特許第6686413号(P6686413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

特許6686413眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム
<>
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000002
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000003
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000004
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000005
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000006
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000007
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000008
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000009
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000010
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000011
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000012
  • 特許6686413-眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686413
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20200413BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B24B9/14 E
   G02C13/00
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-244891(P2015-244891)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-109265(P2017-109265A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】大林 裕且
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠正
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−536102(JP,A)
【文献】 特開2014−198360(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3199581(JP,U)
【文献】 特開平09−309051(JP,A)
【文献】 特開2008−030170(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02735401(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを切断する切断加工具と、
前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、
装置の制御を司る制御部と、
を備え、
前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、
前記制御部は、
前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する制御部であって、
形成される前記加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側の方向および鼻側の方向を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、
加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定し、
加工する前記レンズがプラスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の鼻側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定することを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項2】
レンズを切断する切断加工具と、
前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、
装置の制御を司る制御部と、
を備え、
前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、
前記制御部は、
前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する制御部であって、
前記レンズに形成する前記加工形状の前記輪郭の幾何中心の位置を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、
少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、
前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも左側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記左側領域内に設定し、
前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも右側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記右側領域内に設定することを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項3】
レンズを切断する切断加工具と、
前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、
装置の制御を司る制御部と、
を備え、
前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、
前記制御部は、
少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合に、
前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて設定することを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項4】
レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、
前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、
前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する切り離し点設定ステップであって、
形成される前記加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側の方向および鼻側の方向を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、
加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定し、
加工する前記レンズがプラスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の鼻側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定する切り離し点設定ステップ、
を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させることを特徴とする加工制御プログラム。
【請求項5】
レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、
前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、
前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する切り離し点設定ステップであって、
前記レンズに形成する前記加工形状の前記輪郭の幾何中心の位置を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、
少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、
前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも左側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記左側領域内に設定し、
前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも右側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記右側領域内に設定する切り離し点設定ステップ、
を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させることを特徴とする加工制御プログラム。
【請求項6】
レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、
前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、
少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合に、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて設定する切り離し点設定ステップ
を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させることを特徴とする加工制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡のレンズを加工するための眼鏡レンズ加工装置、および加工制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡のレンズを加工するための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1が開示する眼鏡レンズ加工装置は、加工具(エンドミルまたはカッター)に対してレンズを相対的に移動させることで、レンズの切断加工を行う。特許文献1では、加工時間短縮のために、加工具が最初に眼鏡レンズLEに接触する位置は、コバから玉型までの距離が最短となる位置に設定されるのが好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−198360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切断加工具を用いてレンズを切断する場合、クラック(ひび)、欠け、または割れ等の破損がレンズに生じる場合がある。従来の技術では、レンズを切断する際に生じ得る破損の影響を適切に軽減することは困難であった。
【0005】
本開示の典型的な目的は、切断加工具を用いてレンズを切断する際に、レンズに生じ得る破損の影響を適切に軽減することが可能な眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本開示における典型的な実施形態が提供する眼鏡レンズ加工装置の一つの態様は、レンズを切断する切断加工具と、前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、装置の制御を司る制御部と、を備え、前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、前記制御部は、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する制御部であって、形成される前記加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側の方向および鼻側の方向を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定し、加工する前記レンズがプラスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の鼻側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定する。
(2) 本開示における典型的な実施形態が提供する眼鏡レンズ加工装置の一つの態様は、レンズを切断する切断加工具と、前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、装置の制御を司る制御部と、を備え、前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、前記制御部は、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する制御部であって、前記レンズに形成する前記加工形状の前記輪郭の幾何中心の位置を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも左側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記左側領域内に設定し、前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも右側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記右側領域内に設定する。
【0007】
(3) 本開示における典型的な実施形態が提供する眼鏡レンズ加工装置の他の態様は、レンズを切断する切断加工具と、前記切断加工具と前記レンズの相対的な位置を移動させる移動機構と、装置の制御を司る制御部と、を備え、前記レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って前記切断加工具を相対的に移動させることで、前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置であって、前記制御部は、少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合に、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて設定する。
【0008】
(4) 本開示における典型的な実施形態が提供する加工制御プログラムの一つの態様は、レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する切り離し点設定ステップであって、形成される前記加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側の方向および鼻側の方向を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定し、加工する前記レンズがプラスレンズである場合には、前記左側領域および前記右側領域のうち、装用者の鼻側となる領域内に、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を設定する切り離し点設定ステップ、を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる。
(5) 本開示における典型的な実施形態が提供する加工制御プログラムの一つの態様は、レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記加工形状に関する情報に基づいて、前記レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域内および右側領域内のいずれかに設定する切り離し点設定ステップであって、前記レンズに形成する前記加工形状の前記輪郭の幾何中心の位置を示す情報を、前記加工形状に関する情報として取得すると共に、少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合には、前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも左側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記左側領域内に設定し、前記幾何中心の位置が前記レンズの中心よりも右側に位置すれば、前記輪郭上の前記切り離し点の位置を前記右側領域内に設定する切り離し点設定ステップ、を前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる。
【0009】
(6) 本開示における典型的な実施形態が提供する加工制御プログラムの他の態様は、レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで前記レンズを切り離すことが可能な眼鏡レンズ加工装置によって実行される加工制御プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工装置のプロセッサによって実行されることで、少なくとも、加工する前記レンズがマイナスレンズである場合に、前記レンズを切り離す前記輪郭上の切り離し点の位置を、前記レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて設定する切り離し点設定ステップを前記眼鏡レンズ加工装置に実行させる。

【0010】
本開示における眼鏡レンズ加工装置および加工制御プログラムによると、切断加工具を用いてレンズを切断する際に、レンズに生じ得る破損の影響が適切に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】眼鏡レンズ加工装置1におけるレンズ加工部の正面図である。
図2】レンズチャックユニット30、X方向移動機構40、およびZ方向移動機構50を右斜め後方から見た斜視図である。
図3】Y方向移動機構60を右斜め後方から見た斜視図である。
図4】眼鏡レンズ加工装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図5】眼鏡レンズ加工装置1が実行する第1加工制御処理のフローチャートである。
図6】第1加工制御処理によってマイナスレンズが加工される場合の加工動作の一例を説明するための説明図である。
図7】眼鏡レンズ加工装置1が実行する第2加工制御処理のフローチャートである。
図8】第2加工制御処理によってプラスレンズが加工される場合の加工動作の一例を説明するための説明図である。
図9】眼鏡レンズ加工装置1が実行する第3加工制御処理のフローチャートである。
図10】第3加工制御処理によってマイナスレンズが加工される場合の加工動作の一例を説明するための説明図である。
図11】眼鏡レンズ加工装置1が実行する第4加工制御処理のフローチャートである。
図12】第4加工制御処理によってマイナスレンズが加工される場合の加工動作の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<概要>
発明者は、切断加工具によってレンズが2つの部分に切り離される切り離し点の近傍で、レンズの破損が特に生じやすいことを発見した。切り離し点の近傍の破損は、切り離される部分の重み、および、切り離される部分に加わる振動の少なくともいずれかによる負荷が、レンズの基材に加わることが主な原因と考えられる。この破損が加工精度に与える影響は、レンズにおける切り離し点の位置に応じて変化する。例えば、切り離し点におけるレンズの厚みが小さい程、レンズに破損が生じやすい。また、例えば、切り離す2つの部分のうち、不要な方の部分に破損が生じても、影響は少ない。
【0013】
本開示における眼鏡レンズ加工装置は、レンズに形成する加工形状の輪郭に沿って切断加工具を相対的に移動させることで、レンズを切り離すことができる。本開示の第1態様における制御部は、加工形状に関する情報に基づいて、レンズの中心を通り上下方向に延びる仮想線を境界とする左側領域および右側領域のいずれかに、輪郭上の切り離し点の位置を設定する。輪郭上の切り離し点とは、加工形状の輪郭に対する切断加工具の相対的な移動を完了させてレンズを切り離す点であり、加工形状の輪郭上に位置する。なお、本開示における上下左右方向は、レンズに形成される玉型の上下左右方向によって規定されている。前後方向は、レンズの厚み方向となる。第1態様によると、レンズの左側領域および右側領域のうち、レンズに加工する加工形状に応じた適切な領域に、輪郭上の切り離し点が設定される。従って、切り離し点の位置に応じて変化する破損の影響が、適切に軽減される。
【0014】
近年の眼鏡のデザインでは、レンズに形成される玉型の位置は耳側に寄る場合が多い(つまり、玉型の幾何中心が、レンズの中心よりも耳側に位置する場合が多い)。従って、加工形状の輪郭とレンズコバ部の間の距離は、鼻側よりも耳側の方が近くなる場合が多い。また、マイナスレンズでは、レンズコバ部に近づく程、レンズの厚みが大きくなる。
【0015】
第1態様における制御部は、レンズに形成される加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側および鼻側の方向を示す情報を、加工形状に関する情報として取得してもよい。制御部は、レンズの左側領域および右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。
【0016】
この場合、加工形状の輪郭がレンズコバ部に近くなり易い耳側領域内に、輪郭上の切り離し点が設定される。従って、マイナスレンズでは、切り離し点におけるレンズの厚みが大きくなり易い。切り離し点におけるレンズの厚みが大きいと、重みおよび振動によってレンズの基材に加わる負荷が分散されるので、レンズの破損が生じ難くなる。また、プラスレンズでは、レンズの中央部近傍に形成される加工形状内のレンズの厚みの方が、加工形状よりも外側に位置する不要部分の厚みよりも大きくなる。従って、仮に、重みおよび振動によってレンズの基材に破損が生じるとしても、厚みが大きい加工形状内ではなく、厚みが小さい不要部分に破損が生じる可能性が高い。よって、プラスレンズにおける破損の影響は、マイナスレンズにおける破損の影響よりも小さい。従って、第1態様によると、レンズに生じ得る破損の影響が、簡易な処理によって適切に軽減される。
【0017】
なお、耳側および鼻側の方向を示す情報の取得方法は、適宜選択できる。例えば、制御部は、ユーザによって操作される操作部からの信号に基づいて、情報を取得してもよい。この場合、眼鏡レンズ加工装置は、ユーザに操作部を操作させることで、耳側および鼻側の少なくともいずれかの方向を指定させもよい。また、眼鏡レンズ加工装置は、ユーザに操作部を操作させることで、加工するレンズが右眼用および左眼用のいずれであるかを指定させてもよい。右眼用または左眼用の情報が判明すれば、耳側および鼻側の方向も判明するためである。また、制御部は、加工形状(例えば、加工する玉型の形状)に基づいて、右眼用および左眼用のいずれであるかを自動的に判定してもよい。右眼用および左眼用のいずれであるかを示す情報が、加工動作を制御するための加工制御データに予め含まれていてもよい。
【0018】
第1態様における制御部は、加工するレンズがマイナスレンズである場合には、左側領域および右側領域のうち、装用者の耳側となる領域内に、輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。この場合、前述したように、マイナスレンズを加工する際の破損が生じ難くなる。また、第1態様における制御部は、加工するレンズがプラスレンズである場合には、左側領域および右側領域のうち、装用者の鼻側となる領域内に、輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。一般的に、プラスレンズでは、レンズ中心部に近づく程、レンズの厚みが大きくなる。加工形状の輪郭がレンズ中心部に近くなり易い鼻側領域内に切り離し点が設定されると、切り離し点におけるプラスレンズの厚みは大きくなり易い。その結果、切り離し点近傍のレンズ基材に加わる負荷が分散されて、破損が生じ難くなる。従って、加工するレンズの種類(マイナスレンズまたはプラスレンズ)に関わらず、レンズに破損が生じる頻度が低下する。
【0019】
例えば、加工形状の輪郭の幾何中心が、レンズの中心よりも左側に位置する場合、加工形状の輪郭とレンズコバ部の間の距離は、右側よりも左側の方が近くなる。少なくともマイナスレンズを加工する場合、第1態様における制御部は、幾何中心の位置がレンズの中心よりも左側に位置すれば、切り離し点の位置を左側領域内に設定してもよい。逆に、制御部は、幾何中心の位置がレンズの中心よりも右側に位置すれば、切り離し点の位置を右側領域内に設定してもよい。この場合、マイナスレンズでは、切り離し点におけるレンズの厚みが大きくなり易いので、破損が生じ難い。
【0020】
なお、前述したように、プラスレンズにおける破損の影響は少ない。従って、制御部は、プラスレンズを加工する場合も、マイナスレンズを加工する場合と同様に、幾何中心が位置する方の領域内に切り離し点の位置を設定してもよい。また、制御部は、プラスレンズを加工する場合には、左側領域および右側領域のうち、マイナスレンズを加工する場合とは反対側の領域に切り離し点を設定してもよい。この場合、加工するレンズの種類に関わらず、レンズに破損が生じる頻度が低下する。
【0021】
また、眼鏡を作成する場合には、一般的に、レンズの中心が装用者の瞳孔の中心に位置するようにレンズが加工される。従って、PD(瞳孔間距離)がFPD(左右のフレームの中心間距離)よりも短ければ、レンズの中心は玉型の加工形状の幾何中心よりも鼻側に位置することになる。逆に、PDがFPDよりも長ければ、レンズの中心は玉型の加工形状の幾何中心よりも耳側に位置することになる。従って、制御部は、「レンズに形成する加工形状の輪郭の幾何中心の位置を示す情報」として、PDとFPDを取得してもよい。この場合でも、制御部は、幾何中心の位置とレンズの中心の位置の関係に応じて切り離し点を設定することができる。
【0022】
また、幾何中心とレンズの中心の情報を用いずに切り離し点の位置を設定することも可能である。例えば、制御部は、レンズコバ部から加工形状の輪郭までの距離に基づいて、輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。この場合、制御部は、少なくともマイナスレンズを加工する場合に、左側領域および右側領域のうち、レンズコバ部から加工形状の輪郭までの距離が短くなる領域に、輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。また、制御部は、加工するレンズの乱視軸の方向を考慮して、左側領域および右側領域のうちのいずれかに輪郭上の切り離し点の位置を設定してもよい。
【0023】
第1態様における制御部は、少なくともマイナスレンズを加工する場合に、レンズの中心から左方または右方に放射状に広がる扇形の領域内であって、中心角が所定角度であり、且つ上下対称に広がる扇形の領域内に、切り離し点の位置を設定してもよい。この場合、近年の玉型の多くを占める左右横長の玉型を加工する際に、切り離し点の位置がレンズコバ部にさらに近くなり易い。なお、所定角度は任意に設定できる。例えば、所定角度を90度以下とすることで、一般的な玉型の多くの場合に、切り離し点の位置はレンズコバ部により近くなる。
【0024】
本開示の第2態様における眼鏡レンズ加工装置は、少なくともマイナスレンズを加工する場合に、輪郭上の切り離し点の位置を、レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて設定する。前述したように、重みまたは振動によってレンズに破損が生じる頻度は、切り離し点におけるレンズの厚みに応じて変化する。第2態様の眼鏡レンズ加工装置によると、レンズの厚みの分布に関する情報に基づいて切り離し点の位置を設定することで、切り離し点の位置に応じて変化する破損の影響を適切に軽減することができる。
【0025】
なお、レンズの厚みの分布に関する情報(以下、「厚み分布情報」という)としては、種々の情報を用いることができる。例えば、レンズにおける複数の位置の各々の厚みを示す情報を用いてもよいし、レンズカーブのデータを用いてもよい。また、加工するレンズの種類の情報(例えば、マイナスレンズおよびプラスレンズのいずれであるか)を、厚み分布情報として用いてもよい。この場合、例えば、マイナスレンズであれば、レンズコバ部に近づく程レンズの厚みが大きくなると推定でき、プラスレンズであれば、レンズ中心部に近づく程レンズの厚みが大きくなると推定できる。さらに、制御部は、加工するレンズがシリンダーレンズである場合には、上述した情報の少なくともいずれかに加えて、乱視軸の方向の情報も厚み分布情報として取得してもよい。
【0026】
また、厚み分布情報を制御部が取得する方法も、適宜選択できる。例えば、制御部は、眼鏡レンズ形状測定装置等によって機械的に取得された厚み分布情報を、有線通信、無線通信、または着脱可能なメモリ等を介して取得してもよい。レンズの厚みの分布が光学的な手法で取得されてもよいことは言うまでもない。また、ユーザに操作部を操作させることで、レンズの厚みの分布に関する情報をデバイスに入力させてもよい。また、制御部は、装用者の視力測定の結果に基づいて、厚み分布情報(例えば、加工するレンズがマイナスレンズおよびプラスレンズのいずれであるかを示す情報等)を取得してもよい。
【0027】
第2態様における制御部は、厚みの分布に関する情報に基づいて、加工形状の輪郭が通過する領域のうちレンズの厚みが最も大きくなる領域内に、切り離し点の位置を設定してもよい。この場合、切り離し点におけるレンズの厚みが大きくなり易いので、破損が生じ難い。
【0028】
なお、「レンズの厚みが最も大きくなる領域」は、適宜設定すればよい。例えば、厚みが最も大きくなる輪郭上の点を中心とする所定の大きさの領域を、「レンズの厚みが最も大きくなる領域」としてもよい。つまり、切り離し点の位置は、レンズの厚みが最も大きくなる輪郭上の点に常に厳密に設定される必要は無く、この点から多少ずれていてもよい。
【0029】
<実施形態>
(機械的構成)
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1図3を参照して、本実施形態における眼鏡レンズ加工装置1の機械的構成について説明する。以下の説明では、図1における紙面の奥行き方向をX方向、紙面の左右方向をZ方向、上下方向をY方向とする。
【0030】
図1に示すように、眼鏡レンズ加工装置1は、加工具保持ユニット10、レンズ形状測定ユニット20、およびレンズチャックユニット30を備える。また、図2および図3に示すように、眼鏡レンズ加工装置1は、X方向移動機構40(図2参照)、Z方向移動機構50(図2参照)、およびY方向移動機構60(図3参照)を備える。
【0031】
図1に示すように、加工具保持ユニット10は、正面視略矩形枠状のY方向移動支基11を備える。Y方向移動支基11の左側の柱部および右側の柱部の各々の内側には、レンズを加工するための種々の加工具が保持されている。例えば、Y方向移動支基11の左側下部には切断加工具12が設けられている。切断加工具12は、レンズLEを切り込んでレンズLEを切断する。つまり、切断加工具12は、レンズLEを複数の部分に切り離すために用いられる。切断加工具12には、例えば、エンドミルおよびカッター等を採用することができる。一例として、本実施形態の切断加工具12には、回転軸13を中心として回転しながらレンズLEを切り込むエンドミルが採用されている。切断加工具12は、切断加工具回転モータ16(図4参照)によって回転される。なお、切断加工具12の近傍には、加工によって生じた加工屑等を除去するための空気を送出するホース14が設けられている。
【0032】
レンズ形状測定ユニット20は、レンズLEの形状を測定する。本実施形態のレンズ形状測定ユニット20は、Y方向移動支基11の上側の柱部に設けられている。レンズ形状測定ユニット20は、レンズLEの前面の形状を測定する前面測定部21と、レンズLEの後面の形状を測定する後面測定部23を備える。一例として、本実施形態の前面測定部21は、前面用測定子22をレンズLEの前面に押し当てつつ、エンコーダ等によって前面用測定子22の位置を検出することで、レンズLEの前面の形状を測定する。同様に、後面測定部23は、後面用測定子24をレンズLEの後面に押し当てつつ、エンコーダ等によって後面用測定子24の位置を検出することで、レンズLEの後面の形状を測定する。
【0033】
レンズチャックユニット30は、レンズLEを保持する。また、本実施形態のレンズチャックユニット30は、加工具保持ユニット10が備える加工具(例えば、切断加工具12)とレンズLEの相対的な位置を移動させることができる。本実施形態のレンズチャックユニット30は、ベース31、キャリッジ32、およびレンズチャック軸34F,34Rを備える。ベース31はキャリッジ32を保持する。本実施形態のベース31は略板状であり、中心部分に形成された円形の開口において、キャリッジ32を回転可能に保持する。キャリッジ32は、2つのレンズチャック軸34F,34Rを備える。
【0034】
2つのレンズチャック軸34F,34Rは同軸に配置されている。眼鏡レンズ加工装置1は、2つのレンズチャック軸34F,34Rの距離を縮めることで、レンズLEを挟み込んで保持する。図2に示すように、キャリッジ32の裏面には、レンズチャック軸34Fを軸回りに回転させるチャック軸回転モータ36と、レンズチャック軸34Rを軸回りに回転させるチャック軸回転モータ37が設けられている。2つのチャック軸回転モータ36,37は同期して回転する。また、眼鏡レンズ加工装置1はキャリッジ回転モータ38(図4参照)を備える。キャリッジ回転モータ38は、X方向に延びるキャリッジ32の回転軸を中心として、キャリッジ32をベース31に対して回転させる。その結果、レンズチャック軸34F,34Rの軸角度が変更される。
【0035】
X方向移動機構40は、加工具保持ユニット10が備える加工具(例えば、切断加工具12)とレンズLEの相対的な位置をX方向に移動させる。一例として、本実施形態のX方向移動機構40は、レンズLEを保持するレンズチャックユニット30を、加工具に対してX方向に移動させる。図2に示すように、X方向移動機構40はX方向移動モータ41を備える。X方向移動モータ41には、X方向に延びるシャフト42が連結されている。シャフト42の外周にはネジ溝が形成されている。シャフト42のネジ溝にはナット(図示せず)が嵌まっている。ナットは、レンズチャックユニット30のベース31に固定されている。X方向移動モータ41が回転すると、シャフト42が回転し、レンズチャックユニット30がX方向に移動する。なお、X方向移動機構40およびレンズチャックユニット30は、移動ベース43上に搭載されている。
【0036】
Z方向移動機構50は、加工具とレンズLEの相対的な位置をZ方向に移動させる。一例として、本実施形態のZ方向移動機構50は、レンズLEを保持するレンズチャックユニット30を、加工具に対してZ方向に移動させる。図2に示すように、Z方向移動機構50はZ方向移動モータ51を備える。Z方向移動モータ51には、Z方向に延びるシャフト(図示せず)が連結されている。シャフトの外周にはネジ溝が形成されており、ネジ溝にはナット(図示せず)が嵌まっている。ナットは、移動ベース43に固定されている。Z方向移動モータ51が回転すると、シャフトが回転し、移動ベース43に搭載されたレンズチャックユニット30がZ方向に移動する。
【0037】
Y方向移動機構60は、加工具とレンズLEの相対的な位置をY方向に移動させる。一例として、本実施形態のY方向移動機構60は、加工具を保持する加工具保持ユニット10を、レンズチャックユニット30に対してY方向に移動させる。図3に示すように、Y方向移動機構60はY方向移動モータ61を備える。Y方向移動モータ61の回転軸には、Y方向に延びるシャフト62が連結されている。シャフト62の外周にはネジ溝が形成されており、ネジ溝にはナット63が嵌まっている。ナット63は、加工具保持ユニット10(図1参照)のY方向移動支基11に固定されている。Y方向移動モータ61が回転すると、シャフト62が回転し、Y方向移動支基11がY方向に移動する。
【0038】
以上説明したよう、X方向移動機構40、Z方向移動機構50、およびY方向移動機構60等は、加工具(例えば切断加工具12)とレンズLEの相対的な位置を移動(変化)させる移動機構として機能する。なお、移動機構の構成を変更できることは言うまでもない。例えば、移動機構は、固定されたレンズLEに対して加工具を移動させてもよいし、固定された加工具に対してレンズLEを移動させてもよい。また、移動機構は、本実施形態のように、レンズLEと加工具を共に移動させることで、加工具とレンズLEの相対的な位置を変化させてもよい。
【0039】
(電気的構成)
図4を参照して、本実施形態における眼鏡レンズ加工装置1の電気的構成について説明する。眼鏡レンズ加工装置1は、眼鏡レンズ加工装置1の制御を司る制御部70を備える。制御部70は、CPU71、ROM72、RAM73、および不揮発性メモリ74を備える。CPU(プロセッサ)71は、眼鏡レンズ加工装置1における各種処理を司る。ROM72には、各種プログラムおよび初期値等が記憶されている。RAM73は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ74は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体(例えば、フラッシュROM、ハードディスクドライブ等)である。不揮発性メモリ74には、眼鏡レンズ加工装置1の動作および処理を制御するための各種プログラム(例えば、後述する加工制御プログラム等)が記憶されていてもよい。
【0040】
制御部70には、切断加工具回転モータ16、レンズ形状測定ユニット20、チャック軸回転モータ36,37、キャリッジ回転モータ38、X方向移動モータ41、Z方向移動モータ51、Y方向移動モータ61、操作部5、表示部6、および外部通信I/F76等が、バスを介して接続されている。
【0041】
操作部5は、ユーザが各種指示を入力するためにユーザによって操作される。つまり、眼鏡レンズ加工装置1は、ユーザからの各種指示の入力を、操作部5を介して受け付けることができる。モニタ(表示部)6は各種画像を表示する。外部通信I/F76は、無線通信または有線通信によって眼鏡レンズ加工装置1を外部機器に接続する。眼鏡レンズ加工装置1は、例えばホストコンピュータ77に接続されてもよい。この場合、制御部70は、加工する玉型形状のデータ等をホストコンピュータ77から取得してもよい。なお、玉型形状のデータは、例えば、加工されたレンズが装着される眼鏡フレームの形状、または、眼鏡フレームに装着されていたデモレンズの形状を、機械的または光学的に測定する玉型形状測定装置等によって取得されてもよい。眼鏡レンズ加工装置1が、玉型の形状を測定する機能を備えていてもよい。
【0042】
(加工制御処理)
図5から図12を参照して、眼鏡レンズ加工装置1のCPU71が実行する加工制御処理について説明する。前述したように、不揮発性メモリ74には、図5,7,9,11に例示する加工制御処理を実行するための加工制御プログラムが記憶されている。CPU71は、レンズLEの切断加工を開始する指示が入力されると、加工制御プログラムに従って、以下説明する加工制御処理を実行する。
【0043】
加工制御処理では、レンズLEに形成する加工形状の輪郭9に沿って切断加工具12が相対的に移動されることで、レンズLEが複数の部位に切り離される。本実施形態の眼鏡レンズ加工装置1は、輪郭9に対する切断加工具12の相対的な移動を完了させてレンズLEを切り離す輪郭9上の切り離し点PFの位置を、適切な位置に設定する。その結果、切り離し点PFに位置に応じて変化するレンズLEの破損の影響が、適切に軽減される。
【0044】
一例として、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置1は4つの加工制御処理を実行することができる。CPU71は、例えば、ユーザが操作部5を操作することで入力した指示等に応じて、4つの加工制御処理のいずれかを実行する。なお、言うまでもないが、眼鏡レンズ加工装置1は、4つの加工制御処理のうちの全てを実行できる必要は無い。
【0045】
(第1加工制御処理)
図5および図6を参照して、第1加工制御処理について説明する。第1加工制御処理では、切り離し点PFの位置が、装用者の耳側・鼻側の方向を示す情報に基づいて設定される。また、第1加工制御処理では、レンズLEの種類に関わらず、耳側の領域に切り離し点PFの位置が設定される。
【0046】
図5に示すように、CPU71は、第1加工制御処理を開始すると、未加工のレンズLEを加工することで形成する玉型の情報(以下、「玉型情報」という場合もある)を取得する(S11)。一例として、本実施形態では、玉型形状8のデータ、および、レンズLE上に形成する玉型形状8の位置のデータが、玉型情報として取得される。前述したように、玉型形状8のデータは、フレーム形状測定装置等を介して取得されてもよい。また、レンズLE上に形成する玉型形状の位置は、予め取得された装用者の瞳孔間距離等に基づいて設定されてもよい。
【0047】
CPU71は、レンズLEに形成する加工形状の輪郭9の情報を取得する(S12)。一例として、本実施形態では、玉型形状8に対して一定の仕上げ代(仕上げを行うための部分)を残した状態で切断加工を行うために、玉型形状8よりも僅かに大きい加工形状の輪郭9が設定される場合を例示する。S12では、CPU71は、玉型形状8よりも一定量だけ外側を通過するラインの情報を、加工形状の輪郭9の情報として取得する。
【0048】
CPU71は、レンズLEに形成される加工形状の左右方向のうち、装用者の耳側および鼻側の方向を示す情報を取得する(S13)。耳側および鼻側の方向を示す情報は、種々の方法で取得することが可能である。例えば、CPU71は、ユーザに操作部5を操作させることで、方向をユーザに指定させてもよい。また、CPU71は、加工するレンズLEが右眼用および左眼用のいずれであるかをユーザに指定させてもよい。右眼用または左眼用の情報が判明すれば、耳側および鼻側の方向も判明する。また、CPU71は、加工形状に基づいて、右眼用および左眼用のいずれであるかを判別してもよい。方向を示す情報が、加工動作を制御するために必要なデータ(例えば、玉型形状8のデータ)に予め含まれていてもよい。
【0049】
CPU71は、レンズLEの左側領域および右側領域のうち耳側となる領域内に、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定する(S14)。図6に示すように、本実施形態では、レンズLEの中心OCを通り上下方向に延びる仮想線Vを境界とし、仮想線Vよりも左側の領域を左側領域、仮想線Vよりも右側の領域を右側領域とする。図6に示す例では、図面左方向が耳側の方向、図面右方向が鼻側の方向となっている。従って、CPU71は、左側領域および右側領域のうち、耳側となる左側領域内に、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定している。
【0050】
図6に示すように、加工形状の輪郭9は、鼻側領域よりも耳側領域においてレンズLEのコバ部に近くなり易い。従って、第1加工制御処理によると、切り離し点PFの位置がレンズLEのコバ部に近くなり易い。また、図6に例示するレンズLEはマイナスレンズなので、レンズLEの厚みはコバ部に近づく程大きくなり易い。従って、第1加工制御処理によると、切り離し点PFにおけるレンズLEの厚みが大きくなり易い。その結果、切り離し点PFにおいてレンズLEの基材に加わる負荷が分散され易くなるので、レンズLEの破損が生じ難くなる。また、レンズLEがプラスレンズである場合には、マイナスレンズである場合に比べて破損の影響が小さい。従って、第1加工制御処理によると、切り離し時にレンズLEに生じ得る破損の影響が、簡易な処理によって適切に軽減される。
【0051】
なお、本実施形態のCPU71は、所定の扇形領域79内に切り離し点PFの位置を設定する。扇形領域79は、レンズLEの中心OCから左方または右方(図6では左方)に広がる扇形の領域である。扇形領域79の中心角は90度以下である。また、扇形領域79は、上下対称に広がっている。扇形領域79内に切り離し点PFの位置を設定すると、近年の玉型の多くを占める左右横長の玉型を加工する場合に、切り離し点PFの位置がレンズLEのコバ部に近くなり易い。
【0052】
次いで、CPU71は、設定した切り離し点PFにおいてレンズLEの切断加工が完了するように、レンズLEに対する切断加工具12の相対的な移動を制御するための加工制御データを作成する。CPU71は、作成した加工制御データに基づいて各部の加工動作を制御することで、レンズLEを加工する(S15)。
【0053】
レンズLEに対する切断加工具12の相対的な移動の軌跡は適宜設定できる。例えば、図6に示す例では、2回の切断加工動作によってレンズLEを3つの部分に切り離すことで、加工形状が形成される。詳細には、図6に示す例では、レンズLEの最も左側の端部P1が加工開始点に設定され、加工開始点P1から切り離し点PFに滑らかに加工軌跡が延びる。次いで、加工軌跡は、切り離し点PFから、鼻側領域内の軌跡離脱点P2まで、加工形状の輪郭9に沿って延びる。加工軌跡は、軌跡離脱点P2から軌跡9を離脱し、レンズLEの右側のコバ部に設定されたコバ部切り離し点P3まで滑らかに延びる。P1、PF、P2、P3の順に切断加工具12がレンズLEに対して相対的に移動した時点で、1回目の切断加工動作が完了する。次いで、加工軌跡は、軌跡離脱点P2から切り離し点PFまで、加工形状の輪郭9に沿って延びる。P2からP3まで切断加工具12が相対的に移動した時点で、2回目の切断加工動作が完了し、加工形状と不要部分が切り離される。
【0054】
(第2加工制御処理)
図7および図8を参照して、第2加工制御処理について説明する。第2加工制御処理では、第1加工制御処理と同様に、耳側・鼻側の方向を示す情報に基づいて切り離し点PFの位置が設定される。ただし、第2加工制御処理では、第1加工制御処理とは異なり、レンズLEの種類に応じて異なる領域に切り離し点PFの位置が設定される。なお、以下説明する第2〜第4加工制御処理の一部には、前述した第1加工制御処理と同様の処理を採用することも可能である。従って、以下の説明では、第1加工制御処理と同様の処理を採用できるステップについては、第1加工制御処理のステップと同じ番号を付し、説明を簡略化する。
【0055】
図7に示すように、CPU71は、第2加工制御処理を開始すると、玉型情報を取得すると共に(S11)、レンズLEに形成する加工形状の輪郭9の情報を取得する(S12)。CPU71は、装用者の耳側および鼻側の方向を示す情報を取得する(S13)。
【0056】
CPU71は、加工するレンズLEの形状に関する情報を取得する(S21)。一例として、本実施形態のS21では、加工するレンズLEがマイナスレンズおよびプラスレンズのいずれであるかを示す情報が取得される。レンズLEの形状に関する情報は、種々の方法で取得可能である。例えば、レンズ形状測定ユニット20によって測定されたレンズLEの形状の測定結果が用いられてもよい。また、レンズLEの形状に関する情報は、操作部5を介してユーザによって眼鏡レンズ加工装置1に入力されてもよい。ユーザの視力の測定結果(例えば、視力矯正量等)に関する情報が、加工するレンズLEの形状に関する情報として取得されてもよい。
【0057】
加工するレンズLEがマイナスレンズであれば(S22:YES)、CPU71は、レンズLEの左側領域および右側領域のうち耳側となる領域内に、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定する(S14)。この処理には、前述した第1加工制御処理のS14と同様の処理を採用できる。
【0058】
加工するレンズLEがプラスレンズであれば(S22:NO)、CPU71は、レンズLEの左側領域および右側領域のうち鼻側となる領域内に、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定する(S24)。例えば、図8に示す例では、図面右方向が鼻側の方向となっている。この場合、CPU71は、鼻側となる右側領域内に、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定する。なお、本実施形態のS24では、S14と同様に扇形領域79内に切り離し点PFの位置が設定される。
【0059】
図8に示すように、加工形状の輪郭9は、耳側領域よりも鼻側領域においてレンズLEの中心に近くなり易い。従って、S24によると、切り離し点PFの位置がレンズLEの中心OCに近くなり易い。また、プラスレンズの厚みは中心OCに近づく程大きくなり易い。従って、第2加工制御処理によると、加工するレンズの種類(マイナスレンズまたはプラスレンズ)に関わらず、レンズLEに破損が生じる頻度が低下する。
【0060】
次いで、CPU71は、設定した切り離し点PFにおいてレンズLEの切断加工が完了するように加工動作を制御する(S15)。図8に例示したプラスレンズ加工時の例では、図6に例示したマイナスレンズ加工時の例とは異なり、レンズLEの鼻側の端部P1が加工開始点に設定され、加工開始点P1から切り離し点PFに滑らかに加工軌跡が延びる。次いで、加工軌跡は、切り離し点PFから、耳側領域内の軌跡離脱点P2まで、加工形状の輪郭9に沿って延びる。加工軌跡は、軌跡離脱点P2から軌跡9を離脱し、耳側のコバ部に設定されたコバ部切り離し点P3まで滑らかに延びる。次いで、加工軌跡は、軌跡離脱点P2から切り離し点PFまで、加工形状の輪郭9に沿って延びる。
【0061】
(第3加工制御処理)
図9および図10を参照して、第3加工制御処理について説明する。第3加工制御処理では、加工形状の輪郭9における幾何中心GCと、レンズLEの中心OCの位置関係に応じて、切り離し点PFの位置が設定される。
【0062】
図9に示すように、CPU71は、第3加工制御処理を開始すると、玉型情報を取得すると共に(S11)、レンズLEに形成する加工形状の輪郭9の情報を取得する(S12)。CPU71は、輪郭9の幾何中心GCの位置を示す情報を取得する(S31)。例えば、CPU71は、加工形状の輪郭9における左右方向の中心、且つ上下方向の中心を、幾何中心GCとして求めてもよい。また、輪郭9を四角のボックスで囲んだ場合のボックスの中心(ボクシング中心)を幾何中心GCとして求めることも可能である。
【0063】
CPU71は、幾何中心GCがレンズLEの中心OCよりも左側に位置するか否かを判断する(S32)。つまり、本実施形態のCPU71は、レンズLEの中心OCを通り上下方向に延びる仮想線Vよりも、幾何中心GCが左側に位置するか否かを判断する。幾何中心GCがレンズLEの中心OCよりも左側に位置する場合(S32:YES)、CPU71は、輪郭9上の切り離し点PFの位置を左側領域内に設定する(S33)。一方で、幾何中心GCがレンズLEの中心OCよりも右側に位置する場合(S32:NO)、CPU71は、輪郭)上の切り離し点PFの位置を右側領域内に設定する(S34)。なお、本実施形態のS33,S34では、S14と同様に扇形領域79内に切り離し点PFの位置が設定される。
【0064】
図10に示すように、幾何中心GCがレンズLEの中心OCよりも左側に位置する場合、加工形状の輪郭9とレンズLEのコバ部の距離は、右側よりも左側の方が近くなる。この場合、加工するレンズLEがマイナスレンズであれば、左側領域内に切り離し点PFの位置が設定されると、切り離し点PFにおけるレンズLEの厚みが大きくなり易い。よって、切り離し点PFの近傍におけるレンズLEの破損が生じ難い。また、前述したように、加工するレンズLEがプラスレンズであれば、破損の影響は小さい。
【0065】
次いで、CPU71は、設定した切り離し点PFにおいてレンズLEの切断加工が完了するように加工動作を制御する(S15)。図10に示す例では、図6に示す例と同様に、加工開始点P1、切り離し点PF、軌跡離脱点P2、コバ部切り離し点P3の順に切断加工具12が相対的に移動されることで、1回目の加工動作が行われる。次いで、軌跡離脱点P2から切り離し点PFに向かって切断加工具12が相対的に移動されることで、加工動作が完了する。
【0066】
なお、CPU71は、加工するレンズLEの種類がマイナスレンズおよびプラスレンズのいずれであるかに応じて、輪郭9上の切り離し点PFの位置を設定してもよい。この場合、CPU71は、左側領域および右側領域のうち、マイナスレンズを加工する場合とは反対側の領域に、プラスレンズを加工する場合の切り離し点PFの位置を設定する。詳細には、CPU71は、加工するレンズがマイナスレンズである場合には、図9のS32〜S34の処理に従って切り離し点PFの位置を設定する。また、CPU71は、加工するレンズがプラスレンズであり、且つ、幾何中心GCの位置がレンズLEの中心OCよりも左側に位置すれば、右側領域内に切り離し点PFの位置を設定する。CPU71は、加工するレンズがプラスレンズであり、且つ、幾何中心GCの位置がレンズLEの中心OCよりも右側に位置すれば、左側領域内に切り離し点PFの位置を設定する。この場合、レンズLEの種類に関わらず、レンズLEが破損する頻度が低下する。
【0067】
また、図9に例示した処理のS31では、レンズLEに形成する加工形状の輪郭から、輪郭の幾何中心GCの位置情報が取得される。しかし、幾何中心GCの位置を示す情報の取得方法を変更することも可能である。例えば、CPU71は、PD(装用者の瞳孔間距離)とFPD(左右のフレームの中心間距離)を、幾何中心の位置を示す情報として取得してもよい。この場合、PDがFPDよりも短ければ、レンズLEの中心OCは加工形状の幾何中心GCよりも鼻側に位置する。逆に、PDがFPDよりも長ければ、レンズLEの中心OCは加工形状の幾何中心GCよりも耳側に位置する。従って、CPU71は、PDとFPDに基づいて、レンズLEにおける幾何中心GCとレンズLEの中心OCの位置関係を、左右それぞれのレンズに対して判断することができる。
【0068】
(第4加工制御処理)
図11および図12を参照して、第4加工制御処理について説明する。第4加工制御処理では、レンズLEの厚みの分布に関する情報に基づいて、切り離し点PFの位置が設定される。
【0069】
図11に示すように、CPU71は、第4加工制御処理を開始すると、玉型情報を取得すると共に(S11)、レンズLEに形成する加工形状の輪郭9の情報を取得する(S12)。CPU71は、レンズLEの厚みの分布に関する情報(以下、「厚み分布情報」という)を取得する(S41)。
【0070】
厚み分布情報には種々の情報を用いることができる。例えば、レンズLEにおける複数の位置の各々の厚みを示す情報を用いてもよいし、レンズLEの光学面におけるカーブのデータを用いてもよい。一例として、本実施形態のCPU71は、加工するレンズの種類の情報(例えば、マイナスレンズおよびプラスレンズのいずれであるか)を、厚み分布情報として取得する。マイナスレンズであれば、レンズコバ部に近づく程レンズの厚みが大きくなると推定でき、プラスレンズであれば、レンズ中心部に近づく程レンズの厚みが大きくなると推定できる。また、レンズLEがシリンダーレンズである場合には、乱視軸の方向の情報が厚み分布情報として取得されてもよい。
【0071】
また、厚み分布情報の取得方法も適宜選択できる。例えば、CPU71は、眼鏡レンズ形状測定装置等によって機械的または光学的に測定された厚み分布情報を、通信等を介して取得してもよい。また、CPU71は、操作部5がユーザによって操作されることで入力された厚み分布情報を取得してもよい。
【0072】
CPU71は、輪郭9上の切り離し点PFの位置を、厚み分布情報に基づいて設定する(S42)。詳細には、本実施形態のCPU71は、レンズLEにおいて輪郭9が通過する領域のうち、レンズLEの厚みが最も大きくなる領域内に、切り離し点PFの位置を設定する(S42)。次いで、CPU71は、設定した切り離し点PFにおいてレンズLEの切断加工が完了するように加工動作を制御する(S15)。
【0073】
厚み分布情報に基づいて切り離し点PFの位置を設定する方法の一例について説明する。図12に示す例では、加工するレンズLEがマイナスレンズであることを示す情報が、厚み分布情報として取得されている。一般的なマイナスレンズでは、レンズLEの中心OCから遠ざかる程、レンズLEの厚みは大きくなる。従って、図12に示す例では、CPU71は、加工形状の輪郭9のうち、レンズLEの中心OCからの距離dが最も大きくなる領域内に、切り離し点PFの位置を設定する。その結果、切り離し点PFにおけるレンズLEの厚みは、他の領域に切り離し点PFの位置を設定する場合に比べて大きくなる。その結果、レンズLEが破損する頻度が低下する。なお、加工するレンズがプラスレンズである場合には、CPU71は、輪郭9のうちレンズLEの中心OCからの距離dが最も小さくなる領域内に、切り離し点PFの位置を設定してもよい。また、CPU71は、レンズLEのコバ部から輪郭9までの距離に基づいて、輪郭9のうちレンズLEの厚みが最も大きくなる領域を判断してもよい。
【0074】
また、加工するレンズLEがシリンダーレンズである場合、CPU71は、レンズLEの種類(マイナスレンズまたはプラスレンズ)を示す情報と共に、乱視軸の方向を示す情報を、厚み分布情報として取得してもよい。この場合、例えば、CPU71は、レンズLEの種類と共に乱視軸の方向を考慮して、レンズLEの厚みが大きくなる位置に輪郭上の切り離し点PFを設定してもよい。また、レンズLEにおけるそれぞれの位置における厚みの分布を示す情報を取得している場合には、CPU71は、単純に、レンズLEの厚みが大きくなる位置を厚み分布情報から判断し、切り離し点PFの位置を設定してもよい。
【0075】
なお、切り離し点PFの位置は、レンズLEの厚みが最も大きくなる輪郭9上の点に厳密に設定されることが望ましい。しかし、レンズLEの厚みが最も大きくなる点からある程度ずれた位置に切り離し点PFが設定される場合でも、従来に比べて十分な効果がある。従って、「レンズLEの厚みが最も大きくなる領域」は、ある程度の幅(広さ)を有していてもよい。また、CPU71は、レンズLEの厚みが最も大きくなる領域以外の領域に切り離し点PFの位置を設定してもよい。例えば、CPU71は、輪郭9が通過する領域のうち、レンズLEの厚みが閾値以上となる領域内に、切り離し点PFの位置を設定してもよい。この場合でも、レンズLEの厚みを考慮しない場合に比べて、レンズLEが破損することの影響は軽減し得る。なお、この場合の厚みの閾値は、例えばレンズLEの基材の種類等に応じて適宜設定すればよい。実験結果等に基づいて閾値が予め定められていてもよい。
【0076】
本実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、本実施形態で例示された技術を変更することも可能である。まず、本実施形態で例示した切断加工具12の加工軌跡を変更することも可能である。例えば、本実施形態では、2回の切断加工動作によって加工形状を形成するように加工軌跡が設定される。しかし、CPU71は、1回または3回以上の切断加工動作によって加工形状を形成するように加工軌跡を設定してもよい。
【0077】
本実施形態では、レンズLEの中心OCを通る光軸を基準として厚みの分布が点対称となるマイナスレンズおよびプラスレンズを例示した。しかし、厚みの分布が光軸を基準として点対称とはならないレンズ(例えばシリンダーレンズ等)を加工する場合でも、本実施形態で例示した技術の少なくとも一部を適用できる。
【0078】
本実施形態では、乱視を矯正しないレンズLEを例示して説明を行った。従って、本実施形態で例示したレンズLEのコバ部の厚みは一定である。よって、1回目の切断加工動作においてレンズLEが切り離されるコバ部上の切り離し点(例えば、コバ部切り離し点P3)の位置を変更しても、破損の影響は変化し難い。しかし、CPU71は、コバ部上の切り離し点の位置を、各種情報に基づいて設定してもよい。例えば、乱視を矯正するシリンダーレンズ、または、プリズムが含まれるレンズ等では、コバ部み厚みが一定でない。CPU71は、レンズLEのコバ部の厚みが一定でない場合、コバ部のうち厚みが最も大きくなる領域内に、コバ部上の切り離し点の位置を設定してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 眼鏡レンズ加工装置
9 加工形状の輪郭
12 切断加工具
40 X方向移動機構
50 Z方向移動機構
60 Y方向移動機構
70 制御部
71 CPU
PF 切り離し点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12