(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、いわゆるCA(Controlled Atmosphere)輸送を行うために輸送用コンテナ(1)に設けられる。そして、庫内空気調節装置(30)は、輸送用コンテナ(1)内の空気の組成を、大気の組成と異なるように調節する。
【0028】
図1に示すように、収納庫を構成する輸送用コンテナ(1)は、コンテナ本体(2)と、コンテナ用冷凍機(10)とを備える。この輸送用コンテナ(1)は、庫内の温度管理か可能なリーファーコンテナ(reefer container)である。本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、コンテナ用冷凍機(10)に設置される。この輸送用コンテナ(1)は、空気中の酸素(O
2)を取り込んで二酸化炭素(CO
2)を放出する呼吸を行う植物を輸送するために用いられる。植物の例としては、バナナやアボカド等の果物、野菜、穀物、球根、生花等が挙げられる。
【0029】
コンテナ本体(2)は、細長い直方体形状の箱状に形成されている。コンテナ本体(2)は、一方の端面が開口し、この開口端を塞ぐようにコンテナ用冷凍機(10)が取り付けられる。コンテナ本体(2)の内部空間は、貨物(6)を収納するための荷室(5)を構成する。
【0030】
荷室(5)の底部には、貨物(6)を載せるための床板(3)が配置される。この床板(3)とコンテナ本体(2)の底板との間には、コンテナ用冷凍機(10)が吹き出した空気を流すための床下流路(4)が形成される。床下流路(4)は、コンテナ本体(2)の底板に沿ってコンテナ本体(2)の長手方向へ延びる流路である。床下流路(4)は、一端がコンテナ用冷凍機(10)の吹出口(27)に接続し、他端が床板(3)の上側の空間(即ち、貨物(6)が収容される空間)と連通する。
【0031】
−コンテナ用冷凍機−
図1に示すように、コンテナ用冷凍機(10)は、ケーシング(20)と、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)と、庫外ファン(16)と、庫内ファン(17)とを備える。
【0032】
ケーシング(20)は、庫外壁部(21)と、庫内壁部(22)と、背面板(24)と、区画板(25)とを備える。後述するように、このケーシング(20)には、冷媒回路(11)と、庫外ファン(16)と、庫内ファン(17)とが設けられる。
【0033】
庫外壁部(21)は、コンテナ本体(2)の開口端を覆うように配置される板状の部材である。庫外壁部(21)は、下部がコンテナ本体(2)の内側へ膨出している。庫内壁部(22)は、庫外壁部(21)に沿った形態の板状の部材である。庫内壁部(22)は、庫外壁部(21)におけるコンテナ本体(2)の内側の面を覆うように配置される。庫外壁部(21)と庫内壁部(22)の間の空間には、断熱材(23)が充填されている。
【0034】
ケーシング(20)は、その下部がコンテナ本体(2)の内側へ窪んだ形状となっている。ケーシング(20)の下部は、輸送用コンテナ(1)の外部空間と連通する庫外機器室(28)を形成する。この庫外機器室(28)には、庫外ファン(16)が配置される。
【0035】
背面板(24)は、概ね矩形の平板状の部材である。背面板(24)は、庫内壁部(22)よりもコンテナ本体(2)の内側に配置され、庫内壁部(22)との間に庫内空気流路(29)を形成する。この庫内空気流路(29)は、その上端がケーシング(20)の吸込口(26)を構成し、その下端がケーシング(20)の吹出口(27)を構成する。
【0036】
区画板(25)は、庫内空気流路(29)を上下に区画するように配置された板状の部材である。区画板(25)は、庫内空気流路(29)の上部に配置される。この区画板(25)によって、庫内空気流路(29)は、区画板(25)の上側の一次流路(29a)と、区画板(25)の下側の二次流路(29b)に区画される。一次流路(29a)は、吸込口(26)を介して荷室(5)と連通する。二次流路(29b)は、吹出口(27)を介して床下流路(4)と連通する。区画板(25)には、庫内ファン(17)が取り付けられる。庫内ファン(17)は、一次流路(29a)から吸い込んだ空気を二次流路(29b)へ吹き出すように配置される。
【0037】
図2に示すように、冷媒回路(11)は、圧縮機(12)と、凝縮器(13)と、膨張弁(14)と、蒸発器(15)とを配管で接続することによって形成された閉回路である。圧縮機(12)を作動させると、冷媒回路(11)を冷媒が循環し、蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
図1に示すように、凝縮器(13)は、庫外機器室(28)における庫外ファン(16)の吸込側に配置され、蒸発器(15)は、庫内空気流路(29)の二次流路(29b)に配置される。また、
図1では図示を省略するが、圧縮機(12)は、庫外機器室(28)に配置される。
【0038】
−庫内空気調節装置−
図1に示すように、庫内空気調節装置(30)は、本体ユニット(31)と、センサユニット(90)と、換気用排気管(100)と、制御器(110)とを備える。本体ユニット(31)は、コンテナ用冷凍機(10)の庫外機器室(28)に設置される。センサユニット(90)は、輸送用コンテナ(1)の庫内空気流路(29)に設置される。換気用排気管(100)は、輸送用コンテナ(1)の庫内空気流路(29)と庫外機器室(28)に亘って設置される。制御器(110)は、本体ユニット(31)に設けられて、庫内空気調節装置(30)の構成機器を制御する。センサユニット(90)、換気用排気管(100)、及び制御器(110)の詳細は、後述する。
【0039】
図3に示すように、庫内空気調節装置(30)の本体ユニット(31)は、第1組成調節部(40)と、第2組成調節部(60)と、ユニットケース(32)とを備える。ユニットケース(32)は、箱状の密閉容器である。第1組成調節部(40)と、第2組成調節部(60)とは、このユニットケース(32)の内部空間に配置される。第1組成調節部(40)及び第2組成調節部(60)の詳細は、後述する。
【0040】
また、庫内空気調節装置(30)は、供給管(120)と、庫内側吸入管(75)と、測定用配管(125)とを備える。供給管(120)、庫内側吸入管(75)、及び測定用配管(125)は、本体ユニット(31)をコンテナ用冷凍機(10)の庫内空気流路(29)に接続するための配管である。
【0041】
供給管(120)は、第1組成調節部(40)及び第2組成調節部(60)から流出した空気を荷室(5)へ供給するための配管である。供給管(120)は、入口端が第1組成調節部(40)及び第2組成調節部(60)に接続され、出口端が庫内空気流路(29)の二次流路(29b)に開口する。
【0042】
庫内側吸入管(75)は、荷室(5)内の庫内空気を第2組成調節部(60)へ供給するための配管である。庫内側吸入管(75)は、入口端が庫内空気流路(29)の二次流路(29b)に開口し、出口端が後述する第2組成調節部(60)のポンプ本体(37)に接続される。なお、庫内空気流路(29)の二次流路(29b)において、庫内側吸入管(75)の入口端は、供給管(120)の出口端の上流側に配置される。
【0043】
測定用配管(125)は、供給管(120)を流れる空気をセンサユニット(90)へ供給するための配管である。測定用配管(125)は、入口端が供給管(120)に接続され、出口端がセンサユニット(90)に接続される。また、測定用配管(125)には、電磁弁からなる第2測定用開閉弁(126)が設けられる。この第2測定用開閉弁(126)は、本体ユニット(31)のユニットケース(32)に収容される。
【0044】
なお、換気用排気管(100)と、供給管(120)と、庫内側吸入管(75)と、測定用配管(125)と、後述する各組成調節部(40,60)に設けられた配管とは、硬質のパイプで構成されていてもよいし、柔軟なホースで構成されていてもよいし、パイプとホースを組み合わせることで構成されていてもよい。
【0045】
−第1組成調節部−
第1組成調節部(40)は、輸送用コンテナ(1)の外部から吸い込んだ庫外空気(未処理庫外空気)を第1庫外空気と第2庫外空気に分離するように構成される。この第1組成調節部(40)は、いわゆるPSA(Pressure Swing Adsorption)法によって、未処理庫外空気を第1庫外空気と第2庫外空気に分離するように構成される。
【0046】
第1庫外空気は、窒素濃度が未処理庫外空気よりも高く、酸素濃度が未処理庫外空気よりも低い。第2庫外空気は、窒素濃度が未処理庫外空気よりも低く、酸素濃度が未処理庫外空気よりも高い。このように、第1庫外空気と第2庫外空気は、それぞれを構成する物質の濃度が互いに異なる。なお、本明細書における濃度は、体積割合を意味する。
【0047】
第1組成調節部(40)は、エアポンプ(231)を備える。また、第1組成調節部(40)は、第1方向制御弁(232)及び第2方向制御弁(233)と、第1吸着筒(234)及び第2吸着筒(235)とを備える。後述するように、各吸着筒(234,235)には、空気中の窒素を吸着する吸着剤が設けられる。
【0048】
〈エアポンプ〉
エアポンプ(231)は、ユニットケース(32)の内部空間に配置される。エアポンプ(231)は、それぞれが空気を吸引して加圧して吐出する第1ポンプ機構(231a)及び第2ポンプ機構(231b)を備える。第1ポンプ機構(231a)及び第2ポンプ機構(231b)は、潤滑油を使用しないオイルレスのポンプである。加圧部である第1ポンプ機構(231a)と、減圧部である第2ポンプ機構(231b)とは、それらの両方がモータ(231c)の駆動軸に接続される。第1ポンプ機構(231a)及び第2ポンプ機構(231b)のぞれぞれは、モータ(231c)によって回転駆動されることによって、吸込口から空気を吸引して加圧し、加圧した空気を吐出口から吐出する。
【0049】
〈外気管、吐出管、フィルタユニット〉
第1ポンプ機構(231a)の吸込口には、外気通路を形成する外気管(241)の一端が接続される。外気管(241)は、ユニットケース(32)を貫通するように設けられる。ユニットケース(32)の外部に位置する外気管(241)の他端は、フィルタユニット(220)に接続される。
【0050】
フィルタユニット(220)は、エアフィルタ(47)を備える。エアフィルタ(47)は、庫外空気に含まれる塵埃や塩分などを捕捉するためのフィルタである。本実施形態では、通気性と防水性を有するメンブレンフィルタが、エアフィルタ(47)として用いられる。フィルタユニット(220)は、箱状に形成された部材であり、エアフィルタ(47)を通過した空気(庫外空気)を外気管(241)へ導入する。図示しないが、フィルタユニット(220)は、庫外機器室(28)における凝縮器(13)の下流側に配置される。
【0051】
第1ポンプ機構(231a)の吐出口には、吐出通路を形成する吐出管(242)の一端が接続される。吐出管(242)は、他端側で二つの分岐管に分岐しており、一方の分岐管が第1方向制御弁(232)に、他方の分岐管が第2方向制御弁(233)に、それぞれ接続される。
【0052】
〈吸引管、供給管〉
第2ポンプ機構(231b)の吸込口には、吸引通路を形成する吸引管(243)の一端が接続される。吸引管(243)は、他端側で二つの分岐管に分岐しており、一方の分岐管が第1方向制御弁(232)に、他方の分岐管が第2方向制御弁(233)に、それぞれ接続される。
【0053】
第2ポンプ機構(231b)の吐出口には、供給通路を形成する供給用接続管(244)の一端が接続される。供給用接続管(244)の他端は、供給管(120)に接続される。
【0054】
供給用接続管(244)には、その一端から他端へ向かって順に、逆止弁(264)と供給側開閉弁(273)とが設けられる。逆止弁(264)は、供給用接続管(244)の一端から他端へ向かう向きの空気の流通のみを許容し、空気の逆流を防止する。供給側開閉弁(273)は、電磁弁からなる開閉弁である。
【0055】
〈方向制御弁〉
第1方向制御弁(232)及び第2方向制御弁(233)のそれぞれは、三つのポートを有する切換弁である。各方向制御弁(232,233)は、第1のポートが第2のポートと連通して第3のポートから遮断される第1状態と、第1のポートが第3のポートと連通して第2のポートから遮断される第2状態とに切り換わるように構成される。
【0056】
第1方向制御弁(232)は、第1のポートが第1吸着筒(234)の一端に接続される。また、第1方向制御弁(232)は、第2のポートに吐出管(242)の分岐管が接続され、第3のポートに吸引管(243)の分岐管が接続される。第1方向制御弁(232)は、第1吸着筒(234)を、第1ポンプ機構(231a)に連通する状態と、第2ポンプ機構(231b)に連通する状態とに切り換える。
【0057】
第2方向制御弁(233)は、第1のポートが第2吸着筒(235)の一端に接続される。また、第2方向制御弁(233)は、第2のポートに吐出管(242)の分岐管が接続され、第3のポートに吸引管(243)の分岐管が接続される。第2方向制御弁(233)は、第2吸着筒(235)を、第1ポンプ機構(231a)に連通する状態と、第2ポンプ機構(231b)に連通する状態とに切り換える。
【0058】
〈吸着筒〉
第1吸着筒(234)及び第2吸着筒(235)のそれぞれは、両端が閉塞された円筒状の容器と、その容器に充填された吸着剤とを備える部材である。
【0059】
これら吸着筒(234,235)に充填された吸着剤は、圧力が大気圧よりも高い加圧状態において窒素成分を吸着し、圧力が大気圧よりも低い減圧状態において窒素成分を脱着させる性質を有する。本実施形態では、吸着剤として、例えば、窒素分子の分子径(3.0オングストローム)よりも小さく且つ酸素分子の分子径(2.8オングストローム)よりも大きな孔径の細孔を有する多孔体のゼオライトが用いられる。
【0060】
本実施形態の第1組成調節部(40)では、第1吸着筒(234)及び第2吸着筒(235)が第1分離部(41)を構成する。第1分離部(41)を構成する二つの吸着筒(234,235)は、未処理庫外空気を、未処理庫外空気よりも窒素濃度が高くて酸素濃度が低い第1庫外空気と、未処理庫外空気よりも窒素濃度が低くて酸素濃度が高い第2庫外空気に分離する。
【0061】
〈酸素排出管〉
酸素排出通路を形成する酸素排出管(245)は、一端側で二つの分岐管に分岐しており、一方の分岐管が第1吸着筒(234)の他端に、他方の分岐管が第2吸着筒(235)にそれぞれ接続される。酸素排出管(245)の各分岐管には、逆止弁(261)が一つずつ設けられる。各逆止弁(261)は、対応する吸着筒(234,235)から流出する向きの空気の流れを許容し、逆向きの空気の流れを遮断する。
【0062】
酸素排出管(245)は、ユニットケース(32)を貫通するように設けられる。酸素排出管(245)の他端は、輸送用コンテナ(1)の庫外空間に開口する。酸素排出管(245)の集合部分には、逆止弁(262)とオリフィス(263)とが設けられる。逆止弁(262)は、オリフィス(263)よりも酸素排出管(245)の他端寄りに配置される。この逆止弁(262)は、酸素排出管(245)の他端へ向かう空気の流れを許容し、逆向きの空気の流れを遮断する。
【0063】
〈パージ管〉
酸素排出管(245)の各分岐管には、パージ通路を形成するパージ管(250)が接続される。パージ管(250)は、一端が第1吸着筒(234)に接続する分岐管に接続され、他端が第2吸着筒(235)に接続する分岐管に接続される。パージ管(250)の一端は、第1吸着筒(234)と逆止弁(261)の間に接続される。パージ管(250)の他端は、第2吸着筒(235)と逆止弁(261)の間に接続される。
【0064】
パージ管(250)には、パージ弁(251)が設けられる。パージ弁(251)は、電磁弁からなる開閉弁である。パージ弁(251)は、第1吸着筒(234)と第2吸着筒(235)を均圧する際に開かれる。また、パージ管(250)におけるパージ弁(251)の両側には、オリフィス(252)が一つずつ設けられる。
【0065】
〈排気用接続管〉
供給用接続管(244)には、排気用接続通路を形成する排気用接続管(271)が接続される。排気用接続管(271)は、一端が供給用接続管(244)に接続され、他端が酸素排出管(245)に接続される。排気用接続管(271)の一端は、供給用接続管(244)における第2ポンプ機構(231b)と逆止弁(264)の間に接続される。排気用接続管(271)の他端は、酸素排出管(245)の逆止弁(262)よりも庫外側に接続される。
【0066】
排気用接続管(271)には、排気用開閉弁(272)が設けられる。排気用開閉弁(272)は、電磁弁からなる開閉弁である。排気用開閉弁(272)は、供給用接続管(244)を流れる空気を庫外へ排出する際に開かれる。
【0067】
〈測定用接続管〉
供給用接続管(244)には、測定用通路を形成する測定用接続管(281)が接続される。この測定用接続管(281)は、第1組成調節部(40)をセンサユニット(90)に接続するための配管である。また、この測定用接続管(281)は、後述する第1バイパス管(255)と共に、センサユニット(90)へ庫外空気(外気)を供給するための外気供給通路を構成する。
【0068】
測定用接続管(281)は、一端が供給用接続管(244)に接続され、他端が測定用配管(125)に接続される。測定用接続管(281)の一端は、供給用接続管(244)における逆止弁(264)と供給側開閉弁(273)の間に接続される。測定用接続管(281)の他端は、測定用配管(125)における第2測定用開閉弁(126)とセンサユニット(90)の間に接続される。
【0069】
測定用接続管(281)には、第1測定用開閉弁(282)が設けられる。第1測定用開閉弁(282)は、電磁弁からなる開閉弁である。第1測定用開閉弁(282)は、供給用接続管(244)又は後述する第1バイパス管(255)を流れる空気をセンサユニット(90)へ送る際に開かれる。
【0070】
〈第1バイパス管、第1バイパス弁〉
吐出管(242)には、バイパス通路を形成する第1バイパス管(255)が接続される。第1バイパス管(255)は、一端が吐出管(242)に接続され、他端が測定用接続管(281)に接続される。第1バイパス管(255)の一端は、吐出管(242)の分岐箇所よりも第1ポンプ機構(231a)寄りに接続される。第1バイパス管(255)の他端は、測定用接続管(281)の一端と第1測定用開閉弁(282)の間に接続される。この第1バイパス管(255)は、第1吸着筒(234)及び第2吸着筒(235)をバイパスさせて庫外空気を輸送用コンテナ(1)の庫内空間へ供給するための第1バイパス通路を形成する。
【0071】
第1バイパス管(255)には、第1バイパス弁(256)が設けられる。第1バイパス弁(256)は、電磁弁からなる開閉弁である。第1バイパス弁(256)は、第1バイパス管(255)へ流入する庫外空気の流量を変更するための第1バイパス弁機構を構成する。この第1バイパス弁(256)は、第1ポンプ機構(231a)が吐出した庫外空気を、その組成を変更せずに荷室(5)へ供給する際に開かれる。
【0072】
−第2組成調節部−
第2組成調節部(60)は、輸送用コンテナ(1)の内部空間から吸い込んだ庫内空気(未処理庫内空気)を第1庫内空気と第2庫内空気に分離するように構成される。本実施形態の第2組成調節部(60)は、第1庫内空気を荷室(5)へ供給し、排出用空気である第2庫内空気を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出する。
【0073】
第2組成調節部(60)は、ポンプユニット(35)と、分離モジュール(61)と、第2バイパス弁(70)と、圧力センサ(65)と
、調節弁(66)とを備える。また、第2組成調節部(60)は、導入管(72)と、一次側管(73)と、二次側管(74)と、第2バイパス管(71)とを備える。
【0074】
〈ポンプユニット〉
ポンプユニット(35)は、ポンプ本体(37)と、駆動モータ(38)とを備える。ポンプ本体(37)は、吸い込んだ空気を吐出する空気ポンプであって、例えば容積型の流体機械によって構成される。駆動モータ(38)は、ポンプ本体(37)に連結された電動機である。駆動モータ(38)は、ポンプ本体(37)を駆動する。
【0075】
〈分離モジュール〉
分離モジュール(61)は、導入口(62)と、一次側導出口(63)と、二次側導出口(64)とを備える。分離モジュール(61)の詳細な構造は、後述する。
【0076】
導入口(62)は、導入管(72)を介してポンプ本体(37)の吐出口に接続する。一次側導出口(63)は、一次側管(73)を介して供給管(120)に接続する。二次側導出口(64)には、二次側管(74)の一端が接続する。二次側管(74)は、ユニットケース(32)の外部へ延びている。二次側管(74)の他端は、庫外機器室(28)における庫外ファン(16)の吸込側に開口する。また、ポンプ本体(37)の吸入口には、庫内側吸入管(75)が接続する。
【0077】
分離モジュール(61)は、第2分離部を構成する。詳しくは後述するが、分離モジュール(61)は、ガス分離膜(85)を備える。そして、分離モジュール(61)は、未処理庫内空気を、ガス分離膜(85)を透過しなかった第1庫内空気と、ガス分離膜(85)を透過した第2庫内空気に分離する。
【0078】
第1庫内空気は、窒素濃度が未処理庫内空気よりも高く、酸素濃度および二酸化炭素濃度が未処理庫内空気よりも低い。第2庫内空気は、窒素濃度が未処理庫内空気よりも低く、酸素濃度および二酸化炭素濃度が未処理庫内空気よりも高い。このように、第1庫内空気と第2庫内空気は、それぞれを構成する物質の濃度が互いに異なる。
【0079】
〈第2バイパス弁、第2バイパス管〉
第2バイパス弁(70)は、三つのポートを有する切換弁であって、第2バイパス弁機構を構成する。第2バイパス弁(70)は、第1のポートが第2のポートと連通して第3のポートから遮断される第1状態(
図3に実線で示す状態)と、第1のポートが第3のポートと連通して第2のポートから遮断される第2状態(
図3に破線で示す状態)とに切り換わるように構成される。
【0080】
第2バイパス弁(70)は、導入管(72)の途中に配置される。第2バイパス弁(70)は、第1のポートがポンプ本体(37)の吐出口に接続し、第2のポートが分離モジュール(61)の導入口(62)に接続する。第2バイパス弁(70)の第3のポートには、第2バイパス管(71)の入口端が接続する。第2バイパス管(71)の出口端は、一次側管(73)に接続する。第2バイパス管(71)は、第2バイパス通路を構成する。
【0081】
〈第2圧力センサ、第2調節弁〉
圧力センサ(65)と調節弁(66)とは、一次側管(73)に設けられる。圧力センサ(65)と調節弁(66)とは、一次側管(73)に接続する第2バイパス管(71)の他端よりも分離モジュール(61)寄りに配置される。また、圧力センサ(65)は、調節弁(66)よりも分離モジュール(61)寄りに配置される。
【0082】
圧力センサ(65)は、分離モジュール(61)の一次側導出口(63)から流出した第2庫外空気の圧力を計測する。圧力センサ(65)の計測値は、ポンプ本体(37)が分離モジュール(61)へ供給する未処理庫内空気の圧力と実質的に等しい。
【0083】
調節弁(66)は、開度可変の電動弁であって、第2弁機構を構成する。調節弁(66)の開度を変更すると、ポンプ本体(37)が分離モジュール(61)へ供給する未処理庫内空気の圧力が変化する。
【0084】
−第2分離モジュール−
分離モジュール(61)について、
図4を参照しながら説明する。
【0085】
分離モジュール(61)は、一つの筒状ケース(80)と、二つの隔壁部(81a,81b)とを備える。筒状ケース(80)は、両端が閉塞された細長い円筒状の容器である。隔壁部(81a,81b)は、筒状ケース(80)の内部空間を仕切るための部材であって、筒状ケース(80)の内部空間を横断するように設けられる。隔壁部(81a,81b)は、筒状ケース(80)の内部空間の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに一つずつ配置される。
図4において、筒状ケース(80)の内部空間は、左側の隔壁部(81a)の左側に位置する導入室(82)と、二つの隔壁部(81a,81b)の間に位置する二次側導出室(84)と、右側の隔壁部(81b)の右側に位置する一次側導出室(83)とに仕切られる。
【0086】
分離モジュール(61)は、中空糸状(即ち、外径が1mm以下の非常に細い管状)に形成されたガス分離膜(85)を多数備える。中空糸状のガス分離膜(85)は、一方の隔壁部(81a)から他方の隔壁部(81b)に亘って設けられる。各ガス分離膜(85)は、一端部が一方の隔壁部(81a)を貫通して導入室(82)に開口し、他端部が他方の隔壁部(81b)を貫通して一次側導出室(83)に開口する。筒状ケース(80)の内部空間は、二つの隔壁部(81a,81b)に挟まれた空間のうちガス分離膜(85)の外側の部分が、二次側導出室(84)を構成する。分離モジュール(61)において、導入室(82)と一次側導出室(83)は、中空糸状のガス分離膜(85)を介して連通する一方、二次側導出室(84)は、ガス分離膜(85)の内側の空間、導入室(82)、及び一次側導出室(83)と非連通となる。
【0087】
筒状ケース(80)には、導入口(62)と、一次側導出口(63)と、二次側導出口(64)とが設けられる。導入口(62)は、
図4における筒状ケース(80)の左端部に配置され、導入室(82)と連通する。一次側導出口(63)は、
図4における筒状ケース(80)の右端部に配置され、一次側導出室(83)と連通する。二次側導出口(64)は、筒状ケース(80)の長手方向の中間部に配置され、二次側導出室(84)と連通する。
【0088】
ガス分離膜(85)は、高分子からなる非多孔膜である。このガス分離膜(85)は、物質毎に分子がガス分離膜(85)を透過する速度(透過速度)が異なることを利用して、混合ガスに含まれる成分を分離する。
【0089】
分離モジュール(61)のガス分離膜(85)は、窒素の透過速度が酸素の透過速度と二酸化炭素の透過速度の両方よりも低いという特性を有している。中空糸状の多数のガス分離膜(85)は、それぞれの膜厚が実質的に同じである。従って、分離モジュール(61)に設けられたガス分離膜(85)は、窒素の透過率が酸素の透過率と二酸化炭素の透過率の両方よりも低いという特性を有している。
【0090】
分離モジュール(61)では、導入口(62)を通って導入室(82)へ流入した空気が、中空糸状のガス分離膜(85)の内側の空間を一次側導出室(83)へ向かって流れる。ガス分離膜(85)の内側の空間を流れる空気は、その一部がガス分離膜(85)を透過して二次側導出室(84)へ移動し、残りが一次側導出室(83)へ流入する。
【0091】
分離モジュール(61)のガス分離膜(85)は、窒素の透過率が酸素および二酸化炭素の透過率よりも低い。つまり、窒素は、酸素および二酸化炭素に比べてガス分離膜(85)を透過しにくい。このため、中空糸状のガス分離膜(85)の内側を流れる空気は、一次側導出室(83)へ近付くにつれて、その窒素濃度が上昇すると同時に、その酸素濃度および二酸化炭素濃度が低下する。また、中空糸状のガス分離膜(85)を流れる空気に含まれる酸素と二酸化炭素は、ガス分離膜(85)を透過して二次側導出室(84)へ移動する。
【0092】
その結果、ガス分離膜(85)を透過せずに一次側導出室(83)へ流入した空気は、その窒素濃度が導入室(82)の空気よりも高くなり、その酸素濃度および二酸化炭素濃度が導入室(82)の空気よりも低くなる。また、ガス分離膜(85)を透過して二次側導出室(84)へ移動した空気は、その窒素濃度が導入室(82)の空気よりも低くなり、その酸素濃度および二酸化炭素濃度が導入室(82)の空気よりも高くなる。
【0093】
分離モジュール(61)では、導入口(62)から導入室(82)へ未処理庫内空気が流入し、ガス分離膜(85)を透過せずに一次側導出室(83)へ流入した空気が第1庫内空気として一次側導出口(63)から流出し、ガス分離膜(85)を透過して二次側導出室(84)へ流入した空気が第2庫内空気として二次側導出口(64)から流出する。
【0094】
−センサユニット−
図1及び
図3に示すように、センサユニット(90)は、コンテナ用冷凍機(10)の庫内空気流路(29)の二次流路(29b)に配置される。
図3に示すように、センサユニット(90)は、酸素センサ(91)と、二酸化炭素センサ(92)と、センサケース(93)とを備える。
【0095】
酸素センサ(91)は、空気等の混合気体の酸素濃度を計測するジルコニア電流方式のセンサである。二酸化炭素センサ(92)は、空気等の混合気体の二酸化炭素濃度を計測する非分散型赤外線吸収(NDIR:non dispersive infrared)方式のセンサである。この二酸化炭素センサ(92)は、庫内空気に含まれる対象ガスである二酸化炭素の濃度を計測するガスセンサである。酸素センサ(91)及び二酸化炭素センサ(92)は、センサケース(93)に収容される。
【0096】
センサケース(93)は、やや細長い箱状の部材である。センサケース(93)は、長手方向の一方の端部に測定用配管(125)の出口端が接続され、他方の端部に出口管(95)の一端が接続される。出口管(95)の他端は、庫内空気流路(29)の一次流路(29a)に開口する。また、センサケース(93)には、庫内空気流路(29)を流れる庫内空気をセンサケース(93)の内部空間へ導入するためのエアフィルタ(94)が取り付けられる。エアフィルタ(94)は、庫内空気に含まれる塵埃などを捕捉するためのメンブレンフィルタである。
【0097】
後述するように、庫内ファン(17)の作動中は、二次流路(29b)の気圧が一次流路(29a)の気圧よりも若干高くなる。このため、第1測定用開閉弁(282)及び第2測定用開閉弁(126)が閉じた状態では、二次流路(29b)の庫内空気がエアフィルタ(94)を通ってセンサケース(93)へ流入し、その後に出口管(95)を通って一次流路(29a)へ流入する。この状態で、センサユニット(90)は、酸素センサ(91)が庫内空気の酸素濃度を計測し、二酸化炭素センサ(92)が庫内空気の二酸化炭素濃度を計測する。
【0098】
−換気用排気管−
換気用排気管(100)は、輸送用コンテナ(1)の内部と外部を繋ぐための配管である。この換気用排気管(100)は、換気用排気通路を構成する。
図1に示すように、換気用排気管(100)は、コンテナ用冷凍機(10)のケーシング(20)を貫通する。換気用排気管(100)の一端は、庫内空気流路(29)の二次流路(29b)に開口する。換気用排気管(100)の他端は、庫外機器室(28)における庫外ファン(16)の吸入側に開口する。
【0099】
図3に示すように、換気用排気管(100)の一端には、エアフィルタ(102)が取り付けられる。エアフィルタ(102)は、庫内空気に含まれる塵埃などを捕捉するためのメンブレンフィルタである。また、換気用排気管(100)には、換気用排気弁(101)が設けられる。換気用排気弁(101)は、電磁弁からなる開閉弁である。
【0100】
−制御器−
制御器(110)は、制御動作を行うCPU(111)と、制御動作に必要なデータ等を記憶するメモリ(112)とを備える。制御器(110)には、酸素センサ(91)及び二酸化炭素センサ(92)の計測値が入力される。そして、制御器(110)は、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度をそれぞれの目標範囲に保たれるように、酸素センサ(91)及び二酸化炭素センサ(92)の計測値に基づいて庫内空気調節装置(30)の運転を制御するように構成される。
【0101】
図5に示すように、制御器(110)は、空気組成制御部(115)と、センサ校正部(116)と、センサ異常対応部(117)とを備える。また、センサ異常対応部(117)は、センサ判定部(118)を備える。空気組成制御部(115)、センサ校正部(116)、及びセンサ異常対応部(117)は、メモリ(112)に記録されたプログラムを実行するCPU(111)によって構成される。
【0102】
空気組成制御部(115)は、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度がそれぞれの目標範囲となるように庫内空気調節装置(30)の運転を制御する空気組成制御動作を行う。センサ校正部(116)は、庫外空気(外気)を用いて二酸化炭素センサ(92)を校正する校正動作を行う。センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が異常である状態に対応するための異常対応動作を行う。センサ判定部(118)は、庫外空気(外気)を用いて二酸化炭素センサ(92)が正常か否かを判定する判定動作を行う。異常対応動作において、センサ異常対応部(117)は、所定の条件が成立したときに、センサ判定部(118)に判定動作を実行させる。
【0103】
−コンテナ用冷凍機の運転動作−
コンテナ用冷凍機(10)は、輸送用コンテナ(1)の庫内空気を冷却する冷却運転を行う。
【0104】
冷却運転では、冷媒回路(11)の圧縮機(12)が作動し、冷媒回路(11)において冷媒が循環することによって蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(11)では、圧縮機(12)から吐出された冷媒が、凝縮器(13)と膨張弁(14)と蒸発器(15)とを順に通過し、その後に圧縮機(12)へ吸入されて圧縮される。
【0105】
また、冷却運転では、庫外ファン(16)と庫内ファン(17)とが作動する。庫外ファン(16)が作動すると、輸送用コンテナ(1)の外部の庫外空気が庫外機器室(28)へ吸い込まれて凝縮器(13)を通過する。凝縮器(13)では、冷媒が庫外空気へ放熱して凝縮する。庫内ファン(17)が作動すると、輸送用コンテナ(1)の荷室(5)内の庫内空気が庫内空気流路(29)へ吸い込まれて蒸発器(15)を通過する。蒸発器(15)では、冷媒が庫内空気から吸熱して蒸発する。
【0106】
庫内空気の流れについて説明する。荷室(5)に存在する庫内空気は、吸込口(26)を通って庫内空気流路(29)の一次流路(29a)へ流入し、庫内ファン(17)によって二次流路(29b)へ吹き出される。二次流路(29b)へ流入した庫内空気は、蒸発器(15)を通過する際に冷却され、その後に吹出口(27)から床下流路(4)へ吹き出され、床下流路(4)を通って荷室(5)へ流入する。
【0107】
庫内空気流路(29)において、一次流路(29a)は庫内ファン(17)の吸い込み側に位置し、二次流路(29b)は庫内ファン(17)の吹き出し側に位置する。このため、庫内ファン(17)の作動中は、二次流路(29b)の気圧が一次流路(29a)の気圧よりも若干高くなる。
【0108】
−庫内空気調節装置の運転動作−
庫内空気調節装置(30)は、輸送用コンテナ(1)の荷室(5)内の庫内空気の組成(本実施形態では、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度)を調節するための運転を行う。ここでは、本実施形態の庫内空気調節装置(30)の運転動作について、庫内空気の酸素濃度の目標範囲が5%±1%であり、庫内空気の二酸化炭素濃度の目標範囲が2%±1%である場合を例に説明する。庫内空気の酸素濃度の目標範囲は、庫内空気の酸素濃度の目標値SP_O2(この例では、5%)を含む数値範囲である。庫内空気の二酸化炭素濃度の目標範囲は、庫内空気の二酸化炭素濃度の目標値SP_CO2(この例では、2%)を含む数値範囲である。
【0109】
〈庫内空気調節装置の運転動作の概要〉
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度を低下させるための酸素濃度低減動作と、荷室(5)内の庫内空気の二酸化炭素濃度を低下させるための二酸化炭素濃度低減動作と、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度を上昇させるための酸素濃度増加動作とを行う。
【0110】
酸素濃度低減動作および酸素濃度増加動作は、庫内空気の酸素濃度を調節するための酸素調節動作である。二酸化炭素濃度低減動作は、庫内空気の二酸化炭素濃度を調節するための二酸化炭素調節動作である。また、二酸化炭素濃度低減動作は、庫内空気に含まれる対象ガスである二酸化炭素の濃度を調節するための濃度調節動作でもある。
【0111】
輸送用コンテナ(1)への貨物(6)の積み込みが完了した時点において、荷室(5)内に存在する庫内空気の組成は、大気の組成(窒素濃度:78%、酸素濃度:21%、二酸化炭素濃度:0.04%)と実質的に同じである。そこで、庫内空気調節装置(30)は、庫内空気の酸素濃度を低下させるための酸素濃度低減動作を行う。庫内空気の酸素濃度が目標範囲の上限値(6%)に達すると、庫内空気調節装置(30)は、酸素濃度低減動作を停止する。
【0112】
庫内空気の酸素濃度が6%に達して庫内空気調節装置(30)の酸素濃度停止動作が停止した後は、貨物(6)である植物が呼吸することによって、庫内空気の酸素濃度が次第に低下してゆくと同時に、庫内空気の二酸化炭素濃度が次第に上昇する。
【0113】
庫内空気の二酸化炭素濃度が目標範囲の上限値(3%)に達すると、庫内空気調節装置(30)は、庫内空気の二酸化炭素濃度を低下させるための二酸化炭素濃度低減動作を行う。庫内空気の二酸化炭素濃度が目標範囲の下限値(1%)に達すると、庫内空気調節装置(30)は、二酸化炭素濃度低減動作を停止する。
【0114】
また、庫内空気の酸素濃度が目標範囲の下限値(4%)に達すると、庫内空気調節装置(30)は、庫内空気の酸素濃度を上昇させるための酸素濃度増加動作を行う。庫内空気の酸素濃度が目標範囲の上限値(6%)に達すると、庫内空気調節装置(30)は、酸素濃度増加動作を停止する。
【0115】
このように、庫内空気調節装置(30)は、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度を21%(大気の酸素濃度)から目標範囲にまで引き下げるために、酸素濃度低減動作を行う。また、庫内空気調節装置(30)は、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度を、それぞれの目標範囲に維持するために、二酸化炭素低減動作と酸素濃度増加動作とを適宜繰り返して行う。
【0116】
〈酸素濃度低減動作〉
庫内空気調節装置(30)の酸素濃度低減動作について、
図3を参照しながら説明する。この酸素濃度低減動作では、第1組成調節部(40)が酸素濃度の低い第1庫外空気を荷室(5)へ供給し、第2組成調節部(60)が酸素濃度の低い第1庫内空気を荷室(5)へ供給する。
【0117】
酸素濃度低減動作において、制御器(110)は、第1組成調節部(40)に後述する第1動作と第2動作を交互に繰り返し実行させる。第1組成調節部(40)の動作については、後ほど詳しく説明する。また、酸素濃度低減動作において、制御器(110)は、第2バイパス弁(70)を第1状態(
図3に実線で示す状態)に設定し、ポンプユニット(35)の駆動モータ(38)に通電してポンプ本体(37)を作動させ、換気用排気弁(101)を開状態に設定する。
【0118】
ポンプ本体(37)が作動すると、輸送用コンテナ(1)の内部(具体的には、コンテナ用冷凍機(10)の二次流路(29b))に存在する庫内空気が、庫内側吸入管(75)を通ってポンプ本体(37)に吸い込まれる。ポンプ本体(37)は、吸い込んだ庫内空気を加圧して吐出する。ポンプ本体(37)が吐出する庫内空気の圧力は、大気圧よりも若干高い程度である。ポンプ本体(37)から吐出された庫内空気は、導入管(72)を流れ、分離モジュール(61)の導入口(62)へ未処理庫内空気として流入する。
【0119】
分離モジュール(61)において、導入口(62)を通って導入室(82)へ流入した未処理庫内空気は、中空糸状のガス分離膜(85)へ流入する。中空糸状のガス分離膜(85)の内側を流れる空気は、その一部がガス分離膜(85)を透過して第2庫内空気として二次側導出室(84)へ移動し、残りが第1庫内空気として一次側導出室(83)へ流入する。上述したように、ガス分離膜(85)は、窒素の透過率が酸素の透過率よりも低い特性を持つ。このため、第1庫内空気の酸素濃度は、未処理庫内空気の酸素濃度よりも低く、第2庫内空気の酸素濃度は、未処理庫内空気の酸素濃度よりも高い。
【0120】
分離モジュール(61)の一次側導出口(63)から一次側管(73)へ流出した第1庫内空気は、供給管(120)へ流入する。一方、分離モジュール(61)の二次側導出口(64)から二次側管(74)へ流出した第2庫内空気は、輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0121】
上述したように、供給管(120)には、後述する第1分離部(41)から流出した第1庫外空気と、分離モジュール(61)から流出した第1庫内空気とが流入する。そして、供給管(120)を流れる第1庫外空気と第1庫内空気の混合空気は、コンテナ用冷凍機(10)の二次流路(29b)へ流入し、二次流路(29b)を流れる空気と共に荷室(5)へ供給される。
【0122】
通常、酸素濃度低減動作中は、輸送用コンテナ(1)の外部から内部へ供給される第1庫外空気の流量が、輸送用コンテナ(1)の内部から外部へ排出される第2庫内空気の流量よりも大きくなっており、輸送用コンテナ(1)内の気圧が陽圧となる。輸送用コンテナ(1)内の気圧が陽圧であるため、庫内空気の一部は、換気用排気管(100)を通って輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0123】
このように、酸素濃度低減動作では、大気に比べて酸素濃度の低い第1庫外空気を供給すると同時に、換気用排気管(100)を通じて荷室(5)内の庫内空気を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出し、荷室(5)の空気を第1庫外空気に入れ替えることによって、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度を低下させる。また、酸素濃度低減動作では、未処理庫内空気から分離された酸素濃度の高い第2庫内空気を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出することによって、荷室(5)内の庫内空気の酸素濃度を低下させる。
【0124】
〈二酸化炭素濃度低減動作〉
庫内空気調節装置(30)の二酸化炭素濃度低減動作について、
図3を参照しながら説明する。二酸化炭素低減動作において、第1組成調節部(40)と第2組成調節部(60)のそれぞれは、酸素濃度低減動作と同様の動作を行う。そして、二酸化炭素低減動作では、第1組成調節部(40)が酸素濃度の低い第1庫外空気を荷室(5)へ供給し、第2組成調節部(60)が二酸化炭素濃度の低い第1庫内空気を荷室(5)へ供給する。
【0125】
第1組成調節部(40)では、後述する第1分離部(41)へ流入した未処理庫外空気が、未処理庫外空気よりも窒素濃度が高くて酸素濃度が低い第1庫外空気と、未処理庫外空気よりも窒素濃度が低くて酸素濃度が高い第2庫外空気とに分離される。そして、第1庫外空気が輸送用コンテナ(1)の内部へ供給され、第2庫外空気が輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。なお、未処理庫外空気の二酸化炭素濃度は、大気の二酸化炭素濃度(0.04%)と実質的に同じである。このため、第1庫外空気の二酸化炭素濃度は実質的にゼロと見なせる。
【0126】
第2組成調節部(60)では、分離モジュール(61)へ流入した未処理庫内空気が、未処理庫内空気よりも窒素濃度が高くて酸素濃度および二酸化炭素濃度が低い第1庫内空気と、未処理庫内空気よりも窒素濃度が低くて酸素濃度および二酸化炭素濃度が高い第2庫内空気とに分離される。そして、第1庫内空気が輸送用コンテナ(1)の内部へ供給され、第2庫内空気が輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0127】
通常、二酸化炭素濃度低減動作中は、酸素濃度低減動作中と同様に、第1庫外空気の流量が第2庫内空気の流量よりも大きくなっており、輸送用コンテナ(1)内の気圧が陽圧となる。輸送用コンテナ(1)内の気圧が陽圧であるため、荷室(5)内の庫内空気の一部は、換気用排気管(100)を通って輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0128】
このように、二酸化炭素濃度低減動作では、二酸化炭素濃度の極めて低い第1庫外空気を供給すると同時に、換気用排気管(100)を通じて庫内空気を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出し、荷室(5)の空気を第1庫外空気に入れ替えることによって、荷室(5)内の庫内空気の二酸化炭素濃度を低下させる。また、二酸化炭素濃度低減動作では、未処理庫内空気から分離された二酸化炭素濃度の高い第2庫内空気を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出することによって、荷室(5)内の庫内空気の二酸化炭素濃度を低下させる。
【0129】
〈酸素濃度増加動作〉
庫内空気調節装置(30)の酸素濃度増加動作について、
図6を参照しながら説明する。この酸素濃度増加動作では、第1組成調節部(40)が輸送用コンテナ(1)の外部から吸い込んだ庫外空気をそのまま荷室(5)へ供給し、第2組成調節部(60)が休止する。
【0130】
酸素濃度増加動作において、制御器(110)は、第1方向制御弁(232)と第2方向制御弁(233)のそれぞれを第2状態(
図6に実線で示す状態)に設定し、エアポンプ(231)のモータ(231c)に通電して第1ポンプ機構(231a)を作動させる。また、制御器(110)は、第1バイパス弁(256)、排気用開閉弁(272)、及び供給側開閉弁(273)を開状態に設定し、測定用開閉弁(126,282)を閉状態に設定する。ポンプユニット(35)の駆動モータ(38)には通電されない。
【0131】
第1組成調節部(40)において、第1ポンプ機構(231a)から吐出された庫外空気は、第1バイパス管(255)と供給用接続管(244)とを順に流れ、その後に供給管(120)を通って輸送用コンテナ(1)の内部へ供給される。また、荷室(5)内の庫内空気の一部は、換気用排気管(100)を通って輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0132】
なお、エアポンプ(231)のモータ(231c)に通電すると、第1ポンプ機構(231a)だけでなく第2ポンプ機構(231b)も作動する。第2ポンプ機構(231b)は、第1吸着筒(234)及び第2吸着筒(235)からガス(吸着筒に残存する空気の成分)を吸引して吐出する。第2ポンプ機構(231b)が吐出したガスは、排気用接続管(271)を通って輸送用コンテナ(1)の外部へ排出される。
【0133】
このように、酸素濃度増加動作では、庫内空気よりも酸素濃度の高い庫外空気を輸送用コンテナ(1)の内部へ供給することによって、荷室(5)内の酸素濃度を上昇させる。
【0134】
−第1組成調節部の運転動作−
第1組成調節部(40)の運転動作を説明する。
【0135】
第1組成調節部(40)は、後述する第1動作と第2動作を所定の時間(例えば、14.5秒)ずつ交互に繰り返し行うことによって、未処理庫外空気を第1庫外空気と第2庫外空気に分離する。第1組成調節部(40)は、庫内空気調節装置(30)の酸素濃度低減動作と二酸化炭素濃度低減動作のそれぞれにおいて、未処理庫外空気を第1庫外空気と第2庫外空気に分離する動作を行う。
【0136】
また、第1組成調節部(40)は、後述する外気供給動作を実行可能である。外気供給動作は、輸送用コンテナ(1)の外部から吸い込んだ庫外空気をそのままセンサユニット(90)へ供給する動作である。
【0137】
〈第1動作〉
図7に示すように、第1動作では、第1方向制御弁(232)が第1状態に設定され、第2方向制御弁(233)が第2状態に設定される。その結果、第1ポンプ機構(231a)の吐出口が第1吸着筒(234)に接続し、第2吸着筒(235)が第2ポンプ機構(231b)の吸込口に接続する。また、第1動作では、供給側開閉弁(273)が開かれ、残りの開閉弁(251,256,272,282)が閉じられる。そして、第1動作では、第1吸着筒(234)を対象とする吸着動作と、第2吸着筒(235)を対象とする脱離動作とが行われる。
【0138】
第1ポンプ機構(231a)は、外気管(241)から未処理庫外空気を吸い込んで加圧し、加圧した未処理庫外空気を第1吸着筒(234)へ供給する。第1吸着筒(234)では、供給された未処理庫外空気に含まれる窒素が吸着剤に吸着される。その結果、第1吸着筒(234)では、未処理庫外空気よりも窒素濃度が低くて酸素濃度が高い第2庫外空気が生成する。第2庫外空気は、第1吸着筒(234)から流出して酸素排出管(245)を流れ、排出用空気として庫外空間へ排出される。
【0139】
一方、第2ポンプ機構(231b)は、第2吸着筒(235)から空気を吸引する。第2吸着筒(235)では、その内部の圧力が低下して吸着剤から窒素が脱離する。その結果、第2吸着筒(235)では、未処理庫外空気よりも窒素濃度が高くて酸素濃度が低い第1庫外空気が生成する。第1庫外空気は、第1吸着筒(234)から吸引管(243)へ流入して第2ポンプ機構(231b)へ吸い込まれる。第2ポンプ機構(231b)は、吸い込んだ第1庫外空気を加圧して供給用接続管(244)へ吐出する。第1庫外空気は、供給用空気として供給用接続管(244)を流れ、供給管(120)を流れる空気と合流後に庫内空間へ供給される。
【0140】
〈第2動作〉
図8示すように、第2動作では、第1方向制御弁(232)が第2状態に設定され、第2方向制御弁(233)が第1状態に設定される。その結果、第1ポンプ機構(231a)の吐出口が第2吸着筒(235)に接続し、第1吸着筒(234)が第2ポンプ機構(231b)の吸込口に接続する。また、第2動作では、供給側開閉弁(273)が開かれ、残りの開閉弁(251,256,272,282)が閉じられる。そして、第2動作では、第1吸着筒(234)を対象とする脱離動作と、第2吸着筒(235)を対象とする吸着動作とが行われる。
【0141】
第1ポンプ機構(231a)は、外気管(241)から未処理庫外空気を吸い込んで加圧し、加圧した未処理庫外空気を第2吸着筒(235)へ供給する。第2吸着筒(235)では、供給された未処理庫外空気に含まれる窒素が吸着剤に吸着される。その結果、第2吸着筒(235)では、未処理庫外空気よりも窒素濃度が低くて酸素濃度が高い第2庫外空気が生成する。第2庫外空気は、第2吸着筒(235)から流出して酸素排出管(245)を流れ、排出用空気として庫外空間へ排出される。
【0142】
一方、第2ポンプ機構(231b)は、第1吸着筒(234)から空気を吸引する。第1吸着筒(234)では、その内部の圧力が低下して吸着剤から窒素が脱離する。その結果、第1吸着筒(234)では、未処理庫外空気よりも窒素濃度が高くて酸素濃度が低い第1庫外空気が生成する。第1庫外空気は、第1吸着筒(234)から吸引管(243)へ流入して第2ポンプ機構(231b)へ吸い込まれる。第2ポンプ機構(231b)は、吸い込んだ第1庫外空気を加圧して供給用接続管(244)へ吐出する。第1庫外空気は、供給用空気として供給用接続管(244)を流れ、供給管(120)を流れる空気と合流後に庫内空間へ供給される。
【0143】
〈外気供給動作〉
図9に示すように、外気供給動作では、制御器(110)が、第1方向制御弁(232)と第2方向制御弁(233)のそれぞれを第2状態(
図9に実線で示す状態)に設定し、エアポンプ(231)のモータ(231c)に通電して第1ポンプ機構(231a)を作動させる。また、制御器(110)は、第1バイパス弁(256)、排気用開閉弁(272)、第1測定用開閉弁(282)、及びパージ弁(251)を開状態に設定し、供給側開閉弁(273)と第2組成調節部(60)の測定用開閉弁(126)とを閉状態に設定する。なお、酸素濃度増加動作と同様に、第2組成調節部(60)は休止する。
【0144】
この外気供給動作において、第1ポンプ機構(231a)から吐出された庫外空気は、第1バイパス管(255)と測定用接続管(281)を順に通ってセンサユニット(90)へ流入する。センサユニット(90)では、酸素センサ(91)及び二酸化炭素センサ(92)が収容されたセンサケース(93)を庫外空気が流れる。センサユニット(90)のセンサケース(93)から流出した庫外空気は、出口管(95)を通って輸送用コンテナ(1)の内部へ流入する。なお、第2ポンプ機構(231b)を通るガスの流れは、酸素濃度増加動作と同じである。
【0145】
−制御器の動作−
制御器(110)が行う動作について説明する。
【0146】
〈空気組成制御動作〉
制御器(110)の空気組成制御部(115)は、空気組成制御動作を行う。空気組成制御動作は、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度がそれぞれの目標範囲となるように庫内空気調節装置(30)の運転を制御する動作である。原則として、空気組成制御部(115)は、庫内空気調節装置(30)の作動中は常に空気組成制御動作を行う。空気組成制御部(115)が空気組成制御動作を行った結果、庫内空気調節装置(30)は、上記の「庫内空気調節装置の運転動作の概要」の項目に記載した運転を行う。
【0147】
具体的に、空気組成制御部(115)は、酸素センサ(91)の計測値と二酸化炭素センサ(92)の計測値とを監視する。そして、酸素センサ(91)の計測値が酸素濃度の目標範囲から外れると、酸素センサ(91)の計測値が酸素濃度の目標範囲となるように、庫内空気調節装置(30)に酸素濃度低減動作または酸素濃度増加動作を実行させる。また、二酸化炭素センサ(92)の計測値が二酸化炭素濃度の目標範囲から外れると、二酸化炭素センサ(92)の計測値が二酸化炭素濃度の目標範囲となるように、庫内空気調節装置(30)に二酸化炭素濃度低減動作を実行させる。
【0148】
〈校正動作〉
制御器(110)のセンサ校正部(116)は、校正動作を行う。校正動作は、庫外空気(外気)を用いて二酸化炭素センサ(92)を校正する動作である。
【0149】
センサ校正部(116)は、コンテナ用冷凍機(10)のPTI(Pre-Trip Inspection)の実行中に、校正動作を行う。また、センサ校正部(116)は、輸送用コンテナ(1)を用いた貨物(6)の輸送中に、所定期間(例えば、7日間)が経過する毎に校正動作を行う。
【0150】
校正動作において、センサ校正部(116)は、庫内空気調節装置(30)に外気供給動作を実行させる。この外気供給動作では、第1ポンプ機構(231a)へ吸い込まれた庫外空気(外気)が、その組成を調整されることなくセンサユニット(90)へ供給される(
図9を参照)。つまり、外気供給動作では、大気がセンサユニット(90)へ供給される。
【0151】
校正動作において、センサ校正部(116)は、庫内空気調節装置(30)が外気供給動作を開始してから所定時間(例えば、10分間)が経過すると、二酸化炭素センサ(92)の計測値を取得する。センサユニット(90)のセンサケース(93)を大気が流れる状態の継続時間が所定時間を超えると、センサケース(93)内の二酸化炭素センサ(92)が二酸化炭素濃度を計測する計測対象は、実質的に「大気」とみなすことができる。一方、大気の二酸化炭素濃度は、既知の値(0.04%)である。
【0152】
そこで、センサ校正部(116)は、外気供給動作の開始から所定時間が経過した時に取得した二酸化炭素センサ(92)の計測値が「ゼロ」となるように、二酸化炭素センサ(92)の計測値を補正する。即ち、センサ校正部(116)は、大気の二酸化炭素濃度を基準として、二酸化炭素センサ(92)を校正する。
【0153】
〈センサ異常対応動作〉
制御器(110)のセンサ異常対応部(117)は、センサ異常対応動作を行う。センサ異常対応動作は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が異常である状態に対応するための動作である。
【0154】
ここで、二酸化炭素センサ(92)は、正確な二酸化炭素濃度を出力できなくなる場合がある。例えば、二酸化炭素センサ(92)の破損等によって二酸化炭素センサ(92)が異常な計測値を出力する場合は、二酸化炭素センサ(92)の交換等の修理を行う必要がある。
【0155】
しかし、二酸化炭素センサ(92)の構造自体に問題が無くても、例えば、二酸化炭素センサ(92)に結露が生じた場合は、二酸化炭素センサ(92)が異常な計測値を出力することがある。この場合は、二酸化炭素センサ(92)の交換等の修理を行わなくても、ある程度の時間が経過して凝縮水が蒸発すれば、二酸化炭素センサ(92)は再び正確な計測値を出力できる。
【0156】
そこで、センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)が異常な計測値を出力した場合に、二酸化炭素センサ(92)が正常か否かを判定し、その結果に対応した動作を行う。
【0157】
参考のため、二酸化炭素センサ(92)に結露が生じた場合の現象を説明する。上述したように、本実施形態の二酸化炭素センサ(92)は、NDIR方式のセンサである。この二酸化炭素センサ(92)では、二酸化炭素濃度を計測する対象のガス(被計測ガス)が、光源と受光素子の間を流れる。この被計測ガスの湿度が高い場合は、光源の表面で結露が生じる場合がある。そして、光源の表面で結露が生じると、光源が発した光が水滴によって散乱し、受光素子に到達する光量が減少するため、二酸化炭素センサ(92)の計測値が実際の被計測ガスの二酸化炭素濃度と大幅に異なってしまう。
【0158】
センサ異常対応部(117)が行うセンサ異常対応動作について、
図10のフロー図を参照しながら説明する。なお、この説明に示した時間と二酸化炭素センサ(92)の計測値とは、いずれも単なる一例である。
【0159】
庫内空気調節装置(30)の作動中において、センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値を所定時間毎(例えば、数十秒毎)に取得する。
【0160】
[ステップST1]
ステップST1において、センサ異常対応部(117)は、第1条件または第2条件の成否を判断する。第1条件は、“二酸化炭素センサ(92)の計測値φ_CO2が−2.0%を下回る状態(φ_CO2<−2.0%)が2分間継続する”という条件である。第2条件は、“二酸化炭素センサ(92)の計測値φ_CO2が20.0%を上回る状態(φ_CO2>20.0%)が2分間継続する”という条件である。
【0161】
ここで、空気等の混合ガスにおける二酸化炭素濃度が負の値になることは、実際には有り得ない。また、本実施形態の二酸化炭素センサ(92)は、その測定可能範囲の上限が20.0%である。従って、第1条件と第2条件のそれぞれは、二酸化炭素センサ(92)が出力する計測値が正常範囲から外れた状態が所定時間(本実施形態では2分間)以上に亘って継続することを示す条件である。
【0162】
ステップST1において第1条件と第2条件のどちらも成立しない場合、センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値の監視を続ける。一方、第1条件と第2条件のどちらかが成立した場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST2へ移行する。
【0163】
[ステップST2]
ステップST2において、センサ異常対応部(117)は、庫内空気調節装置(30)の二酸化炭素低減動作を禁止する。第1条件と第2条件のどちらかが成立した場合、二酸化炭素センサ(92)の計測値は、庫内空気の実際の二酸化炭素濃度と異なると推測できる。そこで、この場合は、センサ異常対応部(117)が二酸化炭素低減動作を禁止する。センサ異常対応部(117)が二酸化炭素低減動作を禁止した状態において、空気組成制御部(115)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が二酸化炭素濃度の目標範囲から外れても、庫内空気調節装置(30)に二酸化炭素濃度低減動作を実行させない。
【0164】
一方、このステップST2において、庫内空気調節装置(30)の酸素濃度低減動作と酸素濃度増加動作とは禁止されていない。従って、センサ異常対応部(117)が二酸化炭素低減動作を禁止した後も、空気組成制御部(115)は、酸素センサ(91)の計測値に基づいて庫内空気の酸素濃度を調節する動作を継続して行う。つまり、空気組成制御部(115)は、酸素センサ(91)の計測値が酸素濃度の目標範囲を外れると、酸素センサ(91)の計測値が目標範囲となるように、庫内空気調節装置(30)に酸素濃度低減動作または酸素濃度増加動作を実行させる。
【0165】
また、ステップST2において、センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)に異常が発生していることを示すアラームを発報する。このアラームは、コンテナ用冷凍機(10)の管理や保守を行う作業者に対して二酸化炭素センサ(92)の異常を知らせるために発報される。このアラームの一例としては、コンテナ用冷凍機(10)の操作部に設けられた警告ランプの点灯や、その操作部に設けられた液晶表示画面に表示される警告表示が挙げられる。
【0166】
[ステップST3]
次のステップST3において、センサ異常対応部(117)は、第3条件の成否を判断する。第3条件は、“二酸化炭素センサ(92)の計測値φ_CO2が−1.5%を上回り且つ20.0%を下回る状態(−1.5%<φ_CO2<20.0%)が1分間継続する”という条件である。この第3条件は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲に入っていることを示す条件である。
【0167】
例えば、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れる原因が二酸化炭素センサ(92)における結露である場合は、ある程度の時間が経過して二酸化炭素センサ(92)に付着した水滴の量が減少すると、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲に戻ってくる。そして、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れた後に正常範囲に戻ってきた場合は、二酸化炭素センサ(92)自体は損傷していない可能性が高い。
【0168】
そこで、ステップST3において第3条件が成立した場合、センサ異常対応部(117)は、二酸化炭素センサ(92)を使用し続けられる可能性があると判断し、ステップST4へ移行する。一方、ステップST3において第3条件が成立しない場合は、二酸化炭素センサ(92)が損傷していている可能性が高い。そこで、この場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST2において実行した二酸化炭素低減動作を禁止とアラームの発報とを継続すると共に、二酸化炭素センサ(92)の計測値の監視を継続する。
【0169】
[ステップST4]
ステップST4において、センサ異常対応部(117)は、庫内空気調節装置(30)に外気供給動作を実行させる。この外気供給動作では、センサユニット(90)に対して庫外空気(外気)が供給される。外気供給動作の継続時間がある程度に達すると、センサユニット(90)のセンサケース(93)内の空気の組成が庫外空気と実質的に同じとなり、二酸化炭素センサ(92)が庫外空気の二酸化炭素濃度を計測する状態になっていると推測できる。そこで、センサ異常対応部(117)は、外気供給動作を所定時間(本実施形態では、10分間)に亘って継続させ、外気供給動作の継続時間が10分間に達すると、次のステップST5へ移行する。
【0170】
[ステップST5]
ステップST5において、センサ異常対応部(117)は、センサ判定部(118)に判定動作を実行させる。この判定動作は、庫外空気(外気)を用いて二酸化炭素センサ(92)が正常か否かを判定する動作である。
【0171】
具体的に、ステップST5において、センサ判定部(118)は、第4条件の成否を判断する。第4条件は、“二酸化炭素センサ(92)の計測値φ_CO2が−0.5%を上回り且つ0.5%を下回る(−0.5%<φ_CO2<0.5%)”という条件である。“−0.5%<φ_CO2<0.5%”という範囲は、大気の二酸化炭素濃度(0.04%)を含む基準範囲である。
【0172】
庫外空気の二酸化炭素濃度は、大気の二酸化炭素濃度(0.04%)と等しい。従って、二酸化炭素センサ(92)の計測値φ_CO2が−0.5%<φ_CO2<0.5%という条件を満たしていれば、二酸化炭素センサ(92)は正常に機能していると判断できる。
【0173】
ステップST5において第4条件が成立し、二酸化炭素センサ(92)は正常に機能しているとセンサ判定部(118)が判定した場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST6へ移行する。一方、ステップST5において第4条件が成立せず、二酸化炭素センサ(92)は正常に機能していないとセンサ判定部(118)が判定した場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST8へ移行する。
【0174】
[ステップST6]
上述したように、ステップST5において第4条件が成立する場合、センサ判定部(118)は、二酸化炭素センサ(92)が正常だと判定する。その場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST6において、センサ校正部(116)に校正動作を実行させる。ただし、センサ異常対応部(117)がステップST6の動作を実行する時点では、センサユニット(90)に対して庫外空気が既に10分間以上に亘って供給されている。そこで、ステップST6において、センサ校正部(116)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値を直ちに取得し、その状態における二酸化炭素センサ(92)の計測値が「ゼロ」となるように、二酸化炭素センサ(92)の計測値を補正する。ステップST6の動作が終了すると、センサ異常対応部(117)は、ステップST7へ移行する。
【0175】
[ステップST7]
ステップST6が終了した時点では、二酸化炭素センサ(92)が正常に機能することが確認されており、更には二酸化炭素センサ(92)の校正が終了している。そこで、ステップST7において、センサ異常対応部(117)は、ステップST2において禁止した庫内空気調節装置(30)の二酸化炭素低減動作を許可する。センサ異常対応部(117)が二酸化炭素低減動作を許可した状態において、空気組成制御部(115)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が二酸化炭素濃度の目標範囲から外れると、庫内空気調節装置(30)に二酸化炭素濃度低減動作を実行させる。また、センサ異常対応部(117)は、ステップST2において発報したアラームを解消する。そして、ステップST7の動作が終了すると、センサ異常対応部(117)はセンサ異常対応動作を終了する。
【0176】
[ステップST8]
上述したように、ステップST5において第4条件が成立しない場合、センサ判定部(118)は、二酸化炭素センサ(92)が正常ではないと判定する。その場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST8へ移行し、再判定条件の成否を判断する。また、センサ異常対応部(117)は、ステップST8へ移行すると、庫内空気調節装置(30)に外気供給動作を停止させる。
【0177】
再判定条件が成立しない場合、センサ異常対応部(117)は、ステップST8に留まる。ステップST8に留まっている間、センサ異常対応部(117)は、庫内空気調節装置(30)に二酸化炭素濃度低減動作を禁止し、アラームを発報した状態を保持する。一方、再判定条件が成立すると、センサ異常対応部(117)は、ステップST3に戻り、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲に入っているか否かを再び判断する。
【0178】
再判定条件は、“時間条件または酸素濃度条件が成立する”という条件である。時間条件は、“センサ異常対応部(117)がステップST5からステップST8へ移行して庫内空気調節装置(30)の外気供給動作を停止させてから所定時間(本実施形態では、24時間)が経過した”という条件である。酸素濃度条件は、“酸素センサ(91)の計測値φ_O2が所定範囲(本実施形態では、庫内空気の酸素濃度の目標値SP_O2±0.5%)に入っている”という条件である。つまり、酸素濃度条件は、SP_O2−0.5%≦φ_O2≦SP_O2+0.5%という関係が満たされるという条件である。
【0179】
“時間条件または酸素濃度条件が成立する”という条件を再判定条件とした理由を説明する。
【0180】
二酸化炭素センサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れる原因には、ある程度の時間が経過すれば解消するものがある。このため、判定動作において二酸化炭素センサ(92)が正常ではないとセンサ判定部(118)が判定した場合であっても、その後に再び判定動作を行えば、二酸化炭素センサ(92)が正常であると判定される可能性がある。
【0181】
また、センサ判定部(118)が判定動作を行うためには、センサユニット(90)に大気を供給する必要がある。本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、センサユニット(90)へ供給された大気は、出口管(95)を通って輸送用コンテナ(1)の庫内空間へ流入する。そのため、センサユニット(90)に大気を供給すると、庫内空気の酸素濃度が上昇する。一方、庫内空気の酸素濃度が目標値SP_O2に近い値であれば、センサユニット(90)に大気を供給することによって庫内空気の酸素濃度が多少上昇しても、庫内空気の酸素濃度と目標値SP_O2の差は、それ程拡大しない。
【0182】
そこで、センサ異常対応部(117)は、“センサ異常対応部(117)が庫内空気調節装置(30)の外気供給動作を停止させてから24時間が経過した”という時間条件、又は“酸素センサ(91)の計測値φ_O2がSP_O2±0.5%の範囲に入っている”という酸素濃度条件が成立すると、ステップST3に戻り、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲に入っているか否かを再び判断する。
【0183】
−実施形態の特徴(1)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、輸送用コンテナ(1)の庫内空気に含まれる対象ガス(本実施形態では二酸化炭素)の濃度を計測するガスセンサ(92)を備え、庫内空気における対象ガスの濃度をガスセンサ(92)の計測値に基づいて調節する濃度調節動作を行う。この庫内空気調節装置(30)は、ガスセンサ(92)へ外気を供給するための外気供給通路(255,281)と、制御器(110)とを備える。制御器(110)は、ガスセンサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れた後に、ガスセンサ(92)の計測値が正常範囲に戻った場合に、判定動作を行う。判定動作は、外気供給通路(255,281)を通じてガスセンサ(92)へ外気を供給することによってガスセンサ(92)が正常か否かを判定する動作である。
【0184】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、ガスセンサ(92)の計測値が正常範囲から外れた後に正常範囲に戻ったときに、判定動作を行う。ガスセンサ(92)の計測値が正常範囲から外れたときでも、その後にガスセンサ(92)の計測値が正常範囲に戻ったときは、ガスセンサ(92)が正常に機能できる可能性がある。そこで、その場合、制御器(110)は、判定動作を行ってガスセンサ(92)が正常か否かを判定する。判定動作では、ガスセンサ(92)に対して、外気が外気供給通路(255,281)を通じて供給される。外気における対象ガスの濃度は、通常は既知である。このため、ガスセンサ(92)に対して外気を供給した時のガスセンサ(92)の計測値が分かれば、その値に基づいてガスセンサ(92)が正常か否かを判定できる。
【0185】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)が判定動作においてガスセンサ(92)は正常だと判定した場合は、ガスセンサ(92)を交換せずに使い続けることが可能である。従って、本実施形態によれば、ガスセンサ(92)の計測値が一時的に正常範囲から外れた場合にガスセンサ(92)を使い続けることが可能か否かを判断することができ、不必要なガスセンサ(92)の修理を回避して庫内空気調節装置(30)のランニングコストを低減できる。
【0186】
−実施形態の特徴(2)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作において、ガスセンサ(92)へ外気を供給しているときに、外気における対象ガスの濃度を含む所定の基準範囲にガスセンサ(92)の計測値が入ったときはガスセンサ(92)が正常だと判定し、ガスセンサ(92)の計測値が基準範囲に入らないときはガスセンサ(92)が正常ではないと判定する。
【0187】
本実施形態の制御器(110)は、ガスセンサ(92)へ外気を供給している時のガスセンサ(92)の計測値を所定の基準範囲と比較することによって、ガスセンサ(92)が正常か否かを判定する。
【0188】
−実施形態の特徴(3)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作においてガスセンサ(92)が正常だと判定した場合に、外気が供給されているときのガスセンサ(92)の計測値に基づいてガスセンサ(92)を校正する。
【0189】
本実施形態の制御器(110)は、判定動作においてガスセンサ(92)が正常だと判定した場合に、ガスセンサ(92)の校正を行う。制御器(110)は、ガスセンサ(92)の校正を、外気が供給されているときのガスセンサ(92)の計測値に基づいて行う。
【0190】
−実施形態の特徴(4)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、ガスセンサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れたときに、濃度調節動作(本実施形態では、二酸化炭素濃度調節動作)を停止させる
本実施形態の制御器(110)は、ガスセンサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れたときに、庫内空気調節装置(30)の濃度調節動作を停止させる。このため、不正確なガスセンサ(92)の計測値に基づく濃度調節動作を回避できる。
【0191】
−実施形態の特徴(5)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作においてガスセンサ(92)が正常ではないと判定すると、ガスセンサ(92)に対する外気の供給を一時的に停止し、その後に所定の再判定条件が成立すると判定動作を再び行う。
【0192】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作においてガスセンサ(92)が正常ではないと判定した場合、ガスセンサ(92)に対する外気の供給を一旦停止し、その後に再判定条件が成立すると判定動作を再び行う。上述したように、ガスセンサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れる原因には、ある程度の時間が経過すれば解消するものがある。このため、判定動作においてガスセンサ(92)が正常ではないと制御器(110)が判定した場合であっても、その後に再び判定動作を行えば、ガスセンサ(92)が正常であると判定される可能性がある。従って、本実施形態によれば、再度の判定動作を行うことによって、正常なガスセンサ(92)を正常ではないと誤判定する可能性を低減できる。
【0193】
−実施形態の特徴(6)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、庫内空気に含まれる酸素の濃度を計測する酸素センサ(91)を備え、酸素センサ(91)の計測値に基づいて上記庫内空気の酸素の濃度を調節する酸素調節動作を行う。また、本実施形態の制御器(110)の再判定条件は、ガスセンサ(92)に対する外気の供給を一時的に停止してから所定時間が経過し、又は酸素センサ(91)の計測値が所定範囲に入っているという条件である。
【0194】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、酸素センサ(91)を備えて酸素調節動作を行う。この態様の制御器(110)は、判定動作においてガスセンサ(92)が正常ではないと判定した場合、“ガスセンサ(92)に対する外気の供給を一時的に停止してから所定時間が経過し”又は“酸素センサ(91)の計測値が所定範囲に入っている”という再判定条件が成立すると、判定動作を再び行う。
【0195】
−実施形態の特徴(7)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、対象ガスである二酸化炭素の濃度を計測する二酸化炭素センサ(92)をガスセンサとして備え、庫内空気における二酸化炭素の濃度を二酸化炭素センサ(92)の計測値に基づいて調節する二酸化炭素調節動作を、濃度調節動作として行う。また、この庫内空気調節装置(30)は、庫内空気に含まれる酸素の濃度を計測する酸素センサ(91)を備え、酸素センサ(91)の計測値に基づいて庫内空気の酸素の濃度を調節する酸素調節動作を行う。そして、制御器(110)は、ガスセンサである二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れたときは、二酸化炭素調節動作と酸素調節動作のうちの二酸化炭素調節動作だけを禁止する。
【0196】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、二酸化炭素センサ(92)と酸素センサ(91)とを備え、二酸化炭素調節動作と酸素調節動作とを行う。本実施形態の制御器(110)は、ガスセンサである二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れたときは、庫内空気調節装置(30)による二酸化炭素調節動作の実行を禁止する一方、庫内空気調節装置(30)による酸素調節動作を許可する。従って、本実施形態によれば、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れた状態においても、庫内空気の酸素濃度を目標範囲に保つことができ、可能な範囲で庫内空気の組成を目標とする組成に近づけることができる。
【0197】
−実施形態の特徴(8)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作においてガスセンサである二酸化炭素センサ(92)が正常だと判定すると、二酸化炭素調節動作の禁止を解除する。
【0198】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、判定動作において二酸化炭素センサ(92)が正常だと判定した場合、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れたときに禁止した二酸化炭素調節動作を、再び許可する。従って、この場合、庫内空気調節装置(30)は、必要に応じて二酸化炭素調節動作を実行できる。
【0199】
このように、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲から外れて二酸化炭素調節動作が禁止された後であっても、二酸化炭素センサ(92)が正常だと制御器(110)が判定した場合は、庫内空気調節装置(30)が二酸化炭素調節動作を実行可能となる。このため、二酸化炭素センサ(92)が正常だと判定した場合は、庫内空気調節装置(30)を、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度のうち酸素濃度だけを調節できる状態から、庫内空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度の両方を調節できる状態に復帰させることができる。従って、本実施形態によれば、二酸化炭素センサ(92)が正常であるにも拘わらず庫内空気の二酸化炭素濃度を調節できない状況が長時間に亘るのを回避でき、貨物(6)の鮮度を確実に保つことが可能となる。
【0200】
−実施形態の特徴(9)−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、濃度調節動作の実行中に、外気供給通路(255,281)を通じてガスセンサ(92)へ外気を供給してガスセンサ(92)を校正する校正動作を、所定期間毎に行う。
【0201】
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)は、庫内空気調節装置(30)が濃度調節動作を実行している状態で、ガスセンサ(92)を校正する校正動作を所定期間(本実施形態では、7日間)が経過する毎に行う。このため、ガスセンサ(92)の計測値の誤差を小さく抑えることができ、庫内空気における対象ガスの濃度を適正範囲に保つことが可能となる。
【0202】
−実施形態の変形例1−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)において、制御器(110)のセンサ校正部(116)が行う校正動作、及び制御器(110)のセンサ異常対応部(117)が行うセンサ異常対応動作の対象となるガスセンサは、二酸化炭素センサ(92)に限定されない
。
【0203】
また、植物の一種である青果物は、エチレンガスを発生させる場合が多い。エチレンガスは青果物の熟成を促進する作用があるため、青果物の鮮度を保持するためには、庫内空気のエチレンガスの濃度を低く抑えるのが望ましい。そのため、庫内空気調節装置(30)は、庫内空気のエチレンガス濃度を計測するエチレンセンサを備え、庫内空気のエチレンガス濃度を所定値以下に抑える動作を行うように構成される場合がある。この場合には、庫内空気等の被計測ガスのエチレン濃度を計測するエチレンセンサを、センサ校正部(116)の校正動作及びセンサ異常対応部(117)のセンサ異常対応動作の対象となるガスセンサとしてもよい。
【0204】
また、コンテナ用冷凍機(10)の冷媒回路(11)には、例えばR32等の燃焼性を有する冷媒が充填される場合がある。この場合に冷媒回路(11)が損傷すると、燃焼性を有する冷媒が輸送用コンテナ(1)の内部に漏洩するおそれがある。その対策として、庫内空気調節装置(30)に冷媒濃度を計測する冷媒センサを設け、冷媒センサの計測値が所定の基準値を超えると、冷媒を輸送用コンテナ(1)の外部へ排出するための動作を庫内空気調節装置(30)に実行させることが考えられる。この場合には、庫内空気等の対象ガスの冷媒濃度を計測する冷媒センサを、センサ校正部(116)の校正動作及びセンサ異常対応部(117)のセンサ異常対応動作の対象となるガスセンサとしてもよい。
【0205】
−実施形態の変形例2−
本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、定置型の冷蔵庫または冷凍庫に設けられてもよい。また、本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、トラックや鉄道などで輸送される陸上輸送用の冷蔵・冷凍コンテナに設けられていてもよい。また、本実施形態の庫内空気調節装置(30)は、荷室を形成する箱体が車台と一体になった冷蔵・冷凍トラックに設けられていてもよい。
【0206】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【解決手段】二酸化炭素センサ(92)は、庫内空気の二酸化炭素濃度を計測する。庫内空気調節装置(30)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値に基づいて、庫内空気の二酸化炭素濃度を調節する。庫内空気調節装置(30)の制御器(110)は、二酸化炭素センサ(92)の計測値が所定の正常範囲から外れた後に、二酸化炭素センサ(92)の計測値が正常範囲に戻った場合に、判定動作を行う。判定動作は、二酸化炭素センサ(92)へ外気を供給することによって二酸化炭素センサ(92)が正常か否かを判定する動作である。