(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、成長基板と半導体層との界面で歪が発生すること自体に変わりない。そのため、歪の発生自体を抑制することにより、結晶性に優れた半導体層を成長させることが好ましい。
【0006】
本明細書の技術は、前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。本明細書の技術が解決しようとする課題は、歪の発生を抑制することにより結晶性に優れた半導体構造体および半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様における半導体構造体は、基板と、基板に架橋された架橋部と、架橋部の上に形成された半導体層と、基板と架橋部とにより囲まれた第1の空隙と、を有する。架橋部は、複数の貫通孔を有する。半導体層は、貫通孔を有
していない。架橋部は、脚部と上面部とを有する。脚部の少なくとも一部は、半導体層と接触していない。上面部は、半導体層と直接接触している。脚部は、第1の開口部と第2の開口部とを有する1以上の第1の貫通孔を有する。上面部は、1以上の第2の貫通孔を有する。第1の貫通孔の第1の開口部は、第1の空隙に向かって開口している。第1の貫通孔の第2の開口部は、半導体層に塞がれずに開口している。第2の貫通孔は、半導体層により塞がれている。
【0008】
この半導体構造体は、基板と架橋部との間に第1の空隙を有する。この第1の空隙は、基板と架橋部との間の非接触箇所である。この非接触箇所では、基板と半導体層との間の格子不整合そのものが生じない。したがって、格子不整合に起因する歪の発生そのものが抑制される。
【0009】
第2の態様における半導体構造体は、少なくとも半導体層と架橋部の脚部とにより囲まれた第2の空隙を有する。第1の貫通孔の第2の開口部は、第2の空隙に向かって開口している。
【0010】
第3の態様における半導体構造体においては、脚部における第1の貫通孔の密度は、上面部における第2の貫通孔の密度よりも高い。
【0011】
第4の態様における半導体構造体においては、架橋部の上面部における半導体層と接触している面の合計の面積は、基板における架橋部が架橋されている側の面の面積の半分より小さい。
【0012】
第5の態様における半導体構造体においては、架橋部の上面部の膜厚は、架橋部の脚部の膜厚よりも厚い。
【0013】
第6の態様における半導体構造体においては、複数の貫通孔のうちの一部は、半導体層により塞がれている。
【0014】
第7の態様における半導体構造体においては、基板は、底面部と複数の凸部とを有する凹凸形状部を有する。
【0015】
第8の態様における半導体構造体においては、上面部のうちの1箇所における基板の底面部からの高さは、上面部における底面部からの高さの平均値から−10%以上10%以下の範囲内にある。
【0016】
第9の態様における半導体構造体においては、架橋部の頂部と基板の底面部との間の距離は、基板の複数の凸部の頂部と基板の底面部との間の距離よりも大きい。
【0017】
第10の態様における半導体構造体においては、基板の複数の凸部は、側面を有する。架橋部は、基板の側面で支持されている。
【0018】
第11の態様における半導体構造体においては、基板の複数の凸部は、側面と上面を有する。架橋部は、基板の上面で支持されている。
【0019】
第12の態様における半導体構造体においては、架橋部は、基板の底面部で支持されている。
【0020】
第13の態様における半導体構造体においては、基板の複数の凸部は、側面部と上面部を有する。架橋部は、基板の底面部から基板の上面部にわたって架橋されている。
【0021】
第14の態様における半導体構造体においては、基板の複数の凸部は、円錐形状である。
【0022】
第15の態様における半導体構造体においては、基板は、平坦な第1面を有する。基板の第1面の一部の上にマスク層が形成されている。架橋部は、マスク層に接触した状態で架橋されている。
【0023】
第16の態様における半導体構造体においては、架橋部は、複数の上面部を有する。複数の上面部のうちの1箇所における基板の第1面からの高さは、複数の上面部における第1面からの高さの平均値から−10%以上10%以下の範囲内にある。
【0024】
第17の態様における半導体構造体は、基板と、基板に架橋された架橋部と、架橋部の上に形成された半導体層と、基板と架橋部とにより囲まれた第1の空隙と、を有する。架橋部は、複数の貫通孔を有する。半導体層は、貫通孔を有
していない。基板は、平坦な主面を有する。架橋部は、基板の主面に支持されている。架橋部のそれぞれは、不均一な高さおよび幅を有する。半導体層は、不均一な高さおよび幅を有する架橋部の形状に対応する凹凸を有する。
【0025】
第18の態様における半導体構造体においては、架橋部は、非周期的に配置されている。
【0026】
第19の態様における半導体構造体においては、架橋部は、Alを含むIII 族窒化物から成る。
【0027】
第20の態様における半導体構造体は、第1の空隙の少なくとも一部の内部に、GaNまたはInGaNを含む残渣を有する。
【0028】
第21の態様における半導体構造体においては、架橋部は、少なくとも1箇所以上のクラックを有する。クラックは、基板からの熱応力を緩和する。また、半導体層を成長させた後の応力を緩和する。
【0029】
第22の態様における半導体構造体においては、架橋部における最も厚い箇所の膜厚は、
8nm以上
60nm以下である。
【0030】
第23の態様における半導体構造体においては、架橋部は、その表面にファセット面を有する。
【0031】
第24の態様における半導体素子は、基板と、基板の上に架橋された架橋部と、架橋部の上に形成された複数の半導体層と、複数の半導体層のうちの1つの半導体層と導通する1以上の電極と、基板と架橋部とにより囲まれた第1の空隙と、を有する。架橋部は、複数の貫通孔を有する。半導体層は、貫通孔を有
していない。架橋部は、脚部と上面部とを有する。脚部の少なくとも一部は、半導体層と接触していない。上面部は、半導体層と直接接触している。脚部は、第1の開口部と第2の開口部とを有する1以上の第1の貫通孔を有する。上面部は、1以上の第2の貫通孔を有する。第1の貫通孔の第1の開口部は、第1の空隙に向かって開口している。第1の貫通孔の第2の開口部は、半導体層に塞がれずに開口している。第2の貫通孔は、半導体層により塞がれている。この半導体素子において、半導体層の貫通転位密度は十分に低い。つまり、半導体層の結晶性はよい。
【0032】
第25の態様における半導体素子においては、複数の貫通孔のうちの一部は、半導体層により塞がれている。
【0033】
第26の態様における半導体素子は、基板と、基板の上に架橋された架橋部と、架橋部の上に形成された複数の半導体層と、複数の半導体層のうちの1つの半導体層と導通する1以上の電極と、基板と架橋部とにより囲まれた第1の空隙と、を有する。架橋部は、複数の貫通孔を有する。半導体層は、貫通孔を有
していない。基板は、平坦な主面を有する。架橋部は、基板の主面に支持されている。架橋部のそれぞれは、不均一な高さおよび幅を有する。半導体層は、不均一な高さおよび幅を有する架橋部の形状に対応する凹凸を有する。
【0034】
第27の態様における半導体素子においては、架橋部は、非周期的に配置されている。
【0035】
第28の態様における半導体素子においては、半導体層は、第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上の発光層と、発光層の上の第2導電型の第2半導体層と、を有する。この発光素子では、空隙において光が好適に散乱する。そのため、光取り出し効率は高い。
【0036】
第29の態様における半導体素子においては、半導体層は、キャリアを供給するキャリア供給層と、キャリア供給層から供給されるキャリアが走行するキャリア走行層と、を有する。
【発明の効果】
【0037】
本明細書では、歪の発生を抑制することにより結晶性に優れた半導体構造体および半導体素子が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、具体的な実施形態について、半導体構造体および半導体素子を例に挙げて図を参照しつつ説明する。しかし、本明細書の技術はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、後述する半導体素子の各層の積層構造および電極構造は、例示である。実施形態とは異なる積層構造であってももちろん構わない。そして、それぞれの図における各層の厚みの比は、概念的に示したものであり、実際の厚みの比を示しているわけではない。
【0040】
(第1の実施形態)
1.半導体構造体
図1は、第1の実施形態の半導体構造体S1の概略構成を示す図である。この半導体構造体S1は、半導体層を形成された基板である。すなわち、いわゆるエピ付き基板の一種である。したがって、この半導体構造体S1を、自立基板もしくはテンプレート基板として用いてもよい。半導体構造体S1は、後述する実施形態で説明するように、半導体発光素子やパワーデバイス等の半導体素子を含む。
【0041】
図1では、基板の凹凸およびその周辺の構造がやや大きく描かれている。半導体構造体S1は、基板A10と、バッファ層B10と、架橋部C10と、半導体層D10と、を有する。なお、
図1では、理解の簡単のため、基板の凹凸等を非常に大きく描いてある。これ以降の図についても同様である。
【0042】
基板A10は、凹凸形状部A11を有する凹凸基板である。凹凸形状部A11は、複数の凸部A11aと底面部A11bとを有する。複数の凸部A11aは、底面部A11bから基板A10の外側に向かって突出している。複数の凸部A11aは、円錐形状である。そのため、複数の凸部A11aは、基板A10の主面に対して傾斜している側面を有する。複数の凸部A11aは、底面部A11bに対してハニカム状に配置されている。基板A10の材質は、サファイアである。また、サファイア以外にも、SiC、Si、ZnO、GaN、AlN、MgAl
2 O
4 、Ga
2 O
3 などの材質を用いてもよい。また、ガラス等の非晶質基板を用いてもよい。
【0043】
バッファ層B10は、基板A10の結晶性を受け継ぎつつ上層を成長させるためのものである。バッファ層B10は、斜面部B10aと底面部B10bとを有する。バッファ層B10の膜厚は、非常に薄い。そのため、バッファ層B10は、基板A10の凹凸形状部A11の形状に対応する形状で形成されている。バッファ層B10の斜面部B10aは、基板A10の凸部A11aと対面する位置に形成されている。バッファ層B10の底面部B10bは、基板A10の底面部A11bと対面する位置に形成されている。バッファ層B10の材質は、AlNである。バッファ層B10の膜厚は、1nm以上100nm以下である。バッファ層B10の膜厚は、上記以外の厚みであってもよい。なお、基板A10と架橋部C10等の半導体層との間の格子定数差が小さい場合には、バッファ層の形成を省略してもよい。
【0044】
架橋部C10は、基板A10に架橋されている。架橋部C10は、基板A10と半導体層D10との間に位置している。架橋部C10は、脚部C10aと上面部C10bとを有する。脚部C10aと上面部C10bとは一体である。脚部C10aは、上面部C10bおよび半導体層D10を支持している。脚部C10aは、基板A10の凸部A11aを起点に形成されている。つまり、この脚部C10aにより、架橋部C10は基板A10に架橋されている。この場合、架橋部C10は、基板A10の凸部A11aの側面で支持されている。脚部C10aの少なくとも一部は、半導体層D10と接触していない。上面部C10bは、平坦な面を有する。上面部C10bは、半導体層D10と直接接触している。架橋部C10の材質は、AlNである。
【0045】
半導体層D10は、1層以上の半導体層を有する。半導体層D10は、架橋部C10の上面部C10bの上に形成されている。半導体層D10は、架橋部C10の脚部C10aのわずかな一部に接触するとともに、架橋部C10の上面部C10bに接触している。半導体層D10における基板A10側の面D11は、第1の箇所D11aと第2の箇所D11bとを有する。第1の箇所D11aは、架橋部C10の上面部C10bと接触している。第2の箇所D11bは、架橋部C10と接触していない。第2の箇所D11bは、架橋部C10の上面部C10bからわずかに基板A10の側に突出している。第2の箇所D11bは、架橋部C10の脚部C10aと基板A10の凸部A11と対面している。
【0046】
2.架橋部および空隙
2−1.架橋部の形状
図2は、架橋部C10の周囲を抜き出して描いた図である。
図2に示すように、架橋部C10は、バッファ層B10の傾斜部B10aを起点にして形成されている。架橋部C10は、基板A10の凸部A11aに支持されている。
図2に示すように、架橋部C10の脚部C10aと架橋部C10の上面部C10bとの間のなす角の角度θ1は、10°以上90°以下である。
【0047】
また、架橋部C10は、ほぼ均一な高さを有している。そのため、上面部C10bのうちの1箇所における基板A10の底面部A11bからの高さは、上面部C10bにおける底面部A11bからの高さの平均値から−10%以上10%以下の範囲内にある。
【0048】
2−2.架橋部の形成領域
架橋部C10は、基板A10の底面部A11bに沿って形成されている。特に、架橋部C10の上面部C10bは、基板A10の底面部A11bに対面する位置に位置している。なお、上面部C10bは、半導体層D10の成長の起点である。
【0049】
2−3.架橋部の膜厚
架橋部C10における最も厚い箇所の膜厚は、0.25nm以上100nm以下である。好ましくは、0.5nm以上60nm以下である。さらに好ましくは、1nm以上30nm以下である。架橋部C10の膜厚は、半導体層D10を支持できる程度の厚み以上であればよい。架橋部C10の膜厚が厚いと、後述するエッチングの処理時間が長くなってしまう。また、好ましい膜厚は、架橋部C10の材質にも依存する場合がある。架橋部C10がAlを含有する場合には、架橋部C10と後述する分解層との間の格子不整合が大きいことがある。そのため、後述する分解層(E1)がGaNであり、架橋部C10がAlNである場合には、架橋部C10の膜厚は薄いほうが好ましい。
【0050】
ここで、脚部C10aの膜厚は、上面部C10bの膜厚よりも厚くてもいい。この場合には、脚部C10aの機械的強度は高い。逆に、脚部C10aの膜厚は、上面部C10bの膜厚よりも薄くてもよい。この場合には、脚部C10aは、基板A10と脚部C10との格子定数差に起因する歪を好適に緩和する。また、脚部C10aの機械的強度は比較的弱い。そのため、基板A10から半導体層D10を剥離させることが容易である。
【0051】
2−4.架橋部の貫通孔
図2に示すように、架橋部C10は、複数の貫通孔を有する。架橋部C10は、脚部C10aに形成されている第1の貫通孔C11aと、上面部C10bに形成されている第2の貫通孔C11bと、を有する。架橋部C10の脚部C10aには比較的多くの第1の貫通孔C11aが形成されている。脚部C10aの第1の貫通孔C11aの数は、上面部C10bの第2の貫通孔C11bの数よりも多い。また、脚部C10aの第1の貫通孔C11aの密度は、上面部C10bの第2の貫通孔C11bの密度より高い。
【0052】
第1の貫通孔C11aおよび第2の貫通孔C11bは、後述するように、貫通転位に起因して形成されたものである。第1の貫通孔C11aおよび第2の貫通孔C11bの断面形状は、円形、楕円形、六角形等の多角形、ストライプ状等、様々である。また、2つ以上の貫通転位に起因する2つ以上の貫通孔がつながって比較的大きな貫通孔が形成されることもある。
【0053】
なお、第2の貫通孔C11bは、基板A10の側から半導体層D10に向かって形成されている。第2の貫通孔C11bの一方の開口部は、半導体層D10により塞がれている。このように貫通孔のうちの少なくとも一部の開口部は、半導体層D10により塞がれている。そのため、半導体層D10は、貫通孔を有さない。
【0054】
第1の貫通孔C11aは、第1の開口部C11a1と第2の開口部C11a2とを有する。第1の開口部C11a1は、後述する第1の空隙X1に向かって開口している。第2の開口部C11a2は、半導体層D10に塞がれずに後述する第2の空隙X2に向かって開口している。
【0055】
第2の貫通孔C11bは、第3の開口部C11b3と第4の開口部C11b4とを有する。第3の開口部C11b3は、後述する第1の空隙X1に向かって開口している。第4の開口部C11b4は、半導体層D10により塞がれている。
【0056】
2−5.空隙
図2に示すように、半導体構造体S1は、基板A10の凹凸形状部A11と半導体層D10との間に第1の空隙X1と第2の空隙X2とを有している。
【0057】
第1の空隙X1は、基板A10の凹凸形状部A11と架橋部C10とにより囲まれた領域である。より具体的には、第1の空隙X1は、基板A10の底面部A11bと、基板A10の凸部A11aの一部と、架橋部C10の脚部C10aと、架橋部C10の上面部C10bと、により囲まれている。バッファ層B10を考慮すると、第1の空隙X1は、バッファ層B10の底面部B10bと、バッファ層B10の斜面部B10aの一部と、架橋部C10の脚部C10aと、架橋部C10の上面部C10bと、により囲まれている。第1の空隙X1は、基板A10の底面部A11bと対面する位置に位置している。
【0058】
第2の空隙X2は、主に架橋部C10と半導体層D10とにより囲まれた領域である。より具体的には、第2の空隙X2は、基板A10の凸部A11aの一部と、架橋部C10の脚部C10aと、半導体層D10の第2の箇所D11bと、により囲まれている。バッファ層B10を考慮すると、第2の空隙X2は、バッファ層B10の斜面部B10aの一部と、架橋部C10の脚部C10aと、半導体層D10の第2の箇所D11bと、により囲まれている。第2の空隙X2は、基板A10の凸部A11aと対面する位置に位置している。
【0059】
第1の空隙X1と第2の空隙X2とは、架橋部C10の脚部C10aにより仕切られている。架橋部C10の脚部C10aは、貫通孔C11aを有している。そのため、第1の空隙X1と第2の空隙X2とは貫通孔C11aを介して連通している。
【0060】
図2に示すように、基板A10の主面に垂直な方向における第1の空隙X1の高さH1は、基板A10の主面に垂直な方向における凸部A11aの高さH2よりも高い。つまり、架橋部C10の頂部と基板A10の底面部A11bとの間の距離は、基板A10の複数の凸部A11aの頂部と基板A10の底面部A11bとの間の距離よりも大きい。
【0061】
3.半導体構造体の製造方法
3−1.基板準備工程
まず、
図3に示すように、基板A10を準備する。前述したように、基板A10は凹凸形状部A11を有する。基板A10の凹凸形状部A11は、複数の凸部A11aと底面部A11bとを有する。凸部A11aは円錐形状である。凸部A11aは基板A10の主面にハニカム状に配置されている。凹凸形状部A11を形成するために基板にエッチングを施してもよいし、凹凸形状部A11を形成済みの基板A10を用意してもよい。
【0062】
3−2.バッファ層形成工程
次に、
図4に示すように、基板A10の上にバッファ層B10を形成する。その際に、例えば、MOCVD法を用いるとよい。バッファ層B10は、基板A10の凹凸に比べて十分に薄い。そのため、バッファ層B10は、基板A10の凹凸に沿って形成される。このようにして、斜面部B10aと底面部B10bとを有するバッファ層B10を形成する。バッファ層B10の材質はAlNである。
【0063】
3−3.分解層形成工程
そして、
図5に示すように、バッファ層B10の底面部B10bと斜面部B10aとの上に分解層E1を形成する。そのために、MOCVD法により分解層E1としてInGaN層を形成する。InGaN層は、比較的低い温度で熱分解する。分解層E1は、一旦は成膜されるが、後述するエッチング工程により除去される半導体層である。つまり、分解層E1は、熱分解による分解とエッチングによる分解との少なくとも一方を受ける。
【0064】
分解層E1の成長の初期には分解層E1を主に縦方向成長させ、分解層E1の成長の後期には分解層E1を主に横方向成長させる。これにより、貫通転位Q1は、傾斜面E1aに向かって伸びる。分解層E1は、基板A10の上のバッファ層B10の底面部B10bから成長する。そのため、分解層E1は、基板A10の底面部A11bと複数の凸部A11aの一部の上に形成される。
【0065】
ここで、分解層E1の熱分解温度は、架橋部C10の熱分解温度よりも低い。分解層E1の成長温度は750℃以上1150℃以下の範囲内であるとよい。好ましくは、900℃以上1150℃以下である。さらに好ましくは、1000℃以上1120℃以下である。
【0066】
3−4.架橋部形成工程
次に、
図6に示すように、分解層E1の上に架橋部C10を形成する。その際にMOCVD法を用いればよい。または、スパッタリング法により架橋部C10を形成してもよい。架橋部C10の材質は、前述したようにAlNである。これにより、架橋部C10は、分解層E1を覆うように形成される。また、貫通転位Q1は、架橋部C10の脚部C10aに向かって伸びる。
【0067】
3−5.エッチング工程
次に、
図7に示すように、分解層E1をエッチングする。そのために、H
2 ガスとN
2 ガスとの混合ガスを供給する。H
2 ガスは、分解層E1をエッチングする。そのため、H
2 ガスの分圧が高いことが好ましい。ただし、H
2 ガスのみを供給すると、Ga金属がドロップレットとして表出するおそれがある。そのため、H
2 ガスに加えてN
2 ガスもしくはNH
3 ガス、またはこれらの混合ガスを供給することが好ましい。
【0068】
また、基板温度を分解層E1の熱分解温度以上架橋部C10の熱分解温度未満とする。そのため、架橋部C10の表面が貫通転位Q1の箇所を起点としてエッチングされる。これにより、架橋部C10の脚部C10aには貫通孔C11aが形成され、架橋部C10の上面部C10bには貫通孔C11bが形成される。
【0069】
この後、分解層E1は、貫通孔C11a、C11bの箇所から熱分解およびエッチングされる。そのため、分解層E1は、熱により熱分解するとともにH
2 ガスによりエッチングされる。一方、架橋部C10は熱分解しない。そのため、架橋部C10は、貫通孔C11a、C11bを形成されるのみで、架橋部C10自体は残留する。その結果、基板A10と架橋部C10とで囲まれた第1の空隙X1が形成される。
【0070】
このエッチング工程において、供給するガスは酸素を含まないことが好ましい。酸素は、架橋部C10の表面のAlNを酸化し、AlONを形成する。AlONが存在すると、それより上層の半導体層の極性が反転する可能性が高い。そのため、架橋部C10の表面にAlONが発生すると、半導体層D10の内部に極性が反転している箇所と極性が反転していない箇所とが発生する。そうすると、架橋部C10より上層の半導体層D10の結晶性が悪化する。ゆえに、この工程においては、酸素を含まないことが好ましい。基板A10として酸素原子を含有するものを用いる場合には、反応炉内に酸素原子が残存している可能性がある。そのため、そのような酸素原子が架橋部C10の表面で反応してAlONを形成するおそれがある。このAlONの形成を抑制するために、エッチング工程の後に速やかに次の工程を実施することが好ましい。
【0071】
3−6.半導体層形成工程
次に、架橋部C10の上に半導体層D10を成長させる。半導体層D1は、架橋部C10の上面部C10bを起点として成長する。架橋部C10の脚部C10aからは半導体層はほとんど成長しない。貫通転位Q1のほとんどは、架橋部C10の脚部C10aに向かって伸びている。そのため、半導体層D1の上には、ほとんど貫通転位は伸びない。また、半導体層D1は、少なくとも初期には横方向成長する。そのため、上面部C10bの貫通孔C11bを好適に埋める。これにより、貫通転位密度が非常に低い半導体層が形成される。
【0072】
なお、半導体層D10の成長とともに、第2の空隙X2が形成される。第2の空隙X2は、架橋部C10の脚部C10aと、基板A10の頂部周辺と、半導体層D10とで囲まれている。以上により、半導体構造体S1が製造される。
【0073】
4.架橋部の効果
本実施形態の半導体構造体S1は、架橋部C10と基板A10との間に第1の空隙X1を有する。第1の空隙X1の箇所ではもちろん、架橋部C10と基板A10とが接触していない。そのため、第1の空隙X1の箇所では、基板A10と架橋部C10との間の境界面そのものが存在しない。すなわち、第1の空隙X1の箇所では格子不整合そのものが生じない。したがって、架橋部C10は、基板A10との接触箇所からわずかな歪を受けるおそれがある。しかし、基板A10から架橋部C10にかかる応力は、従来の半導体構造体に比べると極めて小さい。また、半導体層D10の膜厚を大きくしても、基板A10からの応力が緩和される。そのため、結晶性に優れた半導体層D10を成膜することができる。
【0074】
また、本実施形態の半導体構造体S1においては、多くの貫通転位Q1は、架橋部C10の脚部C10aに向けて伸びる。ごく少数の貫通転位Q1は、架橋部C10の上面部C10bに向けて伸びる。半導体層D10は、架橋部C10の上面部C10bを起点に成長する。そのため、架橋部C10より下層の貫通転位は半導体層D10にほとんど引き継がれない。したがって、半導体層D10の結晶性は、非常に優れている。
【0075】
5.変形例
5−1.架橋部の材質
本実施形態の架橋部C10は高温で成膜したAlN層である。架橋部C10の熱分解温度は、分解層E1の熱分解温度よりも高い。架橋部C10は、低温で形成したAlN層であってもよい。また、架橋部C10は、AlGaN層またはAlGaInN層であってもよい。架橋部C10は、Alを含有するIII 族窒化物を有するとよい。また、分解層E1の材質との兼ね合いになるが、架橋部C10の材質は、GaN、InGaNであってもよい。
【0076】
5−2.架橋部における上面部と脚部との間の角度
架橋部C10の脚部C10aと架橋部C10の上面部C10bとの間のなす角の角度θ1は、10°以上90°以下である。しかし、角度θ1は、0°以上90°以下であってもよい。なお、角度θ1が0°の場合には、脚部C10aと上面部C10bとの間の区別がない。
【0077】
5−3.架橋部の上面部の面積
架橋部C10の上面部C10bにおける半導体層D10と接触している面の面積は、基板A10の主面の面積の半分より小さいとよい。架橋部C10より下層側からの貫通転位がより半導体層D10に伝播しにくいからである。ここで、基板A10の主面とは、基板A10における架橋部C10が架橋されている側の面である。
【0078】
5−4.架橋部に上面部がない場合
上面部C10bが存在しない架橋部を形成してもよい。その場合には、脚部の頂部付近から半導体層が成長する。
【0079】
5−5.架橋部における脚部と上面部との膜厚
架橋部C10の上面部C10bの膜厚は、架橋部C10の脚部C10aの膜厚よりも厚いとよい。この場合には、上面部C10bから結晶性のよい半導体層D10が成長しやすい。
【0080】
5−6.複数層の架橋部
本実施形態では、架橋部C10は単一のAlN層である。架橋部C10は、複数層を有していてもよい。また、架橋部C10は、超格子構造であってもよい。例えば、AlN層とGaN層との超格子構造が挙げられる。ただし、架橋部C10の全体の膜厚は、厚すぎないことが好ましい。
【0081】
5−7.架橋部のファセット面
架橋部C10のC10aの表面は、ファセット面であってもよい。ファセット面として例えば、(10−1X)面や、(11−2X)面が挙げられる。また、架橋部C10の上面部C10bの表面も、ファセット面であってもよい。ファセット面として例えば、(0001)面が挙げられる。これらの場合には、架橋部C10の形状が安定する。
【0082】
5−8.架橋部のクラック
架橋部C10の材料は、半導体層D10の材料と近いとよい。格子定数差に起因する結晶品質の低下や歪の増大を抑制することができるからである。そして、架橋部C10にあえてクラックを生じさせてもよい。この場合には、架橋部C10は、少なくとも1箇所以上のクラックを有する。そして半導体層D10の歪はより軽減される。一方、クラックがない場合には、半導体層D10の内部に生じる欠陥が少ない。したがってこの場合には、半導体層D10の結晶品質が高い。なお、貫通孔C11a、C11bは、貫通転位Q1を起点にエッチングされた孔であるのに対し、クラックは、基板A10からの応力もしくは冷却時の熱応力により生じた亀裂である。
【0083】
5−9.分解層の材質
本実施形態の分解層E1はInGaN層である。分解層E1はGaN層であってもよい。また、分解層E1は、SiやMgをドープされていてもよい。特に、Siは、3次元的な成長モードを促進する(アンチサーファクタント効果)。そのため、分解層E1は、Siをドープされているとよい。もちろん、分解層E1の熱分解温度は低いほうが好ましい。そのため、分解層E1は、Inを含有するとよい。なお、Alを含有すると、熱分解温度は上昇する傾向がある。分解層E1としてAlを含有する層を形成する際には、分解層E1のAl組成は、架橋部C10のAl組成よりも小さいほうが好ましい。また、架橋部C10の熱分解温度よりも低ければ、BN、TiN、またはSiNxのようなIII 族窒化物以外の材料を用いてもよい。ただし、分解層E1は、後に形成する半導体層の組成に近いIII 族窒化物半導体が好ましい。後に形成する半導体層への不純物の混入を防止できるからである。そのため、分解層E1はInGaNであるとよい。
【0084】
5−10.バッファ層の材質
本実施形態のバッファ層B10の材質は、AlNである。このAlNは、低温バッファ層と高温バッファ層とを含む。また、バッファ層B10の材質は、AlNの他に、低温GaNバッファ層、BN層、TiN層、SiNx層、またはこれらの混晶であってもよい。
【0085】
5−11.基板の凹凸形状
本実施形態の基板A10は、複数の凸部A11aと底面部A11bとを有する。凸部A11aは、円錐形状である。しかし、凸部A11aは、円錐台形状、多角錐形状、多角錐台形状のいずれであってもよい。この場合であっても、基板A10の凹凸形状部は、底面と底面から突出する複数の凸部を有する。また、基板は、凸部A11aの代わりに凹部を有してもよい。
【0086】
図8は、本実施形態の別の変形例における発光素子の基板J10を示す斜視図である。
図8に示すように、ストライプ状の凹凸形状を有する基板J10を用いてもよい。基板J10は、尾根状の凸部J11と底面J12とを有する。このように、凹凸形状を有しているその他の基板に対して、本実施形態の技術を適用することができる。また、凹凸形状があれば、非周期構造であってもよい。
【0087】
5−12.エッチング工程(熱分解工程)
エッチング工程では、H
2 ガスとN
2 ガスとの混合ガスを供給する。しかし、供給するガスをN
2 ガスとしてもよい。この場合には、H
2 ガスによる分解層E1のエッチングは生じない。分解層E1の熱分解のみが生じる。この場合であっても、架橋部C10の膜厚が十分に薄ければ、分解層E1を除去することができる。
【0088】
5−13.残渣
本実施形態では、分解層E1をエッチングにより除去する。しかし、分解層E1の一部が残渣として半導体構造体S1に残留していてもよい。その場合には、第1の空隙X1の内部に残渣が残留する。この残渣は、例えば、InGaNまたはGaNを含む。
【0089】
5−14.第2の空隙がない場合
本実施形態の半導体構造体S1は、第2の空隙X2を有する。しかし、第2の空隙X2を半導体層D10で埋めてしまってもよい。その場合には、半導体層D10の第2の箇所D11bが、基板A10の凸部A11aと、架橋部C10の脚部C10aとに接触している。そのために、上面部C10bの基板A10からの高さを低くするとともに、上面部C10bから横方向に半導体層を成長させて架橋部C10の脚部C10aや基板A10の凸部A11aに半導体層をまわりこませるように成長させればよい。この場合には、脚部C10aの貫通孔C11aおよび上面部C10bの貫通孔C11bは、半導体層D10に塞がれている。
【0090】
5−15.半導体層の積層構造
本実施形態においては、半導体層D10は1層以上の半導体層である。半導体層D10の積層構造は、どのようであってもよい。
【0091】
5−16.半導体素子
本実施形態の半導体層D10に電極を設けて半導体素子としてもよい。
【0092】
5−17.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
【0093】
6.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の半導体構造体S1は、基板A10と、架橋部C10と、半導体層D10と、基板A10と架橋部C10との間に形成された第1の空隙X1と、を有する。分解層E1から伸びる貫通転位Q1が、架橋部C10の脚部C10aの形成領域に向かって伸びる。一方、半導体層D10は、架橋部C10の上面部C10bから成長する。そのため、貫通転位Q1は、半導体層D10にほとんど引き継がれない。ゆえに、結晶性に優れた半導体層D10を有する半導体構造体S1が実現されている。
【0094】
なお、以上に説明した実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、半導体層等の成長方法は有機金属気相成長法(MOCVD法)に限らない。キャリアガスを用いて結晶を成長させる方法であれば、他の方法を用いてもよい。また、液相エピタキシー法、分子線エピタキシー法等、その他のエピタキシャル成長法により半導体層を形成することとしてもよい。
【0095】
(第2の実施形態)
1.半導体発光素子
図9は、第2の実施形態の発光素子100の概略構成を示す図である。この発光素子100は、第1の実施形態における半導体構造体S1の一例である。
図9に示すように、発光素子100は、フェイスアップ型の半導体発光素子である。発光素子100は、III 族窒化物半導体から成る複数の半導体層を有する。発光素子100は、もちろん、半導体素子の一種である。
【0096】
図9に示すように、発光素子100は、基板A10と、バッファ層B10と、架橋部C10と、n型コンタクト層140と、n側静電耐圧層150と、n側超格子層160と、発光層170と、p側クラッド層180と、p型コンタクト層190と、透明電極TE1と、n電極N1と、p電極P1と、を有する。n型コンタクト層140と、n側静電耐圧層150と、n側超格子層160とは、n型半導体層である。ここで、n型半導体層は、第1導電型の第1半導体層である。p側クラッド層180と、p型コンタクト層190とは、p型半導体層である。ここで、p型半導体層は、第2導電型の第2半導体層である。また、n型半導体層は、ドナーをドープしていないud−GaN層等を有していてもよい。p型半導体層は、アクセプターをドープしていないud−GaN層等を有していてもよい。なお、n型半導体層と、発光層170と、p型半導体層とは、第1の実施形態における半導体層D10に相当する。
【0097】
基板A10と、バッファ層B10と、架橋部C10とは、第1の実施形態のものと同様である。
【0098】
n型コンタクト層140は、n電極N1とオーミック接触をとるためのものである。n型コンタクト層140は、架橋部C10の上面部C10bの上に形成されている。また、n型コンタクト層140の上には、n電極N1が位置している。n型コンタクト層140は、例えば、n型GaNである。
【0099】
n側静電耐圧層150は、各半導体層の静電破壊を防止するための静電耐圧層である。n側静電耐圧層150は、n型コンタクト層140の上に形成されている。n側静電耐圧層150は、例えば、ud−GaN層(unintentionally doped GaN)と、n型GaN層と、を有する。n側静電耐圧層150の構成は、上記以外の構成であってもよい。
【0100】
n側超格子層160は、発光層170に加わる応力を緩和するための歪緩和層である。より具体的には、n側超格子層160は、超格子構造を有する超格子層である。n側超格子層160は、n側静電耐圧層150の上に形成されている。n側超格子層160は、例えば、InGaN層とGaN層とを積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。もちろん、これらの半導体の材料は、その他の組成の半導体層であってもよい。
【0101】
発光層170は、電子と正孔とが再結合することにより発光する層である。発光層170は、n側超格子層160の上に形成されている。発光層170は、井戸層と障壁層とを積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。つまり、発光層170は、多重量子井戸構造を有する。また、発光層170は、井戸層の上に形成されたキャップ層を有していてもよい。また、発光層170は、単一量子井戸構造であってもよい。
【0102】
p側クラッド層180は、発光層170の上に形成されている。p側クラッド層180は、p型InGaN層とp型AlGaN層とを積層した単位積層体を繰り返し積層したものである。もちろん、これらの半導体の材料は、その他の組成の半導体層であってもよい。
【0103】
p型コンタクト層190は、透明電極TE1とオーミック接触するためのものである。p型コンタクト層190は、p側クラッド層180の上に形成されている。
【0104】
透明電極TE1は、電流を発光面内に拡散するためのものである。透明電極TE1は、p型コンタクト層190の上に形成されている。透明電極TE1の材質は、ITO、IZO、ICO、ZnO、TiO
2 、NbTiO
2 、TaTiO
2 、SnO
2 のいずれかであるとよい。
【0105】
p電極P1は、透明電極TE1の上に形成されている。p電極P1は、Ni、Au、Ag、Co、等から1以上を組み合わせて形成したものである。もちろん、これ以外の構成であってもよい。p電極P1は、p型半導体層と導通している。
【0106】
n電極N1は、n型コンタクト層140の上に形成されている。n電極N1は、Ni、Au、Ag、Co、等から1以上を組み合わせて形成したものである。もちろん、これ以外の構成であってもよい。n電極N1は、n型半導体層と導通している。
【0107】
また、発光素子100は、半導体層を保護する保護膜を有していてもよい。
【0108】
2.架橋部および空隙
2−1.架橋部
図10は、架橋部C10の周囲を抜き出して描いた図である。
図10に示すように、架橋部C10は、バッファ層B10の斜面部B10aを起点にして架橋されている。架橋部C10の脚部C10aは、架橋部C10の上面部C10bに対して10°以上90°以下の角度で傾斜している。
【0109】
n型コンタクト層140は、底面141の一部141aと、底面141の残部141bと、を有する。底面141の一部141aは、架橋部C10の上面部C10bと接触している。底面141の残部141bは、第2の空隙X2と対面している。底面141の残部141bと、架橋部C10の脚部C11aと、基板A10の凸部A11aとは、第2の空隙X2を囲んでいる。
【0110】
2−2.空隙
図10に示すように、発光素子100は、基板A10の凹凸形状部A11とn型コンタクト層140との間に第1の空隙X1と第2の空隙X2とを有している。
【0111】
2−3.空隙の効果
本実施形態では、基板A10とn型コンタクト層140との間に第1の空隙X1および第2の空隙X2を有する。そのため、発光層170から基板A10に向かう光が第1の空隙X1および第2の空隙X2で反射もしくは散乱される。半導体層と空気との間で屈折率に差があるためである。この反射または散乱により、光の取り出し効率が向上する。
【0112】
3.半導体発光素子の製造方法
ここで、本実施形態に係る発光素子100の製造方法について説明する。本実施形態の半導体発光素子の製造方法は、第1の実施形態の架橋部および空隙の製造方法を用いて半導体発光素子を製造する。
【0113】
半導体層を成長させる際には、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)により、各半導体層の結晶をエピタキシャル成長させる。ここで用いるキャリアガスは、水素(H
2 )もしくは窒素(N
2 )もしくは水素と窒素との混合気体(H
2 +N
2 )である。窒素源として、アンモニアガス(NH
3 )を用いる。Ga源として、トリメチルガリウム(Ga(CH
3 )
3 )を用いる。In源として、トリメチルインジウム(In(CH
3 )
3 )を用いる。Al源として、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3 )
3 )を用いる。n型ドーパントガスとして、シラン(SiH
4 )を用いる。p型ドーパントガスとして、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Mg(C
5 H
5 )
2 )を用いる。また、これら以外のガスを用いてもよい。
【0114】
3−1.基板のクリーニング
基板A10をH
2 ガスでクリーニングする。基板温度は1100℃程度である。もちろん、その他の基板温度であってもよい。
【0115】
3−2.架橋部および空隙の製造
上記の架橋部および空隙の製造方法を用いて、架橋部C10および第1の空隙X1および第2の空隙X2を製造する。
【0116】
3−3.n型コンタクト層形成工程
次に、架橋部C10の上にn型コンタクト層140を形成する。その際に、架橋部C10の上面部C11bを起点にしてn型コンタクト層140は成長する。このときの基板温度は、900℃以上1140℃以下である。
【0117】
3−4.n側静電耐圧層形成工程
次に、n型コンタクト層140の上にn側静電耐圧層150を形成する。ud−GaN層と、n型GaN層と、を順に形成する。このときの基板温度は、n型コンタクト層形成工程の基板温度と同じでよい。また、n側静電耐圧層150を形成する途中で基板温度を下げてもよい。ピットを形成しやすいからである。ピットを形成することにより、静電耐圧性や歩留りを向上させることができるからである。
【0118】
3−5.n側超格子層形成工程
次に、n側静電耐圧層150の上にn側超格子層160を形成する。そのために、InGaN層とGaN層とを積層した単位積層体を繰り返し積層する。
【0119】
3−6.発光層形成工程
次に、n側超格子層160の上に発光層170を形成する。そのために、井戸層と障壁層とを積層した単位積層体を繰り返し積層する。また、井戸層を形成した後にキャップ層を形成してもよい。
【0120】
3−7.p側クラッド層形成工程
次に、発光層170の上にp側クラッド層180を形成する。ここでは、p型InGaN層と、p型AlGaN層と、を繰り返し積層する。
【0121】
3−8.p型コンタクト層形成工程
次に、p側クラッド層180の上にp型コンタクト層190を形成する。
【0122】
3−9.透明電極形成工程
次に、p型コンタクト層190の上に透明電極TE1を形成する。
【0123】
3−10.電極形成工程
次に、透明電極TE1の上にp電極P1を形成する。そして、レーザーもしくはエッチングにより、p型コンタクト層190の側から半導体層の一部を抉ってn型コンタクト層140を露出させる。そして、その露出箇所に、n電極N1を形成する。p電極P1の形成工程とn電極N1の形成工程は、いずれを先に行ってもよい。
【0124】
3−11.その他の工程
また、上記の工程の他、熱処理工程、絶縁膜形成工程、その他の工程を実施してもよい。以上により、
図9に示す発光素子100が製造される。
【0125】
4.変形例
4−1.フリップチップ
本実施形態の技術は、フリップチップ型の半導体発光素子にも適用することができる。
【0126】
4−2.n型コンタクト層
n型コンタクト層140は、その層中で組成は一定である。しかし、n型コンタクト層140の内部で組成を徐々に変調してもよい。また、n型コンタクト層140と架橋部C10との間に、その他のAlN層、AlGaN層、InGaN層、AlGaInN層を形成してもよい。また、これらの層にSiをドープしてもよい。
【0127】
4−3.半導体層の積層構造
本実施形態においては、架橋部C10の上に、n型コンタクト層140と、n側静電耐圧層150と、n側超格子層160と、発光層170と、p側クラッド層180と、p型コンタクト層190と、を形成する。しかし、これ以外の積層構造であってももちろん構わない。例えば、架橋部C10とn型コンタクト層140との間に1層以上の半導体層を形成してもよい。そのような1層以上の半導体層として、例えば、ノンドープのGaN層が挙げられる。また、上記の各層の積層構造も、本実施形態で説明した構成以外の構成であってもよい。
【0128】
4−4.組み合わせ
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。また、第1の実施形態およびその変形例と自由に組み合わせてもよい。
【0129】
5.本実施形態のまとめ
以上詳細に説明したように、本実施形態の発光素子100は、凹凸のある基板A10とn型半導体層との間に、架橋部C10と第1の空隙X1と第2の空隙X2とを有する。このように基板A10と半導体層との間に空隙があるため、発光層170からの光は十分に散乱する。したがって、光取り出し効率の高い発光素子100が実現されている。また、第1の実施形態と同様に、n型コンタクト層140より上層の半導体層の結晶性はよい。架橋部C10が備える架橋構造により、基板と半導体層との間の応力が緩和されるからである。
【0130】
なお、以上に説明した実施形態は単なる例示にすぎない。したがって当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、有機金属気相成長法(MOCVD法)に限らない。キャリアガスを用いて結晶を成長させる方法であれば、他の方法を用いてもよい。また、液相エピタキシー法、分子線エピタキシー法等、その他のエピタキシャル成長法により半導体層を形成することとしてもよい。
【0131】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。第3の実施形態においては、円錐台形状の凸部を有する基板を用いる。そのため、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0132】
1.半導体構造体
図11は、第3の実施形態の半導体構造体200の概略構成を示す図である。
【0133】
基板A20は、凹凸形状部A21を有する。凹凸形状部A21は、斜面A21aと、底面A21bと、上面A21cと、を有する。架橋部C10は、基板A20の斜面A21aで支持されている。
【0134】
架橋部C20は、基板A20の上面A21cで支持されている。このように、基板A20の凹凸形状部A21の上面A21cを起点として架橋部C20が形成されていてもよい。
【0135】
2.変形例
また、半導体構造体は、基板A20の底面A21bを起点として形成された架橋部を有していてもよい。この場合には、架橋部は基板A20の底面A21bで支持されている。
【0136】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。第4の実施形態においては、平坦面が非極性面または半極性面である半導体層が成長する凹凸基板を用いる。そのため、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0137】
1.半導体構造体
図12は、第4の実施形態の半導体構造体300の概略構成を示す図である。
【0138】
本実施形態の基板310は、凹凸形状部311を有する。基板310は、斜面部311aと、底面部311bと、上面部311cと、を有する。底面部311bと上面部311cとは、互いに平行な平坦面である。斜面部311は、凹凸形状部311の側面部である。バッファ層320は、基板310の凹凸に沿って形成されている。
【0139】
架橋部330は、基板310の底面部311bと上面部311cとの上に形成されている。架橋部330は、脚部331と、上面部332と、を有する。上面部332は、非極性面または半極性面である。脚部331は、上面部332に対して、ほぼ90°の角度で形成されている。
【0140】
架橋部330は、基板310の底面部311bから基板310の上面部311cにわたって架橋されている。
【0141】
半導体層340は、架橋部330の上面部332から主に成長している。
【0142】
2.空隙
半導体構造体300は、空隙X3を有している。空隙X3は、第1の空隙である。空隙X3は、基板310の凹凸形状部311と半導体層340との間に位置している。空隙X3は、基板310の凹凸形状部と架橋部330とにより囲まれている。バッファ層320を考慮すれば、空隙X3は、バッファ層320と架橋部330とにより囲まれている。
【0143】
3.分解層の成長
本実施形態では、特開2013−241337号公報に記載の技術に基づいて、分解層を成長させる。そのため、特開2013−241337号公報の
図1.Bに示すように、半導体層は成長する。
【0144】
4.本実施形態の効果
本実施形態では、半導体層の上面は、非極性面または半極性面である。そのため、半導体層に加わるピエゾ電界は十分に小さい。
【0145】
本実施形態の半導体構造体300は、空隙X3を有する。また、半導体層340は、架橋部330の上面部332から主に成長する。そのため、半導体層340の貫通転位密度は、やや低い。つまり、半導体層の結晶性は高い。
【0146】
5.変形例
第1の実施形態および第2の実施形態とそれらの変形例を自由に組み合わせて、本実施形態に適用してもよい。
【0147】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について説明する。第5の実施形態においては、基板の主面には凹凸形状が形成されていない。そのため、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0148】
1.半導体構造体
図13は、第5の実施形態の半導体構造体400の概略構成を示す図である。発光素子400は、基板410と、バッファ層420と、架橋部430と、半導体層440と、を有する。
【0149】
図13に示すように、基板410の主面、すなわち半導体層形成面は、凹凸形状部を有さない。つまり、基板410の主面は平坦面である。基板410は、平坦面を有する。バッファ層420は、平坦な基板410の上に平坦な形状で形成されている。
【0150】
架橋部430は、基板410の平坦面を起点に形成されている。つまり、架橋部430は、基板410の主面に支持されている。バッファ層420を考慮すると、架橋部430は、バッファ層420の上に形成されている。架橋部430は、平坦なバッファ層420を起点に架橋されている。架橋部430は、脚部431と、上面部432と、を有している。脚部431は、平坦なバッファ層420を起点に形成されている。
【0151】
架橋部430は、非周期的に配置されている。そして、架橋部430のそれぞれは、不均一な高さおよび幅を有する。
【0152】
半導体層440は、架橋部430の上面部432から主に成長する。また、バッファ層420の露出している部分から成長する場合もある。そして、半導体層440は、不均一な高さおよび幅を有する架橋部430の形状に対応する凹凸を有する。
【0153】
2.空隙
半導体構造体400は、空隙X4を有している。空隙X4は、第1の空隙である。空隙X4は、基板410の平坦面と半導体層440との間に位置している。空隙X4は、基板410の平坦面と架橋部430とにより囲まれている。バッファ層420を考慮すれば、空隙X4は、バッファ層420と架橋部430とにより囲まれている。本実施形態では基板410に凹凸形状部がないため、空隙X4の位置は基板410上にランダムに配置されている。つまり、架橋部430および空隙X4が配置されている位置は、周期性をもたない。
【0154】
3.本実施形態の効果
本実施形態の半導体構造体400は、空隙X4を有する。また、半導体層440は、架橋部430の上面部432から主に成長する。そのため、半導体層440の貫通転位密度は、やや低い。つまり、半導体構造体400の半導体層の結晶性は高い。
【0155】
また、本実施形態では、分解層は、多くの場合、島状かつ離散的に形成される。そのため、架橋部430も、島状かつ離散的に配置されている。
【0156】
4.変形例
第1の実施形態および第2の実施形態とそれらの変形例を自由に組み合わせて、本実施形態に適用してもよい。
【0157】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について説明する。
【0158】
1.半導体構造体
図14は、第6の実施形態の半導体構造体500の概略構成を示す図である。半導体構造体500は、基板510と、マスク層M1と、バッファ層520と、架橋部530と、半導体層540と、を有する。
【0159】
本実施形態の基板510は、主面に凹凸形状部を有さない。基板510は、平坦な主面を有する。主面は、第1面である。基板510の主面の一部511aの上にはマスク層M1が形成されている。基板510の主面の残部511bの上にはバッファ層520が形成されている。
【0160】
バッファ層520は、マスク層M1以外の箇所に形成されている。
【0161】
架橋部530は、マスク層M1に接触した状態で架橋されている。架橋部530は、マスク層M1の境界付近の位置で架橋されている。架橋部530は、複数の上面部532を有する。複数の上面部532のうちの1箇所における基板510の主面からの高さは、複数の上面部532における主面からの高さの平均値から−10%以上10%以下の範囲内にある。
【0162】
半導体層540は、架橋部530の上面部532から主に成長している。
【0163】
2.空隙
発光素子500は、空隙X5を有している。空隙X5は、第1の空隙である。空隙X5は、基板510の上のバッファ層520と対面する位置に形成されている。空隙X5は、バッファ層520と架橋部530とにより囲まれている。
【0164】
3.本実施形態の効果
半導体層540は、架橋部530の上面部532から主に成長する。そのため、半導体層540の貫通転位密度は、やや低い。つまり、半導体構造体500の半導体層の結晶性は高い。
【0165】
4.半導体発光素子の製造方法
本導体発光素子の製造方法のうち第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
【0166】
4−1.マスク層形成工程
基板510の一部511aの上にマスク層M1を形成する。例えば、SiO
2 を形成する。
【0167】
4−2.バッファ層形成工程
次に、基板510の残部511bの上にバッファ層520を形成する。この際、マスク層M1の上にはバッファ層520は形成されない。また、マスク層M1の上にバッファ層が形成されたとしても、マスク層M1の上のバッファ層の結晶品質は悪い。そのため、マスク層M1の上のバッファ層からは分解層E1は成長しない。
【0168】
4−3.分解層形成工程
次に、バッファ層520の上に分解層E1を形成する。分解層E1の形成方法等は、第1の実施形態と同様である。そして、この工程以降についても、第1の実施形態と同様である。
【0169】
5.変形例
5−1.マスクパターンと架橋部の形状
マスクM1のパターンにより、種々の3次元形状の分解層を形成することができる。架橋部は、分解層の形状をそのまま引き継ぐ。そのため、種々の形状の架橋部を形成することができる。
【0170】
5−2.組み合わせ
第1の実施形態および第2の実施形態とそれらの変形例を自由に組み合わせて、本実施形態に適用してもよい。
【0171】
(第7の実施形態)
第7の実施形態について説明する。
【0172】
1.パワーデバイス
図15は、第7の実施形態のパワーデバイス600の概略構成を示す図である。パワーデバイス600は、もちろん、半導体素子の一種である。そして、パワーデバイス600は、第1の実施形態における半導体構造体S1の一例である。パワーデバイス600は、基板A10と、バッファ層B10と、架橋部C10と、下地層640と、キャリア走行層650と、キャリア供給層660と、ゲート電極GEと、ソース電極SEと、ドレイン電極DEと、を有する。ソース電極SEおよびドレイン電極DEは、キャリア供給層660の上に形成されている。
【0173】
下地層640は、例えば、AlNまたはGaNである。キャリア走行層650は、キャリア供給層660から供給されるキャリアが走行する層である。キャリア走行層650は、例えば、GaNである。キャリア供給層660は、キャリア走行層650にキャリアを供給する層である。キャリア供給層660は、例えば、AlGaNである。
【0174】
下地層640は、底面641の一部641aと、底面641の残部641bと、を有する。底面641の一部641aは、架橋部C10の上面部C10bと対面している。底面641の残部641bは、架橋部C10とほとんど接触していない。
【0175】
2.変形例
第2の実施形態および第7の実施形態で説明したように、半導体素子は、架橋部C10より上層については、任意の半導体層および任意の電極を有していてもよい。そのため、発光素子やパワーデバイスに限らず、種々の半導体素子について適用することができる。また、第1の実施形態とそれらの変形例とを自由に組み合わせてもよい。
【実施例】
【0176】
1.実験A
1−1.基板
図16は、凹凸加工したサファイア基板の表面を示す走査型顕微鏡写真である。
図17は、
図16のXVII−XVII断面に相当する断面を示す断面図である。
図16および
図17に示すように、円錐形状の複数の凸部がハニカム状に配置されている。
【0177】
1−2.分解層
図18は、サファイア基板にバッファ層と分解層と架橋部とを形成したものの表面を示す走査型顕微鏡写真である。
図19は、
図18のXIX−XIX断面に相当する断面を示す断面図である。分解層としてGaNを形成した。架橋部としてAlNをスパッタリングにより形成した。スパッタリングの時間は50秒であった。AlNからなる架橋部の膜厚は14.3nmである。なお、AlNとGaNとの間の格子定数差に起因するクラックは観測されていない。
【0178】
1−3.分解層のエッチング
図20は、分解層のエッチングをした後の架橋部等の表面を示す走査型顕微鏡写真である。
図20に示すように、架橋部C10の脚部C10aにおける貫通孔の密度は、架橋部C10の上面部C10bにおける貫通孔の密度よりも高い。つまり、貫通転位に起因する貫通孔は、架橋部C10の脚部C10aに集中している。
【0179】
なお、
図20に示すように、架橋部C10の一部にクラックが入っている。クラックは、エッチング時もしくは降温時に生じる可能性がある。そのため、エッチング後に連続して成膜すると、クラックは発生しにくい。しかし、架橋部C10は、全体として安定であり、架橋部C10より上層の半導体層について問題なく成長させることができる。
【0180】
図21は、
図20のXXI−XXI断面に相当する断面を示す断面図である。
図21に示すように、左側には空隙が観測される。
図21の右側には、GaNからなる分解層の残渣が観測される。
【0181】
1−4.貫通孔の位置
図20に示すように、貫通孔は、架橋部C10の脚部C10aに集中している。架橋部C10より上層の半導体層は、架橋部C10の上面部C10bから成長する。したがって、架橋部C10より上層の半導体層においては、貫通転位密度は比較的低い。すなわち、架橋部C10より上層の半導体層の結晶性は優れている。
【0182】
2.実験B
2−1.分解層までの成膜
実験Bでは、実験Aと同じ凹凸基板を用いた。分解層としてGaN層をMOCVD法により形成した。架橋部としてAlGaN層をMOCVD法により形成した。Alの組成は35%であった。AlGaN層の膜厚は25.8nmであった。
【0183】
2−1.分解層のエッチング
図22は、架橋部としてAlGaN層を形成した場合の断面を示す走査型顕微鏡写真である。このように、架橋部としてAlGaN層を形成した場合であっても、空隙を形成することができる。なお、分解層としてGaN層を形成し、架橋部としてAl組成が5%以上35%以下のAlGaN層を形成した場合には、架橋部を形成することができた。
【0184】
ここで、架橋部としてAlGaN層を形成する場合には、Al組成が小さいほど、架橋部の組成と分解層の組成とが近い。つまり、架橋部と分解層との間の格子定数差は小さい。そのため、クラックの発生を防止できる。しかしその代わりに、架橋部の熱分解温度と分解層の熱分解温度とが近い。つまり、分解層を分解する際に架橋部もダメージを受けるおそれがある。一方、Al組成が大きいほど、架橋部の組成と分解層の組成とが離れている。そのため、熱分解による架橋部へのダメージを抑制できる。その代わりに、クラックが生じやすい。
【0185】
3.実験C
3−1.架橋部までの成膜
実験Cでは、実験Aと同じ凹凸基板を用いた。分解層としてGaN層をMOCVD法により形成した。架橋部として低温AlN層をMOCVD法により形成した。低温AlN層の膜厚は25.8nmであった。低温AlN層の成膜温度は300℃から700℃までの範囲内であった。
【0186】
3−2.分解層のエッチング
図23は、架橋部として低温AlN層を形成した場合の断面を示す走査型顕微鏡写真である。このように、架橋部として低温AlN層を形成した場合であっても、空隙を形成することができる。
【0187】
4.実験D
4−1.基板
基板としてストライプ状の凹凸が形成された基板を用いた。そして、分解層として非極性面のm面のGaN層をMOCVD法により形成し、架橋部としてAlGaN層をMOCVD法により形成した。AlGaN層のAl組成は、15%であった。
【0188】
4−2.分解層のエッチング
図24は、分解層のエッチング後の架橋部の周辺を示す走査型顕微鏡写真である。
図25は、分解層のエッチング後の架橋部の周辺の断面を示す走査型顕微鏡写真である。
図24および
図25に示すように、基板とAlGaN層との間に空隙が観測される。
【0189】
5.実験E
5−1.架橋部の膜厚
架橋部C10の膜厚が8nm以上60nm以下の程度の場合に、好適な空隙が得られた。