(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686463
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ、タイヤ劣化判定方法及びタイヤ更生可否判定方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20200413BHJP
B60C 23/06 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C19/00 H
B60C23/06 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-9630(P2016-9630)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-128252(P2017-128252A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−179824(JP,A)
【文献】
特開2011−088558(JP,A)
【文献】
特開2006−327469(JP,A)
【文献】
特開2012−116417(JP,A)
【文献】
特開2012−013640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
B29D 30/00− 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、該タイヤ劣化判定具は初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤ劣化判定具がシート状の成形体からなり、該タイヤ劣化判定具は初期歪が与えられた状態で粘着層を介してタイヤ内面に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤ劣化判定具がリング状の成形体からなり、前記タイヤ内面に突起が形成されており、前記タイヤ劣化判定具は前記突起の周囲に嵌め合わされて初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ劣化判定具がトレッド幅の中央側75%の領域又はタイヤ断面高さの25%以下の領域においてタイヤ内面に装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤ劣化判定具を構成する成形体がタイヤ内面とは異なる色に着色された着色部を有し、該着色部が前記初期歪の付与方向に沿って延在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ内面に複数個のタイヤ劣化判定具が装着されており、これらタイヤ劣化判定具に与えられた初期歪の値が互いに異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤの劣化度合いを判定する方法であって、タイヤ使用開始後の任意の時点で前記タイヤ劣化判定具の破断状態を確認し、その破断状態に基づいて前記空気入りタイヤの劣化度合いを判定することを特徴とするタイヤ劣化判定方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤの更生可否を判定する方法であって、タイヤ更生時に前記タイヤ劣化判定具の破断状態を確認し、その破断状態に基づいて前記空気入りタイヤの更生可否を判定することを特徴とするタイヤ更生可否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ劣化判定具を備えた空気入りタイヤ及びその関連技術に関し、更に詳しくは、タイヤの劣化度合いを簡単に判定することを可能にした空気入りタイヤ、タイヤ劣化判定方法及びタイヤ更生可否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効活用及び省エネルギーの観点から、空気入りタイヤのトレッド部が摩耗して使用不能の状態になった後、その空気入りタイヤを再生して得られる更生タイヤが普及している。特に、トラックやバスに使用される重荷重用空気入りタイヤについては、更生タイヤが広く使用されている。
【0003】
使用済みの空気入りタイヤを更生する場合、トレッドゴムが研削された台タイヤを作製し、その台タイヤに対して新たなトレッドゴムを被覆する。そのような更生作業を行うにあたって、台タイヤの残存耐久性を確認するために、シェアログラフィ検査により内部セパレーションの有無を確認したり、外観検査により外傷の有無を確認したりすることが行われている。しかしながら、このような検査は多大な時間を要すると共に作業が煩雑である。
【0004】
また、硫黄架橋可能なジエン系ゴム組成物からなる芯体ゴムがタイヤのインナーライナー層と同等又はそれ以上の酸素透過係数を有するカバーゴムで被覆されたタイヤ劣化判定具をタイヤ内面に設置し、そのタイヤ劣化判定具の屈曲試験の結果に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを判定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この場合も、タイヤ劣化判定具をタイヤ内面から取り外し、タイヤ劣化判定具に対して屈曲試験を行う必要があるため、空気入りタイヤの劣化度合いを即座に判断することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−327469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤの劣化度合いを簡単に判定することを可能にした空気入りタイヤ、タイヤ劣化判定方法及びタイヤ更生可否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、ゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、該タイヤ劣化判定具は初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明のタイヤ劣化判定方法は、上述した空気入りタイヤの劣化度合いを判定する方法であって、タイヤ使用開始後の任意の時点で前記タイヤ劣化判定具の破断状態を確認し、その破断状態に基づいて前記空気入りタイヤの劣化度合いを判定することを特徴とするものである。
【0009】
更に、上記目的を達成するための本発明のタイヤ更生可否判定方法は、上述した空気入りタイヤの更生可否を判定する方法であって、タイヤ更生時に前記タイヤ劣化判定具の破断状態を確認し、その破断状態に基づいて前記空気入りタイヤの更生可否を判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、空気入りタイヤがゴム組成物の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、そのタイヤ劣化判定具は初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着されているので、酸化劣化に伴ってタイヤ劣化判定具の破断伸びが低下し、それが予め設定された初期歪を下回ると、タイヤ劣化判定具に破断を生じることになる。そのため、タイヤ劣化判定具の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができる。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ劣化判定具がシート状の成形体からなり、該タイヤ劣化判定具は初期歪が与えられた状態で粘着層を介してタイヤ内面に装着されていることが好ましい。これにより、タイヤ劣化判定具に対して所望の初期歪を与えた状態で該タイヤ劣化判定具をタイヤ内面に保持することができる。
【0012】
或いは、タイヤ劣化判定具がリング状の成形体からなり、タイヤ内面に突起が形成されており、タイヤ劣化判定具は突起の周囲に嵌め合わされて初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着されていることが好ましい。これにより、タイヤ劣化判定具に対して所望の初期歪を与えた状態で該タイヤ劣化判定具をタイヤ内面に保持することができる。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ劣化判定具はトレッド幅の中央側75%の領域又はタイヤ断面高さの25%以下の領域においてタイヤ内面に装着されていることが好ましい。これら領域ではタイヤ走行時にタイヤ内面が変形し難いため、タイヤ劣化判定具に掛かる歪を低減し、酸素による劣化度合いを精度良く判定することができる。
【0014】
本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ劣化判定具を構成する成形体がタイヤ内面とは異なる色に着色された着色部を有し、該着色部が初期歪の付与方向に沿って延在することが好ましい。タイヤ劣化判定具の破断状態を確認するにあたって、タイヤ劣化判定具の色とタイヤ内面の色とが同じであると破断状態の判断が難しいが、成形体に着色部を設けることにより、破断状態を容易に判断することができる。
【0015】
本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面に複数個のタイヤ劣化判定具が装着されており、これらタイヤ劣化判定具に与えられた初期歪の値が互いに異なることが好ましい。このように初期歪の値が互いに異なる複数個のタイヤ劣化判定具を設置することにより、空気入りタイヤの劣化度合いを精密に判定することができる。
【0016】
更に、本発明のタイヤ劣化判定方法によれば、タイヤ使用開始後の任意の時点でタイヤ劣化判定具の破断状態を確認することにより、タイヤ劣化判定具の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができる。
【0017】
更に、本発明のタイヤ更生可否判定方法によれば、タイヤ更生時にタイヤ劣化判定具の破断状態を確認することにより、タイヤ劣化判定具の破断状態に基づいて空気入りタイヤの更生可否を簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態からなる重荷重用の空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
【
図2】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤに装着されたタイヤ劣化判定具を示す斜視図である。
【
図3】
図2のタイヤ劣化判定具の装着方法を示す説明図である。
【
図4】本発明におけるタイヤ劣化判定具の破断伸びの経時的な変化を示すグラフである。
【
図5】本発明に係るタイヤ劣化判定具の他の変形例を示し、(a)は破断前の状態を示す平面図であり、(b)は破断後の状態を示す平面図である。
【
図6】本発明に係るタイヤ劣化判定具の更に他の変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図6のタイヤ劣化判定具の装着方法を示す説明図である。
【
図8】本発明に係るタイヤ劣化判定具の更に他の変形例を示す斜視図である。
【
図9】本発明に係るタイヤ劣化判定具の更に他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる重荷重用の空気入りタイヤを示し、
図2及び
図3は本発明に係るタイヤ劣化判定具を示すものである。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0021】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0022】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜60°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0023】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ気室に面するタイヤ内面Sにはタイヤ劣化判定具10が装着されている。
図2に示すように、タイヤ劣化判定具10はシート状であって直方体をなすゴム組成物の成形体11から構成されている。成形体11を構成するゴム組成物としては、例えば、硫黄架橋可能なジエン系ゴム組成物を使用することができる。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等を挙げることができる。但し、タイヤ劣化判定具10の成形体11に使用されるゴムは上記ジエン系ゴムに限定されるものではなく、そのゴムには硫黄、加硫促進剤、老化防止剤、カーボンブラック等の充填剤、オイル等の軟化剤、樹脂、ワックス、コバルト塩等の金属塩、ステアリン酸、亜鉛華等の添加物を適宜配合することができる。特に、タイヤの酸化劣化を判定するにあたって、酸化劣化を生じ易い天然ゴム系のゴム組成物が好ましく、硫黄、更には金属塩を含有するものが好ましい。
【0024】
タイヤ劣化判定具10は、
図2に示すように、初期歪が与えられた状態でシート状の粘着層12を介してタイヤ内面Sに対して着脱自在に貼着されている。より具体的には、
図3に示すように、タイヤ劣化判定具10の成形体11は貼着前の寸法が貼着後の寸法よりも小さくなっており、その成形体11が一軸方向又は二軸方向に引っ張られた状態で粘着層12を介してタイヤ内面Sに貼り付けられている。これにより、タイヤ劣化判定具10に対して所望の初期歪を与えた状態で該タイヤ劣化判定具10をタイヤ内面Sに保持することができる。粘着層12としては、両面テープや粘着剤等を使用することができる。なお、粘着層12自体が伸縮性を有する場合には、成形体11と粘着層12とが一体化された状態でタイヤ劣化判定具10に対して初期歪を与えても良い。初期歪としては、5%以上、好ましくは10%〜400%の引張り歪を与えることが好ましい。また、歪の形態は一軸方向又は二軸方向の引っ張り歪のほか、捩り歪であっても良い。
【0025】
上述した空気入りタイヤは、ゴム組成物の成形体11からなるタイヤ劣化判定具10を備え、そのタイヤ劣化判定具10は初期歪が与えられた状態でタイヤ内面Sに装着されているので、酸化劣化に伴ってタイヤ劣化判定具10の破断伸びが低下し、それが予め設定された初期歪を下回ると、タイヤ劣化判定具10に破断を生じることになる。即ち、
図4に示すように、タイヤ劣化判定具10破断伸びは使用期間が長くなるに連れて徐々に低下するが、その破断伸びが予め設定された初期歪Aを下回ると、タイヤ劣化判定具10が破断する。そのため、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができる。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ劣化判定具10はトレッド幅TWの中央側75%に相当する領域X1又はタイヤ断面高さSHの25%以下となる領域X2の範囲内でタイヤ内面Sに装着されているのが良い。これら領域X1,X2ではタイヤ走行時にタイヤ内面Sが変形し難いため、タイヤ劣化判定具10に掛かる歪を低減し、酸素による劣化度合いを精度良く判定することができる。タイヤ劣化判定具10の配置位置が領域X1,X2から外れると、走行時にタイヤ劣化判定具10に対して歪が繰り返し与えられることに起因してタイヤ劣化判定具10に物性変化が起こり、劣化度合いを正確に判断することが困難になる。
【0027】
図5(a),(b)は本発明に係るタイヤ劣化判定具の他の変形例を示すものである。
図5(a)に示すように、タイヤ劣化判定具10を構成する成形体11はタイヤ内面Sとは異なる色に着色された着色部13を有しており、その着色部11aは初期歪の付与方向に沿って延在している。着色部13の色としては、例えば、黄色、白色、水色のような黒色以外の色を選択することができる。また、着色部13は着色されたゴム層であっても良く、或いは、塗装により形成された塗膜であっても良い。このような着色部13を設けた場合、
図5(b)に示すように、タイヤ劣化判定具10の劣化に伴って初期歪の付与方向とは交差する方向に沿って破断が生じたとき、その破断状態を着色部13に基づいて容易に判別することができる。タイヤ劣化判定具10の破断状態を確認するにあたって、タイヤ劣化判定具10の色とタイヤ内面Sの色とが同じであると破断状態の判断が難しいが、成形体11に着色部13を設けることにより、破断状態を容易に判断することができる。
【0028】
図6及び
図7は本発明に係るタイヤ劣化判定具の更に他の変形例を示すものである。
図6において、タイヤ劣化判定具10はリング状の成形体11から構成されており、タイヤ内面Sには突起14が形成されている。突起14の形状は円錐状や円柱状であると良い。そして、タイヤ劣化判定具10は突起14の周囲に嵌め合わされて初期歪が与えられた状態でタイヤ内面Sに装着されている。より具体的には、
図7に示すように、タイヤ劣化判定具10の成形体11は貼着前の寸法が貼着後の寸法よりも小さくなっており、その成形体11が引っ張られた状態で突起14の周囲に嵌め合わされている。突起14の外周面には環状の溝15が形成されており、この溝15内に成形体11が嵌まり込むようになっている。これにより、タイヤ劣化判定具10に対して所望の初期歪を与えた状態で該タイヤ劣化判定具10をタイヤ内面Sに保持することができる。また、タイヤ劣化判定具10の初期歪は溝15の内周長と成形体11の内周長との比に基づいて規定される。
【0029】
上述した例では、酸化劣化に伴ってタイヤ劣化判定具10の破断伸びが低下し、それが予め設定された初期歪を下回ると、タイヤ劣化判定具10が破断して突起14から脱落することになる。そのため、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができる。
【0030】
図8及び
図9は本発明に係るタイヤ劣化判定具の更に他の変形例を示すものである。
図8においては、タイヤ内面Sにはシート状の成形体11(11A,11B,11C)からなる複数個のタイヤ劣化判定具10(10A,10B,10C)が装着されており、これらタイヤ劣化判定具10A,10B,10Cに与えられた初期歪の値が互いに異なっている。一方、
図9においては、タイヤ内面Sに共通の突起14が設けられており、該突起14に対してリング状の成形体11(11X,11Y,11Z)からなる複数個のタイヤ劣化判定具10(10X,10Y,10Z)が装着されており、これらタイヤ劣化判定具10X,10Y,10Zに与えられた初期歪の値が互いに異なっている。
【0031】
このように初期歪の値が互いに異なる複数個のタイヤ劣化判定具10を設置した場合、劣化度合いに応じてタイヤ劣化判定具10が初期歪の値が大きいものから順次破断するので、空気入りタイヤの劣化度合いを精密に判定することができる。例えば、上述のように3種類のタイヤ劣化判定具10を配設するにあたって、1番目に大きな初期歪をS1(%)とし、2番目に大きな初期歪をS2(%)とし、3番目に大きな初期歪をS3(%)としたとき、S1/S2≧1.2、S2/S3≧1.2の関係を満足することが好ましい。また、初期歪の値が互いに異なるタイヤ劣化判定具10を容易に判別するために、初期歪の値が互いに異なるタイヤ劣化判定具10を異なる色で着色することも有効である。
【0032】
以下、上述したタイヤ劣化判定具10を用いたタイヤ劣化判定方法について詳細に説明する。先ず、空気入りタイヤにおいて、タイヤ内面Sに対してタイヤ劣化判定具10を初期歪が与えられた状態で装着する。タイヤ劣化判定具10は空気入りタイヤの製造直後に装着しても良く、或いは、空気入りタイヤの使用開始時に装着しても良い。次いで、タイヤ使用開始後の任意の時点でタイヤ劣化判定具10の破断状態を確認する。タイヤ使用開始後の任意の時点とは、例えば、タイヤ使用過程において任意の走行距離に到達した時点、更生作業を行う時点又はタイヤを廃棄する時点である。そして、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを判定する。タイヤ劣化判定具10に破断が生じている場合、その空気入りタイヤの劣化が十分に進行していると判断される。
【0033】
タイヤ劣化判定具10の劣化進行速度は成形体11を構成するゴム組成物の配合に基づいて任意に設定することができる。そのため、成形体11を構成するゴム組成物の配合を調整することにより、判定すべき劣化度合いを調整することが可能である。また、タイヤ劣化判定具10の初期歪を調整することにより、判定すべき劣化度合いを調整することが可能である。これにより、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができる。
【0034】
以下、上述したタイヤ劣化判定具10を用いたタイヤ更生可否判定方法について詳細に説明する。空気入りタイヤを更生する場合、その空気入りタイヤが台タイヤとして再利用可能であるか否かを判定する必要があるが、そのような判定をタイヤ劣化判定具10により行うことができる。
【0035】
ここで、空気入りタイヤの内部パーツの残存耐久性に対応するように調整されたタイヤ劣化判定具10を用意する。即ち、空気入りタイヤの内部パーツの残存耐久性は劣化に伴って徐々に低下し、台タイヤとして再利用可能と判断される最低限の残存耐久性に至り、更には台タイヤとして再利用不可能な残存耐久性に至る。これに対して、使用される空気入りタイヤが台タイヤとして再利用可能と判断される最低限の残存耐久性に至る以前に破断が生じるようにタイヤ劣化判定具10の劣化特性と初期歪を適正化する。
【0036】
タイヤ更生可否を判定する場合、タイヤ内面Sに装着されたタイヤ劣化判定具10をタイヤ更生時に目視により確認する。そして、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの更生可否を判定する。タイヤ劣化判定具10が破断している場合、台タイヤとして不適当であると判断される。一方、タイヤ劣化判定具10が破断していない場合、台タイヤとして適当であると判断される。これにより、タイヤ劣化判定具10の破断状態に基づいて空気入りタイヤの更生可否を簡単に判定することができる。
【実施例】
【0037】
タイヤサイズ11R22.5の空気入りタイヤにおいて、以下のように構造が異なるタイヤ劣化判定具を備えた実施例1〜5のタイヤを作製した。タイヤ劣化判定具はタイヤ赤道位置においてタイヤ内面に対して装着した。
【0038】
実施例1のタイヤは、
図1に示すように、シート状の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、該タイヤ劣化判定具を初期歪が与えられた状態で粘着層を介してタイヤ内面に貼着したものである。
【0039】
実施例2のタイヤは、
図5に示すように、シート状の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、該タイヤ劣化判定具を初期歪が与えられた状態で粘着層を介してタイヤ内面に貼着し、その成形体にタイヤ内面とは異なる色に着色された着色部を設けたものである。
【0040】
実施例3のタイヤは、
図6に示すように、タイヤ内面に形成された突起を備えると共に、リング状の成形体からなるタイヤ劣化判定具を備え、該タイヤ劣化判定具を突起の周囲に嵌め合せて初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着したものである。
【0041】
実施例4のタイヤは、
図8に示すように、シート状の成形体からなる複数個のタイヤ劣化判定具を備え、これらタイヤ劣化判定具を初期歪が与えられた状態で粘着層を介してタイヤ内面に貼着し、タイヤ劣化判定具に与えられた初期歪の値を互いに異ならせたものである。
【0042】
実施例5のタイヤは、
図9に示すように、タイヤ内面に形成された突起を備えると共に、リング状の成形体からなる複数個のタイヤ劣化判定具を備え、これらタイヤ劣化判定具を突起の周囲に嵌め合せて初期歪が与えられた状態でタイヤ内面に装着し、タイヤ劣化判定具に与えられた初期歪の値を互いに異ならせたものである。
【0043】
これら実施例1〜5のタイヤを実際に使用し、タイヤ劣化判定具の破断状態を経時的に調べた。その結果、使用時間が増大するに伴ってタイヤ劣化判定具が適時破断した。このことからも明らかなように、実施例1〜5のタイヤ劣化判定具によれば、空気入りタイヤの劣化度合いを簡単に判定することができ、その空気入りタイヤが更生可能であるか否かを簡単に判定することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
10 タイヤ劣化判定具
11 成形体
12 粘着層
13 着色部
14 突起
15 溝