特許第6687219号(P6687219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687219
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】多層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20200413BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20200413BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20200413BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20200413BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20200413BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20200413BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20200413BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20200413BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20200413BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20200413BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20200413BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200413BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   G02B5/02 B
   G02B5/20
   G02B5/22
   G02B5/18
   F21S2/00 670
   F21V9/00
   F21V9/40
   F21V5/00 350
   F21V5/00 530
   B29C45/14
   H05K3/00 W
   F21Y115:10 500
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-567185(P2016-567185)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公表番号】特表2017-522583(P2017-522583A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2015060029
(87)【国際公開番号】WO2015169890
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】102014106585.9
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507370644
【氏名又は名称】レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】309011206
【氏名又は名称】ポリイイーツェー ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】PoryIC Gmbh & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュタール ライナー
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0314348(US,A1)
【文献】 特表2012−533760(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/049895(WO,A1)
【文献】 特開2014−052527(JP,A)
【文献】 特開昭64−001292(JP,A)
【文献】 特開2006−165198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00−5/32
H05K 3/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層体の製造方法において、
少なくとも1つの光源が配置されたキャリアプライを設ける工程と、
前記少なくとも1つの光源と反対側である前記キャリアプライの側に、少なくとも1つの開口を有する第1光学補助層を塗布する工程と、
前記第1光学補助層に、前記第1光学補助層の前記少なくとも1つの開口と位置合わせした少なくとも1つの開口を有する装飾プライを設ける工程と、
射出成形工具により前記キャリアプライおよび/または前記装飾プライにプラスチックプライを射出成形する工程と、
前記第1光学補助層と反対側である前記プラスチックプライの側に、第2光学補助層を塗布する工程と、を備えることを特徴とする多層体の製造方法。
【請求項2】
前記装飾プライは、前記キャリアプライに塗布され、
前記装飾プライは、前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源に面する側と反対側に塗布され、または、前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源に対向する側に塗布され、および/または、
前記装飾プライおよび前記キャリアプライは、前記射出成形工具の1つの金型部分に固定されており、一方の側にバックインジェクション成形されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラスチックプライは、前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源に面する側と反対側と、前記装飾プライとの間、または、前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源に対向する側と、前記装飾プライとの間に射出成形され、
前記装飾プライは、前記射出成形工具の第1の金型部分に、前記キャリアプライは、前記射出成形工具の第2の金型部分に固定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアプライは、回路基板として設けられ、前記回路基板の厚さは、50μm〜2mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記光源として、SMD−LEDおよび/またはチップLEDが使用され、前記SMD−LEDは、長さが400μm〜20mm、幅が200μm〜5mm、高さが200μm〜5mmであり、前記チップLEDは、長さが100μm〜2mm、幅が100μm〜2mm、高さが50μm〜250μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記第1および第2光学補助層は、金属の蒸着またはスパッタリングにより製造され、前記少なくとも1つの第1および第2光学補助層の厚さは、1nm〜500nm、または、前記少なくとも1つの第1および第2の光学補助層は、金属顔料含有ニスの印刷により製造され、前記少なくとも1つの第1および第2光学補助層の厚さは、0.1μm〜50μm、および/または、
前記少なくとも1つの第1および第2光学補助層は、顔料ニスを塗布することにより製造され、前記少なくとも1つの第1および第2光学補助層の厚さは、0.1μm〜50μmであることを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記装飾プライは、少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を備え、前記第1領域は、前記少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して少なくとも部分的に透明であり、前記第2領域は、前記少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明であり、
前記少なくとも1つの光源が前記装飾プライの面に直交する方向で見て前記少なくとも1つの第1領域と重なるように、前記装飾プライが配置され、および/または、
前記少なくとも1つの光源が前記装飾プライの面に直交する方向で見て前記少なくとも1つの第2領域と重なるように、前記装飾プライが配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
着色剤が前記プラスチックプライの前記射出成形に使用されるプラスチック材料、および/または、前記キャリアプライの層を形成する材料に加えられ、前記着色剤は、前記少なくとも1つの光源から出射した光を吸収および/若しくは散乱させ、並びに/または、可視波長範囲で蛍光若しくはリン光に励起され、
前記着色剤は、有機顔料および/若しくは粒子を備え、前記着色剤の粒子の大きさは、5nm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対する透明度および/または色が異なる複数の領域を備える装飾プライが設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明である部分層が前記装飾プライに塗布されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
光学活性レリーフ構造が前記装飾プライおよび/または前記キャリアプライおよび/または前記プラスチックプライに取り込まれ、および/または、
前記プラスチックプライの前記射出成形中に、1つの光学特性が異なる少なくとも2つのプラスチック複合物を使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光源に接触するために、導電トラック層が前記キャリアプライに塗布され、
金属の蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、または、積層により、および/また
は、導電顔料、ナノ粒子、ITO、ATO、導電有機ポリマー、カーボンナノチューブ、グラフェン、または、カーボンブラックを塗布することにより、前記導電トラック層が製造され、前記導電トラック層の厚さは、1nm〜500μmであり、および/または、
前記導電トラック層は、少なくとも1つの結合面を備え、補助結合面は、前記キャリアプライに直交する方向で見て前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源と面する側と反対側に設けられ、および/または、
前記導電トラック層は、少なくとも1つの巻線および/またはアンテナ構造を備え、補助巻線および/またはアンテナ構造は、前記キャリアプライに直交する方向で見て前記キャリアプライにおいて前記少なくとも1つの光源と面する側と反対側に設けられ、および/または、
少なくとも1つの電気接触エレメントが前記キャリアプライに取り付けられ、前記少なくとも1つの電気接触エレメントは、前記導電トラック層に電気的に接触し、前記プラスチックプライの射出成形中に、大部分がプラスチック複合体により囲まれ、および/または、
前記プラスチックプライの前記射出成形中に、前記導電トラック層の少なくとも1つの部分領域が前記プラスチック複合体により囲まれていない、および/または、前記プラスチックプライの前記射出成形の後に、前記導電トラック層の少なくとも1つの部分領域が配置された前記キャリアプライの部分領域が前記プラスチックプライから分離することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層体の製造方法およびその方法で製造された多層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック部品の製造において、装飾に加え、プラスチック部品への電子機能の一体化がますます要求されている。利用者に装置の特定の状態を示唆するために、従来から、照明エレメントがプラスチック部品に設けられている(例えば、動力車のスイッチエレメント、家庭用品のコントロールパネル)。
【0003】
このため、追加製造工程において、通常、照明エレメント、例えば、発光ダイオード、および/または、他の電子部品を備える従来の回路基板に、既に装飾されたプラスチック部品を接続する必要がある。更なる製造工程において、プラスチックパネルと、照明エレメントとの間に追加層を取り込む必要がある。追加層は、例えば、発光ダイオードのような点光源を面発光ダイオード(追加層形式の拡散フィルム)に変える、または、光を異なる場所に導く(追加層形式の光導体)。尚、プラグ接続により、メイン回路基板または装置のコントローラにLED回路基板を接続する必要がある。
【0004】
したがって、電子機能が一体化された装飾プラスチック部品の製造には、多くの時間と費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、装飾および電子機能が一体化された多層体を特に簡潔かつ高い費用効果で製造するための方法、および、そのような多層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1〜38の主題により達成される。
【0007】
多層体の製造方法は、以下の工程を備える。
a)少なくとも1つの光源、特に、LEDが配置されたキャリアプライを設ける工程、
b)装飾プライを設ける工程、
c)射出成形工具により、キャリアプライおよび/または装飾プライにプラスチックプライを射出成形する工程。
【0008】
このような方法により多層体が得られる。多層体は、少なくとも1つの光源、特に、LEDが配置されたキャリアプライと、装飾プライと、プラスチックプライとを備える。
【0009】
プライとは、複数の層からなる略平面構造体を意味する。例えば、フィルムまたは回路基板によりプライを構成しても良い。しかしながら、より複雑な3次元形状、特に、射出成形により製造されたプラスチックプライによりプライを構成しても良い。
【0010】
このようなプライを単独部品により構成する必要はない。例えば、印刷により基板に装飾プライを形成しても良い。
【0011】
単一作業工程により、装飾プライ、キャリアプライ、および、プラスチックプライを接合することができる。その後の電子部品の組み付けは不要になることから、装飾および照明が一体化された多層体を特に簡単かつ高い費用効果で製造することができる。更に、特に、安定した耐久性のある多層体を製造することができる。規定の位置関係で多層体の層を確実に配置することができる。
【0012】
様々な層の配置が可能である。
【0013】
まず、キャリアプライに装飾プライを塗布する。これは、プラスチックプライの射出成形前に行われる。その結果、装飾プライおよびキャリアプライは、一緒にバックインジェクション成形、または、射出成形される。ただし、射出成形の後に、フィルムの積層または印刷により、装飾プライをキャリアおよびプラスチックプライ複合体に取り付けても良い。キャリアプライおよび装飾プライは一緒に射出成形工具に取り込まれる。その結果、キャリアプライおよび装飾プライは、射出成形の間に直接接続または接合する。このため、例えば、1つの層に熱活性接着剤を設けても良い。熱活性接着剤は、射出成形処理の圧力および温度条件に応じて活性化する。
【0014】
キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に面する側と反対側に、装飾プライを設けても良い。少なくとも1つの光源からの光は、キャリアプライおよび装飾プライの両方を通過する。このため、キャリアプライは、色素体層、拡散器、または、同様の光学エレメントとして機能する。
【0015】
代わりに、キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に対向する側に、特に、光源とキャリアプライとの間に、装飾プライを設けても良い。これにより、出射光のより短い光線路が実現する。その結果、吸収損失は小さくなる。
【0016】
ここでは、キャリアプライを取り外し可能に構成しても良い。その場合、バックインジェクション成形後に、キャリアプライを取り除くことができる。これにより、光源と、装飾プライと、導電トラックのような更なる機能エレメントとがプラスチックプライに残る。
【0017】
特に、機械的締め付け手段および/または真空により、装飾プライおよびキャリアプライが射出成形工具の1つの金型部分に固定され、一方にバックインジェクション成形されることが好ましい。装飾プライまたはキャリアプライの側にバックインジェクション成形を行っても良い。バックインジェクション成形されないプライは、射出成形工具の1つの壁に対して平らになることが好ましい。その結果、このプライは、プラスチック複合物に接触しない。
【0018】
キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に面する側と反対側と、装飾プライとの間に、プラスチックプライを射出成形することが好ましい。
【0019】
代わりに、キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に対向する側と、装飾プライとの間に、プラスチックプライを射出成形しても良い。
【0020】
例えば、キャリアプライおよび装飾プライは、直接接触せずに、射出成形工具において対向する各金型部分に取り込まれる。プラスチックプライは、キャリアプライと装飾プライとの間の空間に射出成形される。このため、キャリアプライおよび装飾プライに、射出成形処理の圧力および温度条件に応じて活性化する熱活性接着剤を設けても良い。
【0021】
これらの2つの方法によりサンドイッチ構造が得られる。サンドイッチ構造では、プラスチックプライがキャリアプライおよび装飾プライにより取り囲まれる。光源は、外からアクセス可能である、または、プラスチックに完全に封入されている。
【0022】
特に、機械的な締め付け手段および/または真空により、装飾プライが射出成形工具の第1金型部分に固定され、キャリアプライが射出成形工具の第2金型部分に固定されることが好ましい。
【0023】
各層が射出成形工具の内壁に対して平らになることが好ましい。その結果、各層は一方の側のみでプラスチック複合物に接触する。
【0024】
装飾プライの厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0025】
例えば、順番に複数の層、例えば、印刷層またはニス層を有するフィルム形式の独立エレメントとして、装飾プライを設けても良い。
【0026】
代わりに、印刷、特に、鋳造、スクリーン印刷、凹版印刷、または、パッド印刷により、および/または、ニス塗りにより、装飾プライをキャリアプライおよび/またはプラスチックプライ上に設けても良い。
【0027】
特に、PET(ポリエチレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、カプトン(登録商標)(ポリ−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)、または、他のポリイミド、PLA(ポリ乳酸)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、または、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなるフィルムとして、キャリアプライを設けることが好ましい。フィルムの厚さは、1μm〜500μm、好ましくは、20μm〜300μmである。
【0028】
このようなキャリアフィルムにより、特に薄く柔軟性のある多層体を製造することができる。
【0029】
代わりに、キャリアプライを回路基板として設けても良い。回路基板は、特に、FR4(エポキシ樹脂マトリックスのグラスファイバー繊維)、ポリイミド、または、紙からなる。回路基板の厚さは、50μm〜2mm、好ましくは、100μm〜1.5mmである。
【0030】
これにより、特に良好な機械的安定性を備える多層体を製造することができる。このような多層体は、厳しい条件での使用に適している。
【0031】
プラスチックプライの射出成形のために、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリオキシメチレン)、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)、SAN(スチレン−アクリロニトリル)、または、TPU(熱可塑性ポリウレタン)からなる少なくとも1つのプラスチック複合物を使用することが好ましい。
【0032】
適切なプラスチック材料を選択することにより、所望の使用分野に応じて多層体の材料特性を広い範囲で変えることができる。
【0033】
混合物として、または、多成分射出成形処理の枠組み内で、複数のプラスチックを組み合わせても良い。
【0034】
プラスチックプライは、予熱した工具により、150℃〜350℃、好ましくは、200℃〜300℃の化合物温度、および/または、500bar〜2800bar、好ましくは、700bar〜2500barの圧力で射出成形されることが好ましい。
【0035】
プラスチックプライの射出成形には、部分的に平坦且つ平行な少なくとも2つの内壁を備えるキャビティを有する射出成形工具を用いることが好ましい。
【0036】
プラスチックプライの射出成形前に、キャリアプライおよび装飾プライがこれらの内壁の両方または一方に取り付けられると、平坦な多層体を得られる。
【0037】
代わりに、プラスチックプライの射出成形のために、部分的に曲がった少なくとも1つの内壁を備えるキャビティを有する射出成形工具を用いても良い。
【0038】
この方法により、より複雑な3次元形状の多層体を得ることができる。曲率は部分的に存在する。キャビティ内のスライダーおよび/またはコアを使用することにより、多層体の形状をより複雑にすることができる。ここでは、射出成形から得られる通常の全ての構成が利用可能である。
【0039】
光源として、SMD−LED(SMD=Surface Mounted Device)および/またはチップLEDを使用することが好ましい。SMD−LEDは、長さが400μm〜20mm、好ましくは、0.6mm〜2mm、幅が200μm〜5mm、好ましくは、0.3mm〜1.25mm、高さが200μm〜5mm、好ましくは、0.2mm〜1.5mmである。チップLEDは、長さが100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、幅が100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、高さが50μm〜250μm、好ましくは、75μm〜125μmである。
【0040】
代わりの光源として、原則として、有機発光ダイオード(OLED)、発光セル(LEC)、または、エレクトロルミネッセンスディスプレイを使用しても良い。
【0041】
更に、照明エレメントに加え、照明エレメントと相互に接続されるロジック回路、レジスタ、ダイオード、圧電ラウドスピーカーのような更なる部品を一体化しても良い。照明エレメントは、中でも、情報状態を表示するために使用される。代わりに、または、更に、キャリアに電気泳動またはエレクトロクロミックディスプレイのような非自己発光ディスプレイエレメントを一体化しても良い。
【0042】
装飾プライおよび/またはキャリアプライおよび/または射出成形プライに、少なくとも1つの光学補助層、特に、反射層または吸収層を塗布することが好ましい。
【0043】
このような補助層により、多層体内での光の誘導を制御することができる。例えば、一方の側のみに光を出射させることができ、または、散乱光の妨げを回避することができる。このような補助層を部分的に塗布することで、補助層は、少なくとも1つの光源からの光のための所定の出力開口を提供することができる。
【0044】
反射層の製造のために、金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着またはスパッタリングにより、少なくとも1つの光学補助層を製造することが好ましい。光学補助層の厚さは、1nm〜500nm、好ましくは、5nm〜100nmである。
【0045】
代わりに、金属顔料含有ニスの印刷により、反射層を製造しても良い。反射層の厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0046】
吸収層を塗布するために、特に、カーボンブラック顔料を備える顔料ニスを塗布することにより、少なくとも1つの光学補助層を製造することが好ましい。吸収層の厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0047】
設けられた装飾プライが少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を備えることが好ましい。第1領域は、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して少なくとも部分的に透明である。第2領域は、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明、例えば、不透明である。
【0048】
この方法により、多層体からの光の出射を制御することができる。第1および第2領域は、簡単なディスプレイ面、または、複雑な光学情報を形成する。
【0049】
少なくとも1つの光源が装飾プライの表面に直交する方向で見て少なくとも1つの第1領域と重なるように、装飾プライを配置することが好ましい。
【0050】
この構成により、光の直接出射が可能となる。かかる構成は、例えば、ディスプレイ面の点照明に使用しても良い。
【0051】
代わりに、少なくとも1つの光源が装飾プライの面に直交する方向で見て少なくとも1つの第2領域と重なるように、装飾プライを配置しても良い。
【0052】
この場合、第1領域を介した光の直接出射はできない。かかる構成は、例えば、平坦構造の均等なバックライトに使用しても良い。
【0053】
魅力的な光学効果を実現するために、少なくとも1つの光源による光の直接的および間接的な集光を組み合わせても良い。
【0054】
プラスチックプライの射出成形のために使用されるプラスチック材料、および/または、キャリアプライの層を形成する材料に、着色剤、特に、染料および/または顔料および/または粒子および/または量子ドット材料および/またはリン光材料を加えることができる。着色剤は、少なくとも1つの光源から出射した光を吸収および散乱させ、および/または、可視波長範囲で蛍光またはリン光に励起される。
【0055】
これにより、プラスチックプライおよび/またはキャリアプライにおいて均一な配光を実現することができる。これは、均一なバックライト面を創造するために特に適している。
【0056】
同時に、または、代わりに、特に、蛍光灯または吸収物質または量子ドットを使用することにより、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルは影響を受ける。その結果、様々な色効果が得られる。
【0057】
加えられた着色剤は、特に、二酸化ケイ素、発熱ケイ酸、二酸化チタン、硫化亜鉛、または、金属からなる無機顔料および/または粒子を備えることが好ましい。粒子の大きさは、5nm〜500μm、好ましくは、500nm〜100μmである。
【0058】
キャリアプライの1面が艶消しであることが好ましい。
【0059】
これにより、均一な被照面を実現するために、キャリアプライの輝度が均一化される。このため、追加の拡散器を省略することができる。
【0060】
装飾プライが設けられることが好ましい。当該装飾プライは、少くなくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対する透明度および/または色が異なる複数の領域を有する。
【0061】
これにより、外観が使用された光源の色に直接依存しない多色グラフィックエレメントが得られる。そのような装飾プライは平坦に塗布され、出射開口を有しないことが特に好ましい。尚、この方法により、少なくとも1つの光源の消灯状態で視認できない装飾が実現される。
【0062】
装飾プライに、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明である部分層、特に、光学情報を備える金属層を塗布することが好ましい。
【0063】
これにより、光の所定の出射形状が創造される。これは、特に、平坦に塗布された装飾プライに有益である。このため、少なくとも1つの光源が光を発する場合のみ所望の光学情報が視認可能になる。
【0064】
装飾プライおよび/またはキャリアプライおよび/またはプラスチックプライに、光学活性レリーフ構造、特に、回折構造、0次回折構造、マクロ構造、レンズ構造、マイクロレンズ構造、マイクロプリズム構造を取り込むことが好ましい。特に、装飾プライの製造中に、特に、複製、および/または、射出成形工具に配置されたマトリックスによるプラスチックプライへの成形により、このような構造が取り込まれることが好ましい。各金型部分にマトリックスを接合しても良く、または、個別のインサートまたはインサート部としてマトリックスを構成しても良い。
【0065】
そのような構造により、多層体からの光の出射を目的通り制御することができる。少なくとも1つの光源に対するレリーフ構造の種類およびその相対的な配置に応じて、光源から出射した光の集光を目的通り部分的に支持または防止することができる。
【0066】
プラスチックプライの射出成形中に、少なくとも2つのプラスチック複合物を使用することが好ましい。これらのプラスチック複合物は、光学特性、特に、光学屈折率が異なる。
【0067】
これは、様々な多成分射出成形処理により行われる。例えば、異なる射出成形工具により異なるプラスチック複合物の鋳造を順番に行っても良い。しかしながら、代わりに、例えば、適切なスライダーにより、その後の鋳造の工程のために、射出成形工具の形状を変更しても良い。鋳造工程のために、異なる工具インサートに近接する回転板に、プラスチックプライまたはキャリアプライを位置決めしても良い。
【0068】
異なるプラスチック複合物から製造されたプラスチックプライの部分領域の形状、特に、これらの部分領域の間の境界面の形状、および、屈折率の違いに応じて、光を導くことができる様々な効果を達成することができる。特に、光反射によりレンズ効果を達成することができ、または、境界面での全反射により鏡面を創造することができる。
【0069】
少なくとも1つの光源に接触するように、キャリアプライに導電トラック層を塗布することが好ましい。
【0070】
これにより、外部接触手段、例えば、追加の印刷回路基板を省略することができる。このため、多層体の製造および組立を特に容易にすることができる。導電トラック層により、キャリアプライに任意に設けられた更なる電子部品、例えば、センサー、アンテナ構造が接触する。
【0071】
金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、または、積層、および/または、導電顔料、ナノ粒子、ITO(インジウムスズ酸化物)、ATO(アンチモンスズ酸化物)、導電有機ポリマー、特に、PEDOT(ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフエン))またはPANI(ポリアリニン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、または、カーボンブラックの塗布により、導電トラック層を製造することが好ましい。導電トラック層の厚さは、1nm〜500μm、好ましくは、10nm〜50μmである。
【0072】
導電トラック層は、少なくとも1つの結合面を備えることが好ましい。キャリアプライに直交する方向で見てキャリアプライにおいて少なくとも1つの光源と面する側と反対側に、補助結合面が塗布される。
【0073】
補助結合面を介して、導電トラック層に容量的に交流電圧が結合する。このため、光源または電子部品に電圧を供給するために、または、電子部品に制御信号を転送するために、多層体の表面に連続的に導電構造を設けることが不要になる。
【0074】
代わりに、または、更に、導電トラック層は、少なくとも1つの巻線および/またはアンテナ構造を備えても良い。キャリアプライに直交する方向で、少なくとも1つの光源と面する側と反対側であるキャリアプライの面に、補助巻線および/またはアンテナ構造を設ける。
【0075】
これにより、交流電圧が非接触で結合し、または、制御信号が送信される。しかしながら、この場合、結合は誘導的に行われる。
【0076】
更に、少なくとも1つの電気接触エレメントをキャリアプライに取り付けても良い。電気接触エレメントは、導電トラック層に電気的に接触し、プラスチックプライの射出成形中に、ほとんどの部分がプラスチック複合物により取り囲まれる。
【0077】
この場合、導電トラック層は外部に直接接触する。これは、任意で適切なプラグコネクター等により行われる。
【0078】
電気接触エレメントとして、キャリアプライを介したスルーコネクションおよび/または圧着エレメントを取り付けることが好ましい。
【0079】
更に、または、代わりに、プラスチックプライの射出成形中に、プラスチック複合物により導電トラック層の少なくとも1つの部分領域を取り囲まなくても良い、および/または、プラスチックプライの射出成形後に、導電トラック層の少なくとも1つの部分領域が配置されたキャリアプライの部分領域をプラスチックプライから取り除いても良い。
【0080】
導電トラック層の直接接触がこの方法で可能になる。
【0081】
本発明を、実施例を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1は、装飾プライと、キャリアプライと、照明エレメントと、キャリアプライ2の一方の側にバックインジェクション成形されたプラスチックプライとを備える多層体の実施例を示す。
図2図2は、装飾プライと、キャリアプライと、照明エレメントと、装飾プライおよびキャリアプライの間に配置されたプラスチックプライとを備える多層体の別の実施例を示す。
図3図3は、一体化された導電トラックを備える光学補助層の概略図である。
図4図4は、装飾プライと、キャリアプライと、照明エレメントと、装飾プライおよびキャリアプライの間に配置されたプラチックプライとを備える多層体の別の実施例を示す。
図5図5は、装飾プライと、キャリアプライと、照明エレメントと、キャリアプライの一方の側にバックインジェクション成形されたプラスチックプライとを備える多層体の実施例を示す。
図6図6は、間接的にバックライト照明された装飾を備える多層体の実施例の上面図である。
図7図7は、図6に示す多層体の断面図である。
図8図8は、直接的にバックライト照明された装飾を備える多層体の実施例の上面図である。
図9図9は、図8に示す多層体の断面図である。
図10図10は、プラスチックプライに加えられた拡散粒子を備える多層体の別の実施例を示す。
図11図11は、全面に光回折格子を備える多層体の別の実施例を示す。
図12図12は、プラスチックプライおよびキャリアプライにおいて、全面に光回折格子を備える多層体の別の実施例を示す。
図13図13は、プラスチックプライの一部の面に光回折格子を備える多層体の別の実施例を示す。
図14図14は、反射構造を有する多成分プラスチックプライを備える多層体の実施例を示す。
図15図15は、レンズ構造を有する多成分プラスチックプライを備える多層体の実施例を示す。
図16図16は、キャリアプライを介してスルーコネクションを備える多層体の別の実施例を示す。
図17図17は、側方圧着接続構造を備える多層体の別の実施例を示す。
図18図18は、容量接続構造を備える多層体の実施例を示す。
図19図19は、誘導接続構造を備える多層体の実施例を示す。
図20図20は、部分的にアクセス可能な導電トラック層を備える多層体の別の実施例を示す。
図21図21は、端部において部分的にアクセス可能な導電トラック層を備える別の実施例を示す。
図22図22は、部分的に分離可能なキャリアプライを備える多層体の別の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は多層体1の第1実施例を示す。多層体1はキャリアプライ2を備える。光学補助層3においてキャリアプライ2が設けられる側と反対側には、装飾プライ4が設けられる。
【0084】
装飾プライ4には、開口41が設けられている。開口41は光学補助層3も貫通する。
ここでは図示しないが、光学透明ニスまたは他の材料をこれらの開口41に配置しても良い。
【0085】
キャリプライ2において補助層3および装飾プライ4に面する側と反対側には、導電トラック層5が塗布されている。導電トラック層5により光源6が接触する。
【0086】
光源6側には、プラスチックプライ7が射出成形されている。プラスチックプライ7には、更なる光学補助層3’が接続されている。
【0087】
キャリアプライ2をフィルムとして形成することができる。キャリアプライ2は、PET、PEN、PC、PVC、カプトン(登録商標)、PLA、PMMA、または、ABSからなる。キャリアプライ2の厚さは、1μm〜500μm、好ましくは、20μm〜300μmである。
【0088】
キャリアプライ2を回路基板として構成しても良い。キャリアプライ2は、特に、FR4、ポリイミド、または、紙からなる。キャリアプライ2の厚さは、50μm〜2mm、好ましくは、100μm〜1.5mmである。
【0089】
反射層または吸収層により補助層3、3’を構成しても良い。補助層3、3’により、各光源6は、それぞれに対応して配置された開口41を介してのみ視認可能である。その結果、光の散乱が防止される。横方向の散乱光が開口内において反射層で反射することにより、開口41内での光源の光の出力が増加する。
【0090】
反射層は、金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着、スパッタリング等により製造されることが好ましい。反射層の厚さは、1nm〜500nm、好ましくは、5nm〜100nmである。
【0091】
吸収層には、特に、カーボンブラック顔料を備える着色ニスを使用することができる。吸収層の厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0092】
装飾プライ4をフィルム、特に、積層またはIMDフィルム(IMD=in−mold decoration)で構成しても良い。装飾プライ4の厚さは、0.1μm〜50μm、特に好ましくは、1μm〜20μmである。
【0093】
装飾プライ4を印刷またはニス層で構成しても良い。印刷、特に、スクリーン印刷、凹版印刷、パッド印刷により、および/または、キャリアプライおよび/またはプラスチックプライにニスを塗ることにより、装飾プライ4を塗布することが好ましい。
【0094】
装飾プライ4は複数の層または領域を有し、複数の層または領域はそれぞれ異なる光学特性を備える。その結果、複雑な視覚デザインを創造することができる。装飾プライ4のデザインの具体例は、更なる実施例を参照して後述する。
【0095】
金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、または、積層により、および/または、導電顔料、ナノ粒子、ITO、ATO、導電有機ポリマー、特に、PEDOTまたはPANI、カーボンナノチューブ、グラフェン、または、カーボンブラックの塗布により、導電トラック層5を製造することが好ましい。導電トラック層5の厚さは、1nm〜500μm、好ましくは、10nm〜50μmである。
【0096】
図3に示すように、導電トラック層5を光学補助層3に一体化することにより、光学特性を提供することができる。例えば、光学補助層を蒸着金属層、スパッタ金属層、または、印刷金属層からなる反射金属層で構成しても良く、同時に、適切な構造化により金属導電トラックを提供しても良い。
【0097】
光源6は、発光ダイオードであることが好ましい。ここでは、特に、SMD−LEDおよび/またはチップLEDを使用しても良い。SMD−LEDは、長さが400μm〜20mm、好ましくは、0.6mm〜2mm、幅が200μm〜5mm、好ましくは、0.3mm〜1.25mm、高さが200μm〜5mm、好ましくは、0.2mm〜1.5mmである。チップLEDは、長さが100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、幅が100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、高さが50μm〜250μm、好ましくは、75μm〜125μmである。別の光源として、原理上、有機発光ダイオード(OLED)、発光セル(LEC)、または、エレクトロルミネッセンスディスプレイを使用しても良い。
【0098】
射出成形により、プラスチックプライ7を製造することが好ましい。このため、キャリアプライ2と、キャリアプライ2に配置された層3、4、5と、光源6とを有する複合体を射出成形のキャビティに導入し、プラスチック複合物と共にバックインジェクション成形する。キャリアプライ2とプラスチックプライ7との間のより良い接着性のために、キャリアプライ2と、キャリアプライ2に配置された層3、4、5と、光源6とを有する複合体のプラスチックプライ7側に、熱活性接着剤層を任意に塗布しても良い。
【0099】
PMMA、ABS、PS、PE、PP、PC、POM、PA、ASA、SAN、または、TPUをプラスチック化合物として使用することができる。混合物として、または、多成分処理により、これらの粒子を組み合わせても良い。
【0100】
プラスチックプライ7は、予熱された工具で、150℃〜350℃、好ましくは、200℃〜300℃の温度、500bar〜2800bar、好ましくは、700bar〜2500barの圧力で射出成形されることが好ましい。
【0101】
以下に説明する多層体1の更なる実施例は、実質的には、層および複合体の数、配置、および、幾何学的設計において上記実施例と異なる。上記した個々の層およびエレメントの特性は、以下の実施例でも有効である。
【0102】
図2に係る実施例では、装飾プライ4および光学補助層は、プラスチックプライ7の第1の側に配置され、導電トラック層5および光源6を備えるキャリアプライ2は、プラスチックプライ7の第1の側と反対側である第2の側に配置される。光源は、プラスチックプライ7から離れて配置され、ここでは、開口41に重ならない。その結果、光源は、間接的なバックライト光源となる。
【0103】
この変形例では、IMD処理により、装飾プライ4および光学補助層3が直接プラスチックプライ7に塗布される。LED6を備えるキャリアプライ2は、キャリアプライを備える装飾プライ4と反対側である射出成形工具の側において、射出成形体の方向に配置されている。ここでは、1つの作業でプラスチックプライ7にキャリアプライ2を装飾および塗布することができる。
【0104】
図4に係る実施例は、図2に係る実施例と同様に構成されている。この実施例は、以下の点において図2に係る実施例と異なる。光源6および導電トラック層5を備えるキャリアプライ2は、プラスチックプライ7に向かって配置され、光源6は開口41と重なって配置される。その結果、光源6は、直接的なバックライト光源となる。キャリアプライ2において光源6に面する側と反対側には、更なる補助層3’が配置されている。光の出力を増大させるために、補助層3’は、キャリアプライ2において光源6に面する側と反対側への光の出射を防ぎ、後方への光を前方へ反射する。しかしながら、隣接する光源から開口内への光の散乱を防止する場合は、この光学補助層3’は吸収層として構成される。
【0105】
図5に係る実施例では、プラスチックプライ7は、図1に係る実施例と同様に、多層体1の一方の側に射出成形されている。しかしながら、ここでは、図1と反対に、装飾プライ4、導電トラック層5、および、光源6は、キャリアプライ2の同じ側に配置され、プラスチックプライ7と一致している。ここでは、補助層3、3’は省略されている。
【0106】
図6は、多層体1の更なる実施例の上面図を示す。図7は、図6に示す多層体1の断面図を示す。ここでは、LED6からの光は間接的に集光されている。LED6は、装飾プライ4の開口41の下方に配置されていないことが好ましい。大きいまたは小さい出射開口41に光が均一に分配されることが好ましい。この場合、できるだけ多くの光が出射開口41に反射されるように、追加の光学補助層3、3’がミラー、例えば、ミラー蒸着またはスパッタ金属層として構成されることが好ましい。
【0107】
設計上の理由から、LED6の消灯時には照明構造が見えなくなる、または、LED6の点灯時に装飾プライ4がLEDの光の色を変えることが要求されることもある。図6に示す装飾プライ4がLED6上に連続するように設計されている場合に、このような要求は満たされる。装飾プライは、所望の装飾を形成する異なる色、構造、および、透過率の領域42、43を有する。
【0108】
特に、表面が単色、および、表示される構造がLED6の点灯状態のみで視認可能な場合は、装飾プライ4を連続して印刷することが好ましい。照明構造は、金属または遮光層3上に形成されることが好ましい。金属または遮光層3は、開口(装飾プライ4の下方のシャドウマスクを形成する)として表示される構造を含む。ここでは、図1に示す層順序を使用することができる。ただし図1との違いとして、装飾プライ4が開口41なしで印刷される。
【0109】
例えば、指標としてLED6が直接視認可能な場合は、図8および9に示すように、装飾プライ4は、視覚方向でLED6の上方に開口41を備える。隣接する開口41への光の放出(光学的なクロストーク)を防止するために、LED6の直接光線路の外側に配置された光学補助層3、3’は、できるだけ光を吸収するように構成されている。
【0110】
均一な光効果を達成する場合は、例えば、LED6がバックライト光源として文字を照明する場合は、できるだけ均一な配光が要求される。プラスチックプライ7の射出成材料および/またはキャリアプライ2において、多くのLED6(複雑かつ高価な構造)、または、拡散粒子71、および/または、均一に配分された蛍光塗料を使用することで、光の均一化を達成することができる。このような構成は図10に示されている。
【0111】
材料および/または蛍光を着色することにより、更なる色彩効果が得られる。光散乱粒子71として機能する不溶性蛍光顔料を可溶性蛍光塗料に加えても良い。
【0112】
光散乱粒子71は、特に、二酸化ケイ素、発熱ケイ酸、二酸化チタン、硫化亜鉛、または、金属からなる無機顔料および/または粒子を備えても良い。粒子のサイズは、5nm〜500μm、好ましくは、500nm〜100μmである。
【0113】
プラスチックプライ7および/または装飾プライ4に微細な光回折格子72を使用しても良い。微細な光回折格子72は、光の集光を防止または支持する。この光回折格子72には、サブ波長格子だけでなく、比較的深くおよび/または粗い構造、特に、反射効果を備えるマイクロプリズムも適している。サブ波長格子のパラメータは、200nm〜500nmの周期が好ましく、100nm〜500nmの深さが好ましい。格子の種類は、線状、交差、または、六角形格子系から選択されることが好ましい。マイクロプリズムが使用されている場合は、プリズムの横方向の範囲dxまたはdyは、1μm〜100μm、好ましくは、5μm〜50μmである。プリリズム構造の深さは、横方向の範囲の略0.3〜2倍であることが好ましい。マイクロプリズムを定期的、すなわち、周期的に配置しても良い。また、マイクロプリズムをランダムまたは擬似ランダムに配置しても良い。
【0114】
装飾プライ4および/または光学補助層3および/またはプラスチックプライ7において、光回折格子72を全面(図11参照)または開口41の部分(図13参照)のみに配置しても良い。
【0115】
例えば、複製または射出成形工具の構造化により、光回折格子72を製造することができる。その結果、光回折格子72は、プラスチックプライ7の射出成形の間に形成される。
【0116】
更なる変形例として、図12に示すように、更なる光回折格子21をキャリアプライ2に設けても良い。ここでは、開口41は光回折格子72により覆われていない。矢印はLED6から出射した光の光線路を示す。
【0117】
更に、図15に示すように、特に、光反射によるレンズ効果を達成するために、または、図14に示すように、境界面で光を反射するために、それぞれ異なる屈折率の2つの異なる射出成形物を使用しても良い。2つの異なる射出成形物は、それぞれ、プラスチックプライ7の部分領域73、74を形成する。例えば、この方法により、クロストーク、すなわち、複数の出射開口41の間の光学クロストークを防止することができる、または、出射開口41からの光の出力を増加させることができる。
【0118】
このような場合、プラスチックプライ7は2つの射出成形物により形成される。領域73、74は別々の工具で注入される。すなわち、まず、領域73がLED6上に注入され、加工対象物が除去され、第2工具に挿入される。その後、そこに領域74が注入される。
【0119】
更に、回転板を使用することも可能である。まず、例えば、領域73が注入される。その後、工具が開放され、回転板により射出成形物が半回転する。その結果、射出成形物が第2工具インサートの反対に位置する。その後、そこに領域74が注入される。
【0120】
これと同時に、領域73が第2の加工対象物に取り付けられる。第1の加工対象物に領域74を注入した後に、完成した第1の加工対象物が除去され、回転板が再び半回転する。
【0121】
スライダーの使用によりキャビティが変化する工具を使用しても良い。
【0122】
以下の実施例は、導電トラック層5の電気接触に関する。直接的なガルバニック接触または非接触により、このような電気接触を実現することができる。
【0123】
直接接触のために、図16に示すように、キャリアプライ2を介してスルーコネクション8(VIA=Vertical Interconnect Access)を取り付けても良い。これにより、導電トラック層に電力が直接供給される。例えば、キャリアプライ2に予め形成された穴の中に金属を堆積すること、または、金属ピンを挿入することにより、このようなスルーコネクション8を例えば電気的に製造することができる。圧着技術を使用しても良い。これらは、キャリアプライ2が射出成形により加工される前に行われる。
【0124】
図17に示す第2導電トラック基板9を使用することにより、圧着により導電トラック層が電気的に接触する。第2導電トラック基板9は、キャリアプライ2上の導電トラック層5の側に配置されており、圧着技術により固定されている。
【0125】
この方法では、多層体1側で接触を実現することができる。このような機械的な接合は、射出成形処理前に、または、射出成形処理の間に、別々の工程で統合圧着工具を用いて行われる。
【0126】
導電トラック基板の接合には、機械的な接合技術だけでなく接着またははんだ付けが使用される。この工程は、射出成形処理の前に別々に行われる。
【0127】
図18に示すように、導電トラック層5の間接的な接触を容量的に行っても良い。容量結合は、導電トラック層5内の2つの結合面51に基づいて行われる。それぞれの結合面51は、外側に配置された対応する結合面10に少なくとも部分的に重なるように、配置される必要がある。交流電界を印加することにより、互いに重なって配置された結合面10、51で形成されたコンデンサーに反対の電界が構築される。その結果、導電トラック層5に接触した負荷を介して電流が流れる。
【0128】
誘導結合を達成するために、互いに重なって配置された結合面の代わりに、アンテナ構造52、11を同様に配置しても良い。外部送信アンテナ11が内部受信アンテナ52と共振するように、これらのアンテナは調整されている。図19は、この基本的な構造を示す。
【0129】
この例では、導電トラック層5が直接接触していない場合でも、誘導結合により、交流が導電トラック層5で得られる。適切な部品を用いて整流を行っても良い。アンテナ11、52の大きさおよび形に応じて、共振周波数および範囲を設定しても良い。信号の変調により、情報および制御コマンドをキャリアプライ2に一体化された電子機器に送信する。外部アンテナ52をキャリアプライ2に直接取り付けても良い、または、多層体1の完成後に取り付けても良い。
【0130】
更に、プラスチックプライ7の射出成形の間に、プラスチックで完全に囲まずに導電トラック層5を直接接触させても良い。図20に示すように、プラスチックプライ7に開口75を形成しても良い、または、プラスチックプライ7をキャリアプライ2の端部まで塗布しなくても良い。その結果、キャリアプライの突出タブ22が形成される。導電トラック層5は突出タブ22に接触する(図21参照)。
【0131】
代わりに、図22に示すように、プラスチックプライ7の射出成形後に、導電トラック層5が広がっているキャリアプライ2の部分領域23をプラスチックプライ7から分離しても良い。このため、射出成形の前に、部分領域23に対応の分離層を任意で塗布しても良い。分離層は、ワックス、シロキサンポリマー、または、フッ素含有ポリマー(例えば、テフロン(登録商標))からなることが好ましい。分離層の厚さは、10nm〜5μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【符号の説明】
【0132】
1 多層体
2 キャリアプライ
3、3’光学補助層
4 装飾プライ
5 導電トラック層
6 光源
7 プラスチックプライ
8 スルーコネクション
9 導電トラック基板
10 結合面
11 アンテナ構造
21 回折構造
22 タブ
23 キャリアプライの分離可能領域
41 開口
42、43 キャリアプライの領域
51 結合面
52 アンテナ構造
71 拡散粒子
72 回折構造
73、74 プラスチックプライの領域
75 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22