特許第6687063号(P6687063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687063
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   F24F7/007 B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-131846(P2018-131846)
(22)【出願日】2018年7月11日
(65)【公開番号】特開2020-8250(P2020-8250A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松木 義孝
(72)【発明者】
【氏名】藤本 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 亮
(72)【発明者】
【氏名】塩山 一裕
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−31414(JP,A)
【文献】 特開2013−087969(JP,A)
【文献】 特開2018−096600(JP,A)
【文献】 特開2010−159905(JP,A)
【文献】 特開2013−168734(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0204551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の換気装置(20)と、
前記複数の換気装置(20)の中の所定の換気装置(20)に取り付けられるとともに、空気の状態を検出するセンサ(40,40a)と、
前記複数の換気装置(20)の中から、前記センサ(40,40a)を取り付ける対象である第1換気装置(20-o)と、該センサ(40,40a)の検出信号を共有させる対象である第2換気装置(20-s)とを設定する設定部(63)と、
前記センサ(40,40a)の検出信号を受信するとともに、前記設定部(63)に設定した前記第1換気装置(20-o)及び第2換気装置(20-s)の各制御装置(50)に前記検出信号を送信する送受信部(64)とを備え、
前記各制御装置(50)は、前記送受信部(64)から送信された前記検出信号に基づいて、対応する換気装置(20)をそれぞれ制御することを特徴とする換気システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の換気装置(20)の運転指令を前記各制御装置(50)に送信するリモコン(60)を備え、
前記設定部(63)及び前記送受信部(64)は、前記リモコン(60)に設けられることを特徴とする換気システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記リモコン(60)は、前記第1換気装置(20-o)をOFFさせ、前記第2換気装置(20-s)をONさせる運転指令を送信しないことを特徴とする換気システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記リモコン(60)は、
前記複数の換気装置(20)の全てをONさせる第1運転指令と、前記複数の換気装置(20)の全てをOFFさせる第2運転指令とを送信する一方、
前記複数の換気装置(20)の一部をONさせ、残りをOFFさせる運転指令を送信しないことを特徴とする換気システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
前記設定部(63)には、前記複数の換気装置(20)の中から、前記第1換気装置(20-o)及び前記第2換気装置(20-s)を変更可能に設定されることを特徴とする換気システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
前記第1換気装置(20-o)から前記送受信部(64)に、前記センサ(40,40a)の検出信号が受信されないときに、異常を示す信号を出力する異常判定部(65)を備えていることを特徴とする換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の換気を行う換気装置が知られている。
【0003】
特許文献1の換気装置は、給気ファンが配置される給気通路と、排気ファンが配置される排気通路とを備える。給気通路には、空気状態を検出するセンサ(例えば湿度センサ)が設けられる。給気ファン及び排気ファンが運転されると、室内空気が排気通路に吸い込まれると同時に室外空気が給気通路に吸い込まれる。これらの空気は、全熱交換器を流れる。全熱交換器では、室内空気と室外空気との間で、潜熱及び顕熱が交換する。全熱交換器を通過した室内空気は室外に排出される。全熱交換器を通過した室外空気は室内に供給される。
【0004】
特許文献1の換気装置では、制御部が、給気ファン及び排気ファンを制御する。例えば制御部は、湿度センサの検出信号に基づいて、給気ファン及び排気ファンの発停の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−143593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示のような換気装置を複数台設け、換気システムを構成することが考えられる。この場合、複数の換気装置毎にそれぞれセンサを設けると、センサの数量が多くなってしまう。
【0007】
本開示の目的は、換気システムのセンサの数量を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、
複数の換気装置(20)と、
前記複数の換気装置(20)の中の所定の換気装置(20)に取り付けられるとともに、空気の状態を検出するセンサ(40,40a)と、
前記複数の換気装置(20)の中から、前記センサ(40,40a)を取り付ける対象である第1換気装置(20-o)と、該センサ(40,40a)の検出信号を共有させる対象である第2換気装置(20-s)とを設定する設定部(63)と、
前記センサ(40,40a)の検出信号を受信するとともに、前記設定部(63)に設定した前記第1換気装置(20-o)及び第2換気装置(20-s)の各制御装置(50)に前記検出信号を送信する送受信部(64)とを備え、
前記各制御装置(50)は、前記送受信部(64)から送信された前記検出信号に基づいて、対応する換気装置(20)をそれぞれ制御することを特徴とする換気システムである。
【0009】
第1の態様では、設定部(63)に第1換気装置(20-o)及び第2換気装置(20-s)が設定される。第1換気装置(20-o)は、空気の状態を検出するセンサ(40,40a)が取り付ける対象となる換気装置である。第2換気装置(20-s)は、第1換気装置(20-o)のセンサ(40,40a)の検出信号を共有させる対象となる換気装置である。送受信部(64)は、第1換気装置(20-o)のセンサ(40,40a)の検出信号を受信し、この検出信号を第1換気装置(20-o)及び第2換気装置(20-s)の各制御装置(50)に送信する。これにより、第1換気装置(20-o)の制御装置(50)、及び第2換気装置(20-s)の制御装置(50)は、第1換気装置(20-o)のセンサ(40,40a)で検出した検出信号に基づいて各換気装置(20)を制御する。つまり、第1換気装置(20-o)に取り付けたセンサ(40,40a)が、第1換気装置(20-o)と第2換気装置(20-s)の双方に制御に利用される。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、
前記複数の換気装置(20)の運転指令を前記各制御装置(50)に送信するリモコン(60)を備え、
前記設定部(63)及び前記送受信部(64)は、前記リモコン(60)に設けられることを特徴とする換気システムである。
【0011】
第2の態様では、各換気装置(20)に運転指令を送信するためのリモコン(60)に、送受信部(64)が設けられる。このため、この運転指令を送るための信号回線(有線及び無線を含む)を、センサ(40,40a)の検出信号を送るための回線として利用できる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様において、
前記リモコン(60)は、前記第1換気装置(20-o)をOFFさせ、前記第2換気装置(20-s)をONさせる運転指令を送信しないことを特徴とする換気システムである。
【0013】
第3の態様では、リモコン(60)の操作により、一部の換気装置(20)をONさせ、残りをOFFさせる運転指令が送信されない。このため、センサ(40,40a)が取り付けられた第1換気装置(20-o)が停止状態のときに、このセンサ(40,40a)の検出信号に基づいて第2換気装置(20-s)の制御が行われることを回避できる。
【0014】
第4の態様は、第3の態様において、
前記リモコン(60)は、
前記複数の換気装置(20)の全てをONさせる第1運転指令と、前記複数の換気装置(20)の全てをOFFさせる第2運転指令とを送信する一方、
前記複数の換気装置(20)の一部をONさせ、残りをOFFさせる運転指令を送信しないことを特徴とする換気システムである。
【0015】
第4の態様では、センサ(40,40a)が取り付けられる第1換気装置(20-o)をOFFさせつつ、第2換気装置(20-s)をONさせる運転を行わない。このため、停止状態の第1換気装置(20-o)のセンサ(40,40a)の検出信号に基づいて、第2換気装置(20-s)が制御されてしまうことを回避できる。
【0016】
第5の態様は、第1乃至4の態様のいずれか1つにおいて、
前記設定部(63)には、前記複数の換気装置(20)の中から、前記第1換気装置(20-o)及び前記第2換気装置(20-s)を変更可能に設定されることを特徴とする換気システムである。
【0017】
第5の態様では、センサ(40,40a)を取り付ける換気装置(20)が変更された場合に、これに応じて、複数の換気装置(20)の中から第1換気装置(20-o)及び第2換気装置(20-s)を適宜変更できる。
【0018】
第6の態様は、第1乃至5の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1換気装置(20-o)から前記送受信部(64)に、前記センサ(40,40a)の検出信号が受信されないときに、異常を示す信号を出力する異常判定部(65)を備えていることを特徴とする換気システムである。
【0019】
第6の態様では、第1換気装置(20-o)にセンサ(40,40a)が取り付けられていない、あるいはセンサ(40,40a)の配線不良などに起因して、該センサ(40,40a)の検出信号が送受信部(64)に受信されない場合、異常判定部(65)が異常を示す信号を出力する。これにより、ユーザ等は、このようなセンサ(40,40a)の不具合を速やかに把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係る換気システムの概略の全体構成図である。
図2図2は、換気装置の概略構成図である。
図3図3は、換気システムの制御装置及びリモコンのブロック図である。
図4図4は、換気システムに二酸化炭素濃度センサを取り付けた第1の例と、該第1の例に対応する設定部の設定例を示す構成図である。
図5図5は、換気運転の制御フローチャートである。
図6図6は、換気システムに二酸化炭素濃度センサを取り付けた第2の例と、該第2の例に対応する設定部の設定例を示す構成図である。
図7図7は、換気システムに二酸化炭素濃度センサを取り付けた第3の例と、該第3の例に対応する設定部の設定例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
《実施形態》
実施形態に係る換気システム(10)は、複数の換気ユニット(U)を備えている。複数の換気ユニット(U)は、同一の室内空間を換気対象としている。換気ユニット(U)は、例えば天井裏に配置される。図1に模式的に示すように、本例の換気システム(10)には、4台の換気ユニット(U)が設けられている。換気ユニット(U)の数量はこれに限らず、2台以上であれば如何なる数量であってもよい。各換気ユニット(U)は、換気装置(20)と制御装置(50)とをそれぞれ1つずつ備えている。
【0023】
〈換気装置〉
各換気装置(20)の概略構成について図2を参照しながら説明する。各換気装置(20)は、ケーシング(21)、給気ファン(31)、排気ファン(32)、全熱交換器(33)、及び二酸化炭素濃度センサ(40)をそれぞれ備えている。
【0024】
ケーシング(21)は、中空の箱状に形成される。ケーシング(21)には、外気口(22)、排気口(23)、内気口(24)、及び給気口(25)が形成される。外気口(22)及び排気口(23)のそれぞれは、ダクトを介して室外空間と連通している。内気口(24)及び給気口(25)のぞれぞれは、ダクトを介して室内空間と連通している。
【0025】
ケーシング(21)の内部には、給気通路(26)と排気通路(27)とが形成される。給気通路(26)は、外気口(22)から給気口(25)に亘って形成される。排気通路(27)は、内気口(24)から排気口(23)に亘って形成される。給気通路(26)には給気ファン(31)が配置され、排気通路(27)には排気ファン(32)が配置される。
【0026】
給気ファン(31)及び排気ファン(32)は、例えばシロッコファンで構成される。給気ファン(31)及び排気ファン(32)は、各々の風量が可変に構成される。具体的には、本例の給気ファン(31)及び排気ファン(32)の風量は、ファンタップに応じて多段階に切換可能である。
【0027】
全熱交換器(33)は、給気通路(26)及び排気通路(27)に跨がるように配置される。全熱交換器(33)は、給気通路(26)に接続する第1通路(34)と、排気通路(27)に接続する第2通路(35)とを有する。全熱交換器(33)は、第1通路(34)を流れる第1空気と、第2通路(35)を流れる第2空気との間で、顕熱及び潜熱を交換させる。
【0028】
二酸化炭素濃度センサ(40)は、室内空気の二酸化炭素濃度を検出する。つまり、二酸化炭素濃度センサ(40)は、空気の状態(ここでは二酸化炭素濃度)を検出するセンサを構成する。二酸化炭素濃度センサ(40)は、排気通路(27)における全熱交換器(33)の上流側に配置される。
【0029】
〈制御装置〉
制御装置(50)は、例えば制御基板と、制御基板に搭載されたプロセッサ(例えばマイクロコントローラ)と、該プロセッサを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイス(例えば半導体メモリ)とを有する。
【0030】
図3に示すように、制御装置(50)は、給気ファン(31)及び排気ファン(32)を制御するためのファン制御部(51)と、二酸化炭素濃度センサ(40)が着脱可能に接続される接続端子(52)と、リモコン(60)側と信号の授受を行うための第1送受信部(53)とを備えている。
【0031】
ファン制御部(51)は、二酸化炭素濃度センサ(40)の検出信号に基づいて、給気ファン(31)及び排気ファン(32)を制御する。具体的に、ファン制御部(51)は、この検出信号に基づいて、給気ファン(31)及び排気ファン(32)のON/OFFや、風量を切り換えるための制御信号を、給気ファン(31)及び排気ファン(32)に出力する。
【0032】
接続端子(52)には、二酸化炭素濃度センサ(40)の信号配線が接続される。本実施形態の換気システム(10)では、基本的に、全ての接続端子(52)に二酸化炭素濃度センサ(40)が接続されない。つまり、換気システム(10)では、1つの二酸化炭素濃度センサ(40)を、複数の換気装置(20)が共用する。
【0033】
各第1送受信部(53)は、共有元換気装置(20-o)の二酸化炭素濃度センサ(40)で検出した検出信号を、リモコン(60)へ送信する。ここで、共有元換気装置(20-o)は、二酸化炭素濃度センサ(40)が取り付けられる対象となる第1換気装置である。リモコン(60)は、受信した検出信号を、共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)の各第1送受信部(53)へ送信する。ここで、共有先換気装置(20-s)は、検出信号を共有する対象となる第2換気装置である。この結果、共有元換気装置(20-o)及び共用先換気装置(20-s)の第1送受信部(53)には、共有元換気装置(20-o)の検出信号が間接的に送られることになる(詳細は後述する)。
【0034】
〈リモコン〉
図1に示すように、リモコン(60)は、全ての換気ユニット(U)に共用される。リモコン(60)は、各換気装置(20)に運転指令を送信する。図3に示すように、リモコン(60)は、表示部(61)、操作部(62)、設定部(63)、第2送受信部(64)、及び異常判定部(65)を備える。
【0035】
表示部(61)は、例えば液晶モニタで構成される。操作部(62)は、カーソルキーやボタンなどで構成される。ユーザや施工業者などは、操作部(62)を操作することで、各種の設定を切り換えたり、各換気ユニット(U)に運転指令を出力したりできる。
【0036】
本実施形態の設定部(63)は、全ての換気装置(20)の中から、共有元換気装置(20-o)と共用先換気装置(20-s)とが設定される。更に、設定部(63)では、全ての換気装置(20)の中から二酸化炭素濃度センサ(40)の共有元、及び共有先のいずれの対象にしない単独換気装置(20-i)を設定できる。単独換気装置(20-i)は、自己に接続された二酸化炭素濃度センサ(40)に基づき、自己の換気装置(20)を単独で制御する第3換気装置である。設定部(63)では、全ての換気装置(20)の中から、二酸化炭素濃度センサ(40)の取り付け状態に応じて、共有元換気装置(20-o)、共用先換気装置(20-s)、及び単独換気装置(20-i)を任意に変更しながら設定できる。
【0037】
第2送受信部(64)には、全ての換気装置(20)の第1送受信部(53)から、二酸化炭素濃度センサ(40)の検出信号が送られる。厳密には、第2送受信部(64)には、共有元換気装置(20-o)の第1送受信部(53)からの検出信号が受信される。一方、第2送受信部(64)は、共用先換気装置(20-s)からの検出信号を受信しようとするが、この検出信号の値はゼロとなる。共用先換気装置(20-s)には、二酸化炭素濃度センサ(40)が取り付けられておらず、共用先換気装置(20-s)の検出信号は実質的にゼロとなるためである。第2送受信部(64)は、共有元換気装置(20-o)であるか、共用先換気装置(20-s)であるかを問わず、全ての換気装置(20)からの検出信号を受信しようとする。
【0038】
第2送受信部(64)は、このようにして受信した検出信号のうち、共有元換気装置(20-o)から受信した検出信号を、共有元換気装置(20-o)と共用先換気装置(20-s)とへ送信する。これにより、共有元換気装置(20-o)及び共用先換気装置(20-s)は、共有元換気装置(20-o)に接続される二酸化炭素濃度センサ(40)の検出信号に基づいて制御される(詳細は後述する)。
【0039】
異常判定部(65)は、共有元換気装置(20-o)に接続される二酸化炭素濃度センサ(40)の異常を判定する。つまり、異常判定部(65)は、共有元換気装置(20-o)に設定された換気装置(20)の制御装置(50)から、適切な検出信号が第2送受信部(64)に受信されない場合に、異常を示す信号を出力する。本例のリモコン(60)では、この異常信号に同期して表示部(61)に異常を示すサインが表示される。
【0040】
−換気運転−
換気装置(20)の基本的な運転動作について、図2を参照しながら説明する。換気装置(20)の換気運転時には、給気ファン(31)及び排気ファン(32)が運転状態となる。この結果、室外空気(OA)が外気口(22)を通じて給気通路(26)に取り込まれると同時に、室内空気(RA)が内気口(24)を通じて排気通路(27)に取り込まれる。
【0041】
給気通路(26)を流れる室外空気は、全熱交換器(33)の第1通路(34)を流れる。排気通路(27)を流れる室内空気は、全熱交換器(33)の第2通路(35)を流れる。全熱交換器(33)では、第1通路(34)を流れる空気と、第2通路(35)を流れる空気との間で、顕熱及び潜熱が交換される。具体的には、例えば夏季であれば、比較的高温、高湿の室外空気(第1空気)の顕熱及び潜熱が、比較的低温、低湿の室内空気(第2空気)に付与される。例えば冬季であれば、比較的高温、高湿の室内空気(第2空気)の顕熱及び潜熱が、比較的低温、低湿の室外空気(第1空気)に付与される。
【0042】
全熱交換器(33)を通過した第1空気は、給気口(25)を通じて、供給空気(SA)として室内空間へ供給される。全熱交換器(33)を通過した第2空気は、排気口(23)を通じて、排出空気(EA)として室外空間へ排出される。
【0043】
このような換気運転では、二酸化炭素濃度センサ(40)で検出した二酸化炭素濃度に応じて、給気ファン(31)及び排気ファン(32)の風量が適宜調整される。具体的には、例えば二酸化炭素濃度センサ(40)で検出した二酸化炭素濃度が所定値より低い場合には、制御装置(50)は、給気ファン(31)及び排気ファン(32)の風量を増大させる。この結果、室内空間の換気量が増大する。また、例えば二酸化炭素濃度センサ(40)で検出した二酸化炭素濃度が所定値より高い場合には、制御装置(50)は、給気ファン(31)及び排気ファン(32)の風量を低下させる。この結果、給気ファン(31)及び排気ファン(32)の動力を低減できる。
【0044】
〈センサの取り付け、及び設定部の設定例〉
換気システム(10)では、1つの二酸化炭素濃度センサ(40)を、複数の換気装置(20)の制御に利用できる。まず、二酸化炭素濃度センサ(40)の取り付け、及び設定部(63)の設定例について、具体例を挙げながら説明する。
【0045】
図4に示す例の換気システム(10)には、4台の換気装置(20)が設けられる。4台の換気装置(20)は、換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)によって構成される。二酸化炭素濃度センサ(40)は、換気装置NO.1(N1)に取り付けられる。具体的には、二酸化炭素濃度センサ(40)は、換気装置NO.1(N1)に対応する制御装置(50)の接続端子(52)に接続される。残りの換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)には、二酸化炭素濃度センサ(40)は取り付けられない。つまり、換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)に対応する制御装置(50)の各接続端子(52)には、二酸化炭素濃度センサ(40)は接続されない。
【0046】
施工業者やユーザ等は、二酸化炭素濃度センサ(40)の取り付け状態に応じて、設定部(63)の設定を行う。設定部(63)の設定は、リモコン(60)の操作部(62)を用いて行われる。
【0047】
本例では、換気装置NO.1(N1)に二酸化炭素濃度センサ(40)が取り付けられるため、換気装置NO.1(N1)を「共有元」(共有元換気装置(20-o))に設定する。本例では、換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)を「共有先」(共有先換気装置(20-s))に設定する。この結果、換気装置NO.1(N1)の二酸化炭素濃度センサ(40)の検出信号を、全ての換気装置(20)の制御に共用できる。
【0048】
〈制御動作〉
このような換気装置(20)の制御動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0049】
換気運転が開始されると、二酸化炭素濃度センサ(40)が室内空気の二酸化炭素濃度を検出する。本例では、換気装置NO.1(N1)の二酸化炭素濃度センサ(40)により、二酸化炭素濃度を示す検出信号(d1)が検出される。
【0050】
次いでステップST2では、全ての制御装置(50)の第1送受信部(53)からリモコン(60)の第2送受信部(64)に検出信号が送信される(ステップST1)。本例では、換気装置NO.1(N1)の検出信号が、共有元となる検出信号(d1)となる。一方、他の換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)の検出信号は実質的にゼロとなる。
【0051】
次いでステップST3では、設定部(63)で共有元に設定された換気装置(20)(即ち、換気装置NO.1(N1))に対応する検出信号(d1)を、リモコン(60)の第2送受信部(64)から、各換気装置(20)へ送信する。具体的には、第2送受信部(64)は、検出信号(d1)を、共有元換気装置(20-o)である換気装置NO.1(N1)に送信する。同時に、第2送受信部(64)は、検出信号(d1)を、共有先換気装置(20-s)である換気装置NO.2〜NO.4(N2,N3,N4)の各第1送受信部(53)にも送信する。これにより、各制御装置(50)の検出信号が、第2送受信部(64)から送信された検出信号(d1)に書き換えられる。
【0052】
各制御装置(50)は、このようにして書き換えられた検出信号(d1)に基づき、対応する換気装置(20)を制御する(ステップST4)。具体的には、換気装置NO.1(N1)に対応する制御装置(50)は、検出信号(d1)に基づき換気装置NO.1(N1)の給気ファン(31)及び排気ファン(32)を制御する。換気装置NO.2〜NO.4(N2,N3,N4)の各制御装置(50)は、検出信号(d1)に基づき換気装置NO.2〜NO.4(N2,N3,N4)の給気ファン(31)及び排気ファン(32)を制御する。ここで、これらの換気装置(20)は、同一の室内空間を対象とするため、二酸化炭素濃度センサ(40)を共用しても、適切な換気運転を行うことができる。
【0053】
本例では、ステップST1〜ステップST4の制御が繰り返し行われる。そして、ステップST5において所定の終了条件が成立すると、換気運転が終了する。
【0054】
〈異常表示〉
図4に示す例において、例えば換気装置NO.1(N1)の制御装置(50)に二酸化炭素濃度センサ(40)が正しく接続されなかったとする。この場合、第2送受信部(64)には、共有元換気装置(20-o)である換気装置NO.1(N1)の検出信号(d1)が正しく受信されない。この場合、異常判定部(65)は異常を示す信号を出力する。表示部(61)は、この信号を受けて異常を示すサインを表示する。この結果、施工業者やユーザ等は、二酸化炭素濃度センサ(40)の接続ミス、接続不良、故障等を速やかに把握できる。
【0055】
〈他の設定例1〉
図6の例では、二酸化炭素濃度センサ(40)が換気装置NO.2(N2)に取り付けられる。一方、二酸化炭素濃度センサ(40)は、他の換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)には取り付けられない。この場合、設定部(63)では、換気装置NO.2(N2)を「共有元」に設定し、換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)を「共有先」に設定する。この場合、換気装置NO.2(N2)の検出信号(d2)が、リモコン(60)の第2送受信部(64)に送信される。第2送受信部(64)は、この検出信号(d2)を、共有元換気装置(20-o)である換気装置NO.2(N2)と、共有先換気装置(20-s)である換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.3(N3)、及び換気装置NO.4(N4)とに送信する。これにより、検出信号(d2)が換気装置NO.1〜NO.4(N1,N2,N3,N4)の制御に共用される。
【0056】
〈他の設定例2〉
図7の例では、第1二酸化炭素濃度センサ(40a)が換気装置NO.1(N1)に取り付けられ、第2二酸化炭素濃度センサ(40b)が換気装置NO.3(N3)に取り付けられる。本例の設定部(63)では、第1二酸化炭素濃度センサ(40a)の検出信号を、換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.2(N2)、及び換気装置NO.4(N4)で共用する。一方、第2二酸化炭素濃度センサ(40b)の検出信号は、単独換気装置(20-i)に設定される換気装置NO.3(N3)のみに利用される。
【0057】
つまり、設定部(63)では、換気装置NO.1(N1)を「共有元」(共有元換気装置(20-o))に設定し、換気装置NO.2(N2)及び換気装置NO.4(N4)を「共有先」(共有先換気装置(20-s))に設定する。換気装置NO.3(N3)は、「共有元」及び「共有先」に属さない「単独」(単独換気装置(20-i))に設定する。
【0058】
この場合、第2送受信部(64)は、共有元となる換気装置NO.1(N1)の検出信号(d1)を、共有元となる換気装置NO.1(N1)、及び共有先となる換気装置NO.2(N2)、換気装置NO.4(N4)に送信する。従って、換気装置NO.1(N1)、換気装置NO.2(N2)、及び換気装置NO.4(N4)は、検出信号(d1)に基づいて制御される。
【0059】
第2送受信部(64)には、換気装置NO.3(N3)の検出信号(d3)も受信される。第2送受信部(64)は、「単独」と設定された換気装置NO.3(N3)に対応する検出信号(d3)を、この換気装置NO.3(N3)の第1送受信部(53)に送信する。換気装置NO.3(N3)に対応する制御装置(50)は、このようにして書き換えられた検出信号(d3)に基づいて換気装置NO.3(N3)を制御する。これにより、「単独」に設定された換気装置NO.3(N3)は、自己に接続された第2二酸化炭素濃度センサ(40b)の検出信号(d3)に基づいて制御される。
【0060】
〈各換気装置のON/OFFについて〉
本実施形態の換気システム(10)では、全ての換気装置(20)をONさせる動作と、全ての換気装置(20)をOFFさせる動作とが切り換えられる。つまり、リモコン(60)の第2送受信部(64)からは、全ての換気装置(20)をONさせる運転指令と、全ての換気装置(20)をOFFさせる運転指令とが、各換気ユニット(U)の制御装置(50)に送信される。一方、リモコン(60)は、全ての換気装置(20)の中の一部をONさせ、残りをOFFさせる運転指令を送信しない。
【0061】
仮に、二酸化炭素濃度センサ(40)が取り付けられる共有元換気装置(20-o)がOFF状態となり、検出信号を共有する共有先換気装置(20-s)がON状態となる運転が行われると、共有先換気装置(20-s)の制御装置(50)に正しい検出信号が送られない。この結果、共有先換気装置(20-s)を適切に制御できなくなる。これに対し、全ての換気装置(20)の中の一部をONさせ、残りをOFFさせる運転を禁止することで、このような不具合を確実に回避できる。
【0062】
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、共有元換気装置(20-o)に対応する二酸化炭素濃度センサ(40)の検出信号を、第2送受信部(64)から共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)の各制御装置(50)に送信する。そして、共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)は、この検出信号に基づいて、対応する換気装置(20)を制御する。このため、本実施形態によれば、全ての換気装置(20)にそれぞれ二酸化炭素濃度センサ(40)を設けずとも、各換気装置(20)を制御できる。この結果、二酸化炭素濃度センサ(40)の数量を削減できる。
【0063】
上記実施形態によれば、リモコン(60)の第2送受信部(64)により、検出信号の授受を行うようにしている。このため、リモコン(60)の運転指令を送信する回線と、検出信号の授受を行うための回線とを共用でき、部品点数を削減できる。
【0064】
上記実施形態によれば、リモコン(60)に、共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)を設定するための設定部(63)を設けている。このため、リモコン(60)の操作部(62)を操作することで、これらの設定を簡単に行うことができる。
【0065】
設定部(63)では、共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)の設定を任意に変更できる。このため、例えば室内空間のレイアウトの変更などに起因して二酸化炭素濃度センサ(40)を取り付ける換気装置(20)を変更した場合にも、これに対応して共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)を簡単に変更できる。
【0066】
上記実施形態によれば、設定部(63)において、二酸化炭素濃度センサ(40)の共有元、及び共有先に属さない単独換気装置(20-i)を設定できる。この結果、自己の二酸化炭素濃度センサ(40)に基づいて換気装置(20)を制御することもできる。
【0067】
上記実施形態によれば、全ての換気装置(20)の中の一部をONさせ、残りをOFFさせる運転が禁止されている。このため、共有元換気装置(20-o)が停止状態となり、且つ共有先換気装置(20-s)が運転状態になることに起因して、共有先換気装置(20-s)を適切に制御できなくなる不具合を確実に回避できる。
【0068】
〈変形例〉
上記実施形態において、リモコン(60)は、共有元換気装置(20-o)をOFFさせ、且つ共有先換気装置(20-s)をONさせる運転指令を送信しないように構成されてもよい。例えば、リモコン(60)の設定部(63)に共有元換気装置(20-o)及び共有先換気装置(20-s)が設定された場合、この設定に応じて、上記運転指令が禁止される。具体的には、リモコン(60)では、共有元換気装置(20-o)をOFF、共有先換気装置(20-s)をONさせる運転指令が禁止される一方、共有元換気装置(20-o)をON、共有先換気装置(20-s)をOFFさせる運転指令は許容される。このようにしても、共有元換気装置(20-o)が停止状態となり、且つ共有先換気装置(20-s)が運転状態になることに起因して、共有先換気装置(20-s)を適切に制御できなくなる不具合を確実に回避できる。また、共有元換気装置(20-o)だけをONさせながら、該共有元換気装置(20-o)の二酸化炭素濃度センサ(40)に基づいて換気運転を行うことができる。
【0069】
《その他の実施形態》
上記実施形態及び変形例は、以下のような構成としてもよい。
【0070】
センサは、空気状態を検出するものであれば、二酸化炭素濃度センサ(40)以外であってもよい。例えばセンサは、空気の温度を検出する温度センサ、空気の湿度を検出する湿度センサ、空気のにおいを検出するにおいセンサ、空気中の他の物質の濃度を検出する濃度センサなどであってもよい。また、センサは、室外空気の空気状態を検出するものであってもよい。
【0071】
第1送受信部(53)は、信号を受信する部分と、信号を送信する部分とが物理的に別体に構成されていてもよい。この場合には、これらの部分を総称して第1送受信部(53)とする。同様に、第2送受信部(64)は、信号を受信する部分と、信号を送信する部分とが物理的に別体に構成されていてもよい。この場合には、これらの部分を総称して第2送受信部とする。
【0072】
第2送受信部(64)及び設定部(63)のそれぞれは、必ずしもリモコン(60)に設けられてなくてもよい。
【0073】
異常判定部(65)が異常を示す信号を出力した場合、メンテナンス業者等に警報したり、発報したりしてもよい。
【0074】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本開示は、換気システムについて有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 換気システム
20 換気装置
40 二酸化炭素濃度センサ(センサ)
40a 第1二酸化炭素濃度センサ(センサ)
50 制御装置
60 リモコン
63 設定部
64 第2送受信部(送受信部)
65 異常判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7