(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記pH検出手段で検出されるドレンのpHである検出pH値に基づいて、前記中和手段又は前記脱酸素手段を制御する防食制御部を更に備える、請求項1に記載のドレン回収システム。
前記防食制御部は、前記検出pH値がpH閾値を下回る場合にドレン中の二酸化炭素を中和するように前記中和手段を制御し、一方、前記検出pH値がpH閾値を下回らない場合にドレンに対する酸素濃度を低下させるように前記脱酸素手段を制御する、請求項2に記載のドレン回収システム。
前記脱酸素手段は、前記ドレンタンクへ補給される補給水又は前記ボイラ装置へ供給されるドレンを含む供給水に対する酸素濃度を低下させることにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させる、請求項1〜3のいずれかに記載のドレン回収システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明のドレン回収システムの第1実施形態を備えるボイラシステム1について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るボイラシステム1を示す概略構成図である。第1実施形態に係るドレン回収システム(ボイラシステム)は、負荷機器で利用された蒸気のドレンを、ドレン回収ラインを介して排気口を有する開放型のドレンタンクに回収する、オープン方式のドレン回収システムである。
【0016】
第1実施形態に係るボイラシステム1は、
図1に示すように、ボイラ装置10と、負荷機器20と、腐食速度検出手段としての腐食速度センサ26と、pH検出手段としてのpHセンサ28と、ドレンタンク30と、中和手段としての復水処理剤添加装置31と、脱酸素手段としての脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42と、制御部90と、を備える。
【0017】
また、ボイラシステム1は、これらの機器を接続し、蒸気又は水(ドレンを含む)が流通する複数のラインを備える。具体的には、ボイラシステム1は、ラインとして、蒸気供給ラインL1と、ドレン回収ラインL2と、ドレン供給ラインL3と、補給水ラインL4と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。なお、
図1において、制御部90と被制御対象装置との電気的接続線の図示については、省略している。
【0018】
ボイラ装置10は、蒸気を生成して負荷機器20に供給する。ボイラ装置10は、
図1に示すように、複数の貫流ボイラ11と、蒸気ヘッダ12と、を備える。
【0019】
貫流ボイラ11は、内部に供給された給水を燃焼ガスにより加熱して蒸気を生成する。本実施形態では、貫流ボイラ11には、ドレンタンク30に回収されたドレンが供給される。蒸気ヘッダ12は、貫流ボイラ11で生成された蒸気を貯留し、負荷機器20に供給する。
【0020】
蒸気供給ラインL1には、貫流ボイラ11で生成した蒸気が、蒸気ヘッダ12を介して負荷機器20に向けて流通する。蒸気供給ラインL1は、第1蒸気供給ラインL11と、第2蒸気供給ラインL12と、を有する。第1蒸気供給ラインL11は、複数の貫流ボイラ11と蒸気ヘッダ12とを連結する。第2蒸気供給ラインL12は、蒸気ヘッダ12と負荷機器20とを連結する。
【0021】
負荷機器20は、貫流ボイラ11で生成された蒸気を熱源として利用し、加熱対象物の直接加熱又は間接加熱を行う。
【0022】
ドレン回収ラインL2は、負荷機器20とドレンタンク30とを連通する。ドレン回収ラインL2には、ドレンが流通する。ドレン回収ラインL2の上流側の端部は、負荷機器20と接続されている。ドレン回収ラインL2の下流側の端部は、ドレンタンク30と接続されている。ドレン回収ラインL2には、上流側から下流側へ向けて、スチームトラップ22、逆止弁24、腐食速度センサ26の第1検出位置J1a及びpHセンサ28の第2検出位置J1bが設けられる。
【0023】
スチームトラップ22は、ドレン回収ラインL2に設けられ、蒸気と水(ドレンを含む)とを分離する。ドレン回収ラインL2から送られてきた蒸気と水(ドレンを含む)は、スチームトラップ22において分離される。分離された水(ドレンを含む)は、高温のドレンとなってドレン回収ラインL2を流通する。本実施形態においては、スチームトラップ22は、負荷機器20と逆止弁24との間のドレン回収ラインL2に設けられる。
【0024】
逆止弁24は、ドレン回収ラインL2に設けられ、ドレンが負荷機器20側に逆流することを防ぐ。本実施形態においては、逆止弁24は、スチームトラップ22と第1検出位置J1aとの間のドレン回収ラインL2に設けられる。
【0025】
腐食速度センサ26は、ドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する。腐食速度センサ26は、制御部90と電気的に接続されている。本実施形態においては、腐食速度センサ26は、分極抵抗法でドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する。具体的には、腐食速度センサ26は、所定の間隔を空けて設置されている第一電極及び第二電極(図示せず)を備えている。第一電極及び第二電極は、銅(Cu)製又は鉄(Fe)製の電極である。
【0026】
詳細には、腐食速度センサ26は、ドレン回収ラインL2に位置する第1検出位置J1aにおいて、ドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する。本実施形態においては、腐食速度センサ26は、ドレン回収ラインL2の第1検出位置J1aを流通するドレンに、第一電極及び第二電極を浸し、電極間に電圧を印加することで、分極抵抗(腐食反応抵抗、電荷移動抵抗)を測定し、ドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する(以下、第1検出位置J1aにおいて検出されるドレン回収ラインL2の腐食速度を「腐食速度CR」ともいう)。腐食速度CRは、制御部90に送信され、制御部90のメモリ(後述)に記憶される。
【0027】
pHセンサ28は、ドレン回収ラインL2に位置する第2検出位置J1bにおいて、ドレンのpHを検出する。本実施形態においては、pHセンサ28は、第1検出位置J1aよりもドレンタンク30側のドレン回収ラインL2に位置する第2検出位置J1bにおいて、ドレンのpHを検出する(以下、第2検出位置J1bにおいて検出されるドレンのpHを「検出pH値」又は「検出pH」ともいう)。pHセンサ28は、制御部90と電気的に接続されている。検出pH値は、制御部90に送信され、制御部90のメモリ(後述)に記憶される。
【0028】
ドレンタンク30は、負荷機器20が蒸気を使用することによって凝縮して生じたドレンを回収する。本実施形態においては、ドレンタンク30は、排気口(図示せず)によって大気に開放されている開放型である。ドレンタンク30に復水処理剤添加装置31の第1添加位置J2aと、脱酸素剤添加装置33の第2添加位置J2bとが配置される。
【0029】
復水処理剤添加装置31は、ドレンに復水処理剤を添加することにより、ドレン中の二酸化炭素濃度を中和する。本実施形態においては、復水処理剤添加装置31は、ドレンタンク30における第1添加位置J2aにおいて、ドレンに復水処理剤を添加する。ドレンに復水処理剤が添加されることにより、ドレン中の二酸化炭素濃度が中和される。復水処理剤添加装置31は、第1添加位置J2aにおいてドレンタンク30と接続されている。復水処理剤添加装置31は、制御部90と電気的に接続されている。
【0030】
復水処理剤添加装置31は、後述する中和処理において、ドレン中の二酸化炭素を中和する中和手段として機能する。
【0031】
復水処理剤は、二酸化炭素中和機能を有した揮発性アミンが好ましい。具体的には、復水処理剤(揮発性アミン)としては、アンモニア、シクロヘキシルアミン、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール又はモルホリン等が挙げられる。これらの揮発性アミンから、ドレン回収ラインL2の長さ(配管長)に応じて、好適な分配比の揮発性アミンが適宜選択されて用いられてもよい。
【0032】
脱酸素剤添加装置33は、ドレンに脱酸素剤を添加することにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させる。本実施形態においては、脱酸素剤添加装置33は、ドレンタンク30における第2添加位置J2bにおいて、ドレンに脱酸素剤を添加する。ドレンに脱酸素剤が添加されることにより、ドレンに対する酸素濃度が低下する。脱酸素剤添加装置33は、第1添加位置J2aとは異なる第2添加位置J2bにおいてドレンタンク30と接続されている。脱酸素剤添加装置33は、制御部90と電気的に接続されている。
【0033】
脱酸素剤は、亜硫酸ナトリウム、糖類(例えば、グルコース)、タンニン酸等であることが好ましい。
【0034】
ドレン供給ラインL3には、ドレンタンク30に貯留されたドレンがボイラ装置10に向けて流通する。本実施形態では、ドレン供給ラインL3は、ドレンタンク30と貫流ボイラ11とを接続する。ドレン供給ラインL3には、ドレンタンク30に回収されたドレンが複数の貫流ボイラ11に向けてそれぞれ流通する。ドレン供給ラインL3の上流側の端部は、ドレンタンク30の下部と接続されている。また、ドレン供給ラインL3の下流側は、複数の貫流ボイラ11のそれぞれと接続されるように分岐している。ドレン供給ラインL3には、ドレンポンプ38と、ドレン供給弁39とが設けられる。
【0035】
ドレンポンプ38は、ドレンタンク30から供給されたドレンを昇圧して貫流ボイラ11側に送出する。ドレンポンプ38は、ドレン供給ラインL3における分岐部分よりも上流側に設けられる。
【0036】
ドレン供給弁39は、モータバルブにより構成される。ドレン供給弁39は、ドレン供給ラインL3における分岐部分よりも下流側に、複数の貫流ボイラ11それぞれに対応して設けられる。ドレン供給弁39の開度は、制御部90により調節され、これにより、貫流ボイラ11に供給されるドレンの量が制御される。
【0037】
補給水ラインL4は、補給水の供給源(図示しない)とドレンタンク30とを接続する。補給水ラインL4には、供給源から補給水がドレンタンク30に向けて流通する。補給水ラインL4の下流側の端部は、ドレンタンク30と接続されている。補給水ラインL4には、上流側から下流側へ向けて、補給水ポンプ41と脱酸素装置42とが設けられる。
【0038】
補給水ポンプ41は、補給水ラインL4に設けられ、補給水の供給源(図示しない)から供給される補給水を昇圧してドレンタンク30側に送出する。
【0039】
脱酸素装置42は、ドレンタンク30へ補給される補給水に対する酸素濃度を低下させることにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させる装置である。脱酸素装置42は、その運転中において、脱酸素処理を実行し、処理水(補給水及びドレンを含む)の酸素濃度を低下させる。本実施形態においては、脱酸素装置42は、補給水ラインL4に設けられており、補給水ポンプ41によって送出された補給水に対して脱酸素処理を実行し、酸素濃度を低下させた補給水をドレンタンク30に供給する。また、より脱酸素能力を向上させるために、脱酸素装置42は、処理する液体(本実施形態においては、補給水)の流量を抑えた低流量運転を行う。詳細には、脱酸素装置42は、低流量運転によって、通常運転時よりも脱酸素能力を向上させ、低濃度の溶存酸素濃度の補給水を生成することができる。脱酸素装置42は、制御部90と電気的に接続されている。
【0040】
なお、ドレンタンク30に設けられた水位センサ(図示しない)により検出されたドレン水位に基づいて、補給水ポンプ41はインバータ制御されている。従って、脱酸素装置42が低流量運転を行ったとしても、ボイラ装置10での需要水量を満たす条件で、補給水の流量を低下させることができる。
【0041】
脱酸素装置42として、機械式の脱酸素装置(例えば、タワー式脱酸素装置、膜式脱酸素装置)を採用することができる。タワー式脱気装置からなる脱酸素装置42は、減圧した雰囲気内へ処理水を噴霧することで、処理水に含まれる溶存酸素を除去する。膜式脱酸素装置からなる脱酸素装置42は、処理水中の溶存酸素を、気体透過膜モジュールを介して真空ポンプで吸引することで、処理水に含まれる溶存酸素を除去する。
【0042】
脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42は、後述する脱酸素処理において、協働してドレンに対する酸素濃度を低下させる脱酸素手段として機能する。
【0043】
制御部90は、CPU及びメモリを含んで構成され、各種弁の開閉や各種ポンプの動作を制御することで、ボイラシステム1を制御する。制御部90は、防食制御部としても機能する。以下、制御部90の機能の一部について説明する。
【0044】
制御部90は、pH検出制御部としての機能と、防食制御部としての機能と、を備える。pH検出制御部としての制御部90は、腐食速度センサ26で検出される腐食速度CRが腐食速度閾値TCRを上回る場合に、pHセンサ28でドレンのpHを検出するようにpHセンサ28を制御する。防食制御部としての制御部90は、pHセンサ28で検出されるドレンのpHである検出pH値に基づいて、中和手段(復水処理剤添加装置31)又は脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する。
【0045】
制御部90の実行する処理の一例として、第1防食処理について詳細に説明する。
図2は、制御部90が、第1防食処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートの処理は、制御部90のメモリに記憶された制御プログラムに基づいて実行される。
【0046】
図2に示すステップST101において、pH検出制御部としての制御部90は、腐食速度CR及び腐食速度閾値TCRを制御部90のメモリから取得する。腐食速度閾値TCRは、ドレン回収ラインL2の腐食(詳細には、第1検出位置J1aにおいての腐食)が進行しているか否かを判定するための閾値として、制御部90のメモリに記録されている。
【0047】
ステップST102において、pH検出制御部としての制御部90は、腐食速度CRが腐食速度閾値TCR以上か否かを判定する。腐食速度CR≧腐食速度閾値TCRである(YES)と判定された場合には、処理は、ステップST103へ移行する。また、腐食速度CR<腐食速度閾値TCRである(NO)と判定された場合には、処理は、ステップST101へ戻る。
【0048】
ステップST103(ステップST102:YES)において、制御部90は、検出pH、及び、pH閾値としての水質閾値TpHを制御部90のメモリから取得する。水質閾値TpHは、ドレン回収ラインL2の腐食の要因を判定するための閾値として、制御部90のメモリに記録されている。
【0049】
ステップST104において、制御部90は、検出pH値が水質閾値TpH以下か否かを判定する。検出pH≦水質閾値TpHである(YES)と判定された場合には、制御部90は、ドレン中の二酸化炭素が多いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していると判定し、処理は、ステップST105へ移行する。また、検出pH>水質閾値TpHである(NO)と判定された場合には、制御部90は、ドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していると判定し、処理は、ステップST106へ移行する。
【0050】
ステップST105(ステップST104:YES)において、防食制御部としての制御部90は、中和手段(復水処理剤添加装置31)を制御する中和処理を実行する。即ち、防食制御部としての制御部90は、検出pH値がpH閾値を下回る(検出pH≦水質閾値TpH)場合にドレン中の二酸化炭素を中和するように中和手段(復水処理剤添加装置31)を制御する。例えば、制御部90は、第1防食処理が実行される前と比較して、ドレンに対する復水処理剤の添加量を増加させることにより、ドレン中の二酸化炭素濃度を中和するように、復水処理剤添加装置31を制御する。本実施形態においては、ドレンに所定量の復水処理剤が添加されることにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0051】
ステップST106(ステップST104:NO)において、防食制御部としての制御部90は、脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する脱酸素処理を実行する。即ち、防食制御部としての制御部90は、検出pH値がpH閾値を下回らない(検出pH>水質閾値TpH)場合にドレンに対する酸素濃度を低下させるように、脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する。例えば、制御部90は、第1防食処理が実行される前と比較して、ドレンに対する脱酸素剤の添加量を増加させることによりドレンに対する酸素濃度を低下させるように、脱酸素剤添加装置33を制御する。更に、制御部90は、ドレンタンク30へ補給される補給水に対する酸素濃度を低下させるように、低流量運転に切り替えて脱酸素装置42を制御する。本実施形態においては、所定量の脱酸素剤がドレンに添加され、且つ、脱酸素装置42の低流量運転によって所定量の酸素濃度の低下した補給水がドレンタンク30に供給されることにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0052】
上述した第1実施形態に係るボイラシステム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0053】
ボイラシステム1は、蒸気を生成して負荷機器20に供給するボイラ装置10と、負荷機器20が蒸気を使用することにより凝縮して生じたドレンを回収するドレンタンク30と、負荷機器20とドレンタンク30とを連通し、ドレンが流通するドレン回収ラインL2と、ドレン中の二酸化炭素を中和する中和手段(復水処理剤添加装置31)と、ドレンに対する酸素濃度を低下させる脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)と、ドレン回収ラインL2に位置する第1検出位置J1aにおいて、ドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する腐食速度センサ26と、ドレン回収ラインL2に位置する第2検出位置J1bにおいて、ドレンのpHを検出するpHセンサ28と、腐食速度センサ26で検出される腐食速度CRが腐食速度閾値TCRを上回る場合に、pHセンサ28でドレンのpHを検出するようにpHセンサ28を制御するpH検出制御部としての制御部90と、を備える。
【0054】
そのため、制御部90は、ドレン回収ラインL2の腐食の要因を判定できる。具体的には、制御部90は、ドレン中の二酸化炭素が多いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食しているのか、又は、ドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食しているのかを判定できる。そして、ドレン回収ラインL2の腐食の要因に応じた処置を実行することができる。これによれば、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0055】
pH検出制御部としての制御部90がドレンのpHを検出した場合、防食制御部としての制御部90は、pHセンサ28で検出されるドレンのpHである検出pH値に基づいて、中和手段(復水処理剤添加装置31)又は脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する。そのため、制御部90は、腐食の要因を判定した後に、中和手段(復水処理剤添加装置31)又は脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御することができる。これによれば、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0056】
防食制御部としての制御部90は、検出pH値がpH閾値を下回る(検出pH≦水質閾値TpH)場合にドレン中の二酸化炭素を中和するように中和手段(復水処理剤添加装置31)を制御し、一方、検出pH値がpH閾値を下回らない(検出pH>水質閾値TpH)場合にドレンに対する酸素濃度を低下させるように脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する。そのため、制御部90は、検出pH値が低い場合にはドレン中の二酸化炭素が多いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していると判定し、ドレン中の二酸化炭素を中和することができる。一方、制御部90は、検出pH値が高い場合にはドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していると判定し、ドレンに対する酸素濃度を低下させることができる。これによれば、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0057】
脱酸素装置42は、ドレンタンク30へ補給される補給水に対する酸素濃度を低下させることにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させる。これによれば、ドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食している場合に、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0058】
脱酸素剤添加装置33は、ドレンに脱酸素剤を添加することにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させる。これによれば、ドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食している場合に、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0059】
復水処理剤添加装置31は、ドレンに復水処理剤を添加することにより、ドレン中の二酸化炭素濃度を中和する。これによれば、ドレン中の二酸化炭素が多いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食している場合に、ドレン回収ラインL2を効率的に防食できる。
【0060】
また、腐食速度センサ26は、分極抵抗法でドレン回収ラインL2の腐食速度を検出する。そのため、腐食速度をリアルタイムで精度よく、連続的に検出できる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るボイラシステム1について説明する。第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。第2実施形態に係るボイラシステム1の概略構成は、
図1に示す第1実施形態に係るボイラシステム1と同等であり、第1実施形態に係るボイラシステム1と同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を適宜に省略する。
【0062】
図3は、本発明の第2実施形態に係る制御部90が第2防食処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、第2実施形態に係るボイラシステム1の第2防食処理では、第1実施形態に係るボイラシステム1の第1防食処理と比べて、脱酸素処理と中和処理とを直列的に実行している点が主として異なる。
図3に示すフローチャートの処理は、制御部90のメモリに記憶された制御プログラムに基づいて実行される。以下に、第2実施形態に係る第2防食処理について詳細に説明する。
【0063】
図3に示すステップST201において、pH検出制御部としての制御部90は、腐食速度CR及び腐食速度閾値TCRを制御部90のメモリから取得する。腐食速度閾値TCRは、ドレン回収ラインL2の腐食(詳細には、第1検出位置J1aにおいての腐食)が進行しているか否かを判定するための閾値として、制御部90のメモリに記録されている。
【0064】
ステップST202において、pH検出制御部としての制御部90は、腐食速度CRが腐食速度閾値TCR以上か否かを判定する。腐食速度CR≧腐食速度閾値TCRである(YES)と判定された場合には、処理は、ステップST203へ移行する。また、腐食速度CR<腐食速度閾値TCRである(NO)と判定された場合には、処理は、ステップST201へ戻る。
【0065】
ステップST203(ステップST202:YES)において、防食制御部としての制御部90は、脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する。例えば、制御部90は、第1防食処理が実行される前と比較して、ドレンに対する脱酸素剤の添加量を増加させることによりドレンに対する酸素濃度を低下させるように、脱酸素剤添加装置33を制御する。更に、制御部90は、ドレンタンク30へ補給される補給水に対する酸素濃度を低下させるように、低流量運転に切り替えて脱酸素装置42を制御する。本実施形態においては、ドレンタンク30に、所定量の脱酸素剤が添加され、且つ、脱酸素装置42の低流量運転によって所定量の酸素濃度の低下した補給水が供給される。
【0066】
ステップST204において制御部90は、検出pH及びpH閾値としての水質閾値TpHを制御部90のメモリから取得する。水質閾値TpHは、ドレン回収ラインL2の腐食の要因を判定するための閾値として、制御部90のメモリに記録されている。
【0067】
ステップST205において、制御部90は、検出pH値が水質閾値TpH以下か否かを判定する。このステップST205において、検出pH≦水質閾値TpHである(YES)と判定された場合には、制御部90は、ドレン中の二酸化炭素が多いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していると判定し、処理は、ステップST206へ移行する。
【0068】
一方で、ステップST205において、制御部90により、検出pH>水質閾値TpHである(NO)と判定された場合には、制御部90は、ドレンに対する酸素濃度が高いことが要因となり、ドレン回収ラインL2が腐食していたと判定する。本実施形態においては、脱酸素処理は、ステップST203で実行されているため、本フローチャートの処理は、終了する。
【0069】
ステップST206において、防食制御部としての制御部90は、中和手段(復水処理剤添加装置31)を制御する。例えば、制御部90は、第2防食処理が実行される前と比較して、ドレンに対する復水処理剤の添加量を増加させることにより、ドレン中の二酸化炭素濃度を中和するように復水処理剤添加装置31を制御する。本実施形態においては、ドレンに所定量の復水処理剤が添加されることにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0070】
上述した第2実施形態に係るボイラシステム1によれば、第1実施形態に係るボイラシステム1と同等の効果が奏される。
また、第2防食処理は、脱酸素手段を制御し(ステップST203)、検出pHを取得し(ステップST204)、検出pHが閾値を下回った場合に(ステップ205:YES)、中和手段を制御する(ステップST206)、という順序で実行される。即ち、検出pHを取得する前に脱酸素処理が開始される。そのため、検出pHを取得する前に、ドレン回収ラインL2を防食できる。これによれば、脱酸素処理が必要な状況であれば、ドレン回収ラインL2をより速く防食できる。特にpHセンサ28の検出頻度が少ない(検出間隔が長い)ときに有効である。なお、中和処理が必要な状況であっても、第1実施形態に係る第1防食処理と比較して、全体の処理時間(腐食速度センサ26が腐食速度を検出してから、中和処理が完了するまでの時間)は、ほとんど変わらない。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0072】
上述した実施形態においては、ドレンタンク30は、排気口(図示せず)によって大気に開放されている開放型である例について説明した。しかし、ドレンタンク30は耐圧性を有する圧力容器により構成されてもよい。即ち、ボイラシステムは、負荷機器20によって生じたドレンを高温高圧の状態で回収できるクローズドドレン回収システムであってもよい。
【0073】
また、第1実施形態においては、pH検出制御部としての制御部90が、ドレンのpHを検出した場合、防食制御部としての制御部90は、pHセンサ28で検出されるドレンのpHである検出pH値に基づいて、中和手段(復水処理剤添加装置31)又は脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御する例について説明した。これに限定されず、pHセンサ28で検出されるドレンのpHである検出pH値に基づいて、中和手段(復水処理剤添加装置31)又は脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御しなくてもよい。例えば、第2実施形態に記載したように、検出pH値に関わらず、防食制御部としての制御部90は、脱酸素手段(脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42)を制御してもよい。
【0074】
また、上述した実施形態においては、制御部90は、脱酸素手段として脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42を、制御する例について説明した。しかし、脱酸素手段は、復水処理剤添加装置31及び脱酸素装置42に限定されない。制御部90は、復水処理剤添加装置31又は脱酸素装置42のいずれか一方を制御してもよく、他の脱酸素手段を制御してもよい。
【0075】
具体的には、制御部90は、脱酸素剤添加装置33及び脱酸素装置42の代わりとなる脱酸素手段として、ドレンを加温することにより、ドレンに対する酸素濃度を低下させることができる加温機構を制御してもよい。より具体的には、加温機構は、ドレン供給ラインL3に設置される給水加温設備(例えば、ボイラ装置10において燃料が燃焼したときに生じる廃熱を利用しドレンを加温するエコノマイザ)であってもよい。この場合、給水加温設備によってボイラ装置10に供給される前のドレンが加温されてもよい。
【0076】
また、加温機構は、蒸気ヘッダ12とドレンタンク30とを接続するラインであってもよい。この場合、蒸気ヘッダ12から高温のドレンがドレンタンク30に供給されることにより、ドレンタンク30内のドレンが加温されてもよい。
【0077】
また、上述した実施形態においては、復水処理剤添加装置31及び脱酸素剤添加装置33から、それぞれ復水処理剤及び脱酸素剤が添加される例について説明した。しかし、復水処理剤添加装置31から添加される薬剤は、ドレン中の二酸化炭素濃度を中和するもののみに限定されない。また、脱酸素剤添加装置33から添加される薬剤は、ドレンに対する酸素濃度を低下させるもののみに限定されない。例えば、一の薬剤に、防食効果を有する他の薬剤が併用されて添加されてもよい。具体的には、復水処理剤添加装置31から、復水処理剤と皮膜型の薬剤とが併用されて添加されてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態においては、腐食速度センサ26は、第1検出位置J1aにおいてドレン回収ラインL2の腐食速度を検出し、pHセンサ28は、第1検出位置J1aよりもドレンタンク30側のドレン回収ラインL2に位置する第2検出位置J1bにおいてドレンのpHを検出する例について説明した。しかし、腐食速度センサ26及びpHセンサ28の検出位置は、それぞれ第1検出位置J1a及び第2検出位置J1bに限定されない。例えば、腐食速度センサ26の検出位置(第1検出位置J1a)は、pHセンサ28の検出位置(第2検出位置J1b)よりもドレンタンク30側であってもよい。また、腐食速度センサ26の検出位置(第1検出位置J1a)は、pHセンサ28の検出位置(第2検出位置J1b)と同じ位置であってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態においては、復水処理剤添加装置31は、ドレンタンク30に配置される第1添加位置J2aにおいてドレンに復水処理剤を添加し、脱酸素剤添加装置33は、ドレンタンク30に配置される第2添加位置J2bにおいてドレンに復水処理剤を添加する例について説明した。しかし、第1添加位置J2a及び第2添加位置J2bはドレンタンク30に配置されなくてもよい。例えば、第1添加位置は、ドレン回収ラインL2に配置されてもよく、ドレン供給ラインL3に配置されてもよい。また、第2添加位置は、第1添加位置と一致してもよく、第1添加位置と異なる位置に配置されてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態においては、腐食速度センサ26は、分極抵抗法により腐食速度(腐食速度CR)を検出する例について説明したが、分極抵抗法によらず他の方法によって腐食速度を検出してもよい。例えば、腐食速度センサ26は、電気抵抗法又は電気化学ノイズ法等の電気的な検出方法や、テストピースを用いた検出方法によって、ドレン回収ラインL2の腐食速度を検出してもよい。なお、電気抵抗法又は電気化学ノイズ法等の電気的な検出方法を用いることにより、腐食速度をリアルタイムで精度よく、連続的に検出できる。
【0081】
また、第2実施形態においては、制御部90により、検出pH>水質閾値TpHであると判定された場合に(ステップST205:NO)、第2防食処理は、終了する例について説明した。しかし、制御部90により、検出pH>水質閾値TpHである(NO)と判定された場合に(ステップST205:NO)、制御部90は、脱酸素手段を制御してもよい。具体的には、制御部90により、検出pH>水質閾値TpHである(NO)と判定された場合に(ステップST205:NO)、処理は、ステップST203に戻ってもよい。
【0082】
また、第2実施形態においては、第2防食処理は、脱酸素手段を制御し(ステップST203)、検出pHを取得し(ステップST204)、検出pHが閾値を下回った場合に(ステップ205:YES)、中和手段を制御する(ステップST206)、という順序で実行される例について説明した。しかし、検出pHを取得する前に脱酸素処理又は中和処理が開始されるのであれば、ドレン回収ラインL2の防食処理の順序は限定されない。例えば、第2防食処理は、中和手段を制御し(ステップST203)、検出pHを取得し(ステップST204)、検出pHが閾値を超えた場合に(ステップ205:NO)、脱酸素手段を制御する(ステップST206)、という順序で実行されてもよい。また、制御部90は、脱酸素処理又は中和手段を制御している間(例えば、脱酸素剤の添加を開始してから所定の量の脱酸素剤の添加が完了するまでの間)に、検出pHを取得(ステップST204)するようにpHセンサ28を制御してもよい。これによれば、検出pHを取得する前に、ドレン回収ラインL2を防食できる。