(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記防滑凸部の、前記床表面に接する面の最大径(mm)を前記床表面からの最大高さ(mm)で除した比(前記最大径/前記最大高さ)が1〜600の範囲である、請求項1に記載の防滑構造。
前記防滑凸部の、前記床表面に接する面の最大径が0.3mm〜25mmの範囲であり、かつ前記床表面からの最大高さが0.03mm〜2mmの範囲である、請求項1又は2に記載の防滑構造。
アミノシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシラン、及びアクリルシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構造。
前記架橋性シリル基含有ポリマーが、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンエーテル及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーよりなる群から選ばれる主鎖骨格と、前記主鎖骨格の末端及び側鎖から選ばれる少なくとも1つに結合する架橋性シリル基と、を有し、前記架橋性シリル基の平均個数が1分子当り0.7以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の防滑構造。
前記架橋性シリル基が、シリル基に1〜3個の架橋性基が置換した基であり、前記シリル基に置換する基が、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニル基、及びアルケニルオキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の防滑構造。
前記アルコキシ基含有シリコーンオリゴマーが、アルコキシ基としてメトキシ基およびエトキシ基から選ばれる少なくとも1種、並びに有機置換基として炭素数1〜4のアルキル基及びフェニル基から選ばれる少なくとも1種を有し、反応性官能基を有しないシラン化合物の2〜40量体である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の防滑構造。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[防滑構造]
本発明の防滑構造は複数の防滑凸部からなる。個々の防滑凸部は床表面から外方に突出し、かつ、一の防滑凸部とそれに隣り合う他の防滑凸部とが互いに離隔するように配置されている。本発明の防滑凸部は、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物の硬化体であるという特徴、及びその立体形状がドーム形状であるという特徴を有する。
【0017】
この2つの特徴の組み合わせにより、床表面の美麗性(特に光沢)や意匠性、清掃性などを損なうことなく、床表面に優れた防滑性能、特に雨天時や床表面の水濡れ時に特に有効な優れた防滑性能を付与できる。本発明の防滑凸部を床表面に設けることにより、スリップなどによる転倒を顕著に防止できる。また、本発明の防滑凸部は、高い硬度を有し、床表面との密着性が高く、耐摩耗性などの耐久性、防汚性に優れることから、長期間にわたって防滑性能及び床表面の美麗性を維持することができる。また、本発明の防滑凸部は足の裏でその感触を感じるために設けられるものではないため、その床表面からの高さを比較的低くすることができる。このため、本発明の防滑凸部は、つまずきなどの原因になることがなく、歩行安全性が高いという利点をも有している。
【0018】
本発明の防滑凸部が前述のような優れた効果を奏する理由は現状では十分明らかではないが、その一因として、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物の硬化体をドーム形状に形成することにより、磨耗や床表面からの剥がれが抑制され、防滑凸部が水と接触しても、防滑凸部が有する所定の摩擦特性が維持され、さらに汚れの付着が低減できることが考えられる。
【0019】
本発明の防滑凸部は、床表面から外方に突出するドーム形状を有し、その底面が床表面に接触した状態で密着し、かつ床表面に接触しない表面(以下「上面」と呼ぶことがある)が上方を臨むように設けられる。ドーム形状とは、周縁部よりも中央部の方がより高い位置まで突出し、その表面が曲面を含んで構成されたものであれば特に限定されないが、円形ドーム形状のものが好ましい。
【0020】
円形ドーム形状とは、上面視円形であり、かつ上面(表面)が曲面のみ又は曲面と頂部の平面とから構成され、稜線などの線状領域や凹んだ領域を有さない形状である。このような円形ドーム形状の中でも、曲面のみ又は曲面と頂部の平面とから構成された上面(表面)の、防滑凸部の突出方向の軸線(仮想線)と交差する点領域及び/又はその近傍領域が床表面に対して最も高い位置にある円形ドーム形状が好ましい。また、円形ドーム形状の上面視円形とは、真円に限定されず、真円度が真円よりも低い円形でもよく、さらに楕円、長円などでもよい。円形ドーム形状の具体例としては、例えば、半球状、紡錘状、卵を長手方向に分割した半卵状、これらの形状のいずれかであってかつ頂部が平面である形状などが挙げられる。
【0021】
なお、防滑凸部の立体形状を方柱形状、角柱形状、円柱形状や円錐台形状に構成した場合は、ある程度の防滑性能は得られるものの、防汚性の経時的な低下が顕著になる。すなわち、方柱形状、角柱形状、円柱形状や円錐台形状の防滑凸部は、その材質に関係なく、周囲の埃や汚れが付着し易くなり、時間経過と共に黒ずみが目立ち易くなり、床表面の美麗性や光沢を損なうという欠点がある。さらに、これらの立体形状を有する防滑凸部は、モップなどの清掃用具の操作性を低下させたり、躓きなどの原因にもなり、清掃性や歩行安定性を低下させる場合もある。
【0022】
本発明の防滑凸部において、床表面に接する面の最大径(mm、以下単に「最大径」と呼ぶことがある)、及び床表面からの最大高さ(mm、以下単に「最大高さ」と呼ぶことがある)は特に限定されず適宜選択可能である。ただし、床表面の美麗性(特に光沢)、意匠性、清掃性などの維持、防滑凸部と床表面との密着性、防滑性能の向上などのバランスを考慮すると、防滑凸部の最大径は、好ましくは0.3mm〜25mm、より好ましくは0.3mm〜22mm、さらに好ましくは1mm〜10mm、特に好ましくは1mm〜5mmである。また、防滑凸部の最大高さは、防滑性能、清掃性、歩行安全性(特につまずきの防止)などを考慮すると、好ましくは0.03mm〜2mm、より好ましくは0.05mm〜2mm、さらに好ましくは0.05mm〜1mmである。
【0023】
また、本発明の防滑凸部において、最大径を最大高さで除した縦横比(最大径/最大高さ)は特に限定されないが、防滑凸部の接触角を比較的低い値とし、その防滑性能を十分に発揮させる観点から、好ましくは1〜600、より好ましくは1〜400、さらに好ましくは5〜150、特に好ましくは5〜60である。縦横比が1未満及び600を超えると、例えば、防滑処理用組成物の種類、床材の種類などが、防滑性能や、防滑凸部の床表面への密着性などに影響を及ぼす場合が生じる可能性がある。また、縦横比が1未満では、床への密着性を低下させる原因になることがある。本発明の防滑凸部は、上記した範囲の最大径及び最大高さを有し、かつここに記載した範囲の縦横比を有することが好ましい。
【0024】
また、本発明の防滑凸部は、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物の硬化体をドーム形状(好ましくは円形ドーム形状)に形成することにより、その接触角(表面接触角)を好ましくは1°〜80°、より好ましくは5°〜60°、さらに好ましくは10°〜40°、特に好ましくは10°〜25°とすることができる。防滑凸部の接触角が前記範囲内にあることにより、床表面の美麗性(特に光沢)や意匠性、清掃性などを損なうことなく、床表面に優れた防滑性能を付与する効果が顕著になる。なお、防滑凸部の接触角は、例えば、防滑凸部の縦横比の調整、防滑凸部を構成する防滑処理用組成物に含まれる硬化性樹脂の選択などにより調整できる。本明細書において表面接触角は、協和界面科学株式会社製CA−X150型を使用し、画像処理式3点クリック法で求められる値である。
【0025】
複数の防滑凸部は、互いに離隔するように、より具体的には任意に選択した隣り合う一対の防滑凸部が互いに離隔するように形成されている。一対の防滑凸部間の距離は特に限定されないが、防滑性能や清掃性、歩行安全性などの観点から、好ましくは1mm〜50mmの範囲である。複数の防滑凸部は、格子状、千鳥格子状、同心円状、放射線状などに規則的に配置されてもよく、また、不規則に配置されてもよいが、防滑構造の防滑性能や清掃性などの観点から、規則的に配置されることが好ましい。また、防滑凸部の集合によって、文字、記号、デザインなどを表現することも可能である。
【0026】
本発明の防滑構造は、例えば、各種商業施設や小型店舗、医療施設、宿泊施設、公共施設、集合住宅や個人住宅などの建築物の床表面、特にセラミックタイルや石材製タイルなどからなる床表面に好適に形成することができる。より具体的には、例えば、大型商業施設や店舗などの床表面、ホテルや病院などのロビーや通路の床表面、マンションの玄関や室内の床表面などの、比較的滑り易い各床表面に本発明の防滑構造を形成することにより、床表面の光沢性、美麗性、意匠性や清掃性などを損なうことなく、防滑性能や歩行安全性を顕著に高めることができる。
【0027】
本発明の防滑凸部は、前述のように、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物の硬化体である。すなわち、防滑処理用組成物は、硬化性樹脂を含む硬化性組成物である。硬化性樹脂としては特に限定されないが、防滑凸部の接触角を上記した所定の範囲に調整することなどを考慮すると、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、防滑処理用組成物は、常温では液状でありかつ湿気、加熱、光照射などにより硬化する硬化性組成物であることが好ましく、常温では液状でありかつ湿気、光照射などにより硬化する硬化性組成物であることがより好ましい。液状硬化性組成物としては、例えば、硬化性樹脂自体が液状のもの、硬化性樹脂の有機溶剤溶液などが挙げられる。防滑処理用組成物を溶解させる有機溶剤としては特に限定されず、防滑処理用組成物の種類に応じて公知の有機溶剤から適宜選択できる。
【0028】
湿気硬化性樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用できるが、例えば、湿気により硬化する変性シリコーン樹脂を好ましく使用できる。変性シリコーン樹脂としては、例えば、湿気により硬化する硬化性成分を含み、硬化性成分が架橋性シリル基含有ポリマー(以下「硬化性ポリマー成分」と呼ぶことがある)8〜92重量%とアルコキシ基含有シリコーンオリゴマー(以下「硬化性オリゴマー成分」と呼ぶことがある)8〜92重量%とを含み、さらに、架橋性シリル基含有ポリマー及びアルコキシ基含有シリコーンオリゴマーを除くシラン化合物、硬化触媒、並びに樹脂用添加剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分を含んでいてもよい防滑処理用組成物が挙げられる。以下、硬化性樹脂として上記変性シリコーン樹脂を含む防滑処理用組成物を硬化性組成物(X)と呼び、その必須成分及び任意成分についてさらに詳しく説明する。
【0029】
硬化性ポリマー成分は、架橋性シリル基を有するポリマーであれば特に限定されないが、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンエーテル、及び(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーよりなる群から選ばれる主鎖骨格と、主鎖骨格の末端及び/又は側鎖(より好ましくは主鎖骨格の末端)に結合する架橋性シリル基とを有する硬化性ポリマー成分(A)が好ましく、硬化性組成物(X)の硬化体の床材への密着性、硬度や、耐摩耗性などの耐久性を考慮すると、硬化性ポリマー成分(A)の中でも、1分子あたりの架橋性シリル基の平均個数が0.7個以上のものがより好ましく、0.7個〜3.0個のものがさらに好ましく、1.2個〜2.6個のものが特に好ましい。
【0030】
ここで、硬化性ポリマー成分が有する架橋性シリル基とは、加水分解などにより架橋結合を形成する架橋性基を有するシリル基であり、より具体的にはシリル基に1〜3個の架橋性基が置換した基である。シリル基に置換する基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニル基、及びアルケニルオキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのシリル基に置換する基の中でも、架橋性基としてはアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルコキシ基がより好ましい。本発明において、架橋性シリル基は、2種以上の異なる架橋性基を有していてもよい。
【0031】
硬化性ポリマー成分の数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1000〜100000、特に好ましくは1000〜60000である。数平均分子量が500未満の場合、硬化性組成物(X)の硬化物の物性が低下する傾向がある。一方、数平均分子量の上限は特に限定されないが、硬化性組成物(X)を調製する際や床表面に防滑構造を形成する際の作業性などを考慮すると、数平均分子量が100000以下であることが好ましく、60000以下であることがより好ましい。
【0032】
主鎖骨格がポリオキシアルキレンである硬化性ポリマー成分(A1)において、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのアルキレン単位の炭素数が2〜6、好ましくは2〜4であるポリオキシアルキレンが挙げられ、これらの中でも、ポリオキシプロピレンが好ましい。また、主鎖骨格がポリアルキレンエーテルである硬化性ポリマー成分(A2)において、ポリオキシアルキレンエーテルとしては、例えば、ポリオキシアルキレンとアルコールとのアルカリ触媒存在下での反応生成物であるエーテルが挙げられ、これらの中でも、ポリオキシアルキレンと炭素数4〜22の飽和若しくは不飽和アルコールとのエーテルなどが好ましく、アルキレン部分の炭素数が2〜6、好ましくは2〜4であるポリオキシアルキレンと炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜4の飽和アルコールとのエーテルがより好ましい。
【0033】
主鎖骨格がポリオキシアルキレンである硬化性ポリマー成分(A1)及び主鎖骨格がポリオキシアルキレンエーテルである硬化性ポリマー成分(A2)としては、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、カネカMSポリマー(商標名)S810、カネカMSポリマーS−203、サイリル(商標名)SAT−115、サイリルSAT−145、サイリルSAX510、サイリルSAX520、サイリルSAX530、サイリルSAX580(いずれも商品名、(株)カネカ製)、エクセスター(登録商標)S2410、エクセスターW2521、エクセスターA2551(いずれも商品名、旭硝子(株)製)などが挙げられる。主鎖骨格がポリオキシアルキレン又はポリオキシアルキレンエーテルである硬化性ポリマー成分(A)の数平均分子量は好ましくは1000〜60000、より好ましくは1000〜25000である。
【0034】
主鎖骨格が(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーである硬化性ポリマー成分(A3)は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ビニルアルコキシシランおよび(メタ)アクリロキシアルコキシシランから選ばれるシラン化合物とを、連鎖移動剤としてのメルカプトアルコキシランの存在下に、重合させることにより製造できる。重合方法としては、公知のラジカル重合触媒を用いる塊状重合法や溶液重合法、レドックス重合法などが挙げられる。これにより、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が1.2〜3個である(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが得られる。この製造方法は、例えば、特公平3−80829号公報に記載されている。
【0035】
上記製造方法で使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートなどの、アルキル部分が炭素数2〜4の直鎖状又は環状である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0036】
上記製造方法で使用されるビニルアルコキシシランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの、アルコキシ部分が炭素数1〜4の鎖状アルコキシであるビニルアルコキシシランが挙げられる。(メタ)アクリロキシアルコキシシランとしては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどの、アルコキシ部分が炭素数1〜4の鎖状アルコキシである(メタ)アクリロキシアルコキシシランが挙げられる。メルカプトアルコキシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの、アルコキシ部分が炭素数1〜4の鎖状アルコキシであるメルカプトアルコキシランが挙げられる。
【0037】
また、主鎖骨格が(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーである硬化性ポリマー成分(A3)は、(メタ)アクリル酸エステル系化合物およびビニル化合物から選ばれるモノマー化合物と、架橋性シリル基含有ジスルフィド化合物とを、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中にて光重合(常温乃至50〜60℃で、4〜30時間の光照射)させることによっても製造できる。この製造方法は、例えば、特公平4−69667号公報に記載されている。
【0038】
上記製造方法で使用される(メタ)アクリル酸エステル系化合物としては、例えば、アルキル部分が炭素数2〜4の直鎖状又は環状である、前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用できる。ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなどのスチレン系化合物が挙げられる。架橋性シリル基含有ジスルフィド化合物としては、例えば、ビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0039】
主鎖骨格がアクリル酸エステル系ポリマーである硬化性ポリマー成分(A3)としては市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、サイリルMA−480(商品名、(株)カネカ製)、アルフォン(商標名)US−6110(商品名、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマー、アルコキシシリル基の1分子当りの平均個数0.9、数平均分子量3000、東亜合成(株)製)などが挙げられる。
【0040】
また、硬化性組成物(X)では、硬化性ポリマー成分(A)として、硬化性ポリマー成分(A1)、硬化性ポリマー成分(A2)、及び硬化性ポリマー成分(A3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。その中でも、硬化性組成物(X)の床表面への密着性、硬度や耐摩耗性などの耐久性を考慮すると、硬化性ポリマー成分(A1)、硬化性ポリマー成分(A3)、硬化性ポリマー成分(A1)と硬化性ポリマー成分(A3)との混合物などが好ましい。
【0041】
硬化性組成物(X)において、硬化性オリゴマー成分としては、アルコキシ基を有するシラン化合物のオリゴマーであれば特に限定されないが、例えば、一般式(1)、
[−Si(OR
1)(R
2)−O−]m (1)
〔式中、R
1はアルキル基を示す。R
2はアルキル基、アリール基又は反応性官能基を示す。mはモノマー単位の繰返し数であり、2〜100の整数を示す。但し、m個のR
1、及びm個のR
2は、それぞれ、同一でも良く又は異なっていてもよい。〕
で表わされる硬化性オリゴマー成分(B)が挙げられる。なお、一般式(1)において、通常、珪素原子側末端には基−OR
1が結合し、酸素原子側末端には基R
2が結合する。また、アルコキシ基が結合した珪素原子をも含めて、アルコキシシリル基と呼ばれることもある。
【0042】
上記一般式(1)において、R
1及びR
2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。R
2で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−トリル基などの、炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、これらの中でもフェニル基が好ましい。R
2で示される反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリル基、ビニル基などが挙げられる。
【0043】
硬化性オリゴマー成分(B)の中でも、一般式(1)において、m個のR
1がメチル基又はエチル基であり、m個のR
2が炭素数1〜4の直鎖状アルキル基及び/又は炭素数6〜10のアリール基であり、反応性官能基を有さず、mが2〜40の整数であるオリゴマーが好ましく、m個のR
1がメチル基又はエチル基であり、m個のR
2が炭素数1〜4の直鎖状アルキル基及び/又はフェニル基であり、反応性官能基を有さず、mが2〜40の整数であるオリゴマーがより好ましく、m個のR
1が全てメチル基であり、m個のR
2がメチル基とフェニル基とからなり、反応性官能基を有さず、mが2〜40の整数(特に好ましくはmが1〜15の整数)であるオリゴマーがさらに好ましい。硬化性オリゴマー(B)は、モノマー単位の繰返し数を示すmの数が異なる複数の硬化性オリゴマー成分(B)の混合物でもよい。
【0044】
このような、硬化性オリゴマー成分(B)としては市販品を使用してもよい。該市販品には多くの会社から市販される多くのものがあるが、例えば、信越化学(株)製の市販品を例にとれば、商品名:KR−511、KR−513、KR−516、KR−517などの反応性官能基を有する硬化性オリゴマー成分、商品名:KR−213、KR−401N、KR−500、KR−510、KR−515、KR−9218、KC−89S、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9250などの反応性官能基を有しない硬化性オリゴマー成分などが挙げられる。
【0045】
反応性官能基を有しない市販の硬化性オリゴマー成分は、例えば、置換基としてメトキシ基と共に、メチル基又はメチル基及びフェニル基を有し、粘度(25℃)が5〜160mm
2/s(好ましくは20〜100mm
2/s)の範囲であり、屈折率(25℃)が1.35〜1.55(好ましくは1.39〜1.54)の範囲であり、メトキシ基含有量が10〜50重量%(好ましくは15〜35重量%)の範囲である。
硬化性オリゴマー成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。もちろん、市販品を2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
硬化性成分において、硬化性ポリマー成分と硬化性オリゴマー成分との使用割合は特に限定されず、例えば、硬化性組成物(X)の硬化体を形成する床表面の材質、硬化体の形状や寸法、硬化体に設計された物性などの種々の条件に応じて適宜選択できるが、硬化性成分全量中、好ましくは硬化性ポリマー成分を8〜92重量%、硬化性オリゴマー成分を8〜92重量%、より好ましくは硬化性ポリマー成分を15〜85重量%、硬化性オリゴマー成分を15〜85重量%、さらに好ましくは硬化性ポリマー成分を35〜65重量%、硬化性オリゴマー成分を35〜65重量%である。
【0047】
硬化性ポリマー成分、及び硬化性オリゴマー成分の硬化性成分における各含有量が上記範囲にあることにより、硬化性組成物(X)の硬化体が次のような優れた特性を発現する。すなわち、床表面との密着性、硬度や、耐摩耗性、光沢保持などの耐久性を高い水準で併せ持ち、後述する複数の防滑凸部からなる防滑構造が得られる。また、該防滑構造は、晴天時などの乾燥した時だけでなく、雨天時や水を用いて清掃作業を行なったときにでも、優れた防滑性能を発揮することができ、床材、特にセラミックタイルや石材からなる床材の歩行安全性を高めることができる。
【0048】
硬化性ポリマー成分の含有量が8重量%未満又は硬化性オリゴマー成分の含有量が92重量%を超える場合には、硬化性組成物(X)の硬化体の硬度が高くなる傾向があり、硬化体の耐摩耗性などの耐久性が低下するおそれがある。一方、硬化性ポリマー成分の含有量が92重量%を超えるか又は硬化性オリゴマー成分の含有量が8重量%未満の場合には、硬化前の硬化性組成物(X)の粘度が高くなって、ハンドリング性が低下する傾向がある。その結果、硬化性組成物(X)を用いて床表面に防滑構造を形成する際の作業性などが低下するおそれがある。
【0049】
硬化性組成物(X)において、上記した硬化性成分と共に用いられる硬化触媒はシラノール縮合触媒とも呼ばれるものであり、該硬化性触媒としては、この分野で常用される硬化触媒をいずれも使用でき、例えば、有機錫系化合物、有機チタン系化合物などの金属系触媒や、錫やチタン以外の金属系触媒などが挙げられる。有機錫系化合物としては特に限定されないが、例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫、ジオクチル酸錫、ジステアリン酸錫、ジナフテン酸錫などの錫カルボン酸塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)などのジブチル錫ジカルボキシレート類、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、などのジアルキル錫のアルコキシド誘導体類、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシドなどのジアルキル錫の分子内配位性誘導体類、ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体のオキシ誘導体などの4価ジアルキル錫オキシドの誘導体などが挙げられる。有機チタン系化合物としては、例えば、テトラーn―ブトキシチタネート、テトライソプロポキンチタネートなどが挙げられる。また、錫やチタン以外の金属系触媒としては、例えば、オクチル酸やオレイン酸、ナフテン酸、ステアリン酸などをカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルなどのカルボン酸金属塩類などが挙げられる。これらの中でも、金属系触媒が好ましく、有機錫系化合物及び有機チタン系化合物がより好ましく、有機錫系化合物がさらに好ましい。硬化触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
硬化性組成物(X)における硬化触媒の含有量は特に限定されないが、硬化性成分100重量部に対して好ましくは0.05重量部〜20重量部、より好ましくは0.1重量部〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部である。硬化触媒の含有量が0.05重量部未満では、硬化性組成物(X)の硬化性、及び硬化性組成物(X)の硬化体の硬度や耐摩耗性などの耐久性が低下する傾向がある。硬化触媒の含有量が20重量部を超えると、硬化速度が速くなりすぎて硬化性組成物(X)の粘度が高くなりハンドリング性が低下し、床表面に防滑構造を形成する際の作業性が低下する傾向がある。さらに、硬化収縮が大きくなり床材との密着性が低下する。
【0051】
硬化性組成物(X)は、前述したように、その硬化体の物性を低下させない範囲で、架橋性シリル基含有ポリマー、及びアルコキシ基含有シリコーンオリゴマー以外のシラン化合物を含んでいてもよい。該シラン化合物としては、反応性官能基を有するシラン化合物が挙げられる。反応性官能基を有するシラン化合物の具体例としては、例えば、アミノシラン、アルキルアルコキシシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシラン、アクリルシランなどが挙げられ、これらのシラン化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。硬化性組成物(X)の硬化速度を向上させたり、また、硬化体の物性をより一層向上させたりする観点から、これらのシラン化合物の中でもアミノシランを好ましく使用できる。
【0052】
アミノシランとは、分子内に少なくとも1つのアミノ基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−メチルジエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデンプロピルアミン、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アミノシランは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
アルキルアルコキシシランとは、分子内に1又は複数のアルキル基及びアルコキシ基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシしシラン、ジメチルジエチルシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アルキルアルコキシシランは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
エポキシシランとは、その分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。エポキシシランは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
メルカプトシランとは、分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルエトキシシランなどが挙げられる。メルカプトシランとしては市販品も使用でき、例えば、KBM803(商品名、信越化学工業(株)製)、Z−6062(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)、Z−6911(商品名、東レ・ダウコーニング(株)製)、M8450(商品名:チッソ(株)製)などが挙げられる。メルカプトシランは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
イソシアネートシランとは、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。イソシアネートシランは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
アクリルシランとは、分子内に少なくとも1つのビニル基を有するシラン化合物の総称であり、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタクリロオキシプロピル)トリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等が挙げられる。アクリルシランは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
硬化性組成物(X)におけるシラン化合物の含有量は特に限定されないが、硬化性成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、さらに好ましくは5〜35重量部である。
【0059】
硬化性樹脂として熱硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物(以下「硬化性組成物(Y)」と呼ぶことがある)において、熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを好ましく使用できる。熱硬化性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、硬化性樹脂(Y)に含まれる熱硬化性樹脂は、併用される硬化剤を選択することによって、加熱することなく室温で硬化するものをも含む。
【0060】
また、硬化性樹脂として光硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物(以下「硬化性組成物(Z)」と呼ぶことがある)において、光硬化性樹脂としては紫外線などの光線を照射することにより硬化可能な各種の硬化性樹脂を特に限定なく使用できるが、例えば、光硬化性アクリル樹脂などを好ましく使用できる。
【0061】
湿気硬化性樹脂を用いるのと同様に、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いることによっても、防滑凸部の接触角を所定の範囲に調整することが容易になる。その結果、床表面の美麗性、意匠性、清掃性などを損なうことなく、優れた防滑性能及び防滑性能の長期的な保持、優れた防汚性を有する防滑凸部を形成することができる。これらの硬化性樹脂としては、常温で液状であり、床表面への施工後に硬化するものを選択して用いることが好ましい。
【0062】
硬化性樹脂(X)(Y)(Z)などの、硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物は、その硬化体の物性を損なわない範囲で、一般的な樹脂用添加剤を任意成分として含んでいてもよい。樹脂添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、着色剤、有機溶剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、揺変剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0063】
充填材としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、雲母、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛などの無機塩類、ガラスビーズ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーンなどのバルーン、ガラス繊維,金属繊維などの無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイトなどの針状結晶性充填材などが挙げられる。
【0064】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジエステル類(ジイソノニルフタレートなど)、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類などが挙げられる。
着色剤としては、例えば、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラックその他の着色顔料、染料などが挙げられる。
【0065】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤などが挙げられる。なお、メタノールおよびエタノールは安定剤としても使用できる。
【0066】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類などが挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、サリシレート類、シアノアクリレート類、ニッケル錯塩類などが挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン類などが挙げられる。
【0068】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類などが挙げられる。
揺変剤としては、例えば、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油などが挙げられる。
上記した各添加剤は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0069】
硬化性組成物(X)は、例えば、上記した各必須成分(硬化触媒を除く)および必要に応じて上記したシラン化合物や樹脂用添加剤(着色剤を除く)を混合し、得られた混合物を減圧脱気し、脱気後の混合物に硬化触媒および必要に応じて着色剤を添加してさらに混合することにより得ることができる。前記以外の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物(Y)、(Z)も。樹脂用添加剤の1種又は2種以上を含むことができる。
【0070】
こうして得られる硬化前の防滑処理用組成物は、通常は透明である。また、防滑処理用組成物を防滑凸部の材料として用いる場合、それ自体が液状の硬化性樹脂を用いるか又は硬化性樹脂の有機溶剤溶液の形態で用いられる。これらの20℃における粘度は、BH型回転粘度計(20rpm)による測定値として、30mPa・s〜200,000mPa・sの範囲に調整することが好ましい。
【0071】
なお、粘度は、防滑構造を形成する際の作業性や、後述する防滑構造の製造方法においてマスキングシート脱型後の完全に硬化する前の防滑処理用組成物が所定の立体形状をほぼ維持しつつかつその一部のみが変形(例えば、頂部周辺がほぼ曲面状及び/又は円弧状に変形)するように構成すること、などを考慮すると、粘度(20℃)を50mPa・s〜5000mPa・sの範囲とすることが好ましい。防滑処理用組成物の粘度は、例えば、防滑処理用組成物そのものの選択、防滑処理用組成物に含まれる成分の種類や含有量の選択などにより調整できる。さらに、任意成分や樹脂用添加剤により粘度を調整してもよい。
【0072】
次に、本発明の防滑構造の製造方法について説明する。本発明の防滑構造は、例えば、複数の貫通孔を分散配置したマスキングシートを床表面に貼り付ける工程(A)と、マスキングシートの貫通孔と床表面とで形成された穴の中に防滑処理用組成物(好ましくは液状の防滑処理用組成物)を充填し、床表面に付着させる工程(B)と、必要に応じて加熱下又は光照射下に、マスキングシートを床から取り除く工程(C)と、マスキングシートの貫通孔が存在した位置に付着する防滑処理用組成物を硬化させて、複数の防滑凸部を形成する工程(D)と、を含む方法により作製できる。以下、各工程(A)〜(D)についてさらに詳しく説明する。
【0073】
本発明では、工程(A)の実施に先立ち、防滑構造を形成する床表面(以下「被処理面」とすることがある)の清浄化工程を実施してもよい。清浄化工程は、従来方法と同様に実施でき、例えば、掃除機などを用いて、被処理面のゴミ、砂、土、埃などを除去した後、薬剤及びウエスワイプを用いて被処理面の油汚れやその他の汚れを除去することにより行なわれる。ここで、薬剤としては、例えば、人体に対する安全性が比較的高い有機溶剤などを使用でき、該有機溶剤の一例としてイソプロパノールなどの低級アルコール類や、アセトンなどのケトン類が挙げられる。
【0074】
工程(A)では、複数の貫通孔を分散配置したマスキングシートを床表面に貼り付ける。被処理面を構成する材料としては特に限定されず、セラミック、陶磁器、ガラス、石材などの無機質材料、木質材料、樹脂材料などを使用できるが、防滑処理用組成物の硬化体(後述する防滑凸部)の被処理面に対する接着性や密着性、被処理面自体の美麗性、光沢性、意匠性、耐久性などの観点から、無機質材料が好ましく、セラミック、石材などがより好ましい。床表面を含む床表層部は、通常、複数のタイルを縦横方向に並べて構成されるが、タイルの寸法は特に限定されず、縦横寸法が10cm程度の比較的小さなものから、縦横寸法が30cm程度〜50cm程度の比較的大きなものまで、適宜選択できる。なお、縦横に隣り合うタイル間に目地が設けられる場合は、マスキングシートを床表面に貼り付ける前に、防滑処理用組成物の侵入を防止するためのテープを縦横の目地に貼り付けてもよい。縦横の目地に貼り付けたテープは、マスキングシートの位置決めにも利用できる。
【0075】
マスキングシートは、例えば、基材と、基材の一方の表面に脱着可能に積層された粘着層と、からなり、厚み方向に貫通する複数の孔が互いに離隔するように形成されたものである。基材の材質としては特に限定されないが、マスキングシートの施工性を考慮すると、基材が、施工現場においてカッター、はさみなどで裁断可能な、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン(商標名)、塩化ビニルなどの合成樹脂が好ましい。また、マスキングシートの厚みは、マスキングシートに形成された貫通孔の高さと等しくなり、防滑凸部の高さに影響を及ぼす。例えば、防滑凸部による防汚性や、防滑構造の清掃性などを考慮すると、マスキングシートの厚みは好ましくは30μm〜2mmである。
【0076】
貫通孔の軸に対して垂直な方向の断面形状は特に限定されず、例えば、略円形、略楕円形、略長円形、略方形、五角形以上の略多角形、星形などの種々の形状とすることができるが、硬化後の清掃性などを考慮すると、略円形、略楕円形、略長円形、略正方形などが好ましく、略円形がさらに好ましい。なお、断面形状が円形以外の貫通孔を用いても、防滑処理用組成物の粘度などを調整することにより、ドーム形状の防滑凸部を形成することができる。貫通孔の径は、防滑凸部の径寸法に影響を及ぼすことから、防滑凸部による歩行安全性の向上や、歩行者が防滑凸部を足で引っ掛けて躓くのを防止し、歩行安全性を高めることなどを考慮すると、好ましくは0.3mm〜25mmの範囲である。また、貫通孔の径は、マスキングシートの表裏面において異なるように形成してもよい。
【0077】
また、マスキングシートにおける複数の貫通孔の配置はこれらが互いに離隔していれば特に限定されず、例えば、格子状、千鳥格子状、同心円状、放射状などの規則的な配置でもよく、不規則な配置でもよいが、防滑性能、床表面への施行性などを考慮すると、規則的な配置が好ましい。また、隣り合う貫通孔の間隔は特に限定されないが、防滑性能や歩行安全性の向上を考慮して、好ましくは1mm〜50mm、より好ましくは1mm〜30mm、さらに好ましくは2mm〜20mmの範囲から選択される。隣り合う貫通孔の間隔は、形成される防滑構造全体において等間隔でも不等間隔でもよいが、防滑性能の観点から、等間隔が好ましい。また、マスキングシートの開口率も特に限定されず、広い範囲から選択できるが、防滑構造を形成する際の作業性などの観点から、好ましくは3%〜50%程度である。また、防滑凸部の集合によって、文字、記号、デザインなどを表現することも可能である。
【0078】
工程(B)では、被処理面とマスキングシートの貫通孔とで形成された穴に防滑処理用組成物を充填し、防滑処理用組成物の仮硬化体を得る。防滑処理用組成物の充填には、例えば、ヘラ、金ゴテなどが用いられる。充填された防滑処理用組成物は、通常室温にて硬化させるが、必要に応じてドライヤーなどにより加熱してもよく、光照射により硬化させてもよい。
【0079】
防滑処理用組成物を例えば室温で硬化させる場合、穴に防滑処理用組成物を充填直後〜24時間を経過した後に工程(C)に移ることが好ましい。穴に充填した防滑処理用組成物をそのまま放置することを、養生と呼ぶことがある。養生時間を前記範囲とすることにより、防滑処理用組成物が半硬化体となる。半硬化体とは、次の工程(C)でマスキングシートを取り除いても、穴内の防滑処理用組成物がその周囲に平面状に拡がってその立体形状を失うことがなく、かつ立体形状を維持しながら、多少の変形が起こる状態のものを意味する。なお、工程(C)は穴に充填された防滑処理用組成物が半硬化体になった後に実施してもよいが、防滑処理用組成物が半硬化体となる前すなわち半硬化体よりも大きな変形を起こす段階で実施してもよい。いずれにせよ、防滑処理用組成物の種類に応じて、防滑処理用組成物がドーム状、好ましくは円形ドーム状になりやすい時点を選択して工程(C)に移ることが好ましい。
【0080】
工程(C)では、マスキングシートの穴内の仮硬化体が硬化して流動性を失う前にマスキングシートを除去する。穴内の仮硬化体は前述した所定の流動性を有している。したがって、マスキングシートを取り除いても、仮硬化体が大きな形状変化を起こすことなく、頂面と側面との境界のエッジが立った領域が曲面状となる変形を起こす。その結果、形成された仮硬化体はエッジが立ったものではなくドーム形状となる。このとき、仮硬化体の立体形状が損なわれず、かつ押圧により形成される平面と側面との境界にエッジが立たないようにその頂部のみを軽く押圧し、平面化してもよい。押圧には、例えば、板、工具、手指などを利用できる。なお、半硬化体が上述のような形状変化を起こす流動性を保った状態になるまでの時間は、予め実験により確認することができる。
【0081】
仮硬化体が上記のような形状変化を起こすことにより、方柱形状、角柱形状、円柱形状、円錐台形状などの、エッジが立った従来の防滑凸部に見られた欠点、すなわち靴底の汚れや繊維系のゴミや埃などの付着し易さに起因する外観の経時的な劣化という欠点が解消される。また、防滑凸部により被処理面の光沢性、美麗性、意匠性などが損なわれるのを防止できる。また、エッジが丸まって曲面になることで、清掃性も向上する。貫通孔の断面形状が特に略円形、略楕円形、略長円形などである場合、エッジが立った領域が曲面状となる変形により、略円形のドーム形状が形成される。円形ドーム形状とすることにより、防滑凸部が黒く汚れて見えることがより一層顕著に防止され、また清掃性も向上する。
【0082】
工程(D)では、被処理面において、マスキングシートの複数の貫通孔が存在した位置に付着した防滑処理用組成物からなりかつエッジが曲面となった仮硬化体を完全に硬化させて、その立体形状がドーム形状である、複数の防滑凸部を形成し、本発明の防滑構造を得る。なお、本明細書において、完全な硬化とは、外力を負荷しないで放置した場合に全く変形しない状態を意味する。本工程の硬化時間は防滑処理用組成物の成分組成などに応じて適宜選択される。こうして、被処理面に、防滑処理用組成物の硬化体である複数の防滑凸部を有する本発明の防滑構造が得られる。なお、着色剤を含まない防滑処理用組成物を用いて形成される防滑凸部は無色透明であることから、被処理面の外観特に光沢性、美麗性、意匠性などを維持することができるという利点を有している。
【実施例】
【0083】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。なお、本実施例で用いた各成分は次の通りである。また、以下において、特に断らない限り、部及び%はいずれも重量基準である。
【0084】
[架橋性シリル基含有ポリマー]
商品名サイリルMA480、(株)カネカ製、架橋性シリル基を有するアクリル酸エステル系ポリマー
商品名サイリルSAX520、(株)カネカ製、架橋性シリル基を有するポリオキシプロピレン
[アルコキシ基含有シリコーンオリゴマー]
商品名KR−510、信越化学(株)製、一般式(1)において、R
1=メチル基、R
2=メチル基及びフェニル基、m=10、粘度(25℃)100mm
2/s、屈折率(25℃)1.509、メチル基含有量17重量%
【0085】
[硬化触媒]商品名U303、日東化成(株)製、錫触媒(ジブチル錫)。
[シラン化合物]
商品名:KMB−903、信越化学(株)製、3−アミノプロピルトリメトキシシラン
商品名:KBM−13、信越化学(株)製、メチルトリメトキシシラン
上記した化合物を商品名を用いて略記することがある。
【0086】
[縮合、付加反応により硬化する硬化性樹脂]
以下の3種の硬化性樹脂は、室温下で硬化できるものである。
シリコーン樹脂 商品名:2540NS、湿気硬化型、20℃での粘度80mPa・s、サンスター技研(株)製
エポキシ樹脂 商品名;アルプロンG−250、2液型、20℃での粘度2000mPa・s、日米レジン(株)製
ウレタン樹脂 商品名:ペンギンセメント♯936、20℃での粘度10000mPa・s、サンスター技研(株)製
[光硬化性樹脂]
光硬化性アクリル樹脂 商品名:クラフトレジンUV004、20℃での粘度3500mPa・s、(株)テスク製
【0087】
(実施例1〜9)
表1に示す割合(g)で、硬化性ポリマー成分(MA−480又はSAX520)、硬化性オリゴマー成分(KR510)、錫触媒(U303)、シラン化合物(KBM903)、及びシラン化合物(KBM13)を振盪型混練機(商品名:SHAKER SA300、ヤマト科学(株)製)を用いて均一に混合し、実施例1〜9の硬化性樹脂組成物を調製した。得られた各組成物の粘度及び粘度比を求めた。また、得られた各組成物を用い、下記爪弾き試験、テーパー摩耗試験、及び碁盤目試験を実施した。結果を表1に併記する。
【0088】
[粘度及び粘度比]
各組成物の粘度を、BH型粘度計(商品名:B形粘度計 BH形、(株)トキメック製)を用い、20℃、回転数20rpmで、2回転又は20回転させたときに測定される値として求めた。測定に使用したロータは、各組成物のおおよその粘度に応じて変更した。
【0089】
[爪弾き試験]
下記の手順で爪弾き試験を実施した。
1)セラミックタイル(10cm×10cm)表面を、アセトンを染み込ませた紙製ウエスにて清掃した。
2)マスキングシート(厚み200μm、円形貫通孔の径3.5mm、開孔率12%、円形貫通孔間距離10mm)をセラミックタイルの表面に貼り付けた。
3)実施例1〜9の各組成物をヘラでスキージしながら、マスキングシートとセラミックタイルとで形成された穴に充填した。
4)室温1日養生後、マスキングシートを除去することで、セラミックタイル上に複数の円形ドーム形状の防滑凸部を形成した。
5)得られた防滑凸部を室温で3日間、及び80℃雰囲気中で4日間放置した。
6)その後、円形ドーム形状の防滑凸部を親指の爪により5回弾き、凸部の潰れ、及び剥れがない場合を「○(合格)」とし、1つの凸部に潰れ及び/又は剥がれがあった場合を「△(準合格)」、複数の凸部に潰れ及び/又は剥がれがあった場合を「×(不合格)」と評価した。
【0090】
[テーパー磨耗試験]
下記の手順でテーパー摩耗試験を実施した。1)〜3)の工程は、爪弾き試験と同様に実施した。
4)マスキングシートの円形貫通孔とセラミックタイルとで形成された穴の全てに各組成物を充填した直後に、マスキングシートを除去し、室温で60分間放置して変形及び硬化させることにより、セラミックタイル上に複数の円形ドーム形状の防滑凸部を形成した。
5)得られた防滑凸部10個の高さをレーザー変位測定器(商品名:LK080,LK2100、RV45、(株)キーエンス製)で測定し、得られた算術平均値を初期高さ(μm)とした
6)次に、室温で72時間放置後、円形ドーム形状の防滑凸部の研磨試験を実施した。研磨には、JIS K 5600−5−9記載の磨耗試験機(商品名:ABRASIO TESTER、(株)安田精機製作所製)を使用し、荷重を500g、及び磨耗輪をCS−17に設定し、700回研磨後の防滑凸部の高さを上記5)と同様にして測定した。防滑凸部の高さが40μm以上である場合を「○(合格)」とし、40μm未満である場合を「×(不合格)」とした。
【0091】
[碁盤目試験]
下記の手順で碁盤目試験を実施した。
1)セラミックタイル(10cm×10cm)表面を、アセトンを染み込ませた紙製ウエスにて清掃した。
2)厚みが200μmとなるように、セラミックタイルの4辺にマスキングテープを重ね貼りした。
3)マスキングシートで囲まれた領域に各組成物を流し込み、厚みが均一となるようにヘラでスキージした。
4)室温で1日間放置するか、又は室温で1日間及び80℃雰囲気中で1日間放置した。
5)JISK5600−5−6に準じた碁盤目試験を2mm間隔格子で実施した。
6)下記評価基準において、評価0〜2を「合格(○)」とし、評価3以下を「不合格(×)」とした。
【0092】
[評価技術]
評価0:塗膜をカットした縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
評価1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれがある。交差点部分においてカットにより塗膜の小さな剥がれが生じたものは、全ての交差点部分のうちの5%以下である。
評価2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又はカットの交差点において剥がれている。交差点部分においてカットにより塗膜の剥がれが生じたものは、全ての交差点部分のうちの5%を超え、15%以下である。
評価3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。交差点部分においてカットにより塗膜の部分的又は全面的に大剥がれが生じたものは、全ての交差点部分のうちの15%を超え、35%以下である。
評価4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は数箇所の目が部分的又は全面的に剥がれている。交差点部分においてカットにより塗膜の部分的又は全面的に大剥がれが生じたものは、全ての交差点部分のうちの35%を超える。
評価5:評価4よりも塗膜の剥がれの程度が大きい。
【0093】
なお、下記表1に示す防滑凸部の最大高さ及び最大径は、それぞれ、深さゲージ(株式会社尾崎製作所製 DIAL DEPTH GAUGE T−6B)及びノギス(新潟精機株式会社製 DIGITAL CALPER DN−150)を使用して測定した。また、下記表1、組成欄の硬化性オリゴマー成分及び硬化性ポリマー成分の欄において、上段の数字は実際の配合重量(g)を示し、下段の数字は硬化性成分全量中の割合(重量%)を示す。また、下記表1、組成欄の錫触媒、及びシラン化合物の欄の数字は実際の配合重量(g)を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
なお、表1に示すテーパー摩耗試験において、700回後の防滑構造を構成する防滑凸部を目視観察したところ、実施例2〜7の防滑構造では部分的にでも欠損している防滑凸部は存在せず、良好な防滑性能が維持されていることが判った。また、実施例1の防滑構造では、一部が欠損した防滑凸部が僅かに認められたが、防滑性能が維持されていることが判った。一方、実施例8〜9の防滑構造では、防滑凸部の高さが40mm未満となって摩耗が実施例1〜7のものよりも大きく、また、比較的大きな欠損を有する防滑凸部が実施例1よりも多く見つかり、その防滑性能が実施例1〜7よりも劣ることが判った。
【0096】
(実施例10)
硬化性ポリマー成分(SAX520)12.5g、硬化性オリゴマー成分(KR510)3.0g、錫触媒(U303)1.20g、シラン化合物(KBM903)1.80g、及びシラン化合物(KBM13)2.70gを振盪型混練機(SHAKER SA300)を用いて均一に混合し、本発明の防滑処理用組成物(粘度:82.5mPa・s)を調製した。得られた組成物を用い、マスキングシートにおける厚み(μm)、円形貫通孔の径(mm)、互いに隣り合う円形貫通孔の貫通孔間距離(mm)、及び開口率(%)を変更し、下記の手順に従って、複数の防滑凸部からなる本発明の防滑構造を形成し、評価を行なった。
【0097】
1)セラミックタイル(10cm×10cm)表面を、アセトンを染み込ませた紙製ウエスにて清掃した。
2)表2に示す各仕様(厚み、貫通孔径、貫通孔間距離、及び開口率)のマスキングシートをセラミックタイルへ貼り付けた。
3)上記で得られた組成物をヘラでスキージしながら、セラミックタイルとマスキングシートの貫通孔とで形成された穴に充填した。
4)組成物充填完了直後にマスキングシートを除去し、室温で72時間そのまま放置することで、マスキングシート除去直後の円柱状かドーム状に変形した防滑凸部を形成し、本発明の防滑構造を作製した。
5)得られた防滑構造について、JIS A1454及びJIS A5705に準じ、水及びダスト条件にてCSR値(滑り抵抗係数)を測定し、0.40以上を合格とした。
6)また、セラミックタイルにおける防滑構造が形成された領域の光沢を、光沢度計(商品名:GM−268、コニカミノルタ(株)製)にて測定し、50以上を合格とした。
結果を表2に示す。
【0098】
なお、表2において、ブランクとはセラミックタイルのCSR値及び光沢度を示すものである。また、開口率の欄におけるN=1、2とは、2つの検体を用いたことを示し、光沢度の欄におけるN=1、2、3とは、1検体について3回光沢度を測定したことを示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から、本発明によれば、マスキングシートにおける厚み(μm)、円形貫通孔の径(mm)、互いに隣り合う円形貫通孔の貫通孔間距離(mm)、及び開口率(%)、すなわち防滑凸部の高さ、径、防滑凸部間距離、及び防滑凸部の数を広い範囲から選択して、ブランク(セラミックシート)の光沢度を目視では殆ど変らない程度に維持しながら、ブランクよりも顕著に優れた防滑性能を有する防滑構造を形成できることが判る。
【0101】
(実施例11〜14)
防滑処理用組成物として、シリコーン樹脂(2540NS、実施例11)、光硬化型アクリル樹脂(クラフトレジンUV004、実施例12)、エポキシ樹脂(アルプロンG−250、実施例13)又はウレタン樹脂(ペンギンセメント♯936、実施例14)を用い、以下の手順で複数の円形ドーム形状の防滑凸部からなる本発明の防滑構造を作製した。
【0102】
1)セラミックタイル(10cm×30cm)表面を、アセトンを染み込ませた紙製ウエス(商品名:キムワイプ(商標名)、日本製紙クレシア(株)製)にて清掃した。
2)マスキングシート(厚み300μm、円形貫通孔の径3mm、開孔率17.4%、円形貫通孔間距離6mm、王子タック(株)製)をセラミックタイルの表面に貼り付けた。
3)実施例11〜14の各防滑処理用組成物を金ゴテでスキージしながら、マスキングシートとセラミックタイルとで形成された穴に充填した。
4)室温で1分間放置後、マスキングシートを除去することで、セラミックタイル上の防滑処理用組成物を円形ドーム形状に変形させ、仮硬化体を得た。この仮硬化体のうち、防滑処理用組成物が室温硬化型又は湿気硬化型である場合は、室温で24時間養生し、完全に硬化させた。また、光硬化型アクリル樹脂からなる仮硬化体は、専用ライト(TANGYA LEDライト8W)で30秒間紫外線を照射し、完全に硬化させた。こうして、最大径3.30mm、最大高さ0.20mm、縦横比(最大径/最大高さ)16.5の円形ドーム形状の防滑凸部を約6mmの等間隔で複数形成し、本発明の防滑構造を作製した。
5)比較のために、上記1)〜3)の工程を実施した後、マスキングシートを除去しない状態で充填された防滑処理用組成物を上記4)と同様にして完全に硬化させ、複数の円柱形状(径3.00mm、高さ0.30mm)の防滑凸部からなる防滑構造を作製した。
【0103】
得られた実施例11〜14及び比較のための防滑凸部について、下記の評価試験を実施した。結果を表3に示す。
[爪弾き試験]
上記で得られた各防滑凸部を室温又は80℃雰囲気中にて7日間保存した後、実施例1と同様にして実施し、評価した。爪弾き試験は、床表面に対する防滑凸部の接着性又は密着性を評価する試験である。
【0104】
[清掃用具操作性]
150gの錘を紙製ウエス(キムワイプ)1枚で包み込み、防滑構造の表面を滑らせた時の摩擦抵抗値を、デジタル式ブッシュブルゲージ(商品名:DSP−50、(株)イマダ製)で測定した。摩擦抵抗値が低いほど、モップなどの清掃用具の操作性が良いことになる。
【0105】
[付着汚れ除去性]
牛脂と大豆油とを重量比1:1で混合し、混合油を作製した。この混合油をクロロホルムに溶解し、混合油の25重量%クロロホルム溶液を作製した。この溶液に赤色染料(NP Scarlet BN:(株)戸谷染料商店)を0.1重量%の割合で添加及び混合し、汚染液とした。この汚染液をスポイトにより各防滑凸部の表面に3滴滴下し、60分間放置した。その後、各防滑凸部の汚染液滴下箇所を、水を含浸させた紙製ウエブ(キムワイプ)でふき取り清掃を行い、赤色が完全に拭取れた場合を「○」、極僅かに残る場合を「△」、明らかに赤色が残る場合を「×」と評価した。
【0106】
[汚れ付着性]
カーボン粉末0.01gを付着させた白刷毛で、各防滑凸部の表面を1往復こすり、カーボン粉末の防滑凸部表面への移行を目視観察し、カーボン粉末の移行が非常に少なく、防滑凸部の外観に変化が見られない場合を「○」、カーボン粉末の移行が比較的多量であり、防滑凸部の表面に黒ずみがみられる場合を「×」と評価した。
【0107】
[耐候性]
各防滑凸部に対し、超促進耐候性試験機(商品名:EYE SUPER−W261、岩崎電気(株)製)にて紫外線を72時間照射した後、変色(黄変)の有無を目視観察し、変色のないものを「○」、変色したものを「×」と評価した。
【0108】
[防滑性能]
実施例10と同様にしてCSR値を求め、0.40以上を合格とした。
【0109】
【表3】
【0110】
表3から、付加反応により硬化する硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を含む防滑処理用組成物を用いて円形ドーム形状を有する防滑凸部を形成することにより、良好な防滑性能を有しつつ、床表面との密着性、清掃用具操作性、付着した汚れの除去性、汚れの付着防止性などの諸性能を高水準でみたし、床表面の美麗性、意匠性などを損なうことがなく、特に屋内用として非常に有用な防滑構造を形成できることがわかる。