(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687058
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】壁面構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
E04F13/08 101W
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-91670(P2018-91670)
(22)【出願日】2018年5月10日
(65)【公開番号】特開2019-196653(P2019-196653A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2019年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】小野沢 篤
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 貴城
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−364104(JP,A)
【文献】
実公昭59−010259(JP,Y2)
【文献】
特開平09−228606(JP,A)
【文献】
特開2002−309691(JP,A)
【文献】
実公昭51−033047(JP,Y2)
【文献】
特開平09−184224(JP,A)
【文献】
実開昭56−082105(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00−13/30
E04B 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面がそれぞれ突き合わせられる複数の下張りボードと、
前記下張りボードに重ねて固定される複数の上張りボードと、
前記上張りボードに貼り付けられる内装化粧材と、
互いに隣り合う前記上張りボードの間に形成された目地間隙に挿入され、両側の前記上張りボードに貼り付けられている前記内装化粧材の側端縁をそれぞれ固定する2つに分割された目地部材と、
前記上張りボードの間の前記目地間隙と重なる位置であり、且つ、前記下張りボードの壁内側に重ねて設けられる目地裏ボードと、
を備えることを特徴とする壁面構造。
【請求項2】
前記目地間隙の両側にそれぞれ設けられる一対の下地スタッドをさらに備え、
前記目地間隙に重なる位置に、隣接する前記下張りボードの側面同士の突き合わせ部が配置され、
前記上張りボード及び前記下張りボードは前記下地スタッドの壁外側の面に固定されるとともに、
前記目地裏ボードは、前記上張りボード及び前記下張りボードと独立して、前記下地スタッドの間に固定されることを特徴とする請求項1に記載の壁面構造。
【請求項3】
前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、前記壁面構造に設けられる開口部の側縁の上方及び/又は下方に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面構造。
【請求項4】
前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、前記壁面構造に設けられる開口部の側縁から面内方向に500mm以内の位置に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面構造。
【請求項5】
前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、さらに、前記開口部が所定距離以上設けられない無開口壁面部の前記所定距離未満の均等間隔の位置にも設けられることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の壁面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装化粧材が貼り付けられる壁面構造に関し、特に建築物に加わる振動等によって内装化粧材に亀裂やシワが発生することを防止する壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内装の壁面構造として、隣り合う下地ボードの間に目地間隙を設けておき、この目地間隙に2つの分割体からなる長尺部材を挿入し、隣り合う下地ボード同士の相対的な変位を許容する壁面構造が提案されている(特許文献1)。この構造は、隣り合う下地ボードにそれぞれ貼り付けられている内装化粧材の側縁を異なる分割体に固定している。
【0003】
このように構成することで、内装化粧材同士の変位もこの目地間隙で吸収することができるようになり、建築物に加わる振動等によって内装化粧材に亀裂やシワが発生することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−228606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集合住宅の界壁や特定用途の建築物における防火上主要な間仕切壁には所定の耐火性能が要求されており、例えば下地ボードとなる石こうボードを2重に配置することでこの耐火性能を満たす場合がある。
【0006】
しかし、上述のように隣接する下地ボードの間に目地間隙を設ける場合、当該目地間隙を設けた部分の耐火性能が低下し、要求される耐火性能を満たさないおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、内装化粧材の亀裂やシワの発生を防止しつつ、要求される耐火性能を満たすことができる壁面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の壁面構造は、側面がそれぞれ突き合わせられる複数の下張りボードと、前記下張りボードに重ねて固定される複数の上張りボードと、前記上張りボードに貼り付けられる内装化粧材と、互いに隣り合う前記上張りボードの間に形成された目地間隙に挿入され、両側の前記上張りボードに貼り付けられている前記内装化粧材の側端縁をそれぞれ固定する2つに分割された目地部材と、前記上張りボードの間の前記目地間隙と重なる位置であり、且つ、前記下張りボードの壁内側に重ねて設けられる目地裏ボードと、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の壁面構造は、前記目地間隙の両側にそれぞれ設けられる一対の下地スタッドをさらに備え、前記目地間隙に重なる位置に、隣接する前記下張りボードの側面同士の突き合わせ部が配置され、前記上張りボード及び前記下張りボードは前記下地スタッドの壁外側の面に固定されるとともに、
前記目地裏ボードは、前記上張りボード及び前記下張りボードと独立して、前記下地スタッドの間に固定されることを特徴としている。
【0010】
本発明の壁面構造は、前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、前記壁面構造に設けられる開口部の側縁の上方及び/又は下方に形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の壁面構造は、前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、前記壁面構造に設けられる開口部の側縁から面内方向に500mm以内の位置に設けられることを特徴としている。
【0012】
本発明の壁面構造は、前記目地部材が挿入される前記目地間隙は、さらに、前記開口部が所定距離以上設けられない無開口壁面部の前記所定距離未満の均等間隔の位置にも設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の壁面構造によると、下張りボードと上張りボードとが重ねて配置されており、互いに隣り合う前記上張りボードの間に形成された目地間隙に2つに分割された目地部材が挿入されており、当該目地部材がその両側の上張りボードに貼り付けられている内装化粧材の側端縁をそれぞれ固定しているので、隣り合う上張りボード同士が相互に変位することによって生じる内装化粧材同士の変位を目地間隙で吸収することができ、建築物に加わる振動等によって内装化粧材に亀裂やシワが発生することを抑制することができる。そして、目地間隙の壁内側には下張りボード及び目地裏ボードが2重に配置されることになるので、内装化粧材の下地となる板材に要求される性能を満たすことができる。
【0014】
本発明の壁面構造によると、下張りボードはその突き合わせ部が目地間隙に重なる位置に配置されるので、上張りボード及び下張りボードに加わる振動は目地間隙の位置で吸収することができる。そして、目地裏ボードは上張りボード及び下張りボードと独立して下地スタッドの間に固定されているので、上張りボード同士又は下張りボード同士の変位に追従することが無く、目地裏ボードに過度の荷重が加わることを抑制できる。
【0015】
本発明の壁面構造によると、当該壁面構造に設けられる開口部の側縁は壁面構造を構成する上張りボード及び下張りボードの断面が小さくなる部分であるので、壁面構造に加わる荷重が集中する箇所である。また、開口部は建具の開閉などで衝撃が加わりやすい箇所でもある。したがって、開口部の側縁は内装化粧材の亀裂やシワが発生しやすい箇所となるので、開口部の上方及び/又は下方に目地間隙を設けて、上張りボード及び内装化粧材の変位を吸収することで、内装化粧材の亀裂やシワの発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明の壁面構造によると、上述のように壁面構造に加わる荷重が集中しやすい箇所である開口部の側縁から面内方向に500mm以内の位置に目地間隙を設けて上張りボード及び内装化粧材の変位を吸収することで、開口部の付近に荷重が集中することを抑制することができ、内装化粧材の亀裂やシワの発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の壁面構造によると、上述のように開口部の付近に目地間隙を設けて壁面構造に加わる荷重を吸収しているが、このような開口部が所定距離以上設けられない無開口壁面部にも所定距離未満の均等間隔で目地間隙を設けることで、当該無開口壁面部における内装化粧材の亀裂やシワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】壁面構造の全体構成を説明する断面図及び拡大図
【
図4】下地スタッドに固定金具を固定した状態を説明する斜視図。
【
図5】一対の下地スタッドの間に目地裏ボードを固定した状態を説明する斜視図。
【
図6】一対の下地スタッドの間に目地裏ボードを固定した状態を説明する断面図。
【
図7】下地スタッドに下張りボードを固定した状態を説明する斜視図。
【
図8】下地スタッドに上張りボードを固定した状態を説明する斜視図。
【
図9】下地スタッドに上張りボードを固定した状態を説明する断面図。
【
図10】目地間隙に目地部材を挿入した状態を説明する斜視図。
【
図11】目地間隙を形成する位置を説明する一部省略間取り図。
【
図12】開口部の近辺に目地間隙を形成する状態を説明する正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る壁面構造1の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本実施形態の壁面構造1は屋内空間を仕切る界壁、間仕切壁、又は防火区画の壁面構造1であって、内装化粧材4の下地となる板材を2重に設けることで要求される耐火性能を満たす壁面構造1である。壁面構造1は、
図1及び
図2に示すように、側面がそれぞれ突き合わせられる複数の下張りボード2と、下張りボード2に重ねて固定される複数の上張りボード3と、上張りボード3に貼り付けられる内装化粧材4と、互いに隣り合う前記上張りボード3の間に形成された目地間隙5に挿入される目地部材6と、目地間隙5と重なる位置で、下張りボード2の壁内側に重ねて設けられる目地裏ボード7と、目地裏ボード7を固定する固定金具8と、上張りボード3、下張りボード2、及び目地裏ボード7を支持する下地スタッド9とを備えている。なお、本実施形態において、「壁内側」とは、壁面構造1の面外方向で壁の内部に向かう方向をいい、「壁外側」とは、壁面構造1の面外方向で壁の外部に向かう方向をいう。
【0020】
下張りボード2、上張りボード3、及び目地裏ボード7はそれぞれ同一厚さで同一性能の石こうボードである。これら下張りボード2、上張りボード3、及び目地裏ボード7は2重に配置した場合に要求される耐火性能を満たすことができるように構成されている。なお、下張りボード2、上張りボード3、及び目地裏ボード7は、石膏ボードに限定されるものではなく、耐火性能を満たすことのできる材料として認められた材料であればよい。また内装化粧材4は上張りボード3の壁外側の面にパテによって貼り付けられる内装クロスである。
【0021】
下張りボード2は、床面から天井裏又は小屋裏までの空間を仕切ることができる高さを有する平板である。下張りボード2の幅は例えば2500mm程度であるが、納まりに応じて切断して幅方向の長さを調節する。隣接する下張りボード2は互いの側面が当接するように隙間なく配置されている。上張りボード3は下張りボード2と同じ高さで下張りボード2と同じ幅に形成されており、納まりに応じて切断して幅方向の長さを調節する。上張りボード3は、所定のルールにしたがって、隣接する上張りボード3の間に目地間隙5を形成するとともに、目地間隙5が形成されない位置では上張りボード3同士の側面を当接させて隙間なく配置されている。目地間隙5は幅が13mmから14mmで上張りボード3の厚さ分の深さを有している。目地間隙5の壁内側には下張りボード2の突き合わせ部10が配置される。目地裏ボード7は下張りボード2及び上張りボード3と同じ高さで、幅が500mmほどの平板であり、両側の下地スタッド9の間に納まる。目地裏ボード7は目地間隙5の壁内側に重なる位置にのみ配置されており、他の部分には配置されていない。
【0022】
固定金具8は、目地裏ボード7を下地スタッド9に固定するための金具であり、平板をZ字状に折り曲げて形成されている。下地スタッド9は上下に配置される図示しない2本のランナーに固定されて床面から天井裏又は小屋裏にまで延びている。下地スタッド9は下張りボード2の壁内側で目地間隙5の両側にそれぞれ立設される一対の鋼製スタッドである。固定金具8はそれぞれの下地スタッド9に例えば500mmピッチで複数固定されている。固定金具8はそれぞれの下地スタッド9の壁外側の面に当接して固定される固定部11と、固定部11の側縁から隣接する下地スタッド9に対向するように壁内側に向かって延びる連結部12と、連結部12の壁内側の端縁から隣接する下地スタッド9側に向かって延びるボード受け部13とを有している。ボード受け部13は固定部11よりも目地裏ボード7の厚さ分、壁内側に配置されており、目地裏ボード7を一対の下地スタッド9の間に配置したときに、目地裏ボード7の壁内側の面をボード受け部13が受けることができる。
【0023】
目地部材6は、隣り合う上張りボートの間に形成した目地間隙5に挿入される長尺な樹脂製の可撓性材料から構成されている。目地部材6は、
図3に示すように、第一分割体14及び第二分割体15の2つの分割体に分離可能に形成されている。第一分割体14は、一方の上張りボード3に固定されるものであり、一方の上張りボード3の壁外側の面に当接する第一表板部16と、第一表板部16の端縁から上張りボード3の側面に沿って略垂直をなして延出する平板状の延出部17と、延出部17の壁内側の端部から第一表板部16と略平行に第一表板部16と逆方向に延びる裏板部18とを有している。
【0024】
また、第二分割体15は、他方の上張りボード3の壁外側の面に当接する第二表板部19と、第二表板部19の端縁から目地間隙5の一部を覆いつつ、目地間隙5に挿入されて裏板部18に当接する四角筒状の筒部20とを有している。裏板部18及び筒部20は互いに固定されておらず、第一分割体14及び第二分割体15は互いに相対移動可能となっている。第一分割体14の延出部17と、第二分割体15の筒部20との間には、隙間が設けられている。第一表板部16及び第二表板部19にはそれぞれ多数のパテ孔が形成されており、内装化粧材4を貼り付ける際にパテ孔にパテが入ることで、上張りボード3と目地部材6と内装化粧材4とが一体的に固定される。
【0025】
一方の上張りボード3の壁外側に貼付される内装化粧材4は、第一分割体14の第一表板部16に固定されて折れ曲がり、当該内装化粧材4の端縁が延出部17に貼り付いて延出部17と筒部20との間の隙間に挿入されている。また、他方の上張りボード3の壁外側に貼付される内装化粧材4は、第二分割体15の第二表板部19及び筒部20に固定されて折り曲がり、当該内装化粧材4の端縁が筒部20に固定されつつ延出部17と筒部20との間の隙間に挿入されている。
【0026】
以上のように構成される壁面構造1を施工する際には、まず、床面及び天井裏又は小屋裏にそれぞれ水平に配置される図示しないランナー材に下地スタッド9の上下端部をそれぞれ固定して、一対の下地スタッド9を立設する。そして、
図4に示すように、固定された一対の下地スタッド9に所定ピッチで固定金具8を配置し、当該固定金具8の固定部11を下地スタッド9に金具固定用ビス21で固定する。
【0027】
そして、次に、
図5及び
図6に示すように、目地裏ボード7を下地スタッド9の間に挿入し、固定金具8のボード受け部13に目地裏ボード固定用ビス22で固定する。目地裏ボード7は、一対の下地スタッド9の間に収まり、下地スタッド9の壁外側の面と目地裏ボード7の壁外側とがほぼ面一となるように配置される。そして、
図7に示すように、下張りボード2を下地スタッド9の壁外側の面に下張りボード固定用ビス23で固定する。下張りボード2は互いに隣接する下張りボード2の側面同士が当接して形成される突き合わせ部10が目地裏ボード7の幅方向の中心となるように配置される。
【0028】
そして、次に、
図8及び
図9に示すように上張りボード3を下張りボード2の壁外側の面に固定する。上張りボード3は、下張りボード2を貫通して下地スタッド9に螺合する上張りボード固定用ビス24で固定する。上張りボード3は、下張りボード2の突き合わせ部10の壁外側に目地間隙5が形成されるように配置される。このように上張りボード3は下張りボード2を貫通する上張りボード固定用ビス24によって下地スタッド9に固定されることで、上張りボード3と下張りボード2とは一体的に変位するが、目地裏ボード7は、こられ上張りボード及び下張りボード2とは独立して固定金具8を介して下地スタッド9に固定されるので、上張りボード3及び下張りボード2の変位に追従することがなく、目地裏ボード7に過度の荷重が加わることを抑制できる。
【0029】
そして、上張りボード3の間に形成された目地間隙5に
図8及び
図10に示すように、第一分割体14及び第二分割体15の2つの分割体からなる目地部材6を挿入する。まず、第一分割体14を第一表板部16と延出部17とが目地間隙5を挟んで隣り合う一方の上張りボード3の壁外側の面と目地間隙5側の面との角に当接するように配置して、裏板部18が目地間隙5内に配置されるように固定する。そして、第二分割体15を第二表板部19と筒部20とが他方の上張りボード3の壁外側の面と目地間隙5側の面との角に当接するように配置して、目地間隙5内で第一分割体14の裏板部18に第二分割体15の筒部20が当接するように配置する。そして、
図1及び
図2に示すように、内装化粧材4を上張りボード3の壁外側の面に貼り付ける。
【0030】
一方の上張りボード3の壁外側の面に貼り付けられる内装化粧材4は、その端部が第一表板部16に貼り付けられて、折り曲げられ、延出部17と筒部20との間で延出部17に貼り付けられる。また、他方の上張りボード3の壁外側の面に貼り付けられる内装化粧材4は、その端部が第二表板部19に貼り付けられて、延出部17と筒部20との間で筒部20に貼り付けられる。このようにして、目地間隙5を挟んで一方の上張りボートに貼り付けられる内装化粧材4と他方の上張りボード3に張り付けられる内装化粧材4とが互いに連結されていないので、この目地間隙5で内装化粧材4の変位を吸収することができ、内装化粧材4の亀裂やシワの発生を抑制することができる。そして、上張りボード3の間に形成される目地間隙5の壁内側には、下張りボード2及び目地裏ボード7が2重に配置されることになるので、壁面構造1に要求される耐火性能を低下させることなく、内装化粧材4及び上張りボード3の変位を吸収できる。
【0031】
以上のような目地部材6が挿入されて、内装化粧材4及び上張りボード3の変位を吸収する目地間隙5を設ける位置は、壁面構造1に設けられる開口部25の側縁の上方及び/又は下方であることが好ましい。例えば
図12(A)に示すように、開口部25がドアである場合には、当該ドアの側縁の上方に目地間隙5が形成されていることが好ましい。このような開口部25の上方又は下方は、ドアなどの建具の開閉によって衝撃が加わりやすく、また、壁面構造1を構成する上張りボード3及び下張りボード2の断面が小さくなる部分であるので、上張りボード3、下張りボード2、及び内装化粧材4に加わった荷重が集中しやすい箇所である。したがって、このような箇所に上張りボード3、下張りボード2、及び内装化粧材4の変位を吸収可能な目地間隙5を設けることで、内装化粧材4に亀裂やシワが発生することを防止できる。なお、
図12(A)の開口部25は床面から上方に所定範囲までが開くドアであるので、開口部25の側縁の上方にのみ目地間隙5が形成されているが、たとえが開口部25が屋内窓のような床面よりも高い位置に設けられる開口部25である場合には、開口部25の側縁の上方及び下方に目地間隙5が設けられることが好ましい。
【0032】
なお、目地間隙5が形成される位置は、これに限定されるものではなく、例えば
図12(B)に示すように、開口部25の側縁から壁面構造1の面内方向に500mm以内の位置に設けられるものであってもよい。すなわち、開口部25の側縁から500mm以内に目地間隙5が形成されていれば、目地間隙5で上張りボード3、下張りボード2、及び内装化粧材4の変位を吸収することで、開口部25側縁への過度な荷重の集中を防ぐことができ、内装化粧材4に亀裂やシワが発生することを防止できる。なお、
図12(B)では開口部25の側縁のうち一方の側縁の上方に目地間隙5が形成されるとともに、他方の側縁から300mmの位置に目地間隙5が形成されている。目地間隙5の位置はこれに限られず、開口部25の両方の側縁からそれぞれ500mm以内で開口部25から離間した位置に目地間隙5が設けられていてもよい。
【0033】
また、目地間隙5は上述のような開口部25に近い位置に設けるものに限られず、例えば
図11に示すように、開口部25が所定距離以上設けられない無開口壁面部26にも所定距離未満の均等間隔に設けられることが好ましい。例えば、所定距離は6mである。この場合、無開口壁面部26は、壁面構造1が6m以上形成されており、且つ、当該壁面構造1に6m以上開口部25が設けられていない箇所である。そして、無開口壁面部26には6m未満の等間隔で目地間隙5が形成される。すなわち、無開口壁面部26が6mである場合には中心線となる3mの位置に目地間隙5が形成される。また、無開口壁面部26が12mである場合には、6m未満となる等間隔である4mピッチで2本の目地間隙5が形成される。このように、開口部25が設けられていない箇所であっても所定距離以上の長い壁面構造1が設けられている位置では、上張りボード3の変位が大きくなって内装化粧材4の亀裂やシワが発生しやすくなるので、このような無開口壁面部26にも目地間隙5を設けて上張りボード3や内装化粧材4の変位を吸収することで、内装化粧材4の亀裂やシワの発生を抑制できる。なお、所定距離は6mに限定されるものではなく、内装化粧材4の亀裂やシワが発生する可能性と目地間隙5を形成するコストとを考慮しつつ適切な距離を設定すればよい。
【0034】
以上のように、本実施形態の壁面構造1によると、目地間隙5で上張りボード3及び内装化粧材4の変位を吸収して、内装化粧材4の亀裂やシワを抑制しつつ、目地間隙5の壁内側を下張りボード2及び目地裏ボード7で2重に構成することで、耐火性能の低下を防ぐことができる。
【0035】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る壁面構造1は、例えば、集合住宅の界壁などの耐火性能が要求される屋内壁の壁面構造1として好適である。
【符号の説明】
【0037】
1 壁面構造
2 下張りボード
3 上張りボード
4 内装化粧材
5 目地間隙
6 目地部材
7 目地裏ボード
25 開口部
26 無開口壁面部