特許第6686537号(P6686537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686537
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ガスボイラの燃焼制御機構
(51)【国際特許分類】
   F23N 1/00 20060101AFI20200413BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   F23N1/00 103Z
   F23N5/26 101B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-41423(P2016-41423)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-156047(P2017-156047A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛尚
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−162142(JP,A)
【文献】 特開2008−164264(JP,A)
【文献】 特開2016−020791(JP,A)
【文献】 特公平07−031554(JP,B2)
【文献】 特開2004−353990(JP,A)
【文献】 特開2016−008803(JP,A)
【文献】 特開平07−233936(JP,A)
【文献】 特開2004−069147(JP,A)
【文献】 特開2003−254534(JP,A)
【文献】 特許第2785458(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00 − 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボイラの燃焼制御機構において、
ガスボイラに空気を供給する空気供給路における空気の流量に関する物理量を算出する物理量算出部と、
ガスボイラに燃料ガスを供給する燃料ガス供給路における燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、
流量調整弁の開度を調整して制御する第1制御部と、
燃料ガス供給路における流量調整弁の一次側の圧力を検出する圧力センサと、を備え、
第1制御部は、
前記物理量算出部が算出する物理量に基づき、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量を決定し、さらに、
流量調整弁の開度を、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量と、圧力センサにより検出した流量調整弁の一次側の圧力とに基づき決定して、流量調整弁の開度を調整する、ガスボイラの燃焼制御機構。
【請求項2】
第1制御部は、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量と流量調整弁の開度の関係を記憶し、要求される燃料ガスの流量に対応する記憶された流量調整弁の開度に対して一次側の圧力に基づき決定した補正開度を適用することで、流量調整弁の開度を調整する、請求項1に記載のガスボイラの燃焼制御機構。
【請求項3】
物理量算出部は、空気供給路における空気の差圧を検出する差圧センサであり、空気の差圧を空気の流量に関する物理量として算出する、請求項に記載のガスボイラの燃焼制御機構。
【請求項4】
ガスボイラの燃焼制御機構において、
第2制御部と、
燃料ガス供給路における流量調整弁の二次側の圧力又は流量を検出する二次側検出部とを備え、
第2制御部は、二次側検出部の検出値が所定範囲の値から外れている場合に、流量調整弁の更なる開度補正、警報出力或いはガス燃料の緊急遮断の一つ以上の制御を行う、請求項1からのいずれか1つに記載のガスボイラの燃焼制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボイラの燃焼制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なガス燃焼装置(ガスボイラ)では、バーナへ燃料ガスを供給する燃料ガス供給路に、燃料ガスの圧力を一定に調整するガバナ(整圧器)を設け、一定圧力のもとで燃料ガスの流量の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開1994−249431号公報
【特許文献2】特開1995−208632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的なガバナでは、継続的に燃料ガスが供給される場合は圧力変動を緩和できるが、ガス供給の開始時などのガス流量の変動が大きい場合はガス圧が変動してしまうことが課題であった。
【0005】
これは、ガバナがダイヤフラムのばね等の力によって圧力をバランスさせて2次圧を一定に保つ機構であることに起因している。2次圧がゼロの状態から、突然燃料ガスが流れると、応答遅れにより2次圧が急激に上昇し、オーバーシュートが発生する。これに反応して、ガバナ開度を閉める動作が過剰になり、アンダーシュートが発生する。また、圧力を上げようとしてガバナ開度を開き、オーバーシュートが発生する。このようなオーバーシュートとアンダーシュートの繰り返しが続き、いわゆるハンチング現象が発生する。
【0006】
ガスボイラにおいて燃料ガスの圧力(流量)にハンチング現象が発生した場合、ガス圧力が安定せず、空気比が大きく上下し、振動燃焼などの燃焼の不安定化や失火の原因になる。負荷側の蒸気要求量に応じて燃焼の発停や燃焼量の変化が多いガスボイラでは、燃焼を安定的に行うためにガバナによるガス圧力制御に代わる燃焼制御方法の開発が求められていた。
【0007】
特許文献1、2に記載の燃焼制御方法では、ガバナの1次側と2次側に設けられた遮断弁のうち、2次側の遮断弁の開時間を遅らせることでガス圧力変動を抑制するが、2次側の遮断弁が開いた際には大きな流量変動が起るなど、十分な解決策とはいえない。
【0008】
また、大型のガスガバナは高額であることからも、ガバナに代わる安価な方法が望まれていた。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、燃料ガスを安定的に供給し、ガスボイラにおける燃焼を安定化させることができるガスボイラの燃焼制御機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様であるガスボイラの燃焼制御機構は、ガスボイラに空気を供給する空気供給路における空気の流量に関する物理量を算出する物理量算出部と、ガスボイラに燃料ガスを供給する燃料ガス供給路における燃料ガスの流量を調整する流量調整弁と、流量調整弁の開度を調整して制御する第1制御部と、燃料ガス供給路における流量調整弁の一次側の圧力を検出する圧力センサと、を備え、第1制御部は、前記物理量算出部が算出する物理量に基づき、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量を決定し、さらに、流量調整弁の開度を、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量と、圧力センサにより検出した流量調整弁の一次側の圧力とに基づき決定して、流量調整弁の開度を調整する。
【0011】
前記ガスボイラの燃焼制御機構において、第1制御部は、ガスボイラから要求される燃料ガスの流量と流量調整弁の開度の関係を記憶し、要求される燃料ガスの流量に対応する記憶された流量調整弁の開度に対して一次側の圧力に基づき決定した補正開度を適用することで、流量調整弁の開度を調整してもよい。
【0013】
前記ガスボイラの燃焼制御機構において、物理量算出部は、空気供給路における空気の差圧を検出する差圧センサであり、空気の差圧を空気の流量に関する物理量として算出してもよい。
【0014】
前記ガスボイラの燃焼制御機構において、第2制御部と、燃料ガス供給路における流量調整弁の二次側の圧力又は流量を検出する二次側検出部とを備え、第2制御部は、二次側検出部の検出値が所定範囲の値から外れている場合に、流量調整弁の更なる開度補正、警報出力或いはガス燃料の緊急遮断の一つ以上の制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスボイラの燃焼制御機構によれば、ガス供給圧の変動や燃焼の発停或いは燃焼量の変化があった場合でも、燃料ガスを安定的にガスボイラに供給することができ、ガスボイラにおける燃焼を安定化させ、振動燃焼などの燃焼の不安定化や失火を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るガスボイラの燃焼制御機構の全体構成図
図2】実施形態に係る燃焼制御機構による制御方法の一例を示すフローチャート
図3】実施形態に係る制御部が記憶している補正開度のテーブル
図4A】従来のガバナを有する燃焼制御機構による制御例を示す模式図
図4B】実施形態に係る燃焼制御機構による制御例を示す模式図
図5A】実施形態に係る制御部が異常検出時に更なる開度補正を行う場合のイメージ図(二次圧と時間)
図5B】実施形態に係る制御部が異常検出時に警報を行う場合のイメージ図(二次圧と時間)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るガスボイラの燃焼制御機構2について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る燃焼制御機構2の全体構成図である。燃焼制御機構2は、ガスボイラ4に対して、空気供給路6を介して燃焼用の空気を供給し、燃料ガス供給路8を介して燃料ガスを供給する構成において、所定の空気比が維持されるように空気の流量と燃料ガスの流量を制御する制御機構である。
【0019】
図1に示すように、空気供給路6には、第1流路抵抗10と、第1圧力センサ12が設けられている。また、燃料ガス供給路8には、第1遮断弁14と、第2遮断弁16と、流量調整弁18と、調節機構20と、第2流路抵抗22と、第2圧力センサ24と、第3圧力センサ26とが設けられている。
【0020】
空気供給路6に設けられた第1流路抵抗10は、空気供給路6の流路抵抗となる要素である(例えばパンチングメタル)。第1圧力センサ12は、第1流路抵抗10の前後における空気の差圧を検出する。後述するように、第1圧力センサ12で検出された空気の圧力は、制御部28に検出信号として送信される。
【0021】
図1に示すように、燃料ガス供給路8には、上流側から順に、第1遮断弁14、第2遮断弁16、流量調整弁18、第2流路抵抗22が設けられる。第2遮断弁16と流量調整弁18の間には第2圧力センサ24が接続され、流量調整弁18と第2流路抵抗22の間には第3圧力センサ26が接続される。
【0022】
第1遮断弁14と第2遮断弁16は、弁を開閉することによって燃料ガス供給路8の全開と全閉を切り替える弁である。燃料ガス供給路8に2つの遮断弁を設けることにより、燃料ガスに関する所定の安全性が高められる。一般的には、燃料ガスを下流側に一定の圧力で供給するいわゆるガバナ付き遮断弁が設けられるが、本実施形態ではガバナ付き遮断弁は必要とされない。このため、第2遮断弁16の下流側に位置する流量調整弁18の一次圧力は変動する。
【0023】
流量調整弁18は、燃料ガス供給路8における燃料ガスの流量を調整するための弁であり、流量調整弁18の開度は、調節機構20によって実質的に連続的に変化するように調節される。
【0024】
調節機構20は、制御部28と、弁駆動部30とを備える。制御部28は、前述した第1圧力センサ12、第2圧力センサ24および第3圧力センサ26に接続され、それぞれの圧力センサからの検出信号を受信し、当該検出信号で表される圧力等の値の全て或いは一部に基づいて弁駆動部30の制御を行う。制御部28は、例えばCPU及びメモリ含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。弁駆動部30は、流量調整弁18を駆動する構成部材であり、例えばステッピングモータである。燃料ガスの最小流量から最大流量に至る流量調整弁18の弁開度は、200以上のステップ(段階)で精密に制御される場合があり、そのような弁開度の制御にはステッピングモータ(やサーボモータ)により流量調整弁18を駆動することが適している。このように多数のステップを有することにより、流量調整弁18の開度を実質的に連続的に変化させることができる。
【0025】
第2圧力センサ24は、流量調整弁18の上流側の圧力(一次圧)を測定するように配置されている。第2圧力センサ24で検出された一次圧は制御部28に検出信号として送信される。
【0026】
第3圧力センサ26は、流量調整弁18の下流側の圧力(二次圧)を測定するように配置されている。第3圧力センサ26で検出された二次圧は、制御部28に検出信号として送信される。
【0027】
第2流路抵抗22は、燃料ガス供給路8での流路抵抗となる要素である(例えばオリフィス)。第2流路抵抗22は、ガスボイラ4の炉圧の変動等による燃料ガスの流量変動を抑える機能を有する。実施形態では図示していないが、第2流路抵抗22の前後の差圧を測定すれば、燃料ガスの流量を簡易的に測定することができる。
【0028】
このような構成において、燃焼制御機構2は、流量調整弁18により燃料ガスの流量を制御する際に、燃料ガスの流量を所望の流量に制御しながらガスボイラ4に安定的に供給するように制御する。以下、燃焼制御機構2による具体的な制御方法の一例について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0029】
まず、空気供給路6における差圧を測定する(ステップS1)。具体的には、第1圧力センサ12により空気供給路6における差圧が測定され、検出信号として制御部28に送信される。
【0030】
次に、空気の差圧から要求ガス流量を算出する(ステップS2)。要求ガス流量とは、ガスボイラ4から要求される燃料ガスの流量であり、空気の流量に対して所定の空気比となる燃料ガスの流量である。具体的な制御としては、制御部28に予め記憶された、空気の差圧と要求ガス流量の対応関係を参照することで、ステップS1で測定した差圧から要求ガス流量を算出する。空気の差圧と要求ガス流量の対応関係は、例えば、空気の差圧から算出される空気の流量に基づいて、空気比が一定となる燃料ガスの流量を要求ガス流量として実験などにより求め、空気の差圧に関係付けて制御部28に記憶しておく。
【0031】
上述したステップS1、S2のように、空気の差圧から空気の流量を算出し、それに対応する(空気比が一定となる)燃料ガスの流量を要求ガス流量として算出することで、要求ガス流量を速やかに求めることができる。
【0032】
次に、要求ガス流量から流量調整弁18の開度を算出する(ステップS3)。具体的には、制御部28に予め記憶された、要求ガス流量と流量調整弁18の開度の対応関係を参照することで、ステップS2で算出した要求ガス流量から流量調整弁18の開度を算出する。本実施形態では例えば、流量調整弁18の開度が30%と算出される。
【0033】
一方、ステップS1−S3とは別のステップとして、燃料ガス供給路8における流量調整弁18の一次側の圧力を測定する(ステップS4)。具体的には、第2圧力センサ24により、流量調整弁18の一次側の圧力(一次圧)を測定し、一次圧を測定信号として制御部28に送信する。本実施形態では例えば、流量調整弁18の一次圧が40kPaと測定される。
【0034】
次に、一次圧に基づいて流量調整弁18の補正開度を算出する(ステップS5)。具体的には、制御部28に予め記憶された一次圧と補正開度の関係を参照することで、ステップS4で測定した一次圧から補正開度を算出する。一次圧と補正開度の関係の一例を図3に示す。
【0035】
図3に示すように、それぞれの一次圧に対応する補正開度(%)が定められており、この一次圧と補正開度の関係は実験などにより予め求めることができる。本実施形態では例えば、一次圧の測定値は40kPaであり、それに対応する補正開度は15.0%と算出される。
【0036】
次に、流量調整弁18の開度を補正する(ステップS6)。具体的には、ステップS3で算出した流量調整弁18の開度を、ステップS5で算出した補正開度により補正する。例えば、ステップS3で算出した流量調整弁18の開度が30%であり、ステップS5で算出した補正開度が15%である場合、補正後の流量調整弁18の開度は45%(30%+15%)になる。
【0037】
次に、補正後の流量調整弁18の開度を出力する(ステップS7)。ステップS6で補正された開度を、流量調整弁18の開度として制御部28から弁駆動部30へ出力する。これにより、流量調整弁18の開度が例えば45%として出力される。このように、本実施形態では、ステップS3で算出した開度にステップS5で算出した補正開度を加算することにより、流量調整弁18の開度を調整して出力している。
【0038】
このような本実施形態の制御方法に対して、例えば、第2遮断弁16として燃料ガスを下流側に一定の圧力で供給するガバナ付き遮断弁を設けて制御する場合が考えられる。このような場合、第2遮断弁16の下流側にある流量調整弁18には一定の圧力の燃料ガスが供給されるため、圧力が一定という前提のもとで、燃料ガスの流量が所望の流量となるように、流量調整弁18の開度調整が行われる。
【0039】
図4Aは、従来のガバナを有する燃焼制御機構における、燃焼開始時の遮断弁(第1遮断弁14、第2遮断弁16)開閉信号、ガスボイラ4の炉内圧力(炉圧)及び燃料ガス流量を模式的に示したものである。遮断弁開信号により、燃料ガス供給路8に設けられた遮断弁14、16が開き、燃料ガス流量が急増し、その直後に急減する。さらに、ガスボイラ4の着火による炉圧の急激な変動(着火衝撃(矢印A))が、この燃料ガス流量の変動に重なり、燃料ガス流量と炉圧の変動が継続する。このように、ガバナのハンチング現象に着火衝撃が重なることで、燃料ガス流量が大きく変動してガスボイラ4の燃焼量が変動するために、更に炉圧が変動するという悪循環に陥ることもある。こうした、燃料ガス流量及び炉圧の変動により空気比は大きく上下し、振動燃焼などの燃焼の不安定化や失火の原因になる。
【0040】
これに対して、本実施形態の燃焼制御機構2による制御例を図4Bに示す。図4Bに示すように、燃料ガス流量は、遮断弁14、16が開いた直後のオーバーシュートは無く、着火衝撃(矢印B)により炉圧が変動する影響を受けるものの、すぐに所定の流量に安定する。この効果は、流量調整弁18の開度を要求ガス流量と流量調整弁18の一次側の圧力とに基づいて補正することで、ガスボイラ4に供給する燃料ガスの流量を所望の流量となるように調整することにより得られるものである。本実施形態の燃焼制御機構2の制御によれば、燃焼開始(着火)やボイラの要求負荷に対応してガスボイラ4の燃焼量が変動した場合でも、安定的に所定の燃料ガスを供給でき、ガスボイラ4における燃焼を安定化させ、振動燃焼などの燃焼の不安定化や失火を防止することができる。
【0041】
一方、ステップS1−S7とは別のステップとして、流量調整弁18の二次側の圧力を測定する(ステップS8)。具体的には、第3圧力センサ26により、流量調整弁18の二次側の圧力(二次圧)を測定する。二次圧の測定結果は、制御部28に検出信号として送信される。
【0042】
次に、異常検出を行う(ステップS9)。具体的には、ステップS8で測定した二次圧が、予め定めた所定範囲内の値であるかどうかを判定する。二次圧が予め定めた所定範囲を超える場合には、流量調整弁18の動作不良等に起因して、ガス過多(空気比低下)又はガス不良(空気比上昇)となり、ガスボイラ4において振動燃焼、失火、不完全燃焼などの現象が現れる場合がある。これに対応するために、本実施形態では、二次圧が所定範囲の値から外れていると決定した場合に異常を検出するとともに、流量調整弁18の更なる開度補正、警報出力あるいは燃料ガスの緊急遮断のうちの少なくとも1つを行う。このような制御を行うことで、前述した現象の発生を抑制することができ、燃料ガスをガスボイラ4により安定的に供給することができる。
【0043】
流量調整弁18の更なる開度補正を行う場合には例えば、更なる開度補正後の二次圧が所定範囲内に収まるように、流量調整弁18の開度補正値を決定する(図5A参照)。警報出力を行う場合には例えば、ユーザが燃焼制御機構2を操作するためのユーザインタフェースに警報メッセージを出力する(図5B参照)。燃料ガスの緊急遮断を行う場合には例えば、第1遮断弁14および第2遮断弁16を閉じるとともに、空気の供給も停止する。
【0044】
本実施形態のガスボイラの燃焼制御機構2では、供給圧力を一定に調整するためのガバナを廃し、流量調整弁18の一次側の圧力を検出する第2圧力センサ24を設け、ガスボイラ4から要求される燃料ガス流量と一次圧に基づき流量調整弁18の開度を調整できるように構成した。このように、ガバナの無い(ガス)燃焼制御機構2とし、要求ガス流量と一次圧に基づいて燃料ガス流量を調整することにより、供給ガス圧力が変動した場合でも所定の燃料ガス流量を安定的に供給できる。また、流量調整弁18の開度指示によるフィードフォワード制御にできるため、ガスボイラ4の発停や燃焼ステージの変化に伴う燃料ガス流量の急激な変動やガスボイラ4の炉内圧力変動等の影響を受けにくい。さらに、流量調整弁18の一次側の圧力を検出することは、二次側の圧力のように燃料ガス流量によって広い範囲で変動することがなく、第2圧力センサ24の測定精度を比較的に高くすることができるメリットがあると共に、一次圧は流量調整弁18の制御の影響を受けることがなく、制御信号として扱いやすい特徴がある。
【0045】
また本実施形態のガスボイラの燃焼制御機構2では、(第1)制御部28は、要求ガス流量と流量調整弁18の開度の関係を記憶し、この記憶された関係から流量調整弁18の開度に対して一次圧に基づいて決定された補正開度を適用する。このような制御によれば、要求ガス流量を調整の目標値として流量調整弁18の開度を補正するため、PID制御等の複雑な演算を行わずに、流量調整弁18の開度を速やかに決定することができる。よって、ガスボイラ4の燃焼量が大きく変動して要求ガス流量が大きく変動した場合でも、流量調整弁18の開度を目標値に向けて速やかに制御することができる。特に、燃焼の発停や燃焼量の変動が頻繁に起こるガスボイラ4に適した制御である。
【0046】
また本実施形態のガスボイラの燃焼制御機構2は、流量調整弁18と(第1)制御部28を備え、空気供給路6における空気の流量に関する物理量を算出する物理量算出部(本実施形態では第1圧力センサ12)をさらに備える。このような構成において、制御部28は、物理量算出部が算出する物理量(例えば、燃焼空気量)に基づいて要求ガス流量を決定することができる。つまり、流量調整弁18と制御部28は、燃料ガス圧力の調整と燃料ガス流量の調整を統合することで、燃焼制御機構2の構造簡素化及びコストダウンに効果がある。
【0047】
本実施形態のガスボイラの燃焼制御機構2において、物理量算出部は、空気供給路6における空気の差圧を検出する差圧センサ(第1圧力センサ12)を使うことができる。このような制御では、空気の差圧から空気の流量を算出し、当該流量に対して空気比が一定となる燃料ガスの流量を要求ガス流量として求めることができるため、要求ガス流量を速やかに決定することができる。
【0048】
また本実施形態のガスボイラの燃焼制御機構2は、(第2)制御部28と、燃料ガス供給路8における流量調整弁18の二次側の圧力又は流量を検出する二次側検出部(本実施形態では第3圧力センサ26)とを備え、制御部28は、二次側検出部の検出値が所定範囲の値から外れている場合に、流量調整弁18の更なる開度補正、警報出力或いはガス燃料の緊急遮断の一つ以上の制御を行う。このような制御によれば、制御部28の制御結果を監視し、適正な制御が行われていない場合には自動的に幾つかの対策を講じることができる。また、流量調整弁18の動作不良等に起因するガスボイラ4での異常現象の発生を抑制することができ、ガスボイラ4を安定して燃焼することができる。
【0049】
以上、図1図5A、5Bを用いて実施形態について説明したが、その他の各種変形例も可能である。例えば、実施形態では、ステップS1で空気供給路6における差圧を測定し、差圧から空気の流量を算出する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、空気の流量を算出することができれば、空気の差圧以外の要素を測定してもよい。すなわち、空気の流量を算出可能とする「空気の流量に関する物理量」(例えば、空気流量計などの流量そのもの)を測定する場合であってもよい。
【0050】
あるいは、空気の流量を算出しない場合であってもよい。例えば、ガスボイラ4における燃焼ステージに応じて要求ガス流量を記憶している場合であってもよい。例えば、最高の燃焼量で燃焼する燃焼ステージにおいてボイラから要求される燃料ガス量を100%として、燃焼停止のガス量を0%、低燃焼ステージの燃料ガス量を25%、中燃焼ステージの燃料ガス量を45%とする4段階の燃焼状態が存在する場合、低燃焼ステージの燃料ガス流量を「A」Nm/h(A=C×0.25)、中燃焼ステージの燃料ガス流量を「B」Nm/h(B=C×0.45)、高燃焼ステージの燃料ガス流量を「C」Nm/hとして、燃焼ステージと要求ガス流量(A、B、C)の関係を制御部28に記憶させ、燃料ガス流量から流量調整弁18の開度を算出することができる。
【0051】
また実施形態では、流量調整弁18の一次圧として、第2遮断弁16と流量調整弁18の間の圧力を測定するように第2圧力センサ24を配置したが、このような場合に限らない。流量調整弁18の一次側(上流側)であれば、第2圧力センサ24を任意の位置に設けてもよく、例えば第1遮断弁14と第2遮断弁16の間、あるいは、第1遮断弁14の上流側の圧力を測定してもよい。
【0052】
また実施形態では、ステップS5で補正開度を算出する際に、流量調整弁18の一次側の圧力の「絶対値」を用いる場合について説明したが、このような場合に限らない。一次圧の「変動値」(例えば、基準値に対する一次圧の変動値、所定期間における一次圧の変動値)などを用いて補正開度を算出してもよい。
【0053】
また実施形態では、ステップS6、S7における流量調整弁18の開度補正およびステップS9における異常検出を1つの制御部28が制御して実行する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、別々の制御部を設け、ステップS6、S7における流量調整弁18の開度補正を第1制御部が行い、ステップS9における異常検出を第2制御部が行ってもよい。
【0054】
また実施形態では、ステップS9における異常検出を第3圧力センサ26が検出する二次圧に基づいて行う場合について説明したが、このような場合に限らず、流量調整弁18の二次側の流量に基づいて行ってもよい。このように、異常検出を行う場合には、流量調整弁18の二次側の圧力又は流量を検出する二次側検出部を設けて行ってもよい。
【0055】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0056】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【符号の説明】
【0057】
2 燃焼制御機構
4 ガスボイラ
6 空気供給路
8 燃料ガス供給路
10 第1流路抵抗
12 第1圧力センサ
14 第1遮断弁
16 第2遮断弁
18 流量調整弁
20 調節機構
22 第2流路抵抗
24 第2圧力センサ
26 第3圧力センサ
28 制御部
30 弁駆動部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B