(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象室内空間の室内温度制御用の室内設定温度を設定操作に基づき設定するための設定部と、前記対象室内空間の室内温度を検出するための室内温度検出部と、前記対象室内空間を対象に空調作動される空調作動部と、前記空調作動部を前記室内設定温度に基づき制御することにより前記対象室内空間の室内温度を制御するための室内温度制御部と、前記室内温度制御部による制御を開始させる指令を入力するための入力部とを備えた空調装置であって、
前記室内温度制御部は、前記設定部により前記室内設定温度が設定操作されたときに検出される室内温度と、前記入力部により前記指令が入力されたときに検出される室内温度との対比に基づき、前記設定操作された室内設定温度を補正することにより、前記室内温度を制御するように構成されている、
ことを特徴とする空調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空調装置の制御のために目標となる設定温度は、ユーザー自身が事前に設定することができるものの、実際にその空調対象の室内空間を利用するタイミングは設定温度の設定時とは異なることが多い。このため、気温、天候あるいは季節等の環境の違いにより設定時とは異なる設定温度に設定し直す必要が生じることがある。設定をし直したとしても、気温や天候の急変により再度の設定し直しを余儀なくされることも考えられ、ユーザーにとっては設定のための操作をその都度行わなければならず、煩わしさを与えるという不都合が考えられる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、対象室内空間を使用するユーザーにとって、そのときどきの気温・天候等の環境に応じて快適な室内環境を実現し得る空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、対象室内空間の室内温度制御用の室内設定温度を設定操作に基づき設定するための設定部と、前記対象室内空間の室内温度を検出するための室内温度検出部と、前記対象室内空間を対象に空調作動される空調作動部と、前記空調作動部を前記室内設定温度に基づき制御することにより前記対象室内空間の室内温度を制御するための室内温度制御部と、前記室内温度制御部による制御を開始させる指令を入力するための入力部とを備えた空調装置を対象にして、次の技術的手段を講じた。
【0010】
すなわち、前記室内温度制御部として、前記設定部により前記室内設定温度が設定操作されたときに検出される室内温度と、前記入力部により前記指令が入力されたときに検出される室内温度との対比に基づき、前記設定操作された室内設定温度を補正することにより、前記室内温度を制御する構成とした(請求項1)。
【0011】
この発明の場合、ユーザーが前回設定した室内設定温度は、その時点の気温や天候等により影響を受けた室内環境等を前提にして快適に過ごせるであろうものと推測して設定した温度値であり、今回、制御開始の指令を入力した時点の室内温度が設定時点のそれと異なっていれば、それに応じて前回設定した室内設定温度を補正することにより、ユーザーが室内設定温度の設定時点に期待したであろう快適さと同様のものを実現させ得ることになる。
【0012】
本発明の空調装置における室内温度制御部として、前記指令が入力されたときに検出される検出室内温度が、前記設定操作されたときに検出される検出室内温度よりも低いとき、前記設定操作された室内設定温度を高温側に補正する構成とすることができる(請求項2)。今回、制御開始の指令を入力した時点の室内温度が設定時点のそれよりも低温であれば、前回設定した室内設定温度を高温側に補正することで、ユーザーが室内設定温度の設定時点に期待したであろう快適さと同様のものを確実に実現させ得ることになる。
【0013】
本発明の空調装置において、対象室内空間に入室した入室者の表面温度を検出することによりその入室者が感じている温冷感を判定処理するための温冷感判定処理部と、温冷感判定処理部により判定された入室者の温冷感に基づいて、前記設定操作された室内設定温度又は前記補正された後の室内設定温度を補正するための温感制御部とを備える構成とすることができる(請求項3)。対象室内空間に入室したときに入室者は暑いか寒いかについての温冷感を最初に感じることになるため、入室したときの入室者の表面温度に基づいて温冷感の判定を行うようにすることにより、入室者の温冷感を的確に判定し得ることになる。そして、的確な温冷感の判定結果に基づいて温感制御部により室内設定温度を補正することで、対象室内空間の室内温度が補正され、これにより、その入室者にとって快適な室内環境をより確実に実現可能となる。ここで、温感制御部による補正対象の室内設定温度としては、室内温度制御部による補正がなされていない場合には、以前に設定部により設定されている室内設定温度である一方、室内温度制御部による補正がなされている場合には、その補正後の室内設定温度となる。
【0014】
この場合、対象室内空間に入室した入室者の表面温度を検出するための熱画像撮像カメラを、対象室内空間内に設置された空調作動部又はリモコンに設けるようにすることができる(請求項4)。このようにすることにより、入室者の温冷感を検出するための熱画像撮像カメラを対象室内空間に設置することが容易に可能となる。
【0015】
本発明の空調装置において、対象室内空間が浴室の室内空間であり、空調作動部が浴室の室内空間を対象にして空調作動されるように構成された浴室暖房端末を備えるようにすることができる(請求項5)。これにより、本発明を浴室暖房装置に適用可能となる。
【0016】
本発明の空調装置において、対象室内空間が居室の室内空間であり、空調作動部が居室の床部に設置されて居室の室内空間を対象にして放熱により空調作動されるように構成された床暖房端末を備えるようにすることができる(請求項6)。これにより、本発明を床暖房装置に適用可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明の空調装置によれば、ユーザーが前回設定した室内設定温度は、その時点の気温や天候等により影響を受けた室内環境等を前提にして快適に過ごせるであろうものと推測して設定した温度値であり、今回、制御開始の指令を入力した時点の室内温度が設定時点のそれと異なっていれば、それに応じて前回設定した室内設定温度を補正することにより、ユーザーが室内設定温度の設定時点に期待したであろう快適さと同様のものを実現させることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の空調装置を浴室暖房装置に適用した第1実施形態の場合の浴室2を示す。図示省略の開閉扉により出入り可能とされた浴室2には、床面21に浴槽3が設置され、壁面22に浴室リモコン41が設置され、天井壁23には空調作動部としての浴室暖房端末51が設置されている。浴室暖房端末51は、往き配管52a及び戻り配管52bからなる循環配管52を介して、熱源機5と接続されている。熱源機5の側で加熱された熱媒体(例えば温水)が、循環配管52を通して、浴室暖房端末51と熱源機5との間で循環供給され、この熱媒体を熱源として浴室暖房端末51は浴室2の室内空間を暖房し得るようになっている。浴室暖房装置(空調装置)は、熱源機5及び空調作動部としての浴室暖房端末51により構成されている。なお、同図中の符号42は、台所リモコンである。
【0021】
浴室暖房装置は、空調の対象室内空間である浴室2の室内空間に対し、暖房運転、乾燥運転、涼風運転及び換気運転を行うことができるようになっている。各運転における浴室暖房端末51の作動原理について、
図2、
図3を参照しつつ説明する。浴室暖房端末51は、暖房運転の例を
図2に示すように、熱源機5から循環配管52の往き配管52aを通して循環供給される高温水が放熱器511を通過する間にファン512を作動させることにより、浴室2内から取り込んだ空気を放熱器511で加温させ、吹き出し口513から浴室2内に温風として吹き出させる。これにより、浴室2内の環境温度である浴室温度(周囲温度)を昇温させることができる。そして、放熱器511を通過することで温度が降下した低温水は、戻り配管52bを通して熱源機5に戻された後、熱源機5で再び加熱されて昇温した高温水が放熱器511に循環供給される。又、乾燥運転では、放熱器511への高温水の循環供給及びファン512の作動による浴室内空気循環に加えて、換気ファン514を作動させて浴室2内の空気を外部に排気させる。
【0022】
一方、涼風運転の例を
図3に示すように、放熱器511に対する高温水の循環供給を停止させた状態で、ファン512及び換気ファン514を作動させることで、浴室2内の空気を循環させると同時に、浴室2内の空気を外部に放出して換気し、これにより、吹き出し口513から涼風を吹き出させて浴室2内の温度及び湿度を低下させることができる。又、換気運転では、放熱器511に対する高温水の循環供給とファン512の作動とを共に停止させた上で、換気ファン514のみを作動させることで、浴室2内の空気を排気させることができる。以上の如く、浴室暖房装置は、暖房、乾燥、涼風及び換気の各運転によって、浴室2内の浴室温度を制御することができる。
【0023】
ここで、熱源機5としては、例えば温水循環供給式の暖房機能を備えたものであれば用いることができ、又、暖房機能に加えて給湯機能、注湯機能、あるいは、追い焚き機能等を併有した複合型の熱源機を用いることができる。さらに、外部熱源(例えば燃料電池、ヒートポンプ又は太陽熱)により加熱された湯を貯湯し、この貯湯を直接又は間接に熱源として用いるように構成された熱源機を、第1実施形態の熱源機5として用いることができる。
【0024】
熱源機5の作動を制御するためのコントローラ4は、浴室リモコン41や他のリモコン(例えば、台所リモコン42)からユーザー等による入力設定操作に基づき各種操作指令を受けて前記の浴室暖房端末51等の運転を制御するものであり、マイクロコンピュータやメモリ等を含んで構成されたものである。入力部又は設定部を構成する各リモコン41,42はコントローラ4と双方向通信可能に接続されている。そして、いずれかのリモコン41,42のふろ自動スイッチがユーザーによりON操作されると、浴槽3への注湯,追い焚き,保温等のふろ自動制御部44(
図4参照)による制御が開始され、同様に、いずれかのリモコン41,42の浴室暖房スイッチがユーザーによりON操作されると、コントローラ4の浴室温度制御部45による制御が開始されることになる。
【0025】
又、浴室暖房端末51には熱画像撮像カメラ(赤外線サーモグラフィー)430が設けられ、この熱画像撮像カメラ430により浴室2内の所定視野角範囲を熱分布画像として可視化した熱画像にしてコントローラ4の温冷感判定処理部43(
図4参照)に出力し、この温冷感判定処理部43による判定結果の出力を受けて温感制御部46による温感制御が実行されるようになっている。浴室温度制御部45や温感制御部46は、加熱用作動部50や浴室暖房端末作動部(図示省略)を作動制御することで、浴室温度制御や温感制御を実行する。ここで、加熱用作動部50としては、例えば燃焼バーナに対する燃料供給系の開閉弁や着火部等が該当し、浴室暖房端末作動部としては、例えば循環配管52に高温水を循環供給するための循環ポンプや切換制御弁、及び、浴室暖房端末51のファン等が該当する。
【0026】
以下、第1実施形態において特徴的な浴室温度制御部45による浴室温度制御や、温感制御部46による温感制御について詳細に説明する。この浴室温度制御部45が特許請求の範囲の室内温度制御部を構成する。
【0027】
まず、温感制御で用いる温冷感判定処理部43(
図5参照)について説明すると、赤外線サーモグラフィーにより構成された熱画像撮像カメラ430から出力された熱画像に基づいて、画像識別処理部431により画像識別処理を行う。画像識別処理に際しては、熱画像に対し可視画像の輪郭を合成することができる。画像識別は、少なくとも人体領域と、人体以外の領域との画像領域の識別を行う。人体領域(
図6の熱画像例6を参照)は皮膚が露出した状態の全身画像領域として認識可能であり、静止状態の浴室2内の空間領域61を監視し、この空間領域61に対し開閉扉24からユーザーが入室すれば人体領域62が移動することにより人認識可能となる。この人認識によりユーザーが浴室2内に入室したことの検知(人検知)が行われ、人検知出力が可能となる。
【0028】
次に、識別した人体領域62の表面温度を表面温度検出部432により検出し、人体以外の領域から浴室2内の周囲温度を周囲温度検出部433により検出する。ここで、周囲温度検出部433により検出される周囲温度は、浴室2内の浴室温度(室内温度)に相当する。これにより、浴室2内の温度を検出するための温度センサを別途設置することなく、周囲温度を検出して出力することが可能となる。表面温度は人体領域62の例えば平均値を用いることができる。又、周囲温度は、浴槽3に周囲温度よりも高温の湯が既に湯張りされている状態であるため、この浴槽3の領域を除外した空間領域61から検出される温度の例えば平均値を用いることができる。
【0029】
得られた入室者の表面温度と、周囲温度とに基づいて入室者の放熱量を放熱量演算部434により演算し、演算された放熱量から入室者がその時点で感じている温冷感、すなわち暑いと感じているか、逆に寒い(涼しい,冷ややか)と感じているかの温冷感を温冷感判定部435により判定し、その温冷感判定結果を温感制御部46に出力する。放熱量の演算は、例えば、人体温度と浴室温度との温度差に、人体の表面積、及び、人体から空間領域への熱伝達率をそれぞれ乗じることで得ることができる。又、放熱量から温冷感の推測・判定は、予め定めた放熱量−温冷感の関係に基づいて行うことができる。放熱量−温冷感関係テーブル436にはそのような関係(例えば関係式や関係グラフ)が予め記憶設定されており、演算された放熱量に基づいて入室者のその時点での温冷感を割り出すことになる。
【0030】
図7は放熱量−温冷感関係テーブル436に記憶設定された関係の例を示すものである。この関係に従えば、演算された放熱量が第1基準値R1を超えれば、入室者は寒いと感じていると判定する一方、演算された放熱量が第2基準値R2を下回れば、入室者は暑いと感じていると判定することができる。そして、演算された放熱量が第1基準値R1〜第2基準値R2の範囲内であれば、入室者は快適と感じていると判定することができる。なお、放熱量−温冷感の関係としては、
図7に例示したものに限らず、例えば第1基準値R1と第2基準値R2とを互いに同じ値にして、一つの基準値を境界にして温冷感を判定することができる。
【0031】
次に、
図8〜
図10のフローチャートを参照しつつ浴室温度制御や温感制御について具体的に説明する。
図8は、ユーザーがリモコン41,42を用いて浴室設定温度(室内設定温度)の入力設定操作を行った場合の浴室設定温度受付処理について示している。設定部としてのリモコン41,42から浴室設定温度の設定操作に係る操作信号が出力されると(ステップS1でYES)、入力された浴室設定温度Tyを所定の記憶領域に記憶し、併せて、その設定時点に前記周囲温度検出部433により検出された周囲温度Rtyを所定の記憶領域に記憶する(ステップS2)。
【0032】
図9は、浴室使用前の浴室温度制御について示している。ここで浴室使用前とは浴室2への入室前のことであり、ユーザーのふろ使用開始意思の検知により浴室温度制御を開始する。すなわち、ふろ使用開始意思としてユーザーにより入力部としてのリモコン41,42のふろ自動スイッチがON操作されてその操作信号が検知されれば(ステップS11でYES)、制御を開始して、周囲温度検出部433によりその時点の周囲温度Ronを検出して記憶する(ステップS12)。そして、この周囲温度Ronと、浴室設定温度の設定時点の周囲温度Rtyとを対比し(ステップS13)、両時点の周囲温度Rty,Ronが同じ(実質的同一;例えばプラス・マイナス1℃であれば実質的同一)であれば、ステップS14を飛ばしてステップS15に進む一方、両時点の周囲温度Rty,Ronが互いに異なる場合にはステップS14の浴室設定温度の調整を行う。これは、ユーザーが前回設定した浴室設定温度は、その時点の気温や天候等により影響を受けた浴室環境等を前提にして浴室2内で快適に行動できるであろうものと推測して選択設定した温度値であり、今回、浴室使用を決めた時点の浴室環境等が設定時点のそれと異なっていれば、ユーザーが浴室設定温度の設定時点に期待したであろう快適さを実現し得るように、既設定の浴室設定温度に調整を加えるようにするものである。
【0033】
すなわち、両時点の浴室温度Rty,Ronの温度差Dt(Dt=Rty−Ron)の大小の程度やプラス・マイナスに応じて既設定の浴室設定温度に調整を自動的に加える。Dtがマイナス側(RonがRtyよりも高温側)であれば、その大きさに応じて浴室設定温度Tyを所定量低温側に補正する。逆に、Dtがプラス側(RonがRtyよりも低温側)であれば、その大きさに応じて浴室設定温度Tyを所定量高温側に補正する。
【0034】
例えば、設定時点の周囲温度Rtyが10℃であり、その時点で設定された浴室設定温度Tyが25℃であった場合において、ふろ使用開始時点の周囲温度Ronが例えば5℃(RonがRtyよりも−5℃;Dt=+5)であれば、元の浴室設定温度Tyに5℃加算してTyを30℃に補正し、ふろ使用開始時点の周囲温度Ronが例えば0℃(RonがRtyよりも−10℃;Dt=+10)であれば、元の浴室設定温度Tyに10℃加算してTyを35℃に補正する。逆に、ふろ使用開始時点の周囲温度Ronが例えば15℃(RonがRtyよりも+5℃;Dt=−5)であれば、元の浴室設定温度Tyから5℃減算してTyを20℃に補正し、ふろ使用開始時点の周囲温度Ronが例えば20℃(RonがRtyよりも+10℃;Dt=−10)であれば、元の浴室設定温度Tyから10℃減算してTyを15℃に補正する。
【0035】
温度差Dtの大小程度の区分け単位はプラス・マイナス5℃又は10℃などよりもさらに小さくすることができ、浴室設定温度Tyの補正量の単位もプラスマイナス5℃又は10℃よりもさらに小さくすることができる。あるいは、段階的な補正ではなくて、温度差Dtの大きさに応じて補正量を線形に増・減させるようにすることができる。
【0036】
そして、既設定又は補正後の浴室設定温度Tyに基づいて、浴室温度制御(暖房運転制御、換気運転制御又は涼風運転制御)を開始する(ステップS15)。浴室設定温度Tyがその時点の周囲温度Ronよりも低ければ、暖房運転制御部45aによる暖房運転制御を行い、浴室設定温度Tyがその時点の周囲温度Ronよりも高ければ、換気運転制御部45bによる換気運転制御及び/又は涼風運転制御部45cによる涼風運転制御を行う。この結果、季節やふろ使用時点の天候具合等の違いによってふろ使用開始の操作時点の浴室温度(周囲温度)が浴室設定温度の設定時点の浴室温度(周囲温度)と異なっていたとしても、浴室設定温度の設定時点と同様の浴室環境を前提とするユーザー好みの浴室温度を目標にして浴室2内の浴室温度制御を実行させることができるようになる。以上の
図9に示す制御が、特許請求の範囲における、設定部により室内設定温度が設定操作されたときに検出される室内温度と、入力部により指令が入力されたときに検出される室内温度との対比に基づき、設定操作された室内設定温度を補正することにより、室内温度を制御する構成、を構成する。
【0037】
図10は、浴室使用中の温感制御について示している。温冷感判定処理部43からの人検知出力に基づいて浴室2内にユーザーが入室したと判定されると(ステップS21でYES)、続いて温冷感判定処理部43での温冷感判定処理を実行させる(ステップS22)。温冷感判定の出力結果が「入室者は暑いと感じている」というものであれば(ステップS23で「暑い」)、その「暑い」の軽・重度合が軽ければ換気運転を、重ければ涼風運転を行う(ステップS24)。換気運転か、又は、涼風運転かを選択する場合、その継続運転時間を、「暑い」の軽・重度合に応じて複数段階に増大補正したり、あるいは、軽重度合に比例して線形に増大させたり、することができる。
【0038】
これにより、浴室2内の浴室温度を低温側に変更することができ、暑いと感じている入室者にとって少しでも快適に浴室2内で行動したり入浴したりすることができるようになる。しかも、入室者が暑いと感じている程度がより大(演算された放熱量が第2基準値R2から大きく下回る)であれば、涼風運転の継続時間をより長くすることにより、浴室温度をより積極的に低温側に変化させることができ、入室者の快適性をより向上させることができる。
【0039】
逆に、温冷感判定の出力結果が「入室者は寒いと感じている」というものであれば(ステップS23で「寒い」)、その「寒い」の軽・重度合に応じて浴室設定温度を割り増しする(ステップS25)。すなわち、割り増した浴室設定温度を目標にして暖房運転を行う。これにより、浴室2内の温度をより高温側に変更することができ、寒いと感じている入室者にとって少しでも快適に入浴し得るようにすることができるようになる。前記の浴室設定温度の割り増しとして、「寒い」の軽・重度合に応じて複数段階に増大補正したり、軽重度合に比例して線形に増大補正したり、することができる。例えば、演算された放熱量の第1基準値R1よりも上回る量が大きい程、増大補正量を大きくする。
【0040】
又、ステップS23の判定で、「入室者は暑くも寒くも感じていない」というものであれば(ステップS23で「暑くも寒くもない」)、温感制御による対応制御としては何も行わずに他の制御を続ける。
以上の温感制御部57による温感制御の場合、浴室2への入室者個人個人にとって快適な浴室内行動を実現させることができるようになる。
【0041】
<第2実施形態>
図11は、本発明の空調装置を床暖房装置に適用した第2実施形態の場合の床暖房付きの居室7を示す。居室7の床面71には空調作動部としての床暖房端末53が設置され、壁面72には暖房用の暖房リモコン47が設置されている。床暖房端末53は、往き配管54a及び戻り配管54bからなる循環配管54を介して、熱源機5と接続されている。熱源機5の側で加熱された熱媒体(例えば温水)が、循環配管54を通して、床暖房端末53と熱源機5との間で循環供給され、この熱媒体を熱源として床暖房端末53は居室7の室内空間を暖房し得るようになっている。すなわち、床暖房端末53は、例えば、床パネルの下に熱媒体が通る配管を折り返し屈曲させて埋め込み、この配管から床パネルを介して居室7の空間に熱伝導させることで居室7の空間を加温し得るようにしたものである。かかる床暖房端末53と熱源機5とにより床暖房装置(空調装置)が構成され、この床暖房装置は、空調する対象室内空間である居室7の室内空間に対し、暖房運転により室内温度を制御し得るようになっている。
【0042】
ここで、熱源機5としては、第1実施形態と同様に、温水循環供給式の暖房機能を備えたものであれば用いることができ、又、暖房機能に加えて給湯機能、注湯機能、あるいは、追い焚き機能等を併有した複合型の熱源機を用いることができる。さらに、外部熱源(例えば燃料電池、ヒートポンプ又は太陽熱)により加熱された湯を貯湯し、この貯湯を直接又は間接に熱源として用いるように構成された熱源機を、第2実施形態の熱源機5として用いることができる。
【0043】
熱源機5の作動を制御するためのコントローラ4は、暖房リモコン47や他のリモコン(例えば、台所リモコン42)からユーザー等による入力設定操作に基づき各種操作指令を受けて前記の床暖房端末53等の運転を制御するものであり、マイクロコンピュータやメモリ等を含んで構成されたものである。入力部又は設定部を構成する各リモコン47,42はコントローラ4と双方向通信可能に接続されている。そして、いずれかのリモコン47,42の床暖房スイッチがユーザーによりON操作されると、床暖房端末53へ所定温度の熱媒体を循環供給させて居室7の温度を制御するための、居室温度制御部48による室内温度制御が開始されることになる。又、暖房リモコン47には熱画像撮像カメラ(赤外線サーモグラフィー)430が設けられ、この熱画像撮像カメラ430により居室7内の所定視野角範囲を熱分布画像として可視化した熱画像にしてコントローラ4の温冷感判定処理部43(
図12参照)に出力し、この温冷感判定処理部43による判定結果の出力を受けて温感制御部46による温感制御が実行されるようになっている。
【0044】
以下、第2実施形態の特徴的な居室温度制御部48による居室温度制御や、温感制御部46による温感制御について詳細に説明する。温感制御部46自体の構成は第1実施形態で説明した通りである。又、居室温度制御部48が特許請求の範囲の室内温度制御部を構成する。
【0045】
又、温感制御で用いる温冷感判定処理部43も第1実施形態で説明したものと基本的に同じである。対象空間が居室7の場合には、画像識別処理部431による画像識別処理に際しては、人体領域(
図13の熱画像例8を参照)は頭部等の皮膚が露出した領域と、衣服を着用した領域とに分けて認識可能であり、静止状態の居室7内の空間領域81を監視し、この空間領域81に対しユーザーが入室すれば人体領域82が移動することにより人認識可能となる。この人認識によりユーザーが居室7内に入室したことの検知(人検知出力)が可能となる。
【0046】
そして、識別した人体領域82の表面温度を表面温度検出部432により検出し、人体以外の領域から居室7内の周囲温度を周囲温度検出部433により検出する。ここで、周囲温度検出部433により検出される周囲温度は、居室7内の室内温度に相当する。これにより、居室7の室内温度を検出するための温度センサを別途設置することなく、周囲温度を検出して出力することが可能となる。表面温度としては人体領域82の例えば頭部82aの温度を用いることができる。又、周囲温度としては、床暖房端末53に対し周囲よりも高温の熱媒体が既に供給されている状態であるため、空間領域81の内から床暖房端末53に相当する領域を除外した領域から検出される温度の例えば平均値を用いることができる。
【0047】
次に、
図14〜
図16のフローチャートを参照しつつ居室温度制御や温感制御について具体的に説明する。
図14は、ユーザーがリモコン47,42を用いて室内設定温度(居室7の室内温度についての目標温度)の入力設定操作を行った場合の室内設定温度受付処理について示している。設定部としてのリモコン47,42から室内設定温度の設定操作に係る操作信号が出力されると(ステップS41でYES)、入力された室内設定温度Tfを所定の記憶領域に記憶し、併せて、その設定時点に前記周囲温度検出部433により検出された周囲温度Ftfを所定の記憶領域に記憶する(ステップS42)。
【0048】
図15は、居室使用前の居室温度制御について示している。ここで居室使用前とは居室7への入室前のことであり、ユーザーの居室使用開始意思の検知により居室温度制御を開始する。すなわち、居室使用開始意思としてユーザーにより入力部としてのリモコン47,42の床暖房スイッチがON操作されてその操作信号が検知されれば(ステップS51でYES)、制御を開始して、周囲温度検出部433によりその時点の周囲温度Fonを検出して記憶する(ステップS52)。
【0049】
そして、この周囲温度Fonと、室内設定温度の設定時点の周囲温度Ftfとを対比し(ステップS53)、両時点の周囲温度Ftf,Fonが同じ(実質的同一;例えばプラス・マイナス1℃であれば実質的同一)であれば、ステップS54を飛ばしてステップS55に進む一方、両時点の周囲温度Ftf,Fonが互いに異なる場合にはステップS54の室内設定温度の調整を行う。これは、ユーザーが前回設定した室内設定温度は、その時点の気温や天候等により影響を受けた室内環境等を前提にして居室7内で快適に過ごせるであろうものと推測して選択設定した温度値であり、今回、居室使用を決めた時点の室内環境等が設定時点のそれと異なっていれば、ユーザーが室内設定温度の設定時点に期待したであろう快適さを実現し得るように、既設定の室内設定温度に調整を加えるようにするものである。
【0050】
すなわち、両時点の周囲温度Ftf,Fonの温度差Dt(Dt=Ftf−Fon)の大小の程度やプラス・マイナスに応じて既設定の室内設定温度に調整を自動的に加える。Dtがマイナス側(FonがFtfよりも高温側)であれば、その大きさに応じて室内設定温度Tfを所定量低温側に補正する。逆に、Dtがプラス側(FonがFtfよりも低温側)であれば、その大きさに応じて室内設定温度Tfを所定量高温側に補正する。
【0051】
例えば、設定時点の周囲温度Ftfが15℃であり、その時点で設定された室内設定温度Tfが20℃であった場合において、居室使用開始時点の周囲温度Fonが例えば10℃(FonがFtfよりも−5℃;Dt=+5)であれば、元の室内設定温度Tfに1℃加算してTfを21℃に補正し、居室使用開始時点の周囲温度Fonが例えば5℃(FonがFtfよりも−10℃;Dt=+10)であれば、元の室内設定温度Tfに2℃加算してTfを22℃に補正する。逆に、居室使用開始時点の周囲温度Fonが例えば20℃(FonがFtfよりも+5℃;Dt=−5)であれば、元の室内設定温度Tfから1℃減算してTfを19℃に補正し、居室使用開始時点の周囲温度Fonが例えば25℃(FonがFtfよりも+10℃;Dt=−10)であれば、元の室内設定温度Tfから2℃減算してTfを18℃に補正する。
【0052】
温度差Dtの大小程度の区分け単位はプラス・マイナス5℃又は10℃などよりもさらに小さくすることができ、浴室設定温度Tfの補正量の単位もプラスマイナス1℃又は2℃よりもさらに小さくすることができる。あるいは、段階的な補正ではなくて、温度差Dtの大きさに応じて補正量を線形に増・減させるようにすることができる。
【0053】
そして、既設定又は補正後の室内設定温度Tfに基づいて、居室温度制御を開始する(ステップS55)。居室温度制御部48による居室温度制御としては、例えば、所定温度の温水を床暖房端末53に供給して居室7内で放熱させ、これを周囲温度が室内設定温度Tfに到達するまで継続させる。この際、居室使用開始時の周囲温度Fonと、室内設定温度Tfとの偏差の大小に応じて、循環させる温水量を増減調整したり、循環作動を間欠的にON−OFF切換したりすることができる。この結果、季節や居室使用時点の天候具合等の違いによって居室使用開始の操作時点の居室7の周囲温度が室内設定温度の設定時点の周囲温度と異なっていたとしても、室内設定温度の設定時点と同様の居室環境を前提とするユーザー好みの室内温度を目標にして居室7内の居室温度制御を実行させることができるようになる。以上の
図15に示す制御が、特許請求の範囲における、設定部により室内設定温度が設定操作されたときに検出される室内温度と、入力部により指令が入力されたときに検出される室内温度との対比に基づき、設定操作された室内設定温度を補正することにより、室内温度を制御する構成、を構成する。
【0054】
図16は、居室使用中の温感制御について示している。温冷感判定処理部43からの人検知出力に基づいて居室7内にユーザーが入室したと判定されると(ステップS61でYES)、続いて温冷感判定処理部43での温冷感判定処理を実行させる(ステップS62)。温冷感判定の出力結果が「入室者は暑いと感じている」というものであれば(ステップS63で「暑い」)、その「暑い」の軽・重度合に応じて室内設定温度を低めに変更して居室温度制御を続行する(ステップS64)。
【0055】
これにより、居室7内の室内温度を低温側に変更することができ、暑いと感じている入室者にとって少しでも快適に居室7内で過ごすことができるようになる。しかも、入室者が暑いと感じている程度がより大(演算された放熱量が第2基準値R2から大きく下回る)であれば、室内設定温度がより低く変更されるため、入室者の快適性をより向上させることができる。
【0056】
逆に、温冷感判定の出力結果が「入室者は寒いと感じている」というものであれば(ステップS63で「寒い」)、その「寒い」の軽・重度合に応じて室内設定温度を割り増しする(ステップS65)。そして、割り増した室内設定温度を目標にして居室温度制御が続行され、これにより、居室7内の温度をより高温側に変更することができ、寒いと感じている入室者にとって少しでも快適に過ごせるようにすることができる。前記の室内設定温度の割り増しとして、「寒い」の軽・重度合に応じて複数段階に増大補正したり、軽重度合に比例して線形に増大補正したり、することができる。例えば、演算された放熱量の第1基準値R1よりも上回る量が大きい程、増大補正量を大きくする。
【0057】
又、ステップS63の判定で、「入室者は暑くも寒くも感じていない」というものであれば(ステップS63で「暑くも寒くもない」)、温感制御による対応制御としては何も行わずに他の制御を続ける。
以上の温感制御部46による温感制御の場合、居室7への入室者個人個人にとって快適に過ごし得る室内環境を実現させることができるようになる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限らず、他の構成を採用することができる。例えば、第1実施形態で浴室2内の周囲温度の検出のために温度センサ(例えばサーミスタ)を別途設置し、この温度センサにより浴室温度を検出するようにすることができる。あるいは、第2実施形態で居室7の周囲温度の検出のために温度センサ(例えばサーミスタ)を別途設置し、この温度センサにより室内温度を検出するようにすることができる。
【0059】
入室者の温冷感を検出するために、入室者自体の表面温度と周囲温度とから入室者の放熱量を演算により求め、この放熱量に基づいて温冷感を判定するようにしているが、これに限らず、入室者自体の全体又は特定部位の表面温度と周囲温度との対比から入室者の温冷感を判定することができる。
図8のフローチャートにおいて、ユーザーのふろ使用開始意図をふろ自動スイッチのON操作により判定しているが、これに限らず、湯張り運転制御を開始させるための湯張りスイッチのON操作により、あるいは、浴室暖房装置を作動させるための浴室暖房スイッチのON操作により、判定することができる。又、第1実施形態では熱画像撮像カメラ430を浴室暖房端末51に設置しているが、これに限らず、例えば浴室リモコン41に設置することができる。この場合、熱源機5のコントローラ4に通信接続された浴室リモコン41に代えて、浴室暖房端末51に通信接続された他の浴室リモコンに熱画像撮像カメラを設置することができる。
【0060】
又、第1実施形態又は第2実施形態において、入力部としてのリモコン41,42,47に対するスイッチのON操作に基づいて制御を開始させるようにしているが、制御を開始させる指令としては、他の制御に基づいて出力される制御指令によって制御を開始させるようにすることができる。この場合の入力部は、当該制御指令を送出する制御部により構成されることになる。
【0061】
さらに、第1実施形態の構成と、第2実施形態の構成との双方の特徴部分の構成をいずれも備えた暖房装置とし、これを本発明の空調装置とすることができる。