(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド掘削機により地盤を掘削しつつ地下管渠を築造するシールド工法にて、電気、ガス、水道等の管渠埋設施工を伴うインフラ施設の整備が実施されている。シールド掘削機に備えたカッタービットは、地盤の掘進作業が進むにつれて摩耗することから、例えば特許文献1では、摩耗したビットを簡単な作業で何度でも交換可能な、ビット交換型シールド掘削機が開示されている。
【0003】
特許文献1で示すようなシールド掘削機を製造するにあたっては、ビットの種類や個数、配置等の設計が不可欠である。また、掘進作業中に経済的かつ効率よくビット交換を実施するには、ビット交換の作業計画をあらかじめ立案する。そして、これらシールド掘削機の設計やビット交換の作業計画の立案を行うには、シールド掘進に伴うカッタービットのビット摩耗量を事前に推定する必要が生じる。
【0004】
しかし、ビット摩耗量の推定方法はいまだ確立されていないため、施工会社やシールド掘削機製造会社は、独自に過去の施工実績を調査してシールド工法の種類(泥水、泥土圧)や大まかな土質分類(粘性土、砂、砂礫等)ごとに摩耗係数を設定し、この独自に設定した摩耗係数を用いてビット摩耗量を推定している。
【0005】
一方、硬岩地盤を対象地盤としたTBMによるトンネル掘削工事を実施する場合では、例えば特許文献2において、カッタービットの摩耗に影響を与える石英の連結性を示す指標を算出し、これを用いてカッタービットのビット摩耗量を見積るシステムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述するようなシールド掘削機やTBM等に備えたカッタービットのビット摩耗量を推定する方法は、対象地盤が一様な土質よりなる均質な地盤である場合には、信頼性の高い数値を得ることが可能である。しかし、転石や岩盤、砂礫等が混じった複雑な地盤では、ビット摩耗量を推定する際に粒度組成や礫の物性等地盤特性を反映することができず、精度よくビット摩耗量を推定することは難しい。
【0008】
このため、カッタービットの作業計画を立案しても、想定を超えてビットが摩耗する事態が生じやすく、このような場合には掘進速度の低下や掘進不能等のトラブルが発生することにより計画回数を超過するビット交換作業が必要になる等、作業工程の長期化や施工コストの増大などを招くこととなる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、カッタービットを備えた掘削機にて礫混じり地盤を掘削する際に、精度よくカッタービットのビット摩耗量を推定するための、カッタービットの摩耗量推定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明のカッタービットの摩耗量推定方法は、礫混じり地盤を切削するカッタービットの摩耗量推定方法であって、前記カッタービットの単位摺動距離当たりのビット摩耗量を推定するための礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを、前記礫混じり地盤における礫の摩耗能指数に、前記礫混じり地盤中の礫含有率Gおよび前記カッタービットの切羽への平均押付け力Pを掛け合わせて算出し、前記礫の摩耗能指数は、修正摩耗能指数Fmod値のn乗根よりなり、nが1より大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のカッタービットの摩耗量推定方法は、前記カッタービットの単位摺動距離当たりのビット摩耗量を推定するための礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを、前記礫混じり地盤における礫の摩耗能指数に、前記礫混じり地盤中の礫含有率Gおよび前記カッタービットの切羽への平均押付け力Pを掛け合わせて算出し、前記礫の摩耗能指数は、前記礫混じり地盤中の礫の石英含有率Qと礫の強度Sを掛け合わせたもののn乗根よりなり、nが1以上であることを特徴とする。
【0012】
上記のカッタービットの摩耗量推定方法によれば、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mに、礫の摩耗能指数、礫含有率Gおよびカッタービットの切羽への平均押付け力Pを採用することにより、掘削しようとする礫混じり地盤の地盤特性を精度よく反映できる。
【0013】
また、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mが、カッタービットの単位摺動距離(1km)当たりのビット摩耗量を示す指標であるため、掘削機にて所定距離だけ掘削した後のカッタービットのビット摩耗量を推定するにあたっては、掘削機の掘進速度やカッターヘッドの回転速度、掘削機におけるカッタービットの位置等を反映させたカッタービットの摺動距離を用いて、ビット摩耗量を推定すればよい。このように、カッタービットのビット摩耗量の推定に、礫混じり地盤の地盤特性だけでなく、施工条件や掘削機の仕様等をも反映させることができる。
【0014】
したがって、個々に条件が異なるカッタービット各々に対して、定量的で正確なビット摩耗量を推定することが可能となることから、精度の高いビット交換の作業計画を立案できる。これにより、カッタービットの交換計画地点に到達する前に、カッタービットが想定を超えて摩耗し、掘進効率が低下したり掘削機本体を損傷させるといった事態を防止でき、効率よく経済的に地山の掘削作業を進めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、礫混じり地盤であっても、地盤特性を反映した礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを用いて、カッタービットのビット摩耗量を精度よく推定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のカッタービットの摩耗量推定方法を、
図1〜
図6を用いて説明する。本実施の形態では、シールド掘削機を事例にカッタービットの摩耗量推定方法を詳述するが、必ずしもこれに限定されるものではなく、礫混じり地盤を切削する掘削機に備えられたカッタービットであれば、いずれにも適用できることはいうまでもない。
【0018】
図1および
図2で示すように、シールド掘削機1は筒状をなす胴部2の前方にカッターヘッド3が回転自在に支持されており、カッターヘッド3には複数のカッタービット4が溶接により設置されている。なお、カッタービット4はカッターヘッド3に対して、交換可能なように着脱自在に取り付けられていてもよい。そして、
図2で示すように、カッターヘッド3を切羽5に押し当てながら回転させることにより、カッタービット4にて切羽5を切削しつつシールド掘削機1は前進し、その後方には管渠等の埋設物が築造される。
【0019】
なお、カッタービット4は、一般鋼材の母材部分と超硬合金製のチップよりなる先端部分からなり、本実施の形態では、超硬合金製のチップに耐摩耗性と耐衝撃性に優れたE5材を採用している。
【0020】
このようなシールド掘削機1にて地山の掘進を継続すると、切羽5を切削する複数のカッタービット4各々に摩耗を生じるが、そのビット摩耗量wはビット摩耗係数kとビット摺動距離Lから、以下に示す(1)式で算定される。
【0021】
ここで、ビット摺動距離Lは、1体のカッタービット4が切羽5を摺動する距離(km)を示すものである。また、ビット摩耗係数kは、カッタービット4が切羽面を摺動する単位距離(1km)あたりに摩耗する重量(g)を規定したものであり、掘削対象となる地山条件に応じて、その数値は変化する。
【0022】
つまり、対象地盤が転石や岩盤、砂礫等が混じった複雑な礫混じり地盤である場合には、これら礫混じり地盤がカッタービット4の摩耗に影響を与える地盤特性を把握し、これをビット摩耗係数kに反映させることにより、上記(1)式にてカッタービット4個々のビット摩耗量wを推定できる。そして、対象地盤が礫混じり地盤である場合において、礫混じり地盤に含まれる砂や粘土と比較して、礫がカッタービット4の摩耗に大きく影響することが一般に知られている。
【0023】
そこで、礫混じり地盤に含まれる礫に係る種々のパラメータとカッタービット4の摩耗との相関関係について、発明者らは鋭意検討を行った。
【0024】
〈第1の実施の形態〉
その結果、礫含有率Gが一定の地山では、Schimazek&Natsにて提唱され、硬石地盤の摩耗能の指標として知られる岩石の摩耗能指数F値とビット摩耗係数kの実測値に有意な相関が認められ、礫含有率Gが変化する地山では、礫含有率Gとビット摩耗係数kの実測値に有意な相関が認められることを見出した。また、礫含有率Gと岩石の摩耗能指数F値を掛け合わせたものとカッタービット4の摩耗との間に、強い相関関係が認められるとの知見を得るに至った。
【0025】
さらに、礫混じり地盤中の礫に石英が含まれる場合において、石英粒子の量と礫の強度がカッタービット4の摩耗に大きな影響を及ぼすものの、石英は粒子径が小さいためその粒径は、量や礫の強度と比較してカッタービット4の摩耗に及ぼす影響が小さいとの知見も得られた。
【0026】
そこでまず、岩石の摩耗能指数F値について検討を行い、岩石の摩耗能指数F値の修正式としてEwendtが提唱し、石英の粒径による影響を小さく評価した指標として知られている、下記(2)式による修正摩耗能指数Fmod値を、礫の摩耗能指数に採用する。
【0027】
一方で、カッタービット4にて切羽5を切削する際に、地山の状態に応じて切羽5に対するカッターヘッド4の押付け量を変化させることを鑑みれば、カッタービット4の1体あたりの平均押付け力Pは、カッタービット4の摩耗に大きく影響しているものと考えられる。
【0028】
上記の知見から、礫混じり地盤の地盤特性を反映したビット摩耗係数kを礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mと称することとし、この礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを、礫混じり地盤中の礫含有率Gと礫の摩耗能指数Fmod
1/nとカッタービット1本あたりの平均押付け力Pとを掛け合わせた、以下に示す(3)式とした。
【0029】
ここで、対象とする地盤が砂礫混じり地盤であって均質な硬岩地盤ではないことを鑑みれば、地盤特性を精度よく反映するには岩石の修正摩耗能指数Fmod値の影響度合いは小さいほうがよい。また、砂礫混じり地盤が礫や砂、粘度等が複雑に混在する地盤であることを鑑みれば、地盤中の礫含有率Gおよびカッタービット1本あたりの平均押付け力Pの影響度合いは大きいほうがよい。これらの理由により、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを算定するにあたっては、上記の(3)式で示すように礫の摩耗能指数に、岩石の修正摩耗能指数Fmod値のn乗根を、採用している。
【0030】
次に、上記の(3)式で示す礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mについて、礫の摩耗能指数Fmod
1/nの最適な累乗根nを把握することを目的に、以下のような検討を行った。
【0031】
まず、シールド掘削機1にて、
図3で示すような礫混じり地盤よりなる3つの現場A、B、C各々においてシールド掘削機1を掘進させ、ビット交換時や到達時等の掘進を停止するタイミングごとにカッタービット4の摩耗質量を測定し、(1)式よりビット摩耗係数kを算出した。
【0032】
現場A、B、Cはそれぞれ礫混じり地盤であるものの、
図3(a)で示すように礫含有率Gが異なるとともに、
図3(b)で示すように、発進立坑から到達立坑に至る途中の地盤中の礫含有率Gの変化がそれぞれ異なる条件下に位置している。また、
図4からわかるように、ビット摩耗係数kの算出は現場Aで3回、現場Bで2回、現場Cで4回それぞれ実施されている。
【0033】
一方で、上記の(3)式で示す礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mの算出に必要な礫含有率G、カッタービット4の1本あたりの平均押付け力P、および岩石の修正摩耗能指数Fmod値を、3つの現場A、B、C各々で測定した。
【0034】
本実施の形態において、礫含有率Gは「土の粒度試験(JIS A 1204)」に基づいて測定し、切羽に対するカッタービット1本あたりの平均押付け力Pは、シールド掘削機1の掘進推力をカッタービット4の数量で除することにより算出した。また、礫の強度Sは、地盤工学会規格の「岩石の圧裂による岩石の引張強さ試験(JGS 2551)」に基づいて強度St測定し、礫中の石英含有率Qは、日本道路公団規格の「岩石のX線粉末回析による鉱物の測定方法」に基づいて測定を行った。
【0035】
これらの結果を利用して、礫の摩耗能指数Fmod
1/nの累乗根nを1から0.1ずつ変化させて、実測値よりなるビット摩耗係数kと、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mの相関を検証した。
【0036】
なお、本実施の形態において相関性の評価は、決定係数R
2を指標に行っている。決定係数R
2は、2つのデータに対する回帰分析において、回帰直線が当てはまっているか否かを評価する指標であり、2つのデータ間の関係の強さを評価する際に用いる相関係数rの二乗と等しい。一般的に、相関係数r≧0.7で2つのデータ間に高い相関があるとされ、決定係数R
2≧0.5で回帰直線が適合していると判断される。
【0037】
そして、決定係数R
2=0.5のとき、r≒0.7となるから、本実施の形態では、決定係数R
2≧0.5の場合に、ビット摩耗係数kと礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mとの間に有意な相関性が認められるものと判定することとした。
【0038】
図4を見ると、礫の摩耗能指数Fmod
1/nの累乗根n=1のときは相関が認められないが、累乗根nが1より大きくなると相関を示すようになり、累乗根n=1.6の場合にR
2が0.5を超え、累乗根nが1.6より大きくなるほど有意な相関性がある様子がわかる。つまり、上記の(3)式において、礫の摩耗能指数Fmod
1/nの累乗根nを、1より大、好ましくは1.6以上に設定して礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを算出すると、現場A、B、C各々の実測によるビット摩耗係数kと近似した数値が算定できる。
【0039】
したがって、シールド掘削機1にて礫混じり地盤を掘削するにあたり、カッタービット4のビット摩耗量wを推定する際には、対象地盤の礫含有率G、礫の強度S、平均石英粒子径Dおよび礫中の石英含有率Qをあらかじめ測定する。その一方で、試験施工等に基づいてあらかじめ設定されたシールド掘削機1の掘進推力から、カッタービット4の1体当たりの切羽への平均押付け力Pを算定する。これらの算出結果と礫の摩耗能指数Fmod
1/nの累乗根nを1より大とした上記の(3)式から、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを算出する。
【0040】
その一方で、カッタービット4ごとに予定されている切羽に対する摺動距離Lを算出する。カッタービット4は同一のカッターヘッド3に取り付けられていても、
図5で示すように、カッターヘッド3の外周付近に位置するカッタービット4aと軸中心近傍に位置するカッタービット4bとでは、ビット摺動距離Lは当然ながら相違する。
【0041】
したがって、カッタービット4ごとのビット摺動距離Lを算出する際には、シールド掘削機1の仕様に基づいてカッターヘッド3におけるカッタービット4の位置を把握してシールド掘削機1の軸中心からの距離を算定しておくとともに、施工条件や掘進計画等に基づいてあらかじめ設定されたシールド掘削機1の掘進速度およびカッターヘッド3の時間当たりの回転数を把握しておく。
【0042】
先にも述べたように、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mが上記(1)式のビット摩耗係数kに相当するから、これとカッタービット4ごとに予定される摺動距離Lとを上記(1)式に代入することにより、シールド掘削機1にて所定距離だけ掘進した後のカッタービット4の個々におけるビット摩耗量wを推定することができる。
【0043】
このように、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mに、礫の摩耗能指数F
mod1/n、礫含有率Gと、カッタービット4の切羽への平均押付け力Pとを採用することにより、掘削しようとする礫混じり地盤の地盤特性を反映できる。特に礫の摩耗能指数F
mod1/nの累乗根nを1.6以上とすると、礫混じり地盤の地盤特性をより精度よく反映できる。
【0044】
また、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mが、カッタービットの単位摺動距離(1km)当たりのビット摩耗量を示す指標であるため、シールド掘削機1にて所定距離だけ掘進した後のカッタービット4のビット摩耗量wを推定するにあたっては、シールド掘削機1の掘進速度やカッターヘッド3の回転速度、シールド掘削機1におけるカッタービット4の位置等をも反映させたカッタービット4の摺動距離Lを用いて、ビット摩耗量wを推定すればよい。これにより、カッタービット4のビット摩耗量wの推定に、礫混じり地盤の地盤特性だけでなく、施工条件や掘進計画、シールド掘削機1の仕様等をも反映させることができる。
【0045】
したがって、個々に条件が異なるカッタービット4各々に対して、定量的で正確なビット摩耗量wを推定することが可能となる。これに伴って精度の高いビット交換の作業計画を立案できることから、交換計画地点に到達する前にカッタービット4が想定を超えて摩耗してしまい、掘進効率が低下したり、カッターヘッド3を損傷させるといった事態を防止することでき、効率よく経済的にシールド掘削機1による掘進作業を進めることが可能となる。
【0046】
〈第2の実施の形態〉
先にも述べたように、石英は粒子径が小さいためその粒径は、礫混じり地盤中に含まれる石英の量や礫の強度と比較して、カッタービット4の摩耗に及ぼす影響が小さいとの知見を発明者らはすでに得ている。
【0047】
そこで、第1の実施の形態で示した礫の摩耗能指数F
mod1/nから、平均石英粒子径Dの平方根を取り除き、礫の強度Sと礫中の石英含有率Qを掛け合わせたものを新たな礫の摩耗能指数に採用し、鋭意検討を行ったところ、これら礫の強度Sと礫中の石英含有率Qを掛け合わせたものについても、カッタービット4の摩耗との間に有意な相関関係が認められるとの知見を得るに至った。
【0048】
上記の知見から、(S×Q)
1/nを新たな礫の摩耗能指数とし、これに礫混じり地盤中の礫含有率Gとカッタービット1本あたりの平均押付け力Pとを掛け合わせた、以下に示す(4)式を、礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mとした。
【0049】
そして、上記の(4)式で示す礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mについて、礫の摩耗能指数(S×Q)
1/nの最適な累乗根nを把握することを目的に、第1の実施の形態と同様の検討を行った。
【0050】
図6を見ると、礫の摩耗能指数(S×Q)
1/nの累乗根n=1のときに、すでに決定係数R
2が0.5を超えており、特に累乗根nが2〜5の範囲で強い相関を示すことがわかる。つまり、上記の(4)式において、礫の摩耗能指数(S×Q)
1/nの累乗根nを1以上、好ましくは2以上5以下として礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを算出すると、現場A、B、C各々の実測によるビット摩耗係数Kと近似した数値が算定できることがわかる。
【0051】
したがって、予定されるカッタービット4の摺動距離Lと礫の摩耗能指数(S×Q)
1/nの累乗根nを1以上、好ましくは2以上5以下として上記の(4)式で算出した礫混じり地盤の推定摩耗能指数K
mを上記(1)式に代入することにより、シールド掘削機1にて所定距離だけ掘進した後のカッタービット4のビット摩耗量wを推定することができる。
【0052】
本発明のカッタービットの摩耗量推定方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、本実施の形態では、礫の強度Sに地盤工学会規格の「岩石の圧裂による岩石の引張強さ試験(JGS 2551)」に基づいて測定した強度Stを採用した。しかし、必ずしも上記の方法に限定されるものではなく、「岩石の圧縮強さ試験(JIS M 0302)」や地盤工学会規格の「岩石の点載荷試験方法(JGS 3421)」等に基づいて算定した強度を採用してもよい。
【0054】
また、礫混じり地盤中に、石英以外でカッタービット4の摩耗に影響を与えるような比較的硬度の高い鉱物が存在する場合には、礫中の石英含有率Qに代えて、以下の(5)式で表される等価石英含有率EQCを採用してもよい。