特許第6686818号(P6686818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000002
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000003
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000004
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000005
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000006
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000007
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000008
  • 特許6686818-殺菌剤供給装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686818
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】殺菌剤供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 15/02 20060101AFI20200413BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 15/04 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20200413BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B01F15/02 B
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550B
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550H
   B01F15/04 E
   B01F1/00 F
   B01F3/12
   B01F5/10
   B63B13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-182899(P2016-182899)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-47401(P2018-47401A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】下野 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】原 耕太
(72)【発明者】
【氏名】長藤 雅則
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸彦
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−056296(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0144429(US,A1)
【文献】 特開2013−226531(JP,A)
【文献】 実開昭55−167423(JP,U)
【文献】 特開2002−070144(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/007171(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/010352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/26
C02F 1/00−1/78
B01J 4/00
B63B 13/00
B63J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌用の固形薬剤を水に溶解して得られる殺菌剤を船舶のバラストに用いる水に供給するための殺菌剤供給装置において、
殺菌剤の原料となる固形薬剤を収容するホッパと、
上記ホッパより下方に位置して上記固形薬剤と水を内容物として収容するタンクと、
上記ホッパから上記固形薬剤を小分けに切り出して供給する定量供給機構と、
上記定量供給機構により供給された上記固形薬剤を上記タンクへ移動させる連絡管と、
上記タンク内で又は上記タンクから取り出された後に上記固形薬剤を上記水に溶解させることにより製造される上記殺菌剤を、送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる上記水に注入する殺菌剤注入部を備えており、
上記タンクの上記内容物が上記連絡管を通じて上昇したとき、上記内容物が上記ホッパへ到達することを阻止する上昇防止機構を備えており、
上記上昇防止機構は、上記タンクの上部で上方に向け上記タンク外へ突出する排液筒部と、該排液筒部の上部開口を閉じるように位置して可動に配された排液弁とを有し、上記タンク内の上記内容物が上記排液筒部内にまで上昇したときに、上記排液弁が上記内容物からの浮力を受けて上昇移動し該排液弁が上記排液筒部の上部開口から離間して該上部開口との間に隙間を形成し、上記内容物が該隙間から排出されることを特徴とする殺菌剤供給装置。
【請求項2】
上記排液弁は、上記排液筒部の上記上部開口を閉じるように位置する蓋部と、該蓋部から下方に延びる浮力受部とを有し、該浮力受部が上記排液筒部内の上記内容物から浮力を受けて上記排液弁が上昇移動することとする請求項に記載の殺菌剤供給装置。
【請求項3】
殺菌用の固形薬剤を水に溶解して得られる殺菌剤を船舶のバラストに用いる水に供給するための殺菌剤供給装置において、
殺菌剤の原料となる固形薬剤を収容するホッパと、
上記ホッパより下方に位置して上記固形薬剤と水を内容物として収容するタンクと、
上記ホッパから上記固形薬剤を小分けに切り出して供給する定量供給機構と、
上記定量供給機構により供給された上記固形薬剤を上記タンクへ移動させる連絡管と、
上記タンク内で又は上記タンクから取り出された後に上記固形薬剤を上記水に溶解させることにより製造される上記殺菌剤を、送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる上記水に注入する殺菌剤注入部を備えており、
上記タンクの上記内容物が上記連絡管を通じて上昇したとき、上記内容物が上記ホッパへ到達することを阻止する上昇防止機構を備えており、
上記上昇防止機構は、上記タンク内の上記内容物が設定基準を超えて上昇したときに、上記連絡管によるホッパとタンクとの接続を絶つ機構であり、上記連絡管は、互いに接続するホッパ側の上側管とタンク側の下側管を具備しており、該連絡管内を上昇してきた上記タンク内の上記内容物の自重の作用により、上記上側管及び上記下側管のうちいずれか一方が他方から外れるように構成されていることを特徴とする殺菌剤供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる水に殺菌剤を供給するための殺菌剤供給装置に関する。
【0002】
本発明についての説明を簡明にするため、次に掲げる用語の意味又は解釈は、以下のとおりとする。
(1)「バラスト水」とは、船舶のバラストに用いる水をいう。バラスト水は、海水、汽水又は淡水のいずれでもよい。
(2)「殺菌剤の原料となる固形薬剤」とは、常温下で固体である殺菌剤の原料たる薬剤をいう。「殺菌剤の原料となる固形薬剤」は、それが固体である限り、粉、粒、塊等の形状により限定されない。以下においては、殺菌剤の原料となる固形薬剤を「原料固形薬剤」と略称する場合がある。
(3)「殺菌剤」とは、固形薬剤が水に溶解している状態の液剤をいう。
(4)「塩素系殺菌剤」とは、遊離有効塩素が有する殺菌作用を利用する殺菌剤をいう。ジクロロイソシアヌル酸塩、トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌル酸化合物は、塩素系殺菌剤の代表例であると同時に、殺菌剤の原料となる固形薬剤の代表例でもある。
【背景技術】
【0003】
送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる水に殺菌剤を供給するための殺菌剤供給装置が知られている。
【0004】
この殺菌剤供給装置は、代表的な例として、殺菌剤の原料となる固形薬剤を内容物として収容するホッパと、該ホッパより下方に位置して上記固形薬剤と水を収容するタンクと、該ホッパから上記固形薬剤を小分けに切り出して供給する定量供給機構と、該定量供給機構により供給された上記固形薬剤を上記タンクへ移動させる連絡管と、上記タンク内で又は上記タンクから取り出された後に上記固形薬剤を上記水に溶解された上記殺菌剤を、送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる上記水に注入する殺菌剤注入部を備えている。
【0005】
かかる装置は、例えば、特許文献1に開示されており、この特許文献1では、海水取水ライン2が上記バラスト水配管に、貯留槽12がホッパに、溶解槽14が上記タンクに、切出装置13が上記定量供給機構に、切出装置13から溶解槽14に向かう矢印が上記連絡管に、塩素剤溶液注入装置16が上記殺菌剤注入部に、ポンプ3が上記送水ポンプに、海水が船舶のバラストに用いる上記水に、それぞれ相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−092898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バラスト水配管内を流通するバラスト水の圧力は、必ずしも一定でなく、何らかの原因により変動することがある。その原因の代表例として知られているのは、送水ポンプの起動、停止等により、バラスト水の流れの状態や流速が急激に変化する現象、いわゆる水撃(ウォーターハンマー)現象である。
【0008】
流通するバラスト水の圧力が変動すると、その圧力の変動が殺菌剤注入部に伝わり、殺菌剤注入部とタンクとの間を接続する配管経路に伝わり、最終的にタンクに伝わり、その結果、該配管経路の内容物(原料固形薬剤、その溶媒である水、原料固形薬剤と水の混合物ならびに原料固形薬剤の水溶液のうちの、少なくとも一つ)が、タンクに向かって逆流し、タンクの内容物(原料固形薬剤、その溶媒である水、原料固形薬剤と水の混合物ならびに原料固形薬剤の水溶液のうちの、少なくとも一つ)の液位を上昇させる。タンクの内容物が極端に上昇すると、連絡管を上昇するようになり、定量供給機構を経てホッパ内に到達し、ホッパ内で原料固形薬剤が水と接触するに至る。
【0009】
タンクの内容物が上昇する過程でその内容物と接触した装置、機器等は、動作不良や故障を起こし易くなるので、点検・保守の頻度とコストの増加の原因となる。特に、定量供給機構は、多くの場合、構造が複雑なので点検・保守が煩瑣であり、しかも高価なのでコストの増加に直結し易いので、タンクの内容物と接触することにより生じる不利益は大きい。
【0010】
流通するバラスト水の圧力変動に起因するタンクの内容物の上昇を防止して、ホッパに至らないようにするためには、殺菌剤注入部とタンクとの間を接続する配管経路に逆止弁を設置し、これにより、配管経路の内容物の逆流を防止すればよい。しかし、逆止弁が故障すると又は動作不良に陥ることもある。それ故、流通するバラスト水の圧力変動に起因するタンクの内容物の上昇をより確実に防止するためには、逆止弁の設置の有無にかかわらず、その上昇を防止するのが安全である。
【0011】
本発明は、上記の問題及び事情に鑑みてなされたものであり、配管経路への逆止弁の設置の有無にかかわらず、流通するバラスト水の圧力変動に起因してタンクの内容物の上昇が起こっても、該内容物と装置、機器等との接触を防止することができる殺菌剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る殺菌剤供給装置は、殺菌用の固形薬剤を水に溶解して得られる殺菌剤を船舶のバラストに用いる水に供給する。
【0013】
かかる殺菌剤供給装置において、本発明では、殺菌剤の原料となる固形薬剤を収容するホッパと、上記ホッパより下方に位置して上記固形薬剤と水を内容物として収容するタンクと、上記ホッパから上記固形薬剤を小分けに切り出して供給する定量供給機構と、定量供給機構により供給された上記固形薬剤を上記タンクへ移動させる連絡管と、上記タンク内で又は上記タンクから取り出された後に上記固形薬剤を上記水に溶解させることにより製造される上記殺菌剤を、送水ポンプにより付勢されてバラスト水配管内を移動している、船舶のバラストに用いる上記水に注入する殺菌剤注入部を備えており、上記タンクの上記内容物が上記連絡管を通じて上昇したとき、内容物が上記ホッパへ到達することを阻止する上昇防止機構を備えていることを特徴としている。
【0014】
このような構成の本発明によれば、タンクの内容物が連絡管を通じて上昇してきても、上昇防止機構が内容物のホッパへの到達を阻止し、その結果、内容物と装置、機器等が接触する機会を減らし、装置、機器等の点検・保守の負荷の増加を回避することができるようになる。
【0015】
本発明において、上昇防止機構は、タンク内で設定水準を超えて上昇した該タンクの内容物をタンク外へ排出させる溢流排出管を具備しているようにすることができる。タンク内の内容物がタンク内で設定水準を超えると、内容物は上記溢流排出管から排出され、タンク内では内容物が上記設定水準よりも上昇することがなくなり、連絡管へ至ることがない。
【0016】
本発明において、殺菌剤供給装置は、タンク上部にタンク内の空気を排出するエアベント管を備えていることが好ましい。タンクへホッパから連絡管を経て固形薬剤を供給する際に、タンク内に空気が引き込まれることがある。タンク内に空気が存在していると固形薬剤と水との混合に支障が生じて好ましくない。そこで上記エアベント管を設けることで、上記タンク内の空気は該エアベント管から放出され、上記混合への影響がなくなる。
【0017】
本発明において、エアベント管は、溢流排出管を兼ねているようにしてもよい。
【0018】
本発明において、上昇防止機構は、タンク上部で上方に向けタンク外へ突出する排液筒部と、該排液筒部の上部開口を閉じるように位置して可動に配された排液弁とを有し、タンク内の内容物が上記排液筒部内にまで上昇したときに、上記排液弁が上記内容物からの浮力を受けて上昇移動し該排液弁が排液筒部の上部開口から離間して該上部開口との間に隙間を形成し、内容物が該隙間から排出されるように構成することができる。このような形態のもとでは、タンク内の内容物が上昇して排液筒部内に至り、さらに排液筒部内を上昇すると、排液弁がこの内容物の液面上昇により高さ方向に移動し、排液筒部の上部開口との間に隙間を残し、内容物が該隙間から排出されることとなる。
【0019】
本発明において、排液弁は、排液筒部の上部開口を閉じるように位置する蓋部と、該蓋部から下方に延びる浮力受部とを有し、該浮力受部が排液筒部内の内容物から浮力を受けて排液弁が上昇移動するように構成できる。かかる形態のもとでは、排液弁は浮力受部が排液筒部の内面で案内されて安定した姿勢で上昇する。
【0020】
本発明において、上昇防止機構は、連絡管とタンクとの間に設けられた開閉弁と、該開閉弁からタンク内に向け延びるガイドと、該ガイドにより案内されてタンク内の内容物の液面上で上下動可能な浮体とを有し、該浮体が最上昇位置で上記開閉弁の下側開口を封止するような形態とすることもできる。このように構成することで、内容物が上昇すると浮体がガイドに沿って上昇し、その最上昇位置で開閉弁の下側開口を確実に封止するので、内容物が連絡管内に進入することが確実に阻止される。
【0021】
本発明において、上昇防止機構は、タンク内の内容物が設定基準を超えて上昇したときに、連絡管によるホッパとタンクとの接続を絶つ機構とすることもできる。
【0022】
前出の諸形態では、連絡管が物理的にホッパとタンクとを接続したままの状態で、連絡管とは別に溢流排出管や排液弁を設けることで内容物の上昇分を排出したり、連絡管に設けられた開閉弁を上昇する内容物により上昇する浮体で封止したりしていたが、本形態では、内容物が設定水準を超えたときに、物理的に連絡管によるホッパとタンクとの接続を絶つようになる。
【0023】
本発明において、連絡管によるホッパとタンクとの接続を絶つようにするためには、例えば、連絡管は、互いに接続するホッパ側の上側管とタンク側の下側管を具備しており、該連絡管内を上昇してきた上記タンク内の内容物の自重の作用により、上記上側管及び上記下側管のうちいずれか一方が他方から外れるように構成されているようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のように、タンクの内容物が連絡管を通じて上昇したとき、内容物がホッパへ到達することを阻止する上昇防止機構を備えているように構成したので、簡単な構成のもとで、タンクの内容物の上昇が起こっても、該内容物と装置、機器等との接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態としての上昇防止機構を有する殺菌剤供給装置の概要構成図である。
図2】上昇防止機構の他の例を示す概要構成図である。
図3】上昇防止機構のさらに他の例を示す構成図である。
図4】上昇防止機構として、エアベント管が溢流排出管を兼ねている例を示す構成図である。
図5】上昇防止機構として、可動な排液弁を有している例を示す構成図であり、(A)は排液弁の浮動前、(B)は浮動時を示している。
図6】上昇防止機構として、浮体で連絡管とタンクとの間の開閉弁を閉じる例の構成図である。
図7】上昇防止機構として、連絡管の接続を絶つ一例を示す構成図で、(A)は接続状態、(B)は断絶状態である。
図8】上昇防止機構として、連絡管の接続を絶つ他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を詳細に説明する。その際、必要に応じて各図を参照しつつ説明するが、各図において共通部分にはこれと同じ符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。いうまでもなく、本発明は、図示された実施の形態に限定されない。
【0027】
図1は、本発明に係る船舶が有するバラスト水処理に用いられる殺菌剤供給装置の一形態についての概要構成図である。
【0028】
図1において、殺菌剤供給装置10は、船外から取水された海水をバラストタンク(図示せず)に送水するバラスト水配管Tの殺菌剤注入口T1に接続されている。
【0029】
上記殺菌剤供給装置10は、図1に見られるごとく、殺菌剤の原料である固形薬剤を受けるホッパ11と、該ホッパ11の下端に設けられていてホッパ11内の固形薬剤を切り出し供給する定量供給機構としてのフィーダ11Aと、切り出された固形薬剤と清水とを受けてこれらの混合液を内容物として収容するタンク13と、上記フィーダ11Aとタンク13とを接続する連絡管12と、混合液を送出する混合液ポンプ14と、この混合液を受けて溶解液と未溶解液とに分離するサイクロン15とを有している。ここで、溶解液は固形薬剤が清水にほぼ完全に溶解された液であり、未溶解液は未溶解の固形薬剤を含む液である。サイクロン15は、混合液を受け遠心力を作用させ比重差により溶解液と未溶解液とに分離する。溶解液がサイクロン15の排出口15Bから排出され、未溶解液が排出口15Aから循環ライン16を経て混合液ポンプ14を経てサイクロン15へ帰還するように配設され、未溶解液が循環ライン16を循環する間に未溶解の固形薬剤が溶解される。
【0030】
サイクロン15の排出口15Bが殺菌剤ポンプ17を有する殺菌剤供給管18を介して上記バラスト水配管Tの殺菌剤注入口T1に接続されていて、固形薬剤が清水に溶解した溶解液が殺菌剤として上記殺菌剤ポンプ17により上記バラスト水配管Tの殺菌剤注入口T1からバラスト水配管T内を流通するバラスト水へ注入されるようになっている。
【0031】
本実施形態では、上記タンク13には、その上部にエアベント管13Aが設けられている。該エアベント管13Aは、ホッパから連絡管を経て固形薬剤を供給する際に、タンク内に引き込まれた空気をタンク13外へ排気するとともに、タンク13内の内容物(混合液)が上昇して連絡管12にまで達したときに、これをタンク13外へ排出してそれ以上の内容物の上昇を防止する上昇防止機構をも構成している。
【0032】
このような上昇防止機構を有している本形態では、先ず、ホッパ11からフィーダ11Aで切り出された固形薬剤が連絡管12を経てタンク13に投入され、タンク13内で清水と混合された混合液がタンク13内に内容物として収容されると、投入された固形薬剤とともに空気がタンク13内に混入していることがあり、その空気が内容物の液面上に放出され、その液面上の空間からエアベント管13Aを経て放出される。これとともに、上記内容物の上面がタンク13の上部にあって、上記混合液ポンプ14や殺菌剤ポンプ17の停止時に、一時的に水撃作用等により内容物の液面が上昇した際に、上昇分だけ上記エアベント管13Aから内容物が排出されて、内容物が連絡管内を上昇して逆流することを防止する。かくして、エアベント管13Aは、内容物に対して上昇防止機構として機能する。この上昇防止機構は、タンク13内に液面位置を検知するレベル計を設け、内容物の液面を検知し内容物が設定水準より上昇したことを検知し、これを報知するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態では、タンク13のみを図示し他の図示を省略している図2に見られるように、図1におけるエアベント管13Aに加え、もしくは、エアベント管13Aなしで、さらに、溢流排出管19を設けることとしてもよい。図示の例では、該溢流排出管19は、その一端側がタンク13の側壁上部を貫通してタンク13内で下面に屈曲されており他端側が下向に屈曲されてタンク13外でドレンタンク20に接続されている。上記溢流排出管19の一端側は、その開口が連絡管12の直下位置から外れて位置していても、飛散する落下固形薬剤により閉塞されてしまうことがないように、下向きとなっていることが好ましい。
【0034】
この図2の形態では、タンク内の内容物たる混合液が設定水準(上記溢流排出管19がタンク13の側壁を貫通している位置)を超えて上昇したとき、該設定水準を超える分は溢流排出管19から排出されてドレンタンク20に貯留される。この形態において、内容物の上昇を検知するレベル計を、タンクにではなく、ドレンタンクに設置することで、内容物が溢流してドレンタンクへ流入したことを検知するようにしてもよい。
【0035】
上昇防止機構は、図2のエアベント管13Aと、溢流排出管19とを一つにまとめて図3のような形態とすることができる。図3では、エアベント管13Aの途中における水平部から溢流排出管19が分岐管として下方に延びており、該溢流排出管19の下端がドレンタンク20に接続されている。上記エアベント管13Aには、分岐管として溢流排出管19の分岐点よりも反タンク側位置に開閉弁21が設けられていて、通常開位置で必要時に閉とされる。
【0036】
かかる図3の形態にあっては、タンク13内の内容物が上昇し、設定水準たるタンク13上壁を超えると、内容物はエアベント管13Aを上昇し、内容物に混入している空気分が開閉弁21を経てエアベント管13Aの端部開口13A−1から放出され、これとともに、液分たる内容物が溢流排出管19を降下してドレンタンク20に貯留される。かくして、本実施形態でも、内容物は設定水準以下の高さに保たれる。
【0037】
上述した、図3の例では、エアベント管13Aの一部が溢流排出管19を兼ねていたが、両者が全長にわたり互いに兼ねているようにすることもできる。図4では、エアベント管13Aがタンク13の上部からクランク状に屈曲して上方に向け延びており、その端部開口13A−1の直下位置に上記端部開口13A−1からの内容物の溢流分を受ける受器22が設けられており、該受器22の底部からドレン管23が直下しドレンタンク20に至っている。かかる図4の形態では、タンク13内の内容物が設定水準たるタンク13の上壁のレベルを超えると、内容物はエアベント管13A内に進入して、該エアベント管13Aの端部開口13A−1から溢流する。溢流の際、内容物に混入した空気も放出される。このようにエアベント管13Aは溢流排出管をも兼ねている。溢流した内容物は受器22にて受けられて、ドレン管23を経て降下し、ドレンタンク20に貯留される。
【0038】
本発明では、常時閉状態にあり内容物が設定水準を超えるときにのみ開状態となる弁をタンクに設けることも可能である。図5(A)においては、タンク13の上壁には短筒状の排液筒部24が上方に向け突出して設けられている。該排液筒部24には、排液弁25が該排液筒部24に対して可動に配されている。該排液弁25は、該排液筒部24の径より大径で該排液筒部24の開口縁上に位置する蓋部25Aと、上記排液筒部24の内径より小径で上記蓋部25Aから下方に延びる浮力受部25Bとを有しており、少なくとも上記浮力受部25Bはタンク13内の内容物よりも小さい比重の材質あるいは中空となっていて、内容物から浮力を受けて上方に浮動するようになっている。また、上記浮力受部25Bは排液筒部24の間に隙間を形成していて、該排液筒部24で案内されるとともに、上記隙間を内容物が上昇できるようになっている。
【0039】
また、上記排液筒部24には、カバー26が図5(A)にて上下方向で排液弁25の蓋部25Aとの間に間隔をもって定位置となるように、取り付けられている。該カバー26は、排液筒部24と排液弁25を覆うという機能のみならず、上下方向で定位置にあって上記排液弁25の上昇における最上位置を定めている。該カバー26は、必要に応じ、例えば、軸部26Aまわりに回動して、排液筒部24の側方に外れて開放位置にもたらされるようになっていることが好ましい。
【0040】
さらに、上記排液筒部24の下部外周には、図4の場合と同様な受器22が設けられている。該受器22には、ドレンタンク20に接続されたドレン管23が垂下して設けられている。
【0041】
かかる図5(A)の形態において、タンク13内の内容物が設定水準たるタンク13の上壁を超えて上記排液筒部24に進入し、さらに上昇すると、排液弁25がその浮力受部25Bで内容物からの浮力を受けて図5(B)に見られるように、排液筒部24内を上昇する。
【0042】
排液弁25が上昇すると、該排液弁25の蓋部25Aが排液筒部24の上端開口から離れて該上端開口との間に隙間を形成する。したがって、排液筒部24内を上昇する内容物は、排液筒部24と排液弁25の浮力受部25Bとの間の隙間、そして排液筒部24の上端開口と排液弁25の蓋部25Aとの間の隙間を通って溢流し、受器22に受けられてからドレン管23を経てドレンタンク20に貯留される。
【0043】
本発明では、上昇防止機構は、連絡管12とタンク13との間に設けられた開閉弁27を、内容物の設定水準を超える上昇により自動的に閉じてしまうようにすることもできる。
【0044】
図6において、連絡管12の下端とタンク13の開口の間に位置して開閉弁27が設けられている。該開閉弁27はその弁体の下側開口にテーパ状の弁座27Aが形成されている。また、上記タンク13の開口からは、上記弁座27Aの内側寸法に等しい内径の管状をなすガイド28が垂下しており、該ガイド28内にタンク13内の内容物よりも小さい比重もしくは中空体でガイド28の内径よりも若干小径の球状の浮体29が上下可動に配されている。本形態では、ガイド28は管状でなくとも、連絡管12の軸線方向に延びる複数の棒材が上記管状のガイド28の断面と同じような面の周方向に分布しているものでも、あるいは浮体を貫通して案内する一本の棒部材でもよい。
【0045】
このような図6の形態にあっては、タンク13内の内容物が設定水準たるタンク13の上壁近傍位置まで上昇すると、浮体29が内容物の液面とともに上昇し、該浮体29が上記開閉弁27の弁座27Aに接面して上記開閉弁27の下側開口を封止する。かくして、内容物は、上記設定水準を超えては上昇しない。
【0046】
次に、本発明では、上昇防止機構は、タンク内の内容物が設定水準を超えて上昇したときに、連絡管によるホッパとタンクとの接続を物理的に絶つように、連絡管の途中で接続が絶たれるようにすることができる。
【0047】
図7(A)に見られるように、連絡管は上側管12Aと下側管12Bとで構成され、上側管12Aはフィーダ11Aから傾斜して下方に向け延びて設けられており、可撓性チューブ等で形成されていて、下側管12Bは上側菅12Aと同様に傾斜して設けられており、上側管12Aの下端が下側管12B内に若干の重なりしろをもって緩く嵌合していて、嵌合部は固形薬剤が外部に漏れないようにガスシールされている。下側管12Bの下端がタンク13上部に取り付けられた開閉弁30に接続されており、下側管12Bの下部外周には受器22が設けられている。
【0048】
かかる形態では、タンク13内の内容物が設定水準を超えて上記下側管12B、さらに上記上側管12A内へ進入すると、上側管12Aは傾斜しているので、図7(B)に見られるように、内容物の重量が該上側管12Aに作用して可撓性を有する該上側管12Aが撓んで、上記下側管12Bから外れ、内容物は下側管12Bを溢流して受器22にて受けられ、図示しないドレン管を経て、図5の場合と同様に、ドレンタンクに貯留される。
【0049】
上記連絡管12は、タンク13に取り付けられた開閉弁30に直接嵌合されていて、内容物が設定水準を超えて上昇したとき、上記開閉弁30から外れるようにしてもよい。図8に見られる形態では、連絡管12は可撓性チューブ等で形成されていて、上記開閉弁30に対して横方向にずれた位置でフィーダ11Aから垂下しており、該連絡管12を予め撓ませることで傾斜した該連絡管12の下端を上記開閉弁30の上端開口に進入させている。その進入深さは僅かであり、自由状態で連絡管12の下端が開閉弁30内から外れなければ十分である。かかる形態では、内容物が開状態の開閉弁30内を上昇すると、図7の場合と同様に、傾いている連絡管1内に進入することで、内容物の重量が連絡管12に作用して該連絡管12が撓んで開閉弁30から外れる(図8の二点鎖線)。こうして、開閉弁30から溢流する内容物は受器22にて受けられ、図示しないドレン管を経てドレンタンクに貯留される。
【符号の説明】
【0050】
10 殺菌剤供給装置
11 ホッパ
11A 定量供給機構(フィーダ)
12 連絡管
13 タンク
13A エアベント管
24 排液筒部
25 排液弁
25B 浮力受部
27 開閉弁
28 ガイド
29 浮体
T バラスト水配管
T1 殺菌剤注入部(殺菌剤注入口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8