【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1〜38の主題により達成される。
【0007】
多層体の製造方法は、以下の工程を備える。
a)少なくとも1つの光源、特に、LEDが配置されたキャリアプライを設ける工程、
b)装飾プライを設ける工程、
c)射出成形工具により、キャリアプライおよび/または装飾プライにプラスチックプライを射出成形する工程。
【0008】
このような方法により多層体が得られる。多層体は、少なくとも1つの光源、特に、LEDが配置されたキャリアプライと、装飾プライと、プラスチックプライとを備える。
【0009】
プライとは、複数の層からなる略平面構造体を意味する。例えば、フィルムまたは回路基板によりプライを構成しても良い。しかしながら、より複雑な3次元形状、特に、射出成形により製造されたプラスチックプライによりプライを構成しても良い。
【0010】
このようなプライを単独部品により構成する必要はない。例えば、印刷により基板に装飾プライを形成しても良い。
【0011】
単一作業工程により、装飾プライ、キャリアプライ、および、プラスチックプライを接合することができる。その後の電子部品の組み付けは不要になることから、装飾および照明が一体化された多層体を特に簡単かつ高い費用効果で製造することができる。更に、特に、安定した耐久性のある多層体を製造することができる。規定の位置関係で多層体の層を確実に配置することができる。
【0012】
様々な層の配置が可能である。
【0013】
まず、キャリアプライに装飾プライを塗布する。これは、プラスチックプライの射出成形前に行われる。その結果、装飾プライおよびキャリアプライは、一緒にバックインジェクション成形、または、射出成形される。ただし、射出成形の後に、フィルムの積層または印刷により、装飾プライをキャリアおよびプラスチックプライ複合体に取り付けても良い。キャリアプライおよび装飾プライは一緒に射出成形工具に取り込まれる。その結果、キャリアプライおよび装飾プライは、射出成形の間に直接接続または接合する。このため、例えば、1つの層に熱活性接着剤を設けても良い。熱活性接着剤は、射出成形処理の圧力および温度条件に応じて活性化する。
【0014】
キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に面する側と反対側に、装飾プライを設けても良い。少なくとも1つの光源からの光は、キャリアプライおよび装飾プライの両方を通過する。このため、キャリアプライは、色素体層、拡散器、または、同様の光学エレメントとして機能する。
【0015】
代わりに、キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に対向する側に、特に、光源とキャリアプライとの間に、装飾プライを設けても良い。これにより、出射光のより短い光線路が実現する。その結果、吸収損失は小さくなる。
【0016】
ここでは、キャリアプライを取り外し可能に構成しても良い。その場合、バックインジェクション成形後に、キャリアプライを取り除くことができる。これにより、光源と、装飾プライと、導電トラックのような更なる機能エレメントとがプラスチックプライに残る。
【0017】
特に、機械的締め付け手段および/または真空により、装飾プライおよびキャリアプライが射出成形工具の1つの金型部分に固定され、一方にバックインジェクション成形されることが好ましい。装飾プライまたはキャリアプライの側にバックインジェクション成形を行っても良い。バックインジェクション成形されないプライは、射出成形工具の1つの壁に対して平らになることが好ましい。その結果、このプライは、プラスチック複合物に接触しない。
【0018】
キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に面する側と反対側と、装飾プライとの間に、プラスチックプライを射出成形することが好ましい。
【0019】
代わりに、キャリアプライにおいて少なくとも1つの光源に対向する側と、装飾プライとの間に、プラスチックプライを射出成形しても良い。
【0020】
例えば、キャリアプライおよび装飾プライは、直接接触せずに、射出成形工具において対向する各金型部分に取り込まれる。プラスチックプライは、キャリアプライと装飾プライとの間の空間に射出成形される。このため、キャリアプライおよび装飾プライに、射出成形処理の圧力および温度条件に応じて活性化する熱活性接着剤を設けても良い。
【0021】
これらの2つの方法によりサンドイッチ構造が得られる。サンドイッチ構造では、プラスチックプライがキャリアプライおよび装飾プライにより取り囲まれる。光源は、外からアクセス可能である、または、プラスチックに完全に封入されている。
【0022】
特に、機械的な締め付け手段および/または真空により、装飾プライが射出成形工具の第1金型部分に固定され、キャリアプライが射出成形工具の第2金型部分に固定されることが好ましい。
【0023】
各層が射出成形工具の内壁に対して平らになることが好ましい。その結果、各層は一方の側のみでプラスチック複合物に接触する。
【0024】
装飾プライの厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0025】
例えば、順番に複数の層、例えば、印刷層またはニス層を有するフィルム形式の独立エレメントとして、装飾プライを設けても良い。
【0026】
代わりに、印刷、特に、鋳造、スクリーン印刷、凹版印刷、または、パッド印刷により、および/または、ニス塗りにより、装飾プライをキャリアプライおよび/またはプラスチックプライ上に設けても良い。
【0027】
特に、PET(ポリエチレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、カプトン(登録商標)(ポリ−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)、または、他のポリイミド、PLA(ポリ乳酸)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、または、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなるフィルムとして、キャリアプライを設けることが好ましい。フィルムの厚さは、1μm〜500μm、好ましくは、20μm〜300μmである。
【0028】
このようなキャリアフィルムにより、特に薄く柔軟性のある多層体を製造することができる。
【0029】
代わりに、キャリアプライを回路基板として設けても良い。回路基板は、特に、FR4(エポキシ樹脂マトリックスのグラスファイバー繊維)、ポリイミド、または、紙からなる。回路基板の厚さは、50μm〜2mm、好ましくは、100μm〜1.5mmである。
【0030】
これにより、特に良好な機械的安定性を備える多層体を製造することができる。このような多層体は、厳しい条件での使用に適している。
【0031】
プラスチックプライの射出成形のために、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PS(ポリスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリオキシメチレン)、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)、SAN(スチレン−アクリロニトリル)、または、TPU(熱可塑性ポリウレタン)からなる少なくとも1つのプラスチック複合物を使用することが好ましい。
【0032】
適切なプラスチック材料を選択することにより、所望の使用分野に応じて多層体の材料特性を広い範囲で変えることができる。
【0033】
混合物として、または、多成分射出成形処理の枠組み内で、複数のプラスチックを組み合わせても良い。
【0034】
プラスチックプライは、予熱した工具により、150℃〜350℃、好ましくは、200℃〜300℃の化合物温度、および/または、500bar〜2800bar、好ましくは、700bar〜2500barの圧力で射出成形されることが好ましい。
【0035】
プラスチックプライの射出成形には、部分的に平坦且つ平行な少なくとも2つの内壁を備えるキャビティを有する射出成形工具を用いることが好ましい。
【0036】
プラスチックプライの射出成形前に、キャリアプライおよび装飾プライがこれらの内壁の両方または一方に取り付けられると、平坦な多層体を得られる。
【0037】
代わりに、プラスチックプライの射出成形のために、部分的に曲がった少なくとも1つの内壁を備えるキャビティを有する射出成形工具を用いても良い。
【0038】
この方法により、より複雑な3次元形状の多層体を得ることができる。曲率は部分的に存在する。キャビティ内のスライダーおよび/またはコアを使用することにより、多層体の形状をより複雑にすることができる。ここでは、射出成形から得られる通常の全ての構成が利用可能である。
【0039】
光源として、SMD−LED(SMD=Surface Mounted Device)および/またはチップLEDを使用することが好ましい。SMD−LEDは、長さが400μm〜20mm、好ましくは、0.6mm〜2mm、幅が200μm〜5mm、好ましくは、0.3mm〜1.25mm、高さが200μm〜5mm、好ましくは、0.2mm〜1.5mmである。チップLEDは、長さが100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、幅が100μm〜2mm、好ましくは、0.2mm〜0.5mm、高さが50μm〜250μm、好ましくは、75μm〜125μmである。
【0040】
代わりの光源として、原則として、有機発光ダイオード(OLED)、発光セル(LEC)、または、エレクトロルミネッセンスディスプレイを使用しても良い。
【0041】
更に、照明エレメントに加え、照明エレメントと相互に接続されるロジック回路、レジスタ、ダイオード、圧電ラウドスピーカーのような更なる部品を一体化しても良い。照明エレメントは、中でも、情報状態を表示するために使用される。代わりに、または、更に、キャリアに電気泳動またはエレクトロクロミックディスプレイのような非自己発光ディスプレイエレメントを一体化しても良い。
【0042】
装飾プライおよび/またはキャリアプライおよび/または射出成形プライに、少なくとも1つの光学補助層、特に、反射層または吸収層を塗布することが好ましい。
【0043】
このような補助層により、多層体内での光の誘導を制御することができる。例えば、一方の側のみに光を出射させることができ、または、散乱光の妨げを回避することができる。このような補助層を部分的に塗布することで、補助層は、少なくとも1つの光源からの光のための所定の出力開口を提供することができる。
【0044】
反射層の製造のために、金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着またはスパッタリングにより、少なくとも1つの光学補助層を製造することが好ましい。光学補助層の厚さは、1nm〜500nm、好ましくは、5nm〜100nmである。
【0045】
代わりに、金属顔料含有ニスの印刷により、反射層を製造しても良い。反射層の厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0046】
吸収層を塗布するために、特に、カーボンブラック顔料を備える顔料ニスを塗布することにより、少なくとも1つの光学補助層を製造することが好ましい。吸収層の厚さは、0.1μm〜50μm、好ましくは、1μm〜20μmである。
【0047】
設けられた装飾プライが少なくとも1つの第1領域および少なくとも1つの第2領域を備えることが好ましい。第1領域は、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して少なくとも部分的に透明である。第2領域は、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明、例えば、不透明である。
【0048】
この方法により、多層体からの光の出射を制御することができる。第1および第2領域は、簡単なディスプレイ面、または、複雑な光学情報を形成する。
【0049】
少なくとも1つの光源が装飾プライの表面に直交する方向で見て少なくとも1つの第1領域と重なるように、装飾プライを配置することが好ましい。
【0050】
この構成により、光の直接出射が可能となる。かかる構成は、例えば、ディスプレイ面の点照明に使用しても良い。
【0051】
代わりに、少なくとも1つの光源が装飾プライの面に直交する方向で見て少なくとも1つの第2領域と重なるように、装飾プライを配置しても良い。
【0052】
この場合、第1領域を介した光の直接出射はできない。かかる構成は、例えば、平坦構造の均等なバックライトに使用しても良い。
【0053】
魅力的な光学効果を実現するために、少なくとも1つの光源による光の直接的および間接的な集光を組み合わせても良い。
【0054】
プラスチックプライの射出成形のために使用されるプラスチック材料、および/または、キャリアプライの層を形成する材料に、着色剤、特に、染料および/または顔料および/または粒子および/または量子ドット材料および/またはリン光材料を加えることができる。着色剤は、少なくとも1つの光源から出射した光を吸収および散乱させ、および/または、可視波長範囲で蛍光またはリン光に励起される。
【0055】
これにより、プラスチックプライおよび/またはキャリアプライにおいて均一な配光を実現することができる。これは、均一なバックライト面を創造するために特に適している。
【0056】
同時に、または、代わりに、特に、蛍光灯または吸収物質または量子ドットを使用することにより、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルは影響を受ける。その結果、様々な色効果が得られる。
【0057】
加えられた着色剤は、特に、二酸化ケイ素、発熱ケイ酸、二酸化チタン、硫化亜鉛、または、金属からなる無機顔料および/または粒子を備えることが好ましい。粒子の大きさは、5nm〜500μm、好ましくは、500nm〜100μmである。
【0058】
キャリアプライの1面が艶消しであることが好ましい。
【0059】
これにより、均一な被照面を実現するために、キャリアプライの輝度が均一化される。このため、追加の拡散器を省略することができる。
【0060】
装飾プライが設けられることが好ましい。当該装飾プライは、少くなくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対する透明度および/または色が異なる複数の領域を有する。
【0061】
これにより、外観が使用された光源の色に直接依存しない多色グラフィックエレメントが得られる。そのような装飾プライは平坦に塗布され、出射開口を有しないことが特に好ましい。尚、この方法により、少なくとも1つの光源の消灯状態で視認できない装飾が実現される。
【0062】
装飾プライに、少なくとも1つの光源から出射した光のスペクトルに対して非透明である部分層、特に、光学情報を備える金属層を塗布することが好ましい。
【0063】
これにより、光の所定の出射形状が創造される。これは、特に、平坦に塗布された装飾
プライに有益である。このため、少なくとも1つの光源が光を発する場合のみ所望の光学情報が視認可能になる。
【0064】
装飾プライおよび/またはキャリアプライおよび/またはプラスチックプライに、光学活性レリーフ構造、特に、回折構造、0次回折構造、マクロ構造、レンズ構造、マイクロレンズ構造、マイクロプリズム構造を取り込むことが好ましい。特に、装飾プライの製造中に、特に、複製、および/または、射出成形工具に配置されたマトリックスによるプラスチックプライへの成形により、このような構造が取り込まれることが好ましい。各金型部分にマトリックスを接合しても良く、または、個別のインサートまたはインサート部としてマトリックスを構成しても良い。
【0065】
そのような構造により、多層体からの光の出射を目的通り制御することができる。少なくとも1つの光源に対するレリーフ構造の種類およびその相対的な配置に応じて、光源から出射した光の集光を目的通り部分的に支持または防止することができる。
【0066】
プラスチックプライの射出成形中に、少なくとも2つのプラスチック複合物を使用することが好ましい。これらのプラスチック複合物は、光学特性、特に、光学屈折率が異なる。
【0067】
これは、様々な多成分射出成形処理により行われる。例えば、異なる射出成形工具により異なるプラスチック複合物の鋳造を順番に行っても良い。しかしながら、代わりに、例えば、適切なスライダーにより、その後の鋳造の工程のために、射出成形工具の形状を変更しても良い。鋳造工程のために、異なる工具インサートに近接する回転板に、プラスチックプライまたはキャリアプライを位置決めしても良い。
【0068】
異なるプラスチック複合物から製造されたプラスチックプライの部分領域の形状、特に、これらの部分領域の間の境界面の形状、および、屈折率の違いに応じて、光を導くことができる様々な効果を達成することができる。特に、光反射によりレンズ効果を達成することができ、または、境界面での全反射により鏡面を創造することができる。
【0069】
少なくとも1つの光源に接触するように、キャリアプライに導電トラック層を塗布することが好ましい。
【0070】
これにより、外部接触手段、例えば、追加の印刷回路基板を省略することができる。このため、多層体の製造および組立を特に容易にすることができる。導電トラック層により、キャリアプライに任意に設けられた更なる電子部品、例えば、センサー、アンテナ構造が接触する。
【0071】
金属、特に、アルミニウム、銀、クロム、銅、金、または、これらの合金の蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、または、積層、および/または、導電顔料、ナノ粒子、ITO(インジウムスズ酸化物)、ATO(アンチモンスズ酸化物)、導電有機ポリマー、特に、PEDOT(ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフエン))またはPANI(ポリアリニン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、または、カーボンブラックの塗布により、導電トラック層を製造することが好ましい。導電トラック層の厚さは、1nm〜500μm、好ましくは、10nm〜50μmである。
【0072】
導電トラック層は、少なくとも1つの結合面を備えることが好ましい。キャリアプライに直交する方向で見てキャリアプライにおいて少なくとも1つの光源と面する側と反対側に、補助結合面が塗布される。
【0073】
補助結合面を介して、導電トラック層に容量的に交流電圧が結合する。このため、光源または電子部品に電圧を供給するために、または、電子部品に制御信号を転送するために、多層体の表面に連続的に導電構造を設けることが不要になる。
【0074】
代わりに、または、更に、導電トラック層は、少なくとも1つの巻線および/またはアンテナ構造を備えても良い。キャリアプライに直交する方向で、少なくとも1つの光源と面する側と反対側であるキャリアプライの面に、補助巻線および/またはアンテナ構造を設ける。
【0075】
これにより、交流電圧が非接触で結合し、または、制御信号が送信される。しかしながら、この場合、結合は誘導的に行われる。
【0076】
更に、少なくとも1つの電気接触エレメントをキャリアプライに取り付けても良い。電気接触エレメントは、導電トラック層に電気的に接触し、プラスチックプライの射出成形中に、ほとんどの部分がプラスチック複合物により取り囲まれる。
【0077】
この場合、導電トラック層は外部に直接接触する。これは、任意で適切なプラグコネクター等により行われる。
【0078】
電気接触エレメントとして、キャリアプライを介したスルーコネクションおよび/または圧着エレメントを取り付けることが好ましい。
【0079】
更に、または、代わりに、プラスチックプライの射出成形中に、プラスチック複合物により導電トラック層の少なくとも1つの部分領域を取り囲まなくても良い、および/または、プラスチックプライの射出成形後に、導電トラック層の少なくとも1つの部分領域が配置されたキャリアプライの部分領域をプラスチックプライから取り除いても良い。
【0080】
導電トラック層の直接接触がこの方法で可能になる。
【0081】
本発明を、実施例を参照しつつ詳細に説明する。