(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両が急減速した場合には荷室の荷物が後部座席のシートバック後面に衝突することがあり、シートバックはこのような荷物の衝突を想定した荷室隔壁強度試験が行われる。
図16に示すように、このような場合では荷物Wは後部座席のほぼ中央に衝突すると想定すると、シートバックをロックしているシートロック装置500に作用する負荷Fは概ね車両後斜め方向となる。シートロック装置500は本来はストライカ506を車両前後方向に対してロックする装置であるが、車幅方向の大きな力に対してもシートバックが大きく変位することがないように考慮し、ストライカ506が係合溝504から抜けないような十分な強度を備えることが望ましい。
【0007】
上記のシートロック装置500においては、負荷Fが過大であるときにはシートロック装置500に対して後方向と車幅外方向へ向かって作用し、ストライカ506と係合している第1角部504a及び第2角部504bを車幅方向に変位させてカバー514と接近又は当接させうる。また、負荷Fが過大であるときにはシートロック装置500は
図15に示すように、フック部材502がやや回動したインターロック状態となっている可能性があり、第1角部504a及び第2角部504bは側面視でストライカ進入溝516の高さ付近に存在する。
【0008】
このインターロック状態でフック部材502がストライカ506とともに側方に変位すると、第2角部504bはわずかにカバー514の端部に当接しうるが、ストライカ進入溝514の位置にある第1角部504aについては変位を制限する規制部材がない。第2角部504bだけがわずかにカバー514の端部に当接するだけでは、その当接部にかかる応力が過大となって第2角部504b又はカバー514のいずれかが破損する懸念がある。
【0009】
また、このときオープンレバー508の先端508aはカバー514の端部に当接しうるが、オープンレバー508には十分な強度がなく、しかもオープンレバー508とカバー514との間にはフック部材502が介在していることからその板厚分の距離があり、先端508aがカバー514に当接するには相当の変形が生じるため、当接面積が小さくなってしまい負荷Fによる車幅外側方向の分力(以下、横負荷ともいう。)を支えきれない懸念がある。したがって、シートロック装置500においてインターロック状態における横負荷を確実に保持するためにはフック部材502、オープンレバー508及びカバー514を相当に高強度にしなければならず重量増、大型化、コスト増の要因となる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ストライカにより横負荷が作用した場合において、該ストライカがフック部材から抜けることを防止することのできるシートロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、正方向に弾性的に回転付勢されたフック部材と、前記フック部材の負方向への回動を規制するインターロック手段と、前記フック部材の一方の側で前記フック部材の動作範囲を覆い、ストライカが進入するストライカ進入溝を備えるカバー部材と、を有し、前記フック部材は、一端近傍の支軸に対して他端に設けられて、進入するストライカが当接することにより負方向に回転付勢されるフック傾斜縁面と、進入する前記ストライカが前記フック傾斜縁面を乗り越えた後に嵌まり込むことにより前記フック部材がロック位置となる深さの係合溝と、
側方に突出した拘束ピンと、側方に突出したインターロックピンと、を有し、前記インターロック手段は、
正方向に弾性的に回転付勢されたカムプレートであり、前記フック部材が前記ストライカと係合してロック位置にあるときには前記フック部材の負方向への回動を規制する規制位置となり、前記ストライカの進入時及び前記ストライカの係合解除操作がなされたときには前記フック部材の負方向への回動を許容する許容位置に切り替えられ、前記フック部材が前記インターロック手段により動作規制されている位置にあるとき、前記係合溝の開口両端部は、前記フック部材の軸方向に沿って視て前記ストライカ進入溝を超えて前記カバー部材と重な
り、前記カムプレートは、前記規制位置であるときに、前記拘束ピンに当接して前記フック部材を正方向に回転付勢するカム面と、前記フック部材が前記ロック位置から負方向に回動したときに、前記ストライカが前記係合溝から抜ける前に前記インターロックピンが当接するインターロック面と、を有することを特徴とする。
【0012】
このように、フック部材がインターロック位置にあるときに、ストライカが係合する係合溝の開口両端部がカバー部材と重なる構成とすることにより、ストライカにより横負荷が作用した場合においても、少なくとも係合溝の開口両端部はカバー部材に当接して変位が制限される。したがって、ストライカがフック部材から抜けることを防止することができる。
また、このようなカムプレートによれば、フック部材のインターロック機能を適切に実現できるとともに、該フック部材のガタつきを防止することができる。
【0013】
前記開口両端部と前記カバー部材との間には他の部品が非介在にするとよい。これにより、横負荷を受けたときに係合溝の開口両端部はカバー部材に当接しやすくなり、横負荷を受け止めやすい。
【0014】
前記カバー部材は、前記フック部材の動作範囲にわたって前記フック部材との隙間を低減する内向き膨出部を有すると、該膨出部によってもフック部材を受け止めることができる。
【0017】
正方向に弾性的に回転付勢されたセンシングレバーを有し、前記センシングレバーは、進入する前記ストライカが当接することにより負方向に回転付勢されるセンシング傾斜縁面と、支軸からみて前記センシング傾斜縁面と逆側で、前記ストライカが離れている初期位置のときに前記カムプレートのストッパ面を押圧することにより該カムプレートを前記許容位置に保持しておくストッパピンと、を有し、前記カムプレートは、前記カム面と前記インターロック面との間に設けられた逃げ溝を有し、前記ストライカが進入して前記フック傾斜縁面に当接して前記フック部材を負方向に回動するとき、前記インターロックピンの少なくとも一部が前記逃げ溝に入り込むように、前記ストッパピンにより前記カムプレートを前記許容位置に保持しておくようにしてもよい。
【0018】
このようなセンシングレバーの作用により、ストライカが進入するときにはカムプレートを許容位置に保持し、インターロックピンがインターロック面に干渉することがないようにインターロック機能を無効化しておき、フック部材を適正に回動させることができる。
【0019】
この場合、前記ストライカが進入して前記センシング傾斜縁面に当接して前記センシングレバーを負方向に回動させることにより前記ストッパピンを前記ストッパ面から離間させ、前記カムプレートを前記許容位置から正方向に回動させて前記カム面を前記拘束ピンに当接させるとよい。
【0020】
負方向に弾性的に回転付勢されたオープンレバーを有し、前記オープンレバーは、操作部から受ける力により正方向に回動されるときに、前記フック部材に設けられたフック解除ピンを摺接しながら押圧して前記ストライカが前記係合溝から抜けるまで前記フック部材を負方向に回動させるフック解除レバーと、前記カムプレートに設けられたカム解除ピンを摺接しながら押圧して前記カムプレートを前記許容位置まで負方向に回動させるカム解除レバー面と、を有し、前記オープンレバーが正方向に回動され、前記フック部材が負方向に回動されるときに、前記インターロックピンの少なくとも一部が前記逃げ溝に入り込むように前記カムプレートが前記許容位置に回動されているようにしてもよい。
【0021】
このようなオープンレバーの構成により、インターロックピンがインターロック面に干渉することがないようにインターロック機能を無効化しておき、フック部材を適正に回動させることができる。この場合、フック解除ピンとインターロックピンは兼用の同一ピンとしてもよい。
【0022】
前記オープンレバーは、前記カム解除レバー面の端部から連続して形成され、前記カム解除ピンに摺接しながら前記カムプレートを前記許容位置に保持するカム保持曲面を有し、前記オープンレバーが正方向に回動されるときに、前記カム解除レバー面が前記カム解除ピンに当接した後に遅れて前記フック解除レバーが前記フック解除ピンに当接し、前記カムプレートは前記フック部材に先行して回動して前記許容位置に保持されると、動作タイミングをとりやすい。
【0023】
前記ストライカが非係合状態であるとき、前記開口両端部の少なくとも一方が前記カバー部材の一部に当接することによって前記フック部材の正方向への回動が規制されていてもよい。このような簡便構成により、ストライカの進入に際しフック部材を適正な位置に保持しておくことができる。
【0024】
前記ストライカは第1ストライカであって、該第1ストライカは定距離離れた第2ストライカと一体的に連動し、前記フック部材は、前記係合溝と支軸との間に遊嵌溝を有し、操作者の操作に基づいて前記フック部材が負方向に回動して前記第1ストライカが前記係合溝から抜けた後に、前記第1ストライカがさらに進入することにより前記遊嵌溝に入りこむとともに前記第2ストライカは前記係合溝の入口部に達し、前記フック部材が正方向に戻ることにより前記第1ストライカが前記遊嵌溝に遊嵌するとともに前記第2ストライカが前記係合溝に係合してもよい。この構成により、シートバックの起立姿勢を2段階に設定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるシートロック装置では、フック部材がインターロック位置にあるときに、ストライカが係合する係合溝の開口両端部がカバー部材と重なる構成とすることにより、ストライカにより横負荷が作用した場合においても、少なくとも係合溝の開口両端部はカバー部材に当接して変位が制限される。したがって、ストライカがフック部材から抜けることを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかるシートロック装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態にかかるシートロック装置10は車両のシート12に適用される。シート12は座面であるシートクッション12aと背もたれであるシートバック12bを備えており、このうちシートバック12bは通常の着座用としての起立姿勢と、荷積の便宜のために前方に倒す横倒姿勢とに俯仰切り替えが可能となっている。また、起立姿勢についてはシートロック装置10の内部機構により標準起立姿勢とそれよりも深い起立姿勢(以下、傾斜起立姿勢という。)の2段階に切り替え可能となっている。
図1ではシートバック12bの標準起立姿勢を実線で示し、横倒姿勢と傾斜起立姿勢を仮想線で示している。
【0029】
シート12は、例えば車両の後部座席であって2台が並列し、その後方は荷室となっている。荷室には荷物Wが積載され、車両が急減速した場合には荷物Wが2台のシート12の略中央に衝突しうる。この際、シートロック装置10に作用する負荷Fは概ね車両後斜め方向となり、後方向だけでなく車幅外側方向の分力である横負荷Fsも作用する。以下の説明では、車両の左側のシート12(
図1の手前側)及びその内部のシートロック装置10を例にして説明するが、右側においても左右対称又は略左右対称で同様の作用効果がある。
【0030】
シートロック装置10は、シートバック12bの肩部のやや下方内部に設けられており、車体パネル側に固定されている金属製の第1ストライカ14a又は第2ストライカ14bに係合することによりシートバック12bを2つの起立姿勢にロックすることができる。またシートロック装置10と第1ストライカ14a及び第2ストライカ14bとの係合を解除することによりシートバック12bを横倒姿勢に倒すことができる。
【0031】
第1ストライカ14aと第2ストライカ14bは定距離だけ離れて並列され、先端が相互接続されて一方が開口の矩形をなし、その開口側がストライカベース15に固定されている。第1ストライカ14aと第2ストライカ14bのいずれかを代表的にストライカ14とも呼ぶ。
【0032】
シートバック12bを横倒姿勢から持ち上げることにより、最初に第1ストライカ14aがシートロック装置10に係合し標準起立姿勢となる。次いで、シートバック12bの肩部に設けられた操作ノブ(操作部)16を引き上げ操作することによりシートロック装置10と第1ストライカ14aとの係合が解除され、より深く倒すことにより第2ストライカ14bが係合して傾斜起立姿勢でロックされ、または再度前倒しすることにより横倒姿勢に戻される。傾斜起立姿勢における係合解除も操作ノブ16の引き上げ操作による。
【0033】
次に、シートロック装置10の詳細な説明の前に、該シートロック装置10の主要な4つの部品、すなわちフック部材20、カムプレート(インターロック手段)50、センシングレバー70及びオープンレバー100について
図2〜
図5を参照しながら先に説明をする。なお、
図2〜
図5では各部品を斜視図で示しているが、これらは側面図である
図6とほぼ同じ方向から見た状態を示している。また、以下の説明では
図6に示すようにシートロック装置10を一方の側方からみたときに時計方向の回転向きを正方向、反時計方向の回転向きを負方向と定義する。また、説明の便宜上、
図6に示す状態に基づいて上下左右を表す。
【0034】
図2に示すフック部材20は、ストライカ14と係合することによりシートバック12bをロック状態に保持する部品であり、シートロック装置10内では弾性的に正方向に回転付勢されている。
【0035】
フック部材20はプレート状部材であり、一端近傍に設けられた軸孔22と、右から進入するストライカ14が当接することにより負方向に回転付勢されるフック傾斜縁面24とを有する。また、フック部材20は、進入するストライカ14がフック傾斜縁面24を乗り越えた後に嵌まり込むことによりフック部材20がロック位置となる深さの係合溝26と、紙面奥の側方に突出した拘束ピン28と、紙面奥の側方に突出したインターロックピン30と、係合溝26と支軸との間に設けられた遊嵌溝32とを有する。
【0036】
さらに、フック部材20は、軸孔22とは逆の側に下向きに突出する第1角部34及び第2角部36を有する。フック傾斜縁面24は第1角部34の外側面として形成されており、係合溝26は第1角部34と第2角部36とに挟まれる空間として形成されており、遊嵌溝32は第2角部36と軸孔22の間に形成されている。係合溝26の左側面、つまり第2角部36の右側面には緩やかな屈曲部36aが設けられている。フック傾斜縁面24は下に向かうに従って軸孔22に寄る湾曲した傾斜面である。係合溝26は、開口部がストライカ14よりもやや広く、奥の方が細くなる溝であり、最奥部はストライカ14よりもやや狭く形成されている。第1角部34の先端34aと第2角部36の先端36bが係合溝26の開口両端部になる。
【0037】
第2角部36は第1角部34よりもやや下向きに長く形成されており、右から進入してくるストライカ14は、フック傾斜縁面24を乗り越えた後に第2角部36の下部に当接して係合溝26に案内される。
【0038】
遊嵌溝32は、第2ストライカ14bが係合溝26に係合するときに第1ストライカ14aが遊嵌される十分に広い領域である。遊嵌溝32において第1ストライカ14aが最初に当接する部分には、十分な強度をもたせるための膨出部38が設けられるとともに、その内側には衝撃吸収のための緩衝孔38aが設けられている。
【0039】
拘束ピン28はフック部材20のガタつきを防止するためにカムプレート50によって押圧される部分であり、軸孔22の近傍に設けられている。インターロックピン30は、フック部材20が振動又は衝撃を受けて負方向に回動したときに、カムプレート50に当接してそれ以上の回動を防止するインターロック機能を奏する部分であり、軸孔22からみて拘束ピン28よりも遠い位置に設けられている。フック部材20は強度確保のための金属板がベースとなっており、その回りを樹脂材が覆っている。
【0040】
図3に示すカムプレート50は、フック部材20のガタつき防止機能と、該フック部材20が振動又は衝撃によって負方向に回動したときにその回動を制限するインターロック機能のための部品であり、シートロック装置10内では弾性的に正方向に回転付勢されている。
【0041】
カムプレート50は、略カニ爪型で金属製のプレート状部材であり、一端近傍に設けられた軸孔52と、カム面54と、インターロック面56とを有する。カムプレート50は、フック部材20がストライカ14と係合してロック位置にあるときにはフック部材20の負方向への回動を規制する規制位置となり、ストライカ14の進入時及びストライカ14の係合解除操作がなされたときにピン退避位置(許容位置)に切り替えられる。
【0042】
カム面54は下辺の一部として形成されており全体的に緩やかに湾曲している。カム面54は、フック部材20がストライカ14と係合しているロック位置であるときに、拘束ピン28を弾性的に押圧することによりフック部材20を正方向に回転付勢し、該フック部材20のガタつきを防止する。
【0043】
インターロック面56は右辺の一部として形成されており、下に向かうに従って左に寄る湾曲した傾斜面である。インターロック面56は、フック部材20が振動又は衝撃を受けて拘束ピン28がカム面54を押し込みながら負方向に回動したときに、ストライカ14が係合溝26から抜ける前にインターロックピン30が当接して回動を規制する。
【0044】
また、カムプレート50は、カム面54とインターロック面56との間に設けられた逃げ溝58と、シートロック装置10がストライカ14と非係合となっているときにセンシングレバー70に当接するストッパ面60と、解除操作時にオープンレバー100によって操作されるカム解除ピン62と、バネ係合孔64とを有する。軸孔52は上辺の一端近傍に設けられており、他端近傍にはカム解除ピン62が紙面奥の側方に突出しており、この中間にバネ係合孔64が設けられている。
【0045】
逃げ溝58は、操作者による通常操作時でフック部材20が負方向に回動するときにインターロックピン30との干渉を回避するための溝であり、該インターロックピン30よりもやや幅広であり、その動作軌跡に沿って湾曲している。
【0046】
ストッパ面60は、左辺の一部が三角状に膨出した上辺として形成されている。ストッパ面60は、シートロック装置10がストライカ14と非係合となっているときにセンシングレバー70に押圧支持されることによりカムプレート50がピン退避位置に保持される。
【0047】
図4に示すセンシングレバー70は、樹脂材で形成された左右に長いレバー部材であり、シートロック装置10内では弾性的に正方向に回転付勢されている。
【0048】
センシングレバー70は、略中央に設けられた軸孔72と、該軸孔72の回りに形成された略円筒形のバネ室74と、右方に延在する第1アーム76と、左方に延在する第2アーム78と、第1アーム76の先端に設けられた検出部80と、第2アーム78の後端で紙面手前側に突出したストッパピン82と、該ストッパピン82のやや上方に形成されたロッド孔84とを有する。第1アーム76と第2アーム78は直線状で反対向きに配置されており、それぞれいくつかのリブで立体的に補強されるとともに、不要部が肉抜きされている。
【0049】
検出部80は、第1アーム76の先端部よりやや紙面手前側に変位した位置に設けられており、第1アーム76よりもやや斜め上方まで突出した角形状である。検出部80は、右側のセンシング傾斜縁面86と、該センシング傾斜縁面86の下側端部に形成されたセンシング面88とを有する。センシング面88は第1アーム76の下面よりもやや下方に突出している。センシング傾斜縁面86は滑らかな湾曲面を形成しており、ストライカ14が進入してきてフック部材20のフック傾斜縁面24に当接した後に遅れて当接して負方向に回転付勢される。
【0050】
センシング面88は、ストライカ14がフック部材20の係合溝26に嵌まり込んでロック位置となっているときに該ストライカ14に当接することにより、センシングレバー70をセンシング位置に保持する。センシングレバー70がセンシング面88によってセンシング位置に保持されていることは反対側に設けられたロッド孔84を介して外部のインジケータに伝達される。これにより、シートバック12bが確実にロックされていることを確認することができる。
【0051】
ストッパピン82は、シートロック装置10がストライカ14と非係合となっている初期位置のときにカムプレート50のストッパ面60を押圧することにより該カムプレート50をピン退避位置に保持しておく。センシングレバー70は静止状態としては初期位置とセンシング位置のいずれかの位置となる。
【0052】
図5に示すオープンレバー100は、フック部材20とストライカ14との係合を解除するために操作ノブ16(
図1参照)から操作される部品であり、シートロック装置10内では弾性的に負方向に回転付勢されている。
【0053】
オープンレバー100は、軸孔102と、該軸孔102の回りに形成された略円筒形のバネ室104と、カム解除作用部106と、フック解除レバー108と、規制ピン110とを有する。
【0054】
カム解除作用部106は、バネ室104の下部及びフック解除レバー108の上部から左方向に突出するやや幅広の部材であり、ロッド孔112と、カム解除レバー面114と、カム保持曲面116とを有する。ロッド孔112は、軸孔102から左斜め下方の位置に設けられた孔であり操作ノブ16と連結される。操作ノブ16によりロッド孔112が上方に引かれることによりオープンレバー100は正方向に回動する。
【0055】
カム解除レバー面114は、カム解除作用部106の上辺として形成される側面視で直線の平面である。カム保持曲面116は、カム解除レバー面114の左端部から連続して形成され、軸孔102を中心とした曲面である。
【0056】
操作ノブ16の作用下にオープンレバー100が正方向に回動されるときに、カム解除レバー面114は、カムプレート50のカム解除ピン62を摺接しながら押圧してカムプレート50をピン退避位置まで負方向に回動させる。また、オープンレバー100が正方向にさらに回動されると、カム保持曲面116はカム解除ピン62に摺接しながらカムプレート50をピン退避位置に保持する。
【0057】
フック解除レバー108は、バネ室104の下部から紙面手前側斜め下方に向かって延在している。操作ノブ16の作用下にオープンレバー100が正方向に回動されるときに、フック解除レバー108の左側面であるフック解除レバー面108aは、フック部材20のインターロックピン(フック解除ピン)30を摺接しながら押圧して、ストライカ14が係合溝26から抜けるまでフック部材20を負方向に回動させる。上記の通りインターロックピン30は、ストライカ14の抜け止めとしてのインターロック機能の部品であるが、ストライカ14を解除するフック解除ピンとしての機能を兼ね備えている。フック解除ピンはインターロックピン30とは別の専用ピンとして設けてもよい。フック解除レバー108及びカム解除作用部106はいくつかのリブにより立体的に補強されるとともに、不要部が肉抜きされている。規制ピン110は軸孔102よりやや右側で紙面奥の方向に突出しており、オープンレバー100の回動範囲を制限するピンである。
【0058】
次に、上記のフック部材20、カムプレート50、センシングレバー70及びオープンレバー100を備えるシートロック装置10の構成について
図6及び
図7を参照しながら詳細に説明する。
図6及び
図7はシートロック装置10が第1ストライカ14aと係合している状態を示す。
図6はシートロック装置10を一方の側方からみたときの側面図(フック部材の軸方向に沿って視た図)であり、
図7は
図6とは略逆方向からみた斜視図である。また、シートバック12bが標準起立姿勢であるときに、
図6の左側が車両前方、右側が車両後方となる。
【0059】
図6では手前側となるカバー部材200をはずしており、
図7では手前側となるベース部材202をはずしており、それぞれ内部を露呈させている。カバー部材200及びベース部材202はそれぞれストライカ14が進入するストライカ進入溝204a,204bを備えており、組み合わされて一体的となり、シートロック装置10のカバー及びベースとして内部のほぼ全部を覆っている。ストライカ進入溝204a,204bは側面視で一致する。カバー部材200及びベース部材202はシートロック装置10のシートバック12bへの取り付け部材でもあり、取付孔206を備えている。カバー部材200及びベース部材202により異物の進入を防止できるとともにシートバック12bに装着しやすくなる。ベース部材202の側面がシートバック12bの一部に当接して固定される。
【0060】
図6及び
図7に示すように、シートロック装置10は、カバー部材200及びベース部材202をベースとして構成されており、フック部材20と、カムプレート50と、センシングレバー70と、オープンレバー100とを有する。
図6を基準とすると、一番手前にフック部材20があり、その奥で左上方にカムプレート50があり、さらにその奥にはオープンレバー100とセンシングレバー70が上下に並んで配置されている。オープンレバー100とセンシングレバー70は平面視で一部重なりあう。
【0061】
フック部材20、カムプレート50、センシングレバー70及びオープンレバー100の各軸孔22,52,72,102はそれぞれ軸126,128,130,132に軸支されている。軸126,128,130,132は、カバー部材200及び/又はベース部材202に固定されている。
【0062】
軸128と軸132はほぼ水平状に並んでいる。また、軸128を頂点として軸126及び軸132へ向かう二線はほぼ直交する。軸130を頂点として軸128及び軸126へ向かう二線はほぼ直交する。軸130を頂点として軸128及び軸132へ向かう二線はほぼ直交する。
【0063】
また、第1ストライカ14aが係合溝26に係合しているとき、軸126を頂点として軸128及び第1ストライカ14aへ向かう二線はほぼ直交する。このとき、軸126を頂点として第1ストライカ14a及び拘束ピン28へ向かう二線の角度はほぼ45°であり、第1ストライカ14a及びインターロックピン30へ向かう二線の角度はほぼ30°である。このとき、軸126を基準として、第1ストライカ14a、インターロックピン30、拘束ピン28、軸128、軸130及び軸132までの距離比は、おおむね7:5:2:6:4:8である。このとき、軸126、拘束ピン28、軸130及び軸132はほぼ直線状に並んでいる。
【0064】
フック部材20は軸126に軸支され、やや大きいトーションスプリング134によって正方向に弾性的に回転付勢されている。
図6に示すように、ストライカ14が係合溝26に係合しているときのフック部材20の位置をロック位置とする。ロック位置であるときには、第1角部34は右側にほぼ最大変位している。フック部材20は正方向に回転付勢されていることから、シートロック装置10がストライカ14と非係合であるときには、第2角部36の先端36bがカバー部材200の底面201(
図7、
図11−1参照)に当接するまで回転変位している。
【0065】
一方、フック部材20がロック位置よりも負方向に回動するのは3つのケースがある。第1のケースは、シートバック12bを横倒姿勢から標準起立姿勢へ立てる際に、ストライカ14が右から進入してフック傾斜縁面24に当接して第1角部34を押し上げるときである。第2のケースはオープンレバー100の作用下にフック解除レバー108がインターロックピン30を押し上げるときである。第3のケースは大きい振動又は衝撃を受けたときである。第1のケース及び第2のケースは操作者の意思による通常操作である。
【0066】
カムプレート50は軸128に軸支され、トーションスプリング138によって正方向に弾性的に回転付勢されている。トーションスプリング138の一端はバネ係合孔64に係合している。フック部材20がストライカ14と係合してロック位置にあるときにカムプレート50はフック部材20の負方向への回動を制限する規制位置となり、カム面54が拘束ピン28に当接して押圧しており、フック部材20のガタつきを防止している。フック部材20のガタつきが防止されることにより、異音がなくしかも部品耐久性を向上させることができる。また、カム面54の作用によりフック部材20は多少の振動又は衝撃では負方向に回動することはない。
【0067】
フック部材20が大きい振動又は衝撃を受けることにより拘束ピン28がカム面54を押し込みながら負方向に回動したとき、つまり上記の第3のケースでは、後述するようにストライカ14が係合溝26から抜ける前にインターロックピン30がインターロック面56に当接してそれ以上の回動を規制する。また、上記の第1のケース及び第2のケースでは、インターロックピン30がインターロック面56と干渉することがなく、逃げ溝58に入り込むようにカムプレート50をピン退避位置にしておく。すなわち、第1のケースではセンシングレバー70のストッパピン82がストッパ面60を支持しておき(
図11−1参照)、第2のケースではオープンレバー100のカム保持曲面116によりカム解除ピン62を支持しておく(
図12−3参照)。
【0068】
さらに、
図6から了解されるように、カムプレート50は、ストライカ14の進入軌跡L1よりもオープンレバー100の側で、かつ、オープンレバー100の軸132を通り進入軌跡L1に対する垂線L2を基準としてフック部材20の軸126の側に設けられている。これにより全体として無駄なスペースのないコンパクトな形状にすることができる。
【0069】
センシングレバー70は軸130に軸支され、トーションスプリング140によって正方向に弾性的に回転付勢されている。センシングレバー70は、フック部材20がロック位置にあって、ストライカ14が係合溝26に適正に係合しているとき、センシング面88がその上面に当接することによりやや負方向に回動したセンシング位置に保持される。このときロッド孔84に対してアダプタ142を介して接続された図示しないインジケータロッドにより、その位置情報が外部のインジケータに伝達される。つまり、ロッド孔84、アダプタ142及びインジケータロッドが情報の伝達手段となっている。これにより、操作者はシートバック12bが確実にロックされていることを確認することができる。
【0070】
オープンレバー100は軸132に軸支され、トーションスプリング144によって負方向に弾性的に回転付勢されている。トーションスプリング144の一端はバネ室104の内壁に係合し、他端はベース部材202の突起146に係合している。オープンレバー100は、ロッド孔112に対してアダプタ148を介して接続された図示しない操作ロッドを引くことにより正方向に回動される。操作ロッドは操作ノブ16(
図1参照)に接続されている。アダプタ142及び148に接続されるのはロッド以外にも例えばワイヤでもよい。規制ピン110はベース部材202に設けられた円弧孔203に嵌っており、この円弧孔203の両端部と規制ピン110が当接することによりオープンレバー100の回動範囲が制限されている。規制ピン110により簡便かつ適切にオープンレバー100の回動規制ができる。
【0071】
図6から了解されるように、オープンレバー100はフック部材20に比べて小さく、しかも大きい力が加わることはないために樹脂で形成することができて軽量である。オープンレバー100は係合解除のための単機能部品であり、インターロック機能などには関係がないため小型軽量に実現できている。したがって、操作ノブ16によって軽く操作され、操作性が向上している。
【0072】
図8に示すように、カバー部材200は、広い側壁210の周囲を周壁212が囲っていて一方が開口している形状であり、側壁210と周壁212の一部が切り取られるようにストライカ進入溝204aが形成されている。シートロック装置10のほぼ全ての部品は側壁210及び周壁212によって覆われる。周壁212の底面201は第2角部36の先端36bを保持する(
図7、
図11−1参照)。周壁212の上部1か所と下部2か所には取付孔206を備えるリブが設けられている。側壁210には長短2つの内向き膨出部214,216が設けられている。2つの膨出部214,216は、フック部材20の軸126を中心とした円弧形状であり、該軸126から遠い側の膨出部214はやや長く、近い側の膨出部216はやや短い。膨出部214,216はフック部材20の動作範囲にわたって該フック部材20との隙間を低減し、あるいは軽く接している。
【0073】
シートロック装置10では、通常使用時(ストライカ14がフック部材20にロックされているとき、及びストライカ14がフック部材20に係合又は解除される動作段階のとき)にフック部材20の軸孔22と軸126とのクリアランスから板厚方向の振れが発生しうる。膨出部214,216は、この振れを制限するとともにフック部材20の動作時の摺動抵抗を低く抑える形状に設定されている。また、車両走行時の振動によるロック状態のフック部材20の振れを制限し低級音を抑制する。
【0074】
図9に示すように、ベース部材202は広い側壁220の周囲を周壁222が囲って一方が開口している形状であり、側壁220と周壁222の一部が切り取られるようにストライカ進入溝204bが形成されている。ベース部材202にはカバー部材200が嵌まり込むようになっており、カバー部材200に対応する取付孔206は側壁220に設けられている。
【0075】
図10に示すように、カバー部材200及びベース部材202は互いに組み合わされ、内部部品を無駄な隙間なくコンパクトに覆っている。膨出部214,216はフック部材20に近接している。フック部材20の先端の第1角部34、第2角部36の一方の側面はカバー部材200の内面に対向しており、ストライカ進入溝204aの下部の対向面224との間隔は十分に狭く、その間に介在物はない。カバー部材200及びベース部材202は金属板で形成されており高強度である。
図10から了解されるように、フック部材20は厚板で高強度に形成されている一方、カムプレート50は比較的薄厚である。
【0076】
次に、このように構成されるシートロック装置10の主な3つの作用について説明する。3つの作用は前述の3つのケースに対応している。すなわち、ストライカ14が進入してきて係合するとき、係合溝26とストライカ14との係合を解除するとき、そしてフック部材20に大きな振動又は衝撃が加わって負方向に回動したときである。
【0077】
図11−1〜
図11−4に基づいて第1のケースにおける作用を説明する。つまり、ストライカ14が進入してきて係合する場合である。このとき、シートバック12bは操作者によって横倒姿勢から標準起立姿勢まで起こされ、シートロック装置10から見ると第1ストライカ14aが右方向から進入してくることになる。また、このときには操作ノブ16の操作は不要であり、オープンレバー100の向きは変わらない。
【0078】
図11−1〜
図11−4では、部品の識別が容易となるようにフック部材20及びカムプレート50を太線、センシングレバー70を細線で示し、図面が煩雑になることを防ぐためにオープンレバー100を省略している。なお、シートロック装置10はシートバック12bとともに一体的に俯仰して角度が変化するのであるが、以下の説明では理解を容易にするために、シートロック装置10の向きと位置を固定し、ストライカ14が相対的に動作するものとする。
【0079】
図11−1に示すように、ストライカ14がシートロック装置10から離れている初期状態であるときには、フック部材20、カムプレート50及びセンシングレバー70は初期位置となっている。
【0080】
すなわち、フック部材20は正方向に付勢されることにより、第2角部36の先端36bがカバー部材200の底面201に当接するまで回転変位している。このとき第1角部34におけるフック傾斜縁面24の上部は、ストライカ14の進入軌跡L1に対して斜めとなるようにストライカ進入溝204bの入口を塞いでいる。
【0081】
センシングレバー70は正方向に付勢されることにより正方向に最大変位している。このとき、第1アーム76は軸130を中心に右下がりとなっており、センシング傾斜縁面86のほぼ中間部はフック傾斜縁面24よりもやや奥(
図11−1における左側)で進入軌跡L1に対して斜めとなるように配置されている。第2アーム78は軸130を中心に左上がりで、ロッド孔84は上方に変位している。これにより、図示しないインジケータロッドを介して変位情報がインジケータに伝達され、ストライカ14が非係合であることが目視で確認できる。また、ストッパピン82も上方に最大変位しており、カムプレート50のストッパ面60を支持している。
【0082】
カムプレート50は正方向に付勢されながら、ストッパ面60がストッパピン82に支持されて正方向の最大変位位置よりもやや負方向に回動したピン退避位置に保持されている。これにより、逃げ溝58は右斜め下方向に開口している。またこのとき、カム面54は拘束ピン28からやや離れており、インターロック面56はインターロックピン30から大きく離れている。
【0083】
そして、
図11−1における仮想線で示すように、第1ストライカ14aが進入軌跡L1に沿って右側から進入してきてストライカ進入溝204bにさしかかると、最初にフック傾斜縁面24の上部に斜めに当接し、フック部材20が負方向に回動するように押圧する。
【0084】
図11−2に示すように、第1ストライカ14aは、フック傾斜縁面24に摺接しながらフック部材20を負方向に押圧回動しつつさらに進入すると、次にセンシング傾斜縁面86に対して斜めに当接する。このとき、インターロックピン30の一部が逃げ溝58の開口部の上端近傍に嵌まり込む。これにより、インターロックピン30とカムプレート50との干渉が回避される。インターロックピン30の上部は逃げ溝58の開口端部に軽く接触してもよい。
【0085】
図11−3に示すように、第1ストライカ14aは、フック傾斜縁面24及びセンシング傾斜縁面86に摺接しながらフック部材20及びセンシングレバー70を負方向に押圧回動しつつさらに進入する。このとき、ストッパピン82は下方に変位してストッパ面60から離間するが、カムプレート50は逃げ溝58の上方側面がインターロックピン30に当接しており、姿勢が保持されている。インターロックピン30は逃げ溝58内で変位可能であり、フック部材20は負方向に適正に回動が継続される。
【0086】
図11−4に示すように、第1ストライカ14aがさらに進入するとフック傾斜縁面24及び第1角部34を乗り越えて第2角部36の下部に当接する。第2角部36は第1角部34よりも長く設定されているため、第1ストライカ14aがそのまま遊嵌溝32まで進入してしまうことはない。また、第1ストライカ14aはセンシング傾斜縁面86を乗り越えてセンシング面88の下面に当接し、センシングレバー70をセンシング位置に保持する。
【0087】
この後、
図6に示すように、フック部材20は弾性的に付勢されていることから正方向に回動し、第1ストライカ14aが係合溝26に適正に係合する。係合溝26の最奥部は第1ストライカ14aよりもやや狭く、該第1ストライカ14aは係合溝26に対して2か所で当接することになり、安定的に係合する。フック部材20が正方向に回動する際、第1ストライカ14aは第2角部36の右面に摺接するが、該右面には緩やかな屈曲部36aが設けられていることから適度なクリック感が得られ、操作者は適正動作がなされていると判断できる。
【0088】
インターロックピン30が逃げ溝58から抜けることによってカムプレート50も正方向に回動して規制位置となり、カム面54が拘束ピン28の上面を適度に押圧することになり、フック部材20のガタつきを防止できる。
【0089】
第1ストライカ14aはセンシング面88の下面に当接することによりセンシングレバー70をセンシング位置に保持することになり、ロッド孔84は下方に変位している。これにより、図示しないロッドを介して変位情報がインジケータに伝達され、第1ストライカ14aが確実に係合されたことが目視で確認できる。
【0090】
このように、第1のケースでは第1ストライカ14aが進入してフック傾斜縁面24に当接してフック部材20を負方向に回動することによりインターロックピン30の少なくとも一部が一旦逃げ溝に入り込む。そして、第1ストライカ14aがさらに進入してセンシング傾斜縁面86に当接してセンシングレバー70を負方向に回動することによりストッパピン82はストッパ面60から離れ、カムプレート50はピン退避位置から正方向に回動してカム面54が拘束ピン28に当接する。
【0091】
このようなセンシングレバー70の作用により、第1ストライカ14aが進入するときにはカムプレート50をピン退避位置に保持し、インターロックピン30がインターロック面56に干渉することがないようにインターロック機能を無効化しておき、フック部材20を適正に回動させることができる。また、第1ストライカ14aは、フック傾斜縁面24に当接した後に遅れてセンシング傾斜縁面86に当接させているので、カムプレート50をピン退避位置に保持させておくことができて動作タイミングをとりやすく、インターロックピン30が適正に逃げ溝58に挿入される。
【0092】
なお、フック部材20、カムプレート50、インターロックピン30、ストッパピン82、ストッパ面60の相対的動作やタイミングは厳密に上記の通りである必要はない。例えば、上記ではインターロックピン30は逃げ溝58の開口部の上端近傍に嵌まり込んでいたが、下端近傍に嵌まり込んでもよい。上記ではカムプレート50はインターロックピン30が逃げ溝58に嵌まり込んでから正方向に回動し始めているが、インターロックピン30が逃げ溝58に嵌まり込む前から干渉のない範囲で多少動き始めていてもよい。各部品の動作開始タイミング、動作終了タイミング、動作速度及び角度は、アーム部の長さ、摺動傾斜面の傾斜角度、ピン位置により調整可能であることはもちろんであり、途中経過にかかわらずインターロックピン30が逃げ溝58に入り込むようにしておけばよい。これは次に述べる第2のケースでも同様である。
【0093】
次に、
図12−1〜
図12−5に基づいて第2のケースにおける作用を説明する。つまり、操作者が操作ノブ16を操作し、オープンレバー100の作用下にフック解除レバー108がインターロックピン30を押し上げて、係合が解除される場合である。このとき、シートバック12bは操作者によって標準起立姿勢から傾斜起立姿勢に移され、又は横倒姿勢に戻される。シートロック装置10から見ると第1ストライカ14aが遊嵌溝32に移るとともに第2ストライカ14bが係合溝26に係合し、又は第1ストライカ14aが右方向に離間する。
【0094】
図12−1〜
図12−5では、部品の識別が容易となるようにフック部材20及びカムプレート50を太線、オープンレバー100を細線で示し、図面が煩雑になることを防ぐためにセンシングレバー70を省略している。
図6の状態から操作者がロッド孔112に接続された図示しない操作ロッドを引くことにより、規制ピン110が円弧孔203の上端面から離間してオープンレバー100が正方向に回動し始め、
図12−1に示す状態に移行する。
【0095】
図12−1に示すように、オープンレバー100が負方向に回動を始めると、まず、カム解除レバー面114がカムプレート50のカム解除ピン62の下面に当接する。
【0096】
図12−2に示すように、オープンレバー100がさらに回動すると、カム解除レバー面114はカム解除ピン62に摺接しながらカムプレート50を負方向に押圧回動させる。そして、カム解除ピン62がカム解除レバー面114の端部近傍にまで摺接移動したときフック解除レバー108の左側のフック解除レバー面108aがインターロックピン30の右面に当接する。このとき、カムプレート50はある程度回動しており、
図11−2に示すピン退避位置とほぼ同じ角度となっており、逃げ溝58は右下方向に向けて開口している。
【0097】
図12−3に示すように、オープンレバー100がさらに回動すると、カム解除ピン62はカム解除レバー面114を乗り越えてカム保持曲面116に摺接し、カムプレート50はピン退避位置に保持される。なお、この時点のカムプレート50のピン退避位置は厳密には上記の第1のケースとは異なる場合もあるが、理解を容易にするため本願ではインターロックピン30を逃げ溝58によって回避しうる位置を広義にピン退避位置とする。フック部材20はさらに負方向に回動し、インターロックピン30はカムプレート50に干渉することなく逃げ溝58に挿入され、第1ストライカ14aは係合溝26の開口部に位置する。このときフック部材20及びカムプレート50の角度は
図11−4に示した状態とほぼ同じであり、第1ストライカ14aは左方向への移動は第2角部36によって規制されるが、右方向へは自由に移動可能となる。したがって、操作者はこの時点でシートバック12bを前へ倒して横倒姿勢に戻すことができる。
【0098】
図12−4に示すように、オープンレバー100がさらに回動すると、最大変位位置で規制ピン110が円弧孔203の下端面に当接し、それ以上の回動が規制される。このとき、第1ストライカ14aは係合溝26から完全に離脱しており左右いずれの方向にも移動可能となっている。シートバック12bを標準起立姿勢から傾斜起立姿勢へ移動させる場合には、第1ストライカ14a及び第2ストライカ14bを進入軌跡L1に沿ってそれぞれ左方向に進入させる。これにより第1ストライカ14aは膨出部38に当接し、第2ストライカ14bはセンシング面88の下面に当接することになる。第1ストライカ14aは膨出部38に対してある程度強く当たっても緩衝孔38aによって衝撃が緩和される。
【0099】
カムプレート50は
図12−3の状態と同じピン退避位置に保持されており、インターロックピン30が相当に深く進入しても干渉することがない。
【0100】
この後、操作者が操作ノブ16の引っ張り動作を止めるとオープンレバー100は弾性的に負方向に回動して
図12−5に示すように元の位置に復帰する。このときフック部材20、カムプレート50及びセンシングレバー70も
図6と同じ状態に復帰している。すなわち、
図12−5と
図6では第1ストライカ14a及び第2ストライカ14bの位置だけが異なっている。この状態でもカム面54は拘束ピン28を押圧してフック部材20のガタつきを防止する。センシングレバー70のセンシング面88は、第1ストライカ14aの移動にともなって一端下降するが、第2ストライカ14bの当接によってふたたび上昇し、該第2ストライカ14bが適正に係合したことが検知される。
【0101】
このように、第2のケースでは、オープンレバー100が正方向に回動されるときに、カム解除レバー面114がカム解除ピン62に当接した後に遅れてフック解除レバー面108aがインターロックピン30に当接する。カムプレート50はフック部材20に先行して回動してピン退避位置に保持され、フック部材20が回動することによりインターロックピン30の少なくとも一部が一旦逃げ溝58に入り込む。このようなオープンレバー100の構成により、係合解除時にフック部材20に先行してカムプレート50を回動させてピン退避位置に保持し、インターロックピン30がインターロック面56に干渉することがないようにインターロック機能を無効化しておき、フック部材20を適正に回動させることができる。
【0102】
また、カムプレート50がフック部材20に先行してピン退避位置に保持されることにより、動作タイミングをとりやすく、インターロックピン30が適正に逃げ溝58に挿入される。さらに、オープンレバー100の回動範囲が大きくともカム保持曲面116によってカムプレート50はピン退避位置に適正に保持され続ける。
【0103】
次に、
図13に基づいて第3のケースにおける作用を説明する。つまり、操作者の意思にかかわらず、フック部材20が大きい振動又は衝撃を受けて負方向に回動するときである。このときシートバック12bは標準起立姿勢又は傾斜起立姿勢となっており、振動又は衝撃によってストライカ14と係合溝26との係合が不用意に解除されないことが望ましい。
図13では、図面が煩雑になることを防ぐためにセンシングレバー70及びオープンレバー100を省略している。
図13における仮想線で示すフック部材20及びカムプレート50は、
図6に示す状態と同じであり、ストライカ14が係合溝26に係合している状態である。このとき小さい振動又は衝撃を受けても拘束ピン28がカム面54によって押圧されていることからフック部材20はガタつきが防止されており、負方向に回動してしまうことはない。
【0104】
図13に示すように、フック部材20が大きい振動又は衝撃を受けたときには、拘束ピン28がカム面54を押し込みながら負方向にやや回動することがあり得る。このとき、上記の第1のケース及び第2のケースとは異なりカムプレート50はピン退避位置ではなく、インターロックピン30は逃げ溝58に嵌まり込むことなくインターロック面56に当接することとなる。そして、ストライカ14が係合溝26から抜ける前にインターロックピン30はインターロック面56に接触点Pで当接し、それ以上の回動が規制される。
【0105】
つまり、フック部材20は、通常のロック位置のときにはカム面54により負方向への回動が弾性的に抑制されるとともに、さらにインターロック面56によるインターロック機構により確実にブロックされ、ストライカ14が係合溝26から抜けることがない。なお、このインターロック機構にはオープンレバー100は関係なく、該オープンレバー100を小さく軽量に形成することができて操作性が向上されている。
【0106】
また、接触点Pでは、インターロックピン30の当接方向やインターロック面56の傾斜角度により、カムプレート50に加わる衝撃力がほぼ軸128に向くように設定されており、カムプレート50がそれ以上回動してしまうことがなく、フック部材20を確実に停止させることができる。振動又は衝撃が停止すればフック部材20は弾性力により正方向に回動し、仮想線で示す状態に復帰する。
【0107】
次に、シートバック12b(
図1参照)に対して後ろから荷物Wが衝突することによってシートロック装置10に対して車両後斜め方向に大きい負荷Fが加わる場合の作用について説明する。
【0108】
図14に示すように、この場合のシートロック装置10は矢印Aのように車両の前斜め方向に変位しようとするがストライカ14は固定されているため、反作用として負荷Fが車両後斜め方向に作用する。そして、後方向の分力は第1角部34によって支えられるが、横負荷Fsも作用するため第1ストライカ14aと第2ストライカ14bとの連結部14cが第1角部34の側面に当接し、あるいは第1ストライカ14aの摩擦力によって第1角部34は車幅方向外側(
図14における紙面手前側)へ向かって変位し始める。また、フック部材20は衝撃により負方向に回動していてインターロックピン30がカムプレート50のインターロック面56に当接するインターロック位置(
図13,
図14参照)となっている可能性がある。なお、カムプレート50はフック部材20の負方向への回動を規制する規制位置となっている。
【0109】
このとき、まずフック部材20はストライカ進入溝204aよりも上部にある2つの内向きの膨出部214,216に当接して受け止められる。横負荷Fsが比較的小さいときにはこの膨出部214,216だけでもフック部材20の横変位を制限することが可能である。
【0110】
横負荷Fsが大きいとフック部材20はさらに変位するが、係合溝26の開口両端部である第1角部34の先端34a及び第2角部36の先端36bは、側面視でストライカ進入溝204aを超えてカバー部材200の対向面224と重なっており、該対向面224に当接する。横負荷Fsは直接的には第1角部34に作用するが、係合溝26を挟んで一体である第2角部36にも作用し、対向面224は先端34a及び先端36bの2か所でバランスよくフック部材20を支持することができ、しかもカバー部材200及びフック部材20とも適度な強度を有していることから破損や変形がなく、フック部材20の変位を確実に制限でき、ストライカ14が係合溝26から抜けることを防止できる。
【0111】
また、先端34a,36bと対向面224との間には他の部品が介在してなく、横負荷Fsを受けたときにこれらの先端34a,36bは対向面224に当接しやすくなり、横負荷Fsを受け止めやすい。先端34a,36bが当接しうるストライカ進入溝204aの縁部は一層高強度にするために肉厚に形成し、または適当な補強材を設けてもよい。
【0112】
図14において実線で示すストライカ14は、シートバック12bが標準起立姿勢である場合を示すが、傾斜起立姿勢である場合には仮想線で示すように第1ストライカ14aは遊嵌溝32に遊嵌され、第2ストライカ14bが係合溝26に係合される。この場合には、横負荷Fsは、第2ストライカ14bを介して第1角部34に作用するとともに、連結部14cを介して第2角部36にも作用しうる。このように傾斜起立姿勢であるときにも、先端34a,36bは対向面224に適切に当接し支持される。また、荷物Wから衝撃を受けた際にフック部材20はインターロック位置に変位しているとは限らず、
図6のような通常のロック位置から変位していない可能性もある。この場合にフック部材20が横負荷Fsを受けたとしても係合溝26の開口両端部である先端34a及び先端36bはストライカ進入溝204aを超えてカバー部材200の対応面224と十分に重なっており、ストライカ14が係合溝26から抜けることはない。
【0113】
上述したように、本実施の形態にかかるシートロック装置10によれば、フック部材20とストライカ14との係合解除の操作性を向上させるとともに、フック部材20のガタつきを防止することができる。また、ストライカ14が係合する係合溝26の開口両端部である先端34a,36bが側面視でカバー部材200と重なる構成としている。したがって、後方から荷物Wによって衝撃を受けてフック部材20がインターロック位置となったときでストライカ14により横負荷Fsが作用した場合においても、少なくとも先端34a,36bはカバー部材20の対向面224に当接して変位が制限される。したがって、ストライカ14がフック部材20から抜けることが防止され、シートバック12bが前方に大きく変位することがない。
【0114】
また、横負荷Fsが主体的に作用するのは高強度のフック部材20であって、カムプレート50、センシングレバー70及びオープンレバー100には直接的な作用はなく、これらの部品を薄厚にし、または樹脂材で形成することができる。シートロック装置10は2段式のロック機構であるが、上記の各作用効果は1段式のロック機構にも有効である。
【0115】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。