特許第6687224号(P6687224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687224オーバーレイ計測装置およびオーバーレイ計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687224
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】オーバーレイ計測装置およびオーバーレイ計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20200413BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20200413BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   G01B11/00 H
   H01L21/66 J
   G03F7/20 521
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-60940(P2016-60940)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-173190(P2017-173190A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】松村 明
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−172313(JP,A)
【文献】 特開平06−058717(JP,A)
【文献】 特開2005−257673(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0105092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G03F 7/20
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パターンが、予め定められた配列方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素を含み、第2パターンが、前記配列方向に等間隔にて配列された複数の第2パターン要素を含み、基板上に形成された第1層に含まれる前記第1パターンと、前記第1層に重なる第2層に含まれる前記第2パターンとを撮像して得られたパターン画像から、前記配列方向における前記第1層と前記第2層との間のずれ量を取得するオーバーレイ計測装置であって、
前記第1パターン要素と前記第2パターン要素との組合せである要素対を示す要素対画像を、前記パターン画像から取得する要素対画像取得部と、
前記配列方向に対して垂直な軸を中心とした前記要素対画像の反転画像を生成し、前記要素対画像と前記反転画像とを用いた前記第1パターン要素の重ね合わせを基に、前記配列方向に対して垂直な軸を中心とする要素対の対称性を示す評価値を取得する評価値取得部と、
複数の前記要素対に関して得られた複数の前記評価値に、少なくとも1つの未知係数を有する放射基底関数を含む関数のフィッティングを行って、前記少なくとも1つの未知係数の値を決定することにより、前記配列方向における位置と評価値との関係を示す評価値関数を取得する関数取得部と、
前記評価値関数から、前記配列方向において評価値が最大となる位置を取得し、前記位置から前記第1層と前記第2層との間のずれ量を取得するずれ量取得部と、
を備え、
前記関数取得部は、前記評価値関数を取得する際に、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれて重み付けを小さくして前記フィッティングを行う
ことを特徴とするオーバーレイ計測装置。
【請求項2】
前記関数取得部は、前記評価値関数を取得する際に、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が前記所定の位置から離れるにつれてより小さくなる重み付けをした値の二乗和が最小となるように前記フィッティングを行う、ことを特徴とする請求項1に記載のオーバーレイ計測装置。
【請求項3】
前記関数取得部は、前記評価値関数を取得する際に、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に、上に有界な単調増加関数を含む関数を用いて重み付けを行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載のオーバーレイ計測装置。
【請求項4】
第1パターンが、予め定められた配列方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素を含み、第2パターンが、前記配列方向に等間隔にて配列された複数の第2パターン要素を含み、基板上に形成された第1層に含まれる前記第1パターンと、前記第1層に重なる第2層に含まれる前記第2パターンとを撮像して得られたパターン画像から、前記配列方向における前記第1層と前記第2層との間のずれ量を取得するオーバーレイ計測方法であって、
前記第1パターン要素と前記第2パターン要素との組合せである要素対を示す要素対画像を、前記パターン画像から取得する工程と、
前記配列方向に対して垂直な軸を中心とした前記要素対画像の反転画像を生成し、前記要素対画像と前記反転画像とを用いた前記第1パターン要素の重ね合わせを基に、前記配列方向に対して垂直な軸を中心とする要素対の対称性を示す評価値を取得する工程と、
複数の前記要素対に関して得られた複数の前記評価値に、少なくとも1つの未知係数を有する放射基底関数を含む関数のフィッティングを行って、前記少なくとも1つの未知係数の値を決定することにより、前記配列方向における位置と評価値との関係を示す評価値関数を取得する工程と、
前記評価値関数から、前記配列方向において評価値が最大となる位置を取得し、前記位置から前記第1層と前記第2層との間のずれ量を取得する工程と、
を備え、
前記評価値関数を取得する工程は、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれて重み付けを小さくして前記フィッティングを行う
ことを特徴とするオーバーレイ計測方法。
【請求項5】
前記評価値関数を取得する工程は、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が前記所定の位置から離れるにつれてより小さくなる重み付けをした値の二乗和が最小となるように前記フィッティングを行う、ことを特徴とする請求項4に記載のオーバーレイ計測方法。
【請求項6】
前記評価値関数を取得する工程は、前記各評価値と前記放射基底関数を含む関数との誤差に、上に有界な単調増加関数を含む関数を用いて重み付けを行う、ことを特徴とする請求項4または5に記載のオーバーレイ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーニアパターンを示す画像から基板上の2層間のずれ量を取得するオーバーレイ計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造では、基板上に回路パターンを含む複数の層が積層される。このとき、従来より、層間の理想的な位置からの相対的な距離(以下、「ずれ量」という。)の計測が行われている。ずれ量は、正確には、一の層が含むパターンと他の層が含むパターンとの相対位置のずれ量である。ずれ量の計測は、オーバーレイ計測と呼ばれ、計測結果は、品質管理や製造工程の改善等に利用される。オーバーレイ計測の一手法として、一の層に主尺パターンを含め、他の層に副尺パターンを含め、これらのパターンを含む画像からずれ量を取得する手法が知られている。例えば、特許文献1では、ずれ量の読み取り精度を向上することができるバーニアパターンが開示されている。
【0003】
なお、通常、「バーニア」とは副尺を指すが、以下の説明では、主尺および副尺の双方を含むパターンを「バーニアパターン」と呼び、バーニアパターンを含む画像を「バーニアパターン画像」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7181057号明細書
【特許文献2】特開2006−351888号公報
【特許文献3】特開2011−142321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バーニアパターンを自動的に計測するには、例えばパターンのエッジ線を算出する方法により主尺に相当するパターン中心線と副尺に相当するパターン中心線とを個別に求め、それら中心線の最もよく一致するパターン(正対パターン)が何番目に位置しているかを算出することで行う。
【0006】
しかし、この方法では、製造上の不具合で副尺に相当するパターンが変形したり消失した場合の対応が難しくなったりする。また、バーニアパターンの形状は多種多様であるため、この方法の適用範囲は限られる。
【0007】
さらに、1つずつ切り出したバーニアパターン(正像)と、それを主尺部分の対称軸について反転した像(鏡像)とを用意し、それらの間でパターンマッチングを行ったときの類似度に基づいて正像自体の対称性を数値化することで、多様なパターンを簡便かつ頑健に計測する方法もある。
【0008】
しかし、この方法では、バーニアの個々のパターンが微細である場合に、撮像時の画素分解能に十分な余裕がなくなり、類似度の変化に基づいて正像の対称性を精度よく決定することが難しい。また、バーニアの副尺パターンが細いと、副尺パターン幅の半分以上ずれた位置では主尺中心線について反転したとき副尺同士が重ならず、類似度が変化しなくなる。さらに、バーニアパターンの類似度が単調増加または単調減少し、近似曲線により推定される正対位置が当該バーニアで計測できる範囲外に出てしまう可能性があるため、計測範囲内で正像の対称性を精度よく決定できない可能性がある。
【0009】
また、数値化した対称性と主尺の位置との関係をグラフに描いて、各主尺位置が頂点となる(または各主尺位置におけるパターン対称性の値を頂点とする)上に凸のガウス関数により全点を使った曲線あてはめを行う方法もある。この方法では、主尺パターンの数だけ求めた近似曲線(ガウス関数)のうちで全データ点からの残差平方和が最小であるものを選ぶことで仮の正対位置を決め、仮の正対位置とその両側のうちで対称性が最大となる位置を選ぶ。そして、その両側2点ずつを含む計5点を使って改めて2次多項式で曲線あてはめを行い、その極大点を真の正対位置と推定する。
【0010】
しかし、この方法では、「仮の正対位置」の決定や「対称性が最大となる位置とその両側2点」の決定には、経験則によるところがあるため、実際の運用では測定対象パターンごとで最適値に調整する必要があった。また、近似曲線(2次多項式)を求めるために使用したデータ自体の妥当性(近似曲線から遠く離れていない)を判定する「適切な閾値」を慎重に決定する必要もある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、バーニアパターンによるオーバーレイを簡便かつ頑健に計測することができ、多種類のバーニアパターンにも対応できるとともに、撮像時の画素分解能に十分な余裕がなくてもオーバーレイを精度よく計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係るオーバーレイ計測装置は、第1パターンが、予め定められた配列方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素を含み、第2パターンが、配列方向に等間隔にて配列された複数の第2パターン要素を含み、基板上に形成された第1層に含まれる第1パターンと、第1層に重なる第2層に含まれる第2パターンとを撮像して得られたパターン画像から、配列方向における第1層と第2層との間のずれ量を取得するオーバーレイ計測装置であって、第1パターン要素と第2パターン要素との組合せである要素対を示す要素対画像を、パターン画像から取得する要素対画像取得部と、要素対画像から、配列方向に対して垂直な軸を中心とする要素対の対称性を示す評価値を取得する評価値取得部と、複数の要素対に関して得られた複数の評価値に、少なくとも1つの未知係数を有する放射基底関数を含む関数のフィッティングを行って、少なくとも1つの未知係数の値を決定することにより、配列方向における位置と評価値との関係を示す評価値関数を取得する関数取得部と、評価値関数から、配列方向において評価値が最大となる位置を取得し、当該位置から第1層と第2層との間のずれ量を取得するずれ量取得部とを備え、関数取得部は、評価値関数を取得する際に、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれて重み付けを小さくしてフィッティングを行う。これにより、パターン自身の鏡像との類似度に基づいてフィッティングを行うため、あらかじめパターンと比較するテンプレートを準備する必要がなく、種々のパターンに対するフィッティングに対応することができる。また、パターン画像から得られる評価値に放射基底関数を含む関数をフィッティングすることで、従来のフィッティングに比べてより精度の高いフィッティングを行うことができる。
【0013】
また、上記のオーバーレイ計測装置において、関数取得部は、評価値関数を取得する際に、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に対して、配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれてより小さくなる重み付けをした値の二乗和が最小となるようにフィッティングを行う構成としてもよい。さらに、関数取得部は、評価値関数を取得する際に、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に、上に有界な単調増加関数を含む関数を用いて重み付けを行う構成としてもよい。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係るオーバーレイ計測方法は、第1パターンが、予め定め
られた配列方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素を含み、第2パターンが、配列方向に等間隔にて配列された複数の第2パターン要素を含み、基板上に形成された第1層に含まれる第1パターンと、第1層に重なる第2層に含まれる第2パターンとを撮像して得られたパターン画像から、配列方向における第1層と第2層との間のずれ量を取得するオーバーレイ計測方法であって、第1パターン要素と第2パターン要素との組合せである要素対を示す要素対画像を、パターン画像から取得する工程と、要素対画像から、配列方向に対して垂直な軸を中心とする要素対の対称性を示す評価値を取得する工程と、複数の要素対に関して得られた複数の評価値に、少なくとも1つの未知係数を有する放射基底関数を含む関数のフィッティングを行って、少なくとも1つの未知係数の値を決定することにより、配列方向における位置と評価値との関係を示す評価値関数を取得する工程と、評価値関数から、配列方向において評価値が最大となる位置を取得し、当該位置から第1層と第2層との間のずれ量を取得する工程とを備え、評価値関数を取得する工程は、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に対して、前記配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれて重み付けを小さくしてフィッティングを行う。
【0015】
さらに、上記のオーバーレイ計測方法において、評価値関数を取得する工程は、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に、配列方向における位置が所定の位置から離れるにつれてより小さくなる重み付けをした値の二乗和が最小となるようにフィッティングを行う構成としてもよい。さらに、評価値関数を取得する工程は、各評価値と放射基底関数を含む関数との誤差に、上に有界な単調増加関数を含む関数を用いて重み付けを行う構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バーニアパターンによるオーバーレイを簡便かつ頑健に計測することができ、多種類のバーニアパターンにも対応できるとともに、撮像時の画素分解能に十分な余裕がなくてもオーバーレイを精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態におけるオーバーレイ計測装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、一実施形態におけるコンピュータの構成を示す図である。
図3図3は、一実施形態におけるコンピュータの機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、一実施形態におけるバーニアパターン画像の例を示す図である。
図5図5は、一実施形態における準備作業の流れを示す図である。
図6図6は、一実施形態におけるオーバーレイ計測装置において実行される処理を例示するフローチャートである。
図7A図7Aは、一実施形態における要素対画像の例を示す図である。
図7B図7Bは、一実施形態における反転画像の例を示す図である。
図7C図7Cは、一実施形態における要素対画像と反転画像とを重ねた様子を示す図である。
図8A図8Aは、一実施形態における要素対画像の例を示す図である。
図8B図8Bは、一実施形態における要素対画像の例を示す図である。
図9図9は、一実施形態における正像と鏡像の類似度に関するデータの例を示す図である。
図10図10は、従来における評価値関数の例を示すグラフである。
図11図11は、一実施形態における評価値関数の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るオーバーレイ計測装置1の概略構成を示す図で
ある。オーバーレイ計測装置1は、対象物である半導体基板(以下、「基板」という。)9上に形成された複数層間のずれ量を取得する。すなわち、基板9上にはフォトリソグラフィ技術を利用して回路パターンを含む一の層が形成され、当該層上にフォトリソグラフィ技術を利用して回路パターンを含む他の層が形成されている。オーバーレイ計測装置1は、基板9の画像を光学的に取得し、画像から層間のパターンのずれ量を取得する。
【0019】
オーバーレイ計測装置1は、ステージ21と、ステージ駆動部22と、撮像部3とを備える。ステージ21は、基板9を保持する。ステージ駆動部22は、撮像部3に対してステージ21を相対的に移動する。ステージ駆動部22はボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成される。撮像部3は、ステージ21の上方に配置され、基板9を撮像して画像データを取得する。撮像部3は、照明部31と、光学系32と、撮像デバイス33とを備える。照明部31は、照明光を出射する。光学系32は、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光が入射する。撮像デバイス33は、光学系32により結像された基板9の像を電気信号に変換する。
【0020】
オーバーレイ計測装置1には、さらに、各種演算処理を行うコンピュータ5が設けられる。コンピュータ5がステージ駆動部22および撮像部3を制御することにより、基板9上の対象領域が撮像される。
【0021】
図2は、コンピュータ5の構成を示す図である。コンピュータ5は各種演算処理を行うCentral Processing Unit(CPU)51と、基本プログラムを記憶するRead Only Memory(ROM)52と、各種情報を記憶するRandom Access Memory(RAM)53とを含む
コンピュータシステムの構成となっている。コンピュータ5は、情報記憶を行う固定ディスク54と、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ55と、操作者からの入力を受け付けるキーボード56aおよびマウス56b(以下、「入力部56」と総称する。)と、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置57と、オーバーレイ計測装置1の他の構成要素との間で信号を送受信する通信部58とをさらに含む。
【0022】
コンピュータ5では、事前に読取装置57を介して記録媒体8からプログラム80が読み出されて固定ディスク54に記憶されている。CPU51は、プログラム80に従ってRAM53や固定ディスク54を利用しつつ演算処理を実行する。
【0023】
図3は、コンピュータ5の演算処理により実現される機能構成を示すブロック図である。図3では、コンピュータ5はCPU51、ROM52、RAM53、固定ディスク54等により実現される機能構成である。コンピュータ5は、パターン画像取得部511と、要素対画像取得部512と、評価値取得部513と、関数取得部514と、ずれ量取得部515と、これらの動作を制御する制御部510とを含む。これらの機能の詳細は後述する。各機能は専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。
【0024】
図4は、バーニアパターン画像の例を示す図である。図4は、予め定められたx方向のずれ量を取得するためのバーニアパターン画像601と、x方向に垂直なy方向のずれ量を取得するためのバーニアパターン画像602とを示す。バーニアパターン画像601は、基板9上の第1パターン61および第2パターン62を示す部位を含む。図4では、バーニアパターン画像601において、基板9上の第1パターン61および第2パターン62に対応する部位を、第1パターン61および第2パターン62として示す。
【0025】
バーニアパターン画像601では、第1パターン61は、x方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素611を含む。第2パターン62は、x方向に等間隔にて配列
された複数の第2パターン要素621を含む。図4では、それぞれのバーニアパターン画像601、602において、第1パターン要素611の数は9であり、第2パターン要素621の数も9である。第2パターン要素621のピッチは、第1パターン要素611のピッチよりもわずかに小さい。
【0026】
第1パターン61は、基板9上に形成された一の層に含まれる。以下、第1パターン61を含む層を「第1層」と呼ぶ。正確には、第1パターン61は、第1層を利用してフォトリソグラフィにより回路パターンと共に形成される。第2パターン62は、基板9上に形成された他の一の層に含まれる。以下、第2パターン62を含む層を「第2層」と呼ぶ。正確には、第2パターン62は、第2層を利用してフォトリソグラフィにより回路パターンと共に形成される。第1層と第2層とは重なるが、直接的に重なっている必要はなく、他の層が介在して間接的に重なってもよい。また、パターンはフォトリソグラフィ以外の技術により形成されてもよい。
【0027】
第1パターン61は、いわゆる主尺であり、第2パターン62は、いわゆる副尺である。第1パターン61および第2パターン62の主尺および副尺の役割は、入れ替えられてもよい。また、第1パターン要素611の間隔は、第2パターン要素621の間隔よりも小さくてもよい。
【0028】
第1層と第2層とがx方向にずれていない場合、すなわち、第1層の回路パターンと第2層の回路パターンとがx方向に関してずれていない場合、バーニアパターン画像601において、中央の第1パターン要素611のx方向の中心位置と、中央の第2パターン要素621のx方向の中央位置とが一致する。第1層と第2層とがx方向にずれると、中央以外のいずれかの第1パターン要素611の中央位置と、他のいずれかの第2パターン要素621の中央位置とが最も近づく。ずれ量に応じて、中央位置が最も近づく第1パターン要素611と第2パターン要素621との組合せの位置が変化する。
【0029】
バーニアパターン画像602も第1パターン61と第2パターン62とを含む。第1パターン61は、y方向に等間隔にて配列された複数の第1パターン要素611を含む。第2パターン62は、y方向に等間隔にて配列された複数の第2パターン要素621を含む。第1パターン要素611の間隔は、第2パターン要素621の間隔とわずかに異なる。パターン要素がy方向に配列される点を除いて、バーニアパターン画像602は、バーニアパターン画像601と同様である。
【0030】
図5は、オーバーレイ計測装置1における準備作業の流れを示す図である。準備作業では、まず、ステージ21上に参照用の基板9が載置され、作業者の操作により、基板9上に形成された基準マークが撮像部3により撮像される。作業者が取得画像中の基準マークの位置を入力部56を介して指定することにより、コンピュータ5において、ステージ21に対する基板9の相対位置が取得される。
【0031】
次に、作業者の操作により、基板9上の1つのダイに含まれるバーニアパターンが撮像部3により撮像される。これにより、バーニアパターンを含む画像が取得される。作業者は、ディスプレイ55の表示を見ながら、入力部56を介してバーニアパターンの位置および範囲を指定する。これにより、コンピュータ5において、バーニアパターンの位置および参照用のバーニアパターン画像が登録される(ステップS11)。
【0032】
バーニアパターン画像601,602の登録の後、作業者は、各バーニアパターン画像601、602が含む第1パターン要素611および第2パターン要素621の対の数および配列方向をコンピュータ5に入力する(ステップS12)。バーニアパターン画像601に関しては、要素対数として「9」が入力され、配列方向として「x」が入力される
。バーニアパターン画像602に関しては、要素対数として「9」が入力され、配列方向として「y」が入力される。
【0033】
なお、上記説明では、バーニアパターン画像601、602およびその位置がステップS11において個別に登録されるものとして説明したが、2つのバーニアパターン画像601を含む画像がパターン群画像として登録されてもよい。この場合、パターン群画像における各バーニアパターン画像の位置および範囲が作業者により入力される。また、要素対の数に代えて、第1パターン要素611または第2パターン要素621のピッチが入力されてもよい。
【0034】
図6は、オーバーレイ計測装置1の動作の流れを示す図である。ステージ21に計測対象となる基板9が載置されると、撮像部3により基板9に付されているアライメントマークが自動的に撮像され、ステージ21に対する基板9の位置が取得される。そして、パターン画像取得部511により、予め登録されているバーニアパターンの位置および範囲に基づいて、バーニアパターンが存在すると想定される範囲がさらに撮像される。取得された画像から、参照用のバーニアパターン画像とのパターンマッチングにより、バーニアパターンを示すバーニアパターン画像が取得される(ステップS21)。
【0035】
本実施の形態の場合、x方向に関するバーニアパターン画像とy方向に関するバーニアパターン画像とが取得される。以下の説明では、これらのバーニアパターン画像に図4と同様の符号を付す。また、既述のように、ステップS11にて複数のバーニアパターンを示すパターン群画像並びにバーニアパターンの位置および範囲が登録される場合、撮像画像とパターン群画像とのパターンマッチング、並びに、パターン群画像におけるバーニアパターンの位置および範囲に基づいて、撮像画像から各バーニアパターン画像が取得される。
【0036】
次に、要素対画像取得部512は、ステップS12にて設定された要素対の数と配列方向とに基づいて、バーニアパターン画像601を分割する(ステップS22)。以下、単に「配列方向」と表現する場合は、要素対やパターン要素の配列方向を指すものとする。また、配列方向における位置を「配列方向位置」と呼ぶ。バーニアパターン画像601は、第1パターン要素611のピッチに基づいて分割されてもよい。各分割画像は、1つの要素対、すなわち、1つの第1パターン要素611と対応する1つの第2パターン要素621との組み合わせを含む。なお、ステップS12において、バーニアパターン画像601中の各要素対の位置および範囲が指定され、これらの情報に基づいて各要素対を含む画像がバーニアパターン画像601から取得されてもよい。以下、1つの要素対を示す画像を「要素対画像」と呼ぶ。
【0037】
図7Aは、要素対画像603を例示する図である。評価値取得部513は、図7Bに示すように、要素対画像603の左右を反転した画像を生成する。すなわち、評価値取得部513は、要素対画像603を、第1パターン要素611の配列方向に対して垂直な軸を中心として反転した反転画像603aを生成する。また、評価値取得部513は、要素対画像603の一部をパターンマッチング用の部分画像631として取得する。具体的には、部分画像631として要素対画像603の図7Aの下部が取得され、部分画像631には第1パターン要素611の一部のみが含まれる。第1パターン要素611は左右対称であり、第1パターン要素611の下部も対称性を有する。
【0038】
評価値取得部513は、部分画像631と反転画像603aとのパターンマッチングを行う。これにより、要素対画像603の第1パターン要素611と、反転画像603aの第1パターン要素611とが一致する際の反転画像603aに対する要素対画像603の相対位置が取得される。評価値取得部513は、図7Cに示すように、要素対画像603
の第1パターン要素611と反転画像603aの第1パターン要素611とを重ねた際の両画像のマッチングスコアを、評価値として取得する(ステップS23)。
【0039】
マッチングスコアは、反転前の要素対画像603と反転画像603aとの一致度を示す値であり、配列方向に対して垂直な軸を中心とする要素対の対称性を示す評価値の一つである。マッチングスコアの算出方向としては、様々な手法が利用されてよい。本実施の形態では、例えば、以下の数1または数2にて示される正規化相関(「正規化相互相関」とも呼ばれる。)によりマッチングスコアが求められる。
【0040】
【数1】
【数2】
【0041】
数1および数2において、Iは要素対画像603、Tは反転画像603aを示し、M,Nは、パターンマッチングに利用される領域のx方向およびy方向の画素数である。
【0042】
評価値としては、要素対の対称性を示すのであれば、様々なものが利用されてよい。例えば、単純に、要素対画像603と反転画像603aとの一致度が評価値として利用されてよい。また、第2パターン要素621を基準にパターンマッチングが行われて評価値が取得されてもよい。
【0043】
要素対画像603はカラー画像であってもよい。例えば、要素対画像603において、R1、G1、B1、R2、G2、B2・・・と数値が並んでいる場合、要素対画像603を、x方向に元の画像の画素数の3倍の数の画素が並ぶグレー画像とみなして評価値が求められる。ただし、部分画像631と反転画像603aとのパターンマッチングの際には、部分画像631はx方向に3画素ずつ移動しつつ一致度が取得される。カラー画像を利用することにより、コントラストが低い場合あっても良好な評価値を得ることができる場合がある。
【0044】
また、反転画像603aを生成する前に、要素対画像603に線形または非線形のコントラスト補正が行われてもよい。例えば、要素対画像603をRGBの色成分画像に分け、各色成分画像にコントラスト補正を行った上で合成してカラー画像に戻される。コントラスト補正により、色相は変化する。コントラスト補正としては、例えば、画素階調値と画素数との関係の変化域を線形に変更したり、y=x1/γにて表現される非線形変換が行われてもよい。
【0045】
図8Aおよび図8Bは要素対画像603の例を示す図である。図8Bの要素対63では図8Aの要素対63よりも第1パターン要素611と第2パターン要素621との左右の位置ずれが大きい。そのため、図8Bの評価値は、図8Aの評価値よりも小さい。
【0046】
図9は、従来において、上記の要素対の配列方向位置(「位置」)と評価値(「スコア」)との関係と近似の例を示す表である。図9の例では、要素対の数は9である。「0」の位置が、パターン要素における中央の要素対の位置に対応する。「1」の位置が中央の隣の要素対の位置に対応する。また、図10図9の各評価値をプロットしたグラフを示す。グラフにおいて各評価値を菱形の各点にて示す。
【0047】
モデル関数のフィッティングにおいては、例えば、数3に示すガウス関数が、予め係数が未知数として設定されているモデル関数f(x)として準備される。そして、モデル関数f(x)が、複数の位置と複数の評価値との対応関係を示す菱形の各点に最も近づくように、未知係数a、b、c、dの値が決定される。モデル関数f(x)のグラフの形を決定するパラメータA(=(a,b,c,d))は、以下の数4に示す二乗和誤差e(A)を最小とするように決定される。なお、モデル関数f(x)を、グラフの菱形の各点(評価値)に近づけることを「評価値に関数をフィッティングする」と適宜表現する。
【0048】
【数3】
【数4】
【0049】
図10は、図9に示す評価値に対して、従来のように、モデル関数のフィッティングにおいて関数g(x)を加味しない、すなわち上記の式においてg(x)≡1とした場合において得られるグラフである。従来の場合、1回目のモデル関数のフィッティングにより「近似1」で示されるグラフが得られる。なお、図9には、「近似1」において決定される未知係数の値を「曲線の式のパラメータ」として示す。
【0050】
関数g(x)を加味しないモデル関数のフィッティングの場合、得られた近似曲線について、−4〜4の各位置において計算される値と一定値以上離れる評価値(「スコア」)を除外して再度フィッティングを行う。図9に示す例の場合、「近似1」で得られた近似曲線の位置1における評価値を除外し、残りの評価値に基づくフィッティングを行うことで、「近似2」に示す近似曲線が得られる。「近似1」および「近似2」において得られる近似曲線は、図10からわかるように下に凸の曲線であるため極大値を求めることができず、ずれ量を決定することができない。
【0051】
このため、「近似2」において得られる近似曲線に対して、既に除外した位置1における評価値に加えて位置−2、−1における評価値を位置1における評価値と同様の理由により除外し、残りの評価値に基づくフィッティングを行う。この結果、「近似3」に示す近似曲線が得られる。ただし、図9に示すように、「近似3」において得られる近似曲線について推定されるずれ量はb=4.2であり、本実施形態において推定されるずれ量3.1と大きく異なる。そこで、「近似3」において得られる近似曲線に対して、既に除外した位置−2、−1、1における評価値に加えて位置−3における評価値を除外し、残りの評価値に基づくフィッティングを行う。この結果、「近似4」に示す近似曲線が得られ、推定されるずれ量はb=3.3となる。
【0052】
一方、本実施形態では、未知係数a、b、c、dの各値を決定するにあたり、いわゆる上に有界な単調増加関数、例えば数5に示すシグモイド関数あるいはシグモイド関数と似た性質を有するシグマ型の関数g(x)(x≧0)を用いて、数6に示す値E(A)(A=(a,b,c,d))を最小化する。したがって、本実施形態では、関数g(x)のx≧0の範囲の部分を用いるため、フィッティングに用いられるg(x)×g(−x)は、x=0を中心に左右対称であり、x=0から離れるにつれてなだらかになる。なお、g(x)においてαはゲインを意味する。また、E(A)において、yは、位置xにおける評価値(スコア)を意味する。数6に示す関数は、x軸方向(配列方向)においてパラメータbで決定される位置におけるx軸に垂直な軸に対して左右対称となる。
【0053】
【数5】
【数6】
【0054】
なお、モデル関数として上記のf(x)の他に2次関数等の他の関数が用いられてもよい。モデル関数は上に凸であり、好ましくは左右対称である。モデル関数の未知係数の数は1つでもよい。未知係数の数が1つの場合、例えば、モデル関数の頂点の配列方向位置のみが未知係数に設定される。未知係数の数は少なくとも1つである。ここで、近似曲線f(x)と各評価点との差は、大きくとも区間[0,1]内の値である。
【0055】
そして、本実施形態では、数6に示す誤差E(A)を最小化する。これにより、各評価点が近似曲線であるモデル関数f(x)から離れるほど、関数g(x)によって評価点の重みが低くなる効果が得られる。すなわち、数6に示す誤差E(A)を用いたフィッティングは、以下の数7に示す重み付き近似による誤差e’(A)における重みwが、配列方向位置(x軸方向)に応じて変化することに相当すると言える。
【0056】
【数7】
【0057】
本実施形態では、関数取得部514が、上記の数6に示す誤差E(A)を最小化することで、配列方向の複数の要素対63の位置に対応する複数の評価値に、未知係数A(=(a,b,c,d))を含むモデル関数をフィッティングすることにより未知係数の値を決定する。さらに、関数取得部514は、決定した未知係数の値を数3に示すf(x)に当てはめることで、配列方向における位置と評価値との関係を示す関数を取得する(ステップS24)。フィッティングにおいて得られる関数は、評価値関数の一例に相当する。
【0058】
したがって、本実施形態では、各評価値と、上記のガウス関数に例示される放射基底関数を含む関数との誤差に対して、パラメータbで決定される位置から離れるにつれて重み
付けを小さくしたフィッティングが行われる。なお、パラメータbで決定される位置は、放射基底関数の最大(極大)値を取る位置であると考えることができる。また、パラメータbで決定される位置が、所定の位置の一例に相当する。
【0059】
図11に、本実施形態において、図9に示す評価値に対してゲインαを1.0×10としたときのフィッティング後の関数のグラフを示す。なお、この場合における、非線形最小二乗法(反復解法を用いる)によって得られる未知係数Aは、a=3.5×10−2、b=3.1、c=2.9×10、d=9.6×10−1である。誤差E(A)はガウス分布を示す関数であるため、その頂点はbの位置となり、推定されるずれ量は3.1となる。このように、得られる未知係数Aの値に基づいて、ずれ量が推定される(ステップS25)。
【0060】
上記の例に示すように、関数g(x)を加味しないモデル関数のフィッティングの場合は、モデル関数のフィッティングを少なくとも3回行う必要があるが、本実施形態のモデル関数のフィッティングの場合は、1回のフィッティングですむ。したがって、本実施形態のモデル関数のフィッティングによれば、従来よりも短時間でかつ精度よくずれ量を推定することができるといえる。
【0061】
バーニアパターン画像601からx方向のずれ量が取得されると、要素対63の配列方向がy方向であるバーニアパターン画像602に対して同様の処理が行われる(ステップS26)。これにより、第1層と第2層とのy方向のずれ量が取得される。バーニアパターン画像602に対する処理では、反転画像603aは、要素対画像603をx方向を向く軸を中心として反転した画像となる。
【0062】
以上が本実施形態に関する説明であるが、上記のオーバーレイ計測装置の構成や関数のフィッティングの処理は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想と同一性を失わない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記の説明では関数g(x)はシグモイド関数を例示したが、逆正接関数tan−1(αx)などを用いてもよい。
【0063】
また、例えば、要素対画像603の反転は、パターンマッチングを行うことなく単純に行われてもよく、要素対63の対称性を評価する軸は、第1パターン要素611の中心軸632に厳密に一致している必要はない。一般的に表現すれば、評価値取得部513において、要素対63の対称性を評価する際に中心となる軸は、第1パターン要素611および第2パターン要素621のうち、配列方向に関して幅が大きい方を基準に定められていることが好ましい。
【0064】
さらに、本実施の形態の場合、評価値は、第2パターン要素621が第1パターン要素611の中心軸632からずれるほど小さくなる。したがって、第2パターン要素621の画素値と要素対画像603の背景の画素値との差、すなわち、濃度差が大きいほど評価値は大きくなる。このことから、評価値取得部513において、要素対63の対称性を評価する際に中心となる軸は、第1パターン要素611および第2パターン要素621のうち、背景との濃度差が小さい方を基準に定められていることが好ましい。
【0065】
第1パターン要素611と第2パターン要素621との間の濃度差が小さい場合、単純に要素対画像603と反転画像603aとのパターンマッチングを行って評価値が求められてもよい。
【0066】
以上のように、対称性の評価値を利用する場合、適切な評価値を容易に得ることができ、その結果、高い精度でずれ量を取得することができる。特に、対称性を評価値として利
用する場合、要素対画像603からエッジを抽出する等の演算量の多い処理を行う必要がなくなり、比較的簡単な処理でずれ量を取得することができる。
【0067】
第1パターン要素611を基準として対称性が評価される場合、第1パターン要素611が左右対称であることにより、第1パターン要素611の形状が評価値に与える影響を最小限に抑えることができる。一般的に表現すれば、第1パターン要素611および第2パターン要素621のうち、要素対63の対称性を評価する際に中心となる軸を定める基準となるパターン要素は、当該軸を中心として対称、正確には、線対称であることが好ましい。
【0068】
また、評価値の算出方法は様々に変更されてよい。要素対画像603と反転画像603aとのパターンマッチングを利用する場合、既述のように対称性の基準となる軸は、概念上は存在するが、演算上は明確には現れない。しかし、要素対画像603、第1パターン要素611、第2パターン要素621、要素対63等を基準に、対称軸は演算上明瞭に設定されてもよい。
【0069】
上記実施の形態では、説明の都合上、グラフにおいて位置と評価値との組み合わせを菱形の点としてプロットして表現したが、点や関数という概念と同等の処理が実現されるのであれば、位置と評価値との関係や関数を記憶する情報格納構造や、演算処理として、様々なものが採用可能である。
【0070】
上記実施の形態にて示したオーバーレイ計測装置1の動作の流れは適宜変更されてよい。例えば、x方向に対応するバーニアパターン画像601に対する演算処理と、y方向に対応するバーニアパターン画像602に対する演算処理とは、並行して行われてもよい。要素対63毎に、要素対画像603の取得と評価値の算出とが逐次行われてもよい。準備作業の一部は自動化されてもよい。逆に、準備作業を省き、要素対画像603を取得するまでの処理の一部が、作業者により行われてもよい。その他の演算処理においても、作業者による補助作業が含まれてもよい。
【0071】
第1パターン要素611および第2パターン要素621は、全体が等間隔に並ぶ必要はない。例えば、(+x)方向へのずれ量のみを計測するためのパターン要素と、(−x)方向へのずれ量のみを計測するためのパターン要素とが個別のバーニアパターンとして設けられてもよい。y方向に関しても同様である。
【0072】
基板9は半導体基板には限定されない。ガラス基板等の微細な多層パターンが形成されるものであれば、オーバーレイ計測装置1の技術が適用可能である。また、撮像部3は、多層膜を観察することができるのであれば、光学顕微鏡以外の顕微鏡であってもよい。また、オーバーレイ計測装置1による上記の演算処理の対象は、バーニアパターン画像に限らず、任意の対象の特徴を経時的に取得した画像、例えば、細胞培養の成長過程において取得したセルやコロニーの画像などであってもよい。細胞のセルやコロニーの画像の場合、上記の処理によって、セルやコロニーが正常に成長しているか否かを推定することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 オーバーレイ計測装置
9 基板
61 第1パターン
62 第2パターン
63 要素対
512 要素対画像取得部
513 評価値取得部
514 関数取得部
515 ずれ量取得部
601 バーニアパターン画像
603 要素対画像
603a 反転画像
611 第1パターン要素
621 第2パターン要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11