(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下部シリンダおよび前記上部シリンダのうちの一方のシリンダの端部は、他方のシリンダの内部に前記ピストンのストローク方向に挿入されている請求項3に記載のユニフロー掃気式2サイクルエンジン。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。この実施形態に示す構成要素の寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100の全体構成を示す説明図である。ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、例えば、船舶等に用いられ、気体燃料である燃料ガスを主に燃焼させるガス運転モードと、液体燃料である燃料油を燃焼させるディーゼル運転モードのいずれかの運転モードを選択的に実行することができる。すなわち、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、燃料を液体燃料および燃料ガスで切り換えるデュアルフューエル型のエンジンである。
【0018】
具体的に、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、シリンダ110と、シリンダカバー112と、ピストン114と、ピストンロッド116と、掃気ポート118と、掃気溜120と、掃気室122と、冷却器124と、整流板126と、ドレインセパレータ128と、燃焼室130と、排気ポート132と、排気弁134と、排気弁駆動装置136と、液体燃料噴射弁138と、燃料ガス主管140と、燃料噴射装置142と、環状配管144と、燃料配管146と、燃料噴出口148と、可動部150とを含んで構成される。以下、シリンダ110の中心軸方向(
図1の紙面上下方向)において、シリンダカバー112側を上側と称し、掃気室122側を下側と称する場合がある。
【0019】
ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100では、シリンダ110(シリンダライナ110a)内をピストン114が摺動し、ピストン114の上昇行程および下降行程の2行程の間に、排気、吸気、圧縮、燃焼、膨張が行われる。ピストン114には、ピストンロッド116の一端が固定されている。また、ピストンロッド116の他端には、不図示のクロスヘッドが連結されており、クロスヘッドは、ピストン114とともに往復移動する。ピストン114の往復移動に伴いクロスヘッドが往復移動すると、その往復移動に連動して、不図示のクランクシャフトが回転する。以下、ピストン114がシリンダ110の中心軸方向で往復移動する方向を、ピストン114のストローク方向と称する場合がある。
【0020】
掃気ポート118は、シリンダ110の内周面から外周面まで貫通する孔であり、シリンダ110の全周囲に亘って、間隔をあけて複数設けられている。そして、掃気ポート118は、ピストン114が下死点に向かう過程で開口し、シリンダ110の内部に活性ガスを流入させる。この活性ガスは、酸素、オゾン等の酸化剤、または、その混合気(例えば空気)を含む。本実施形態の掃気ポート118は、シリンダ110の径方向視で、ストローク方向に延びる長円形に形成されているが、このような形状に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。以下、ピストン114の下死点を単に下死点と称し、ピストン114の上死点を単に上死点と称する場合がある。
【0021】
掃気溜120には、不図示の過給機あるいはブロワー等によって圧縮された活性ガス(例えば空気)が、冷却器124によって冷却されて封入されている。活性ガスは、掃気溜120を冷却器124から掃気室122に向けて流動する。圧縮および冷却された活性ガスは、掃気溜120内に配置された整流板126によって整流された後、ドレインセパレータ128で水分が除去される。
【0022】
掃気室122は、掃気溜120と連通するとともに、シリンダ110のうち、ピストン114のストローク方向(以下、単にストローク方向と称す)の一端側(
図1中、下側)を囲繞している。掃気室122には、掃気溜120から、圧縮、冷却、および、水分の除去が為された活性ガスが導かれる。
【0023】
掃気室122には、掃気ポート118が開口している。ピストン114が掃気ポート118より下側に下降したとき、シリンダ110内と掃気室122とは掃気ポート118を通して互いに連通し、掃気ポート118は、掃気室122とシリンダ110内の差圧によって、掃気室122からシリンダ110内に活性ガスを吸入する。
【0024】
燃焼室130は、ピストン114が上死点側にあるとき、シリンダ110の上端開口部を覆うように配されたシリンダカバー112(シリンダヘッド)と、シリンダライナ110aと、ピストン114とに囲繞されてシリンダ110の内部に形成される。シリンダ110内に吸入された活性ガスおよび燃料ガスは、ピストン114によって燃焼室130に導かれる。
【0025】
排気ポート132は、燃焼室130の、
図1中、上側に形成され、シリンダ110内において燃料ガスが燃焼して生じた排気ガスをシリンダ110の外部に排出するために開閉される。排気弁134は、排気弁駆動装置136によって所定のタイミングで上下に摺動され、排気ポート132を開閉する。燃料ガスの燃焼後、排気弁134が開弁すると、掃気ポート118から流入した活性ガス(掃気)によって、シリンダ110内の排気ガスが排気ポート132から押し出される。
【0026】
また、上記のように、本実施形態のユニフロー掃気式2サイクルエンジン100には、ディーゼル運転モードとガス運転モードが設けられている。以下、主にディーゼル運転モードで用いられる液体燃料供給機構、および、主にガス運転モードで用いられる燃料ガス供給機構について説明する。
【0027】
(液体燃料供給機構)
液体燃料噴射弁138は、シリンダカバー112に設けられ、先端が燃焼室130に突出しており、ディーゼル運転モードにおいて、燃焼室130に向かって先端から燃料油を噴射する。
【0028】
(燃料ガス供給機構)
燃料ガス主管140は、不図示の燃料タンクに連通するとともに、燃料噴射装置142を介して環状配管144と連通している。燃料ガス主管140には、燃料タンクから燃料ガスが導かれており、燃料噴射装置142が駆動すると、燃料ガス主管140の燃料ガスが環状配管144に流入する。
【0029】
ここで、燃料ガスは、例えば、LNG(液化天然ガス)をガス化して生成されたガスである。また、燃料ガスは、LNGに限らず、例えば、LPG(液化石油ガス)、軽油、重油等をガス化したガスを使用することもできる。
【0030】
環状配管144は、シリンダ110の径方向外側に、掃気ポート118より、
図1中、上側に配されており、シリンダ110の周方向に環状に延びてシリンダ110を囲繞する。環状配管144のうち、ストローク方向での掃気ポート118側(すなわち
図1中の下側)には複数の燃料配管146が固定されている。燃料配管146は、それぞれの掃気ポート118に対し1つずつ配され、ストローク方向に延びている。以下、シリンダ110の径方向を単に径方向と称し、シリンダ110の周方向を単に周方向と称する場合がある。
【0031】
燃料配管146は、シリンダ110のうち、周方向に隣り合う掃気ポート118の間の壁面に対向しており、燃料配管146のうち、この壁面との対向部位には、燃料噴出口148が形成されている。ここでは、掃気ポート118がシリンダ110の全周囲に亘って複数設けられていることから、掃気ポート118に合わせて燃料配管146(燃料噴出口148)も、シリンダ110の周方向に亘って複数設けられている。
【0032】
燃料噴出口148は、環状配管144に流入した燃料ガスを、掃気ポート118に吸入される活性ガスに噴射する。その結果、燃料ガスは、活性ガスの流れに合流して活性ガスとともに掃気ポート118からシリンダ110内に吸入される。
【0033】
エンジンサイクルにおける所望の時点で、液体燃料噴射弁138から適量の(ディーゼル運転モードより少量の)燃料油が噴射される。この燃料油は、燃焼室130の熱で気化する。そして、燃料油が気化して自然着火し僅かな時間で燃焼して、燃焼室130の温度が極めて高くなり、燃焼室130に導かれて圧縮された燃料ガスが燃焼する。ピストン114は、主に燃料ガスの燃焼による膨張圧によって往復移動する。
【0034】
燃料ガスと燃料油では、すなわちガス運転モードとディーゼル運転モードとでは、掃気ポート118からシリンダ110の内部に活性ガスを流入させる最適なタイミングが異なる場合がある。そのため、燃料ガスと燃料油の一方に合わせて掃気ポート118の位置を設計すると、他方の燃料を用いた時に、適切なタイミングで活性ガスをシリンダ110の内部に流入させることが難しい場合がある。
【0035】
そこで、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100は、掃気ポート118のストローク方向の位置を変化させる可動部150を備えている。
【0036】
図2、
図3A、および
図3Bは、可動部150の構造を説明するための説明図である。
図2には、
図1のうち、掃気ポート118近傍を抽出して示し、
図3Aには、
図2の3A−3A線視断面を示し、
図3Bには、
図2の3B−3B線視断面を示す。ここでは、
図3A、3Bは、いずれもシリンダ110の中心軸を含む面による断面図を示す。
【0037】
図2に示すように、シリンダ110(シリンダライナ110a)は、
図2中、上側(
図1のシリンダカバー112側)の上部シリンダ152と、上部シリンダ152より、
図2中、下側(ピストン114の下死点側)に配された下部シリンダ154と、を含んで構成される。上部シリンダ152は、下部シリンダ154よりもピストン114の上死点側に位置し、掃気ポート118は、下部シリンダ154に形成されている。
【0038】
上部シリンダ152のうち、
図2中、下側(下部シリンダ154側)の下端部の内周面には、その内周面よりも径方向外側に向けて窪んだ上部溝152aが設けられている。
図3A、3Bに示すように、上部溝152aは、周方向に離隔して複数設けられ、ストローク方向に延びている。上部溝152aは、上部シリンダ152の下方に向けて開放されている。
【0039】
また、下部シリンダ154のうち、
図2中、上側(上部シリンダ152側)の上端面154aには、上部シリンダ152側に突出する下部突起154bが設けられている。下部突起154bは、上端面154aのうち径方向内側の部分に設けられている。
図3A、3Bに示すように、下部突起154bは、周方向に離隔して複数、上部溝152aと同じ間隔で設けられており、下部突起154bのストローク方向の長さ(高さ)は、上部溝152aのストローク方向の長さと略等しい。
【0040】
そして、下部シリンダ154の上端面154a(端部)が上部シリンダ152の内部にストローク方向に挿通(挿入)され、上部シリンダ152の複数の上部溝152aに、下部シリンダ154の複数の下部突起154bがストローク方向に挿通されている。すなわち、下部シリンダ154のうち、下部突起154bを除いた上端部が、上部シリンダ152のうち、上部溝152aより下側の下端部の内部に、ストローク方向で摺動可能に密に挿入されている。上部溝152aに下部突起154bが嵌合することで、上部シリンダ152に対する下部シリンダ154の周方向の回転が規制される。ただし、上部溝152a内において下部突起154bはストローク方向に摺動可能であって、上部シリンダ152に対して下部シリンダ154がストローク方向に相対移動できる。
【0041】
また、上部シリンダ152の内径(上部シリンダ152のうち、上部溝152aより上側の部分の内径)と下部シリンダ154の内径は略等しく、下部突起154bが上部溝152aに挿通された部位は、周方向の段差がほとんど生じないように設計されている。
【0042】
可動部150は、上部シリンダ152と下部シリンダ154の連結部分に設けられ、上部シリンダ152に対して下部シリンダ154をストローク方向に移動させる。具体的には、可動部150は、油圧機構で構成されており、油圧ピストン156および油圧室158を有している。ただし、可動部150は油圧機構に限定されず、上部シリンダ152に対して下部シリンダ154をストローク方向に移動可能であるならば、どのような構成であってもよい。
【0043】
上部シリンダ152の下端部のうち、上部溝152aより径方向外側には、中空部152cが設けられている。中空部152cは、上部シリンダ152の周方向に離隔して複数(ここでは、例えば4つ)、上部シリンダ152の中心軸に対して対称に配置される。すなわち、中空部152cは、上部シリンダ152の周方向に等間隔に配置されている。油圧ピストン156は、ストローク方向に摺動可能に中空部152cの内部に配され、中空部152cをストローク方向に2つの空間に区分けする。
【0044】
油圧室158は、中空部152cのうち、油圧ピストン156で区分けされた、
図2中、下側(下部シリンダ154側)の空間である。油圧室158は、不図示のオイルポンプと連通しており、オイルポンプから油圧室158に昇圧された作動油が供給される。
【0045】
油圧室158に作動油が供給されると、油圧室158に供給される作動油の油圧によって、油圧ピストン156は、
図2中、上側に移動する。また、油圧室158から作動油が排出されると、重力によって油圧ピストン156が、
図2中、下側に移動する。なお、例えば、中空部152cのうち油圧ピストン156で区分けされた2つの空間に昇圧された作動油が交互に供給されて、油圧ピストン156がストローク方向に往復移動する構成であってもよい。油圧ピストン156のストローク方向のいずれか一方側への移動は作動油によって行われ、他方側への移動は他の外力(重力やばね等の付勢力)によって行われてもよい。
【0046】
油圧ピストン156のうち、
図2中、下側には、シャフト160が固定されている。シャフト160は、上部シリンダ152のうち、油圧室158の、
図2中、下側の壁部を貫通し、掃気ポート118より下側までストローク方向に延びている。シャフト160の下端部が、下部シリンダ154の外周面に設けられた突出部154cに固定される。
【0047】
図4は、可動部150の動作を説明するための説明図である。
図4の紙面上側に示された
図4(a)は、下部シリンダ154が最上昇位置(下部シリンダ154がピストン114の上死点に最も近づいた位置、下部シリンダ154が上部シリンダ152に最も近づいた位置)にある状態を示しており、
図4の紙面下側に示された
図4(b)は、下部シリンダ154が最下降位置(下部シリンダ154がピストン114の上死点から最もストローク方向に離間した位置、下部シリンダ154が上部シリンダ152から最もストローク方向に離間した位置)にある状態を示している。
図4(a)、4(b)に示すように、油圧ピストン156が油圧等によって、
図4中、上側に移動すると、シャフト160を介して油圧ピストン156に連結されている下部シリンダ154も上側に移動する。同様に、油圧ピストン156が油圧等によって、
図4中、下側に移動すると、下部シリンダ154も下側に移動する。
【0048】
このように、可動部150によって、上部シリンダ152に対する下部シリンダ154の位置がストローク方向に変位する構成となっている。その結果、下部シリンダ154に設けられた掃気ポート118の位置も、ストローク方向に変位する。すなわち、掃気ポート118のうち、ピストン114の上死点側の開口位置118aが、ストローク方向に変位する。言い換えれば、可動部150によって、掃気ポート118のうち、ピストン114の上死点側の開口縁の位置(ピストン114の上死点に最も近い開口縁の位置、上部シリンダ152に最も近い開口縁の位置)が、ストローク方向に変化可能となっている。
【0049】
上記のように、燃料ガスと燃料油では、掃気ポート118からシリンダ110の内部に活性ガスを流入させる最適なタイミングが異なる場合がある。具体的には、燃料油を用いる場合には、燃料の燃焼後、膨張行程を長く確保するために、掃気ポート118を上死点から遠い位置(
図4中、下側)に配置する方がよい場合がある。一方、燃料ガスを用いる場合には、過早着火の原因となる燃焼室130内の高温の排気ガスを多く排出するために、掃気ポート118を上死点側(
図4中、上側)に配置して活性ガスによる掃気を早く開始する方がよい場合がある。
【0050】
燃料油を用いるディーゼル運転モードにおいては、
図4(b)に示すように、下部シリンダ154を下側に移動させ、燃料ガスを用いるガス運転モードにおいては、
図4(a)に示すように、下部シリンダ154を上側に移動させることで、掃気ポート118からシリンダ110の内部に活性ガスを適切なタイミングで流入させることが可能となる。その結果、ディーゼル運転モードでは、膨張行程を長く確保して効率向上を図るとともに、ガス運転モードでは、過早着火し難くなった分、燃料ガスの噴射量を増やして出力を上昇させることが可能となる。
【0051】
また、
図4(a)に示すように、下部シリンダ154が最も上死点側に変位した状態で、掃気ポート118の上死点側の開口位置118aが、上部シリンダ152の下端面152b(下死点側の端部)よりも、下死点側となっている。
【0052】
そのため、掃気ポート118の一部を上部シリンダ152が覆ってしまい、上部シリンダ152によって掃気ポート118からの活性ガスの流入が妨げられるといった事態を回避し、適切なタイミングでの活性ガスの流入を実現することが可能となる。
【0053】
図5は、上記実施形態の変形例におけるユニフロー掃気式2サイクルエンジン200の全体構成を示す説明図である。上述した実施形態では、燃料ガス供給機構の燃料噴出口148が燃料ガスを、掃気ポート118に吸入される活性ガスに噴射する場合について説明した。この変形例においては、シリンダ110のうち、掃気ポート118と排気ポート132の間の部分に、燃料ガス供給機構の燃料噴射ポート202が設けられている。
【0054】
燃料噴射ポート202は、シリンダ110の周方向に離隔して複数設けられている。それぞれの燃料噴射ポート202には、燃料噴射弁204が配設されている。燃料噴射弁204には、燃料配管206に連通しており、燃料配管206から導かれる燃料ガスを燃料噴射弁204が燃料噴射ポート202を通してシリンダ110内に噴射する。
【0055】
このように、燃料ガス供給機構は、燃料噴出口148が燃料ガスを、掃気ポート118に吸入される活性ガスに噴射する構成に限らず、シリンダ110に燃料噴射ポート202を設けて、燃料噴射ポート202からシリンダ110内に燃料ガスを供給する構成であってもよい。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態には限定されない。上記実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の技術的範囲において設計要求等に基づき、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態および変形例では、シリンダ110が上部シリンダ152と下部シリンダ154を含んで構成され、可動部150が、下部シリンダ154を、上部シリンダ152に対してストローク方向に変位させる場合について説明した。しかし、シリンダ110を上部シリンダ152と下部シリンダ154に分けず、可動部150は、例えば、掃気ポート118の上死点側の一部を塞ぐことで、掃気ポート118の上死点側の開口位置118a(すなわち、掃気ポート118の上死点側の開口縁の位置)を変位させてもよい。ただし、シリンダ110が上部シリンダ152と下部シリンダ154を含んで構成され、可動部150が、下部シリンダ154を、上部シリンダ152に対してストローク方向に変位させることで、掃気ポート118全体のストローク方向の変位が可能となる。すなわち、掃気ポート118の上死点側の開口縁の位置がストローク方向で変化する構成であってもよいし、掃気ポート118全体がストローク方向で変位する構成であってもよい。
【0058】
また、上述した実施形態および変形例では、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100、200が、燃料を液体燃料および燃料ガスで切り換えるデュアルフューエル型のエンジンである場合について説明した。しかし、ユニフロー掃気式2サイクルエンジン100、200は、デュアルフューエル型に限らず、液体燃料および燃料ガスの一方のみを用いるエンジンであってもよい。ただし、ユニフロー掃気式2サイクルエンジンがデュアルフューエル型である場合、ガス運転モードとディーゼル運転モードそれぞれにおいて、適切なタイミングで掃気ポート118を開き、活性ガスをシリンダ110の内部に流入させることが可能となる。
【0059】
また、上述した実施形態および変形例では、運転モードに応じて、下部シリンダ154をストローク方向に変位させる場合について説明した。しかし、運転モードに限らず、エンジンの行程に応じて下部シリンダ154をストローク方向に変位させてもよい。例えば、膨張行程においては、
図4(b)に示すように、下部シリンダ154を下死点側に位置させておき、その結果、掃気ポート118が開き始めるタイミングが遅くなり、膨張行程を長くして効率向上を図ることができる。
【0060】
一方、圧縮行程においては、
図4(a)に示すように、下部シリンダ154を上死点側に位置させておき、その結果、掃気ポート118が閉塞されるタイミングが遅くなり、掃気(吸気)時間を長くして、活性ガスの流入および排気ガスの排出を効率的に遂行することが可能となる。
【0061】
また、ガス運転モードとディーゼル運転モードのうちのいずれか一方の運転モードであるときに、エンジン効率の向上のために、エンジンの運転状況(加速時や減速時)や回転数に応じて、掃気ポート118の上死点側の開口縁の位置や掃気ポート118全体の位置をストローク方向で変化させる構成であってもよい。
【0062】
また、上述した実施形態および変形例では、下部シリンダ154の端部(上端部)が、上部シリンダ152の内部(下端部の内部)に挿通(挿入)される場合について説明したが、上部シリンダ152の端部(下端部)が下部シリンダ154の内部(上端部の内部)に挿通(挿入)されていてもよい。ただし、下部シリンダ154の端部が、上部シリンダ152の内部に挿通される場合、下部シリンダ154の外径を小さくして軽量化でき、可動部150に要する駆動力を抑えることが可能となる。
【0063】
また、上述した実施形態および変形例では、下部シリンダ154が最も上死点側に変位した状態で、掃気ポート118の上死点側の開口位置118aが、上部シリンダ152の下死点側の端部よりも下死点側である場合について説明したが、掃気ポート118の上死点側の開口位置は、上部シリンダ152の下死点側の端部と同じか、上死点側に位置してもよい。
【0064】
また、上述した実施形態および変形例では、上部溝152aおよび下部突起154bが、それぞれ周方向に離隔して複数設けられる場合について説明したが、上部溝152aおよび下部突起154bは必須の構成ではない。ただし、上部溝152aおよび下部突起154bを設けることで、上部シリンダ152に対する下部シリンダ154の周方向の回転を簡易な構成で規制できる。また、上部溝152aおよび下部突起154bを各々複数設けることで、ピストン114に設けられたピストンリングの合口(合口を形成する端部)が、上部溝152aや、周方向に隣り合う下部突起154bの間の部分に引っ掛かかることを抑制でき、ピストン114がシリンダ110の内周面に対して滑らかに摺動することが可能となる。上部溝152aおよび下部突起154bの周方向の設置数を多くすれば、ピストン114に設けられたピストンリングの合口が上部溝152a等に引っ掛かかることをさらに抑制できる。
【0065】
上述した実施形態および変形例では、シリンダ110の中心軸方向において、シリンダカバー112側を上側と称し、掃気室122側を下側と称しているが、これは実際の使用時におけるユニフロー掃気式2サイクルエンジン100、200の姿勢を限定するものではなく、適切な動作が確保できるのであればどのような姿勢で使用してもよい。