【実施例】
【0059】
次に実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。また「%」は特に断りが無い限り「重量%」を示す。
【0060】
〔製造例1〕ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩の合成
N
ε−ラウロイル−L−リジン8.2g(25mmol)を、水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど撹拌し、その後室温で23時間撹拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて10%のビス(N
ε−ラウロイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩水溶液を得た。
【0061】
〔製造例2〕ビス(N
ε−ラウロイル−L−リジン)セバコイルアミドジトリエタノールアミン塩の合成
N
ε−ラウロイル−L−リジン8.2g(25mmol)を、水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど撹拌し、その後室温で23時間撹拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水に入れ、トリエタノールアミンを加えてpHを10に調整し、10%のビス(N
ε−ラウロイル−L−リジン)セバコイルアミドジトリエタノールアミン塩水溶液を得た。
【0062】
〔製造例3〕ビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩の合成
N
ε−オクタノイル−L−リジン6.8g(25mmol)を水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど撹拌し、その後室温で23時間撹拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて10%のビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩水溶液を得た。
ビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミド(フリー体)の
1H-NMR
1H-NMR(400 MHz, DMSO-d
6, TMS, 25 ℃):δ0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.20-1.29 (m, 28H), 1.32-1.38 (m, 4H), 1.45-1.50 (m, 8H), 1.54-1.59 (m, 4H), 2.02 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.09 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.99 (q, J = 6.5 Hz, 4H), 4.08-4.47 (m, 2H), 7.73 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.0 Hz, 2H).
【0063】
試験例1
本発明の組成物の離水性および凝集抑制効果について評価した。組成物の調製、評価方法および評価基準は下記のとおりである。
【0064】
実施例1の組成物の調製
成分(A)(製造例1で合成した化合物)を、あらかじめ水に撹拌して分散させた成分(B)に加え、室温にて撹拌した(各成分の重量%は表1に記載)。得られた混合物を2つに分けて、pHをそれぞれpH4.8、pH5.5に調整した。調製した組成物を30mLのガラス瓶に完全密封し、室温にて5日以上保管した。
【0065】
比較例1の組成物の調製
成分(A)を添加しないこと以外は、実施例1の組成物の調製と同様の方法で、組成物を調製、室温にて5日以上保管した。
【0066】
評価1:離水性(組成物から水が分離してくるか否か)
前記のように調製したpH5.5の組成物を入れたガラス瓶を逆さにし、目視にて観察、下記の基準にて評価した。
◎:離水が確認されず、ガラス瓶を逆さにしてもほとんど水が垂れてこない
×:離水が確認され、ガラス瓶を逆さにすると明らかに水が垂れてくる
【0067】
評価2:凝集抑制効果
前記のように調製したpH4.8の組成物を目視にて観察、下記の基準にて評価した。
◎:凝集物が確認されなかった
×:明らかに凝集物が確認された
【0068】
結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
成分(B)を添加しない比較例では、組成物から水が分離し、かつ凝集が生じた(比較例1)。一方、成分(B)を添加した本発明の組成物では、組成物から水が分離せず、かつ凝集が抑制された(実施例1)。
【0071】
試験例2
本発明の組成物の電解質存在下もしくはアルコール存在下での各pHにおける粘度、および使用性について評価した。組成物の調製、評価方法および評価基準は下記のとおりである。
【0072】
実施例2〜8の組成物の調製
成分(A)(製造例1および3で合成した化合物)を、あらかじめ水に撹拌して分散させた成分(B)に加えた後、成分(C)(電解質)(ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%水溶液);AJIDEW NL−50(味の素社製))を加え、室温にて撹拌した(各成分の重量%は表2に記載)。得られた混合物を4つに分けて、pHをそれぞれpH4.8、pH5.5、pH6.5、pH7.5に調整した。調製した試験用組成物を30mLのガラス瓶に充填して完全密封し、室温にて5日間から8日間保管した。
【0073】
比較例2〜8の組成物の調製
成分(A)を添加しないこと以外は、実施例2〜8の組成物の調製と同様の方法で、各組成物を調製、室温にて5日間から8日間保管した。
【0074】
実施例9〜18の組成物の調製
成分(A)(製造例2で合成した化合物)を、あらかじめ水に撹拌して分散させた成分(B)および成分(D)(アルコール)の混合物に加え、室温にてよく撹拌した(各成分の重量%は表3に記載)。得られた混合物を4つに分けて、表中pH調整の項に記載のものを添加してpHをそれぞれpH4.8、pH5.5、pH6.5、pH7.5に調整した。調製した試験用組成物を30mLのガラス瓶に充填して完全密封し、室温にて5日間から8日間保管した。
【0075】
比較例9および10の組成物の調製
成分(A)を添加しないこと以外は、実施例9〜18の組成物の調製と同様の方法で、各組成物を調製、室温にて5日間から8日間保管した。
【0076】
評価3:電解質またはアルコールに対する安定性
前記のように調製、保管したpH5.5の組成物が充填されたガラス瓶を逆さにし、目視にて観察、下記の基準にて評価した。
◎:ガラス瓶を逆さにしても落ちてこない
×:ガラス瓶を逆さにすると落ちてくる
【0077】
評価4:pH安定性
前記のように調製、保管したpH4.8、pH5.5、pH6.5、pH7.5のそれぞれの組成物が充填されたガラス瓶を逆さにし、目視にて観察、下記の基準で評価した。
◎:3点以上のpHで、ガラス瓶を逆さにしても落ちてこない
〇:2点のpHで、ガラス瓶を逆さにしても落ちてこない
×:1点以下のpHで、ガラス瓶を逆さにしても落ちてこない
【0078】
評価5:使用性(べたつき)
前記のように調製したpH5.5の組成物25〜35mgを健康な8名の被験者の前腕内側の皮膚8×2cm以内の範囲に塗布し、塗布中や塗布直後にべたつきを感じたかどうかを調査し、下記の基準にて評価した。
◎:被験者のうち1人以内がべたつくと回答
○:被験者のうち2人以上4人未満がべたつくと回答
△:被験者のうち4人以上6人未満がべたつくと回答
×:被験者のうち6人以上がべたつくと回答
【0079】
評価6:使用性(ぬるつき)
前記のように調製したpH5.5の組成物25〜35mgを健康な8名の被験者の前腕内側の皮膚8×2cm以内の範囲に塗布し、塗布中や塗布直後にぬるつきを感じたかどうかを調査し、下記の基準にて評価した。
◎:被験者のうち1人以内がぬるつくと回答
○:被験者のうち2人以上4人未満がぬるつくと回答
△:被験者のうち4人以上6人未満がぬるつくと回答
×:被験者のうち6人以上がぬるつくと回答
【0080】
結果を表2および表3に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
成分(A)を添加しない比較例では、使用感を重視して成分(B)の量を抑えると十分な粘度を示さず(比較例2〜5、9および10)、粘度を補うために成分(B)を増量するとべたつきやぬるつきが生じ、塗布時の使用感に劣った(比較例6〜8)。一方、成分(A)を添加した本発明の組成物では、広いpH域で増粘性を維持することができ、かつべたつきやぬるつきが低減された(実施例2〜18)。
【0084】
以下、本発明に係る組成物の好適な配合例について説明する。
【0085】
配合例1 保湿ジェル
下記表4に示す配合の保湿ジェルを常法に従い調製した。
【0086】
【表4】
【0087】
配合例2 ハンドサニタイザー
下記表5に示す配合のハンドサニタイザーを常法に従い調製した。
【0088】
【表5】
【0089】
配合例3 ヘアトニック
下記表6に示す配合のヘアトニックを常法に従い調製した。
【0090】
【表6】
【0091】
配合例4 スプレー型サンスクリーン
下記表7に示す配合のスプレー型サンスクリーンを常法に従い調製した。
【0092】
【表7】
【0093】
配合例5 アフターシェービングジェル
下記表8に示す配合のアフターシェービングジェルを常法に従い調製した。
【0094】
【表8】
【0095】
配合例1〜5の化粧料は、いずれも十分な粘度を示し、かつべたつきやぬるつきが抑えられた。
なお、使用した材料の詳細は以下のとおりである。
ブチレングリコール:1,3−ブチレングリコール(ダイセル社製)
グリセリン:化粧品用濃グリセリン(阪本工業社製)
ポリクオタニウム−61:リピジュア−S(日油社製)
ピロリドンカルボン酸ナトリウム:AJIDEW NL−50(味の素社製)
水添レシチン、グリセリン:レシノールSH50(日光ケミカルズ社製)
ペンテト酸5ナトリウム:キレスト P−SD(中部キレスト社製)
PEG−40水添ヒマシ油:EMALEX HC−40(日本エマルジョン社製)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2−オクチルドデシル):ELDEW PS−304R(味の素社製)
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル:EMALEX KTG(日本エマルジョン社製)
ネオペンタン酸イソステアリル:ネオライト180P(高級アルコール工業社製)
アルニカ花エキス、キュウリ果実エキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウニワトコエキス、ゼニアオイエキス、パリエタリアエキス、ブチレングリコール、水:フィテレン EGX−251(GREENTECH S.A.社製)
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー:カーボポール Ultrez 20(Lubrizol Advanced Materials社製)
デカノイルプロリンナトリウム、水:PRODEW P−DS−12(味の素社製)
ココイルアルギニンエチルPCA:CAE(味の素社製)
カルボキシビニルポリマー:CARBOPOL 940 POLYMER(Lubrizol Advanced Materials社製)
アミノメチルプロパノール:AMP−ULTRA PC 1000(DOW社製)
アセチルヒアルロン酸ナトリウム:(資生堂社製)
アラントイン:(川研ファインケミカル社製)
べへネス−30:NIKKOL BB−30(日光ケミカルズ社製)
パンテノール:D−パンテノールUSP(BASF社製)
カンフル:日本薬局方dl−カンフル(日本精化社製)
メントール:メントール(高砂香料社製)
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン:パルソール1789(DSMニュートリション社製)
オクトクリレン:パルソール340(DSMニュートリション社製)
ポリシリコーン−15:パルソールSLX(DSMニュートリション社製)
ホモサレート:パルソールHMS(DSMニュートリション社製)
イソノナン酸イソノニル:サラコス99(日清オイリオ社製)
安息香酸アルキル(C12−15):FINSOLV TN(INNOSPEC社製)
フェニルトリメチコン:EMALEX SO−29(日本エマルジョン社製)
炭酸ジカプリリル:CETIOL CC(BASF社製)
シクロヘキサシロキサン:DC246Fluid(東レ・ダウコーニング社製)
ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン:UVASORB HEB(3V Sigma社製)
(VP/ヘキサデセン)コポリマー:アンタロンV216(ISP社製)
(アクリレーツ/オクチルアクリルアミド)コポリマー:DERMACRYL79(AKZO NOBEL社製)
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマーナトリウム:SEPIMAX C(SEPPIC社製)
青2:(癸巳化成社製)
紫201:(癸巳化成社製)
グルタミン酸ジ酢酸4ナトリウム:DISSOLVINE GL−47−S(AKZO NOBEL社製)
ベタイン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ソルビトール、セリン、グリシン、グルタミン酸、アラニン、リシン、アルギニン、トレオニン、プロリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、水:PRODEW400(味の素社製)
パントテン酸カルシウム、ナイアシンアミド、アスコルビルリン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、ピリドキシン塩酸塩、マルトデキストリン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、シリカ:ビュープレックスVH、(DSMニュートリション社製)
ブチレングリコール、水、ローマカミツレ花エキス、トウキンセンカ花エキス、ヤグルマギ花エキス、カミツレ花エキス、セイヨウオトギリソウ花/葉/茎エキス、フユボダイジュ花エキス:ファルコレックス BX44(一丸ファルコス社製)
PEG−11メチルエーテルジメチコン:KF−6011(信越化学工業社製)