/04 H
   E05B85/16 Z
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-233231(P2015-233231)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-101398(P2017-101398A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸和
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 潤
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156935(JP,A)
【文献】 特開2013−095253(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0080547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに固定されたハンドル支持部材と、
前記ハンドル支持部材に回転可能に支持され、回転することにより前記車両ドアに設けられたロック装置をラッチ状態からアンラッチ状態に移行させるハンドルと、
前記ハンドル支持部材に対して所定の回転軸まわりに回転可能として装着される回転部材と、
螺旋状に延びかつ前記回転軸の周囲に配設された本体部、並びに、該本体部の両端からそれぞれ延びる第一係合片及び第二係合片を備え、前記本体部が弾性変形した状態で前記第一係合片と前記第二係合片を前記回転部材と前記ハンドル支持部材とにそれぞれ係合させたときに前記回転部材を前記回転軸まわりに回転させる付勢力を発生する捩じりコイルバネと、
を備え、
前記回転部材が、
前記第一係合片が係合する第一係合部と、
前記本体部が弾性変形した状態で前記第二係合片が係合可能かつ離脱可能な第二係合部と、
を備え
前記第一係合片が前記第一係合部に係合しかつ前記第二係合片が前記第二係合部に係合した状態で前記回転部材を前記ハンドル支持部材に支持したときに、前記第二係合片が前記ハンドル支持部材に設けた支持部材側係合部から離間し、かつ、前記捩じりコイルバネの前記本体部を前記回転軸に沿ってスライドさせることにより前記第二係合片を前記第二係合部から離脱させたときに、前記第二係合片が前記支持部材側係合部に係合する、車両用ハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ハンドル装置において、
前記ハンドルが、前記ロック装置を前記ラッチ状態にする初期位置と、前記ロック装置を前記アンラッチ状態にする操作位置と、の間を回転可能であり、
前記ハンドルと前記ロック装置との間に、前記ハンドルが前記初期位置から前記操作位置へ回転するときの回転力を前記ロック装置に伝達して該ロック装置を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態へ移行させる連係機構を設け、
前記回転部材が、前記連係機構の動作を妨げない非規制位置と、前記連係機構の動作を妨げる規制位置と、に回転可能であり、所定方向の慣性力を受けたときに前記非規制位置から前記規制位置に回転する慣性レバーである、車両用ハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図21及び図22は、車体に対して開閉可能な車両ドアの車外側面を構成するアウタパネルに対して固定されるハンドル装置の一例を示している。
このハンドル装置は、ベース部材であるハンドル支持部材と、ハンドル支持部材の車外側に位置しかつハンドル支持部材によって回転可能に支持されたアウトサイドハンドル(図示略)と、を備えている。アウトサイドハンドルはハンドル支持部材に対して、初期位置と操作位置との間を回転可能である。
【0003】
ハンドル支持部材には、図示を省略した連係機構が設けられている。この連係機構の一部はアウトサイドハンドルに連係されている。さらに連係機構の別の一部は金属製のロッド(図示略)の一端に接続されている。このロッドの他端は、車両ドアに設けられたロック装置と連係している。
アウトサイドハンドルが初期位置から操作位置へ回転すると連係機構が動作する。すると、アウトサイドハンドルの回転力が連係機構を介してロッドに伝わり、ロッドが移動する。するとロッドの他端に接続されたロック装置が、ラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えられる。その結果、車両ドアが車体に対して開閉可能になる。
【0004】
例えば、上記ハンドル装置を搭載した車両が別の車両と衝突すると、衝突によって当該車両に慣性力が働く。そして、ハンドル装置に働いた慣性力の方向がアウトサイドハンドルの初期位置から操作位置への移動方向と(おおよそ)一致すると、この慣性力によってアウトサイドハンドルが操作位置へ移動し、ロック装置が不意にラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わるおそれがある。
【0005】
この問題に対処するために、上記ハンドル支持部材には図示する慣性レバーが回転可能に設けられている。
図示するように慣性レバーは、レバー本体と、レバー本体の中央部に固定された回転軸と、レバー本体の一方の端部に固定されかつレバー本体よりも比重が大きい材料によって構成されたカウンターウェイトと、を一体的に備えている。
この慣性レバーはハンドル支持部材に対して、連係機構の動作を妨げない非規制位置と、連係機構の動作を妨げる規制位置と、の間を回転可能である。
さらに慣性レバーとハンドル支持部材の間には捩じりコイルバネが設けられている。この捩じりコイルバネは、慣性レバーを非規制位置に回転付勢している。
【0006】
通常時(ハンドル装置を搭載した車両に衝突などが発生していないとき)は、捩じりコイルバネによって慣性レバーは非規制位置に位置決めされるので、慣性レバーは連係機構の動作を妨げない。従って、車両の乗客がアウトサイドハンドルを初期位置から操作位置へ回転させると、この動きに連動して連係機構が動作し、その結果、ロック装置がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。
【0007】
その一方で、車両の衝突に起因して、アウトサイドハンドルの初期位置から操作位置への移動方向と(おおよそ)一致する方向の慣性力がハンドル装置に働くと、この慣性力によって慣性レバーが非規制位置から規制位置へ素早く移動する。即ち、この慣性力を受けたアウトサイドハンドルが初期位置から操作位置へと移動する前に、慣性レバーが非規制位置から規制位置へ移動する。
そのため、アウトサイドハンドルの操作位置への移動に連動した連係機構の動作が、規制位置に位置する慣性レバーによって規制される。
従って、ロック装置が不意にラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えられるおそれを小さくすることが可能である。
【0008】
上記ハンドル装置では、慣性レバー及び捩じりコイルバネは以下の手順によってハンドル支持部材に取り付けられる。
【0009】
まず図21及び図22に示すように、ハンドル支持部材(図23参照)から分離させた慣性レバーに対して捩じりコイルバネを装着する。
捩じりコイルバネは、螺旋状に延びる筒状の本体部、並びに、本体部の両端からそれぞれ延びる第一係合片及び第二係合片を備えている。
図21及び図22に示すように捩じりコイルバネは、慣性レバーの回転軸を本体部に挿入することにより慣性レバーに取り付けられる。
【0010】
図示するように慣性レバーには、捩じりコイルバネの第一係合片と係合可能なレバー側係合部が設けられている。しかし慣性レバーは、捩じりコイルバネの第二係合片と係合可能な部位を具備していない。
そのため慣性レバーに装着した捩じりコイルバネ(本体部)は、回転軸に対して回転可能である。
【0011】
続いて、作業者が手で慣性レバー及び捩じりコイルバネを把持しながら、第一係合片をレバー側係合部に係合させる。
さらに、手で把持した第二係合片をハンドル支持部材に形成された支持部材側係合部に係合させ、支持部材側係合部から受ける反力によって第二係合片を十分に撓ませる。
そして、第二係合片の撓み状態を維持しながら、慣性レバーの回転軸の両端部を、ハンドル支持部材の壁の内面に形成された一対の支持凹部(図示略)に嵌合可能な位置まで移動させる。
そして、図23に示すように、第二係合片と支持部材側係合部との係合状態を維持しながら、慣性レバーの回転軸の両端部をハンドル支持部材の一対の支持凹部に嵌合させる。
【0012】
このようにして慣性レバーをハンドル支持部材に装着すると、慣性レバーがハンドル支持部材に対して回転軸まわりに回転可能となる。さらに、捩じりコイルバネの本体部が弾性変形し、捩じりコイルバネが慣性レバーを非規制位置側に回転付勢する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−156935号公報
【発明の概要】
【0014】
(発明が解決しようとする課題)
上記ハンドル装置では、慣性レバーがハンドル支持部材から分離されているときに(取り付けられる前に)、捩じりコイルバネの慣性レバーに対する回転が規制されない。
そのため上記したように、慣性レバーをハンドル支持部材に装着するときには、作業者が手で第二係合片を支持部材側係合部に係合させながら、慣性レバーの回転軸の両端部をハンドル支持部材の一対の支持凹部に嵌合させる必要がある。しかし、これらの作業は決して容易ではない。
【0015】
なお、仮に第二係合片を手で把持せずに慣性レバー及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に取り付けようとすると、取り付け作業中に捩じりコイルバネが慣性レバーに対して相対回転してしまう。そのため、例えば第二係止片がハンドル支持部材の支持部材側係合部以外の部位に対して引っ掛かり、その結果、慣性レバーの回転軸の両端部をハンドル支持部材の一対の支持凹部に嵌合できなくなるおそれがある。
【0016】
本発明は、捩じりコイルバネによって回転部材を回転付勢できるように、回転可能な回転部材及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に対して容易に装着可能な車両用ハンドル装置を提供することを目的とする。
【0017】
(課題を解決するための手段)
本発明は、車両ドアに固定されたハンドル支持部材と、前記ハンドル支持部材に回転可能に支持され、回転することにより前記車両ドアに設けられたロック装置をラッチ状態からアンラッチ状態に移行させるハンドルと、前記ハンドル支持部材に対して所定の回転軸まわりに回転可能として装着される回転部材と、螺旋状に延びかつ前記回転軸の周囲に配設された本体部、並びに、該本体部の両端からそれぞれ延びる第一係合片及び第二係合片を備え、前記本体部が弾性変形した状態で前記第一係合片と前記第二係合片を前記回転部材と前記ハンドル支持部材とにそれぞれ係合させたときに前記回転部材を前記回転軸まわりに回転させる付勢力を発生する捩じりコイルバネと、を備え、前記回転部材が、前記第一係合片が係合する第一係合部と、前記本体部が弾性変形した状態で前記第二係合片が係合可能かつ離脱可能な第二係合部と、を備え、前記第一係合片が前記第一係合部に係合しかつ前記第二係合片が前記第二係合部に係合した状態で前記回転部材を前記ハンドル支持部材に支持したときに、前記第二係合片が前記ハンドル支持部材に設けた支持部材側係合部から離間し、かつ、前記捩じりコイルバネの前記本体部を前記回転軸に沿ってスライドさせることにより前記第二係合片を前記第二係合部から離脱させたときに、前記第二係合片が前記支持部材側係合部に係合する。
【0018】
回転部材が、捩じりコイルバネの第一係合片が係合する第一係合部と、捩じりコイルバネの本体部が弾性変形した状態で第二係合片が係合可能かつ離脱可能な第二係合部と、を備えている。
そのため、捩じりコイルバネの回転部材に対する相対回転を規制した状態で、回転部材及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に装着可能である。そのため、慣性レバー及び捩じりコイルバネのハンドル支持部材への取り付け作業中に、例えば第二係止片がハンドル支持部材の支持部材側係合部以外の部位に対して引っ掛かり、その結果、慣性レバー及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に装着できなくなるおそれは小さい
【0021】
さらに、前記第一係合片が前記第一係合部に係合しかつ前記第二係合片が前記第二係合部に係合した状態で前記回転部材を前記ハンドル支持部材に支持したときに、前記第二係合片が前記ハンドル支持部材に設けた支持部材側係合部から離間し、かつ、前記捩じりコイルバネの前記本体部を前記回転軸に沿ってスライドさせることにより前記第二係合片を前記第二係合部から離脱させたときに、前記第二係合片が前記支持部材側係合部に係合するように構成される
そのため、第二係合片を第二係合部から離脱させてハンドル支持部材に係合させれば、捩じりコイルバネが回転部材をハンドル支持部材に対して回転軸まわりに回転させる付勢力を発生する。
従って、捩じりコイルバネによって回転部材をハンドル支持部材に対して回転付勢できるように、回転部材及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に対して容易に装着可能である。
【0022】
そして、このように構成すれば、第二係合片を第二係合部に係合させたまま、回転部材をハンドル支持部材に装着できる。換言すると、捩じりコイルバネの回転付勢力の影響を受けることなく、回転部材をハンドル支持部材に装着できる。そのため、小さい力で回転部材をハンドル支持部材に装着可能である。
また、回転部材をハンドル支持部材に装着した後に、捩じりコイルバネの本体部を回転軸に沿ってスライドさせれば、第二係合片を第二係合部から離脱させて支持部材側係合部に係合させれば、捩じりコイルバネが回転部材を回転付勢できるようになる。
従って、捩じりコイルバネによって回転部材をハンドル支持部材に対して回転付勢できるように回転部材及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に対して装着する作業をより容易に行うことが可能になる。
【0023】
前記ハンドルが、前記ロック装置を前記ラッチ状態にする初期位置と、前記ロック装置を前記アンラッチ状態にする操作位置と、の間を回転可能であり、前記ハンドルと前記ロック装置との間に、前記ハンドルが前記初期位置から前記操作位置へ回転するときの回転力を前記ロック装置に伝達して該ロック装置を前記ラッチ状態から前記アンラッチ状態へ移行させる連係機構を設け、前記回転部材が、前記連係機構の動作を妨げない非規制位置と、前記連係機構の動作を妨げる規制位置と、に回転可能であり、所定方向の慣性力を受けたときに前記非規制位置から前記規制位置に回転する慣性レバーであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態の車両ドアの車外側から見た側面図である。
図2】ハンドル装置の車内側から見た側面図である。
図3】ハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図4】保護カバーを取り外したときのハンドル装置の車内側から見た側面図である。
図5】保護カバーを取り外したときのハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図6図4のVI−VI矢線に沿う断面図である。
図7】保護カバーを取り外しかつ慣性レバー及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材から分離したときのハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図8】一体化した慣性レバー及び捩じりコイルバネの下方から見た斜視図である。
図9】捩じりコイルバネと一体化した慣性レバーをハンドル支持部材に装着作業中の様子を示す、ハンドル支持部材及び慣性レバーを水平面に沿って切断した断面図である。
図10】慣性レバー及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に装着したときの図9と同様の断面図である。
図11図2のXI−XI矢線に沿う断面図である。
図12】車両用ハンドルを搭載した車両が別の車両と衝突したときの図3と同様の斜視図である。
図13】車両用ハンドルを搭載した車両が別の車両と衝突したときの図6と同様の断面図である。
図14】車両用ハンドルを搭載した車両が別の車両と衝突したときの連係機構、慣性レバー及び保護カバーを示す平面図である。
図15】本発明の第2の実施形態の慣性レバー及び回転中心軸をハンドル支持部材から分離したときのハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図16】互いに分離した慣性レバー及び捩じりコイルバネの車内側から見た斜視図である。
図17】一体化した慣性レバー及び捩じりコイルバネの車内側から見た斜視図である。
図18】一体化した慣性レバー及び捩じりコイルバネの底面図である。
図19】慣性レバー及び回転中心軸をハンドル支持部材に装着した直後のハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図20図19の状態から捩じりコイルバネを下方へ移動させることにより完成したハンドル装置の車内側から見た斜視図である。
図21】比較例の一体化した慣性レバー及び捩じりコイルバネの側面図である。
図22】比較例の一体化した慣性レバー及び捩じりコイルバネの底面図である。
図23】慣性レバー及び捩じりコイルバネをハンドル支持部材に装着したときのハンドル装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施形態について図1乃至図14を参照しながら説明する。なお、以下の説明中の方向は図面に記載された矢印の方向である。
図1に示す車両ドア10は、車体(図示略)に対して上下方向の回転軸まわりに回転可能として支持されており、車体の側面に形成された開口部を開閉可能である。本実施形態の車両ドア10は右側のサイドドアである。
車両ドア10の下半部を構成するドア本体11の車外側面は金属板からなるアウタパネル12により構成されている。
車両ドア10の内部には、その一部が車両ドア10の後端面において露出するロック装置13が設けられている。このロック装置13は、ラッチやポールを備える周知の構造である。ロック装置13は、車両ドア10の車内側面を構成するトリム(図示略)の上端面に上下方向にスライド自在に設けられたロックノブ14と連係している。さらにロック装置13は、アウタパネル12に回転可能に支持されたアウトサイドハンドル21を具備するハンドル装置20と連係している。
【0026】
周知のように、車両ドア10が車体の開口部を閉じている場合にロックノブ14がロック位置(図示略)に位置するときは、ロック装置13はラッチが車体に固定されたストライカ(図示略)を把持するラッチ状態となる。この場合は、アウトサイドハンドル21を初期位置(図1に示す位置)から回転操作しても、ロック装置13はラッチ状態を維持する。一方、ロックノブ14がアンロック位置(図1の位置)に位置する場合は、アウトサイドハンドル21を初期位置から車外側へ回転させて操作位置(図示略)へ移動させると、ロック装置13はラッチがストライカを解放するアンラッチ状態となる。従って、車両ドア10を車体に対して開方向に回転させることが可能になる。
【0027】
続いてハンドル装置20の詳しい構造について説明する。
ハンドル装置20は大きな構成要素としてアウトサイドハンドル21(ハンドル)、ハンドル支持部材23、ハンドル支持アーム45、連係機構47、慣性レバー65、捩じりコイルバネ81及び保護カバー87を具備している。
【0028】
硬質樹脂製のハンドル支持部材23は、図2乃至図5及び図7等に示すように前後方向に延びる一体成形品である。
ハンドル支持部材23は、その車外側面を構成する車外側壁24と、車外側壁24の上縁部と下縁部からそれぞれ車内側に向かって突出する天井壁25及び底部壁26と、を備えている。
ハンドル支持部材23の後部には、車外側壁24を車幅方向(車内外方向)に貫通するアーム用貫通孔28が形成されている。図示は省略してあるが、アウトサイドハンドル21の車内側面の前部には車内側に向かって延びる連係アームが突設されている。この連係アームはアーム用貫通孔28を車幅方向に相対移動可能に貫通している。
底部壁26の上面には円柱形状の下側支持軸30が上向きに突設されている。車外側壁24の車内側面には、下側支持軸30の直上に位置しかつ車内側に向かって突出する支持突片31が設けられている。支持突片31の上面には、下側支持軸30と同軸をなす円柱形状の上側支持軸32が上向きに突設されている。
底部壁26の上面及び車外側壁24の車内側面には、下側支持軸30より前方に位置するバネ受け壁34が突設されている。図示するように、バネ受け壁34の上部は下部に比べて一段車外側に後退している。このバネ受け壁34の上部は支持部材側係合部35を構成している。図9及び図10等に示すように、支持部材側係合部35の車内側面は、鉛直方向に見たときに前後方向及び車幅方向に対して傾斜する傾斜面36となっている。
【0029】
図2乃至図4及び図7に示すように、ハンドル支持部材23の前端部の上下両面には、上下一対のハンドル支持アーム45が支持されている。具体的には、上下のハンドル支持アーム45の一端がそれぞれ、上下方向に延びる回転軸46を介してハンドル支持部材23に回転可能に支持されている。
上下のハンドル支持アーム45の他端に対してはアウトサイドハンドル21の車内側面の前端部に突設された接続部(図示略)を着脱可能である。
【0030】
ハンドル支持部材23の後部には連係機構47が設けられている。連係機構47は主な構成要素としてベルクランク48、捩じりコイルバネ57及び連結レバー62を備えている。
ベルクランク48は樹脂製のベース部49と、連結軸53と、金属製のカウンターウェイト55と、を備えている。
ベース部49の一部は、その軸線が前後方向に延びる回転中心軸50によって構成されている。回転中心軸50は、ハンドル支持部材23に対してその軸線まわりに回転可能に支持されている。
さらにベース部49は入力アーム51及び出力部52を備えている。入力アーム51は下方に延びており、その先端部はアーム用貫通孔28内に位置しかつアーム用貫通孔28内でアウトサイドハンドル21の連係アームと連係している。出力部52は回転中心軸50の上方に位置している。出力部52には、出力部52を前後方向に貫通する連結軸53が固定されている。連結軸53の前端部は、出力部52の前端面から前方に突出する当接端部54によって構成されている。
ベルクランク48の上端部は、出力部52に固定された金属製のカウンターウェイト55によって構成されている。このカウンターウェイト55の構成材料の比重はベース部49及び連結軸53より大きい。そのためベルクランク48の重心は、回転中心軸50よりも上方(カウンターウェイト55側)に位置している。
【0031】
連係機構47の入力アーム51はアウトサイドハンドル21の連係アームと連係しているため、ベルクランク48はアウトサイドハンドル21と連動して回転する。即ち、アウトサイドハンドル21が初期位置に位置するときは、ベルクランク48は図2乃至図5の初期位置に位置し、アウトサイドハンドル21が操作位置に位置するときは、図12に示す操作位置に位置する。また、ベルクランク48が初期位置から操作位置に回転すると、当接端部54はその車幅方向位置を殆ど変えずに、ベルクランク48が初期位置に位置するときと比べて下方に位置する。
【0032】
ベース部49の回転中心軸50には捩じりコイルバネ57が装着されている。捩じりコイルバネ57は、回転中心軸50の周囲に配設された螺旋状かつ軸線が前後方向に延びる筒状の本体部58と、本体部58の両端に突設された第一係合片59及び第二係合片60を備えている。第一係合片59はハンドル支持部材23に係合しており、第二係合片60は連結軸53に係合している。さらに本体部58は自由状態から弾性変形しているため、捩じりコイルバネ57は常に弾性力をベルクランク48に付与する。
捩じりコイルバネ57の弾性力は、ベルクランク48を上記初期位置に向けて回転付勢する方向の力である。さらに、上述したように、ベルクランク48の重心は回転中心軸50よりも上方(カウンターウェイト55側)に位置している。従って、アウトサイドハンドル21及びベルクランク48に対して捩じりコイルバネ57以外の外力を付与しないとき、捩じりコイルバネ57の付勢力及びベルクランク48のカウンターウェイト55によって、アウトサイドハンドル21及びベルクランク48はいずれも上記初期位置に保持される。
【0033】
連結軸53の後端部は出力部52の後端面から後方に突出している。そして連結軸53の後端部には上下方向に延びる連結レバー62の上端部が固定されている。連結レバー62の下端部は図示を省略したアウトサイドオープンレバーと連係している。このアウトサイドオープンレバーはロック装置13と連係している。ベルクランク48が上記初期位置に位置するとき、連結レバー62は図2乃至図5の初期位置に位置し、ベルクランク48が操作位置に位置するとき、連結レバー62は図12に示す操作位置に位置する。連結レバー62が初期位置に位置するとき、ロック装置13はラッチ状態を維持する。一方、ロックノブ14がアンロック位置(図1の位置)に位置する場合に連結レバー62が操作位置に移動すると、ロック装置13はアンラッチ状態となる。
【0034】
慣性レバー65(回転部材)は樹脂製のレバー本体66を備えている。レバー本体66は、その中央部を構成する基部67と、基部67から後方と前方にそれぞれ延びる第一アーム68及び第二アーム69と、基部67から下方に延びかつ下面が開放された円筒状の回転軸70と、を一体的に備えている。
第一アーム68の先端部にはストッパ部71が設けられている。さらに第一アーム68の先端部には、第一アーム68を上下方向に貫通しかつ後面が開放された凹部72が形成されている。
基部67の下端部には、回転軸70の外周側に位置しかつ互いに離間した第一係合部73及び第二係合部74が設けられている。基部67の上下方向の中央部には、基部67を車幅方向(レバー本体66の厚み方向)に貫通する受容孔75が形成されている。また、基部67の上端部には、上面及び車内側面が開放した上端凹部76が形成されている。受容孔75と上端凹部76との間には水平板状の仕切壁77が形成されている。さらに仕切壁77には、仕切壁77を上下方向に貫通する断面円形の回転支持孔78が形成されている。
さらに慣性レバー65は、第二アーム69の先端部に固定された金属製のカウンターウェイト79を備えている。カウンターウェイト79は、その軸線が上下方向に延びる棒状体である。カウンターウェイト79の構成材料の比重はレバー本体66より大きい。そのため慣性レバー65の重心は、回転軸70よりも前方(カウンターウェイト79側)に位置している。
【0035】
慣性レバー65に着脱可能に装着された金属製の捩じりコイルバネ81は、本体部82、第一係合片83及び第二係合片84を一体的に備えている。本体部82は螺旋状に延びており、その全体形状は軸線が上下方向に延びる円筒形状である。第一係合片83及び第二係合片84は、本体部82の両端部からそれぞれ直線的に延びている。
【0036】
慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81は互いに一体化された状態でハンドル支持部材23に装着される。
捩じりコイルバネ81を慣性レバー65に装着するには、まず本体部82に対して上から回転軸70を遊嵌する。次いで、図7乃至図9に示すように、第一係合片83と第二係合片84を第一係合部73と第二係合部74に対してそれぞれ係合させる。すると、本体部82が自由状態から弾性変形し、第一係合片83と第二係合片84を第一係合部73と第二係合部74に対してそれぞれ押し付ける方向の回転付勢力を発生する。従って、捩じりコイルバネ81の慣性レバー65に対する相対回転は規制される。
【0037】
このようにした互いに一体化された慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材23に取り付けるには、まず図7及び図9に示すように捩じりコイルバネ81を車内側からハンドル支持部材23の中央部に対して接近させて、受容孔75に支持突片31及び上側支持軸32を挿入する。すると、図10に示すように、回転軸70が下側支持軸30の直上に位置しかつ回転軸70及び下側支持軸30が互いに同軸をなす。さらに、慣性レバー65が図9の位置から図10の位置へ移動する間に、捩じりコイルバネ81の第二係合片84がハンドル支持部材23の支持部材側係合部35の傾斜面36に対して車内側から接触する。この状態から慣性レバー65を図10の位置まで移動させると、第二係合片84は傾斜面36に接触したまま、本体部82の回転付勢力に抗して第二係合部74から車内側へ離間する。
【0038】
続いて、この状態から慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81を下方に移動させて、図5に示すように、回転軸70の下端開口部を通して下側支持軸30を回転軸70の内部に回転可能に嵌合し、さらに回転支持孔78に対して上側支持軸32を下方から回転可能に嵌合する。
【0039】
このようにして慣性レバー65をハンドル支持部材23に対して取り付けたら、図11に示すように、ハンドル支持部材23(及び後述する保護カバー87)とは別体の押え用部材96を、ハンドル支持部材23の天井壁25の下面と慣性レバー65の基部67の上端面との間に挿入する。さらに押え用部材96とハンドル支持部材23とを、接着等の手段により互いに固定する。その結果、押え用部材96によって慣性レバー65のハンドル支持部材23(下側支持軸30、支持突片31)に対する上方への相対移動が規制される。従って、慣性レバー65がハンドル支持部材23(下側支持軸30、支持突片31)から脱落するおそれは殆ど無くなる。
【0040】
このようにして慣性レバー65をハンドル支持部材23に対して取り付けると、慣性レバー65はハンドル支持部材23に対して図2乃至図6に示す非規制位置と、図12乃至図14に示す規制位置と、の間を回転可能となる。図6に示すように慣性レバー65の非規制位置は、ストッパ部71の車外側端面が車外側壁24に形成されたストッパ面24aに当接することにより規定される。さらに、捩じりコイルバネ81の第一係合片83が慣性レバー65の第一係合部73に係合しかつ第二係合片84がハンドル支持部材23の支持部材側係合部35の傾斜面36に係合するので、捩じりコイルバネ81の回転付勢力がハンドル支持部材23と慣性レバー65とに及ぶ。このときの捩じりコイルバネ81の回転付勢力は、慣性レバー65をハンドル支持部材23に対して平面視で反時計方向に回転させる方向である。そのため、慣性レバー65に対して捩じりコイルバネ81の回転付勢力以外の外力を及ぼさないとき、慣性レバー65は非規制位置に保持される。
また、図3及び図5に示すように、慣性レバー65が非規制位置に位置する場合は、ベルクランク48が初期位置と操作位置との間のいずれの位置に位置するときも、ベルクランク48の当接端部54とレバー本体66の凹部72の車幅方向位置は一致する。一方、図12及び図14に示すように、慣性レバー65が規制位置に位置する場合は、ベルクランク48が初期位置と操作位置との間のいずれの位置に位置するときも、ベルクランク48の当接端部54とレバー本体66のストッパ部71の車幅方向位置は一致する。
【0041】
ハンドル支持部材23の車内側面には、樹脂製の保護カバー87が着脱自在に装着されている。
保護カバー87は、側面形状が略矩形をなす基板部88を備えている。
【0042】
保護カバー87は、基板部88によって慣性レバー65(の大部分)及び捩じりコイルバネ81を車内側から覆いながらハンドル支持部材23に装着される。ハンドル支持部材23及び保護カバー87は互いに係合する係合手段を具備している。そのため、保護カバー87がハンドル支持部材23から不意に脱落するおそれは殆どない。
【0043】
以上構成のハンドル装置20は、アウトサイドハンドル21(ハンドル)、ハンドル支持部材23、ハンドル支持アーム45、連係機構47、慣性レバー65、捩じりコイルバネ81及び保護カバー87を互いに組み付けた後にアウタパネル12に固定される。
このとき、作業者は手でハンドル装置20を把持しながらハンドル装置20をアウタパネル12に固定することになる。しかし図2図3及び図12に示すように、保護カバー87によって慣性レバー65(の大部分)及び捩じりコイルバネ81が車内側から覆われるので、作業者が誤って手で慣性レバー65を規制位置へ回転させてしまうおそれは殆どない。
さらにハンドル装置20をアウタパネル12に固定したら、アウトサイドハンドル21の前端部に設けられた接続部を、アウタパネル12に形成された貫通孔を通してアウタパネル12の車内側に位置させかつ上下のハンドル支持アーム45の上記他端に接続する。
【0044】
車両ドア10に取り付けられたハンドル装置20の慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81には以下の働きがある。
例えば、ハンドル装置20(車両ドア10)を搭載した車両が別の車両と衝突したときに、アウトサイドハンドル21の初期位置から操作位置への移動方向と(おおよそ)一致する方向の慣性力がハンドル装置20に働くことがある。この慣性力が捩じりコイルバネ81の回転付勢力を超えると、この慣性力によって慣性レバー65が非規制位置から規制位置側へ回転する。慣性レバー65にはカウンターウェイト79が設けられているため、慣性力を受けた慣性レバー65は素早く規制位置側へ回転する。即ち、この慣性力を受けたアウトサイドハンドル21及びベルクランク48が初期位置から操作位置へ移動する前に、慣性レバー65が非規制位置から規制位置へ移動する。従って、慣性力によって操作位置側へ回転するベルクランク48の当接端部54が慣性レバー65のストッパ部71に対して上方から衝突するので、ベルクランク48及びアウトサイドハンドル21は操作位置まで回転できない。即ち、車両の衝突に起因して、ロック装置13が不意にラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えられるおそれを、慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81によって小さくすることが可能である。
【0045】
一方、車両が(衝突などが発生していない)通常状態にあるときは、慣性レバー65に対して捩じりコイルバネ81の回転付勢力以外の外力を及ばないため、慣性レバー65は非規制位置に位置する。上述のように、このときベルクランク48の当接端部54とレバー本体66の凹部72の車幅方向位置は一致する。そのため、この場合に乗客が初期位置に位置するアウトサイドハンドル21を操作位置側に回転させると、当接端部54が凹部72を下方へ通り抜けながら、ベルクランク48が操作位置まで回転する。即ち、慣性レバー65が非規制位置に位置するときは、アウトサイドハンドル21によってロック装置13をアンラッチ状態に意図的に移行させることが可能である。
【0046】
以上説明したように本実施形態では、捩じりコイルバネ81の慣性レバー65に対する相対回転を規制しながら、慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材23に装着する。そのため、慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81のハンドル支持部材23への取り付け作業中に、例えば第二係合片84がハンドル支持部材23の支持部材側係合部35以外の部位に対して引っ掛かり、その結果、慣性レバー65をハンドル支持部材23の下側支持軸30及び上側支持軸32に装着できなくなるおそれは小さい。
しかも、慣性レバー65を下側支持軸30及び上側支持軸32に対して装着すると、捩じりコイルバネ81の第二係合片84がハンドル支持部材23の支持部材側係合部35(傾斜面36)と接触することにより、第二係合部74から自動的に離脱しかつ支持部材側係合部35と自動的に係合する。即ち、慣性レバー65をハンドル支持部材23に装着するという一つの作業のみによって、慣性レバー65をハンドル支持部材23に装着し、さらに捩じりコイルバネ81の第二係合片84をハンドル支持部材23の支持部材側係合部35に係合させることが可能である。
そのため、捩じりコイルバネ81によって慣性レバー65を回転付勢できるように、慣性レバー65及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材23に対して容易に装着できる。
【0047】
続いて、本発明の第2の実施形態について図15乃至図20を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と対応する部材には第1の実施形態と同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この「対応する部材」には、第1の実施形態と完全に同一のもののみならず、第1の実施形態とは形状が多少異なるものの基本的な機能が同一のも含まれる。
【0048】
本実施形態の特徴は、ハンドル支持部材110及び慣性レバー120(回転部材)の形状が第1の実施形態と異なる点、回転中心棒130を備える点、押え用凸部96並びに保護カバー87を具備していない点にある。
【0049】
ハンドル支持部材110は、下側支持軸30、支持突片31及び上側支持軸32を具備していない。その一方で、ハンドル支持部材110の天井壁25及び底部壁26には、互いに同軸をなす円形の貫通孔111、112が形成されている。
底部壁26の上面及び車外側壁24の車内側面には、貫通孔111及び貫通孔112より前方に位置する支持部材側係合部113が突設されている。図15図19及び図20等に示すように、支持部材側係合部35の車内側面は、鉛直方向に見たときに前後方向及び車幅方向に対して傾斜する傾斜面114によって構成されている。
【0050】
慣性レバー120は、樹脂製のレバー本体121と金属製のカウンターウェイト79とを備えている。
レバー本体121の中央部には、当該中央部を上下方向に貫通する回転軸122がレバー本体121の一部として設けられている。回転軸122は円筒体であり、その上下両面は共に開口している。
なお、レバー本体121には受容孔75、上端凹部76、及び仕切壁77に対応する部位は存在しない。
【0051】
第1の実施形態と同様に、慣性レバー120と捩じりコイルバネ81はハンドル支持部材110に取り付けられる前の状態において互いに一体化される。即ち、捩じりコイルバネ81は、その第一係合片83と第二係合片84を慣性レバー120の第一係合部73と第二係合部74に対してそれぞれ係合させることにより、慣性レバー120(回転軸122)に対する相対回転が規制される。
本実施形態では、慣性レバー120をハンドル支持部材110に装着するために金属製の回転中心棒130を利用する。回転中心棒130は断面円形の棒状部材であり、その上端部には回転中心棒130のその他の部位及び貫通孔111よりも大径の頭部131が設けられている。
【0052】
慣性レバー120をハンドル支持部材110に装着するためには、まず回転軸122が貫通孔111及び貫通孔112と同軸をなすように、捩じりコイルバネ81と一体化された慣性レバー120をハンドル支持部材110の内部空間に挿入する。
続いて、ハンドル支持部材110の上方に位置させた回転中心棒130の下端部を、貫通孔111及び回転軸122の上端開口部を通して回転軸122の内部に挿入し、さらに回転軸122の下端開口から下方に突出させて貫通孔112に圧入する(図19参照)。回転中心棒130の下端部が貫通孔112に圧入されると、回転中心棒130の貫通孔112に対する相対回転が規制される。
このようにして回転中心棒130を利用して慣性レバー120をハンドル支持部材110に取り付けると、慣性レバー120はハンドル支持部材110に対して図19及び図20に示す非規制位置と、図示を省略した規制位置と、の間を回転可能となる。
【0053】
図19に示す慣性レバー120のハンドル支持部材110への装着直後の状態においては、捩じりコイルバネ81の第二係合片84はレバー本体121の第二係合部74と係合しており、さらに第二係合片84はハンドル支持部材110の支持部材側係合部113(傾斜面114)から車内側に離間している。
この状態から手などにより捩じりコイルバネ81を回転軸122に対して下方にスライドさせて、第一係合部73と第一係合片83の係合状態を維持したまま、第二係合片84を第二係合部74の下方へ移動させて第二係合片84と第二係合部74の係合状態を解除すると、本体部82の回転付勢力によって第二係合片84が支持部材側係合部113の傾斜面114に自動的に係合する。
このときに捩じりコイルバネ81がハンドル支持部材110(支持部材側係合部113)と慣性レバー120(第一係合部73)に及ぼす回転付勢力は、慣性レバー120をハンドル支持部材110に対して平面視で反時計方向に回転させる方向である。そのため、慣性レバー120に対して捩じりコイルバネ81の回転付勢力以外の外力を及ぼさないとき、慣性レバー120はストッパ部71がストッパ面24a(図15乃至図20では図示略)に当接する非規制位置に保持される。
【0054】
このような構造であるハンドル装置100は、ハンドル装置100を搭載した車両が別の車両と衝突したとき及び車両が通常状態にあるとき、第1の実施形態のハンドル装置20と同様の動作を行う。即ち、車両が衝突したときにはロック装置13が不意にラッチ状態からアンラッチ状態に切り替えられるおそれを慣性レバー120及び捩じりコイルバネ81によって小さくし、通常状態においてはアウトサイドハンドル21によってロック装置13をアンラッチ状態に意図的に移行させることを可能にする。
【0055】
そして本実施形態では、第1の実施形態と同様に、捩じりコイルバネ81の慣性レバー120に対する相対回転を規制しながら、慣性レバー120及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材110に装着する。そのため、慣性レバー120及び捩じりコイルバネ81のハンドル支持部材110への取り付け作業中に、例えば第二係合片84がハンドル支持部材110の支持部材側係合部113以外の部位に対して引っ掛かり、その結果、慣性レバー120及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材110に装着できなくなるおそれは小さい。
さらに捩じりコイルバネ81の第一係合片83と第二係合片84を慣性レバー120の第一係合部73と第二係合部74に対してそれぞれ係合させたまま(捩じりコイルバネ81の慣性レバー120に対する相対回転を規制したまま)、捩じりコイルバネ81と一体化された慣性レバー120を、回転中心棒130を利用してハンドル支持部材110に装着できる。換言すると、捩じりコイルバネ81の回転付勢力の影響を受けることなく、慣性レバー120をハンドル支持部材110に装着できる。そのため、第1の実施形態と比べて小さい力で慣性レバー120をハンドル支持部材110に装着可能である。
そのため、捩じりコイルバネ81によって慣性レバー120を回転付勢できるように、慣性レバー120及び捩じりコイルバネ81をハンドル支持部材110に対して容易に装着できる。
【0056】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるべきものではない。
例えば、本発明はドア用のハンドル装置の回転部材(ハンドル支持部材に対して回転可能に支持された部材)であれば、慣性レバー65、120以外のものにも適用可能である。
その一例としては、ハンドル装置20、100のベルクランク48を挙げることが可能である。このベルクランク48も捩じりコイルバネ57と一体化された状態でハンドル支持部材23、110に装着することが可能である。従って、ベルクランク48に第一係合片59と第二係合片60がそれぞれ係合する第一係合部73及び第二係合部74に相当する部位を形成し、かつ、ハンドル支持部材23、110に支持部材側係合部35、113に相当する部位を設ければ、ベルクランク48(及び捩じりコイルバネ57)に本発明を適用した場合も第1及び第2の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
第2の実施形態においてハンドル装置100が、ハンドル支持部材100に対して着脱可能な保護カバーを備えていてもよい。
【0058】
ハンドル装置をインサイドハンドル装置として実施することも可能である。
【0059】
スライド式の車両ドアに設けたハンドル装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10・・・車両ドア、12・・・アウタパネル、13・・・ロック装置、20・・・ハンドル装置、21・・・アウトサイドハンドル(ハンドル)、23・・・ハンドル支持部材、35・・・支持部材側係合部、36・・・傾斜面、47・・・連係機構、48・・・ベルクランク(回転部材)、53・・・連結軸、54・・・当接端部、55・・・カウンターウェイト、57・・・捩じりコイルバネ、58・・・本体部、59・・・第一係合片、60・・・第二係合片、65・・・慣性レバー(回転部材)、70・・・回転軸、73・・・第一係合部、74・・・第二係合部、79・・・カウンターウェイト、81・・・捩じりコイルバネ、82・・・本体部、83・・・第一係合片、84・・・第二係合片、87・・・保護カバー、96・・・押え用部材、100・・・ハンドル装置、110・・・ハンドル支持部材、
113・・・支持部材側係合部、114・・・傾斜面、120・・・慣性レバー(回転部材)、121・・・レバー本体、122・・・回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23