(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686426
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
H02K5/10 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-253579(P2015-253579)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-118747(P2017-118747A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】寺久保 英隆
(72)【発明者】
【氏名】森 堂起
【審査官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−138551(JP,A)
【文献】
特開平03−117342(JP,A)
【文献】
実開平04−010922(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ外郭で覆われたステータと、ロータと、回路基板と、ブラケットとを備えるとともに、前記回路基板に接続されたリード線を前記モータ外郭と前記ブラケットとで覆われた内部から外部へ引出すためのブッシングを備え、
前記モータ外郭は、前記ブッシングが配置される前記回路基板側に前記ロータの軸方向に対し垂直に形成された端面と、前記端面に連続するように前記ロータの軸方向に対し平行に形成された外周面とを備え、
前記ブッシングは、前記リード線を挟んで保持する一対の保持片を有し、
前記一対の保持片のうちの一方の保持片は、前記モータ外郭の外周面に沿って形成されるとともに、前記モータ外郭の外周面または前記ブラケットの外周面に当接する当接面を備え、
前記当接面は、幅方向の両側または片側に、前記モータ外郭と前記ブラケットとで覆われた内部で発生した水を排水するための排水通路を備え、
前記排水通路は、前記当接面から凹んだ複数の微小な溝と、前記当接面に当接する前記外周面とによって形成されていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記モータ外郭の前記外周面と前記当接面の間に前記モータ外郭の前記外周面を覆う前記ブラケットを備え、前記当接面は前記ブラケットの外周面に当接することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に接続されたリード線をモータ外郭
とブラケットとで覆われた内部から外部へ引出すためのブッシングを備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動機には、回転磁界を発生するステータの内部に、永久磁石を備えるロータを回転可能に配置したインナーロータ型の電動機がある。この型の電動機には、例えば、空気調和機の室外機に搭載される送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータがある。
【0003】
このような電動機は、例えば、樹脂で形成されたモータ外郭で覆われたステータと、ロータと、回路基板と、
ブラケットとを備えるとともに、この回路基板に接続されたリード線をモータ外郭とブラケットとで覆われた内部から外部へ引出すためのブッシングを備えている。モータ外郭は、ブッシングが配置される回路基板側に、ロータの軸方向に対し垂直な端面と、この端面に連続形成されロータの軸方向に対し平行な外周面が形成されている。
【0004】
このブッシングは、例えば、リード線を両側から挟んで保持する一対の保持片を有するタイプのものがある(例えば、特許文献1)。この一対の保持片のうち、一方の保持片は略L字状に形成され、モータ外郭の端面に沿って当接される第1当接部と、モータ外郭の外周面に沿って当接される第2当接部を備えている。
【0005】
このようなブッシングを備えた電動機において、モータ外郭
とブラケットとで覆われた内部に結露水などの水が発生した場合、発生した水をモータ外郭
とブラケットとで覆われた内部から外部に水抜きする必要がある。このため、モータ外郭
とブラケットとで覆われた内部の水抜き対策として、例えば、モータ外郭
とブラケットとで覆われた内部と外部を連通する排水通路を、ブッシングの一方の保持片に備えた第1当接部から第2当接部に向かって形成することが考えられる。
【0006】
しかしながら、例えば、空気調和機の室外機に搭載される電動機は、ブッシングの一方の保持片に形成される排水通路の大きさによっては、アリなどの小虫が排水通路からモータ外郭
とブラケットとで覆われた内部に侵入し回路基板に備えた配線や部品のショートの原因になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−138551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、リード線を両側から挟んで保持する一対の保持片を有するタイプのブッシングを備えた電動機において、ブッシングに設けられた排水通路から小虫がモータ外郭
とブラケットとで覆われた内部へ侵入するのを防止することができる電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電動機は、モータ外郭で覆われたステータと、ロータと、回路基板と、
ブラケットとを備えるとともに、回路基板に接続されたリード線をモータ外郭とブラケットとで覆われた内部から外部へ引出すためのブッシングを備え、モータ外郭は、ブッシングが配置される回路基板側にロータの軸方向に対し垂直に形成された端面と、この端面に連続するようにロータの軸方向に対し平行に形成された外周面とを備え、ブッシングは、リード線を挟んで保持する一対の保持片を有し、一対の保持片のうちの一方の保持片は、モータ外郭の外周面に沿って形成されるとともに、モータ外郭の外周面またはブラケットの外周面に当接する当接面を備え、当接面は、幅方向の両側または片側に、モータ外郭とブラケットとで覆われた内部で発生した水を排水するための排水通路を備え、排水通路は、当接面から凹んだ複数の微小な溝と、当接面に当接する外周面とによって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動機によれば、リード線を挟んで保持する一対の保持片を有するタイプのブッシングを備えた電動機において、ブッシングに設けられた排水通路から小虫がモータ外郭
とブラケットとで覆われた内部へ侵入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のブッシングを備えた電動機を示す部分断面を含む側面図である。
【
図2】本発明の電動機のブッシングが配置されるモータ外郭の位置を示す説明図であり、(a)は部分正面図、(b)はブッシングとモータ外郭を示す部分外観斜視図である。
【
図3】本発明の電動機のブッシングを示す外観斜視図である。
【
図4】本発明の電動機のブッシングをモータ外郭に配置した状態を示す説明図であり、(a)は部分側面図、(b)は(a)のA矢視方向の部分正面図、(c)は(a)のB矢視方向の部分下面図である。
【
図5】本発明の電動機のブッシングをモータ外郭に当接した状態を示す部分平面図である。
【
図6】本発明の電動機のブッシングに形成された溝の大きさを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至
図6は、本実施形態における電動機を説明する図である。
図1乃至
図6に示すように、この電動機1は、ステータ2の内部にロータ3を回転可能に配置したインナーロータ型の電動機であり、例えば、空気調和機の室外機に搭載される送風ファンを回転駆動するためのブラシレスDCモータである。
【0013】
この電動機1は、
図1に示すように、円筒状のステータ2と、ステータ2の内径側にステータ2と同軸的に配置されるロータ3とを有し、ステータ2は、金型内で合成樹脂をステータコア21と一体成形することによってステータコア21のティース面22を残して、全体が合成樹脂で形成されたモータ外郭40で覆われている。
【0014】
ステータ2の一方の端面側(
図1において左側)を覆うモータ外郭40には、ロータ3に備えた後述するシャフト32を支持する軸受33が収納される第1ブラケット41が設けられている。ステータ2の他方の端面側(
図1において右側)を覆うモータ外郭40には、電動機1を駆動する制御部を搭載した回路基板5が搭載され、その回路基板5を覆うようにシャフト32を支持するもう1つの軸受34が収納される第2ブラケット42が設けられている。ステータ2の外周側(
図1において左右の中央部の外周面)を覆うモータ外郭40には、第2ブラケット42とモータ外郭6の固定を強固にするための第3ブラケット43が設けられている。
【0015】
ロータ3は、軸受33、34に回転可能な状態で支持されたシャフト32と、シャフト32に同軸的に取付けられ外径側に複数のロータマグネットを有する円筒状のロータ本体31とを備えている。ステータ2とロータ3の両端には、第1ブラケット41はモータ外郭40と一体成形され、第2ブラケット42はモータ外郭40に圧入され、第3ブラケット43は第2ブラケット42にカシメられ、モータ外郭40の内部を塞ぐことで防水構造になっている。
【0016】
モータ外郭40と第2ブラケット42との間には、回路基板5に接続されたリード線51をモータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部から外部へ引出すためのブッシング6が設けられている。ブッシング6について説明するにあたり、まず、ブッシング6が当接されるモータ外郭40の構造について説明する。
【0017】
モータ外郭40は、
図1、
図2、
図5に示すように、シャフト32の反出力側(軸受34の側)に形成されシャフト32の軸方向に対し垂直な端面401と、端面401に連続形成されシャフト32の軸方向に対し平行な外周面402が形成されている。モータ外郭40の端面401(
図1において右側)の外周縁には、端面401に連続形成されシャフト32の軸方向に向かって突出する外周凸部406が設けられている。
図2、
図5に示すように、外周凸部406には、回路基板5が載置されて、ブッシング6が配置される箇所に切欠部403が設けられている。切欠部403は、モータ外郭40の外周から内側に向かって、ブッシング6の幅に対応した開口幅になるように切欠かれている。ここで、ブッシング6の幅は、後述する第1当接部67の幅と、第1当接部67の両側に形成された側壁673、673と切欠部403の両側に形成された側壁405、405との間の隙間711とを合わせた幅である。
【0018】
切欠部403の外周側には、モータ外郭40の外周面402とブッシング6の後述する第2当接部68の間に、モータ外郭40の外周面402を覆う第2ブラケット42を備えており、ブッシング6の後述する第2当接部68は第2ブラケット42の外周面421に当接されている。なお、第2当接部68をモータ外郭40の外周面402に直接当接するようにしてもよい。そして、切欠部403の外周側には、端面401の周方向の中央に、端面401に連続形成されシャフト32の軸方向に向かって突出する係止凸部404が形成されている。この係止凸部404は、ブッシング6の後述する第1当接部67に形成された係止凹部672を係止することによってブッシング6を支持する。
【0019】
ブッシング6は、
図3、
図4、
図5に示すように、リード線51を挟んで保持する一対の第1保持片61と第2保持片62とを有し、第1保持片61と第2保持片62はそれぞれ、絶縁性を有する合成樹脂から形成されている。第1保持片61と第2保持片62にはそれぞれ、互いに向かい合わせて当接する第1向かい合わせ面63と第2向かい合わせ面64を有している。第1向かい合わせ面63と第2向かい合わせ面64にはそれぞれ、第1向かい合わせ面63と第2向かい合わせ面64から凹んでリード線51が案内される第1案内部65と第2案内部66を備えている。
【0020】
第1保持片61は、L字状に形成され、モータ外郭40の端面401に沿って当接する第1当接部67と、モータ外郭40の外周面402を覆う第2ブラケット42の外周面421に沿って当接する当接面681を有する第2当接部68を備えている。第1当接部67と第2当接部68は、第1保持片61の幅方向の両側に、第1当接部67から第2当接部68にわたって形成され、モータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部で発生した結露水などの水を排水するための排水通路7を備えている。
【0021】
排水通路7は、
図2、
図3、
図5に示すように、第1当接部67の両側に形成された側壁673、673と、外周凸部407に設けられた切欠部403の両側に形成された側壁405、405との間に隙間711が形成された第1排水通路71と、第2ブラケット42の外周面421と当接する当接面681の幅方向の両側に、当接面681から三角形状に凹んだ複数(例えば、本実施例では10個)の微小な溝721が隣接するように並んで形成された第2排水通路72を備えている。ここで、電動機1を空気調和機の室外機に搭載した場合、電動機1の設置状態として、
図1、
図4に示すように、シャフト32が水平方向に延び、ブッシング6がモータ外郭40から鉛直方向の下方に延びているものとする。この時のブッシング6の第1保持片61に備えた排水通路7は、第1排水通路71が鉛直方向に、第2排水通路72が水平方向に延びる通路になっており、モータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部で発生した水を第1排水通路71を通じて落下させ、第2排水通路72を通じて落下した水を分岐して排水させる役目を持たせたものになっている。
【0022】
図6に示すように、第2排水通路72の複数の溝721の開口幅D1と深さD2は、アリなどの小虫が入らないように微小な大きさに形成されている。第2排水通路72の複数の溝721の開口幅D1と深さD2は、小虫の大きさと種類が、例えば、ヒメアリ(全長2mm、頭部(縦幅0.15mm、横幅0.5mm))を基準として、開口幅D1が0.45mm、深さD2が0.3mmに設定されている。
図4および
図5に示すように、第2排水通路72の複数の溝721の開口幅D1と深さD2は、ブッシング6の第2当接部68が第2ブラケット42の外周面421に当接した状態のとき、第2排水通路72と第2ブラケット42の外周面421との断面の隙間に相当しており、この隙間にヒメアリの頭部(縦幅0.15mm、横幅0.5mm)が三角形状の溝721に侵入しないようにしている。
【0023】
以上説明してきた本実施形態による電動機1によれば、第1当接部67と第2当接部68は
、第1保持片61の幅方向中央に
、第1当接部67から第2当接部68にわたって形成され
、モータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部で発生した水を排水するための排水通路7を備え、排水通路7は
、第1当接部67の端面401との当接面671から矩形状に凹んだ第1排水通路71と
、第2当接部68の外周面402との当接面681から矩形状に凹んだ第2排水通路72
とを備え、第1排水通路71の深さD1は第2排水通路72の深さD2よりも深く形成され、第2排水通路72の深さD2は小虫の侵入を阻止するために微小な深さに形成されている。
この結果、リード線51を挟んで保持する一対の第1保持片61と第2保持片62を有するタイプのブッシング6を備えた電動機1において、ブッシング6に設けられた排水通路7から小虫がモータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部へ侵入するのを防止することができる。
【0024】
なお、本実施形態による電動機1では、当接面681は幅方向の両側にモータ外郭40
と第2ブラケット42とで覆われた内部で発生した水を排水するための第2排水通路72(排水通路)を備えるようにしたが、本発明はこれに限らず、当接面681は幅方向の片側に第2排水通路72(排水通路)を備えるようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態による電動機1では、第2ブラケット42の外周面421と当接する当接面681から三角形状に凹んだ複数の微小な溝721を形成する構造としたが、本発明はこれに限らず、矩形状や円形状に凹んだ複数の微小な溝721を形成する構造にしてもよい。この場合、第2排水通路72の複数の溝721の開口幅D1と深さD2は、上述と同様に、例えば、ヒメアリ(全長2mm、頭部(縦幅0.15mm、横幅0.5mm))を基準として、ヒメアリの頭部が侵入しない寸法に設定されている。
【0026】
また、本実施形態による電動機1では、第2ブラケット42の外周面421と当接する当接面681から凹んだ複数の微小な溝721が隣接するように並んで形成される構造としたが、本発明はこれに限らず、複数の微小な溝721が間隔をあけて並んで形成される構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 電動機
2 ステータ
21 ステータコア
3 ロータ
31 ロータ本体
32 シャフト
33、34 軸受
40 モータ外郭
401 端面
402 外周面
403 切欠部
404 係止凸部
405 両側壁
406 外周凸部
41 第1ブラケット
42 第2ブラケット
421 外周面
43 第3ブラケット
5 回路基板
51 リード線
6 ブッシング
61 第1保持片
62 第2保持片
63 第1向かい合わせ面
64 第2向かい合わせ面
65 第1案内部
66 第2案内部
67 第1当接部
671 当接面
672 係止凹部
673 側壁
68 第2当接部
681 当接面
7 排水通路
71 第1排水通路
711 隙間
72 第2排水通路
721 溝
D1 複数の溝721の開口幅
D2 複数の溝721の深さ