(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カッターロール(10)は,前記シート部材(1)の搬送方向に切り込みを入れ,生成された前記2つの連続体に互いに向かって凹凸する方向の切り込みを形成することで,各連続体にタブ(2)も設けるものであり,
前記トリム(3)は,一方のタブ(2)と他方の連続体の間に設けられるものである
請求項1記載の切断システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,特許文献2に示されるように,使い捨ておむつ用の止着テープを製造する場合,一般的には,長尺の帯状のシート部材をその長手方向に搬送しながら,その搬送方向に沿って波状に蛇行するように切断線を形成し,そのシート部材を切断していく。これにより,帯状のシート部材は,幅方向の左右両側に二分割され,波状の切断線に対応する位置に複数のタブが形成される。また,このタブの長さを調節したり,タブにファスニングテープのフック部材を取り付ける位置を調整したりすることを目的として,このタブの先端に隣接する位置に,シート部材の本体から完全に切り離されるトリムを形成することもある。
【0006】
ここで,
図5は,タブとトリムを形成するように切断線が形成されたシート部材を概念的に示している。
図5に示された切断パターンによれば,帯状のシート部材に対して,タブとトリムを同時に形成することが可能である。しかしながら,
図5に示されるような切断パターンを形成するためには,カッターロールの周面に設ける切断刃のパターンを比較的複雑な形状とする必要がある。特に,タブとトリムを同時に形成するためには,カッターロールの切断刃を複数箇所で交差させなければならない。このように,切断刃のパターンを複雑化させると,特に切断刃同士が交差する部位においてシート部材の切れ味が悪くなり,シート部材の不切れが発生するおそれがあった。また,カッターロールの切断刃は,切断を繰り返していくうちに摩耗が生じて切れ味が悪くなるが,特にそのパターンが複雑なものである場合,摩耗の進行が早いとされている。このように,シート部材を切断する切断刃のパターンが複雑化すると,摩耗の進行に伴って,切断刃の合流地点付近にシート部材の不切れが発生しやすくなる。
【0007】
図5に示されるように,切断刃のパターンの複雑化や摩耗によって剪断力が低下すると,シート部材の本体からくり貫かれるトリムとシート部材の本体に残るタブとの間に,繊維等の不切れが発生しやすくなる。また,シート部材からくり貫かれたトリムは,カッターロール等の周面に保持されることにより,タブから離れる方向に回収されることとなるが,このとき,トリムとタブとの間に不切れが生じていると,トリムと共にタブが持ち上げられて起き上がってしまう。特に,タブとトリムの境界線付近には,カッターロールの切断刃の交差部位が多く存在するため,切断刃の摩耗が進行すると,このタブとトリムの境界線付近に不切れが生じやすくなり,トリムの回収時にタブが起き上がるという現象が頻繁に発生するおそれがあった。
【0008】
また,
図5に示されるように,トリムの回収に伴って起き上がってしまったタブは,トリムから離れたときに,他のタブと重なってしまう傾向にある。また,タブの形成後には,このタブを折り返す工程が行われることがあるが,他のタブと重なっているタブは,適切に折り返されずに,前方又は後方に曲がった状態で折り返され,不良品となるおそれがあった。
【0009】
さらに,シート部材の不切れが発生した場合,切断刃の交換や研磨が必要となるが,複雑なパターンの切断刃は頻繁に交換や研磨が必要となるため,その寿命が著しく短いものであり,その維持費が高額になるという問題がある。また,切断刃の切れ味が低下することで,不織布の繊維やその他の特殊フィルム(例えばファスニングテープのループ材)の繊維の切れ残りが発生し,結果として,回収して除去すべきトリムが製品に混入してしまうなどの問題が発生するおそれがあった。
【0010】
従って,タブとトリムを同時に形成するために,切断刃のパターンを複雑なものとすると,タブとトリムの間に不切れが発生しやすくなると共に,不切れが発生した時点で切断刃の交換や研磨が必要となるため,切断刃の寿命が著しく短くなるという問題があった。そこで,本発明は,タブとトリムを同時に形成可能な複雑なパターンを有する切断刃を,長寿命化させることのできる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は,従来の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,カッターロールとアンビルロールの直後に補助装置を設け,シート部材のタブとトリムの間に不切れが発生した場合には,この補助装置によって当該不切れ部を分断させることとした。これにより,カッターロールの切断刃が摩耗して,シート部材に多少の不切れが発生した場合であっても,補助装置によって不切れ部を分断させることが可能となるため,切断刃を頻繁に交換しなくても,シート部材の切断を長期に亘って継続することができる。従って,本発明によれば,複雑なパターンを有する切断刃を長寿命化させることが可能となる。本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0012】
本発明の第1の側面は,シート部材の切断システムに関する。
本発明の切断システムは,長尺の帯状のシート部材1をその搬送方向に沿って切断するシステムである。本発明の切断システムは,基本的に,シート部材1をその長手方向に搬送しながら,その搬送方向に沿って波状に蛇行するように切断線を形成し,そのシート部材1を幅方向の左右両側に二分割することが可能である。
切断システムは,カッターロール10と,アンビルロール20と,補助装置30とを備えている。
カッターロール10は,シート部材1の一方面側に配置されており,その周面に,このカッターロール10の周方向(回転方向)に沿って連なる所定パターンで形成された切断刃11を有している。アンビルロール20は,シート部材1の他方面側に配置されており,その周面とカッターロール10の切断刃11との間でシート部材11を挟み込みながら回転する。このように,シート部材1は,カッターロール10とアンビルロール20との間を圧接状態で通過することにより,切断刃11のパターンに応じて切断される。
切断刃11の所定パターンは,シート部材1の本体に残るタブ2と,タブ2と隣接する位置においてシート部材1の本体から切り離されるトリム3と,を形成可能なパターンとなっている。また,トリム3は,少なくとも一時的に,カッターロール10の周面に保持されて,カッターロール10とともに回転する。
ここで,補助装置30は,カッターロール10とアンビルロール20の搬送方向の下流側に配置されたトレイ部31を有する。このトレイ部31は,タブ2とトリム3とが切り離されずに部分的に繋がった不切れ部4が生じている場合に,不切れ部4に接触する位置に先端部31aを有している。これにより,この不切れ部4は,トレイ部31の先端部31aによって分断されるようになっている。なお,必ずしも補助装置30の全体がカッターロール10等の搬送方向下流に位置している必要はなく,補助装置30のトレイ部31がカッターロール10等の搬送方向下流に位置し,そのトレイ部31の先端部31aが上記の不切れ部4に接触可能であればよい。
【0013】
上記構成のように,本発明の切断システムでは,カッターロール10とアンビルロール20の直後に,補助装置30のトレイ部31を設置する。すなわち,シート部材1のタブ2とトリム3に不切れが発生している場合,このタブ2は,切断されることでテンションがなくなるため,カッターロール10周面に保持されて回転しているトリム3に引っ張られて持ち上がる傾向にある。そこで,このようにして持ち上がろうとするタブ2を押さえるためのトレイ部31をカッターロール10の周面の直後に配置し,かつ,そのトレイ部31の先端をタブ2とトリム3の不切れ部4に接触させる。これにより,不切れ部4がトレイ部31を通過する際に,これを突っつくようにして切り離すことができる。このように,本発明は,切断刃11の加工精度を高めてシート部材1の不切れを発生させないようにするものではなく,シート部材1の不切れが発生することをある程度許容しつつ,この不切れが発生した場合にはそれを物理的に切り離すこととしている。これにより,既存設備に補助装置30を導入するだけで済み,既存設備をそのまま利用することができ,しかも複雑なパターンを有する切断刃11を長期間に亘って継続的に使用することが可能となる。
【0014】
本発明の切断システムにおいて,カッターロール10は,その周面に,切断刃11を介してシート部材1を切断するときにタブ2に当接する弾性部材12をさらに有することが好ましい。
【0015】
上記構成のように,カッターロール10の周面のうち,タブ2に当接する部位に発泡ウレタンのスポンジ等の弾性部材12を取り付けておくことで,切断の直後からこのタブ2に対して押圧力を付与し,タブ2とトリム3の間に剪断力を加えることができる。このため,タブ2とトリム3の間に不切れ部4が発生していても,この弾性部材12による押圧力を利用して,この不切れ部4を破断させることができる。従って,不切れ部4が生じる可能性をさらに低減でき,切断刃11のさらなる長寿命化を実現することができる。
【0016】
本発明の切断システムにおいて,補助装置30のトレイ部31は,カッターロール10の周面から離れ落ちたトリム3を受けることのできるトリム受け部31bをさらに有することが好ましい。
【0017】
上記構成のように,補助装置30のトレイ部31に,トリム受け部31bを設けることで,トリム3を容易に回収することができるため,例えばこのトリム3が製品に混入するような事態を防止できる。なお,トリム受け部31bは,例えばカッターロール10の周面に一時的に保持されているトリム3の落下予想地点に配置しておけばよい。
【0018】
本発明の切断システムにおいて,補助装置30は,吸引装置(図示省略)の吸気口に繋がる吸引ノズル32をさらに有することが好ましい。この吸引ノズル32は,トレイ部31のトリム受け部31b内に存在するトリム3を吸引可能な位置に配置されている。
【0019】
上記構成のように,吸引ノズル32を設けることで,トレイ部31のトリム受け部31bに蓄積されたトリム3を,吸引によって除去できる。
【0020】
本発明の第2の側面は,シート部材の切断方法に関する。
本発明の切断方法は,長尺のシート部材1をその搬送方向に沿って切断する方法である。
本発明の切断方法では,まず,対向して配置されたカッターロール10とアンビルロール20の間に,シート部材1を導入する。次に,カッターロール10の周面に形成された切断刃11によって,シート部材1に,シート部材1の本体に残るタブ2と,タブ2と隣接する位置にシート部材1の本体から切り離されるトリム3と,を形成する。次に,少なくとも一時的に,トリム3をカッターロール10の周面に保持して,カッターロール10とともに回転させる。そして,タブ2とトリム3とが切り離されずに部分的に繋がった不切れ部4が生じている場合には,補助装置30によって不切れ部4を分断させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば,タブとトリムを同時に形成可能な複雑なパターンを有する切断刃を,長寿命化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0024】
図1は,本発明の一実施形態に係る切断システム100を示している。
図1に示されるように,切断システム100は,カッターロール10と,アンビルロール20と,補助装置30とを備える。カッターロール10とアンビルロール20は,互いに対向して配置されており,両者の間には長尺で帯状のシート部材1が導入される。カッターロール10とアンビルロール20は,両者の間にシート部材1を挟み込みながら回転し,搬送方向に沿ってシート部材1を切断する。他方,補助装置30は,カッターロール10とアンビルロール20の接点(すなわち,シート部材1の切断部位)の直後に配置されている。補助装置30は,シート部材1に生じた不切れを解消する機能と,シート部材1から切り離されたトリムを回収し除去する機能とを有する。以下,各構成について詳しく説明する。
【0025】
切断システム100による切断対象となるシート部材1は,長尺の帯状のシート状の部材であり,原反ロール(図示省略)から繰り出されて,その長手方向を搬送方向として,装置上流側から下流側へ向かって搬送される。また,シート部材1は,搬送方向に沿って一定のテンション(張力)が付与された状態で搬送され,カッターロール10とアンビルロール20との間に導入される。シート部材1は,単層で形成されたものであってもよいし,複数層に亘って積層されたものであってもよい。
【0026】
シート部材1の素材は,特に限定されず,適宜公知のものを採用することができる。シート部材1は,例えば,紙や,織布,不織布であってもよいし,その他の合成樹脂フィルムであってもよい。不織布としては,例えば,スパンボンド,SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド),SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド),カードエンボス,レジンボンド等の各種公知の不織布を採用することができる。不織布の構成材料としては,ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレン等),ポリエステル,脂肪族ポリアミド,その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維を挙げることができる。また,合成樹脂フィルムとしては,例えば,ポリエチレン製やポリプロピレン製のものを用いることができる。
【0027】
カッターロール10は,シート部材1を装置下流側に向かって搬送可能な方向に回転するドラム状の装置であって,シート部材1の一方面側に配置されている。カッターロール10は,アンビルロール20と協働してシート部材1を挟み込み,シート部材1を圧接状態で通過させることにより,このシート部材1を切断する。
図2は,カッターロール10の概要を斜視的に示している。
図2に示されるように,カッターロール10の周面には,正面から突出した切断刃11が形成されている。このため,正確に説明すると,シート部材1は,カッターロール10の切断刃11とアンビルロール20の周面との間を圧接状態で通過することとなる。カッターロール10及び切断刃11の材質としては,熱膨張が小さく,硬くて粘りのある材質が好ましく,例えば,ステンレス,銅,又はダイス鋼といった金属製とすることが好ましい。さらにはハイス鋼又は超硬合金であれば尚好ましい。また,カッターロール10に形成された切断刃11は,カッターロール10の周面の表面に金属製の板材を巻きつけて凸形状が形成されることとしてもよい。また,切断刃11は,カッターロール10の表面に彫刻を施して凸形状が形成されたものであってもよい。
【0028】
アンビルロール20は,シート部材1を装置下流側に向かって搬送可能な方向に回転するドラム状の装置であって,カッターロール10と対向するように,シート部材1の他方面側に配置されている。アンビルロール20としては,その周面が平坦な平滑面となっているものを利用することが好ましい。例えば,アンビルロール20の周面は,金属製の平滑面であってもよいし,ラバー製の平滑面であってもよい。
【0029】
本実施形態において,カッターロール10の周面に形成された切断刃11は,カッターロール10の周方向(すなわちシート部材1の搬送方向)に連続するように,波状に蛇行した形状となっている。このため,カッターロール10とアンビルロール20の間を通過したシート部材1には,略波型の切込線が形成される。カッターロール10の周面の表面から切断刃11の頂部までの高さは,例えば,0.05mm〜15mm,又は0.1mm〜10mmで形成することが好ましい。ただし,切断刃11の高さは,切断対象のシートの厚みに対して適宜変更可能であり,例えば,シートの厚みより0.01mm以上高いものであることが好ましい。また,切断刃11の頂部は,尖端形状となっており,アンビルロール20との間にシートを挟み込み切断(溶断)できるようになっている。
【0030】
図3は,カッターロール10の切断刃11の形状を抽出して描画した概略図であり,カッターロール10の周面の展開図に相当する。つまり,
図3における上下方向が,カッターロール10の周方向に相当し,
図3における左右方向が,カッターロール10の回転軸方向に相当する。
図3には,図の上下方向に連続するように略波状に蛇行する切断刃11が形成されているため,これをカッターロール10に当てはめると,カッターロール10の周方向に連続した略波型の切断刃11となる。
【0031】
切断部11のパターンについて詳しく説明する。
図3では,カッターロール10の回転軸方向をX軸で示し,カッターロール10の周方向(回転方向)をY軸で示している。
図3に示されるように,切断刃11は,カッターロール10の周方向に連続して形成されたものであり,長辺部11aと,短辺部11bと,中間辺部11cとを,それぞれ複数有している。長辺部11aは,回転軸方向(X軸方向)に向かって延びる刃部であり,周方向(Y軸方向)に一定間隔ごとに配置されている。短辺部11bは,周方向(Y軸方向)に隣り合う2本の長辺部11aの端部同士を繋ぐように,周方向(Y軸方向)に向かって延びる刃部であり,長辺部11aよりも短く形成されている。中間辺部11cは,周方向(Y軸方向)に隣り合う2本の長辺部11aの中頃を繋ぐように,周方向(Y軸方向)に向かって延びる刃部である。特に,中間辺部11cは,長辺部11aの中心(
図3の一点鎖線)よりも,短辺部11b寄りの位置に形成される。また,
図3に示されるように,切断部11のパターンには,2本の長辺部11aと1本の短辺部11bと1本の中間辺部11cとによって周囲を囲われた空隙11dが存在している。本実施形態において,切断刃11のパターンは,このような長辺部11a,短辺部11b,中間辺部11c,及び空隙11dが規則的に連続したパターンとなる。
【0032】
上記のパターンの切断刃11を利用してシート部材1を切断することにより,例えば
図2及び
図5に示されるように,このシート部材1には,タブ2とトリム3とが形成される。タブ2とは,切断刃11による切断後もシート部材1の本体に残る部位である。つまり,このタブ2は,
図3に示された長辺部11aと中間辺部11cとによる切断線によって形成される部位である。また,トリム3とは,切断刃11による切断後,シート部材1の本体から切り離される部位である。つまり,このトリム3とは,切断刃11の空隙11dに相当する部位に位置するものであり,2本の長辺部11aと1本の短辺部11bと1本の中間辺部11cとによってくり貫かれる部位である。
図3に示された切断刃11のパターンでは,タブ2とトリム3は,互いに隣接した位置に形成される。すなわち,仮に中間辺部11cが存在しない場合には,タブ2とトリム3に相当する部位は一体に繋がっていた部位であるといえるが,切断刃11に中間辺部11cが形成されていることで,タブ2に隣接するようにトリム3が形成されることとなる。
【0033】
また,
図2及び
図3に示されるように,カッターロール10の周面には,切断刃11を介してシート部材1を切断するとき,上記したタブ2に当接する部位に,弾性部材12が設けられている。弾性部材12は,所定の厚みを有しており,切断刃11の間に配置される。弾性部材12としては,例えば発泡ウレタンのスポンジやゴム部材などの弾性を有するものを用いることができる。また,弾性部材12の厚みは,切断刃11の突出高さと同等か,それ以上であることが好ましい。このように,カッターロール10の周面に弾性部材12を取り付けておくことで,シート部材1の切断の直後から,タブ2に対して押圧力を付与することが可能となり,タブ2とトリム3の間に剪断力を加えることができる。このため,タブ2とトリム3の間に不切れが発生していても,この弾性部材12による押圧力を利用して,タブ2とトリム3とを切り離すことができる。
【0034】
また,
図2に示されるように,シート部材1からくり貫かれたトリム3は,少なくとも一時的に,カッターロール10の周面に保持された状態で,このカッターロール10と共に回転する。例えば,カッターロール10の周面のうち,このトリム3と接する部位に,トリム3を保持するための保持手段を設けておけばよい。例えば,保持手段は,カッターロール10の切断刃11の空隙11dに相当する位置に,吸引装置(図示省略)へと繋がる吸気口を形成しておき,この吸気口を介してトリム3を吸引保持するものであることが好ましい。このようにすれば,トリム3は,切断刃11によってくり貫かれた後も,カッターロール10の周面に吸着した状態で,カッターロール10と共に回転するようになる。ただし,トリム3の保持手段としては,例えば静電気によりトリム3を吸着するなど,種々の態様を採用することができる。また,保持手段は,一時的にのみトリム3を保持するものであればよく,トリム3を保持してから一定時間経過した後にこのトリム3の保持状態を解除してもよい。
【0035】
ここで,
図3に示された切断刃11のパターンのように,タブ2とトリム3とを同時に形成しようとすると,切断刃11の形状が複雑化する。具体的には,タブ2と同時にトリム3を形成するためには,切断刃11に中間辺部11cを設ける必要がある。しかし,この中間辺部11cを設けると,中間辺部11cと長辺部11aとの合流点には,3方向からの切断刃11が交差する交差部11eが形成されることとなる。この切断刃11の交差部11eでは,切断対象のシート部材1に付加される線圧が分散して低くなるため,シート部材1に係る剪断力が小さくなり,シート部材1に不切れが発生する可能性が高い。また,切断刃11の交差部11eは,他の部位と比べて摩耗が早く進行するため,カッターロール10の連続使用に伴って比較的早く切れ味が悪くなる。このように,切断刃11の交差部11eにおいては,シート部材1を適切に切断することができず,不切れが発生するおそれがある。また,切断刃11の交差部11eは,タブ2とトリム3の境界部位であるといえる。このため,切断刃11の交差部11eにおいてシート部材1に不切れが発生するということは,タブ2とトリム3との間に不切れが発生することを意味する。本願明細書では,このようにタブ2とトリム3とが切り離されずに部分的に繋がった部位を,「不切れ部4」(
図4(b)拡大図参照)と称している。
【0036】
本発明は,タブ2とトリム3との間に生じた不切れ部4を分断させるための手段として,補助装置30を採用している。
図1に示されるように,補助装置30は,カッターロール10とアンビルロール20の直後に配置されている。本実施形態において,補助装置30は,トレイ部31と,吸引ノズル32と,取付部33とを備えている。
【0037】
トレイ部31は,その先端部31aが,カッターロール10とアンビルロール20とによるシート部材1の切断点の直後に設けられている。トレイ部31の先端部31aは,鋭角に尖った形状となっており,カッターロール10とアンビルロール20の隙間に差し込まれている。具体的には,トレイ部31の先端部31aは,カッターロール10の周面とアンビルロール20の周面との間に生じる隙間の中,すなわち
図1に示した一点鎖線のラインよりも両ロールの周面寄りに位置していることが好ましい。例えば,トレイ部31の先端部31aからカッターロール10の切断刃11の頂点までの距離は,3mm〜150mm,5mm〜100mm,又は10mm〜50mmとすることが好ましい。
【0038】
また,トレイ部31は,カッターロール10の周面から離れ落ちたトリム3を受けることのできるトリム受け部31bを有している。トリム受け部31bは,例えば上部が開口となったトレイ状に形成されており,カッターロール10の周面から落ちてきたトリム3を回収して蓄積することが可能である。本実施形態においては,トレイ部31は,トリム受け部31bに,上記した先端部31aが形成されている。
【0039】
吸引ノズル32は,その一端が,外部に設けられた吸引装置(図示省略)の吸気口に繋がっており,その他端が,トレイ部31のトリム受け部31bに繋がっている。このため,吸引装置が起動すると,吸引ノズル32を介してトリム受け部31b内に蓄積されたトリム3が吸引されて,外部へと排出されるようになっている。これにより,トリム受け部31bに溜まったトリム3を,簡単に回収及び除去することが可能である。
【0040】
取付部33は,補助装置30のトレイ部31を所定の位置に固定するための部材である。図示は省略されているが,取付部33は,その一端が,工場内の横柱などに固定されており,その他端がトレイ部31に固定されている。これにより,トレイ部31の先端部31aを,カッターロール10とアンビルロール20の隙間に差し込んだ状態で固定することができる。
【0041】
続いて,
図4を参照して,本発明の切断システム100の動作について説明する。
まず,
図4(a)に示されるように,カッターロール10とアンビルロール20との間に長尺のシート部材1を導入して,シート部材1の長手方向に沿って切断線を形成する。このとき,カッターロール10には,
図3に示したパターンの切断刃11が形成されているため,シート部材1には,シート部材1の本体に残るタブ2と,このタブ2と隣接する位置においてシート部材1の本体から切り離されるトリム3とが形成される。その後,
図4(b)に示されるように,カッターロール10とアンビルロール20の回転が進行すると,トリム3が,カッターロール10の周面,具体的には切断刃11の空隙11d(
図3参照)において吸引保持されながら,カッターロール10とともに回転する。これにより,トリム3は,シート部材1の本体から離れる方向に移動させられる。
【0042】
しかしながら,
図4(c)及びその拡大図に示されるように,トリム3とタブ2との間に不切れが発生し,シート部材1を構成する繊維材料などによって両者が部分的に繋がった不切れ部4が生じることがある。特に,上述したとおり,
図3に示した切断刃11のパターンにおいては,長辺部11aと中間辺部11cとが合流する交差部11eに,シート部材1の不切れが発生しやすくなっている。このように,タブ2とトリム3との間に不切れ部4が発生すると,トリム3がカッターロール10の回転に従って上方に移動するのに伴い,タブ2が引っ張られて上方に向かって立ち上がった状態が継続されることとなる。タブ2が立ち上がった状態が継続すると,
図5を参照して説明したとおり,他のタブ2と重なりあったり,タブ2を折り返すときに問題が発生する可能性がある。
【0043】
そこで,本発明では,
図4(c)及びその拡大図に示されるように,補助装置30のトレイ部31の先端部31aを,タブ2とトリム3との間の不切れ部4に接触する位置に配置している。これにより,タブ2とトリム3との間に不切れ部4が生じた場合であっても,トレイ部31の先端部31aによって突っつくようにして,すぐにこの不切れ部4を分断することが可能となる。従って,例えばカッターロール10の切断刃11が多少摩耗した場合であっても,この切断刃11をすぐに交換したり研磨したりする必要性が低くなり,シート部材1の切断を長期に亘って継続することができる。よって,複雑なパターンを有する切断刃11を長寿命化させることが可能となる。
【0044】
その後,
図4(d)に示されるように,タブ2から切り離されたトリム3は,カッターロール10の回転に伴ってさらに上方に移動する。なお,その後の図示は省略するが,トリム3は,カッターロール10の周面による吸引保持が解除されて,補助装置30のトレイ部31へと自由落下する。このようにして,補助装置30のトレイ部31には,シート部材1から切り離されたトリム3が蓄積される。また,補助装置30は,常時又は定期的に,吸引ノズル32を介して,トレイ部31内のトリム3が外部の吸引装置(図示省略)によって吸引されている。これにより,トレイ部31内のトリム3は,吸引装置による吸引作用によって,外部へと排出される。
【0045】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。