(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁石は、前記リングを成すように形成されており、内径が一定の円筒部(151)と、前記円筒部側の内径が前記円筒部から離れるに従って大きくなるテーパ円筒部(152)とを有している請求項2に記載の電磁継電器。
前記磁石は、リングあるいは多角形の一部が複数、用いられて形成されており、前記可動コアの中心軸に対して対称に配置されている請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の電磁継電器。
前記磁石は、前記可動コアが前記固定コアに吸引されたときの前記可動コアに対して、非接触となる領域に配置されている請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、前記第1励磁コイル、および前記第2励磁コイルによって発生する磁束と同じ向きに着磁されている請求項9に記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、前記軸線方向から見たときの形状が、リングあるいは多角形の少なくとも一部を成すように形成されている請求項9または請求項10に記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、前記リングを成すように形成されており、内径が一定の円筒部と、前記円筒部側の内径が前記円筒部から離れるに従って大きくなるテーパ円筒部とを有している請求項11に記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、前記プレート部上で、前記第1可動コア、および前記第2可動コアの外周側に対応する領域に配置されている請求項9〜請求項13のいずれか1つに記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、リングあるいは多角形の一部が複数、用いられて形成されており、前記第1可動コア、および前記第2可動コアの中心軸に対して対称に配置されている請求項9〜請求項14のいずれか1つに記載の電磁継電器。
前記第1磁石、および前記第2磁石は、前記第1可動コア、および前記第2可動コアが前記第1固定コア、および前記第2固定コアに吸引されたときの前記第1可動コア、および前記第2可動コアに対して、非接触となる領域に配置されている請求項9〜請求項15のいずれか1つに記載の電磁継電器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態の電磁継電器100Aについて、
図1〜
図3を用いて説明する。電磁継電器100Aは、所定の機器に対する電力供給を断続する装置(いわゆるリレー)である。電磁継電器100Aは、所定の機器として、例えば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載される走行用駆動モータに対して、バッテリからの電力を変換(例えばDC−AC変換)して供給するインバータに適用されている。電磁継電器100Aは、バッテリとインバータとの間に配置されている。
【0019】
電磁継電器100Aは、図示しないケース内に、主要部を構成する励磁コイル110、固定コア120、ヨーク130、可動コア140、および磁石150A等が設けられて形成されている。ケースは、例えば、樹脂製となっており、ケース内には、内部の主要部を保持するための樹脂製のベースが設けられている。ベースは、接着または爪等の嵌合によりケースに固定されている。
【0020】
以下、各部材、あるいは各部材間の配置に対する方向を示すために、励磁コイル110の軸線方向(
図1中の上下方向)を基準にして説明することにする。この軸線方向は、例えば、後述する固定コア120と可動コア140の並ぶ方向に一致しており、軸線方向の可動コア140側を一方側と呼び、また、軸線方向の固定コア120側を他方側と呼ぶことにする。
【0021】
図1に示すように、励磁コイル110は、円筒状を成して、通電時に磁界を形成するものであり、後述するヨーク130の底部(ヨーク部131の底部)に固定配置されている。励磁コイル110は、ボビン111、およびコイル部112等を有している。ボビン111は、樹脂製の部材であり、筒状部と、この筒状部の軸線方向の両端部に一体的に形成された平板状の鍔部とを有している。コイル部112は、ボビン111の筒状部に導線が巻かれて形成されている。導線は、ボビン111の筒状部の周方向に沿って巻かれている。励磁コイル110の内径部(ボビン111の筒状部)の空間は、コイル中心孔部113となっている。本実施形態では、励磁コイル110の軸線方向は、
図1の上下方向となっている。
【0022】
尚、ボビン111には、図示しないストッパ部が設けられている。ストッパ部は、例えば、ボビン111の筒状部の軸線方向の中間部となる内周面に設けられて、径方向の内側に突出する部位となっている。ストッパ部は、後述する復帰バネの軸線方向の他方側の端部を支持するようになっている。
【0023】
固定コア120は、励磁コイル110のコイル中心孔部113内に配置された円柱状の部材であり、後述するヨーク130と共に磁気回路を構成する部材となっている。固定コア120は、磁性体金属材料から形成されている。固定コア120の中心軸の向きは、励磁コイル110の軸線方向と一致している。固定コア120は、テーパ部121、円形部122、小径部123、および中心孔部124等を有している。
【0024】
テーパ部121は、固定コア120における軸線方向の一方側となる端部(すなわち、可動コア140側の端部)から軸線方向の他方側に向かって拡径する部位となっている。円形部122は、テーパ部121における軸線方向の他方側の端部から更に他方側に向かって延びて、外径が一定に設定された部位となっている。小径部123は、円形部122における軸線方向の他方側の端部から更に他方側に向かって延びて、円形部122よりも外径寸法が小さく設定された部位となっている。中心孔部124は、固定コア120の中心軸に沿って貫通するように形成された孔である。中心孔部124の内径寸法は、円形部122、および小径部123の外径寸法に対応するように途中で徐変されている。
【0025】
固定コア120における軸線方向の一方側の端部(すなわち、テーパ部121の端面)には、中心部に円柱状凹部空間である凹部125が形成され、この凹部125の周りに環状に連続した突起状の凸部126が形成されている。
【0026】
固定コア120は、小径部123が、後述するヨーク130の底部(ヨーク部131の底部)に穿設された孔に挿入、接合されて、ヨーク130に固定されている。
【0027】
ヨーク130は、励磁コイル110の外側を覆うように配置されて、固定コア120と共に磁気回路を構成すると共に、励磁コイル110、および固定コア120を内側に収容する部材となっており、ヨーク部131、およびプレート部132等を有している。
【0028】
ヨーク部131は、例えば、磁性体金属の帯板材料が、コの字状に折り曲げられて形成された部材となっており、ここでは、励磁コイル110の外周側で互いに対向する領域、および励磁コイル110の軸線方向の他方側を覆っている。
【0029】
プレート部132は、磁性体金属材料から形成された板状部材となっており、ヨーク部131の開口側(軸線方向の一方側の端部)に配置されている。そして、プレート部132の両端部は、ヨーク部131の開口側端部に接合されている。
【0030】
プレート部132の固定コア120の位置に対応する領域(中心部領域)には、開口部132aが形成されて、開口されている。開口部132aは、例えば、円形状となっている。よって、プレート部132は、励磁コイル110のコイル中心孔部113を除く領域において、励磁コイル110の軸線方向の一方側を覆っている。また、プレート部132の開口部132aの周囲と、固定コア120の軸線方向の一方側の端部周囲との間には、所定寸法の隙間部132bが形成されている。
【0031】
また、プレート部132の板厚は、中心側が外周側に比べて薄く設定されており、径方向の中間位置に、板厚差に伴う段部132cが形成されている。板厚の薄い領域は、固定コア120側にへこむように形成されている。段部132cの深さ(板厚の差)は、後述する可動コア140の板部141の外周側と同等の寸法となるように設定されている。
【0032】
可動コア140は、開口部132aを介して固定コア120と対向するように配置されると共に、プレート部132と磁気的に繋がれて、励磁コイル110への通電時に軸線方向に沿って固定コア120に吸引される部材となっている。可動コア140は、板部141、突出部142、およびシャフト部143等を有している。
【0033】
板部141は、固定コア120の中心軸に対して直交する方向に板面が延びる、例えば、円形状の板部材となっている。板部141の中心部には、円形の孔部141aが穿設されている。板部141の外径寸法は、プレート部132の開口部132aの内径寸法よりも大きく設定され、また、プレート部132の段部132cにおける内径寸法から、後述する磁石150Aの分を差し引いた内径寸法よりも小さく設定されている。
【0034】
突出部142は、板部141の軸線方向の他方側の面の中心部領域から、固定コア120側に突出する円筒状の部材となっている。突出部142の外径寸法は、プレート部132の開口部132aの内径寸法よりも小さく設定され、また、突出部142の内径寸法は、固定コア120の円形部122における外径寸法よりも大きく設定されている。そして、突出部142の軸線方向の他方側の先端部(突出側端部)は、可動コア140が固定コア120から最も離れた状態で(非通電時に)、隙間部132bに入り込む位置に設定されている。
【0035】
突出部142の内周面には、テーパ部142a、および円筒部142bが形成されている。テーパ部142aは、突出部142の内周面の軸線方向の一方側の領域において、内径寸法が一方側から他方側に向けて拡径されるように形成されている。円筒部142bは、テーパ部142aの他方側の端部から更に他方側に向けて内径寸法が一定になるように形成されている。
【0036】
シャフト部143は、例えば、断面円形の棒状の部材であり、軸線方向の一方側の端部が孔部141aに挿入されて、板部141に接合されている。そして、シャフト部143の軸線方向の他方側の端部が固定コア120の中心孔部124に摺動可能に挿入されている。
【0037】
よって、可動コア140は、シャフト部143が中心孔部124を摺動することで、固定コア120に対して、軸線方向に移動可能となっている。可動コア140が固定コア120側に移動したとき(通電時に)、固定コア120のテーパ部121、および円形部122の軸線方向の一方側における一部は、相対的に、可動コア140の突出部142の内部空間に入り込むことができるようになっている。
【0038】
可動コア140の中心部領域(突出部142の内側領域)における板部141と、固定コア120の凸部126との間が、エアギャップAGとして形成されている。
【0039】
固定コア120と可動コア140との間には、図示しない復帰バネが設けられている。復帰バネは、固定コア120の外周側に配置されて、可動コア140を軸線方向の一方側(吸引方向とは反対方向)に付勢する部材となっている。復帰バネは、例えば、金属製のコイルバネが使用されており、固定コア120の外周部に挿通されている。そして、復帰バネの軸線方向の他方側の端部は、ボビン111に設けられたストッパ部に当接されている。また、復帰バネの軸線方向の一方側の端部は、可動コア140の突出部142の突出側端部(軸線方向の他方側の端部)に当接されている。
【0040】
尚、図示しないケース内において、可動コア140の軸線方向の一方側には、可動コア140の動きに連動して、所定の機器に対する電力供給線の断続を行う図示しない接点部が設けられている。可動コア140が固定コア120に吸引されていないときには(非通電時)、復帰バネの付勢力によって、可動コア140が軸線方向の一方側へ移動され、接点部は切断されるようになっている。このとき、例えば、接点部の位置規制バネにより、可動コア140は、固定コア120から最も離れた状態で停止されるようになっている。このときのエアギャップAGは、最大のエアギャップとなり、例えば、2.5mm〜3mm程度の設定となっている。
【0041】
逆に、可動コア140が固定コア120に吸引されているときには(通電時)、吸引力によって、可動コア140が軸線方向の他方側へ移動され、接点部は接続されるようになっている。このとき、可動コア140(板部141)は、固定コア120(凸部126)に当接して停止されるようになっている。このときのエアギャップAGは、最小のエアギャップ(ゼロ)となるように設定されている。
【0042】
磁石150Aは、可動コア140の固定コア120への吸引を補助する部材であり、永久磁石が使用されている。磁石150Aは、例えば、断面形状が矩形状を成して、軸線方向から見た全体の形状がリング形状に形成されている。磁石150Aの中心軸(リング形状の中心)は、可動コア140の中心軸と一致するように配置されて、プレート部132における段部132cに固定されている。
【0043】
磁石150Aは、プレート部132上において、非通電時における可動コア140の位置(エアギャップAG最大時)に対して、可動コア140が吸引によって移動する側の領域で、且つ、軸線方向から見たときに可動コア140の外周側(外周ラインよりも外側)に対応する領域に配置されている。そして、可動コア140が固定コア120に吸引されたときに、磁石150Aは、可動コア140には接触しない領域(非接触となる領域)に配置されている。
【0044】
また、磁石150Aは、励磁コイル110に通電された際に、プレート部132に発生する磁束の方向と同一方向に着磁されている。ここでは、磁石150Aは、
図2に示すように、プレート部132の板面に沿う方向(リング形状の径方向)に着磁されている。
【0045】
電磁継電器100Aは、以上のように構成されており、以下、
図2、
図3を加えて、その作動および作用効果について説明する。
【0046】
まず、励磁コイル110への通電が遮断されているとき(非通電時)、励磁コイル110による磁界の形成は行われず、わずかに磁石150Aの磁束による吸引力はあるものの、
図1に示すように、可動コア140は、復帰バネにより軸線方向の一方側に駆動される。これにより、図示しない接点部は、切断状態となって、所定の機器への電力供給は行われない状態となる。励磁コイル110への通電が遮断されている状態では、エアギャップAGは、最大値(
図2(a))をとっている。
【0047】
一方、励磁コイル110に通電すると(通電時)、
図2に示すように、励磁コイル110により、固定コア120と突出部142との間、突出部142とプレート部132との間、およびヨーク部131に磁界が形成される(
図2中の実線矢印)。そして、可動コア140に対する電磁吸引力が発生される。加えて、可動コア140の板部141の外周領域と磁石150Aとの間に磁束が流れる(
図2中の破線矢印)。磁石150Aによる磁束は、軸線方向の他方側に向けて径方向外側に向かうように傾斜している。そして、磁石150Aによる磁石吸引力が発生する。可動コア140は、これら電磁吸引力および磁石吸引力により復帰バネに抗して固定コア120側に吸引される。
【0048】
本実施形態では、上記で説明したような磁石150Aの配置となっており、励磁コイル110が通電され、可動コア140が固定コア120に吸引される際に、可動コア140とプレート部132との間を流れる磁石150Aの磁束の向き、つまり軸線方向に対する傾斜角度が、順次大きくなるように変化する。そして、可動コア140が固定コア120に対して停止した位置で、磁石150Aの磁束の軸線方向の成分が最小となるようになっている。以下、
図2(a)〜(c)の順に吸引動作の詳細を説明する。
【0049】
まず、
図2(a)に示すように、通電直後では、板部141の外周領域(可動コア140)と磁石150Aとの間は、最大のエアギャップAGに伴う寸法分だけ離れており、磁石150Aによる磁束は、発生するものの磁石吸引力は、わずかに作用する状態となっている。磁石150Aによる磁束の向きは、板部141の外周領域と磁石150Aを結ぶように、軸線方向に対して多少傾斜している。
【0050】
次に、
図2(b)に示すように、可動コア140が電磁吸引力によって吸引され、エアギャップAGが中間寸法まで変化すると、板部141の外周領域と磁石150Aとが接近して、磁石150Aの磁束の向きは、
図2(a)に対して、傾斜角度が大きくなる。この状態では、磁石150Aの磁束が大きく作用し始める。磁石吸引力は、磁石150Aの磁束の軸方向となる力である。
【0051】
更に、
図2(c)に示すように、可動コア140が固定コア120に対して当接して停止した位置においては、可動コア140の板部141は、プレート部132の段部132c内に完全に入り込む。そして、磁石150Aによる磁束の傾斜角度は、
図2(b)に対して、更に大きくなり、板部141の外周領域から磁石150Aに対してほぼ水平方向(軸線方向に対して直交方向)になる。よって、この状態では、磁石150Aの磁束の軸線方向成分はほぼゼロとなり、磁石吸引力としては、作用しない状態となる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、磁石150Aによって可動コア140とプレート部132の間を流れる磁束の軸線方向の成分が、可動コア(140)の吸引を補助する力となって本来の吸引力(電磁吸引力)に付加されるので、励磁コイル110への通電時の吸引力を向上させることができる。
【0053】
そして、吸引によって可動コア140が固定コア120に対して停止した位置では、磁石150Aによる磁束の軸線方向の成分が最小(ここではほぼゼロ)となるようにしている。よって、磁石150Aによる磁石吸引力は実質的に発揮されないものとなり、磁石の吸引力を伴う従来技術(特許文献1)に対して、可動コア140を固定コア120から引き離す際(非通電状態に切替えたとき)の応答性を向上させることができる。特に、緊急遮断時の応答性向上に有用である。
【0054】
図3は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、エアギャップAGが最大領域で多少吸引力が増加されつつ、中間領域で、従来技術(磁石150Aなし)に対して吸引力が大きく向上されている。また、エアギャップAGがゼロの領域では、ほとんど磁石150Aによる吸引力は作用しない状態となっている。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態の電磁継電器100Bを
図4〜
図6に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、磁石150Aの形状を変更し、磁石150Bとしたものである。磁石150Bは、円筒部151と、テーパ円筒部152とを有して形成されている。
【0056】
円筒部151は、リング形状において、内径が一定に形成された部位となっており、プレート部132の段部132cに固定されている。円筒部151は、第1実施形態の磁石150Aに相当する部位となっている。
【0057】
テーパ円筒部152は、円筒部151の軸線方向の一方側に配置されて、円筒部151側の内径が円筒部151から離れるに従って大きくなるように形成された部位となっている。テーパ円筒部152のテーパ面(傾斜面)は、非通電時において、軸方向の一方側で内径側に位置する板部141の外周領域を向くように傾斜されている。
【0058】
そして、円筒部151とテーパ円筒部152は、互いに当接する位置で接合されて1つの磁石150Bとして形成されている。磁石150Bは、第1実施形態と同様に、励磁コイル110に通電された際に、プレート部132に発生する磁束の方向と同一方向に着磁されている。
【0059】
本実施形態の吸引動作の詳細について、
図5を用いて説明する。
【0060】
まず、
図5(a)に示すように、通電直後では、板部141の外周領域(可動コア140)と磁石150Bとの間は、最大のエアギャップAGに伴う寸法分だけ離れており、磁石150Bによる磁束は、テーパ円筒部152に向かって流れる。磁石150Bによる磁束の向きは、板部141の外周領域と磁石150B(テーパ円筒部152)を結ぶように、軸線方向に対して傾斜している。
【0061】
次に、
図5(b)に示すように、可動コア140が電磁吸引力によって吸引され、エアギャップAGが中間寸法まで変化すると、板部141の外周領域と磁石150Bとが接近して、磁石150Bの磁束は、テーパ円筒部152および円筒部151に向かって流れ、徐々にテーパ円筒部152から円筒部151へ移行していく。磁石150Bによる磁束の向きは、
図5(a)に対して、傾斜角度が大きくなる。この状態では、磁石150Bの磁束が大きく作用し始める。磁石吸引力は、磁石150Bの磁束の軸方向となる力である。
【0062】
更に、
図5(c)に示すように、可動コア140が固定コア120に対して当接して停止した位置においては、可動コア140の板部141は、プレート部132の段部132c内に完全に入り込む。そして、磁石150Bによる磁束の傾斜角度は、
図5(b)に対して、更に大きくなり、板部141の外周領域から円筒部151に対してほぼ水平方向(軸線方向に対して直交方向)になる。よって、この状態では、磁石150Bの磁束の軸線方向成分はほぼゼロとなり、磁石吸引力としては、作用しない状態となる。
【0063】
本実施形態では、磁石150Bにテーパ円筒部152を設けることで、板部141から磁石150Bに向かう磁束の流れを受け易くして、磁束を強めて、軸方向成分の磁石吸引力を高めることができる。よって、トータルの吸引力(電磁吸引力+磁石吸引力)を向上させることができ、更に、励磁コイル110への通電時の吸引力を向上させることができる。
【0064】
また、吸引によって可動コア140が固定コア120に対して停止した位置では、上記第1実施形態と同様に、磁石150Bによる磁束の軸線方向の成分が最小(ここではほぼゼロ)となるようにしている。よって、磁石150Bによる磁石吸引力は実質的に発揮されないものとなり、磁石の吸引力を伴う従来技術(特許文献1)に対して、可動コア140を固定コア120から引き離す際(非通電状態に切替えたとき)の応答性を向上させることができる。
【0065】
図6は、本実施形態において、理論解析に基づくエアギャップAGと、可動コア140に作用する吸引力との関係を示したものである。本第2実施形態では、第1実施形態に対して、エアギャップAGが最大領域〜ゼロ近傍領域において、吸引力が更に向上されている。また、エアギャップAGがゼロの領域では、ほとんど磁石150Bによる吸引力は作用しない状態が維持されている。
【0066】
尚、上記説明では、円筒部151とテーパ円筒部152とを別物として準備して、円筒部151とテーパ円筒部152とを接合することで、磁石150Bを形成するものとしたが、これに限らず、円筒部151とテーパ円筒部152とを一体的に形成したものとしてもよい。
【0067】
(第3実施形態)
第3実施形態の電磁継電器100Cを
図7に示す。第3実施形態は、上記第2実施形態に対して、磁石150Bの形状を変更し、磁石150Cとしたものである。
【0068】
磁石150Cは、軸線方向におけるリング形状の全体が、第2実施形態の磁石150Bにおけるテーパ円筒部152に相当するものとして形成されている。つまり、磁石150Cは、リング形状の内径が軸方向の一方側(可動コア140の板部141)に向けて大きくなるように形成されている。磁石150Cのテーパ面(傾斜面)は、非通電時において、軸方向の一方側で内径側に位置する板部141の外周領域を向くように傾斜されている。磁石150Cは、第2実施形態と同様に、励磁コイル110に通電された際に、プレート部132に発生する磁束の方向と同一方向に着磁されている。
【0069】
本実施形態の吸引動作の詳細について、
図7を用いて説明する。
【0070】
まず、
図7(a)に示すように、通電直後では、板部141の外周領域(可動コア140)と磁石150Cとの間は、最大のエアギャップAGに伴う寸法分だけ離れており、磁石150Cによる磁束は、磁石150Cのテーパ面に向かって流れる。磁石150Cによる磁束の向きは、板部141の外周領域と磁石150Cを結ぶように、軸線方向に対して傾斜している。
【0071】
次に、
図7(b)に示すように、可動コア140が電磁吸引力によって吸引され、エアギャップAGが中間寸法まで変化すると、板部141の外周領域と磁石150Cとが接近して、磁石150Cの磁束は、
図7(a)と同様に、磁石150Cのテーパ面に向かって流れる。磁石150Cによる磁束の向きは、
図7(a)に対して、傾斜角度が大きくなる。この状態では、磁石150Cの磁束が大きく作用し始める。磁石吸引力は、磁石150Cの磁束の軸方向となる力である。
【0072】
更に、
図7(c)に示すように、可動コア140が固定コア120に対して当接して停止した位置においては、可動コア140の板部141は、プレート部132の段部132c内に完全に入り込む。そして、磁石150Cによる磁束の傾斜角度は、
図7(b)に対して、更に大きくなり、板部141の外周領域から円筒部151に対して斜めに流れる。よって、この状態では、磁石150Bの磁束の軸線方向成分が多少、残り、磁石吸引力がわずかに作用する状態となる。
【0073】
本実施形態では、磁石150Cにテーパ面を有するものとしており、エアギャップAGが最大領域〜中間領域において、上記第2実施形態と同様の作動となり、同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、エアギャップAGがゼロのときに、磁石150Cによる多少の磁石吸引力が作用するので、通電時におけるトータルの吸引力を高めて、吸引効果を高めることができる。尚、エアギャップAGがゼロのときの磁石吸引力は、非通電時に切り替えた際の両コア120、140の切り離しに影響のない範囲で設定するとよい。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態の電磁継電器100Dを
図8に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、磁石150Aの設定位置を変更し、磁石150Dとしたものである。
【0076】
磁石150Dは、全体がリング形状を成しており、内周面が可動コア140の板部141の外周面に固定されている。
【0077】
本実施形態では、第1実施形態に対して、磁石150Dの位置を変更したものであり、磁石150Dによる作用、および作用効果は、
図8に示すように、第1実施形態(
図2)と同じである。
【0078】
(第5実施形態)
第5実施形態の電磁継電器100Eを
図9〜
図22に示す。第5実施形態は、上記第1実施形態に対して、1つのヨーク130に、励磁コイル110、固定コア120、可動コア140、磁石150A、および接点部をそれぞれ2つ設けたものとしている。電磁継電器100Eは、2つの接点部を用いて、各接点部における溶着が発生していないかを確認した後に、所定の機器10に対する電力供給を行うようになっている。
【0079】
図9に示すように、所定の機器10と、電力供給用のバッテリ11とは、正電位側の電力供給線12、および負電位側の電力供給線13によって接続されている。そして、各電力供給線12、13の途中部位において、電磁継電器100Eの接点部(第1接点部1601、および第2接点部1602)が介在されている。電力供給線13には電流センサ14が設けられ、電力供給線12と電力供給線13との間には、コンデンサ15が設けられている。
【0080】
図10〜
図12に示すように、電磁継電器100Eは、励磁コイルとして、第1励磁コイル1101、および第2励磁コイル1102を有し、固定コアとして、第1固定コア1201、および第2固定コア1202を有し、可動コアとして、第1可動コア1401、および第2可動コア1402を有し、磁石として、第1磁石1501、および第2磁石1502を有している。第1励磁コイル1101には、第1コイル中心孔部1131が形成されており、第1固定コア1201が配置されている。また、第2励磁コイル1102には、第2コイル中心孔部1132が形成されており、第2固定コア1202が配置されている。
【0081】
ヨーク130を形成するプレート部132には、プレート部132の長手方向、つまり、ヨーク部131のコの字状の開口側端部同士を繋ぐ方向に、第1開口部132a1、および第2開口部132a2が並ぶように形成されている。
【0082】
第1励磁コイル1101、第1固定コア1201、第1可動コア1401、第1磁石1501、および第1接点部1601は、ヨーク130の第1開口部132a1の位置に対応するように配置されて、第1電磁継電器を形成している。また、同様に、第2励磁コイル1102、第2固定コア1202、第2可動コア1402、第2磁石1502、および第2接点部1602は、ヨーク130の第2開口部132a2の位置に対応するように配置されて、第2電磁継電器を形成している。第1電磁継電器、および第2電磁継電器は、ヨーク130において、各励磁コイル1101、1102の軸線方向に直交する方向に並ぶように配置されている。
【0083】
第1電磁継電器、および第2電磁継電器の基本的な構造は、上記第1実施形態とほぼ同一である。同一の構成部品には、同一の符号を付けている。本実施形態では、各固定コア1201、1202の軸線方向の中間位置には、円形部122よりも径方向寸法が大きく設定された大径部122aが設けられており、その分、各励磁コイル1101、1102のコイル中心孔部113の内径が部分的に大きくなるように形成されている。
【0084】
また、第1磁石1501の着磁方向は、第1励磁コイル1101に通電された際に、プレート部132に発生する磁束の方向と同一となっている。また、第2磁石1502の着磁方向は、第2励磁コイル1102に通電された際にプレート部132に発生する磁束の方向と同一となっている。ここでは、
図11に示すように、第1磁石1501のN極はリング状の外周側に、S極は内周側になるように設定されており、第2磁石1502のN極はリング状の内周側に、S極は外周側になるように設定されている。
【0085】
本実施形態の電磁継電器100Eにおいては、各励磁コイル1101、1102のうち、どの励磁コイルに通電するかによって、
図19に示すような、第1磁気回路C1、第2磁気回路C2、および第3磁気回路C3の形成を可能としている(詳細後述)。
【0086】
次に、本実施形態の電磁継電器100Eの作動および作用効果について、
図13〜
図22を加えて説明する。
【0087】
まず、各励磁コイル1101、1102への通電が共に遮断されているとき(第1、第2非通電時)、各励磁コイル1101、1102による磁界の形成は行われず、わずかに各磁石1501、1502の磁束による吸引力はあるものの、
図12に示すように、各可動コア1401、1402は、復帰バネにより軸線方向の一方側に駆動される。これにより、各接点部1601、1602は、切断状態となって、所定の機器10への電力供給は行われない状態となる。各励磁コイル1101、1102への通電が共に遮断されている状態では、各エアギャップAG1、AG2は、最大値をとっている。
【0088】
以下、各励磁コイル1101、1102への通電を行ったときの作動について順に説明する。
【0089】
1.第1励磁コイル1101への通電時
第2励磁コイル1102は非通電として、第1励磁コイル1101のみに通電すると(第1通電時)、
図13〜
図15に示すように、主に、ヨーク130の第1固定コア1201側となる端部領域において、第1固定コア1201と第1可動コア1401との間、第1可動コア1401とプレート部132との間、およびヨーク部131に第1磁気回路C1が形成され、磁束(
図13〜
図15中の実線矢印)が流れる。尚、第1磁気回路C1においては、厳密には、
図13〜
図15の実線矢印の他にも、第2励磁コイル1102側へ磁束が流れる経路も存在する。
【0090】
そして、第1可動コア1401に対する電磁吸引力が発生される。加えて、第1可動コア1401の板部141の外周領域と第1磁石1501との間に磁束が流れる(
図13中の破線矢印)。第1磁石1501による磁束は、軸線方向の他方側に向けて径方向外側に向かうように多少傾斜している。そして、第1磁石1501による磁石吸引力が発生する。第1可動コア1401は、これら電磁吸引力および磁石吸引力により復帰バネに抗して第1固定コア1201側に吸引される。
【0091】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様の第1磁石1501の配置となっており、第1励磁コイル1101が通電され、第1可動コア1401が第1固定コア1201に吸引される際に、第1可動コア1401とプレート部132との間を流れる第1磁石1501の磁束の向き、つまり軸線方向に対する傾斜角度が、順次大きくなるように変化する。そして、第1可動コア1401が第1固定コア1201に対して停止した位置で、第1磁石1501の磁束の軸線方向の成分が最小となるようになっている。本実施形態の吸引動作は、上記第1実施形態の
図2(a)〜(c)で説明した内容と同一である。
【0092】
よって、本実施形態においても、第1磁石1501によって第1可動コア1401とプレート部132の間を流れる磁束の軸線方向に作用する力が、第1可動コア1401の吸引を補助する力となって本来の吸引力(電磁吸引力)に付加されるので、第1励磁コイル1101への通電時の吸引力を向上させることができる。
【0093】
そして、吸引によって第1可動コア1401が第1固定コア1201に対して停止した位置では、第1磁石1501による磁束の軸線方向に作用する力が最小(ここではほぼゼロ)となるようにしている。よって、第1磁石1501による磁石吸引力は実質的に発揮されないものとなり、第1可動コア1401を第1固定コア1201から引き離す際(非通電状態に切替えたとき)の応答性を向上させることができる。特に、緊急遮断時の応答性向上に有用である。
【0094】
図16は、本実施形態において、第1可動コア1401の理論解析に基づくエアギャップAG1と吸引力との関係を示したものである。本実施形態では、エアギャップAG1が最大領域で多少吸引力が増加されつつ、中間領域で、従来技術(第1磁石1501なし)に対して吸引力が大きく向上されている。また、エアギャップAG1がゼロの領域では、ほとんど第1磁石1501による吸引力は作用しない状態となっている。
【0095】
このとき、第1可動コア1401の吸引動作によって、第1接点部1601は接続状態となる。そして、電流センサ14によって、電力供給線13における電流の流れが検出されなければ、第2励磁コイル1102が非通電であることから第2接点部1602が確かに切断状態にあり、第2接点部1602は溶着を起こしていないことが検出される。
【0096】
尚、
図17は、本実施形態において、理論解析に基づいて、吸引される第1可動コア1401のエアギャップAG1と、第2可動コア1402に作用する吸引力との関係を示したものである。第2可動コア1402においては、第2励磁コイル1102への通電はないことから、第1可動コア1401の吸引動作に関係なく、電磁吸引力の発生はなく、わずかに第2磁石1502による磁石吸引力が作用するだけである。よって、第2可動コア1402に作用する吸引力は、位置規制バネのバネ力と、復帰バネのバネ力とを合わせたバネ力を超えることはなく、第2可動コア1402は実質的に初期位置(エアギャップAG2大)が維持される。
【0097】
一方、第1励磁コイル1101は非通電として、第2励磁コイル1102のみに通電すると(第2通電時)、主に、ヨーク130の第2固定コア1202側となる端部領域において、第2固定コア1202とヨーク部131との間、プレート部132と第2可動コア1402との間、および第2可動コア1402と第2固定コア1202との間に第2磁気回路C2が形成され、磁束(
図18の右側)が流れる。尚、第2磁気回路C2においては、厳密には、
図18の右側の実線矢印の他にも、第1励磁コイル1101側へ磁束が流れる経路も存在する。
【0098】
そして、第2可動コア1402に対する電磁吸引力が発生される。加えて、第2可動コア1402の板部141の外周領域と第2磁石1502との間に磁束が流れる。第2磁石1502による磁束は、軸線方向の他方側に向けて径方向外側に向かうように多少傾斜している。そして、第2磁石1502による磁石吸引力が発生する。第2可動コア1402は、これら電磁吸引力および磁石吸引力により復帰バネに抗して第2固定コア1202側に吸引される。第2固定コア1202の吸引動作は、上記第1固定コア1201の場合と同一である。
【0099】
このとき、第2可動コア1402の吸引動作によって、第2接点部1602は接続状態となる。そして、電流センサ14によって、電力供給線13における電流の流れが検出されなければ、第1励磁コイル1101が非通電であることから第1接点部1601が確かに切断状態にあり、第1接点部1601は溶着を起こしていないことが検出される。
【0100】
2.各励磁コイル1101、1102への通電時
第1励磁コイル1101、および第2励磁コイル1102共に通電すると(第1、第2通電時)、
図18、
図19に示すように、第1磁気回路C1、および第2磁気回路C2が形成される。加えて、各磁気回路C1、C2の形成に伴って、
図19の中央部に示すように、主に、ヨーク130の第1固定コア1201と第2固定コア1202との間の領域において、第3磁気回路C3が形成される。第3磁気回路C3は、主に、磁束が、第1固定コア1201と第1可動コア1401との間、第1可動コア1401とプレート部132との間、プレート部132と第2可動コア1402との間、第2可動コア1402と第2固定コア1202との間、およびヨーク部131を流れる回路である。尚、第3磁気回路C3においては、厳密には、
図19の中央部の実線矢印の他にも、第1、第2励磁コイル1101、1102側へ磁束が流れる経路も存在する。
【0101】
そして、第1可動コア1401、および第2可動コア1402に対して、電磁吸引力、および磁石吸引力が発生される。第1可動コア1401、および第2可動コア1402は、これら電磁吸引力および磁石吸引力により復帰バネに抗して第1固定コア1201側、および第2固定コア1202側にそれぞれ吸引される。
【0102】
第1、第2可動コア1401、1402が共に、吸引されることによって、第1接点部1601、第2接点部1602は共に接続状態となって、バッテリ11から所定の機器10に電力が供給される。
【0103】
図20は、第1、第2通電時において、理論解析に基づいて、吸引される第2可動コア1402のエアギャップAG2に対する、第1可動コア1401に作用する吸引力の関係を示したものである。第1可動コア1401においては、第2可動コア1402の吸引動作(エアギャップAG2)に関係なく、同等の吸引力が得られている。
【0104】
また、
図21は、第1、第2通電時において、理論解析に基づいて、第2可動コア1402のエアギャップAG2と第2可動コア1402に作用する吸引力との関係を示したものである。第2可動コア1402には、
図16で説明した第1可動コア1401に発生する吸引力と同様の吸引力が作用する。
【0105】
3.第1、第2通電の後に第2励磁コイル1102非通電時
上記第1、第2通電の後に、各励磁コイル1101、1102のうち、いずれかの励磁コイル(例えば、第2励磁コイル1102)を非通電とすると(第2非通電時)、
図22に示すように、第1磁気回路C1、および第3磁気回路C3の形成が維持されつつ、第2磁気回路C2の形成が消滅される。
【0106】
ここでは、各磁気回路C1、C3を流れる磁束によって、第1可動コア1401、および第2可動コア1402は、共に、吸引状態が維持される。つまり、2つの励磁コイル1101、1102のうち、一方の励磁コイル(1101)のみへの通電によって、2つの可動コア1401、1402の吸引を維持して、2つの接点部1601、1602の接続状態を維持する。よって、励磁コイル(1101)への電力量を抑えつつ、バッテリ11から所定の機器10に対する電力供給が維持される。
【0107】
以上のように本実施形態は、上記第1実施形態に対して、第1、第2電磁継電器を有する電磁継電器100Eに、第1磁石1501、および第2磁石1502を適用したものであり、各可動コア1401、1402に対して、上記第1実施形態と同様に通電時の吸引力の向上、および非通電時の引き離しの応答性の向上を可能としている。
【0108】
(第6実施形態)
第6実施形態の電磁継電器100Fを
図23に示す。第6実施形態は、上記第5実施形態に対して、各磁石1501、1502の形状を変更したものである。各磁石1501、1502は、上記第2実施形態で説明した磁石150Bと同一であり、円筒部151と、テーパ円筒部152とを有して形成されている。
【0109】
本実施形態では、円筒部151とテーパ円筒部152とを有する磁石1501、1502を用いることで、上記第5実施形態に対して、更に上記第2実施形態の効果を加えたものとすることができる。
【0110】
(第7実施形態)
第7実施形態の電磁継電器100Gを
図24に示す。第7実施形態は、上記第5実施形態に対して、第1磁石1501、および第2磁石1502の形状を変更して、第1磁石1501E、および第2磁石1502Eとしたものである。各磁石1501E、1502Eは、軸線方向から見たときの形状が、リング状に対して、多角形に変更されている。ここでは、多角形は、八角形が採用されている。
【0111】
各磁石1501E、1502Eは、複数の棒状の磁石から形成されており、例えば、8つの棒状磁石によって、八角形に形成されている。各棒状磁石は、それぞれが長手方向に対して直交する方向に着磁方向が設定されている。第1磁石1501Eは、八角形の外周側がN極となり、内周側がS極となっている。また、第2磁石1502Eは、八角形の外周側がS極となり、内周側がN極となっている。
【0112】
本実施形態では、上記第5実施形態と同様に、磁気回路(C1、C2、C3)の形成が可能であり、上記第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
加えて、上記第5実施形態では、リング状の各磁石1501、1502は、形状は同一ながらも、N極とS極との配置が逆になっており、それぞれ個別の磁石として設定する必要があった。本実施形態では、棒状磁石のN極とS極の位置が逆になるように並べることで、第1磁石1501Eと、第2磁石1502Eとの形成が可能となる。
【0114】
(第7実施形態の変形例)
第7実施形態の変形例の電磁継電器100Hを
図25に示す。第7実施形態の変形例は、上記第7実施形態に対して、更に第1磁石1501E、および第2磁石1502Eの形状を変更して、第1磁石1501F、および第2磁石1502Fとしたものである。
【0115】
各磁石1501F、1502Fは、完全な多角形に対して、多角形の一部が複数(ここでは2つ)用いられたものとしている。各磁石1501F、1502Fは、2つの棒状の磁石が各可動コア1401、1402の中心軸に対して対称(点対称)となるように配置されている。ここでは、各棒状の磁石は、各可動コア1401、1402の並ぶ方向に沿うように配置されている。
【0116】
本実施形態においても、上記第7実施形態と同様に、磁気回路(C1、C2、C3)の形成が可能であり、上記第7実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0117】
尚、各棒状の磁石は、各可動コア1401、1402の中心軸に対して対称となるように配置されればよく、例えば、各可動コア1401、1402の並ぶ方向に交差する方向に対向するように配置されてもよい。また、棒状の磁石に代えて、リング形状の一部を成す円弧状の磁石にしてもよい。
【0118】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、磁石150A〜150Dは、軸線方向から見た全体形状がリング形状となるように形成されたものとして説明したが、この他にも、六角形や八角形等の多角形状としたものとしてもよい。また、磁石150A〜150Dは、リング形状、あるいは多角形状の少なくとも一部としてもよい。
【0119】
あるいは、磁石150A〜150Dは、リング形状、あるいは多角形状の一部を複数、用いたものとしてもよい。つまり、リング形状、あるいは多角形状の周方向に複数分割されたものとしてもよい。この場合は、複数の各パーツを、可動コア140の中心軸に対して、対称(点対称)となるように配置するのがよい。これにより、周方向の磁石(150A〜150D)による磁束のバランスを保つことができる。
【0120】
また、上記各実施形態では、電磁継電器100A〜100Hを使用する所定機器として、例えば、電力変換用のインバータとしたが、これに限らず、オンオフの制御を必要とする電気機器に広く適用可能である。