(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、停電等からの復旧の際に塞ぎ板を自動的に閉じるための手段が設けられていないため、エレベーターへの給電が再開しても保守員等が手動で塞ぎ板を閉じるまでは、エレベーターを稼働させることができない。
【0007】
本発明の目的は、かごに設けられた非常用換気口を開放できると共に、その閉止を自動且つ空気漏れなく行なうことのできる非常用換気口の開閉装置を具えたエレベーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の開閉装置を具えたエレベーターは、
かごに設けられた換気口を塞ぎ板により開閉する開閉装置を具えたエレベーターであって、
前記開閉装置は、
前記換気口を塞ぐ塞ぎ板と、
前記塞ぎ板を前記換気口に対して略垂直方向に往復移動させる駆動手段と、
を具えており、
前記塞ぎ板は、前記駆動手段に対して前記塞ぎ板を揺動可能に支持する継手部材を介して連繋されている。
【0009】
前記継手部材は、前記塞ぎ板を前記駆動手段に対して水平面内で揺動可能に支持することができる。
【0010】
前記駆動手段は、プランジャーを往復移動可能なソレノイドであって、
前記継手部材は、前記プランジャーと前記塞ぎ板を連繋する構成とすることができる。
【0011】
前記換気口は、1の前記塞ぎ板に対して複数開設され、前記換気口間には開口しない非開口部を具え、
前記塞ぎ板は、前記非開口部と対向する位置に通気口が形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塞ぎ板は、駆動手段によって換気口の開閉を自動的に行なうことができる。塞ぎ板は、駆動手段に揺動可能に取り付けられており、換気口に対しても揺動が可能である。従って、たとえば駆動手段による塞ぎ板の移動方向が換気口に対して傾いている場合であっても、塞ぎ板を換気口に押し付けたときに、塞ぎ板が揺動して、換気口を気密に封止することができる。このため、開閉装置の製作精度やかごへの取付精度に余裕を持たせることができる。また、開閉装置は、エレベーターに複数設置され、一般的に作業が行ない難い床面付近や天井付近に取り付けられるが、その取付時間や調整時間を短縮でき、取付作業を簡便化できる利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターのかご10の概略構成を示す斜視図である。
図1では、かご10を背面側上方(乗客が乗降するドア15とは逆側)から見ている。かご10は、エレベーターシャフト内を昇降可能に配置される。
【0016】
図1に示すように、かご10は、ドア15を具える正面パネル11の側方及び後方に側面パネル12が配備され、これらパネル11,12の上下をシーリングプレート13(天井板)及びプラットフォーム14(床板)で塞いで乗客の搭乗する空間が形成されている。シーリングプレート13には、気圧制御装置であるブロワー18が設けられており、かご10の内部の空気を給排気して、かご10の気圧を制御している。
【0017】
側面パネル12とシーリングプレート13及びプラットフォーム14の間には、これらを跨ぐようにベース部材16が設けられている。ベース部材16には、
図1に示すように、シーリングプレート13又はプラットフォーム14に沿って複数の換気口20が開設されている。本実施形態では、換気口20は、各ベース部材16に3つずつ形成しており、
図2に示すように、各換気口20に開閉装置30を配備している。ベース部材16は、かご10の室内側に、ベース部材16及び換気口20を視認できないようにするために、適宜キックプレートやシーリング用化粧パネルなどの化粧パネルを配置することができる。これら化粧パネルは、換気口20が塞がれないように20mm程度間隔を存して配置することが望ましい。
【0018】
換気口20は、矩形、たとえば横長の長方形状とすることができる。換気口20は、総開口面積が欧州規格(EN81)やASME規格におけるエレベーターに関する基準を満たすために、かご床面積の3.5%とすることができる。
【0019】
ベース部材16は、
図1では、断面略コ字状の部材で内向きに凹となるように配備されている。
図2乃至
図5では、換気口20の開設されるベース部材16の一部のみを示している。
図2に示すように、ベース部材16には、開閉装置30は、ベース部材16のコ字状スペースに設けられた取付プレート17にネジ止め等により固定されている。
【0020】
開閉装置30は、
図2及び
図3に示すように、駆動手段31と、駆動手段31によって換気口20に対して略垂直方向に往復スライド可能な塞ぎ板40を主要構成として具えている。
【0021】
駆動手段31は、図示の実施形態ではソレノイドであって、取付プレート17にネジ止め等により取り付けられている。駆動手段31であるソレノイドは、通電によりプランジャー32が突出して塞ぎ板40を換気口20に押し当てて閉止し、非通電状態ではプランジャー32が後退して塞ぎ板40を換気口20から離れる方向に移動させる構成を例示できる。なお、駆動手段31は、ソレノイドに限定されず、リンク機構やネジ推力、シリンダー等を利用したアクチュエーターであってもよい。
【0022】
塞ぎ板40は、換気口20よりもやや大きくなるように形成された板状部材を例示できる。本実施形態では、塞ぎ板40は、換気口20に外側から押し当てられ、換気口20を外側から塞ぐ構成である。もちろん、塞ぎ板40をかご10の内側に配置し、駆動手段31によって引っ張った状態で換気口20を塞ぐ構成とすることもできる。
【0023】
塞ぎ板40には、換気口20への密閉性を高めるために、換気口20の周縁を構成するベース部材16との突き合わせ面にシール部材41を装着している。シール部材41は、ウレタン、ゴム、スポンジ等の部材により構成することができる。
【0024】
塞ぎ板40の開閉動作をスムーズに行なうために、塞ぎ板40には、
図2等に示すように、先端にローラー43が装着されたローラーブラケット44が取り付けられている。ローラー43は、ベース部材16に設けられた図示省略するガイド上を転動し、塞ぎ板40が垂直状態を維持したままで平行にスライドできるように案内する。
【0025】
上記開閉装置30は、塞ぎ板40が換気口20に対して平行にスライドし、閉止状態において塞ぎ板40が換気口20の周縁に密着するよう調整されていることが望まれる。しかしながら、個々の開閉装置30の製作精度や取付精度に狂いがあると、プランジャー32を突出させたときに、塞ぎ板40が傾いた状態で換気口20に当接し、塞ぎ板40と換気口20との間に隙間が生じて気密性を維持できないことがある。もちろん、開閉装置30の製作精度や取付精度を向上させることで、これら問題は解消され得るが、開閉装置30は、一般的に作業を行ない難い床面付近や天井付近に取り付けられているから、その取付時間や調整は困難である。
【0026】
そこで、本発明は、塞ぎ板40を駆動手段31に対して揺動可能となるように継手部材34によって連結するものでる。
【0027】
具体的実施形態として、塞ぎ板40と駆動手段31は、プランジャー32に連繋された支持軸33によって連繋されており、支持軸33には、塞ぎ板40をプランジャー32に対して揺動可能に支持する継手部材34を有する。図示の継手部材34は、
図3の丸囲み部VIの拡大
図6に示すように、塞ぎ板40をプランジャー32に対して水平面内で揺動可能なリンクである。より詳細には、継手部材34は、枢軸35によってプランジャー32側のジョイント36と塞ぎ板40側のジョイント37を連結しており、
図6中矢印Rで示すように、塞ぎ板40は、駆動手段31に対して水平面内で揺動可能となっている。
【0028】
上記構成において、塞ぎ板40は、駆動手段31に対して水平面内で揺動可能に支持している。これは、図示の実施形態において、換気口20及び塞ぎ板40が高さ方向よりも幅方向が長く、塞ぎ板40の傾きによる影響を受け易いためである。また、図示の実施形態では、塞ぎ板40の垂直方向の傾きは、ローラー43によって調整されるため、水平方向のみに揺動可能したものである。もちろん、継手部材34は、塞ぎ板40をプランジャー32に対して垂直面内で揺動可能に支持する機構や、水平面内及び垂直面内で揺動可能に支持する十字継手、自在継手などであってもよい。また、継手部材34は、バネやゴムなどの弾性部材とすることもできる。
【0029】
上記構成の開閉装置30は、
図2乃至
図4に示すように、通常時、駆動手段31によって塞ぎ板40が換気口20を塞ぐ方向に付勢している。たとえば、駆動手段31がソレノイドである場合、ソレノイドに通電を行なうことで、プランジャー32が内装される磁石の吸引作用に抗して、塞ぎ板40を換気口20に押し当てる方向に突出し、塞ぎ板40が換気口20を気密に封止する。
【0030】
一方、非常時、駆動手段31への通電が遮断されると、プランジャー32が内装される磁石の吸引作用によって後退し、自動的に塞ぎ板40を換気口20から離間させる。これにより、
図7及び
図8に矢印で示すように、換気口20が開放し、換気口20を介してかご10内と外部との通気性(矢印F)を確保することができる。
【0031】
そして、通電が再開すると、駆動手段31が作動して、プランジャー32が突出することで、自動的に塞ぎ板40が換気口20に押し当てられて、換気口20を再び塞ぐ(
図2乃至
図4)。
【0032】
塞ぎ板40が換気口20を塞ぐ際及び封止状態において、ベース部材16の垂直方向(
図9中一点鎖線αで示す)に対して、プランジャー32の突出方向が、
図9中二点鎖線βで示すように水平面内で傾斜している場合、通常であれば、塞ぎ板40は換気口20に傾いて当接し、換気口20と塞ぎ板40との間に隙間が生じる。しかしながら、本発明では、塞ぎ板40はプランジャー32に対して継手部材34によって水平面内で揺動可能(図中矢印R)となっているから、プランジャー32が突出して塞ぎ板40がベース部材16に当接した際に、塞ぎ板40が水平面内で揺動し、塞ぎ板40がベース部材16に対して平行に押し当てられて、換気口20を気密に封止することができる。
【0033】
従って、開閉装置30の製作精度や取付精度に狂いがあっても、換気口20は塞ぎ板40によって気密に封止でき、さらには、開閉装置30の取付時間や調整時間を短縮でき、取付作業を簡便化できる。
【0034】
<換気口20に関する異なる実施形態>
上記実施形態では、換気口20は1枚の塞ぎ板40に対して1つであるが、
図10乃至
図12に示すように、1枚の塞ぎ板40に対して、複数の換気口20を形成し、通気性を高める構成とすることもできる。この場合、ベース部材16には、換気口20間に開口していない非開口部21が存する。塞ぎ板40には、この非開口部21と対向する位置に通気口42を形成している。なお、
図10乃至
図12において、上記実施形態と同じ部材は同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
【0035】
エレベーターの関係法規では、換気口20(塞ぎ板40を含む)について、要件が規定されている。例えば、EN81−1においては以下の通りである。
・かごドアが無孔板のエレベーターはかごの上下部に換気口を設ける。
・換気口はかご有効面積の1%以上のものを上下に設ける(かごドア周辺の隙間は換気口面積の50%以下まで換算しても良い)。
・換気口は直径10mmの棒が貫通できないようにすること。
【0036】
また、例えば、ASME−A17.1においては以下の通りである。
・開口部は床より300mm以上1825mm以下に設けない。
・床面300mm未満では25mm球を通さない。
・床面1825mm以上では50mm球を通さない。
・自然換気口の総面積はかご床面積の3.5%以上とし、かごの下部と頂部に等しく配分する。
【0037】
ここで、換気口20を介した開口の有効面積Aは、換気口20が1つの場合、次の要領で規定される。
図5に示すように、ベース部材16に開けられている換気口20の高さをL1、幅をL2とし、その開口面積をA1(=L1×L2)とする。また、
図8に示すように、その開口面積A1に対する空気Fの通り道、すなわち、塞ぎ板40が開放した状態において、塞ぎ板40とベース部材16との間の隙間Sとし、換気口20の総外周長さL(換気口20の高さL1×2と幅L2×2を加えたもの)を乗じた通路面積をA2(=S×L)とする。このとき、開口面積A1と通路面積A2の小さい方が開口の有効面積Aになる。
【0038】
すなわち、換気口20の開口面積A1を最も効果的に活用するには、開口面積A1よりも通路面積A2を大きく採り、A1≦A2とする必要がある。通路面積A2を大きく採るには、塞ぎ板40をベース部材16から大きく後退させて隙間Sを確保すればよいが、塞ぎ板40の移動距離(隙間Sに相当)を大きくすると、球や棒を通してしまい上記要件を満たさず、また、開閉装置30の大型化に繋がるため望ましくない。
【0039】
たとえば、換気口20について、L1=70mm、L2=120mmとしたとき、開口面積A1=L1×L2=8400mm
2となる。一方、Sは10mmの棒が貫通しないことが求められるからS=8.5mmとすると、通路面積は、A2=L×S=3230mm
2となる(ただし、L=2×L1+2×L2)。従って、A1>A2であり、開口の有効面積Aは通路面積A2(=3230mm
2)になる。
【0040】
一方、
図10乃至
図12に示すように、ベース部材16に換気口20を複数形成し、換気口20間の非開口部21と対向する位置に、塞ぎ板40に通気口42を開設した場合、開口の有効面積Aは以下のとおりになる。
【0041】
なお、図示では、換気口20は3つ、通気口42は2つであり、通気口42は換気口20と同じ大きさとし、各換気口20の高さをL1(
図5と同じ)、幅をL2’とする。また、左右の換気口20の幅方向端縁は、
図5の換気口20の開口幅Lと同じになるようにしている。
【0042】
このとき、
図11に示すように、換気口20の総開口面積A1は個々の換気口20の開口面積A1’(=L1×L2’)の3倍(A1=3×A1’)になる。そして、その開口面積A1に通じる空気の通り道は、塞ぎ板40の外周側だけでなく、各換気口20と通気口42との間にも形成されることになるから、換気口20の総外周長さLは、各換気口20の外周長さL’(=2×L1+2×L2’)の3倍(L=3×L’)になる。
【0043】
ここで、L2’について、
図5の換気口20の幅L2(=120mm)内で3つの換気口20を採り、換気口20と通気口42が互いに対向しないよう余裕をもたせて、L2’=20mmとする。また、塞ぎ板40とベース部材16との間の隙間S(
図12参照)を
図8と同じ8.5mmとする。その結果、開口面積は、A1=3×A1’=4200mm
2、同様に、通路面積はA2=L×S=4590mm
2となる。すなわち、A1<A2となり、A1とA2の小さい値である開口の有効面積Aは、開口面積A1(=4200mm
2)になり、
図5の場合(A=3230mm
2)に比べて大きい開口の有効面積を確保できる。
【0044】
つまり、同じ面積内に換気口20を設ける場合であっても、
図10乃至
図12に示すように換気口20を複数に分割し、塞ぎ板40に通気口42を設けることにより、開口の有効面積Aを大きく採ることができ、空気の流路(
図12の矢印F)を確保できる。
【0045】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0046】
たとえば、換気口20は、ベース部材16に形成するのではなく、側面パネル12、シーリングプレート13、プラットフォーム14等に設けてよいことは勿論である。
【0047】
また、1枚の塞ぎ板40に対して、複数の換気口20を形成する場合であっても、駆動手段31と塞ぎ板40は継手部材34によって揺動可能に連繋されることが望ましいが、継手部材34を省略することもできる。