(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記線量率算出部は、基準とする管電流および管電圧の下で前記ステージを移動させ、ステージ面上に載置した線量計で単位時間あたりの線量を検査空間内の複数の位置で計測して「基準線量率テーブル」として記憶するとともに、当該「基準線量率テーブル」に基づいて前記検査空間における任意の位置での前記「検査空間線量率データ」を算出する請求項1に記載のX線検査装置。
前記線量分布画像表示制御部は、撮像した被検査物のX線透視像と、当該X線透視像に対応する前記「撮像範囲累積線量分布データ」による累積照射線量の二次元分布画像とを並列表示または重畳表示する請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【背景技術】
【0002】
X線検査装置は半導体製品等の非破壊検査に広く利用されている。例えばプリント基板上に搭載された集積回路(IC)等の半導体部品の内部欠陥の有無の検査では、検査対象にX線を照射してX線透視像を撮像し、このX線透視像に基づいて製品の良否判定が行われている。
検査対象がプリント基板上の半導体部品のように小さい場合、拡大したX線透視像を撮像して検査することが望まれる。そのため、コーンビーム状のX線を照射するX線発生装置に対向して二次元X線検出器を配置し、これらの間の検査空間に三次元方向に移動可能なXYZステージを配置して、その上に検査対象物を載置し、載置された検査対象物をXY方向に移動して観察位置を定めるとともに、Z方向に移動して観察領域を拡大縮小できるようにした装置で検査するようにしている。
【0003】
ところで、一般的な半導体部品は耐放射線設計がなされていないことから、X線検査時に照射されたX線の影響を受けて電気特性が変化し、破損してしまう場合がある。
このような不具合は検査対象物に照射されるX線の累積照射線量に依存することが知られているため、検査対象物に照射されるX線の照射線量値を予想あるいは測定して管理することがなされている。
【0004】
例えば、プリント基板の実装組み立てラインに設置して使用するX線検査装置において、プリント基板上に複数の半導体部品が互いに離隔した位置に点在するように載置されている場合に、プリント基板に対するX線の照射領域を小領域ごとに分割し、照射領域の一部領域が重複することを許容しながら複数回撮像する方法がとられる場合がある。このような検査では、実装部品の位置データとX線照射領域ごとのX線照射線量値から、部品単位のX線照射予定線量値を算出し、部品単位のX線照射許容線量値と比較することによりX線照射許容線量値を超えないようにすることがなされている(特許文献1参照)。
【0005】
また、X線検査装置の観察テーブル上にプリント基板を載置し、観察しようとする被検査物の位置を、X線源とX線検出器の間にくるようにステージ位置と高さを調整し、以下の方法で被検査物へのX線の累積照射量を管理する方法が開示されている(特許文献2参照)。
すなわち、検査前に、あらかじめ基準となるX線条件(管電流、管電圧、X線源から観察テーブルまでの距離(以下、「SOD」と称する))を設定し、観察テーブル上に線量計を配置して線量率を測定し、制御部に記憶させておく。そして、検査時に被検査物を観察テーブルに載置し、観察テーブルを移動して所望の位置でX線を照射してX線透視像を構築して表示器に表示する。続いて、X線照射時のX線条件(管電流、管電圧、SOD)を記録するとともに照射時間を計測し、同時に、このときのX線条件での線量率を、あらかじめ記憶してある基準条件での線量率の下に算出する。
具体的には、線量率は管電圧の二乗に比例するとともに管電流に比例し、SODの二乗に反比例することが知られているので、管電圧、管電流、SODの設定条件に基づいて基準条件下での線量率から算出される。そして、X線条件が変更されるまでの照射時間と線量率との積を算出することで被測定物への照射線量が求められる。さらに、同じ被検査物に対してX線条件が変更されるごとに変更後のX線条件で同様の計算を行い、照射線量を加算していくことで、X線の照射開始からの累積照射線量が計算される(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術のうち、前者はプリント基板上での実装部品の取付位置を含む実装部品データを取得しておくことが前提となっていることから、そのような実装部品データが用意されている場合であって、組み立てライン等で同一のプリント基板を同一のX線透視像の撮像条件で検査する場合には有用であるが、実装部品データが用意されていない場合には適用できない。
【0008】
一方、後者では被検査物についての実装部品データは必要なく、観察ステージの移動で直接プリント基板上の半導体部品の位置(高さを含む)を調整して観察が行われる。
この場合、X線を照射した状態で、最適な撮像位置が見つかるまで観察ステージを三次元(XYZ)方向に自由に移動させてから最適位置で透視像を撮像することになる。よって、プリント基板上に複数の半導体部品が存在する場合は、それぞれの半導体部品の最適撮像位置を見つけて撮像することになる。
結局、X線照射を開始した時点から観察を終了するまでの観察ステージの累積照射線量は、最適位置を探し出すまでの移動軌跡で定まる。このとき、プリント基板の各位置の累積照射線量は異なることになり、ある1つの点での累積照射線量が算出されたとしても、複数の観察位置を検査する場合は各位置での照射線量を正確に把握することは困難であった。
【0009】
また、小さな半導体部品は、その小さい面積内に照射される累積照射線量が問題となるが、観察位置変更時のステージの移動軌跡によっては、検査対象の半導体部品の位置とその近傍位置とで照射線量が大きく異なることもあり、プリント基板上の各位置での照射線量を二次元的に把握できることが望ましい。さらには、観察対象である半導体部品内部の照射線量の分布まで把握できればなおよい。
【0010】
そこで本発明は、ステージ上に載置された半導体部品等の被検査物について、被検査物に照射された累積照射線量を二次元分布画像として把握することができるX線検査装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ステージ上の任意の位置に載置された被検査物についての累積照射線量を把握できるようにすることを目的とする。
さらに、小さい部品のX線検査では、被検査物の拡大したX線透視像を撮像することが多いが、このX線透視像の撮像領域に対応させて、X線透視像と同等に拡大した累積照射線量の分布像を画像表示できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明のX線検査装置は、X線源と、検査空間を挟んで前記X線源に対向するように配置されるX線検出器と、三次元移動機構により前記検査空間内の任意の位置に移動可能なステージとを備え、前記ステージのステージ面に載置された被検査物の観察領域が、前記X線源と前記X線検出器とを結ぶX線光軸上に入るように前記ステージの位置を調整した上で前記被検査物のX線透視像を撮像して表示装置に表示するX線検査装置であって、基準とする管電流および管電圧の下で、基準とする前記検査空間内の少なくとも1つの位置についての線量率を求めてあらかじめ「基準線量率データ」として記憶しておき、被検査物の検査時に用いる管電流および管電圧を設定することにより、前記「基準線量率データ」に基づいて、前記検査空間における任意の位置の線量率を「検査空間線量率データ」として算出する線量率算出部と、前記ステージに定められたステージ基準点と前記ステージ面の範囲を定める相対位置情報とを含む「ステージ面情報」を記憶するステージ面情報記憶部と、X線の照射開始から照射終了までの各時点での前記ステージ基準点の移動軌跡をモニタリングして「照射履歴情報」として記憶する照射履歴モニタリング部と、前記「照射履歴情報」および前記「ステージ面情報」および前記「検査空間線量率データ」に基づいて前記ステージ面上の各位置における累積照射線量を算出して「累積照射線量分布データ」として記憶するステージ面累積照射線量算出部と、前記被検査物のX線透視像を撮像した位置で前記X線検出器に撮像されるステージ面の範囲を示す「ステージ面撮像範囲データ」を算出するステージ面撮像範囲算出部と、前記「累積照射線量分布データ」から前記「ステージ面撮像範囲データ」に対応する領域の累積照射線量分布データを「撮像範囲累積線量分布データ」として抽出し、前記表示装置に画像表示する線量分布画像表示制御部とを備えるようにしている。
【0012】
本発明によれば、被検査物のX線検査を行うときに、検査で用いるX線源の管電流および管電圧を設定すると、線量率算出部により、検査前にあらかじめ記憶してある「基準線量率データ」に基づいて検査空間内の各位置の線量率が算出できるようになり、必要なときに所望の位置の線量率が「検査空間線量率データ」として算出されるようになる。
そして、ステージ面上に被測定物を載置した状態で検査を開始すると、照射履歴モニタリング部により、X線の照射開始から照射終了までの各時点のステージ基準点の移動軌跡が「照射履歴情報」として記憶される。
さらに、ステージ面累積照射線量算出部により、「照射履歴情報」および「ステージ面情報」および「検査空間線量率データ」に基づいて、ステージ面上の各位置における累積照射線量が算出される。これによりステージ面上の各位置の「累積照射線量分布データ」が取得される。
そして、ステージ撮像範囲算出部が、被検査物のX線透視像を撮像した位置で、そのときX線検出器に撮像されるステージ面の範囲である「ステージ面撮像範囲データ」を算出する。これはX線透視像を撮像した位置での「ステージ面情報」と、X線源と、X線検出器との幾何学的位置関係から求められる。
「ステージ面撮像範囲データ」が算出されると、線量分布画像表示制御部は、ステージ面全体の分布データである「累積照射線量分布データ」から、「ステージ面撮像範囲データ」に対応する一部領域の累積照射線量の分布データを「撮像範囲累積線量分布データ」として抽出し、これを画像化して累積照射線量の二次元分布画像として表示装置に表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撮像したX線透視像に対応する領域についての累積照射線量が二次元分布画像で視覚的に確認することができるようになる。
また、X線検査時に照射された累積照射線量を、検査しようとする部品単位で把握することができる。
また、本発明によれば、載置するステージ上の位置についても特に気にすることもなく、また、X線透視像の拡大または縮小にも影響されず、X線透視像を撮像した撮像領域に合わせて、そのX線透視像と同じ領域についての累積照射線量の二次元分布画像を確認することができる。
【0014】
上記発明において、線量率算出部は、基準とする管電流および管電圧の下で前記ステージを移動させ、ステージ面上に載置した線量計で単位時間あたりの線量を検査空間内の複数の位置で計測して「基準線量率テーブル」として記憶するとともに、当該「基準線量率テーブル」に基づいて前記検査空間における任意の位置での前記「検査空間線量率データ」を算出するようにしてもよい。
これにより、検査空間における任意の位置について算出される「検査空間線量率データ」の精度を高めることができる。
【0015】
また、上記発明において、線量分布画像表示制御部は、撮像した被検査物のX線透視像と、当該X線透視像に対応する前記「撮像範囲累積線量分布データ」による累積照射線量の二次元分布画像とを並列表示または重畳表示するようにしてもよい。
これにより、X線透視像と累積照射線量の二次元分布画像とを比較しながら観察することができ、X線の照射による影響と不具合との関係を視覚的に確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態であるX線検査装置Aの装置構成を模式的に示したブロック図である。
X線源であるX発生装置11にはマイクロフォーカスX線管が使用される。マイクロフォーカスX線管の中に形成された照射中心点11aは点状のX線発生点であり、そこから鉛直上方に向けてコーンビーム状のX線が照射される。X線発生装置11の上方には二次元X線検出器12が対向配置され、両者の間の検査空間13に、被検査物Wを載置するステージ14が載置面(ステージ面)を水平にして配置されている。なお、X線検出器12は、X線発生装置11の照射中心点11aと、X線検出器12の受光面中心点12aとを結ぶX線光軸Lが鉛直線となるように配置してある。ステージ14はX線が透過する方形の平板(例えばアルミニウム板)で形成され、三次元移動機構15によって検査空間13内の任意の位置に移動可能となるようにしてある。検査空間13はXYZ座標系が定義され、任意の位置がXYZ座標で特定できるようにしてある。また、検査空間13は安全のためX線防護箱で囲まれている。
【0018】
制御部20は、マイクロプロセッサ(CPU)21、メモリ(ROM、RAM、HDD)22、入力装置(マウス、ジョイスティック、キーボード)23、表示装置(液晶パネル)24を含むコンピュータハードウェアで構成され、X線発生装置11、X線検出器12、三次元移動機構15を制御する。
制御部20は、管電流および管電圧の設定値や起動/停止命令が入力されると、X線コントローラ16に制御信号を送る。そして、X線コントローラ16からの制御信号によってX線発生装置11は管電流および管電圧が設定され、照射開始または照射停止の制御が行われるようにしてある。
また、X線透視像の検出信号がX線検出器12から画像取込回路17に送られて画像信号が形成され、この画像信号が制御部20に送られて表示装置24に表示できるようにしてある。
【0019】
三次元移動機構15は、制御部20からの位置制御信号の入力によりステージ14の位置を任意の位置に移動できるようにしてある。また、制御部20には検査空間13のXYZ座標系を記憶させてあり、さらに、X線発生装置11の照射中心点11aの位置座標、X線検出器12の受光面中心点12aの位置座標、ステージ14の位置を特定するための基準位置となる原点位置についてもあらかじめ記憶してある。よって、三次元移動機構15によりステージ14を初期化のために原点に復帰させた後、原点位置から移動すると、その後は移動量からステージ14の現在位置座標が認識され、X線発生装置11、X線検出器12との位置関係も認識できるようにしてある。
【0020】
また、制御部20には、本発明で行う各機能を実現するためのコンピュータソフトウェアである制御プログラムがインストールされている。制御部20が処理する動作を、機能ごとにブロック化して説明すると、線量率算出部31、ステージ面情報記憶部32、照射履歴モニタリング部33、ステージ面累積照射線量算出部34、ステージ面撮像範囲算出部35、線量分布画像表示制御部36を備えている。
【0021】
線量率算出部31は、例えば定期点検等で被検査物Wの検査を行う前に、検査空間13内の1つの位置についての線量率(単位時間あたりの線量)を、線量計を用いて実測し、基準線量率データ41として記憶しておく。既述のように、線量率は管電圧の二乗に比例するとともに、管電流に比例し、距離の二乗に反比例することが知られている。そこで、基準とする管電流および管電圧の下に、検査空間13内の任意の位置座標の1点について単位時間あたりの線量を実測することで、X線発生装置11の照射中心点11aの位置座標が決まっており、照射中心点11aから実測点までの距離がわかり、検査空間13内の任意の点についても線量率を理論的に算出できる。よって、管電流や管電圧を変更した場合でも、理論的に線量率を算出することができる。
【0022】
なお、検査空間13の線量率の分布状態の計算精度を高めるため、線量計をステージ14に載せて移動して複数(多数)の点で実測し、検査空間13内の基準線量率テーブル41a(複数点の基準線量率データのテーブル)を作成して利用してもよい。管電圧や管電流に関しても複数の値に設定した上で線量率を実測し、その間の管電圧や管電流については補間計算や理論計算で求めるようにしてもよい。
また、X線発生装置11に近い空間については実測することが技術的に困難なため、X線発生装置11から離れた位置での複数の実測値に基づいて理論計算で求めるようにすればよい。
【0023】
そして、線量率算出部31は、被検査物Wの検査時に用いる管電流および管電圧が設定されることにより、基準線量率データ41(基準線量率テーブル41a)を用いて、検査空間13内の任意の位置の線量率を、検査空間線量率データ41bとして必要に応じて算出する。算出された任意の位置の検査空間線量率データ41bは、後述する累積照射線量の計算において利用される。
【0024】
ステージ面情報記憶部32は、ステージ14に定められたステージ基準点42aと、このステージ基準点42aの位置を基準にしてステージ面の範囲を定める相対位置情報42bを含むステージ面情報42を記憶する。
ステージ基準点42aはステージ14のステージ面の上に定められた1点であり、これをステージ面の代表点としてモニタリングすることにより検査空間13内でのステージ14の位置が把握でき、ステージ14の移動軌跡を追跡することができる。
相対位置情報42bは、ステージ基準点42aに対するステージ面の範囲を定める相対位置の情報であり、ステージ基準点42aと組み合わせてステージ14のステージ面上に含まれる各点の位置座標が特定できる。
ステージ基準点42aをステージ14のどこに設定するかは特に限定されないが、本実施例では、方形で平板状のステージ面を有するステージ14を用いているので、ステージ基準点42aを方形の中心点とし、相対位置情報42bを方形の四隅の4点を範囲としたステージ面情報42とすることで、ステージ面の範囲が特定できるようにしている。
【0025】
照射履歴モニタリング部33は、X線の照射開始から照射終了までの各時点でのステージ基準点42aの移動軌跡をモニタリングして照射履歴情報43として記憶する。照射履歴情報43にはステージ基準点42aが移動した経路である移動軌跡情報43a(位置座標情報X、Y、Z)と、移動軌跡上の各点での時間情報43b(時間座標情報T)とを関連して(例えばX、Y、Z、Tの4次元座標データとして)記憶されることになる。
このモニタリングは、X線の照射開始時点から照射終了時点まで継続して続けられ、所望の観察位置でX線透視像を撮像している期間だけでなく、ステージ14の移動中の期間や観察を終えた後でのX線照射継続中の期間についてもモニタリングすることで、実際にX線が照射された全期間がモニタリングされる。
【0026】
ステージ面累積照射線量算出部34は、照射履歴情報43(移動軌跡情報43aと時間情報43b)、ステージ面情報42(ステージ基準点42aと相対位置情報42b)、検査空間線量率データ41bに基づいて、ステージ14のステージ面上の各位置における累積照射線量を算出し、累積照射線量分布データ44として記憶する。
具体的には、まず、ステージ基準点42aについて、移動軌跡情報43aからステージ基準点42aの移動軌跡上の各点を抽出し、これら移動軌跡上の各点についての検査空間線量率データ41bを算出する。そして、移動軌跡上の各点について、検査空間線量率データ41bと時間情報43bとの積を求めることで、移動軌跡上の各点についての照射線量が求められる。さらに、移動軌跡上の各点での照射線量を合算することでステージ基準点42aについての累積照射線量を求めることができる。
そして、ステージ14のステージ基準点42a以外のステージ面全体の各点について、ステージ基準点42aとともに相対位置情報42bを用いて、同様の演算を行うことで累積照射線量を算出することができるので、ステージ14のステージ面全体の算出結果を累積照射線量分布データ44として記憶する。なお、この累積照射線量分布データ44は、データとして保持すればよく、必ずしも被検査物Wの検査時に表示装置24に画像表示する必要はないが、仮に表示した場合にはステージ14のステージ面全体の累積照射線量の分布が観察できることになる(後述する
図4、
図7参照)。
【0027】
また、累積照射線量分布データ44は、X線照射が継続されている限り、時々刻々更新され続けることになるが、計算の処理量を抑えるため、例えば10秒〜5分ごとの所定間隔で累積照射線量を算出して更新していくようにしてもよい。
【0028】
ステージ面撮像範囲算出部35は、被検査物WのX線透視像を撮像した位置でX線検出器12に撮像されるステージ面の範囲であるステージ面撮像範囲データ45を算出する。
例えば被検査物Wが小さい場合のX線検査では、検査したい領域を大きく拡大したX線透視像を撮像して検査を行うことが望ましいため、撮像領域はステージ14のステージ面全体ではなく、その一部分であることが多い。よって、撮像領域に対応するステージ面の範囲を特定し、そのステージ面の範囲の累積照射線量を求めるようにすれば、撮像領域内の照射線量を詳しく認識できることから、X線透視像の撮像範囲に対応するステージ面の範囲を特定することが必要になる。
【0029】
このステージ面の範囲は、撮像されたX線透視像の中心点(撮像領域の中心点)がX線発生装置11の照射中心点11aとX線検出器12の受光面中心点12aを結ぶX線光軸L上の点であること、および、撮像時にX線光軸L上にあるステージ面の三次元の位置座標が三次元移動機構15からの位置情報で決定できることを利用して幾何学的計算により定めることができる。
すなわち、
図1に示すように、照射中心点11aとX線検出器12の受光面の両端とを結ぶ線分M、Nに挟まれたステージ面の範囲がX線透視像に対応するステージ面の範囲になるので、線分M、Nで挟まれたステージ面の範囲を幾何学的に算出することにより、ステージ面撮像範囲データ45が算出できる。
【0030】
線量分布画像表示制御部36は、ステージ14のステージ面全体の累積照射線量分布データ44から、ステージ面撮像範囲データ45に対応する領域についての累積照射線量の分布データを撮像範囲累積線量分布データ46として抽出し、表示装置24に画像表示する制御を行う。表示される画像はX線透視像の撮像領域に対応した領域の線量分布画像である。よって、線量分布画像表示制御部36により表示したときに、X線透視画像と線量分布画像とを並列表示したり、一方をカラー表示にして線量分布画像とX線透視像とを重畳表示したりする制御を行うことで、確認しやすい表示にすることができる。
【0031】
(検査手順)
次に、上述したX線検査装置Aによる検査手順の一例について
図2のフローチャートを用いて説明する。ここでは
図3に見られるように、被検査物W(W1、W2)となる2つの半導体部品が搭載されたプリント基板Pをステージ14上に載置し、最初に半導体部品W1の検査を行い、続いて半導体部品W2の検査を行うことを想定して説明する。
【0032】
S101において、半導体部品Wの検査前に、あらかじめ、検査空間13の各点の線量率を決定するために必要な基準線量率データ41を記憶しておく。具体的には、基準の管電圧および管電流を設定してX線発生装置11からX線を照射し、ステージ14に線量計を搭載して検査空間13内を移動させることで格子状に選択した各測定点で計測し、基準線量率テーブル41aとして記憶させておく。以後、この基準線量率テーブル41aを用いて検査空間13の任意の点の線量率が補間計算や理論計算等で求められ、検査空間線量率データ41bとして利用される。
【0033】
S102において、半導体部品Wの検査前に、ステージ面情報42として、ステージ基準点42aと、ステージ面の相対位置情報42bとを記憶しておく。これらの情報を記憶することにより、ステージ14が検査空間13で移動するときのステージ面の各点の位置座標を、ステージ基準点42aのモニタリングで特定することができるようになる。
【0034】
S103において、プリント基板Pをステージ14のステージ面に載置する。
S104において、X線の照射を開始する。この時点から照射履歴情報43のモニタリングが始まる。
【0035】
S105において、X線照射による被検査物W(最初はW1)の観察の実行と、移動軌跡のモニタリングが継続され、照射履歴情報43として各時点(時間情報43b)でのステージ基準点42aの移動軌跡(移動軌跡情報43a)が記憶される。
【0036】
S106において、ステージ面全体の各点の累積照射線量分布データ44が算出されるとともに更新される。
【0037】
S107において、現在のX線透視画像を保存する保存指令の有無が確認され、保存指令がないときはS105に戻って観察の実行と移動軌跡のモニタリングが継続される。
保存指令の入力があったときはS108に進む。
【0038】
S108において、X線透視像を画像保存し、そのときのステージ14のステージ面の位置情報(すなわち画像保存時の移動軌跡情報)を記憶する。
S109において、X線透視像が撮像された領域に対応するステージ面撮像範囲データ45を幾何学的関係(X線源、X線検出器、ステージ面の位置関係)から算出する。
【0039】
S110において、ステージ面全体の各点の線量分布データである累積照射線量分布データ44から、ステージ面撮像範囲データ45に対応する領域の線量分布データである撮像範囲累積線量分布データ46を抽出する。
S111において、抽出された撮像範囲累積線量分布データ46の画像表示を行う。
【0040】
S112において、X線照射の停止指令の有無が確認され、停止指令の入力がないときはS105に戻って他の被検査物W(2回目はW2)の観察の実行と移動軌跡のモニタリングが継続される。
一方、X線照射の停止指令の入力があるときは照射を終了し、観察を終了するとともに照射履歴情報43のモニタリングも停止する。
このようにして、全ての被検査物Wの検査が終わるまで同様の処理を繰り返す。
【0041】
次に、
図2で説明した手順による検査を実行したときに、2つの異なる時点で得られる累積照射線量分布画像の変化について説明する。
【0042】
図4は、最初の半導体部品W1の検査で、半導体部品W1の拡大されたX線透視像を撮像した直後において、ステージ14全体の累積照射線量分布データが算出され、これを画像表示したときの表示画像14aを示す模式図である。
【0043】
ここでは、累積照射線量分布画像の時間変化を明確にする便宜上、さらには、最初の半導体部品W1の検査を効率よく行う観点から、プリント基板Pをステージ14上に載置するときに、半導体部品W1がX線検査装置AのX線光軸L上に存在するようにしてXY方向の調整を省略するようにしている。続いて、X線を照射してZ方向の位置(拡大率)を調整し、しばらく観察して半導体部品W1のX線透視像を撮像した直後のステージ14全体の累積照射線量分布データ44を画像表示する。この時点で得られる累積照射線量分布データ44の表示画像14aは、(XY方向のステージ移動を行っていないので)X線光軸Lの位置を中心としてほぼ同心円状の累積照射線量分布となっている。
【0044】
また、
図5(a)はこのとき半導体部品W1が拡大して撮像されたX線透視像T1の模式図であり、
図5(b)はこのX線透視像T1の撮像領域に対応するステージ14上の撮像範囲(
図4の表示画像14a上でのS1の領域)の累積照射線量分布画像U1である。この累積照射線量分布画像U1は、X線透視像T1で撮像されている領域と同一領域についての線量分布の画像であり、しかも拡大されているので、半導体部品W1の内部の線量分布も拡大画像で確認することができる。
【0045】
そして、表示装置24上で
図5(a)のX線透視像T1と
図5(b)の線量分布画像U1とを並列表示したり、
図6に示すようにX線透視像T1と線量分布画像U1とを色を変えて重畳表示したりして観察することにより、X線透視像と線量分布画像とを比較して観察することができる。
【0046】
その後、半導体部品W2の検査を行うために、半導体部品W2がX線光軸L上に存在するようにステージ14を移動し、その位置でZ方向の位置(拡大率)を調整し、しばらく観察して半導体部品W2のX線透視像を撮像した直後のステージ14全体の累積照射線量分布データを画像表示する。
図7は、その表示画像14bを示す模式図である。
【0047】
このとき得られた累積照射線量分布データの表示画像14bは、
図4での累積照射線量分布データに、ステージ移動後に照射された照射線量が加算された線量分布画像となっている。
また、
図8(a)はこのときの半導体部品W2を拡大して撮像したX線透視像T2の模式図であり、
図8(b)はX線透視像T2に対応するステージ14上の撮像範囲(
図7の表示画像14b上でのS2の領域)の線量分布画像U2である。この線量分布画像U2は、X線透視像T2で撮像されている領域と同一領域についての線量分布画像であり、しかも拡大されているので、半導体部品W2の内部の線量分布も拡大画像で確認することができる。また、
図9に示すように、
図8のX線透視像と照射線量分布画像とを重畳して表示してもよい。
【0048】
図4〜
図9に例示した累積照射線量分布画像では、説明の都合上、累積照射線量の分布を等高線のような表示で記載してあるが、表示装置24の上ではヒートマップのようなカラー画像として分布を表示することが好適である。
【0049】
このように、検査しようとする部品単位で、撮像したX線透視像に対応する領域についての累積照射線量を二次元の線量分布画像として確認することができ、X線検査時のX線照射の影響を部品ごとに視覚的に把握することができる。
また、X線透視像が拡大または縮小されることにも影響されず、X線透視像を撮像した撮像領域に合わせて、そのX線透視像と同じ領域についての累積照射線量の二次元分布画像を確認することができる。