特許第6686570号(P6686570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686570
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ジブ連結構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/12 20060101AFI20200413BHJP
   B66C 23/70 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B66C13/12 A
   B66C23/70 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-50429(P2016-50429)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165519(P2017-165519A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 友貴
(72)【発明者】
【氏名】高島 浩
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−131975(JP,A)
【文献】 特開2001−019352(JP,A)
【文献】 実開平05−046878(JP,U)
【文献】 特開2002−227243(JP,A)
【文献】 特開2007−290791(JP,A)
【文献】 特開2016−175753(JP,A)
【文献】 特開2018−115046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 − 15/06
B66C 23/00 − 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端部とジブの基端部との連結構造であって、
前記ブーム先端部の両側方に水平に張り出したジブ連結軸と、
二股形状の前記ジブ基端部の各端部に設けられ、前記ジブ連結軸を嵌め込み可能なジブ基端係合部と、
一方の前記ジブ基端係合部の外側方に設けられた拡張部材と、
前記ブームに設けられた油圧ホースと前記ジブに設けられた管路とを接続する管継手と、を備え、
前記管継手は前記拡張部材のジブ基端側に配置されている
ことを特徴とするジブ連結構造。
【請求項2】
前記管継手は前記拡張部材のジブ底面側に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のジブ連結構造。
【請求項3】
前記管継手はスイベル継手またはロータリ継手であり、該管継手を構成する回転体の回転軸が前記ジブの幅方向に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のジブ連結構造。
【請求項4】
前記拡張部材のジブ基端側には切欠きが形成されており、
前記管継手は前記油圧ホースとの接続部分が前記切欠きに張り出すように配置されている
ことを特徴とする請求項3記載のジブ連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブ連結構造に関する。さらに詳しくは、ブームの先端部とジブの基端部との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ジブ連結構造として、ブーム先端部の両側方に張り出したジブ連結軸と、二股形状のジブ基端部に設けられたジブ基端係合部とからなる構造が開示されている。ジブ基端係合部はU字形状でありジブ連結軸に係合可能となっている。ジブ基端係合部をジブ連結軸に係合させ、ジブ基端係合部の先端の差込孔にピンを差し込むことで、ジブ基端係合部とジブ連結軸とを連結できる。
【0003】
ジブ張出作業を行うには、まず、ジブをブームの下抱き位置に配置し、ジブ基端係合部とジブ連結軸とを連結する。この際、ジブはブームに対して若干の角度を有して配置(オフセット配置)されている。一方のジブ基端係合部は他方よりも長尺に形成されており、オフセット配置のままでジブ基端係合部の差込孔にピンを差し込むことができるようになっている。つぎに、ブームを起仰させ、ジブをブーム先端部から吊り下げる。最後に、テンションロッドに張力を発生させることでジブを張り出す。ジブ格納作業はジブ張出作業と逆の手順で行われる。
【0004】
左右のジブ基端係合部の長手方向寸法が相違し、ジブ基端係合部に差し込まれるピンの位置も左右で相違する。そのため、ジブをブーム先端部から吊り下げた状態では、一方のピンのみがジブ連結軸に係止しており、ジブはその1点で吊り下げられた状態となる。その結果、ジブが横揺れして安定せず、ジブ張出/格納作業を行い難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−264956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本出願人は、一方のジブ基端係合部に拡張板を設け、U字形状の底部よりも外側方に差込孔を配置する構造を考案した(特願2015−57900)。このような構造とすることにより、ジブをブーム先端部から吊り下げた状態において、左右のピンがジブ連結軸に係止し、ジブが2点で吊り下げられた状態となる。そのため、ジブの横揺れが抑制され、ジブ張出/格納作業を行い易くなる。
【0007】
ジブに搭載されたチルトシリンダに作動油を供給するため、ブームに設けられた油圧ホースがジブの管路に接続されている。拡張板はジブ基端係合部の外側方に張り出しているため、ジブ張出/格納作業の途中で、油圧ホースが拡張板に絡むという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、油圧ホースが絡むことなくジブの張り出し、格納ができるジブ連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のジブ連結構造は、ブームの先端部とジブの基端部との連結構造であって、前記ブーム先端部の両側方に水平に張り出したジブ連結軸と、二股形状の前記ジブ基端部の各端部に設けられ、前記ジブ連結軸を嵌め込み可能なジブ基端係合部と、一方の前記ジブ基端係合部の外側方に設けられた拡張部材と、前記ブームに設けられた油圧ホースと前記ジブに設けられた管路とを接続する管継手と、を備え、前記管継手は前記拡張部材のジブ基端側に配置されていることを特徴とする。
第2発明のジブ連結構造は、第1発明において、前記管継手は前記拡張部材のジブ底面側に配置されていることを特徴とする。
第3発明のジブ連結構造は、第1または第2発明において、前記管継手はスイベル継手またはロータリ継手であり、該管継手を構成する回転体の回転軸が前記ジブの幅方向に沿って配置されていることを特徴とする。
第4発明のジブ連結構造は、第3発明において、前記拡張部材のジブ基端側には切欠きが形成されており、前記管継手は前記油圧ホースとの接続部分が前記切欠きに張り出すように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、管継手が拡張部材のジブ基端側に配置されているので、油圧ホースが拡張部材に絡むことなくジブの張り出し、格納ができる。
第2発明によれば、管継手が拡張部材のジブ底面側に配置されているので、ジブ連結軸をジブ基端係合部に嵌め込む際に、油圧ホースが邪魔にならない。
第3発明によれば、管継手がスイベル継手またはロータリ継手であるので、ジブ連結軸を中心としてジブを回転させても油圧ホースに無理な力がかからない。
第4発明によれば、管継手の油圧ホースとの接続部分が切欠きに張り出しているので、油圧ホースが切欠きを通ることができ、油圧ホースが拡張部材の端部に絡むことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ジブ15を格納した状態の移動式クレーンCの側面図である。
図2】ジブ15を下抱き位置に配置した状態のジブ15およびブーム14の側面図である。
図3】ジブ15を下抱き位置に配置した状態のジブ15およびブーム14の底面図である。
図4】ジブ15を張り出した状態のジブ15およびブーム14の側面図である。
図5図3における領域Vの拡大図である。
図6】ジブ15を張り出した状態のジブ基端部15a付近の拡大図である。
図7図5におけるVII矢視拡大図である。
図8図5におけるVIII矢視拡大図である。
図9】ジブ15を下抱き位置に配置した状態の拡張部材40付近の斜視図である。
図10】ジブ15を張り出した状態の拡張部材40付近の斜視図である。
図11】左右の差込孔31h、32hの位置関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係るジブ連結構造は、例えば図1に示す移動式クレーンCに適用される。なお、本実施形態のジブ連結構造は、図1に示す移動式クレーンCに限定されず、種々のクレーンに適用できる。
【0013】
(移動式クレーン)
まず、移動式クレーンCの基本的構造を説明する。
図1中符号11は走行車体であり、走行のための車輪が備えられている。走行車体11には旋回台12が搭載されており、旋回モータにより水平面内で360°旋回できるようになっている。旋回台12には運転室13が設けられている。
【0014】
旋回台12にはブーム14が起伏自在に取り付けられている。ブーム14の基端部はピンで旋回台12に枢支されている。ブーム14と旋回台12との間には起伏シリンダが取付けられている。この起伏シリンダを伸長させるとブーム14が起仰し、起伏シリンダを収縮させるとブーム14が倒伏する。ブーム14はテレスコピック状に構成された多段式ブームであり、伸縮シリンダにより伸縮動作する。
【0015】
ブーム14の先端部14aからは、図示しないフックを備えたワイヤロープが吊り下げられ、そのワイヤロープはブーム14に沿って旋回台12に導かれてウインチに巻き取られている。ウインチはホイストモータの駆動により正逆回転し、ワイヤロープを巻き取り、繰り出しすることでフックの上げ下げができる。
【0016】
旋回台12の旋回、ブーム14の起伏、伸縮、フックの上げ下げを組合せることにより、立体空間内での荷揚げと荷降ろしが可能となっている。
【0017】
また、移動式クレーンCにはジブ15が備えられている。ジブ15は全体として細長い棒状部材であり、その基端部15aは二股形状となっている。ブーム14を全伸長させたブーム長さでの揚程・作業半径よりもさらに大きな揚程・作業半径を得る場合に、ジブ15が用いられる。不使用時には、ジブ15はブーム14の側面に沿って格納される(図1参照)。使用時には、ジブ15の基端部15aとブーム14の先端部14aとを連結し、ジブ15をブーム14の前方に張り出す(図4参照)。
【0018】
ジブ15にはチルトシリンダや伸縮シリンダなどの油圧アクチュエータが設けられる。ジブ15に設けられた油圧アクチュエータに作動油を供給するために、ブーム14には油圧ホース16が設けられている。油圧ホース16はブーム14の側面に設けられたホースリール17からブーム14の先端部14aに向かって繰り出されている。
【0019】
(ジブ連結構造)
つぎに、本実施形態のジブ連結構造を説明する。
本実施形態のジブ連結構造は、上記の様な移動式クレーンCにおいて、ブーム14の先端部14a(以下、「ブーム先端部14a」と称する。)とジブ15の基端部15a(以下、「ジブ基端部15a」と称する。)とを連結するための構造である。
【0020】
図2および図3は、ジブ15をブーム14の底面に沿わせた下抱き位置に配置した状態の側面図および底面図である。後述のごとく、ジブ張出/格納作業においては、ジブ15を下抱き位置に配置した状態で、ブーム先端部14aとジブ基端部15aとの連結/解除を行う。
【0021】
なお、ブーム14を最倒伏した状態におけるブーム14の下側の面を「底面」といい、上側の面を「頂面」という。また、ジブ15を張り出し、ブーム14を最倒伏した状態におけるジブ15の下側の面を「底面」といい、上側の面を「頂面」という。ジブ15を下抱き位置に配置した状態では、ジブ15は上下逆になっており、ブーム14の底面とジブ15の底面とが向かい合う。
【0022】
図3に示すように、ジブ15を下抱き位置に配置した状態では、ジブ基端部15aはブーム先端部14aに位置し、ジブ15の先端部はブーム14の側方に位置したオフセット配置となっている。なお、ジブ15の先端部はブーム14に対して運転室13の反対側に位置している。以下、オフセット配置においてジブ15の先端部が位置する側を左側、その反対側(運転室13側)を右側と称する。ただし、左右が逆の実施形態としてもよい。
【0023】
図5に示すように、ブーム先端部14aには、その両側方に水平に張り出したジブ連結軸21、22が設けられている。左右のジブ連結軸21、22は同軸上に配置されている。また、二股形状のジブ基端部15aの各端部にはジブ基端係合部31、32が設けられている。
【0024】
図7に示すように、右側のジブ基端係合部31は、一対のアーム31a、31aと、それらの根元部分を連結する底部31bとからなるU字形状に形成されている。ジブ基端係合部31のU字形状は、右側のジブ連結軸21の外径寸法より若干大きい内径寸法を有する。そのため、一対のアーム31a、31aの間にジブ連結軸21を嵌め込み可能となっている。
【0025】
一対のアーム31a、31aの先端部には差込孔31h、31hが形成されている。ジブ基端係合部31にジブ連結軸21を嵌め込み、差込孔31h、31hにピン33を差し込むことで、ジブ連結軸21が抜け止めされる。これにより、ジブ基端係合部31とジブ連結軸21とを連結できる。
【0026】
図8および図9に示すように、左側のジブ基端係合部32は、右側のジブ基端係合部31と同様に、一対のアームと、それらの根元部分を連結する底部とからなるU字形状に形成されている。ジブ基端係合部32のU字形状は、左側のジブ連結軸22の外径寸法より若干大きい内径寸法を有する。そのため、一対のアームの間にジブ連結軸22を嵌め込み可能となっている。
【0027】
ジブ基端係合部32の外側方には拡張部材40が設けられている。拡張部材40は底面拡張板41と、頂面拡張板42と、側板43とからなる。底面拡張板41はジブ基端係合部32の底面側のアームの側面に外側に張り出した状態で設けられている。頂面拡張板42はジブ基端係合部32の頂面側のアームの側面に外側に張り出した状態で設けられている。側板43は底面拡張板41の外側縁と頂面拡張板42の外側縁との間に架け渡され、それらに接合されている。
【0028】
側板43はU字形状に形成されている。側板43のU字形状は、ジブ連結軸22の外径寸法より若干大きい内径寸法を有する。そのため、側板43のU字部分にジブ連結軸22を嵌め込み可能となっている。
【0029】
底面拡張板41および頂面拡張板42に差込孔32h、32hが形成されている。ジブ基端係合部32にジブ連結軸22を嵌め込み、差込孔32h、32hにピン34を差し込むことで、ジブ連結軸22が抜け止めされる。これにより、ジブ基端係合部32とジブ連結軸22とを連結できる。
【0030】
図5に示すように、左側のジブ基端係合部32には拡張部材40が設けられ、その拡張部材40に差込孔32hが形成されている。そのため、差込孔32hはジブ15を張り出した状態において荷重がかかる底部32bよりも外側方に配置されている。ジブ基端係合部31、32にジブ連結軸21、22を嵌め込み、ジブ15の先端部をブーム14の側方に位置させた状態では、差込孔32hに差し込まれたピン34とジブ連結軸22との間に隙間d1が形成される。
【0031】
図11に基づき、左右の差込孔31h、32hの位置関係(すなわち左右のピン33、34の位置関係)を説明する。
図11において二点鎖線Oはジブ15の中心軸であり、点Gはジブ15の重心である。一点鎖線Lは左右の差込孔31h、32hを結ぶ線である。中心軸Oおよび線Lは、紙面に対して平行である。
【0032】
P1はジブ15の中心軸Oに対する垂直平面である。平面P1は紙面に対して垂直であるため図11では線で表される。左右の差込孔31h、32hを結ぶ線Lは平面P1に対して傾斜している。そのため、左右の差込孔31h、32hをジブ連結軸21、22と平行にすると、ジブ15の先端部がブーム14の側方に配置される。したがって、ジブ基端係合部31、32にジブ連結軸21、22を嵌め込み、ジブ15の先端部をブーム14の側方に位置させた状態(図3参照)で、ジブ連結軸21、22に干渉することなく差込孔31h、32hにピン33、34を差し込むことができる。
【0033】
P2は線Lに対する垂直平面であって右側の差込孔31hを含む垂直平面である。P3は線Lに対する垂直平面であって左側の差込孔32hを含む垂直平面である。平面P2、P3は紙面に対して垂直であるため図11では線で表される。これら2つの平面P2、P3の間にジブ15の重心Gが位置する。そのため、後述のごとくジブ15をブーム先端部14aから吊り下げた状態で、左右のピン33、34がジブ連結軸21、22に係止する。すなわち、ジブ15が2点で吊り下げられた状態となる。なお、ジブ15をブーム先端部14aから吊り下げた状態では、平面P2、P3は鉛直面となる。
【0034】
仮に、左側の差込孔32hが点Hの位置であるとする。P4は線Lに対する垂直平面であって点Hを含む垂直平面である。この場合、2つの平面P2、P4の外側にジブ15の重心Gが位置する。そのため、ジブ15をブーム先端部14aから吊り下げると、点Hを中心としてモーメントが働き、ジブ15が回転する。その結果、左側のピン34のみがジブ連結軸22に係止した状態となる。すなわち、ジブ15が1点で吊り下げられた状態となる。点Hは、例えば左側のジブ基端係合部32のアームの先端位置である。従来のジブ連結構造において1点で吊り下げられた状態となるのは、以上の理由による。
【0035】
本実施形態では、一方の差込孔32hが外側方に配置されているので、オフセット配置にしても左右のピン33、34の内側に重心Gが位置する。そのため、ジブ15をブーム先端部14aから吊り下げると、ジブ15が2点で吊り下げられた状態となる。
【0036】
図6は、ジブ15を張り出した状態の底面図である。ジブ15を張り出すと、オフセット配置であったジブ15が横方向に回動して、ブーム14に対してほぼ一直線状となる。すなわち、ジブ15の中心軸Oは、ブーム14の中心軸と平行となり、ジブ連結軸21、22に対して垂直となる。
【0037】
図6に示すように、左側の差込孔32hとジブ基端係合部32の底部32bとの間のジブ15の中心軸Oに沿う方向の距離Dが、ジブ連結軸22の外径と略同一である。ここで、「略同一」には、距離Dがジブ連結軸22の外径と同一の場合のほか、距離Dがジブ連結軸22の外径よりも若干大きい場合も含まれる。
【0038】
ジブ15を張り出した状態では、差込孔32hに差し込まれたピン34とジブ連結軸22との間の隙間d2が、オフセット配置の場合(d1)よりも狭くなる。これは、ジブ15を張り出すと、オフセット配置であったジブ15が図6における反時計回りに回動し、ピン34がジブ連結軸22に近づくからである。
【0039】
つぎに、油圧ホース16の接続部分を説明する。
図8および図9に示すように、ジブ15には管路18が設けられている。この管路18を介してジブ15に設けられた油圧アクチュエータに作動油が供給される。管路18の端部には管継手50が接続されている。油圧ホース16はブーム先端部14aに設けられたガイドローラ19を介して、管継手50に導かれている。管継手50を介して油圧ホース16と管路18とが接続されている。
【0040】
一般に、油圧アクチュエータには動力伝達管路と戻り管路とが必要である。そのため、油圧ホース16は2本設けられ、管路18も2本設けられている。管継手50はそれぞれの接続部分に設けられている。すなわち、管継手50は2つ設けられている。
【0041】
底面拡張板41のジブ基端側(図8における左側)には、中央に切欠き41aが形成されており、切欠き41aの左右に一対のアーム41b、41bが形成されている。アーム41bの先端部はジブ底面側(図8における上側)に屈曲している。アーム41bの先端部が屈曲していることから、ジブ連結軸22をジブ基端係合部32に嵌め込む際にジブ連結軸22がアーム41bの先端部に接触しても、ジブ連結軸22をジブ基端係合部32のU字部分に案内できる。
【0042】
頂面拡張板42は底面拡張板41に比べて短尺である。頂面拡張板42のジブ基端側縁部は平面視において、底面拡張板41の切欠き41aの底部と同じ位置か、それよりもジブ先端側(図8における右側)に配置されている。
【0043】
管継手50は回転角度が限定されたスイベル継手、または回転角度が限定されないロータリ継手である。管継手50は本体部51と、本体部51に対して回転可能な回転体52とからなる。本体部51に管路18が接続されており、回転体52に油圧ホース16が接続されている。
【0044】
管継手50の本体部51は底面拡張板41のアーム41bに固定されている。すなわち、管継手50は拡張部材40のジブ基端側(図8における左側)であって、拡張部材40のジブ底面側(図8における上側)に配置されている。
【0045】
管継手50は回転体52の回転軸がジブ15の幅方向(図8における紙面に対して垂直方向)に沿って配置されている。そして、管継手50は油圧ホース16との接続部分である回転体52が切欠き41aに張り出すように配置されている。
【0046】
(ジブ張出作業)
つぎに、ジブ張出作業を説明する。
(1)図1に示すように、ジブ15を格納した状態では、ジブ15はブーム14の側面に沿って格納されている。
【0047】
(2)まず、ブーム14を僅かに伸長させる。ついで、ジブ15をブーム14の底面に沿わせた下抱き位置に移動させる。この際、油圧ホース16をガイドローラ19に掛ける。つぎに、ブーム14を全縮小する。そうすると、図2に示す状態となる。この操作で、図5に示すように、ジブ基端係合部31、32にジブ連結軸21、22が嵌め込まれる。
【0048】
(3)つぎに、差込孔31h、32hにピン33、34を差し込む。これにより、ジブ基端係合部31、32とジブ連結軸21、22とが連結される。
【0049】
(4)つぎに、ブーム14を起仰する。そうすると、ジブ15はジブ連結軸21、22を中心として回転し、ブーム先端部14aから吊り下げられた状態となる。
【0050】
(5)図4に示すように、ジブ15にはチルトシリンダ15bが搭載されている。チルトシリンダ15bのロッドはテンションロッド15cに連結されている。チルトシリンダ15bを伸長させるとテンションロッド15cに張力を発生させることができ、ジブ15をジブ連結軸21、22を中心として回転させ、ジブ15を前方に張り出すことができる。
【0051】
以上のように、ジブ張出作業では、ジブ連結軸21、22を中心としてジブ15を回転させる。図9はジブ15の回転前の状態を示す図であり、図10はジブ15の回転後の状態を示す図である。図9および図10から分かるように、管継手50が拡張部材40のジブ基端側に配置されているので、油圧ホース16が拡張部材40に絡むことなくジブ15の張り出しができる。
【0052】
管継手50が拡張部材40のジブ底面側に配置されているので、ジブ15を回転する前の状態(図9の状態)では、油圧ホース16が拡張部材40の前面(ジブ基端側)に配置されることがない。そのため、ジブ連結軸22をジブ基端係合部32に嵌め込む際に、油圧ホース16が邪魔にならない。
【0053】
管継手50がスイベル継手またはロータリ継手であり、回転体52の回転軸がジブ15の回転軸と略平行であるので、ジブ15を回転させても油圧ホース16に無理な力がかからない。
【0054】
管継手50の回転体52が切欠き41aに張り出しているので、ジブ15を回転した後の状態(図10)の状態では、油圧ホース16の根元が切欠き41aを通る。しかも、頂面拡張板42は底面拡張板41に比べて短尺であるので、頂面拡張板42のジブ基端側縁部に油圧ホース16が引っかからない。そのため、油圧ホース16が拡張部材40の端部に絡むこともない。
【0055】
(ジブ格納作業)
ジブ格納作業はジブ張出作業と逆の手順で行われる。ジブ格納作業においては、ジブ連結軸21、22を中心としてジブ15を逆回転させる。この場合においても、油圧ホース16が拡張部材40に絡むことがない。
【0056】
ところで、ジブ張出/格納作業の途中で油圧ホース16が拡張部材40に絡まないようにするには、管継手50を拡張部材40よりも外側方に配置すればよいとも考えられる。しかしこの場合、ジブ15の幅寸法を拡大することになる。そうすると、ジブ15を格納した状態では、突出した管継手50により移動式クレーンCの車両全高が高くなる。ジブ15を張り出した状態では、ジブ15の幅広になる。しかも、管継手50とガイドローラ19との位置関係が左右にずれるため、油圧ホース16に無理な力がかかる。
【0057】
これに対して、本実施形態の構成であれば、管継手50と拡張部材40とが一体化しており、ジブ15の幅寸法を拡大しない。そのため、移動式クレーンCの車両全高が高くならず、ジブ15が幅広にならない。ガイドローラ19との位置関係により油圧ホース16に無理な力がかかることもない。
【符号の説明】
【0058】
14 ブーム
15 ジブ
16 油圧ホース
18 管路
21 ジブ連結軸
22 ジブ連結軸
31 ジブ基端係合部
32 ジブ基端係合部
40 拡張部材
50 管継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11