特許第6686792号(P6686792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686792
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】分析データ表示処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20200413BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   G01N30/86 D
   G01N27/62 Y
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-164238(P2016-164238)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-31681(P2018-31681A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 穣
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/107671(WO,A1)
【文献】 特開2007−148949(JP,A)
【文献】 特開2014−219317(JP,A)
【文献】 特開2013−002967(JP,A)
【文献】 特開2004−309250(JP,A)
【文献】 特開2009−089065(JP,A)
【文献】 特開平06−314149(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0120823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 −30/96
B01J 20/281−20/292
G01N 1/00 − 1/44
G01N 35/00 −37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析データを基にグラフを作成し、表示装置の表示画面上に設定されたグラフ表示領域中に該グラフを描画する処理を行う、分析データ表示処理装置であって、
a)前記グラフ表示領域中に、ユーザがポインティングデバイスを用いて操作可能なポインタを表示するポインタ表示手段と、
b)前記ポインタが前記グラフ上に置かれた時点から所定の遅れ時間が経過した時点での、前記グラフ上における前記ポインタの位置を取得するポインタ位置決定手段と、
c)前記ポインタ位置決定手段が前記ポインタ位置を取得する都度、該ポインタ位置に関連する前記分析データを基に、付加情報を作成する情報作成手段と、
d)前記付加情報を可視化して、前記グラフ表示領域中の前記ポインタ位置の近傍に表示する情報表示手段と、
を備えることを特徴とする分析データ表示処理装置。
【請求項2】
e) ユーザからの入力に応じて、前記遅れ時間を設定する遅れ時間設定手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の分析データ表示処理装置。
【請求項3】
f) 前記情報表示手段が前記ポインタ位置の近傍に表示する前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、前記情報作成手段によって作成可能な前記付加情報の中から選択して設定する表示設定手段と、
g) 前記表示設定手段によって設定された設定情報が記憶される表示設定記憶手段と、
をさらに備え、
前記情報作成手段は、前記表示設定記憶手段に記憶される前記設定情報に従って、前記付加情報を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の分析データ表示処理装置。
【請求項4】
前記情報表示手段は、前記グラフ表示領域中に表示された前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、表示された当該位置に定着表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の分析データ表示処理装置。
【請求項5】
前記情報表示手段は、前記グラフ表示領域中に定着表示された前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、表示された当該位置からグラフ表示領域中の他の位置に移動させて表示することを特徴とする請求項4に記載の分析データ表示処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析データに基づき作成される各種の分析結果を表示画面上に表示するための分析データ表示処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の分析装置を用いて行われた分析ではデータが収集され、該データを基に分析データ表示処理装置が表示装置の表示画面上にグラフを表示する。例えば、液体クロマトグラフ(LC)、ガスクロマトグラフ(GC)等を用いた分析では、保持時間及び信号強度という二つの次元に関するデータが収集され、該データを基に、分析データ表示処理装置がクロマトグラム等のグラフを表示装置の表示画面上に表示する。特許文献1に記載されるように、従来の分析データ表示処理装置は、クロマトグラムを表示画面上に表示する際、クロマトグラム上の各ピークに関するピーク情報(ピーク保持時間、ピーク高さ、成分名等)を、該当するピークトップ付近に出力する。
【0003】
このような従来の分析データ表示処理装置では、クロマトグラム上の表示スペースが限られることから、ピークトップ付近に出力されるピーク情報は事実上一種類に限られ、出力されたもの以外のピーク情報は、該クロマトグラムが表示された表示領域とは別の表示領域に、一括してテーブル等として表示される。そのため、ユーザは、分析結果を解析する際、表示画面上の離れた位置に表示されたクロマトグラムとテーブルとを交互に参照しなければならなかった。
【0004】
また、例えば、検出器としてフォトダイオードアレイ(PDA)検出器や質量分析計(MS)等を用いたクロマトグラフ分析では、保持時間及び信号強度のほかに第三の次元として波長又は質量電荷比(m/z)に関するデータが収集され、該データを基に、分析データ表示処理装置が、三次元クロマトグラム、トータルイオンクロマトグラム(TIC)、特定の波長又は質量電荷比における二次元クロマトグラム、特定の保持時間における波長スペクトル又はマススペクトル等を含む各種のグラフを表示画面上に表示する。特許文献2に記載されるような、従来の分析データ表示処理装置は、このような各種のグラフを表示画面上の離れた位置にそれぞれ別の表示領域として表示する。このような従来の分析データ表示処理装置を用いて、一つのグラフを表示画面上の一つの表示領域中に表示させた状態から他のグラフを表示させる際には、ユーザは、該表示領域中に表示されているポインタをマウスを用いて動かし、グラフ上のある位置にポインタを置き、該位置における他のグラフを表示するように分析データ表示処理装置に指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−101184号公報
【特許文献2】特開2014−20857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の分析データ表示処理装置においては、特定のグラフ位置を指定するためユーザが注視しているポインタの位置とは離れた位置に他のグラフが表示されるため、ユーザは、ポインタの位置とグラフ表示位置との間で視点を大きく移動させる必要があり、結果解析作業において大きな負担となっている。また最近では、コンピュータ用モニタの大画面化によって、従来に比して大きなサイズでグラフを表示させることが多くなり、視線の移動距離がさらに伸び、ユーザの負担が増している。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、分析結果を解析する際のユーザの視点移動を少なくして、ユーザの負担を軽減することができる分析データ表示処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明は、
分析データを基にグラフを作成し、表示装置の表示画面上に設定されたグラフ表示領域中に該グラフを描画する処理を行う、分析データ表示処理装置であって、
a)前記グラフ表示領域中に、ユーザがポインティングデバイスを用いて操作可能なポインタを表示するポインタ表示手段と、
b)前記ポインタが前記グラフ上に置かれた時点から所定の遅れ時間が経過した時点での、前記グラフ上における前記ポインタの位置を取得するポインタ位置決定手段と、
c)前記ポインタ位置に関連する前記分析データを基に、付加情報を作成する情報作成手段と、
d)前記付加情報を可視化して、前記グラフ表示領域中の前記ポインタ位置の近傍に表示する情報表示手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、表示画面上に設定されたグラフ表示領域中のグラフ上に、ユーザがポインタを合わせるだけで、分析データを基に得られるその位置に関連する各種の情報(付加情報)を、当該グラフ表示領域中に表示させることができるから、結果解析する際にユーザは当該グラフ表示領域から視点を移動させる必要がなく、ユーザの負担が軽減された分析結果表示を実現することができる。また、ポインタ位置に関連する分析データを基に得られる各種の情報(付加情報)を、当該ポインタ位置の近傍に表示することができるから、視覚的に結果内容を把握しやすい分析結果表示を実現することができる。
【0010】
本発明における「付加情報」には、ポインタ位置におけるグラフの座標や、ポインタ位置に関連する分析データを基に算出されるグラフの値、ポインタ位置に関連する分析データを基に作成可能な他のグラフ等、ポインタ位置に関連する分析データを基に作成可能なものであれば特に限られず、文字情報や、数値、グラフなどとして可視化して表示されるものを含む。
【0011】
本発明における「所定の遅れ時間」とは、グラフ上にユーザがポインタを置いた時点から、ポインタ位置決定手段がグラフ上における該ポインタの位置を取得する時点までの間の時間であり、その遅れ時間は、ユーザが視覚認識できない程に短いもの(この場合、ユーザがグラフ上のある位置にポインタを置いたとほぼ同時に付加情報が表示されることになる。)であってもよく、また、比較的長いもの(この場合、ユーザがグラフ上のある位置にポインタを置いた後しばらくその位置にポインタを保持すると付加情報が表示される。)であってもよい。
【0012】
本発明において前記情報表示手段が付加情報を「ポインタ位置の近傍」に表示するとは、可視化された付加情報の端が、ポインタ位置から、該ポインタの大きさの2倍程度以内の範囲内に存在することを言う。
【0013】
本発明において「分析データ」とは、液体クロマトグラフ分析装置(LC)、ガスクロマトグラフ分析装置(GC)等の様々な分析装置を用いて収集された分析データのことをいう。また、該分析データに基づき作成される「グラフ」は、分析により収集されたデータを基に作成されるグラフであれば特に限られず、例えば、クロマトグラム、マススペクトル、吸光度スペクトル、二次元等高線図等の二次元マッピング、三次元マッピング等が含まれる。
【0014】
本発明に係る分析データ表示処理装置は、
e) ユーザからの入力に応じて、前記遅れ時間を設定する遅れ時間設定手段
をさらに備えていてもよい。
【0015】
この構成によれば、グラフ上にユーザがポインタを置いてから、ポインタ位置決定手段がポインタ位置を取得するまでの間の時間を、ユーザが任意に決めることができるから、ユーザがポインタをグラフ上で速く移動させたときには付加情報が表示されず、ポインタをグラフ上でしばらく保持したときにのみ付加情報が表示されるようにすることができる。また、付加情報の情報作成及び表示に時間がかかる場合(例えば、付加情報として、ポインタ位置に関連する分析データを基に作成される他のグラフを描画させる場合等)であっても、遅れ時間を長く設定することによって、データ収集処理のためポインタがその場でフリーズすることを防ぐことができる。従って、この構成によれば、ポインタのスムーズな移動を妨げることがない。
【0016】
本発明に係る分析データ表示処理装置は、
f) 前記情報表示手段が前記ポインタ位置の近傍に表示する前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、前記情報作成手段によって作成可能な前記付加情報の中から選択して設定する表示設定手段と、
g) 前記表示設定手段によって設定された設定情報が記憶される表示設定記憶手段と、
をさらに備え、
前記情報作成手段は、前記表示設定記憶手段に記憶される前記設定情報に従って、前記付加情報を作成することが望ましい。
【0017】
この構成によれば、付加情報としてポインタ位置の近傍に表示させる情報を、ユーザがあらかじめ決めておくことができるから、ユーザの必要に応じた分析結果表示を実現することができる。
【0018】
本発明に係る分析データ表示処理装置において、
前記情報表示手段は、前記グラフ表示領域中に表示された前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、表示された当該位置に定着表示してもよい。
【0019】
この構成によれば、ユーザがポインタを移動させても、表示された付加情報が当該位置に定着表示されているので消えることがなく、また、複数の付加情報を同時に表示させることができる。
【0020】
本発明に係る分析データ表示処理装置において、
前記情報表示手段は、前記グラフ表示領域中に定着表示された前記付加情報を、ユーザからの入力に応じて、表示された当該位置からグラフ表示領域中の他の位置に移動させて表示してもよい。
【0021】
この構成によれば、ユーザが、グラフ表示領域中の適当な位置に付加情報を移動させることができるから、表示された付加情報によりグラフの全体形状を観察しにくくなるということが防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る分析データ表示処理装置によれば、分析データから得られる各種の情報(付加情報)をユーザが操作するポインタの近傍に表示させることができるから、結果解析する際にユーザは当該分析データのグラフが表示されている領域から視点を移動させる必要がなく、ユーザの負担が軽減された分析結果表示を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る分析データ表示処理装置を含むLC/MSシステムの一実施形態の概略構成図。
図2】本実施形態に係る分析データ表示処理装置による表示画面の一例を示す図。
図3】付加情報を表示した後の、本実施形態に係る分析データ表示処理装置による特徴的な表示画面の一例を示す図。
図4】複数の付加情報を表示したときの、本実施形態に係る分析データ表示処理装置による特徴的な表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る分析データ表示処理装置を含むLC/MSシステムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
まず、図1を参照しながら、本実施例におけるLC/MSシステムの全体構成について説明する。このLC/MSシステムは、試料中の含有成分を時間的に分離する液体クロマトグラフ(LC部)1と、分離された各成分を検出する第一の検出器であるPDA検出器2と、PDA検出器2を通過した(又はPDA検出器2の手前で一部分岐された)試料中の各成分を質量電荷比(m/z)に応じて分離して検出する質量分析計(MS部)3と、このLC/MSシステムにおける演算及び制御を担う中央処理部(CPU)4と、中央処理部4で実行されるプログラム等を記憶するメモリである記憶部5と、ユーザが操作するマウス等のポインティングデバイスである操作部6と、表示モニタである表示部7とを含む。
【0026】
詳しくは後述するが、中央処理部4には、PDA検出器2及びMS部3において得られた分析データを処理する分析データ処理部41と、分析データに基づいてグラフを作成し、表示部7上に設定されたグラフ表示領域71中に描画する処理を行うグラフ表示処理部42と、グラフ表示領域71中にポインタ101を表示するポインタ表示部43と、ユーザがポインタ101をグラフ100上に置いた時点から所定の遅れ時間が経過した時点での、該ポインタ101の位置を取得するポインタ位置決定部44と、ポインタ位置決定部44によって取得されたポインタ位置に関連する分析データを基に、付加情報102を作成する情報作成部45と、情報作成部45によって作成された付加情報102をグラフ表示領域71中のポインタ位置の近傍に表示する情報表示部46と、ポインタ位置決定部44がポインタ位置を取得するまでの遅れ時間を設定する遅れ時間設定部47と、付加情報102として表示させる情報を設定する表示設定部48と、が含まれる。記憶部5には、PDA検出器2及びMS部3において取得され、分析データ処理部41によって処理された分析データが記憶される分析データ記憶部51と、表示設定部48によって設定された設定情報が記憶される表示設定記憶部52と、が含まれる。
【0027】
なお、中央処理部4及び記憶部5の各部は、パーソナルコンピュータをハードウエア資源として用い、パーソナルコンピュータにあらかじめインストールされた専用のデータ処理用ソフトウエアをコンピュータ上で実行することによりそれぞれの機能が実現される。
【0028】
本実施形態におけるLC/MSシステムでは、以下のようにして分析データが取得され、分析データ記憶部51に保存される。すなわち、LC部1に試料が導入されると、試料中の含有成分は、カラムを通過する間に各成分に分離され、互いに異なる時間でカラムから溶出する。PDA検出器2は、カラムから溶出した各成分に対し、あらかじめ設定された1乃至複数の波長における吸光度を所定時間間隔で繰り返し測定する。一方、MS部3は、PDA検出器2を通過した(又はPDA検出器2の手前で一部分岐された)試料中の各成分に対し、所定の質量電荷比範囲におけるイオン量に対応した信号強度を、繰り返しスキャン測定する。なお、MS部3は、あらかじめ設定された1乃至複数の質量電荷比におけるイオン量に対応した信号強度を所定時間間隔で繰り返し測定してもよい。この測定により、PDA検出器2では1乃至複数の波長毎に、試料注入時点から試料溶出終了時点までの分析データが得られ、MS部3では1乃至複数の質量電荷比毎に、試料注入時点から試料溶出終了時点までの分析データが得られる。これらの分析データは、分析データ処理部41によって処理された後、分析データ記憶部51に保存される。
【0029】
次に、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る分析データ表示処理装置を用いて分析結果を表示部7上に表示させる際のユーザの操作と、該操作に応じて行われる分析データ表示処理装置の各処理について説明する。
【0030】
上述のようにして分析データが取得され、分析データ記憶部51に保存されている状態で、グラフ100をグラフ表示領域71中に表示させるときの過程を説明する。まず、分析データ記憶部51に保存されている分析データの一覧が中央処理部4によって分析データ一覧表示領域70中に表示され、ユーザは、その一覧の中から結果解析したい分析データを操作部6を用いて選択する。選択された該分析データに基づきグラフ表示処理部42が描画可能なグラフ種類の一覧が中央処理部4によって表示部7上に表示されると、ユーザは、その一覧の中からグラフ100として描画させたいグラフ種類を、操作部6を用いて選択する。グラフ表示処理部42は、分析データ記憶部51に保存される分析データを基に、グラフ100を作成して、表示部7上に設定されたグラフ表示領域71中に描画する。
【0031】
図2には、例として、MS部3において検出されたすべてのイオン強度を加算した全強度の時間変化を表すトータルイオンクロマトグラム(TIC)をグラフ100として表示したときのグラフ表示領域71を示す。グラフ表示領域71中には、ユーザが操作部6を用いて操作可能なポインタ101が、ポインタ表示部43によって表示されている。
【0032】
次に、グラフ100がグラフ領域71中に表示されている状態から、付加情報102を表示させるときの過程を説明する。グラフ表示領域71中に表示されたグラフ100を確認した上で、ユーザが、例えば、該グラフ100におけるマススペクトルを確認したい位置上(図3に示すような、TIC上に現れた肩ピーク等)に、操作部6を用いてポインタ101を置くと、ポインタ位置決定部44は、ポインタ101が置かれた時点から所定の遅れ時間が経過した時点での、グラフ100上におけるポインタ101の位置(ポインタ位置)を取得する。情報作成部45は、分析データ記憶部51に保存されている分析データの中から、この取得されたポインタ位置に関連する分析データを基に、付加情報102を作成する。情報表示部46は、この付加情報102をグラフ表示領域71中の該ポインタ位置の近傍に表示する。図3では、付加情報102として、マススペクトルを表示させたときのグラフ表示領域71を示す。
【0033】
本実施形態における中央処理部4には、グラフ100上にポインタ101が置かれた時点から、ポインタ位置決定部44が、グラフ100上におけるポインタ101の位置(ポインタ位置)を取得する時点までの時間(遅れ時間)を、ユーザからの入力に応じて設定する遅れ時間設定部47が含まれている。図2に示すように、表示部7の画面上には、本実施形態に係る分析データ表示処理装置による各表示を操作するための操作パネル72が表示されており、遅れ時間を設定するためのスライダー表示73が、この操作パネル72上に表示されている。ユーザは、このスライダー表示73を用いて、該遅れ時間を任意に設定することができる。ポインタ位置決定部44は、この設定された遅れ時間が経過した時点で、グラフ100上におけるポインタ101の位置(ポインタ位置)を取得する。遅れ時間を短く(例えば、ユーザが視覚認識できない程に短く)設定した場合には、ポインタ101がグラフ100上に置かれたとほぼ同時に付加情報102が表示されることになり、遅れ時間を長く(例えば、1秒以上)設定した場合には、ユーザがポインタ101をグラフ100上で素早く移動させたときには付加情報102が表示されず、ポインタ101をグラフ100上で所定の遅れ時間だけ保持したときにのみ付加情報102が表示されることになる。
【0034】
上述した図2ではグラフ100としてTICを、図3では付加情報102としてマススペクトルを表示したものを例として挙げたが、本実施形態に係る分析データ表示処理装置において、グラフ100又は付加情報102として表示されるグラフはこれらに限られるわけではなく、分析データ記憶部51に保存されている分析データを基に作成可能なグラフであれば何であってもよい。例えば、PDA検出器2及びMS部3では、時間、信号強度、波長又は質量電荷比、という三つの次元を有する分析データが収集されるから、該分析データに基づいて二次元等高線図等のマッピング画像を作成し表示してもよい。あるいは、グラフ以外にも、例えば、グラフ100の座標の値、試料やデータに関する情報、グラフ情報等、従来の分析データ表示処理装置が作成表示可能な各種の情報を、付加情報102として表示することができる。
【0035】
すなわち、本実施形態に係る分析データ表示処理装置では、表示部7上に設定されたグラフ表示領域71中に描画されたグラフ100上に、ユーザがポインタ101を置くだけで、その位置に関連する分析データを基に作成される各種の情報(付加情報102)を、当該グラフ100が表示されたグラフ表示領域71中に表示させることができるから、結果解析する際に、ユーザは当該グラフ表示領域71上から視点を移動させる必要がなく、ユーザの負担が軽減された分析結果表示を実現することができる。また、ポインタ位置に関連する分析データを基に得られる各種の情報(付加情報102)を、当該ポインタ位置の近傍に表示せることができるから、視覚的に結果内容を把握しやすい分析結果表示を実現することができる。
【0036】
本実施形態における中央処理部4には、さらに、情報表示部46がポインタ位置の近傍に表示する付加情報102を、ユーザからの入力に応じて、情報作成部45によって作成可能な付加情報の中から選択して設定する表示設定部48が含まれている。この表示設定部48によって設定された設定情報は、記憶部5に含まれる表示設定記憶部52において記憶され、情報作成部45は、表示設定記憶部52に記憶されるこの設定情報に従って、付加情報102を作成する。これによれば、ユーザは、付加情報102としてポインタ位置の近傍に表示させる情報をあらかじめ決めておくことができるから、ユーザの必要に応じた分析結果表示を実現することができる。
【0037】
本実施形態における情報表示部46は、ポインタ位置の近傍に表示された付加情報102を、ユーザからの入力に応じて、グラフ表示領域71中の当該位置に、定着表示させることができる。このときの操作部6を用いたユーザの操作は、例えば、ポインタ101が当該ポインタ位置上にある状態で、マウスボタンをクリックする操作や、マウスの右ボタンをクリックをして、表示されたメニューの中から「定着表示」のアイコンを選択する操作等である。これによれば、ユーザがポインタ101を移動させた後も、定着表示された付加情報102は消えることがなく、また、グラフ表示領域71中に複数の付加情報102を同時に表示させることができる。
【0038】
このとき、情報表示部46は、定着表示されている付加情報102を、ユーザからの入力に応じて、グラフ表示領域71中の他の位置に移動させて表示することもできる。このときの操作部6を用いたユーザの操作は、例えば、定着表示された付加情報102上にポインタ101を置き、その位置でマウスボタンをプレスし、そのままグラフ表示領域71中の適当な位置までドラッグしてからリリースする操作等である。図3には、このようにして、情報表示部46が、複数の付加情報102をグラフ表示領域71中に表示し、さらに付加情報102のうちの一つをグラフ表示領域71中の他の位置へ移動させて表示したときのグラフ表示領域71の例を示す。これによれば、複数の付加情報102がグラフ表示領域71中に表示されたときでも、ユーザが各付加情報102の表示位置を任意に移動させることができるから、グラフ100の全体形状を観察しにくくなるということが防止される。
【0039】
さらに、本実施形態における分析データ表示処理装置には、上記のようにして付加情報102がグラフ表示領域71中に定着表示されているときに、付加情報102及びグラフ100が表示された該グラフ表示領域71を印刷する印刷手段がさらに備えられている。これにより、付加情報102が表示されている状態でグラフ100を印刷することができるから、分析結果を視覚的に把握しやすいレポートを容易に作成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…LC部
2…PDA検出器
3…MS部
4…中央処理部
41…分析データ処理部
42…グラフ表示処理部
43…ポインタ表示部
44…ポインタ位置決定部
45…情報作成部
46…情報表示部
47…遅れ時間設定部
48…表示設定部
5…記憶部
51…分析データ記憶部
52…表示設定記憶部
6…操作部
7…表示部
70…分析データ一覧表示領域
71…グラフ表示領域
72…操作パネル
73…スライダー表示
100…グラフ
101…ポインタ
102…付加情報
図1
図2
図3
図4