(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油脂加工品は、固体脂含量が20℃で75重量%以上であり、且つ、30℃で60重量%以下である油脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の有効成分としてのγ−アミノ酪酸が含有された機能性ハードキャンディ。
γ−アミノ酪酸を含む油脂加工品からなるセンター部の表面の少なくとも一部を、品温を60〜80℃に調整したハードキャンディ部で被覆する工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の有効成分としてのγ−アミノ酪酸が含有された機能性ハードキャンディの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、「健康ブーム」や「美容ブーム」の高まりにより、健康食品だけでなく、一般食品の分野においても様々な機能性成分が注目されている。その中でも、特に関心が持たれている成分の1つがGABAである。GABAはアミノ酸の1種で、摂取による血圧上昇抑制作用や中性脂肪低下作用、精神安定作用が認められており、GABAを含有した商品が数多く上市されている。
【0003】
GABAが含まれる一般食品の代表例としては、粉末清涼飲料の「ナチュラルケア粉末スティック〈GABA〉(商品名、大正製薬(株)製)」や、チョコレート菓子の「GABA(商品名、江崎グリコ(株)製)」などが挙げられる。世間に求められる機能性食品の条件として、気軽に摂取できることが絶対条件である為、前述のGABA含有食品も摂取しやすい形態がとられている。しかしながら、手軽に摂取できる食品の代表格であるハードキャンディにおいて、有効成分としてのGABA(すなわち遊離状態のGABA)を一定量含んだ商品は未だ存在しない。
【0004】
この理由としては、次の1)、2)が考えられている。1)GABAは長時間の加熱で分解することが知られており、120℃15分間の加熱で10%、140℃15分間の加熱で30%程度が分解される。つまり、高温処理を必要とされる食品中ではGABAが熱分解されてしまう。そのため、GABAを含有する商品は高温処理されないものが殆どである。2)さらに、GABAを高糖度の環境下で加熱すると、アミノカルボニル反応により、GABAと還元糖とが結合し、機能として有効とされる遊離状態のGABAが減少してしまう。
【0005】
以上の理由により、加工の際に高温にさらされる工程を有する食品や、原材料として還元糖を多く含む食品にGABAを安定して配合することは困難である。
【0006】
ところで、ハードキャンディの製法としては、砂糖、水飴からなる主原料を、100℃を超えるような高温下に釜で炊き上げる方法が一般的である。この際に、砂糖、水飴の一部が熱分解され、果糖や麦芽糖といった還元糖が生成する。その為、加工の際に高温での濃縮(釜での炊き上げ)を必要とし、さらに原材料としても還元糖を多く含むハードキャンディにおいて、GABAを遊離状態の有効成分として留めておくことは非常に難しい。
【0007】
GABAの様な機能性成分を安定して食品に配合させる方法として、固形食品に機能性成分を含んだ糖衣層を形成する方法が報告されている(特許文献1)。これは、固形食品の周囲に機能性成分を含んだ糖衣層をコーティングすることで、加熱工程を経ずに機能性成分を安定して含有させるものであるが、糖衣食品を作製する際には、回転釜などの大規模な設備が必要となる為、特許文献1の方法は簡便とは言えない。また、糖衣工程において、粉体で機能性成分を投入すると、回転釜の周囲に付着するなどによって比較的高価な機能性成分のロスが生じると共に、常に安定して正確な量の機能性成分を含有した食品を供給するのが困難である。その他にも、マヨネーズ様調味料またはドレッシングにGABAを配合する試みがなされているが、これは酸味のマスキングに関するものであり、GABAの安定性の向上を意図したものではない(特許文献2)。
【0008】
以上の理由により、その必要性を認められながらも、有効成分としてのGABAを一定に含有したハードキャンディは未だ存在しない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の「有効成分としてのGABAが含有された機能性ハードキャンディ」(以下単に「本発明の機能性ハードキャンディ」又は「本発明のハードキャンディ」と呼ぶ)は、センター部と、センター部の表面の少なくとも一部を被覆するハードキャンディ部と、を含み、センター部はその各種機能性を発揮し得る遊離状態のGABAを含有する油脂加工品からなり、かつハードキャンディ部はハードキャンディからなることを特徴とする。本明細書では、遊離状態のGABAを、有効成分としてのGABAとも言う。以下、センター部及びハードキャンディ部について、順を追って詳細に説明する。
【0015】
センター部は、有効成分としてのGABAを含むことを特徴とする油脂加工品である。該油脂加工品は、より具体的には、GABA及び油脂を含み、保形性を有するペースト状混練物であり、好ましくはGABA、油脂及び糖質を含み、保形性を有するペースト状混練物であり、より好ましくはGABA、油脂、糖質及び食品用添加剤を含み、保形性を有するペースト状混練物である。ペースト状混練物は40〜60℃程度の温度下では保形性を有し、外力を加えない状態では変形等を殆ど起こさないか若しくは起こし難いか又は比較的長い時間をかけて非常に緩やかに変形するものであるが、硬化物又は固化物ではなく、例えば指で押す等して外力を加えると凹みや変形を生ずるものである。なお、油脂は、加熱下でのGABAの分解や、GABAと還元糖との反応を抑制する作用を有するものと考えられる。
【0016】
本発明に用いる油脂加工品は、前述のようにGABAと共に、油脂(好ましくは食用油脂)を主成分とし、適宜その他糖質や繊維、その他の食品添加剤等を含む組成物からなるものである。
【0017】
油脂加工品に含有されるGABAは、天然物中から単離されたり、また発酵等の工業的な方法により得られたりするが、その由来に関わらず一定の性状を持つため、その由来に制限されず、種々のものを使用できる。その具体例としては、例えば、玄米等の天然物由来のもの、乳酸菌などの微生物による発酵を経たものなどが挙げられる。また、本発明機能性ハードキャンディの風味や食感(特に口溶け性)、油脂加工品の物性や風味等を損なわない範囲で、GABAを含む中間物を使用することもできる。該中間物とは、食用に供しても安全な、天然物や発酵物からGABAが単離精製される途中の粗精製物、乳酸菌等の微生物の発酵物などである。
【0018】
また、油脂加工品中のGABA含有量は特に限定されないが、GABAによる血圧上昇抑制作用や中性脂肪低下作用、精神安定作用を得る為に必要とされる摂取量の12.3〜30mg/1日を摂取出来るような範囲に設定することがより好ましい。例えば、本発明の機能性ハードキャンディを1日当たり1〜10粒程度食することで前記範囲の摂取量を得ることや、GABAを油脂加工品中で長期間にわたって存在させること等を目安とすると、GABA含有量は好ましくは油脂加工品全量の0.05〜25重量%、より好ましくは0.25〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0019】
油脂加工品に用いる油脂としては、例えば、精製ヤシ油(好ましくは不二製油(株)製のもの)、ヤシ油、パーム油、大豆油、オリーブオイル等の植物油脂、植物油脂をエステル交換や水素添加等で工業的に改変した代替油脂でもよいし、或いは、ラード、獣乳由来のバター等の動物油脂や、動物油脂をエステル交換や水素添加等で工業的に改変した代替油脂などが挙げられる。しかし本発明の油脂加工品に使用できる油脂は、これらに限定されるわけではない。油脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
油脂加工品に用いられる油脂の中でも、30℃においてSFCが60重量%以下であり、かつ20℃においてSFCが75重量%以上という特性(以下「SFCの特徴」と呼ぶことがある)を有する油脂が好ましい。すなわち、油脂加工品が、SFCの特徴を有する油脂を含むことが好ましい。SFCの特性を有する油脂を含むことにより、センター部としての油脂加工品の口溶け性が向上し、また、油脂加工品の粘性低下による機能性ハードキャンディ外部への漏れ出しが抑制される。30℃においてSFCが60重量%より高い場合、油脂加工品の口解けが悪く、口に残るようなものとなってしまう傾向がある。また20℃においてSFCが75重量%未満であると、油脂加工品の粘性が低くなり、ハードキャンディ部から漏れ出し、生産時にロスの要因となる。本発明において、SFCの測定は、IUPAC2.150(Solid Cont ent Determination in Fats by NMR)に準じて行なうことができる。
【0021】
本発明では、油脂加工品に含まれる油脂全体が上記SFCの特徴を有する油脂であってもよく、また、油脂加工品に含まれる油脂全体の一部が上記SFCの特徴を有する油脂であってもよい。上記のSFCの特徴を有する油脂としては特に限定されないが、例えば、精製ヤシ油(好ましくは不二製油(株)製の精製ヤシ油)などが挙げられる。また、2種又はそれ以上の油脂を適宜混合して、上記SFCの特徴を満たす油脂混合品を調製してもよい。
【0022】
油脂加工品における油脂含有量は特に限定されないが、油脂加工品全量の好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜30重量%、さらに好ましくは25〜30重量%である。油脂含有量が前記範囲内であれば、GABAの分解が顕著に抑制され、良好な風味を有し、口溶けし易く、また、ハンドリング性が良好で、ハードキャンディ部による被覆が容易な油脂加工品を得ることができる。なお、上記SFCの特徴を有する油脂の含有量は、油脂全量の50〜100重量%であることが好ましい。
【0023】
油脂加工品に用いる糖質としては、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、乳糖、キシリトール、トレハロース等の天然の糖質や、果糖ブドウ糖水飴、酵素処理水飴等の酵素処理された糖質や、マルチトールやエリスリトール等の低カロリー糖質や、オリゴ糖、各種デンプン等が挙げられ、目的に応じて1種あるいは2種以上を組み合わせて使用すれば良い。なお、例示した糖質の中には、麦芽糖や果糖等の還元糖や、該還元糖を含む液糖等があるが、本発明のような油脂加工品の中では還元糖とGABAとの反応が顕著に抑制され、GABAは長期間にわたって安定的に保持されることが、本発明者らの研究により明らかになっている。
【0024】
油脂加工品における糖質含有量は、特に限定されないが、その目安としては、油脂加工品全量の好ましくは60〜84重量%、より好ましくは60〜75重量%、さらに好ましくは65〜75重量%である。糖質を前記範囲で含有することにより、風味が良好で、口溶け性及び保形性の良好な油脂加工品を得ることができる。
【0025】
油脂加工品にはその他にも、本発明のハードキャンディによるGABAの安定的な保持効果や風味、食感等を損なわない範囲で、繊維質(例えば、セルロース、ペクチンやポリデキストロースのような多糖類)、タンパク質(例えば、カゼイン、ホエイ、ゼラチン、グルテン等ある程度精製されたもの、乳タンパク質、大豆タンパク質や卵タンパク質等の混合物、或いは酵素処理して得られた各種ペプチド)、澱粉(例えば、米、小麦、トウモロコシ、豆、ジャガイモ、サツマイモ、等の植物由来の澱粉)、果実類、野菜類、豆類、根茎類(タピオカ、葛、わらび等の粉末)、獣肉類、魚肉類、乳製品、各種発酵製品、ココアパウダー、コーヒーや各種お茶の乾燥パウダー、豆乳等の乾燥パウダー等の乾燥粉末品、果実ペースト、果汁濃縮エキス、野菜ペースト、コーヒーペースト、濃縮野菜汁、各種肉エキス、練乳等の乳由来製品、アスパルテームやスクラロース等の甘味料、グルタミン酸ナトリウム等の旨味調味料、ゲル化剤や安定剤、二酸化ケイ素やセルロース製剤、各種ビタミンやミネラル、ポリフェノール等の抗酸化剤等の健康機能性成分、朝鮮人参粉末やプロポリス等の混合物やエキス等の、各種食品用添加剤の1種又は2種以上を添加してもよい。
【0026】
油脂加工品は、例えば、GABA、油脂、糖質、食品用添加剤等の各種原料を混合し、練り上げることで、目的の物性を有したペースト状混練物として得ることができる。各種原料の混合順序に特別な制限はない。また、混合は手作業でもできるが、工業的には汎用されている混合装置の適用が可能である。混合装置には特に制限はないが、GABAを分散し易い混合装置をその加工適性にあわせて選択すればよい。混合装置の具体例としては、例えば、ミキサー、ニーダー、杵と臼からなる餅つき機、羽と臼からなる餅つき機、エクストルーダー、製麺機等が挙げられる。これら装置を組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
なお、混練作業は、予備実験の結果等に基づいて、各種原料が均一に分散したと判断される時点で終了すればよい。また、各種原料の混合及び混練時の温度は特に限定されないが、GABAの分解抑制、作業性、得られた油脂加工品の取扱い性等の観点から、通常60℃以下、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃である。こうして得られる油脂加工品は、ペースト状混練物であることから、本発明の機能性ハードキャンディの設計に応じて、任意の寸法及び形状に容易に成形することができる。また、所定量の油脂加工品をそのままセンター部として用い、ハードキャンディで被覆することもできる。
【0028】
油脂加工品の粘度は特に限定されず、本発明の機能性ハードキャンディの製品設計等に応じて適宜選択できるが、油脂加工品の食感(特に口溶け性)、風味の感じ方、ハードキャンディ部の被覆時又はハードキャンディ部への封入時の取り扱い易さ(ハンドリング性)、保存時特に夏季の漏れ防止等の観点から、好ましくは5.0〜20.0Pa・s(50℃)である。なお、本明細書において、粘度は、下記の測定機器を用い、下記の測定条件で測定した値である。
【0029】
測定機器:VISCOMETER TV SERIES MODEL TVB-10/東機産業(株)製
測定条件:SPINDLE No.;H5
ROTOR SPEED;5.0rpm
Temp.;50℃
Time;測定開始60秒後の値を測定
【0030】
本発明のハードキャンディ中におけるセンター部の含有量は、本発明ハードキャンディ全量の3〜30重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、5〜25重量%がさらに好ましい。センター部の含有量が3重量%よりも少ない場合、喫食時にセンター部を感じる事が困難になり、センター入りハードキャンディの体をなさない。センター部の含有量が30重量%よりも多い場合、ハードキャンディ部の崩壊性が高まり、持続的に舐めて喫食するというハードキャンディ本来の特徴が失われてしまう。
【0031】
本発明において、ハードキャンディ部を構成するハードキャンディとしては、極一般的なハードキャンディを用いることができる。例えば、砂糖、水飴を主原料とし、さらにぶどう糖、果糖等の単糖類、二糖類等や、液糖等を含有していてもよいキャンディや、マルチトール、パラチニット、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールその他の糖アルコールを主原料とするシュガーレスキャンディである。さらに副原料として果汁、種実、乳製品、澱粉、小麦粉、油脂、香料、酸味料、調味料、着色剤等を任意に添加することができる。
【0032】
本発明のハードキャンディ中におけるハードキャンディ部の含有量は、本発明ハードキャンディ全量の70〜97重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましく、75〜95重量%がさらに好ましい。ハードキャンディ部の含有量が97重量%を超えると、センター部の量が少なくなりすぎ、センター入りハードキャンディの体をなさない。ハードキャンディ部の含有量が70重量%未満では、ハードキャンディ部の崩壊性が高まり、持続的に舐めて喫食するというハードキャンディ本来の特徴が失われ、また、流通時に破損やセンター部の浸み出しが生じ、商品価値が損なわれ易くなる傾向がある。
【0033】
本発明のハードキャンディは、センター部の表面の少なくとも一部をハードキャンディ部で被覆したものであるが、センター部の表面をハードキャンディ部で完全に被覆しているものがよい。本発明のハードキャンディの外形としては、特に限定はない。しかし、センター部を安定的に大量に封入する形状としては、平丸、球状もしくは俵型などの形状が好ましい。
【0034】
次に、本発明ハードキャンディの製造方法について詳しく説明する。本発明の製造方法を用いることにより、センター部に含まれたGABAの熱分解が顕著に抑制され、GABAをセンター部中において安定的に長期間にわたって保持できる、本発明ハードキャンディを得ることができる。
【0035】
本発明のハードキャンディは、例えば、GABAを含む油脂加工品を作製する第1工程と、第1工程で得られた油脂加工品をセンター部とし、該油脂加工品の表面の少なくとも一部をハードキャンディで被覆し(好ましくは該油脂加工品をハードキャンディに封入し)、ハードキャンディ部を形成する第2工程と、を含む製造方法により、得ることができる。
【0036】
第1工程では、前述のように、GABA、油脂、糖質、食品用添加剤等の各種原料を混合し、練り上げることで、目的の物性を有したペースト状混練物として、油脂加工品を得ることができる。得られた油脂混合品は、好ましくは40〜60℃の温度に保温した状態で第2工程に供される。油脂混合品を前記温度範囲に保温することにより、第2工程における生産性を向上させ、本発明のハードキャンディを安定的に量産できる。保温する温度が40℃より低いと、油脂加工品の流動性が低くなり過ぎ、油脂加工品を安定して第2工程に供給することが困難になり、第2工程でのロスが生じ易くなる傾向がある。また、保温する温度が60℃より高いと、油脂加工品の流動性が高くなり過ぎ、第2工程において油脂加工品にハードキャンディを被覆しても、油脂加工品の漏れ出しが生じ易くなり、原料ロス及び歩留りの低下を生じる傾向がある。
【0037】
次に、第2工程では、第1工程で得られた油脂加工品(好ましくは40〜60℃に保温された油脂加工品)を、ハードキャンディで被覆又は封入することにより、油脂加工品をセンター部とし、かつハードキャンディからなる被覆層をハードキャンディ部とする本発明のハードキャンディを得ることができる。このとき、油脂加工品に被覆するハードキャンディ(少なくともハードキャンディの表面)の品温を60〜80℃とする。この温度範囲とすることにより、油脂加工品中のGABAの熱分解が顕著に抑制され、ハードキャンディの被覆終了後にもセンター部となった油脂加工品中にGABAがその各種機能性を発揮し得る遊離状態にて安定的に保持される。
【0038】
また、ハードキャンディの品温が60℃より低いと、油脂加工品をハードキャンディで封入した場合に、ハードキャンディの合わせ面に割れが生じ易くなる。ハードキャンディの品温が80℃より高いと、油脂加工品をハードキャンディで封入した場合に、ハードキャンディの合わせ面が十分に溶着せず、隙間が生じ易くなり、その隙間からセンター部を構成する油脂加工品が漏れ出す傾向がある。すなわち、ハードキャンディの品温が60℃未満又は80℃超の場合には、製品歩留りが低下する傾向がある。さらに、ハードキャンディの品温が80℃を超えると、GABAの熱分解が起こり易くなる傾向がある。
【0039】
第2工程における、油脂加工品及びハードキャンディの温度帯の調整手法、油脂加工品のハードキャンディによる被覆装置又は封入装置などは、公知のキャンディを始めとする被覆又は封入によって製造する菓子に使用される公知の手法、装置を適宜選択出来る。また、センター部を安定的に封入するには、例えば、スタンピングフォーミングマシーンのチェーンスタンピングマシーン(ユーロメック社製)を好ましく用いることができる。
【0040】
より具体的には、本発明のハードキャンディは、ハードキャンディ部の上記品温管理、好ましくはハードキャンディ部及びセンター部の上記品温管理を行なう以外は、例えば、チョコレート様ペーストやバニラペースト、コーヒーペースト等をセンター部に封入したハードキャンディ又はソフトキャンディ等と同様にして製造することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定され るものではない。なお、単位として用いている「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。
【0042】
(実施例1)
(1)ハードキャンディの調製
砂糖600部、水飴400部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮した。得られた濃縮物100部に対しミルクフレーバー0.5部を添加した後、品温を70℃に調整し、水分値3.8重量%のハードキャンディを得た。該ハードキャンディの品温を70℃に保持した。
【0043】
(2)油脂加工品の調製
植物油脂(商品名:精製ヤシ油、不二製油(株)製)15部、コーンスターチ28部、砂糖9部を混合し、得られた混合物にGABA含有乳酸菌発酵エキス(製品名:ラクトギャバン、(株)ファーマフーズ研究所製)を0.4部添加した後、50℃に調整し、GABAを0.78重量%含有した、ペースト状混練物である油脂加工品を得た。該油脂加工品の品温を50℃に保持した。該油脂加工品の固体脂含量は、20℃で43%であり、30℃で0%であった。該油脂加工品の品温を50℃に保持した。また、50℃に保持した時の該油脂加工品の粘度は、12Pa・sであった。
【0044】
(3)センター入りハードキャンディの作製
品温を50℃に保持した上記油脂加工品10重量部をセンター部とし、品温を70℃に保持した上記ハードキャンディ90重量部に封入してハードキャンディ部を形成し、
ハードキャンディ部90%にセンター部10%が封入された、GABAを0.078重量%含有した、1個当たり約4.5gのセンター入りハードキャンディを得た。
【0045】
(比較例1)
(1)ハードキャンディの調製
砂糖600部、水飴400部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮した。得られた濃縮物100部に対しミルクフレーバー0.5部、GABA含有乳酸菌発酵エキス(製品名:ラクトギャバン、(株)ファーマフーズ研究所製)0.09部を添加した後、70℃に調整し、水分値3.8重量%、GABAを0.087重量%含有したハードキャンディを得た。該ハードキャンディの品温を70℃に保持した。なお、該ハードキャンディの品温を70℃未満に保持すると、糖質の一部が固形化して析出する等の不都合を生じ、油脂加工品を封入する作業が難しくなる。
【0046】
(2)油脂加工品の調製
植物油脂(商品名:精製ヤシ油、不二製油(株)製)15部、コーンスターチ28部、砂糖9部を混合した後、50℃に調整し、油脂加工品を得た。該油脂加工品の品温を50℃に保持した。
【0047】
品温を50℃に保持した上記油脂加工品10重量部をセンター部とし、品温を70℃に保持した上記ハードキャンディ90重量部に封入してハードキャンディ部を形成し、
ハードキャンディ部90%にセンター部10%が封入された、GABAを0.078重量%含有した、1個当たり約4.5gのセンター入りハードキャンディを得た。
【0048】
(GABAの残存量分析)
実施例1及び比較例1で作製された各ハードキャンディについて、有効成分としてのGABA(遊離GABA)の残存量を分析した。分析はアミノ酸自動分析機(製品名:ACQUITY UPLC H−CLASSシステム、Waters社製)、カラム(製品名:AccQ−Tag Ultra C18、Waters社製)を用いて行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例1の遊離GABAの含有率は、理論上では0.078%となるが、分析値では0.075%であり、実施例1ではGABAの分解や糖との結合はほとんどみられなかった。一方、比較例1では、遊離GABAの含有率は、理論上では0.078%となるが、分析値では0.039%となった。実施例1と比較例1を比較すると、GABAをハードキャンディに配合すると、温度と還元糖との影響により、有効成分としてのGABAが半分近くまで減少していることが分かる。
【0051】
比較例1の結果から、70℃程度に保温しても、GABAの分解が生じることが判る。また、ハードキャンディ作製時の真空釜での濃縮工程にGABAを添加した場合には、100℃を超えるような加熱となるので、遊離GABAの含有量は比較例1よりもさらに少なくなった。