(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1〜
図5を参照して第1実施形態のクレーン1について説明する。
【0011】
クレーン1は、建設作業などの作業を行う建設機械である。
図1に示すように、クレーン1は、ガントリ30でブーム20を起伏させる、ガントリ方式である。クレーン1は、移動式クレーンであり、例えばクローラクレーンであり、例えばラチスブームクローラクレーンである。クレーン1は、本体10と、ブーム20と、ガントリ30と、連結部材40と、上部スプレッダ取付装置60と、を備える。
【0012】
本体10は、クレーン1の本体部分である。本体10は、下部走行体11と、上部旋回体13と、を備える。下部走行体11は、クレーン1を走行させる部分であり、例えばクローラを備える。
【0013】
上部旋回体13は、旋回ベアリングを介して下部走行体11に取り付けられ、下部走行体11に対して旋回自在である。上部旋回体13には、図示しないウインチなどが搭載される。上部旋回体13は、ブーム取付部13aと、テンションメンバ取付部13bと、を備える。ブーム取付部13aは、ブーム20が取り付けられる部分である。テンションメンバ取付部13bは、ガントリ30のテンションメンバ33(下記)が取り付けられる部分である。上部旋回体13の長手方向を前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、テンションメンバ取付部13bからブーム取付部13aに向かう側(または向き)を前側X1とし、その逆側を後側X2とする。前後方向Xに直交する水平方向を横方向Yとする。鉛直方向を上下方向Zとする。上下方向Zにおいて、下部走行体11から上部旋回体13に向かう側を上側Z1とし、その逆側を下側Z2とする。
【0014】
ブーム20は、巻上ロープ25を介して吊荷を吊り上げるための部材である。ブーム20は、本体10の上部旋回体13に起伏自在に取り付けられる。ブーム20は、ラチス構造を有する、ラチスブームである。ブーム20には、ブーム基端部20fと、ブーム先端部20tと、ブーム腹面20vと、ブーム背面20bと、がある。ブーム基端部20fは、上部旋回体13側のブーム20の端部である。端部とは、端および端の近傍の部分である(以下の「端部」も同様)。ブーム先端部20tは、上部旋回体13側とは反対側のブーム20の端部である。
図2に示すように、ブーム背面20bは、ブーム20の軸方向(長手方向)が水平方向または略水平方向となるようにブーム20が伏せられた状態のときの、ブーム20の上側Z1の面である。ブーム腹面20vは、ブーム20が伏せられた状態のときの、ブーム20の下側Z2の面である。ブーム20の軸方向をブーム軸方向Aとする。ブーム軸方向Aにおいて、ブーム基端部20fからブーム先端部20tに向かう側をブーム先端側A1とし、その逆側をブーム基端側A2とする。ブーム軸方向Aおよび横方向Y(ブーム20の幅方向)に直交する方向をブーム高さ方向Hとする。ブーム高さ方向Hにおいて、ブーム腹面20vからブーム背面20bに向かう側をブーム背面側H1とし、その逆側をブーム腹面側H2とする。
【0015】
このブーム20は、分解可能であり、複数のブーム構成部品(ブーム20を構成する部品)を備える。複数のブーム構成部品どうしは、ブーム軸方向Aに連結され、ピンにより着脱可能である。ブーム20は、下部ブーム21と、先端側ブーム23と、を備える。
【0016】
下部ブーム21は、複数のブーム構成部品のうち、最もブーム基端側A2に配置されるブーム構成部品である。下部ブーム21は、ブーム先端側A1ほどブーム高さ方向Hの寸法が広くなる、テーパ状である。
【0017】
先端側ブーム23は、下部ブーム21よりもブーム先端側A1に配置される。例えば、先端側ブーム23は、複数のブーム構成部品を備え、ブーム基端側A2からブーム先端側A1の順に、中間ブーム23aと、上部ブーム23bと、を備える。中間ブーム23aの数は、
図2に示す例では1であり、2以上でもよい。中間ブーム23aは設けられなくてもよい。上部ブーム23bは、複数のブーム構成部品のうち、最もブーム先端側A1に配置されるブーム構成部品である。
【0018】
巻上ロープ25は、
図1に示すように、ブーム20で吊荷を吊り上げるためのロープであり、ワイヤロープである。巻上ロープ25は、ブーム先端部20tから吊り下げられる。巻上ロープ25は、上部旋回体13またはブーム20に設けられたウインチ(図示なし)により、巻き取りおよび繰り出しされる。
【0019】
ガントリ30は、連結部材40を介して、ブーム20を起伏させる部材である。ガントリ30は、上部旋回体13に取り付けられ、ブーム20よりも後側X2に配置される。ガントリ30は、コンプレッションメンバ31と、テンションメンバ33と、を備える。テンションメンバ33は、コンプレッションメンバ31よりも後側X2に配置される。テンションメンバ33の先端部は、コンプレッションメンバ31の先端部に取り付けられる。
【0020】
連結部材40は、ガントリ30の先端部とブーム20の先端部とに連結される部材である。連結部材40は、ガントリ30側からブーム20側の順に、下部スプレッダ43と、起伏ロープ45と、上部スプレッダ50と、ガイライン41と、を備える。
【0021】
ガイライン41は、ブーム20に接続され、ブーム先端部20tに接続される。ガイライン41は、例えばワイヤロープであり、例えばリンク部材が連結されたものなどでもよい。ガイライン41は、ウインチによる巻き取りおよび繰り出しが行われないものである。
【0022】
下部スプレッダ43は、ガントリ30の先端部に設けられる。下部スプレッダ43は、複数枚のシーブ(滑車)を備える。このシーブに、起伏ロープ45が掛けられる。
【0023】
起伏ロープ45は、ブーム20を起伏させるためのロープであり、ワイヤロープである。起伏ロープ45は、下部スプレッダ43と上部スプレッダ50とに接続され、下部スプレッダ43のシーブと上部スプレッダ50のシーブとに巻き回される。起伏ロープ45は、図示しないウインチにより、巻き取りおよび繰り出しされる。起伏ロープ45が巻き取られると、上部スプレッダ50と下部スプレッダ43との距離が短くなり、ブーム20が引き起こされる。起伏ロープ45が繰り出されると、上部スプレッダ50と下部スプレッダ43との距離が長くなり、ブーム20が伏せられる。
【0024】
上部スプレッダ50は、ガイライン41と起伏ロープ45とに接続される。上部スプレッダ50は、ブーム20の組立時および分解時には、ガイライン41に接続されない場合がある(
図5参照)。
図3に示すように、上部スプレッダ50は、スプレッダフレーム51と、起伏ロープ用シーブ52と、ガイライン取付部53と、スプレッダ側ガイド部54と、スプレッダ側ピン孔55と、取付ロープ用取付部56と、を備える。
【0025】
スプレッダフレーム51は、上部スプレッダ50の各構成要素が取り付けられるフレーム(骨格)である。起伏ロープ用シーブ52は、起伏ロープ45が掛けられるシーブである。起伏ロープ用シーブ52は、スプレッダフレーム51に回転自在に取り付けられ、複数枚設けられる。ガイライン取付部53は、ガイライン41の端部が取り付けられる部分であり、スプレッダフレーム51に固定される。
【0026】
スプレッダ側ガイド部54は、スプレッダ取付部70(下記)への上部スプレッダ50の取付時に、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50の位置をガイドする。例えば、スプレッダ側ガイド部54は、ローラ54aと、傾斜部54bと、を備える。ローラ54aは、スプレッダフレーム51に対して回転自在に取り付けられ、例えばスプレッダフレーム51にベアリングを介して取り付けられる。傾斜部54bは、例えば板の端面などにより構成される。傾斜部54bは、横方向Yから見たとき、ガイライン41および起伏ロープ45の軸方向に対して傾斜する。
【0027】
スプレッダ側ピン孔55は、ピンP1が差し込まれる孔であり、スプレッダフレーム51に形成される。ピンP1は、スプレッダ取付部70(下記)に上部スプレッダ50を取り付ける(接続する)ためのピンである。ピンP1は、スプレッダ取付部70に上部スプレッダ50を、固定または略固定するためのピンである。
【0028】
取付ロープ用取付部56は、取付ロープ85(下記)が取り付けられる部分である。取付ロープ用取付部56は、スプレッダフレーム51からブーム20側に突出する。なお、取付ロープ用取付部56と同様の、逆側取付ロープ用取付部57が設けられてもよい。逆側取付ロープ用取付部57は、スプレッダフレーム51に対してブーム20とは反対側に配置される。例えば、
図3に示す状態から、上部スプレッダ50が上下逆に配置された場合、逆側取付ロープ用取付部57であったものを、取付ロープ用取付部56として用いることができる。
【0029】
上部スプレッダ取付装置60は、上部スプレッダ50の下部ブーム21への取り付けを容易にする装置である。
図2に示すように、上部スプレッダ取付装置60は、スプレッダ取付部70と、巻取装置80と、取付ロープ85と、アイドラシーブ89と、を備える。
【0030】
スプレッダ取付部70(スプレッダ格納部)は、上部スプレッダ50を取り付け可能に構成される。スプレッダ取付部70は、ブーム20に固定され、下部ブーム21に固定される。例えば、スプレッダ取付部70は、下部ブーム21のブーム先端側A1の端部に配置され、下部ブーム21のブーム背面側H1端部に配置される。以下では、特に断らない限り、ブーム軸方向Aが水平方向または略水平方向になるようにブーム20が伏せられた状態について説明する。
図3に示すように、スプレッダ取付部70は、ブーム背面20bから上側Z1に突出する。スプレッダ取付部70は、取付部フレーム71と、取付部側ガイド部74と、取付部側ピン孔75と、を備える。
【0031】
取付部フレーム71は、スプレッダ取付部70の構成要素が取り付けられるフレームである。取付部フレーム71は、下部ブーム21に固定される。
【0032】
取付部側ガイド部74(スプレッダ格納ガイド)は、スプレッダ取付部70への上部スプレッダ50の取付時に、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50の位置をガイドする。例えば、取付部側ガイド部74は、ローラガイド74aと、傾斜部接触部74bと、を備える。ローラガイド74aは、ローラ54aに当たり、ローラ54aの位置(移動)をガイドする部分である。ローラガイド74aは、例えば板の端面などにより構成される。ローラガイド74aを構成する板は、例えば、横方向Yに間隔をあけて2枚設けられ、取付部フレーム71に対して着脱可能である。ローラガイド74aは、ブーム先端側A1ほどブーム腹面側H2(下側Z2)に配置されるように、ブーム軸方向Aおよびブーム高さ方向Hに対して傾斜する。傾斜部接触部74bは、傾斜部54bに当たり、傾斜部54bの位置をガイドする部分である。傾斜部接触部74bを構成する部材は、例えば横方向Yから見て扇状などである。なお、スプレッダ側ガイド部54および取付部側ガイド部74の構成(形状および位置など)は変更されてもよい。
【0033】
取付部側ピン孔75は、ピンP1が差し込まれる孔であり、取付部フレーム71に形成される。
【0034】
巻取装置80は、
図2に示すように、取付ロープ85を巻き取る装置であり、取付ロープ85を繰り出す装置である。巻取装置80は、ブーム20に取り付けられる。巻取装置80は、下部ブーム21に取り付けられ、下部ブーム21のブーム基端側A2部分に配置される。巻取装置80は、下部ブーム21の内部に配置され、下部ブーム21の表面部分に配置されてもよい。巻取装置80は、ウインチであり、例えば油圧式であり、電動でもよく、手動でもよい。
【0035】
取付ロープ85は、スプレッダ取付部70への上部スプレッダ50の取付時に、スプレッダ取付部70に向かって上部スプレッダ50を移動させるためのロープである。取付ロープ85は、巻取装置80に取り付けられる。
図3に示すように、取付ロープ85は、上部スプレッダ50に取り付けられ、取付ロープ用取付部56に取り付けられる。取付ロープ85は、スプレッダ取付位置50Aを通る。スプレッダ取付位置50Aは、スプレッダ取付部70に上部スプレッダ50が取り付けられたときの、上部スプレッダ50の位置である。例えば、スプレッダ取付位置50Aは、上部スプレッダ50のスプレッダ側ピン孔55と、スプレッダ取付部70の取付部側ピン孔75と、にピンP1が差しこまれた状態のときの、上部スプレッダ50の位置である。なお、スプレッダ取付位置50Aに上部スプレッダ50が配置されている時には、取付ロープ85は、スプレッダ取付位置50Aを通らない。取付ロープ85は、巻取装置80の位置などに応じて、適切に配置(配策)される。
図2に示す例では、取付ロープ85は、スプレッダ取付位置50A(
図3参照)から、ほぼブーム高さ方向Hに延び、アイドラシーブ89に掛けられ、下部ブーム21のブーム腹面20vにほぼ沿うように延びる。
【0036】
この取付ロープ85は、紐状部材であり、例えばワイヤロープ(金属製)であり、例えば金属製でない繊維製ロープでもよい。取付ロープ85は、上部スプレッダ50から巻取装置80までの経路のうち、所定位置で着脱(接続および分割)可能である。取付ロープ85は、巻取装置側ロープ85aと、スプレッダ側ロープ85bと、着脱部85cと、を備える。巻取装置側ロープ85aは、巻取装置80に取り付けられる。スプレッダ側ロープ85bは、上部スプレッダ50に取り付けられる。
図1に示すように、スプレッダ側ロープ85bは、取付部85b1を備える。取付部85b1は、吊上作業時(下記)にブーム20に取り付けられる部分である。取付部85b1は、スプレッダ側ロープ85bのうち上部スプレッダ50に近い側とは反対側(反上部スプレッダ側)の部分に設けられる。取付部85b1は、スプレッダ側ロープ85bの反上部スプレッダ側の、例えば端部などに設けられ、端部以外に設けられてもよい。取付部85b1は、
図2に示す着脱部85cの一部でもよく、着脱部85cとは別に設けられてもよい。着脱部85cは、巻取装置側ロープ85aと、スプレッダ側ロープ85bと、を着脱自在に接続する部分(コネクタなど)である。
【0037】
アイドラシーブ89は、取付ロープ85ロープの方向を変える滑車である。アイドラシーブ89は、巻取装置80の配置などに応じて配置される。アイドラシーブ89の数は、
図2では1であり、2以上設けられてもよい。アイドラシーブ89は設けられなくてもよい。
【0038】
(ブーム20などの組立)
クレーン1は次のように作動する。
図5に示すブーム20などの組立は次のように行われる。以下では、ブーム20などの組立の手順に沿って説明する。なお、下記の手順は変更されてもよい。
【0039】
図5に示す状態の前の状態では、下部ブーム21と先端側ブーム23とが、ブーム背面側H1端部では接続(ピンによる接続)され、ブーム腹面側H2端部では切り離される。また、下部ブーム21のブーム先端側A1端部および先端側ブーム23が接地する。この状態で、起伏ロープ45が巻き取られる。すると、下部ブーム21が、片持ち状態で引き起こされる。すると、下部ブーム21と先端側ブーム23とのブーム腹面側H2端部(コネクタ)どうしが当たる。このコネクタがピンで接続される。その結果、クレーン1が、
図5に示す状態(ブーム20組立途中姿勢)になる。
【0040】
次に、
図4に示すガイライン41が、ブーム先端部20tと上部スプレッダ50とに接続される。また、上部スプレッダ50が、スプレッダ取付部70から切り離される。例えば
図3に示すピンP1が抜かれる。その結果、クレーン1が、
図4に示す状態(ブーム20組立完了姿勢)になる。
【0041】
次に、起伏ロープ45が巻き取られる。すると、
図2に示すように、上部スプレッダ50が、スプレッダ取付部70から上側Z1に移動(上昇)する。その結果、クレーン1が、
図2に示す状態(ブーム20接地状態)になる。
【0042】
次に、起伏ロープ45がさらに巻き取られる。すると、ブーム20が、引き起こされる。その結果、
図1に示すように、クレーン1が、吊上作業が可能な状態(吊上姿勢)になる。吊上作業は、ブーム20が巻上ロープ25を介して吊荷を吊り上げる作業である。
【0043】
(ブーム20などの分解)
ブーム20など分解は、基本的には、ブーム20などの組立の手順と逆の手順により行われる。
【0044】
図1に示す状態(吊上姿勢)の時に、起伏ロープ45が繰り出される。すると、ブーム20が伏せられ、ブーム先端部20tが接地する。その結果、
図2に示す状態(ブーム接地状態)になる。
【0045】
(上部スプレッダ50取付工程)
次に、ブーム20が接地した状態で、起伏ロープ45が、さらに繰り出される(緩められる)。すると、上部スプレッダ50が、下側Z2に移動し(降下し)、スプレッダ取付部70に近づく。また、巻取装置80が、取付ロープ85を巻き取る。起伏ロープ45の繰り出しと、取付ロープ85の巻き取りとが、同時または別々に行われる。これにより、上部スプレッダ50がスプレッダ取付部70に向かって移動しやすい。よって、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50のブーム軸方向Aのずれが減る。そして、
図3に示すスプレッダ側ガイド部54および取付部側ガイド部74によるガイドが可能な位置に、上部スプレッダ50が移動する。例えば、ローラ54aがローラガイド74aに当たる位置に、上部スプレッダ50が移動する。そして、このガイドが行われることで、上部スプレッダ50が、スプレッダ取付位置50Aに配置される(収まる、収納される)。次に、ピンP1が、スプレッダ側ピン孔55と取付部側ピン孔75とに差し込まれる。その結果、上部スプレッダ50が、スプレッダ取付部70に取り付けられる(格納が完了する)。その結果、クレーン1が、
図4に示す状態(ブーム20分解開始姿勢)になる。
【0046】
次に、ガイライン41が、上部スプレッダ50から取り外される。また、起伏ロープ45が巻き取られ、下部ブーム21が片持ち状態で引き起こされる。その結果、クレーン1が、
図5に示す状態(ブーム20分解途中姿勢)になる。次に、下部ブーム21と先端側ブーム23とのブーム腹面側H2端部での接続が切り離され、起伏ロープ45が繰り出され、下部ブーム21が下げられる。
【0047】
(上部スプレッダ50への取付ロープ85の接続)
図4に示す取付ロープ85(ここではスプレッダ側ロープ85b)の上部スプレッダ50への接続(「接続α」とする)は、次のように行われる。接続αは、地面に近い位置、またはブーム背面20bの足場に近い位置で行われることが好ましい。接続αは、上部スプレッダ50取付工程の前に行われ、ブーム20による吊上作業が行われる前に行われ、ブーム20の組立時に行われる。接続αは、ブーム20が伏せられた状態で行われる。ブーム20が伏せられた状態とは、ブーム軸方向Aが水平方向または略水平方向になるようにブーム20が配置された状態である(以下同様)。ブーム20が伏せられた状態には、ブーム20接地状態が含まれる。接続αは、
図3に示す上部スプレッダ50がスプレッダ取付位置50Aに配置された状態で行われる。接続αは、上部スプレッダ50およびスプレッダ取付部70にピンP1が取り付けられた状態で行われてもよく、ピンP1が取り外された状態で行われてもよい。取付ロープ85(スプレッダ側ロープ85b)は、上部スプレッダ50取付工程の完了後に、上部スプレッダ50から取り外される。なお、取付ロープ85(スプレッダ側ロープ85b)は、上部スプレッダ50に常設されてもよい。スプレッダ側ロープ85bが上部スプレッダ50に常設される場合、接続αは1回のみ行われればよい。
【0048】
(巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとの接続)
図2に示す巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとの、着脱部85cでの接続(「接続β」とする)は、次のように行われる。接続βは、地面に近い位置で行われることが好ましい。接続βは、巻取装置80による取付ロープ85の巻き取りの前に行われる。接続βは、巻取装置80による取付ロープ85の巻き取りの直前に行われてもよく、吊上作業の前に行われてもよく、ブーム20の組立時に行われてもよい。接続βは、上部スプレッダ50がスプレッダ取付部70よりも上側Z1にある(浮いている)時に行われてもよい。接続βは、ブーム20が伏せられた状態で行われる。接続βは、スプレッダ取付部70よりも下側Z2で行われる。
図2に示す例では、接続βは、伏せられた状態のブーム20の下部よりも下側、すなわちブーム腹面20vよりも下側Z2で行われる。接続βは、伏せられた状態のブーム20の下部(ブーム20の中心軸よりも下側Z2部分)、例えばブーム腹面20vの近傍で行われてもよい。接続βは、ブーム背面20bとブーム腹面20vとの間で行われてもよい。巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとは、上部スプレッダ50取付工程の完了後に、着脱部85cで切り離される。
【0049】
(取付部85b1のブーム20への取り付け)
巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとが着脱部85cで切り離された状態で吊上作業が行われる場合は、
図1に示すように、スプレッダ側ロープ85bの取付部85b1が、ブーム20に取り付けられる(「取り付けγ」とする)。取り付けγにより、吊上作業時にスプレッダ側ロープ85bが邪魔になることが抑制される。取り付けγは、吊上作業が行われる前に行われ、例えばブーム20の組立時に行われ、例えばブーム20が伏せられた状態で行われる。
図4において二点鎖線で示すスプレッダ側ロープ85bのように、取り付けγは、スプレッダ取付部70よりも下側Z2で行われ、ブーム腹面20vまたはその近傍で行われ、ブーム背面20bとブーム腹面20vとの間で行われてもよい。
【0050】
取り付けγが行われた取付部85b1の位置、およびスプレッダ側ロープ85bの長さは、次の条件を満たすように設定される。ブーム20が起伏すると、スプレッダ取付部70から上部スプレッダ50までの距離が変わる(
図1および
図2参照)。この距離は、ブーム20が伏せられた状態よりも、ブーム20が起こされた状態の方が長くなる。そこで、
図1に示すブーム20が起伏した時に、スプレッダ側ロープ85bが上部スプレッダ50の動きを阻害しないように、取付部85b1の位置およびスプレッダ側ロープ85bの長さが設定される。例えば、スプレッダ取付部70から上部スプレッダ50までの距離が最も長くなったときでも、スプレッダ側ロープ85bが伸びきらないように設定される。
【0051】
(着脱部85cのブーム20への取り付け)
図2に示す巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとが着脱部85cで接続された状態で吊上作業が行われる場合は、着脱部85cが、ブーム20に取り付けられる(「取り付けδ」とする)(図示なし)。取り付けδにより、吊上作業時に、取付ロープ85および着脱部85cが邪魔になることが抑制される。着脱部85cの取り付けδの位置およびタイミングは、取付部85b1のブーム20への取り付けγと同様である。
【0052】
(巻取装置80のリービングウインチとの兼用)
巻取装置80は、リービングウインチと兼用される。リービングウインチは、
図1に示す巻上ロープ25をブーム20に取り付けるためのウインチである。巻取装置80は、ブーム20の組立時に、リービングウインチとして用いられる。巻取装置80は、ブーム20の分解時に、上部スプレッダ50取付工程に用いられる。そのため、巻取装置80がリービングウインチと兼用されても問題がない。
【0053】
(第1の発明の効果)
図2に示す上部スプレッダ50取付方法による効果は次の通りである。上部スプレッダ50取付方法は、クレーン1に用いられる。
【0054】
[構成1−1]クレーン1は、本体10と、ブーム20と、ガントリ30と、ガイライン41と、起伏ロープ45と、上部スプレッダ50と、スプレッダ取付部70と、巻取装置80と、取付ロープ85と、を備える。ブーム20は、本体10に起伏自在に取り付けられる。ガントリ30は、本体10に取り付けられ、ブーム20を起伏させる。ガイライン41は、ブーム20に接続される。起伏ロープ45は、ガントリ30に設けられる下部スプレッダ43に接続される。上部スプレッダ50は、ガイライン41と起伏ロープ45とに接続される。スプレッダ取付部70は、ブーム20に固定され、上部スプレッダ50を取り付け可能に構成される。
【0055】
[構成1−2]巻取装置80は、ブーム20または本体10に取り付けられる。取付ロープ85は、巻取装置80に巻き取られ、上部スプレッダ50に取り付けられる。
[構成1−3]
図3に示すように、取付ロープ85は、スプレッダ取付位置50Aを通る。スプレッダ取付位置50Aは、スプレッダ取付部70に上部スプレッダ50が取り付けられたときの上部スプレッダ50の位置である。
[構成1−4]
図2に示すように、ブーム20が接地した状態で、起伏ロープ45が繰り出され、巻取装置80が取付ロープ85を巻き取る。
【0056】
上記[構成1−2]および[構成1−4]により、巻取装置80が、取付ロープ85を介して、上部スプレッダ50を引っ張る。このとき、上記[構成1−3]のように、取付ロープ85は、スプレッダ取付位置50A(
図3参照)を通る。よって、上部スプレッダ50を、スプレッダ取付位置50Aに向かって移動させることができる。よって、上部スプレッダ50をスプレッダ取付部70に容易に取り付けることができる。
【0057】
(第1の発明の効果の具体例)
上記の[構成1−1]〜[構成1−3]を備えない場合は、次の問題がある。起伏ロープ45が繰り出されることで上部スプレッダ50がブーム20側(下側Z2)に移動するとき、上部スプレッダ50が、スプレッダ取付部70に対してブーム先端側A1またはブーム基端側A2にずれるおそれがある。この原因は、例えば次の通りである。
【0058】
[原因の例1]ガイライン41は、使用により伸びる。例えば、新品のガイライン41よりも、長時間使用したガイライン41の方が長い。そのため、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50の位置が、ガイライン41が伸びるにしたがって、ブーム基端側A2にずれていく。
【0059】
[原因の例2]
図2に示す例では、ガイライン41は、ブーム20よりも上側Z1に配置されている(浮き上がっている)。一方、例えばブーム20が
図2に示すものよりも長い場合などには、ガイライン41が、ブーム背面20bに乗せられる場合もある。例えば、
図2に示す状態から起伏ロープ45が繰り出される。すると、ガイライン41に張力が残った状態で(ガイライン41が引き伸ばされた状態で)、ガイライン41が、ブーム先端側A1からブーム基端側A2にブーム背面20bに乗っていく。その結果、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50の位置が、ブーム基端側A2にずれる。
【0060】
[原因の例3]上記の原因の例1、2のようにガイライン41が伸びることを想定してガイライン41の長さを設定しても、ガイライン41の伸びが想定よりも少なくなる場合がある。この場合、スプレッダ取付部70に対する上部スプレッダ50の位置が、ブーム先端側A1になる。
【0061】
上記の各原因により、上部スプレッダ50をスプレッダ取付部70に取り付けるのが難しいおそれがある。例えば、上部スプレッダ50がスプレッダ取付部70に引っ掛かるおそれがある。また、
図3に示すスプレッダ側ガイド部54および取付部側ガイド部74によるガイドができないおそれがある。そのため、スプレッダ側ピン孔55と取付部側ピン孔75との位置が合わず、ピンP1を差し込めないおそれがある。一方、本実施形態では、これらの問題を抑制できる。
【0062】
(第2の発明の効果)
[構成2]
図4に示す取付ロープ85の上部スプレッダ50への取り付けは、ブーム20による吊上作業が行われる前に行われる。取付ロープ85の上部スプレッダ50への取り付けは、ブーム20が伏せられた状態、かつ、上部スプレッダ50がスプレッダ取付位置50A(
図3参照)に配置された状態で行われる。
【0063】
上記[構成2]により、スプレッダ取付位置50A(
図3参照)よりも上側Z1に上部スプレッダ50が配置された状態で、上部スプレッダ50に取付ロープ85が接続される場合に比べ、取付ロープ85の上部スプレッダ50への接続の作業を容易に行える。
【0064】
(第3の発明の効果)
[構成3−1]
図2に示すように、取付ロープ85は、巻取装置側ロープ85aと、スプレッダ側ロープ85bと、着脱部85cと、を備える。巻取装置側ロープ85aは、巻取装置80に取り付けられる。スプレッダ側ロープ85bは、上部スプレッダ50に取り付けられる。着脱部85cは、巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとを着脱自在に接続する。
【0065】
[構成3−2]巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとの着脱部85cでの接続は、巻取装置80が取付ロープ85を巻き取る前に、ブーム20が伏せられた状態で、スプレッダ取付部70よりも下側Z2で行われる。
【0066】
上記[構成3−2]により、次の効果が得られる。スプレッダ取付部70の位置またはスプレッダ取付部70よりも上側Z1で、取付ロープ85に関する作業が行われる場合に比べ、取付ロープ85に関する作業位置(取付ロープ85の組立高さ)を低くできる。例えば、スプレッダ取付部70に取り付けられた上部スプレッダ50に取付ロープ85を取り付ける場合の作業位置に比べ、着脱部85cでの着脱作業の作業位置は低い。よって、取付ロープ85に関する作業を容易に行える。
【0067】
(第4の発明の効果)
[構成4]巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとの着脱部85cでの接続は、伏せられた状態のブーム20の下部、または、伏せられた状態のブーム20の下部よりも下側Z2で行われる。
【0068】
上記[構成4]により、取付ロープ85に関する作業を地面の近くで行える。よって、取付ロープ85に関する作業を容易に行える。
【0069】
(第5の発明の効果)
[構成5]
図4に示すように、スプレッダ側ロープ85bのうち上部スプレッダ50に近い側とは反対側の部分(取付部85b1)は、ブーム20による吊上作業が行われる前に、ブーム20に取り付けられる。
【0070】
上記[構成5]により、
図1に示すように、吊上作業時に、スプレッダ側ロープ85bが邪魔になることを抑制できる。例えば、スプレッダ側ロープ85bが他の部材と干渉することなどを抑制できる。
【0071】
(第6の発明の効果)
[構成6]
図2に示す巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとの着脱部85cでの接続は、ブーム20による吊上作業が行われる前に行われる。着脱部85cは、吊上作業が行われる前に、ブーム20に取り付けられる。
【0072】
上記[構成6]により、吊上作業時に、取付ロープ85が邪魔になることを抑制できる。
【0073】
(第7および第11の発明の効果)
[構成7]巻取装置80は、リービングウインチと兼用される。リービングウインチは、ブーム20で吊荷を吊り上げるための巻上ロープ25(
図1参照)をブーム20に取り付けるためのものである。
【0074】
上記[構成7]により、上部スプレッダ50のスプレッダ取付部70への取り付け専用のウインチを設ける必要がない。よって、クレーン1のコストを抑制できる。
【0075】
(第8の発明の効果)
図2に示すクレーン1による効果は次の通りである。
[構成8]クレーン1は、上記[構成1−1]、[構成1−2]および[構成1−3]を備える。
【0076】
上記[構成8]により、ブーム20が接地した状態で、起伏ロープ45が繰り出され、巻取装置80が取付ロープ85を巻き取った場合は、上記「(第1の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
【0077】
(第9の発明の効果)
[構成9]クレーン1は、上記[構成3−1]を備える。着脱部85cは、ブーム20が伏せられた状態のとき、スプレッダ取付部70よりも下側Z2に配置される。
【0078】
上記[構成9]により、上記「(第3の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
【0079】
(第10の発明の効果)
[構成10]着脱部85cは、ブーム20が伏せられた状態のとき、ブーム20の下部、または、ブーム20の下部よりも下側Z2に配置される。
【0080】
上記[構成10]により、上記「(第4の発明の効果)」と同様の効果が得られる。
【0081】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態のクレーン201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態のクレーン201のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した。相違点は、巻取装置280および取付ロープ285の構成である。
【0082】
巻取装置280は、次のように構成される。
図2に示すように、第1実施形態の巻取装置80は、下部ブーム21のブーム基端側A2部分に配置された。一方、
図6に示すように、巻取装置280は、下部ブーム21のブーム先端側A1の端部に配置される。巻取装置280は、下部ブーム21のブーム腹面側H2の端部に配置される。
図2に示す第1実施形態の巻取装置80は、リービングウインチと兼用された。一方、
図6に示す巻取装置280は、リービングウインチと兼用されず、上部スプレッダ50のスプレッダ取付部70への取付作業専用である。
【0083】
取付ロープ285は、次のように構成される。
図2に示すように、第1実施形態の取付ロープ85は、巻取装置側ロープ85aとスプレッダ側ロープ85bとに着脱部85cで分割された。一方、
図6に示すように、取付ロープ285は、分割されない。取付ロープ285は、第1実施形態のスプレッダ側ロープ85b(
図2参照)と同様に、上部スプレッダ50に取り付けられる。例えば、取付ロープ285は、ブーム20が伏せられた状態で、上部スプレッダ50がスプレッダ取付位置50A(
図3参照)に配置された状態(
図4参照)で、上部スプレッダ50に取り付けられる。なお、取付ロープ285は、上部スプレッダ50に常設されてもよい。
【0084】
(巻取装置80、280の位置の変形例)
図2において二点鎖線で示すように、巻取装置180は、本体10に取り付けられてもよい。巻取装置180は、上部旋回体13に取り付けられてもよく、下部走行体11の本体部に取り付けられてもよい。
図6において二点鎖線で示すように、巻取装置380は、ブーム背面20bに配置されてもよく、例えばブーム背面20bの足場上に配置されてもよい。巻取装置380は、スプレッダ取付部70の近傍に配置されてもよく、例えば、横方向Yから見てスプレッダ取付部70と重なる位置に配置されてもよい。
【0085】
(着脱部85cをブーム20に固定しない場合)
図2に示す着脱部85cは、吊上作業前にブーム20に固定されなくてもよい。この場合、ブーム20が起伏し、スプレッダ取付部70から上部スプレッダ50までの距離が変わると、着脱部85cが移動する。この時に、着脱部85cが取付ロープ85の動きを阻害しないように、着脱部85cの位置が設定される。例えば、着脱部85cがアイドラシーブ89に干渉しないように、着脱部85cの位置が設定される。例えば、巻取装置80とアイドラシーブ89との間で着脱部85cが移動できるように、着脱部85cの位置が設定される。例えば、アイドラシーブ89とスプレッダ取付部70との間で着脱部85cが移動できるように、着脱部85cの位置が設定される。
【0086】
(その他の変形例)
第1実施形態、第2実施形態、および変形例の、構成要素のどうしが組み合わされてもよい。例えば、上部スプレッダ50のスプレッダ取付部70への取付作業専用の巻取装置280(
図6参照)が、
図2に示す巻取装置80と同様の位置に配置されてもよい。各構成要素の形状が変更されてもよい。例えば、
図3に示すスプレッダ側ガイド部54および取付部側ガイド部74の形状が変更されてもよい。また、構成要素の一部が設けられなくてもよく、構成要素の数が変更されてもよい。