特許第6686623号(P6686623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686623
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】排水回収システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20200413BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C02F3/12 H
   C02F3/12 Q
   C02F3/12 M
   C02F3/12 S
   C02F1/44 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-65581(P2016-65581)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-176959(P2017-176959A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−169882(JP,A)
【文献】 特開2002−346585(JP,A)
【文献】 実開昭59−7093(JP,U)
【文献】 特開平1−274897(JP,A)
【文献】 特開昭60−150894(JP,A)
【文献】 特開昭63−229195(JP,A)
【文献】 特開平2−284697(JP,A)
【文献】 実開昭52−11863(JP,U)
【文献】 特開平11−114595(JP,A)
【文献】 特開平10−80694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
3/00
3/14 − 3/26
3/28 − 3/34
1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回分式活性汚泥法による排水処理を行う回分式処理槽であって、排水を前記回分式処理槽へ流入させる流入工程、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程、微生物汚泥を沈降させる沈降工程、及び、一次処理水を前記回分式処理槽から排出させる排出工程を繰り返して行う回分式処理槽と、
前記回分式処理槽の前段に設けられ、前記回分式処理槽へ供給される排水が貯留される排水貯留槽と、
前記回分式処理槽から取水される活性汚泥を含む一次処理水が貯留され、一次処理水から活性汚泥を分離する活性汚泥分離槽と、
前記排水貯留槽に貯留される排水を前記回分式処理槽へ供給する排水供給手段と、
前記回分式処理槽から取水される一次処理水を前記活性汚泥分離槽へ導入させる処理水導入工程を実行する処理水導入手段と、
前記活性汚泥分離槽で分離された活性汚泥を前記排水貯留槽に返送する汚泥返送手段と、
前記回分式処理槽において前記生物処理工程が開始されてから所定の待機期間が経過した後、一次処理水を前記活性汚泥分離槽へ導入させるように前記処理水導入手段を制御する制御部と、を備え
前記制御部は、前記回分式処理槽において前記生物処理工程が開始されてから所定の待機期間が経過した後で且つ前記沈降工程の開始前に、前記処理水導入工程を実行するように前記処理水導入手段を制御する、排水回収システム。
【請求項2】
前記回分式処理槽は、複数設けられ、
前記排水供給手段は、排水を複数の前記回分式処理槽へ選択的に供給する、
請求項1に記載の排水回収システム。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記回分式処理槽において前記処理水導入工程の実行期間が重なることなく、前記処理水導入工程を実行するように前記処理水導入手段を制御する、
請求項2に記載の排水回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回分式活性汚泥法による排水処理を行う回分式処理槽と、回分式処理槽から取水される活性汚泥を含む一次処理水が貯留され、一次処理水から活性汚泥を分離する活性汚泥分離槽と、を備える排水回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回分式活性汚泥法による排水処理を行う回分式処理槽と、回分式処理槽から取水される活性汚泥を含む一次処理水が貯留され、一次処理水から活性汚泥を分離する活性汚泥分離槽と、を備える排水回収システムが知られている。例えば、特許文献1には、排水回収システムとして、磁性粉を加えた活性汚泥を用い、曝気工程の後段若しくは曝気工程の終了後に、磁気によって活性汚泥懸濁液から活性汚泥を分離する回分式処理槽を備える回分式汚水処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−125228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術による回分式汚水処理システムにおいては、活性汚泥分離槽で分離された活性汚泥を回分式処理槽に返送することが行われている。しかし、回分式処理槽での沈降中に活性汚泥分離槽で分離された活性汚泥が返送されると、回分式処理槽内で撹拌が起こり、沈降が適切に行われないという問題がある。更に、回分式処理槽での生物処理が不十分な排水が取水される可能性がある。
【0005】
従って、本発明は、回分式活性汚泥法による排水処理を行う回分式処理槽と、回分式処理槽から取水される活性汚泥を含む一次処理水が貯留され、一次処理水から活性汚泥を分離する活性汚泥分離槽と、を備える排水回収システムにおいて、回分式処理槽内での不必要な撹拌を抑制すると共に、回分式処理槽での生物処理が不十分な排水が取水されることを抑制することができる排水回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回分式活性汚泥法による排水処理を行う回分式処理槽であって、排水を前記回分式処理槽へ流入させる流入工程、排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程、微生物汚泥を沈降させる沈降工程、及び、一次処理水を前記回分式処理槽から排出させる排出工程を繰り返して行う回分式処理槽と、前記回分式処理槽の前段に設けられ、前記回分式処理槽へ供給される排水が貯留される排水貯留槽と、前記回分式処理槽から取水される活性汚泥を含む一次処理水が貯留され、一次処理水から活性汚泥を分離する活性汚泥分離槽と、前記排水貯留槽に貯留される排水を前記回分式処理槽へ供給する排水供給手段と、前記回分式処理槽から取水される一次処理水を前記活性汚泥分離槽へ導入させる処理水導入工程を実行する処理水導入手段と、前記活性汚泥分離槽で分離された活性汚泥を前記排水貯留槽に返送する汚泥返送手段と、前記回分式処理槽において前記生物処理工程が開始されてから所定の待機期間が経過した後、一次処理水を前記活性汚泥分離槽へ導入させるように前記処理水導入手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記回分式処理槽において前記生物処理工程が開始されてから所定の待機期間が経過した後で且つ前記沈降工程の開始前に、前記処理水導入工程を実行するように前記処理水導入手段を制御する、排水回収システムに関する。
【0007】
また、前記回分式処理槽は、複数設けられ、前記排水供給手段は、排水を複数の前記回分式処理槽へ選択的に供給することが好ましい。
【0008】
また、前記制御部は、複数の前記回分式処理槽において前記処理水導入工程の実行期間が重なることなく、前記処理水導入工程を実行するように前記処理水導入手段を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回分式処理槽内での不必要な撹拌を抑制すると共に、回分式処理槽での生物処理が不十分な排水が取水されることを抑制することができる排水回収システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態の排水回収システムを示すフロー図である。
図2】本発明の第1実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。
図3】本発明の第2実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。
図4】本発明の第3実施形態の排水回収システムを示すフロー図である。
図5】本発明の第3実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る排水回収システムについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態の排水回収システムを示すフロー図である。図2は、本発明の第1実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。
【0014】
図1に示すように、第1実施形態の排水回収システム1は、排水貯留槽2と、回分式処理槽3(3a、3b)と、活性汚泥分離槽4と、排水供給手段(排水ポンプP1、排水ラインL2、排水バルブV1a、V1b)と、処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、一次処理水ラインL3、処理水バルブV2a、V2b)と、汚泥返送手段(返送ポンプP3、返送ラインL5、返送バルブV3)と、制御部90と、を備える。なお、制御部90と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0015】
また、第1実施形態の排水回収システム1は、ラインとして、排水導入ラインL1と、排水ラインL2と、一次処理水ラインL3と、二次処理水ラインL41と、返送ラインL5と、空気供給ラインL6と、排出工程ラインL7a、L7bと、を備える。排水ラインL2は、共用排水ラインL2cと、分岐排水ラインL2a、L2bとを備える。一次処理水ラインL3は、分岐一次処理水ラインL3a、L3bと、共用一次処理水ラインL3cとを備える。空気供給ラインL6は、共用空気供給ラインL6cと、分岐空気供給ラインL6a、L6bとを備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等、流体の流通を可能とする手段の総称である。
【0016】
排水貯留槽2は、回分式処理槽3の前段に設けられ、回分式処理槽3へ供給される排水W1が貯留される槽である。排水W1としては、例えば、工場排水や生活排水が挙げられる。排水貯留槽2には、排水導入ラインL1を介して、排水W1が導入される。排水貯留槽2は、その底部近傍に、排水供給手段を構成する排水ポンプP1を備える。排水ポンプP1の吐出口には、排水ラインL2の共用排水ラインL2cの上流側端部が接続されている。排水ラインL2は、共用排水ラインL2cと、共用排水ラインL2cの下流側端部である分岐部J1から分岐する分岐排水ラインL2a、L2bとを備える。分岐排水ラインL2aには、排水供給手段を構成する排水バルブV1aが設けられている。分岐排水ラインL2bには、排水供給手段を構成する排水バルブV1bが設けられている。分岐排水ラインL2aを流通する排水W1は、第1の回分式処理槽3aに供給される。分岐排水ラインL2bを流通する排水W1は、第2の回分式処理槽3bに供給される。
【0017】
排水貯留槽2には、返送ラインL5を介して、活性汚泥W4が返送される(詳細は後述)。
【0018】
回分式処理槽3(3a,3b)は、回分式活性汚泥法による排水処理を行う槽である。回分式処理槽3は、排水W1を回分式処理槽3へ流入させる流入工程、排水W1中の処理対象物質を微生物汚泥(活性汚泥)により生物学的に処理する生物処理工程、微生物汚泥を沈降させる沈降工程、及び、一次処理水W2を回分式処理槽3から排出させる排出工程を繰り返して行う。
【0019】
第1実施形態においては、回分式処理槽3は、複数(2つ)設けられる。なお、2つの回分式処理槽3に共通する説明を行う場合には、「回分式処理槽3」といい、2つの回分式処理槽3について個別の説明を行う場合には、「第1の回分式処理槽3a」及び「第2の回分式処理槽3b」という。回分式処理槽3に関連する各種構成に係る符号(例えば、31、33、L2、V1、L6、V4、L7、V5、L3、V2)においても同様とする。
【0020】
回分式処理槽3は、槽本体31と、空気供給手段32と、散気手段33と、を備える。空気供給手段32の吐出口には、空気供給ラインL6の共用空気供給ラインL6cの上流側端部が接続されている。空気供給ラインL6は、共用空気供給ラインL6cと、共用空気供給ラインL6cの下流側端部である分岐部J3から分岐する分岐空気供給ラインL6a、L6bとを備える。空気供給ラインL6aには、空気供給バルブV4aが設けられている。空気供給ラインL6bには、空気供給バルブV4bが設けられている。分岐空気供給ラインL6aを流通する空気は、散気手段33aに供給される。分岐空気供給ラインL6bを流通する空気は、散気手段33bに供給される。
【0021】
槽本体31は、生物処理工程及び沈降工程が行われる排水W1を貯留する。空気供給手段32は、生物処理工程の際に排水W1に空気を供給する。空気供給手段32は、例えば、空気供給ラインL6の入口端に接続されるブロワから構成される。散気手段33は、排水W1に含まれる微生物汚泥に酸素を供給して汚濁物質を餌とする微生物の働きを活性化するものであって(曝気)、槽本体31の底面近傍に設置される。散気手段33は、例えば、多孔性の排気構造体からなり、空気供給手段32からの空気を散気させる。
【0022】
槽本体31の上部には、排出工程ラインL7a、L7bが接続されている。排出工程ラインL7a、L7bには、それぞれ排出工程バルブV5a、V5bが設けられている。
【0023】
次に各工程について説明する。
流入工程において、排水ポンプP1が駆動し、排水バルブV1aが開き、排水バルブV1bが閉じることで、排水貯留槽2に貯留される排水W1は、分岐排水ラインL2aを流通して、第1の回分式処理槽3aに供給される。排水ポンプP1が駆動し、排水バルブV1bが開き、排水バルブV1aが閉じることで、排水貯留槽2に貯留される排水W1は、分岐排水ラインL2bを流通して、第2の回分式処理槽3bに供給される。なお、図1では、排水バルブV1aが閉じ、排水バルブV1bが開いている状態が示されている。
【0024】
生物処理工程において、空気供給手段32からの空気の供給により槽本体31の内部に、多数の泡を発生させることができる。つまり、散気手段33は、槽本体31に貯留される排水W1を曝気する。空気供給手段32が駆動し、空気供給バルブV4aが開き、空気供給バルブV4bが閉じることで、空気供給手段32からの空気は、空気供給ラインL6aを流通して、第1の回分式処理槽3aの散気手段33aに供給される。空気供給手段32が駆動し、空気供給バルブV4bが開き、空気供給バルブV4aが閉じることで、空気供給手段32からの空気は、空気供給ラインL6bを流通して、第2の回分式処理槽3bの散気手段33bに供給される。なお、図1では、空気供給バルブV4aが閉じ、空気供給バルブV4bが開いている状態が示されている。
【0025】
沈降工程において、汚濁物質を餌として成長した微生物汚泥は、槽本体31の底面に沈降し、堆積する。
排出工程において、沈降工程完了後の槽本体31内の上澄み水は、排出工程ラインL7及び排出工程バルブV5を介して系外へ排出され、下水等に放流される。
【0026】
処理水導入工程において、回分式処理槽3で生物処理工程の全部又は一部が行われた一次処理水W2は、一次処理水ラインL3及び処理水バルブV2を介して、活性汚泥分離槽4に導入される。この一次処理水W2は、活性汚泥を含む。処理水ポンプP2aが駆動し、処理水バルブV2aが開き、処理水バルブV2bが閉じることで、一次処理水W2は、一次処理水ラインL3aを流通して、活性汚泥分離槽4に供給される。処理水ポンプP2bが駆動し、処理水バルブV2bが開き、処理水バルブV2aが閉じることで、一次処理水W2は、一次処理水ラインL3bを流通して、活性汚泥分離槽4に供給される。なお、図1では、処理水バルブV2aが開き、処理水バルブV2bが閉じている状態が示されている。
【0027】
活性汚泥分離槽4は、回分式処理槽3から取水される活性汚泥を含む一次処理水W2が貯留され、一次処理水W2から活性汚泥W4を分離する槽である。活性汚泥分離槽4には、一次処理水ラインL3を介して、一次処理水W2が導入される(処理水導入工程)。活性汚泥分離槽4において一次処理水W2から活性汚泥W4が分離された二次処理水W3は、二次処理水ラインL41を介して、次工程(RO膜モジュール5による三次処理)に導入される。
【0028】
活性汚泥分離槽4は、槽本体41と、空気供給手段42と、散気手段43と、膜モジュール44と、を備える。空気供給手段42の吐出口には、空気供給ラインL8の上流側端部が接続されている。空気供給ラインL8を流通する空気は、散気手段43に供給される。
【0029】
槽本体41は、一次処理水W2を貯留する。空気供給手段42は、一次処理水W2に空気を供給する。空気供給手段42は、例えば、空気供給ラインL8の入口端に接続されるブロワから構成される。空気供給ラインL8には、空気供給バルブV6が設けられている。散気手段43は、槽本体41の底面近傍に設置される。散気手段43は、例えば、多孔性の排気構造体からなり、空気供給手段42からの空気を散気させる(曝気)。
【0030】
膜モジュール44は、浸漬型の濾過膜モジュールからなり、槽本体41内の一次処理水W2を膜濾過する。膜モジュール44としては、例えば、精密濾過膜モジュール(MF膜)、限外濾過膜モジュール(UF膜)が用いられる。
【0031】
排水供給手段は、排水貯留槽2に貯留される排水W1を回分式処理槽3へ供給する。排水供給手段は、排水ポンプP1と、排水ラインL2と、排水バルブV1a、V1bとを備える。排水ポンプP1は、排水貯留槽2の底部近傍に設けられ、排水貯留槽2に貯留される排水W1を吸引し、吐出する。排水ラインL2の分岐排水ラインL2aを流通する排水W1は、第1の回分式処理槽3aに供給される。排水ラインL2の分岐排水ラインL2bを流通する排水W1は、第2の回分式処理槽3bに供給される。排水バルブV1aは、分岐排水ラインL2aを開閉する。排水バルブV1bは、分岐排水ラインL2bを開閉する。排水ポンプP1及び排水バルブV1a、V1bは、制御部90と電気的に接続されている。排水ポンプP1の運転(駆動及び停止)並び排水バルブV1a、V1bの開閉は、制御部90により制御される。
【0032】
そのため、第1実施形態おいては、排水供給手段(排水ポンプP1、排水ラインL2と、排水バルブV1a、V1b)は、排水W1を複数(2つ)の回分式処理槽3a,3bへ選択的に供給することができる。
【0033】
空気供給手段32、空気供給バルブV4a、V4b、排出バルブV7a、V7bは、制御部90と電気的に接続されている。空気供給手段32の運転(駆動及び停止)並びバルブV4a、V4b、V7a、V7bの開閉は、制御部90により制御される。
【0034】
処理水導入手段は、回分式処理槽3から取水される一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入させる処理水導入工程を実行する。処理水導入手段は、処理水ポンプP2a、P2bと、一次処理水ラインL3と、処理水バルブV2a、V2bとを備える。処理水ポンプP2a、P2bは、回分式処理槽3の槽本体31の底部近傍に設けられ、回分式処理槽3で得られた一次処理水W2を吸引し、吐出する。一次処理水ラインL3は、分岐一次処理水ラインL3a、L3bと、分岐一次処理水ラインL3a、L3bの下流側端部である合流部J2に接続される共用一次処理水ラインL3cと、を備える。
【0035】
分岐一次処理水ラインL3aには、処理水導入手段を構成する処理水バルブV2aが設けられている。分岐一次処理水ラインL3bには、処理水導入手段を構成する処理水バルブV2bが設けられている。分岐一次処理水ラインL3aを流通する一次処理水W2は、共用一次処理水ラインL3cを介して、活性汚泥分離槽4に供給される。分岐一次処理水ラインL3bを流通する一次処理水W2は、共用一次処理水ラインL3cを介して、活性汚泥分離槽4に供給される。処理水バルブV2aは、分岐一次処理水ラインL3aを開閉する。処理水バルブV2bは、分岐一次処理水ラインL3bを開閉する。処理水ポンプP2a、P2b及び処理水バルブV2a、V2bは、制御部90と電気的に接続されている。処理水ポンプP2a、P2bの運転(駆動及び停止)並び処理水バルブV2a、V2bの開閉は、制御部90により制御される。
【0036】
汚泥返送手段は、返送ポンプP3と、返送ラインL5と、返送バルブV3とを備える。返送ポンプP3は、活性汚泥分離槽4の底部近傍に設けられ、一次処理水W2から分離された活性汚泥W4を吸引し、吐出する。返送ラインL5の上流側端部に、返送ポンプP3が接続されている。返送ラインL5には、返送バルブV3が設けられている。返送ポンプP3及び返送バルブV3は、制御部90と電気的に接続されている。返送ポンプP3の運転(駆動及び停止)並び返送バルブV3の開閉は、制御部90により制御される。返送ポンプP3が駆動し、返送バルブV3が開くことで、活性汚泥W4は、返送ラインL5の下流側端部から排出され、排水貯留槽2に返送される。
【0037】
膜モジュール44には、二次処理水ラインL41が接続されている。二次処理水ラインL41には、二次処理水ポンプP4が設けられる。二次処理水ポンプP4は、活性汚泥分離槽4で得られた二次処理水W31を、二次処理水ラインL41を介して吸引し、吐出する。二次処理水ラインL41には、二次処理水W31が流通する。
【0038】
活性汚泥分離槽4では、散気手段43による曝気と二次処理水ポンプP4による吸引を行うことで、槽本体41内において一次処理水W2の膜分離活性汚泥処理が行われる。膜分離活性汚泥処理された一次処理水W2は、有機物が生物分解されて、二次処理水W31となる。
【0039】
二次処理水ラインL41の下流側には、三次処理のためのRO膜(逆浸透膜)モジュール5が設けられる。二次処理水ラインL41の下流側の端部は、RO膜(逆浸透膜)モジュール5の一次側入口ポートに接続されている。二次処理水W31は、二次処理水ラインL41及び二次処理水ポンプP4を介してRO膜モジュール5に供給される。
【0040】
RO膜モジュール5は、二次処理水W31を、溶存塩類が除去された三次処理水としての透過水W32と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W33とに膜分離処理する。RO膜モジュール5は、単一又は複数のRO膜エレメント(不図示)を備える。
【0041】
透過水ラインL42の上流側の端部は、RO膜モジュール5の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL42には、RO膜モジュール5で分離された透過水W32が流通する。濃縮水ラインL43の上流側の端部は、RO膜モジュール5の一次側出口ポートに接続されている。濃縮水ラインL43には、RO膜モジュール5で分離された濃縮水W33が流通する。
【0042】
このように、本実施形態の排水回収システム1は、膜による高次処理(二次処理以上)、例えばRO膜モジュール5による三次処理の前処理設備として、設けられる(用いられる)。
【0043】
制御部90は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部90において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、排水回収システム1に係る各種の制御を実行する。
【0044】
また、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後、一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入させるように処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する。第1実施形態における待機期間Tは、生物処理工程の期間以上の期間である。
【0045】
詳細には、第1実施形態においては、制御部90は、複数(2つ)の回分式処理槽3a,3bにおいて処理水導入工程の実行期間が重なることなく、処理水導入工程を実行するように、処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する。
【0046】
更に詳細には、第1実施形態においては、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程の終了後に、処理水導入工程を実行するように、処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する。
【0047】
次に、第1実施形態の排水回収システム1の処理工程について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の第1実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。図2には、回分式処理槽3a、3bにおける流入工程、生物処理工程、沈降工程、排出工程の相互の時系列関係が示されている。
【0048】
図2に示すように、第1の回分式処理槽3aにおいて、流入工程、生物処理工程、沈降工程及び排出工程が繰り返し行われる。流入工程及び生物処理工程は実質的に同じタイミングで開始される。流入工程が終了後も、生物処理工程は継続する。生物処理工程の終了後、直ちに又は所定時間後に、沈降工程は開始される。沈降工程の終了後、直ちに又は所定時間後に、排出工程は開始される。
また、回分式処理槽3aにおける生物処理工程の終了後、直ちに又は所定時間後に、活性汚泥分離槽4への処理水導入工程は開始される。
第1の回分式処理槽3aにおける排出工程、及び活性汚泥分離槽4における処理水導入工程が終了すると、第1の回分式処理槽3aにおける工程サイクルが完了する。
【0049】
第2の回分式処理槽3bにおいては、第1の回分式処理槽3aにおける流入工程及び生物処理工程が終了すると共に、第2の回分式処理槽3bから活性汚泥分離槽4への処理水導入工程が終了すると、引き続いて、流入工程及び生物処理工程が開始される。また、第1の回分式処理槽3aにおける沈降工程及び排出工程が終了した後に、第2の回分式処理槽3bにおける沈降工程及び排出工程が開始されると共に、活性汚泥分離槽4への処理水導入工程が開始される。
このような第1の回分式処理槽3a、第2の回分式処理槽3b及び活性汚泥分離槽4における工程サイクルが繰り返される。
【0050】
第1実施形態の排水回収システム1によれば、例えば以下の効果が奏される。
第1実施形態の排水回収システム1は、排水W1を回分式処理槽3へ流入させる流入工程、排水W1中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程、微生物汚泥を沈降させる沈降工程、及び、一次処理水W2を回分式処理槽3から排出させる排出工程を繰り返して行う回分式処理槽3と、回分式処理槽3の前段に設けられ、回分式処理槽3へ供給される排水W1が貯留される排水貯留槽2と、回分式処理槽3から取水される活性汚泥W4を含む一次処理水W2が貯留され、一次処理水W2から活性汚泥W4を分離する活性汚泥分離槽4と、排水貯留槽2に貯留される排水W1を回分式処理槽3へ供給する排水供給手段(排水ポンプP1、排水ラインL2、排水バルブV1a、V1b)と、回分式処理槽3から取水される一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入させる処理水導入工程を実行する処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、一次処理水ラインL3、処理水バルブV2a、V2b)と、活性汚泥分離槽4で分離された活性汚泥W4を排水貯留槽2に返送する汚泥返送手段(返送ポンプP3、返送ラインL5、返送バルブV3)と、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間が経過した後、一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入させるように処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する制御部90と、を備える。
【0051】
そのため、活性汚泥分離槽4で分離された活性汚泥W4は、回分式処理槽3には返送されず、排水貯留槽2に返送される。また、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後、一次処理水W2は、活性汚泥分離槽4へ導入される。従って、第1実施形態の排水回収システム1によれば、回分式処理槽3内での不必要な撹拌を抑制すると共に、回分式処理槽3での生物処理が不十分な排水が取水される(活性汚泥分離槽4へ導入される)ことを抑制することができる。
【0052】
また、回分式処理槽3a,3bは、複数設けられ、排水供給手段(排水ポンプP1、排水ラインL2、排水バルブV1a、V1b)は、排水W1を複数の回分式処理槽3a,3bへ選択的に供給する。そのため、複数の回分式処理槽3a,3bを効率的に使用して、排水回収システム1の全体の処理効率を向上させることができる。
【0053】
また、制御部90は、複数の回分式処理槽3a,3bにおいて処理水導入工程の実行期間が重なることなく、処理水導入工程を実行するように処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する。そのため、活性汚泥分離槽4を連続的に稼動させることができ、活性汚泥分離槽4における攪拌を抑制しつつ、活性汚泥分離槽4の処理効率を向上させる(例えば24時間連続運転を行う)ことができる。
【0054】
また、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程の終了後に、処理水導入工程を実行するように処理水導入手段(処理水ポンプP2a、P2b、処理水バルブV2a、V2b)を制御する。そのため、生物処理が完了した十分に処理された一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入することができる。
【0055】
第1実施形態の排水回収システム1は、膜による高次処理(二次処理以上)、例えばRO膜モジュール5による三次処理の前処理設備として、用いられる。このような膜による高次処理においては、第1実施形態の排水回収システム1によって、一次処理水W2を活性汚泥分離槽4へ導入するタイミングを適切に管理して、一次処理水W2への活性汚泥の混入を抑制することは非常に有益である。
【0056】
第1実施形態は、回分式処理槽3の容量が比較的小さい場合に好ましく適用される。回分式処理槽3の容量が小さい場合、流入工程と処理水導入工程とが同時に実行されると、回分式処理槽3での生物処理が不十分な排水が取水される(活性汚泥分離槽4へ導入される)可能性が高いからである。
【0057】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。第2実施形態では、主に第1実施形態との相違点について説明する。そのため、第1実施形態と同一(又は同等)の構成については、詳細な説明を省略する。また、第2実施形態において特に説明しない点については、第1実施形態の説明が適宜に適用される。
【0058】
第2実施形態は、第1実施形態と比べて、制御部90による処理水導入工程の制御、すなわち、活性汚泥分離槽4における処理水導入工程が実行されるタイミングが異なる。その他は、第1実施形態と同様である。従って、第2実施形態については工程のみを説明する。
【0059】
第2実施形態においては、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後で且つ沈降工程の開始前に、処理水導入工程を実行する。具体的には、図3に示すように、第2実施形態における第1の回分式処理槽3a及び第2の回分式処理槽3bの処理サイクルは、第1実施形態と同じである。一方、活性汚泥分離槽4において、処理水導入工程は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後で且つ沈降工程の開始前に、実行される。
【0060】
第2実施形態の排水回収システムによれば、第1実施形態と同様の効果が奏されると共に、例えば以下の効果が奏される。
第2実施形態の排水回収システムにおいては、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後で且つ沈降工程の開始前に(待機期間Tが経過した後で且つ沈降工程の開始前までの間に)、処理水導入工程を実行する。
【0061】
第2実施形態は、回分式処理槽の容量が大きく、汚泥の沈降性が高い場合に好ましく適用される。汚泥の沈降性が高い場合、沈降工程及び排出工程において汚泥を含む一次処理水を取水すると、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)濃度(汚泥混合液中の浮遊物質の濃度)が高濃度の汚泥を含む一次処理水を取水する可能性がある。MLSS濃度が高過ぎると、活性汚泥分離槽4の膜槽で汚泥が過濃縮し、膜詰りの原因となる。これに対して、第2実施形態においては、MLSS濃度が均一になっている生物処理工程中の汚泥を含む一次処理水を取水することで、高濃度の汚泥を取水することを抑制している。また、仮に生物処理工程の開始直後の汚泥を含む一次処理水を取水すると、生物処理が不十分な排水が取水される(活性汚泥分離槽4へ導入される)可能性があるため、生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後、取水を行う。
【0062】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、本発明の第3実施形態の排水回収システムを示すフロー図である。図5は、本発明の第3実施形態の排水回収システムの処理制御タイムチャートである。第3実施形態では、主に第2実施形態(及び第1実施形態)との相違点について説明する。そのため、第2実施形態と同一(又は同等)の構成については、詳細な説明を省略する。また、第3実施形態において特に説明しない点については、第2実施形態の説明が適宜に適用される。
【0063】
第3実施形態は、第2実施形態と比べて、回分式処理槽3が1つである点、及び、制御部90による処理水導入工程の制御(すなわち、活性汚泥分離槽4における処理水導入工程が実行されるタイミング)が異なる。その他は、第2実施形態と同様である。
【0064】
図4に示すように、第3実施形態の排水回収システム1Bは、第2実施形態(及び第1実施形態)とは異なり、回分式処理槽3が1つである。そのため、回分式処理槽3が2つ設けられていることに関連する各種構成を備えていない。その他の構成は第2実施形態(及び第1実施形態)と同じであるため、説明を省略する。
【0065】
第3実施形態においては、制御部90は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後で且つ流入工程の開始前に(待機期間Tが経過した後で且つ流入工程の開始前までの間に)、処理水導入工程を実行する。具体的には、図5に示すように、第3実施形態における回分式処理槽3の処理サイクルは、第2実施形態と同じである。一方、活性汚泥分離槽4において、処理水導入工程は、回分式処理槽3において生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後で且つ流入工程の開始前に、実行される。
【0066】
第3実施形態の排水回収システム1Bによれば、生物処理工程が開始されてから所定の待機期間Tが経過した後、処理水導入工程を行っている。そのため、生物処理工程の開始直後の汚泥を含む一次処理水を取水することで、生物処理が不十分な排水が取水されることを抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。例えば、回分式処理槽3は、3つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 排水回収システム
2 排水貯留槽
3,3a,3b 回分式処理槽
4 活性汚泥分離槽
90 制御部
L2 排水ライン(排水供給手段)
L3 一次処理水ライン(処理水導入手段)
L5 返送ライン(汚泥返送手段)
P1 排水ポンプ(排水供給手段)
P2a、P2b 処理水ポンプ(処理水導入手段)
P3 返送ポンプ(汚泥返送手段)
V1a,V1b 排水バルブ(排水供給手段)
V2a,V2b 処理水バルブ(処理水導入手段)
V3 返送バルブ(汚泥返送手段)
W1 排水
W2 一次処理水
W4 活性汚泥
図1
図2
図3
図4
図5