【文献】
岡崎貴幸, 外2名 ,高圧真空遮断器「MULTI.VCG」「Auto.V」 ,富士電機技報,日本,2014年,vol.87 no.3,p.186-190
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作カムの前記カム面に連続して前記操作ローラが接触する位置に、前記操作ばねの蓄勢状態が完了したときに、前記操作ローラが当接して前記操作軸の回転が不可能となるカムストッパーを設け、前記操作カムに、当該操作カムが前記操作ばねを蓄勢する方向に回転するのを補助するとともに、前記主接点が遮断動作となったときに、前記操作ローラに対する前記カムストッパーの当接が解除されるように前記操作カムに回転力を伝達する補助ばねが連結されていることを特徴とする請求項1記載の遮断器の操作ばね蓄勢装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
[第1実施形態の真空遮断器の構成]
図1から
図7は、真空遮断器の真空バルブ1に対して投入操作(真空バルブ1の固定接触子1a,可動接触子1bが閉極する操作)を行う第1実施形態の真空遮断器を示すものである。なお、各図は、第1実施形態の真空遮断器を構成する操作パネル3の内部を裏面から示しており、操作パネル3に連結している軸は各図ではハッチングを施し、操作パネル3に連結しておらず、操作パネル3以外の部材同士が連結している軸は各図ではハッチングを施していない。
【0011】
図1及び
図2を参照して第1実施形態の真空遮断器の構成を具体的に説明する。
第1実施形態の真空遮断器は、操作パネル3の裏面に、変換レバー4、操作軸5、操作カム6、投入レバー7、投入ラッチ8、遮断レバー9、遮断ラッチ10、リンク部11、第1ストッパー20及び第2ストッパー21が装着されている。
変換レバー4は、長手方向中央部が支軸4aを介して操作パネル3に連結され、長手方向の両端部が上下方向に回動するようになっている。変換レバー4の長手方向の一端部が、連結部材22を介して真空バルブ1の可動接触子1bに連結している。
【0012】
操作軸5は、操作パネル3に回転自在に連結され、操作パネル3の表側に操作ハンドル(不図示)を固定できる部材である。この操作軸5に操作円板13が同軸に固定されているとともに、操作円板13の外周側に操作ローラ14が固定されている。
操作カム6は、操作パネル3に固定された支軸6a回りに回転する部材であり、支軸6aを挟んで一方側に穴がカム形状に形成されており、その穴の周縁に操作ローラ14が接触している。操作カム6の支軸6aを挟んで他方側の部位には、回動軸15を介してリンク部11を構成する第1リンク部材16の一端が連結されている。操作カム6が支軸6aの時計回りに回転すると、操作カム6の支軸6aを挟んで一方側の外周が、操作パネル3に固定した第1ストッパー20に当接する。
【0013】
ここで、
図2に示すように、操作カム6に形成した穴の周縁において、支軸6aに対して離間した位置で円弧面状に形成されている周縁(
図2の一点鎖線の範囲で示している部位)がカム面6bとされ、支軸6aに近い穴の周縁の一部でカム面6bに向けて突出している部位がカムストッパー6cとされている。
そして、支軸6aより下側位置の操作カム6と操作パネル3との間には、補助コイルばね17の両端が固定されている。この補助コイルばね17は、ばね長が縮む方向を放勢状態としたばねであり、操作カム6に対して支軸6aの反時計回りのばね力を作用している。
【0014】
投入レバー7は、操作パネル3に固定された支軸7a回りに回転する部材であり、支軸7aを挟んで一方側には、連結部7b及びその連結部7bの上部に投入ローラ24が設けられている。連結部7bには、連結部材23を介して変換レバー4の長手方向の他端部が連結されている。支軸7aを挟んで他方側には、操作パネル3に固定された第2ストッパー21に当接する当接部7cが設けられている。
【0015】
投入レバー7には、支軸7aの反時計回りにばね力が作用する復帰ばね(不図示)が付設されており、当接部7cが第2ストッパー21に当接している。
投入ラッチ8は、操作パネル3に固定された支軸8a回りに回転する部材であり、支軸8aの反時計回りにばね力が作用する復帰ばね(不図示)が付設されている。この投入ラッチ8は、先端が投入レバー7の投入ローラ24に係合することで、投入レバー7が支軸7aの時計回りに回転するのを拘束しているとともに、操作パネル3の表面に配置した投入操作スイッチ(不図示)を操作すると、投入ラッチ8が支軸8aの時計回りに回転して投入レバー7の投入ローラ24との係合状態が解除になる。
【0016】
遮断レバー9は、操作パネル3に連結された支軸9a回りに回転する部材であり、凹形状のローラ接触部9bが形成されているとともに、遮断ラッチ10に係合するラッチ係合部9cが形成されている。
遮断レバー9には、支軸9aの時計回りにばね力が作用する復帰ばね(不図示)が付設されており、遮断ラッチ10に対してラッチ係合部9cが離間した状態では、ローラ接触部9bの開口先端側に、後述するリンク部11を構成する第2リンク部材26のリンク側ロール25が係合している。
【0017】
遮断ラッチ10は、操作パネル3に連結された支軸10a回りに回転する軸方向から見て半円形状の部材であり、支軸10aの時計回りにばね力が作用する復帰ばね(不図示)が付設されている。また、操作パネル3の表面に配置した遮断操作スイッチ(不図示)を操作すると、遮断ラッチ10が支軸10aの反時計回りに回転して遮断ラッチ10と遮断レバー9のラッチ係合部9cとの係合状態が解除になる。
【0018】
リンク部11は、第1リンク部材16、第2リンク部材26、第3リンク部材27及び第4リンク部材28で構成されている。
第2リンク部材26は、操作パネル3に連結された支軸26a回りに回転する部材であり、長手方向の一端側にリンク側ロール25が形成されているとともに、長手方向の他端側には回動軸29を介して第3リンク部材27の一端側が連結されている。
【0019】
第3リンク部材27の他端側は、回動軸30を介して第4リンク部材28の一端側が連結されており、第4リンク部材28の他端側は、投入レバー7の投入ローラ24に連結されている。
操作カム6に回動軸15を介して一端側が連結している第1リンク部材16は、他端側の軸方向に沿って長穴31が形成されており、この長穴31に、第3リンク部材27及び第4リンク部材28を連結している回動軸30が挿入されている。
【0020】
そして、第1リンク部材16の外周に、操作コイルばね32が配置されており、この操作コイルばね32の両端は、回動軸15,30に固定されている。
操作コイルばね32は、ばね長が縮む方向に外力が作用することで蓄勢状態(投入エネルギーを蓄える状態)となり、ばね長が延びる方向に放勢状態(投入エネルギーを放出する状態)となるばねである。
【0021】
ここで、本発明に係る接点動作部が、変換レバー4、投入レバー7、投入ラッチ8、遮断レバー9、遮断ラッチ10及び第2ストッパー21に対応し、 本発明に係る操作部が、操作軸5、操作円板13及び操作ローラ14に対応し、本発明に係るリンク機構が、操作カム6、リンク部11及び第1ストッパー20に対応し、本発明に係る第1リンク部材が第1リンク部材16に対応し、本発明に係る他のリンク部材が第3リンク部材及び第4リンク部材に対応し、本発明に係る操作ばねが、操作コイルばね32に対応し、本発明に係る補助ばねが、補助コイルばね17に対応し、本発明に係る操作カム連結部が、第1リンク部材16及び操作カム6が連結している回動軸15に対応している。
[第1実施形態の真空遮断器の動作]
次に、
図1〜
図7を参照して、第1実施形態の真空遮断器の動作について説明する。
【0022】
図1は真空バルブ1を遮断状態(真空バルブ1の固定接触子1a,可動接触子1bが開極状態)とした真空遮断器を示し、
図3はリセット状態の真空遮断器を示し、
図4は操作コイルばね32の蓄勢状態を開始する直後の操作カム6の位置を示し、
図5は操作コイルばね32の蓄勢状態が完了した真空遮断器を示し、
図6は蓄勢ロック状態を示し、
図7は真空バルブ1を投入状態(真空バルブ1の固定接触子1a,可動接触子1bが閉極状態)とした真空遮断器を示している。
【0023】
図1の遮断状態では、遮断レバー9のラッチ係合部9cが遮断ラッチ10に係合せず、投入レバー7の当接部7cが第2ストッパー21に当接し、投入ラッチ8の先端が投入レバー7の投入ローラ24に係合していることで、投入レバー7の支軸7a回りの回転が拘束されているとともに、リンク部11(第1リンク部材16、第2リンク部材26、第3リンク部材27及び第4リンク部材28)の回動が拘束されている。
【0024】
この
図1の遮断状態から操作ハンドルの回転により操作軸5及び操作円板13を時計方向に回転すると、
図3に示すように、操作ローラ14がカム面6bに接触している操作カム6は、補助ばね17のばね力が作用しながら支軸6aの反時計回りに回転していく。
操作カム6が、支軸6aの反時計回りに回転すると、回動軸15を介して操作カム6に連結している第1リンク部材16及び第3リンク部材27が
図3右側に引っ張られ、第2リンク部材26が支軸26aの反時計回りに回転するので、第2リンク部材26のリンク側ロール25にローラ接触部9bが係合している遮断レバー9が支軸9aの時計回りに回転する。
【0025】
遮断レバー9が回転すると、遮断レバー9のラッチ係合部9cが遮断ラッチ10に係合し、
図3に示すように、遮断レバー9の回動が拘束されたリセット状態となる。
この
図3のリセット状態から操作ハンドルの回転により操作軸5及び操作円板13をさらに時計回りに回転していくと、
図4に示すように、最上部に位置した操作ローラ14にカム面6bが接触した時点で、操作カム6が支軸6aの時計回りに回転していく。
【0026】
操作カム6が支軸6aの時計回りに回転していくと、第1リンク部材16の
図5左側移動により回動軸15,30の間の距離が短くなり、操作コイルばね32にはばね長が縮む方向に外力が作用して蓄勢状態となっていく。
そして、
図5に示すように、操作カム6の外周が第1ストッパー20に当接した時点で、操作カム6の支軸6aの時計回りの回転が停止し、操作コイルばね32の蓄勢状態が完了する。
【0027】
この
図5の操作コイルばね32の蓄勢状態が完了した状態から操作ハンドルの回転により操作軸5及び操作円板13をさらに時計回りに回転していくと、
図6に示すように、操作ローラ14が、
図6の破線位置から移動してカムストッパー6cに当接し、操作ハンドルの回転動作が不能となって蓄勢ロック状態となる。
そして、
図6の蓄勢ロック状態から操作パネル3の表面に配置した投入操作スイッチを操作すると、投入ラッチ8が支軸8aの時計回りに回転し、投入レバー7の投入ローラ24と投入ラッチ8の先端との係合状態が解除になる。
【0028】
投入ラッチ8と投入レバー7との係合状態が解除になると、リンク部11を構成する第1リンク部材16、第3リンク部材27及び第4リンク部材28が回動可能となる。
第3リンク部材27及び第4リンク部材28が回動可能となると、操作コイルばね32は、ばね長が延びる方向に放勢状態となり、第3リンク部材27及び第4リンク部材28の回動軸30が
図7の下方に移動するので、
図7に示すように、投入レバー7が支軸7aの時計回りに回転していく。
【0029】
この投入レバー7の回転動作が、連結部材23、変換レバー4及び連結部材22を介して真空バルブ1の可動接触子1bに伝達されるので、
図7で示すように、固定接触子1a及び可動接触子1bが閉極して真空バルブ1が投入状態となる。
一方、
図7の真空バルブ1の投入状態から
図1の遮断状態に復帰するには、操作パネル3の表面に配置した遮断操作スイッチを操作する。
【0030】
遮断操作スイッチを操作すると、遮断ラッチ10が支軸10aの反時計回りに回転して遮断ラッチ10と遮断レバー9のラッチ係合部9cとの係合状態が解除になる。
また、操作コイルばね32はリンク部11にばね力を作用しないので、投入レバー7が、支軸4aの反時計回りにばね力が作用する復帰ばね(不図示)のばね力で支軸7aの反時計回りに回転して当接部7cが第2ストッパー21に当接し、この投入レバー7の回転とともにリンク部11(第1リンク部材16、第2リンク部材26、第3リンク部材27及び第4リンク部材28)も
図1と同様の位置に移動する。
【0031】
さらに、操作カム6には補助ばね17のばね力が作用しているので、操作カム6の支軸6aの反時計回りとともに、操作ローラ14がカムストッパー6cから離れた位置に移動し、操作軸5の回転が可能となる。
そして、投入ラッチ8が、復帰ばねのばね力により支軸8aの反時計回りに回転し、その先端が投入レバー7の投入ローラ24に係合する。投入レバー7が支軸7aの反時計回りに回転する動作が、連結部材23、変換レバー4及び連結部材22を介して真空バルブ1の可動接触子1bに伝達されるので、
図1で示すように、固定接触子1a及び可動接触子1bが開極して真空バルブ1が遮断状態となる。
[第1実施形態の真空遮断器の作用効果]
次に、第1実施形態の真空遮断器の作用効果について説明する。
【0032】
第1実施形態の真空遮断器では、手動作による操作ハンドルの回転により操作軸5及び操作円板13を時計回りに回転していくと、最上部に位置した操作ローラ14にカム面6bが接触した時点で、操作カム6が支軸6aの時計回りに回転していき、第1リンク部材16の移動により回動軸15,30の間の距離が短くなり、操作コイルばね32は蓄勢状態となっていく。このように、手動作により操作コイルばね32を蓄勢状態とする際には、操作カム6を回転させる操作軸5に大きな操作トルクをかける必要がない。
【0033】
また、操作コイルばね32を蓄勢状態とするために操作カム6が回転する方向には、補助ばね17のばね力が作用しているので、操作時間の短縮を図ることができる。
また、操作コイルばね32の蓄勢状態が完了した状態から操作ハンドルの回転により操作軸5及び操作円板13をさらに時計回りに回転していくと、操作ローラ14が、
図6の破線位置から移動してカムストッパー6cに当接し、操作ハンドルの回転動作が不能となって蓄勢ロック状態となる(
図6参照)。このように、操作カム6のカム面6bに連続したカムストッパー6cを設けて操作ローラ14に当接するという簡便な蓄勢ロック状態としたことで、従来の装置と比較して、小型化を図ることができるとともに、製造コストの低減化を図った真空遮断器を提供することができる。
【0034】
さらに、真空バルブ1が遮断状態に復帰するときには、操作カム6のカムストッパー6cに当接していた操作ローラ14は、操作カム6に補助ばね17のばね力が作用していることで、カムストッパー6cから離れた位置に移動してロック状態が解除され、操作軸5の回転を可能とすることができる。したがって、カムストッパー6cのロック解除動作も簡便な構造とすることができる。