特許第6686617号(P6686617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686617
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】放射妨害波測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   G01R29/08 D
   G01R29/08 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-64308(P2016-64308)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-181104(P2017-181104A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】緑 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 弘
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−233691(JP,A)
【文献】 特開2002−043965(JP,A)
【文献】 特表平05−505286(JP,A)
【文献】 特開平06−314954(JP,A)
【文献】 特開平11−340788(JP,A)
【文献】 特開2015−034785(JP,A)
【文献】 特開平11−281697(JP,A)
【文献】 特開平11−234354(JP,A)
【文献】 米国特許第04929960(US,A)
【文献】 米国特許第05825331(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00−29/26、
H04B 1/60、
3/46−3/493、
17/00−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の放射源によって、前記放射源を囲む面上に形成される所定の周波数の電界分布の最大の電界強度が得られる位置を求める放射妨害波測定装置であって、
電界測定装置と演算処理部とを備え、
前記電界測定装置は、
電界と電界強度の少なくとも一方を検出するアンテナと、
前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を変更可能な位置制御機構と、
前記アンテナと前記位置制御機構を用いた電界と電界強度の少なくとも一方の測定の制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記放射源を囲む面上に複数の測定点を設定する第1の動作を実行し、
前記位置制御機構を制御しながら、前記アンテナを用いて、前記複数の測定点において前記所定の周波数である測定対象の周波数の電界と電界強度の少なくとも一方を測定する第2の動作とを実行し、
前記演算処理部は、
前記第2の動作で測定された前記複数の測定点の電界分布と電界強度分布の少なくとも一方において隣接する2つの測定点間であって前記放射源を囲む面上の補間点の電界と電界強度の少なくとも一方にゼロを入力する第1の演算処理と、
前記第1の演算処理で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方に前記測定対象の周波数が遮断周波数のデジタルローパスフィルターを適用する第2の演算処理と、
前記第2の演算処理で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方から最大電界強度が得られる位置を特定する第3の演算処理とを実行し、
前記複数の測定点は、交差する2方向に並ぶように配列され、前記2方向の各々について、隣接する2つの測定点間の前記放射源を囲む面上における距離は前記電磁波の前記所定の周波数に相当する波長の1/2以下である、
ことを特徴とする放射妨害波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等から放射される妨害電磁波の最大電界強度が得られる位置を特定する放射妨害波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等から放射される放射妨害波を測定する試験は、国際的に定められた試験条件および試験方法により、放射妨害波の放射源から所定の距離を隔てた位置において受信アンテナの高さを変化させ、かつ供試体の角度を変化させて、電界の強さ(電界強度)が最大となる位置を探し出し、その位置において最終試験を実施する。放射妨害波測定装置の一例としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−258756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最大電界強度が得られる位置を探索するためには、アンテナ高さと供試体の角度毎に電界と電界強度の少なくとも一方を測定しなければならず、測定点数が非常に膨大となる。情報通信機器の周波数範囲30MHz〜1000MHzの放射妨害波測定を一例としてあげると、アンテナ高さを1m〜4m、供試体を角度0〜360°に変化させる必要があり、例えば1cm間隔、1°間隔で測定を実施した場合、測定ポイント数が14万点と膨大となり、測定時間が非常に長くなる。
【0005】
このように最大電界強度が得られるアンテナ高さおよび供試体角度(以下、最大電界強度位置と称す。)の探索には時間が非常にかかるため、一般的な測定では測定技術者が勘と経験を頼りに電界と電界強度の少なくとも一方を測定しながらアンテナ高さと供試体の角度を変更して最大電界強度位置を特定することで測定時間を短縮する手法が用いられている。
【0006】
しかし、この手法では測定結果が測定技術者の技量に依存する上、測定技術者の技量を担保するために教育に多大な費用と時間を要する。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、測定技術者の技量に寄らず短時間に最大電界強度位置を特定する放射妨害波測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射妨害波測定装置は、
電磁波の放射源によって、前記放射源を囲む面上に形成される所定の周波数の電界分布の最大の電界強度が得られる位置を求める放射妨害波測定装置であって、
電界測定装置と演算処理部とを備え、
前記電界測定装置は、
電界と電界強度の少なくとも一方を検出するアンテナと、
前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を変更可能な位置制御機構と、
前記アンテナと前記位置制御機構を用いた電界と電界強度の少なくとも一方の測定の制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記放射源を囲む面上に複数の測定点を設定する第1の動作を実行し、
前記位置制御機構を制御しながら、前記アンテナを用いて、前記複数の測定点において前記所定の周波数である測定対象の周波数の電界と電界強度の少なくとも一方を測定する第2の動作とを実行し、
前記演算処理部は、
前記第2の動作で測定された前記複数の測定点の電界分布と電界強度分布の少なくとも一方において隣接する2つの測定点間であって前記放射源を囲む面上の補間点の電界と電界強度の少なくとも一方にゼロを入力する第1の演算処理と、
前記第1の演算処理で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方に前記測定対象の周波数が遮断周波数のデジタルローパスフィルターを適用する第2の演算処理と、
前記第2の演算処理で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方から最大電界強度が得られる位置を特定する第3の演算処理とを実行し、
前記複数の測定点は、交差する2方向に並ぶように配列され、前記2方向の各々について、隣接する2つの測定点間の前記放射源を囲む面上における距離は前記電磁波の前記所定の周波数に相当する波長の1/2以下である、
ことを特徴とする放射妨害波測定装置である。
【発明の効果】
【0010】
第1及び第2の演算処理を介して得られる電解分布と電界強度分布の少なくとも一方から最大電界強度が得られる位置を特定することにより、最大電界強度位置を得るために必要な測定点を大幅に減らすことができる効果を奏する。これにより測定技術者の技量に寄らず短時間に最大電界強度位置を特定することができる。
【0011】
例えば周波数300MHz、測定距離3m、アンテナ高さ1m〜4m、供試体角度0〜360°の範囲において高さ1cm間隔、角度1°間隔で最大電界強度位置を特定する場合、本発明の放射妨害波測定法を使用すると、実際に高さ1cm間隔、角度1°間隔で電界を測定し最大電界強度位置を特定する場合と比較して475分の1の測定ポイント数で最大電界強度位置を特定することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置を示した概略図である。
図2図2は本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置の主要な構成要素を示すブロック図である。
図3図3図2のコンピュータの構成を示すブロック図である。
図4図4は本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置の動作の流れを示したフローチャートである。
図5図5は本発明の実施の形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定方法の概要を説明するための説明図である。
図6図6は本発明の実施の形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定方法における複数の測定点を示すための説明図である。
図7図7は本発明の実施の形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定方法における隣接する2つの測定点間の電界と電界強度の少なくとも一方にゼロを内挿することを説明するための説明図である。
図8図8は本発明の実施の形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定方法における電界分布と電界強度分布の少なくとも一方にデジタルローパスフィルターを適応した場合の結果を説明するための説明図である。
図9図9は本発明の実施の形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定法の妥当性を検証するために行った実験の概略図である。
図10図10は本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定法を実施した結果と実際に測定して得た最大電界強度が得られる高さとの偏差を示した特性図である。
図11図11は本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置の最大電界強度位置推定法を実施した結果と実際に測定して得た最大電界強度が得られる角度との偏差を示した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[推定原理]
【0014】
以下、本発明の推定原理の概要について説明する。
【0015】
ある任意の点での電界を平面波スペクトル表示で表すと下記の(1)式のように表すことができる。
【数1】
A(kx,ky)は平面波の振幅、kx,ky,kzは波数である。
【0016】
(1)式は、A(kx,ky)exp(-jkzz)の2次元フーリエ変換と考えることができるため、ある周波数において得られる電界分布はその周波数で帯域制限がかけられていることが分かる。
【0017】
このことより、空間分解能が電磁波の波長の1/2以下の電界分布を得ることができれば、サンプリング定理より電界分布を完全に再現できることが分かる。このため、電磁波の波長の1/2以下の測定点で電界分布を測定することができれば、復元された電界分布より最大電界強度位置を特定することができる。
[第1の実施の形態]
【0018】
以下、本発明に基づく発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
始めに、図1を参照して、本発明に基づく実施の形態に係る放射妨害波測定装置100について説明する。本発明に係る放射妨害波測定装置100は、受信アンテナ2と受信アンテナ2を昇降させるアンテナマスト3と供試体1を回転させるターンテーブル4を備え、電界と電界強度の少なくとも一方を測定する受信器5と、アンテナマスト3とターンテーブル4を制御するコントローラー6、受信器5とコントローラー6を制御する制御部と測定値を用いて最大電界強度位置を特定する演算処理部を備えたコンピュータ7を備えている。また、アンテナマスト3とターンテーブル4は例えば通信ケーブルによってコントローラー6と接続され、受信器5とコントローラー6は例えば通信ケーブルによって、コンピュータ7に接続されている。
【0020】
図2は本発明に係る放射妨害波測定装置100の主要な構成要素を示したブロック図である。本実施の形態に係る放射妨害波測定装置100は、図2に示したように、受信アンテナ2とアンテナ2を昇降させるアンテナマスト3と、供試体1を回転させるターンテーブル4と、電界を測定する受信器5と、アンテナマスト3とターンテーブル4を制御するコントローラー6と、測定の制御を行う制御部8と演算処理部9を備えている。演算処理部9が行う処理については、後で詳しく説明する。本実施の形態では、制御部8と演算処理部9は、コンピュータ7によって実現されている。すなわち、アンテナマスト3、ターンテーブル4及びコントローラー6が請求項における位置制御機構を構成し、受信器5及び制御部6が請求項における制御部を構成している。
【0021】
図3図2におけるコンピュータ7のハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータ7は、主制御部10と、入力装置11と、出力装置12と、記憶装置15と、これらを互いに接続するバス14とを備えている。主制御部10は、CPU(中央処理装置)およびRAM(ランダムアクセスメモリ)を有している。入力装置11は、放射妨害波測定装置の動作に必要な情報の入力や各種の動作の指示を行うために用いられる。出力装置12は、放射妨害波測定装置の動作に関連する各種の情報を出力(表示を含む)するために用いられる。
【0022】
記憶装置13は、情報を記憶できるものであれば、その形態は問わないが、例えばハードディスク装置または光ディスク装置である。また、記憶装置15は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体15に対して情報を記録し、また記憶媒体15より情報を再生するようになっている。記憶媒体15は、例えばハードディスクまたは光ディスクである。記憶媒体15は、図2に示した8の制御部と9の演算処理部を実現するためのプログラムを記録した記憶媒体であってもよい。
【0023】
主制御部10は、例えば記憶装置13の記憶媒体15に記録されたプログラムを実行することにより、図2に示した制御部8と演算処理部9の機能を発揮するようになっている。なお、図2に示した制御部8と演算処理部9は、物理的に別個の要素ではなく、ソフトウェアによって実現される。
【0024】
以下、妨害波測定装置100を用いて実施する最大電界強度位置推定方法の一連の動作について図4の測定および推定手法の流れを示したフローチャートを参照して説明する。
【0025】
ステップS101で、操作者が、測定周波数、放射源1からの水平方向の距離と、測定点高さの範囲と、この範囲内で設定される複数の測定点の間隔と、測定点回転角度の範囲と、この範囲内で設定される複数の測定点の間隔等の測定条件をコンピュータ7に入力する。この時に設定する測定点間の距離は高さ、角度共に測定周波数の波長の1/2以下が好ましい。
【0026】
ステップS102で制御部8がアンテナマスト3とターンテーブル4をステップS101で設定した測定範囲の下限の高さ、角度に移動させる動作を行う。
【0027】
ステップS103で制御部8が現在のアンテナマスト3の高さとターンテーブル4の角度の情報をコントローラー6より取得する動作と、電界と電界強度の少なくとも一方を測定器5より測定し測定値を取得する動作を行い、それぞれの情報をコンピュータ7の記憶装置13に保存する。
【0028】
ステップS104で制御部8がターンテーブル4をステップS101で設定した角度間隔で回転させる動作を行う。
【0029】
ステップS105で制御部8が現在のターンテーブル4の角度情報をコントローラー6より取得する動作を行い、演算処理部9が現在のターンテーブル角度がステップS101で設定した測定範囲の上限角度かどうかを判定する動作を行う。上限角度でない場合はステップS103に戻る。上限角度の場合、ステップS106に進む。
【0030】
ステップS106で制御部8がアンテナマスト3をステップS101で設定した高さ間隔で上昇させる動作を行う。
【0031】
ステップS107で制御部8が現在のアンテナマスト3の高さ情報をコントローラー6より取得する動作を行い、演算処理部9が現在のアンテナ高さがステップS101で設定した測定範囲の上限角度かどうかを判定する動作を行う。上限高さでない場合はステップS103に戻る。上限高さの場合、ステップS108に進む。
【0032】
ステップS108では演算処理部9が記憶装置13からステップS103からステップS107で測定された電界分布と電界強度分布の少なくとも一方を読み出し、測定対象の周波数における隣接する2つの測定点間の電界と電界強度の少なくとも一方にゼロを内挿する動作を行う。
【0033】
ステップS109では演算処理部9がステップS108においてゼロ内挿した電界分布と電界強度分布の少なくとも一方に遮断周波数が測定対象の周波数のデジタルローパスフィルターを適用する動作を行う。
【0034】
ステップS110では演算処理部9がステップS109で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方から最大電界強度位置を特定する動作を行う。
【0035】
測定対象の周波数が複数ある場合は、ステップS101からS110を繰り返すことで、各周波数に対する最大電界強度位置を特定することができる。もしくは、ステップS103において測定器5より電界と電界強度の少なくとも一方の周波数特性を取得し、その情報をコンピュータ7に保存した後に、ステップS108からステップS110を周波数ごとに繰り返すことで各周波数に対する最大電界強度位置を特定することができる。
【0036】
以下、本発明に基づく実施形態の放射妨害波測定装置が実施する最大電界強度位置推定方法について図面を参照して詳細に説明する。図5は最大電界強度位置推定方法の概要を説明するための説明図であり、図6から図8は最大電界強度推定手法を説明するために最大電界強度推定法の流れについての一例を示した説明図である。
【0037】
図5に示したように、本実施の形態に係る最大電界強度推定手法では、電磁波の放射源1によって、放射源1を囲む面上に形成される電界分布16の内で最大の電界強度が得られる位置を求める推定手法である。本実施の形態に係る最大電界強度推定手法は、例えば、EMC規格に従って、放射源1から放射される放射妨害波を測定する試験に利用される。
【0038】
本実施の形態に係る最大電界強度位置推定法は、以下の第1ないし第4の手順を備えている。図6から図8を参照して第1ないし第4の手順を説明する。なお、第1の手順は前記妨害波測定装置100の動作のステップS101からステップS107に、第2の手順は前記妨害波測定装置100の動作のステップS108に、第3の手順は前記妨害波測定装置100の動作のステップS109に、第4の手順は前記妨害波測定装置100の動作のステップS110に対応している。
【0039】
第1の手順は、図6に示すように放射源1を囲む面上に複数の測定点17を設定して、測定対象となる周波数の電界分布と電界強度分布の少なくとも一方を測定する。
この時、隣接する2つの測定点間の放射源1を囲む面上における距離は測定対象となる周波数の波長の1/2以下が好ましい。
【0040】
第2の手順は、隣接する2つの測定点間の電界と電界強度の少なくとも一方にゼロを内挿する。この時、ゼロを内挿する点数は1点または複数点設けることができる。また、測定点とゼロを内挿した点およびゼロを内挿した点同士の間隔は測定者が任意に設定することができる。図7は第2の手順を説明するための説明図で、一例として図6に示す測定点の範囲18における測定点の電界強度19と隣接する2つの測定点間に0.25m間隔でゼロを内挿した点の電界強度20からなる電界強度分布を示している。
【0041】
第3の手順は、第2の手順で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方に測定対象となる周波数が遮断周波数のデジタルローパスフィルターを適用する。ゼロが内挿された電界分布と電界強度分布の少なくとも一方は測定された周波数よりも高周波の成分を持つが、実際には(1)式より電界分布と電界強度分布の少なくとも一方は測定対象の周波数で帯域制限がかけられているおり、遮断周波数が測定対象周波数のローパスフィルタを適用することで、ゼロ内挿によって生じた高周波成分を取り除くことができ、実際の電界分布と電界強度分布の少なくとも一方を再現することができる。ゼロ内挿からローパスフィルタの適用までの操作を行うことにより、結果として隣接する2つの測定点間の電界と電界強度の少なくとも一方が補間されることになる。図8は第3の手順を説明するための説明図で、一例として図7に示した電界強度分布にデジタルローパスフィルターを適用した測定点の電界強度19と補間された隣接する2つの測定点間の電界強度21からなる電界強度分布を示している。
【0042】
第4の手順は、第3の手順で得られた電界分布と電界強度分布の少なくとも一方から最大電界強度位置を特定する。例えば、図8図6に示した測定点の範囲18において第1から第3の手順によって得られた電界強度分布であるが、得られた電界分布より範囲18において最も電界強度が強い位置は1.5mの位置となり、この点を最大電界強度位置と特定する。これらを各々の角度で繰り返し実施することで、角度毎に所定の高さ範囲内で最も強い電界強度が得られる高さが得られる。得られた角度毎に所定の高さ範囲内で最も強い電界強度を比較することで最大電界強度が得られる角度および高さを特定することができる。
【0043】
[検証実験]
以下、図9から図11を参照して、本発明の実施の形態の放射妨害波測定装置の妥当性を検証するために行った実験について説明する。図9は、実験の方法を説明するための説明図である。1は放射源、4は受信アンテナ、5はアンテナマスト、6はターンテーブル、7は測定器、8はアンテナマスト5とターンテーブル6を制御するコントローラー、9は測定器7とコントローラー8を制御してデータを保存、解析するコンピュータである。放射源1は高さ0.8m位置に配置され、受信アンテナ2は放射源1から3m離れた位置に設置されている。測定対象の放射源1はパーソナルコンピュータである。
【0044】
図10は本発明に基づく実施の形態の放射妨害波装置100によって得られた最大電界強度高さと実際に測定して得られた最大電界強度高さとの偏差を示している。また、図11は本発明の本発明に基づく実施の形態の放射妨害波装置100によって得られた最大電界強度角度と実際に測定して得られた最大電界強度角度との偏差を示している。本発明に基づく実施の形態の放射妨害波装置100を用いることによって最大電界強度位置は実際に測定して得られた位置に対して±10cm、±10°以内で推定できていることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
1 放射源
2 受信アンテナ
3 アンテナマスト
4 ターンテーブル
5 受信器
6 コントローラー
7 コンピュータ
8 制御部
9 演算処理部
10 主制御部
11 入力装置
12 出力装置
13 記憶装置
14 接続バス
15 記憶媒体
16 放射源1が形成する電界分布
17 測定点
18 測定範囲
19 測定点の電界強度
20 ゼロ内挿された隣接する2つの測定点間の電界強度
21 デジタルフィルタによって補間された隣接する2つの測定点間の電界強度
100 放射妨害波測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11