【文献】
Masahiro Suzuki et al,Novel dumbbell-form low-molecular-weight gelators based on L-lysine: their hydrogelation and organog,New Journal of Chemistry,2005年 9月 9日,29,pp.1439-1444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第四級アンモニウム塩が、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびクオタニウム−87からなる群から選択される少なくとも1種である請求項2に記載の組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、すすぎ時の使用性に優れ、処理後の毛髪表面が滑らかでパサつかず、毛髪の根元から毛先まで手触りを均一にする、水性化粧料として利用可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、成分(A):下記式(1)で示される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう)またはその塩および成分(B):カチオン性界面活性剤を含有する組成物が、水性化粧料として利用可能であって、すすぎ時にぬるつきがなく、すすぎが速いことを見出すとともに、上記組成物で処理した後の毛髪表面が滑らかでパサつかず、毛髪の根元から毛先まで均一な手触りを有し、毛先の収まりにも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]成分(A):式(1)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、
zは0以上の整数であり、
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。)で示される化合物またはその塩、および
成分(B):カチオン性界面活性剤
を含有する組成物。
[2]成分(A)が、前記式(1)においてzが0〜10の整数である化合物またはその塩である、[1]に記載の組成物。
[3]成分(A)が、前記式(1)においてzが7または8である化合物またはその塩である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]成分(A)が、前記式(1)においてxおよびyが共に4である化合物またはその塩である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]成分(A)が、前記式(1)においてR
1およびR
2が各々独立して、炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基である化合物またはその塩である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]成分(A)が、前記式(1)においてR
3およびR
4が共に水素原子である化合物またはその塩である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]成分(A)が、前記式(1)においてR
1およびR
2が、各々独立して、炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、R
3およびR
4が、共に水素原子であり、zが、0〜10の整数であり、xおよびyが、共に4である化合物またはその塩である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[8]成分(A)が、前記式(1)においてR
1およびR
2が、共に炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、R
3およびR
4が、共に水素原子であり、zが、7または8であり、xおよびyが、共に4である化合物またはその塩である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[9]成分(A)が、ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミド、およびビス(N
ε-オクタノイル-L-リジン)セバコイルアミドから選択される化合物またはその塩である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[10]成分(B)が、第四級アンモニウム塩および第三級アミンからなる群から選択される少なくとも一種のカチオン性界面活性剤である、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]第四級アンモニウム塩が、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムおよびクオタニウム−87からなる群から選択される少なくとも1種である[10]に記載の組成物。
[12]第三級アミンが、ステアラミドプロピルジメチルアミンおよびベヘナミドプロピルジメチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種である[10]に記載の組成物。
[13]さらに、成分(C):高級アルコールを含有する、[1]〜[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]成分(A)を組成物全量に対して0.005〜20重量%含有する、[1]〜[13]のいずれかに記載の組成物。
[15]成分(B)を組成物全量に対して0.005〜10重量%含有する、[1]〜[14]のいずれかに記載の組成物。
[16][1]〜[15]のいずれかに記載の組成物を含む毛髪用化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、すすぎ時の使用性に優れ、処理後の毛髪表面が滑らかでパサつかず、毛髪の根元から毛先まで手触りを均一にする、水性化粧料として利用可能な組成物を提供することができる。
本発明によれば、毛髪の疎水性が高くなりキューティクルの損傷が少なくなり健康な毛髪に導くことができる毛髪用化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の組成物は、成分(A):式(1)
【0019】
(式中、
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、
zは0以上の整数であり、
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。)で示される化合物またはその塩、および
成分(B):カチオン性界面活性剤
を含有する組成物であることを特徴とする。
また、本発明の組成物は、成分(A)および成分(B)に加えて、さらに、成分(C):高級アルコールを含有する組成物であることを特徴とする。
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について詳述する。
【0021】
1.成分(A):式(1)で示される化合物(化合物(1))またはその塩
R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基である。
炭素原子数5〜21のアルキル基とは、炭素原子数5〜21の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、ネオヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
炭素原子数5〜21のアルケニル基とは、炭素原子数5〜21の直鎖または分岐状のアルケニル基を意味し、具体的には、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
炭素原子数5〜15のアルキル基とは、炭素原子数5〜15の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
炭素原子数7〜11のアルキル基とは、炭素原子数7〜11の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等が挙げられる。
R
1およびR
2は、好ましくは各々独立して、炭素原子数5〜15のアルキル基であり、より好ましくは各々独立して、炭素原子数7〜11のアルキル基である。
また、R
1およびR
2は、直鎖のアルキル基であることが好ましい。さらに、R
1およびR
2は、同一であることが好ましい。
【0022】
R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基である。
炭素原子数1〜22のアルキル基とは、炭素原子数1〜22の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、ネオヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
炭素原子数2〜22のアルケニル基とは、炭素原子数2〜22の直鎖または分岐状のアルケニル基を意味し、具体的には、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
R
3およびR
4は、好ましくは共に水素原子である。
【0023】
zは、0以上の整数である。
zは、好ましくは0〜10の整数であり、より好ましくは7または8である。
【0024】
xおよびyは、各々独立して、2〜4の整数である。
xおよびyは、好ましくは共に4である。
【0025】
式(1)で示される化合物として、好ましくは、以下の化合物が挙げられる。
(化合物A)
R
1およびR
2が、各々独立して、炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、0〜10の整数であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0026】
(化合物B)
R
1およびR
2が、共に炭素原子数5〜15の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、7または8であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0027】
(化合物C)
R
1およびR
2が、共に炭素原子数7〜11の直鎖アルキル基であり、
R
3およびR
4が、共に水素原子であり、
zが、7または8であり、
xおよびyが、共に4である化合物。
【0028】
式(1)で示される化合物の具体例としては、
ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミド、および
ビス(N
ε-オクタノイル-L-リジン)セバコイルアミド、
またはそれらの塩が挙げられる。
【0029】
式(1)で示される化合物の塩としては特に限定されず、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛との塩等の無機塩、あるいはアンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩や、アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等の有機塩が挙げられる。これらのうち1種を使用してもよいし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。入手の容易性、取り扱い性等の観点から、アルカリ金属塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
【0030】
化合物(1)は、自体公知の方法またはそれに準じた方法により製造することができる(特開2004−323505号公報、Org. Biomol. Chem., 2003, 1, 4124-4131、New J. Chem., 2005, 29, 1439-1444等)。例えば、下記式に示すように、化合物(1)のうち、対称型の化合物(1’)は、N
ω−アシルアミノ酸(2)とジカルボン酸ジクロライド(3)を適切な溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0032】
(式中、R
1’は炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、R
3’は水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、z’は0以上の整数であり、x’は2〜4の整数である。)
【0033】
N
ω−アシルアミノ酸(2)としては、例えば、N
ε−アシルリジン(例:N
ε−ヘキサノイル−L−リジン、N
ε−オクタノイル−L−リジン等)、N
δ−アシルオルニチン(例:N
δ−ヘキサノイル−L−オルニチン等)、N
γ−アシル−α,γ−ジアミノ酪酸等が挙げられる。
ジカルボン酸ジクロライド(3)としては、例えば、オギザリルクロライド、マロニルクロライド、スクシニルクロライド、グルタリルクロライド、アジポイルクロライド、ピメロイルクロライド、スベロイルクロライド、アゼラオイルクロライド、セバコイルクロライド、ドデカンジオイルクロライド等が挙げられる。ジカルボン酸ジクロライド(3)の使用量は、N
ω−アシルアミノ酸(2)に対して通常0.4〜0.6当量である。
溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
【0034】
また、化合物(1)のうち、非対称型の化合物(1’’)は下記の通り製造することができる。まず、N
ω−アシルアミノ酸(2)とジカルボン酸モノクロライドモノエステル(4)を適切な溶媒中で反応させて化合物(5)を得る(工程1)。続いて、得られた化合物(5)の1級エステル部位を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下で加水分解した後、チオニルクロライド等のクロロ化剤を用いてカルボン酸部位をクロロ化し、前記工程1で用いたN
ω−アシルアミノ酸(2)とは異なるN
ω−アシルアミノ酸(2’)を反応させることにより製造することができる(工程2)。
【0036】
(式中、R
1’、R
3’、z’およびx’は前記定義と同義であり、R
2’は炭素原子数5〜21のアルキル基または炭素原子数5〜21のアルケニル基であり、R
4’は水素原子、炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数2〜22のアルケニル基であり、R
5はメチル基、エチル基等のアルキル基であり、y’は2〜4の整数である。)
【0037】
N
ω−アシルアミノ酸(2)および(2’)は、前記と同様のN
ω−アシルアミノ酸を用いることができる。
ジカルボン酸モノクロライドモノエステル(4)は、市販されている場合には市販品をそのまま用いることができ、自体公知の方法またはそれに準じた方法にて製造したものを用いることもできる。
【0038】
なお、前記方法で得られた化合物(1)を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、有機アミン塩基等と反応させることにより、化合物(1)の塩に変換することができる。
【0039】
本発明の組成物における成分(A):化合物(1)またはその塩の含有量は、組成物全量に対して通常0.005〜20重量%である。好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5.0重量%であり、さらに好ましくは0.02〜2.5重量%である。
【0040】
2.成分(B):カチオン性界面活性剤
本明細書における「カチオン性界面活性剤」としては、例えば、第四級アンモニウム塩、第三級アミン等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の具体例としては、モノアルキル型第四級アンモニウム塩(例、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、セトリモニウムサッカリン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、クオタニウム−33等)、モノアルコキシ型第四級アンモニウム塩(例、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム等)、ジアルキル型第四級アンモニウム塩(例、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12−C18)ジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジステアロイルエチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、ヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドン酸、リノール酸アミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸等)、環状型第四級アンモニウム塩(例、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、クオタニウム−87等)等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の好適な例としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、クオタニウム−87等が挙げられる。
第三級アミンの具体例としては、アルキルアミドアミン型第三級アミン(例、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン等)、アルキルアミン型第三級アミン(例、ジメチルステアラミン、ベヘニルジメチルアミン、POEヤシ油アルキルアミン、POEオレイルアミン、POEステアリルアミン等)、アルキルアルカノールアミン型第三級アミン(例、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールステアリルアミン等)等が挙げられる。
第三級アミンの好適な例としては、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン等が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
本発明の組成物における成分(B):カチオン性界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して通常0.005〜10重量%であり、好ましくは0.05〜8.0重量%である。
【0043】
3.成分(C):高級アルコール
本明細書における「高級アルコール」として、好ましくは、炭素原子数12〜22の直鎖または炭素原子数12〜30の分岐状のアルコールが挙げられる。「高級アルコール」の具体的としては、炭素原子数12〜22の直鎖アルコール(例、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等)、炭素原子数12〜30の分岐状アルコール(例、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)が挙げられる。
「高級アルコール」の好適な例としては、炭素原子数12〜22の直鎖アルコールが挙げられ、なかでもステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、セタノール等がより好ましく挙げられる。
【0044】
本発明の組成物における成分(C):高級アルコールの含有量は、組成物全量に対して通常0.01〜20重量%であり、好ましくは0.1〜15重量%である。
【0045】
本発明は、また、前記本発明の組成物を含有する毛髪用化粧料に関する。
【0046】
本発明の毛髪用化粧料としては、特に限定されないが、具体的には、パーマ剤、カラー剤、養毛剤、育毛剤、ヘアクリーム、ヘアローション、毛髪用化粧水、毛髪用乳液、毛髪用軟膏、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス等が挙げられる。
【0047】
本発明の毛髪用化粧料は、通常毛髪用化粧料に添加してもよい成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。具体的には、油剤、キレート剤、アミノ酸類、多価アルコール、ポリアミノ酸およびその塩、水溶性高分子、糖アルコールおよびそのアルキレンオキシド付加物、低級アルコール、動植物抽出物、核酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、制汗剤、顔料、色素、酸化染料、pH調整剤、パール化剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0048】
本発明の組成物、および該組成物を含む毛髪用化粧料は、常法に従って製造することができる。
【実施例】
【0049】
次に製造例および実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の製造例および実施例に限定されるものではない。また「%」は特に断りが無い限り「重量%」を示す。
【0050】
〔製造例1〕ビス(N
ε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩の合成
N
ε−ラウロイル−L−リジン8.2g(25mmol)を、水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど攪拌し、その後室温で23時間攪拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて10%のビス(N
ε−ラウロイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩水溶液を得た。
【0051】
〔製造例2〕ビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩の合成
N
ε−オクタノイル−L−リジン6.8g(25mmol)を水70gおよび25%水酸化ナトリウム水溶液(10g)に溶解させ、ジエチルエーテル80gを加えた。そこへセバコイルクロライド3.3g(14mmol)をエーテル層にゆっくり加えた。この2層溶液を0℃に保持したまま1時間ほど攪拌し、その後室温で23時間攪拌した。次いで、75%硫酸を滴下し、pH2に調整した後、得られた白色沈殿を濾取し、水でよく洗い乾燥した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて10%のビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミドジナトリウム塩水溶液を得た。
ビス(N
ε−オクタノイル−L−リジン)セバコイルアミド(フリー体)の
1H-NMR
1H-NMR(400 MHz, DMSO-d
6, TMS, 25 ℃):δ 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6H), 1.20-1.29 (m, 28H), 1.32-1.38 (m, 4H), 1.45-1.50 (m, 8H), 1.54-1.59 (m, 4H), 2.02 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.09 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 2.99 (q, J = 6.5 Hz, 4H), 4.08-4.47 (m, 2H), 7.73 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.0 Hz, 2H).
【0052】
〔実施例1〜7〕〔比較例1〜4〕:毛髪用化粧料の調製および評価
【0053】
実施例1〜7および比較例1、2の毛髪用化粧料の調製
下記表1に記載の(I)の成分を混合し、80〜85℃に加熱して撹拌溶解させた。この混合物に、あらかじめ80〜85℃に加熱して撹拌溶解させた下記表1に記載の(II)の成分を混合し、80℃にてホモミキサーで乳化した後、撹拌しながら冷却した。その後、実施例1〜4および比較例1ではpH3.9±0.1に調整し、実施例5〜7および比較例2では必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5.3に調整した。調製した毛髪用化粧料は室温で保存した。
【0054】
比較例3、4の毛髪用化粧料の調製
下記表1に記載の(II)の成分を混合し、80〜85℃に加熱して撹拌溶解させた。この混合物に、あらかじめ下記表1に記載の(III)の成分および水酸化ナトリウム水溶液を撹拌溶解させた混合物を加え、析出してくるN
ε-ラウロイルリジンを分散させた。さらに、この混合物を、あらかじめ80〜85℃に加熱して撹拌溶解させた下記表1に記載の(I)の成分に混合し、80℃にてホモミキサーで乳化した後、撹拌しながら冷却した。その後、比較例3ではpH3.9±0.1に調整し、比較例4では必要に応じてクエン酸および水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5.3に調整した。調製した毛髪用化粧料は室温で保存した。
【0055】
下記の評価1〜6の使用感、感触の評価には、European Medium Brown Hair、De Meo Brothers/NY、長さ30cm、重さ10gのナチュラル毛の毛髪束を複数用意し、被験者5名が以下の方法で処理しながら評価を行った。
【0056】
評価1、2:すすぎ時のぬるつきのなさ、すすぎの速さ
上記毛髪束を15%のラウレス硫酸ナトリウム(SLES)を用いて2回洗浄し、前記のように調製した毛髪用化粧料2gを塗布した。毛髪全体に十分に馴染ませた後、35〜40℃の水道水ですすぎ、使用感を評価した。なお、被験者には、あらかじめ比較例1および2のすすぎ時の使用感を認識させ、実施例1〜4および比較例3の評価については比較例1を、実施例5〜7および比較例4の評価については比較例2をそれぞれ基準とし、以下の基準で採点を行った。
6点:非常に良い
5点:良い
4点:少し良い
3点:普通、基準と変わらない
2点:少し悪い
1点:悪い
0点:非常に悪い
被験者の平均値を計算し、以下の基準で評価した。
◎:平均点が5.0以上
〇:平均点が4.0以上5.0未満
△:平均点が3.0以上4.0未満
×:平均点が3.0未満
【0057】
評価3〜6:乾燥後の毛髪の表面の滑らかさ、パサつきの無さ、均一な手触り、クセの出にくさ(毛先の収まり)の評価
上記毛髪束を15%のラウレス硫酸ナトリウム(SLES)を用いて2回洗浄し、前記のように調製した毛髪用化粧料2gを塗布した。毛髪全体に十分に馴染ませた後、30秒間35〜40℃の水道水ですすぎ、ついで、水を切りタオルドライを行った。そのまま自然乾燥させ、翌日に乾燥後の毛髪を評価した。評価は、毛髪用化粧料による処理前の毛髪束と比較し、以下の基準で採点を行った。
6点:非常に良い
5点:良い
4点:少し良い
3点:普通、処理前と変わらない
2点:少し悪い
1点:悪い
0点:非常に悪い
被験者の平均値を計算し、以下の基準で評価した。
◎:平均点が5.0以上
〇:平均点が4.0以上5.0未満
△:平均点が3.0以上4.0未満
×:平均点が3.0未満
【0058】
下記の評価7および8の物性評価には、15cmの長さの毛髪1gの毛髪束を複数用意し、これを用いた。前記のように調整した、実施例2および4、ならびに比較例1および3の毛髪用化粧料をそれぞれ0.5g、毛髪束になじませ、この後35〜40℃の水道水100mLに浸してすすぎ、洗浄を5回繰り返し、水を切りそのまま自然乾燥させ、翌日に下記の評価を行った。
【0059】
評価7:毛髪の疎水性(接触角測定)
毛髪の疎水性の評価として、接触角の測定を次のように行った。上記毛髪束の毛先から8cmの範囲に1.2μLの水をセットして、20秒後に水滴をマイクロスコープで撮影した。水滴と毛髪の左右の角度の平均を1回の値として、6回測定し、さらにその平均値を接触角の値として求めた。毛髪用化粧料による処理前の接触角と、毛髪用化粧料処理後の接触角から、下式に従って変化率(%)を算出した。なお、接触角の変化率が大きいほど毛髪の疎水性が高くなり、ダメージが大きかった毛先が毛髪用化粧料により健康な毛髪に近い状態となったことを示す。
接触角変化率(%)=100×(1−処理後の接触角/処理前の接触角)
この接触角変化率を下記の基準で評価した。
◎:接触角変化率が20%以上である
〇:接触角変化率が15%以上20%未満である
△:接触角変化率が10%以上15%未満である
×:接触角変化率が10%未満である
【0060】
評価8:すべり性試験(MIU変化率)
上記毛髪束を、恒温恒湿室(23℃、40%R.H.)にて、すべり試験機(カトーテック社製、KES−SE(STP))の本体に固定し、摩擦子として指紋タイプのシリコーン樹脂を用い、荷重25gをかけて平均摩擦係数(MIU)の測定を行った。毛髪束の毛先方向へ0.1cm/secの速度で摩擦感テスターを移動させMIUを得た。測定は2回行い、平均値を毛髪用化粧料処理後の毛髪のMIUとした。毛髪用化粧料による処理前のMIUと、毛髪用化粧料処理後のMIUから、下式に従ってMIU変化率(%)を算出した。なお、MIU変化率が大きいほど、毛髪用化粧料によって表面の滑り性が向上し、パサつきが低減されていることを示している。
MIU変化率(%)=100×(1−処理後のMIU/処理前のMIU)
このMIU変化率を下記の基準で評価した。
◎:MIU変化率が40%以上である
〇:MIU変化率が35%以上40%未満である
△:MIU変化率が30%以上35%未満である
×:MIU変化率が30%未満である
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
成分(A)を添加した本発明の実施例1〜7の化粧料では、成分(A)を添加しない比較例1、2の毛髪用化粧料と比較して、すすぎ時にぬるつきがなく、すすぎも速かった。
本発明の実施例1〜7の化粧料による処理後の毛髪は、成分(A)を添加しない比較例1、2の化粧料や、成分(A)に替えてN
ε−ラウロイルリジンを添加した比較例3、4の化粧料で処理した毛髪と比較して、表面が滑らかでパサつかず、毛先まで均一な手触りを有しているとともに、見た目においても毛髪繊維のクセが出にくくなり毛先の収まりに優れていた。
また、本発明の実施例2の化粧料ではMIU変化率が大きかったことから、処理前の毛髪と比較して滑らかさやすべり性が向上し、パサつきが低減しているという官能評価での結果が支持された。
さらに、本発明の実施例2および4の化粧料では毛先の疎水性が高くなり、毛先がより健康な毛髪に近づいたことが分かる。このことは、ダメージの少ない根元とダメージの大きい毛先の差が小さくなったことを意味し、官能評価による「均一な手触り」が支持された。