(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、回転子の回転中心P(
図2、
図15参照)を通る回転中心線O(
図1参照)の方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面(
図2、
図15参照)で見て、回転中心Pを中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面で見て、回転中心Pを通る方向を示す。「径方向内周側」という記載は、径方向に沿って回転中心P側を示し、「径方向外周側」という記載は、径方向に沿って回転中心Pと反対側を示す。
なお、絶縁体に対しては、「軸方向」、「周方向」および「径方向」という記載は、絶縁体が固定子コアのティースに装着されている状態における「軸方向」、「周方向」および「径方向」を示す。
【0011】
図1に、本発明の電動機を構成する固定子の第1の実施形態100が示されている。なお、
図1は、第1の実施形態の固定子100の斜視図である。
固定子100は、固定子コア110、絶縁体200、固定子巻線150(図示省略)により構成されている。
【0012】
固定子コア110は、軸方向両側にコア端面110Aおよび110Bを有している。また、固定子コア110は、分割構造の固定子コアとして構成されている。本実施形態では、固定子コア110は、
図2に示されているように、第1のコア部材120と第2のコア部材130により構成されている。なお、
図2には、第1のコア部材120と第2のコア部材130を軸方向に直角な方向から見た図が示されている。
第1のコア部材120(「インナーコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を、カシメ用突起127を用いて積層した積層体により構成される。第1のコア部材120は、径方向に沿って延在するとともに、周方向に沿って離間して配置されている複数のティース121を有している。ティース121は、径方向に沿って延在するティース基部122と、ティース基部122の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部123を有している。周方向に隣接するティース121のティース先端部123は、連結部125によって連結されている。
第2のコア部材130(「アウターコア」と呼ばれる)は、複数の電磁鋼板を、カシメ用突起137を用いて積層した積層体により構成される。第2のコア部材130は、周方向に沿って延在するヨーク131を有している。ヨーク131は、ヨーク外周面132とヨーク内周面133を有している。そして、ヨーク内周面133から径方向外周側に窪んでいる凹部形成面134aを有している。凹部形成面134aにより、第1のコア部材120のティース121(詳しくは、ティース基部122)の径方向外周側の端部が嵌合可能な凹部134が形成される。なお、ヨーク内周面133は、周方向に隣接する2つの凹部134(凹部形成面134a)の間に形成されているヨーク内周面部分133aと133bを有している。ヨーク内周面部分133aと133bは、ヨーク131の厚さが、ヨーク内周面部分133aと凹部134との接続部およびヨーク内周面部分133bと凹部134との接続部それぞれから両凹部134の周方向中央に向って薄くなるように傾斜している。
固定子コア110は、第1のコア部材120のティース基部122の、ティース先端部123と反対側(径方向外周側)の端部を第2のコア部材130の凹部134に圧入(あるいは、焼き嵌めまたは冷し嵌め)することによって形成される。すなわち、固定子コア110は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク131と、ヨーク131から径方向に沿って径方向内周側に延在する複数のティース121を有し、ティース121は、ヨーク131から径方向に沿って径方向内周側に延在するティース基部122と、ティース基部122の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部123を有する。
なお、ティース先端部123の径方向内周側にはティース先端面124が形成されている。ティース先端面124によって、回転子(図示省略)が挿入される回転子挿入空間が形成される。
固定子100と、回転子挿入空間に回転可能に挿入される回転子とによって、本発明の電動機が構成される。
【0013】
固定子巻線150(
図24参照)は、ティース121に装着される絶縁体の回りに巻き付けられる。すなわち、固定子巻線150は、集中巻き方式でティース121に巻き付けられている。固定子巻線150をティース121に巻き付ける方法としては、ティース121に絶縁体を装着した状態で、絶縁体の回りに固定子巻線150を巻き付ける方法、あるいは、絶縁体の回りに固定子巻線150を巻き付けた状態で、絶縁体をティース121に装着する方法を用いることができる。
【0014】
ティース121に装着される絶縁体の第1の実施形態200を、
図3〜
図7を参照して説明する。
図3は、第1の実施形態の絶縁体200の斜視図である。
図4は、
図3を矢印IVの方向から見た図であり、
図5は、
図3をV−V線から見た断面図であり、
図6は、
図3を矢印VIの方向から見た図であり、
図7は、
図3を矢印VIIの方向から見た図である。
【0015】
絶縁体200は、絶縁特性を有する樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ナイロン等により形成される(「樹脂ボビン」と呼ばれる)。
絶縁体200は、第1の鍔部210、第2の鍔部220、胴部230および貫通孔270を有している。
第1の鍔部210は、軸方向(
図4において上下方向)および周方向(
図4において左右方向)に沿って延在するとともに、径方向外周側(
図5において上側)に外周面210A、径方向内周側(
図5において下側)に内周面210B、軸方向一方側(
図4において上側)に端面211、軸方向他方側(
図4において下側)に端面212、周方向一方側(
図4において右側)に側面213、周方向他方側(
図4において左側)に側面214を有している。
第2の鍔部220は、第1の鍔部210より径方向内周側に配置され、軸方向および周方向に沿って延在するとともに、径方向外周側に外周面220A、径方向内周側に内周面220B、軸方向一方側に端面221、軸方向他方側に端面222、周方向一方側に側面223、周方向他方側に側面224を有している。
胴部230は、第1の鍔部210と第2の鍔部220との間に設けられ、径方向に沿って延在している。
貫通孔270は、胴部230に形成され、径方向に沿って延在するとともに、第1の鍔部210の外周面210Aおよび第2の鍔部220の内周面220Bに開口している。
【0016】
第1の鍔部210の外周面210A、内周面210B、端面211、端面212、側面213および側面214が、それぞれ本発明の「第1の鍔部外周面」、「第1の鍔部内周面」、「第1の鍔部端面」、「第2の鍔部端面」、「第1の鍔部側面」および「第2の鍔部側面」に対応する。
また、第2の鍔部220の外周面220A、内周面220B、端面221、端面222、側面223および側面224が、それぞれ本発明の「第2の鍔部外周面」、「第2の鍔部内周面」、「第3の鍔部端面」、「第4の鍔部端面」、「第3の鍔部側面」および「第4の鍔部側面」に対応する。
なお、本明細書では、便宜的に、
図4において上側および下側を「軸方向一方側」および「軸方向他方側」として説明し、
図4において右側および左側を「周方向一方側」および「周方向他方側」として説明するが、「一方」および「他方」は逆であってもよい。
【0017】
貫通孔270は、内壁面271〜274により形成されている。本実施形態では、
図8に示されているように、ティース基部122の端部を、第2の鍔部220側から貫通孔270内に挿入する場合、ティース基部122の外壁面122a、122b、122cおよび外壁面122dが、それぞれ貫通孔270の内壁面271、272、273および274に対向するように挿入される。
なお、貫通孔270の内壁面271、272、273および274は、第2の鍔部220の内周面220B側に、傾斜面271a、272a、273aおよび274aを有する。これにより、ティース基部122(ティース121)に対する絶縁体200の軸方向および周方向のずれを防止しながら、ティース基部122(ティース121)を絶縁体200の貫通孔270内に容易に挿入することができる。
【0018】
第1の鍔部210には、外周面210Aから径方向外周側に突出する突部240、250および260が設けられている。
【0019】
突部240は、貫通孔270より端面211側(軸方向一方側)で、側面213側(周方向一方側)の領域に設けられている。
突部240は、径方向外周側に形成された外壁面241、軸方向他方側に形成された外壁面242、周方向他方側(突部250と対向する側)に形成された外壁面243を有している。なお、突部240の、軸方向一方側の外壁面は、第1の鍔部210の端面211により(端面211と面一に)形成され、周方向一方側の外壁面は、第1の鍔部210の側面213により(側面213と面一に)形成されている。
また、突部240は、側面213側で、端面212側の領域が切り欠かれた切り欠き部244を有している。切り欠き部244を形成する切り欠き面(外壁面)は、後述する凹部280の壁面282および284として用いられている。
また、突部240は、第1の鍔部210の端面211および内周面210B、突部240の外壁面241に開口している状態(すなわち、端面211側が開口しているとともに、内周面210Bおよび内周面210Bと反対側が連通している状態)で、端面211から軸方向に沿って軸方向他方側に延在する溝245を有している。溝245は、内壁面245a〜245eにより形成されている。なお、端面211に接続されている内壁面245dおよび245eは、溝245の、周方向に沿った幅が端面211側から徐々に小さくなるように傾斜する傾斜面に形成されている。溝245の深さや周方向に沿った幅は、後述する固定子巻線150の端部や固定子巻線150の端部を固定する紐160を通すことができるように設定される。
また、突部240は、端面211側で、側面213側の箇所に、外壁面241から径方向外周側に突出する係止突部246を有している。係止突部246は、軸方向他方側に係止面246aを有している。本実施形態では、係止突部246の軸方向一方側の外壁面は、第1の鍔部210の端面211により(端面211と面一に)形成され、周方向一方側の外壁面は、第1の鍔部210の側面213により(側面213と面一に)形成されている。
溝245および係止突部246を利用して、後述するように、固定子巻線150の端部が固定される。
突部240が、本発明の「第1の突部」に対応する。
【0020】
突部250は、貫通孔270より端面211側で、側面214側の領域に設けられている。
突部250は、径方向外周側に形成された外壁面251、軸方向他方側に形成された外壁面252、周方向一方側(突部240と対向する側)に形成された外壁面253を有している。なお、突部250の、軸方向一方側の外壁面は、第1の鍔部210の端面211により(端面211と面一に)形成され、周方向他方側の外壁面は、第1の鍔部210の側面214により(側面214と面一に)形成されている。
また、突部250は、側面214側で、端面212側(軸方向他方側)の領域が切り欠かれた切り欠き部254を有している。切り欠き部254を形成する切り欠き面(外壁面)は、後述する凹部290の壁面292および294として用いられている。
また、突部250は、端面211側で、側面214側の領域が切り欠かれた切り欠き部255を有している。切り欠き部255は、端面211から軸方向に沿って軸方向他方側に延在する切り欠き面255aと、側面214から周方向に沿って周方向一方側に延在する切り欠き面255bによって形成される。
切り欠き部255を利用して、後述するように、固定子巻線150の端部が固定される。
突部250が、本発明の「第2の突部」に対応する。
【0021】
突部260は、貫通孔270に対して端面212側に設けられている。
突部260は、端面212側に外壁面261を有し、貫通孔270側(軸方向一方側)に外壁面262を有している。外壁面261は、絶縁体200の貫通孔270に挿入され、貫通孔270から(第1の鍔部210の外周面210Aから)飛び出ているティース基部122の端部を、第2のコア部材130の凹部134に圧入する際に、ティース基部122の端部を凹部134内にガイドする。本実施形態では、外壁面261は、端面212側から貫通孔270側(軸方向一方側)に向かって、外周面210Aからの距離が長くなる傾斜面に形成されている。
突部260が、本発明の「ガイド用突部」に対応し、突部260の外壁面261が、本発明の「ガイド面」に対応する。
【0022】
さらに、第1の鍔部210には、外周面210Aから径方向内周側に窪んでいる凹部280および290が設けられている。
凹部280は、貫通孔270に対して側面213側(周方向一方側)に設けられ、底面281、壁面282、283および284により形成されている。
底面281は、軸方向および周方向に沿って延在している。
壁面282は、底面281の、端面211側(軸方向一方側)の端部281aに接続され、径方向(径方向外周側)および周方向に沿って延在している。
壁面283は、底面281の、端面212側(軸方向他方側)の端部281bに接続され、径方向(径方向外周側)および周方向に沿って延在している。
壁面284は、底面281の、貫通孔270側(周方向他方側)の端部281cに接続され、径方向(径方向外周側)および軸方向に延在している。
本実施形態では、凹部280の壁面282および壁面284の一部が、突部240の切り欠き部244を形成する切り欠き面(外壁面)によって形成されている。このため、凹部280を形成する壁面282および壁面284の一部は、第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に飛び出ている。
凹部290は、貫通孔270に対して側面214側(周方向他方側)に設けられ、底面291、壁面292、293および294により形成されている。
底面291は、軸方向および周方向に沿って延在している。
壁面292は、底面291の、端面211側(軸方向一方側)の端部291aに接続され、径方向(径方向外周側)および周方向に沿って延在している。
壁面293は、底面291の、端面212側(軸方向他方側)の端部291bに接続され、径方向(径方向外周側)および周方向に沿って延在している。
壁面294は、底面291の、貫通孔270側(周方向一方側)の端部291cに接続され、径方向(径方向外周側)および軸方向に沿って延在している。
本実施形態では、凹部290の壁面292および壁面294の一部が、突部250の切り欠き部254を形成する切り欠き面(外壁面)によって形成されている。このため、凹部290を形成する壁面292および壁面294の一部は、第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に飛び出ている。
【0023】
本実施形態では、底面281、壁面282〜284、底面291および壁面292〜294は、平坦面(「略平坦面」を含む)に形成されている。勿論、平坦面以外の種々の形状に形成することができる。
また、壁面282、283、292および293は、径方向および周方向に平行(「略平行」を含む)に延在し、壁面284および294は、径方向および軸方向に平行(「略平行」を含む)に延在するように形成されている。勿論、径方向、周方向、軸方向に対して傾斜する方向に延在するように形成することもできる。
また、壁面282〜284(292〜294)は、底面281(291)と直角(「略直角」を含む)な方向に延在するように形成されている。勿論、底面281(291)と直角な方向に対して傾斜する方向に延在するように形成することもできる。
凹部280が、本発明の「第1の凹部」に対応し、凹部290が、本発明の「第2の凹部」に対応する。
【0024】
次に、第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付ける動作を説明する。
先ず、第1のコア部材120のティース121(ティース基部122)に絶縁体200を装着する。本実施形態では、
図8に示されているように、ティース121のティース基部122の端部を、絶縁体200の貫通孔270に、第2の鍔部220側から挿入する。この時、貫通孔270を形成する内壁面271〜274の、径方向内周側の傾斜面271a〜274aによって、ティース基部122の端部が貫通孔270内にガイドされる。ティース基部122は、ティース基部122の端部が第1の鍔部210の外周面210Aから飛び出るように挿入される。
そして、第1のコア部材120のティース121に絶縁体200が装着された状態で、固定子巻線150を巻き付ける。本実施形態では、絶縁体200の第1の鍔部210、第2の鍔部220および胴部230によって形成される空間に固定子巻線150を巻き付ける。
なお、絶縁体200の装着および固定子巻線150の巻き付けに関しては、固定子巻線150を絶縁体200に巻き付けた状態で、第1のコア部材120のティース121に絶縁体200を装着する方法を用いることもできる。
【0025】
そして、ティース121に絶縁体200が装着されているとともに、絶縁体200に固定子巻線150が巻き付けられた状態で、第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付ける。本実施形態では、絶縁体200の貫通孔270に挿入され、第1の鍔部210の外周面210Aから飛び出ている、ティース基部122の端部を、第2のコア部材130のヨーク131に形成されている凹部134に圧入することによって、第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付けている。
本実施形態では、絶縁体200の貫通孔270に挿入されたティース基部122の端部を、軸方向に沿って移動させながら第2のコア部材130の凹部134に圧入する際、貫通孔270より端面212側(軸方向他方側)に形成されている突部260の外壁面261によって、ティース基部122の端部が凹部134内にガイドされる。これにより、第1のコア部材120あるいは絶縁体200と第2のコア部材130が強い力で接触するのを防止することができ、第1のコア部材120や第2のコア部材130が変形し、あるいは、絶縁体200にクラックが発生するのを防止することができる。
また、ティース基部122の端部を第2のコア部材130の凹部134に圧入する方法として、圧入治具を用いて、第1の鍔部210の外周面210Aから飛び出ているティース基部122の、軸方向一方側の壁面122aに、ティース基部122の端部を凹部134に挿入する方向に移動させる力を加える方法を用いることができる。
この時、圧入治具によって加えられる力によってティース基部122の端部が周方向および径方向に膨らむと、圧入作業が困難となる。このため、適切な大きさの圧入治具を用いて、ティース基部122の端部の適切な箇所に力を加える必要がある。本実施形態では、第1の鍔部210に、貫通孔270より端面211側に突部240および250が設けられているとともに、互いに対向する、突部240の外壁面243と突部250の外壁面253によって、圧入治具の移動経路が形成されている。これにより、ティース基部122の端部の変形を防止しながら、ティース基部122の端部を第2のコア部材130の凹部134に圧入することができる。
突部240の外壁面243が、本発明の「第1の突部の経路形成面」に対応し、突部250の外壁面253が、本発明の「第2の突部の経路形成面」に対応し、突部240の外壁面243と突部250の外壁面253によって、本発明の「圧入治具の移動経路」が形成される。
【0026】
次に、絶縁体200に巻き付けられた固定子巻線150とヨーク131とを絶縁する絶縁部材について説明する。絶縁部材は、絶縁体200とヨーク131との間に配置される。絶縁部材は、好適には、絶縁特性を有する樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンナフタレート樹脂により形成される絶縁フィルムにより構成される。
なお、絶縁部材は、絶縁体200に巻き付けられた固定子巻線150とヨーク131との間を絶縁することができるように配置されていればよく、絶縁部材の全部が絶縁体200とヨーク131との間に配置されていなくてもよい。すなわち、絶縁部材の少なくとも一部が、絶縁体200とヨーク131との間に配置されていればよい。
【0027】
絶縁部材の第1の実施形態10を、
図9を参照して説明する。
第1の実施形態の絶縁部材10は、縁部10a〜10dを有する四角形の絶縁フィルムを折り曲げて形成され、断面がV字状を有している。すなわち、四角形の絶縁フィルムを、縁部10aを含む縁部分11、縁部10bを含む縁部分14、縁部分11と14の間の中央部分12と13に区分し、縁部分11と中央部分12との間の折り曲げ線10A、中央部分12と13との間の折り曲げ線10B、中央部分13と縁部分14との間の折り曲げ線10Cの箇所で、縁部10a、10bの延在方向と直角な方向から見てV字状を有するように折り曲げている。
絶縁部材10は、第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付けた状態で、絶縁体200とヨーク131との間に挿入される。この時、絶縁部材10は、縁部10aおよび10bが周方向一方側および周方向他方側に配置されるように絶縁体200とヨーク131との間に挿入される。
本実施形態では、縁部10a(縁部分11)と縁部10b(縁部分14)との間の間隔が短くなるように絶縁部材10に力を加えて弾性変形させた状態で、絶縁体200の第1の鍔部210の端面212側(軸方向他方側)から、すなわち、突部240および250が設けられていない側から、絶縁体200とヨーク131との間に挿入される。本実施形態では、絶縁体200の第1の鍔部210の外周面210Aとヨーク131のヨーク内周面部分333aおよび333bとの間の隙間を介して挿入される。
そして、絶縁部材10の挿入が完了すると、絶縁部材10に加えていた力が解除される。これにより、絶縁部材10が弾性復帰し、絶縁部材10の縁部10aおよび10bが絶縁体200の第1の鍔部210に形成されている凹部280および290に配置される。
ここで、本実施形態では、凹部280の壁面282および壁面284の一部は、突部240の切り欠き面(外壁面)によって形成されているため、第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に飛び出ている。同様に、凹部290の壁面292および壁面294の一部は、突部250の切り欠き面(外壁面)によって形成されているため、第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に飛び出ている。このため、絶縁体200とヨーク131との間の隙間を介し挿入した絶縁部材10が、外周面210Aから飛び出ている、凹部280の壁面282あるいは凹部290の壁面292に当接することによって、絶縁部材10の挿入完了を容易に判別することができる。また、外周面210Aから飛び出ている、凹部280の壁面284の一部および凹部290の壁面294の一部によって、絶縁部材10の縁部10aおよび10bが貫通孔270側に移動するのを確実に防止することができる。
【0028】
絶縁部材10の縁部10aが、本発明の「周方向一方側の第1の縁部」に対応し、縁部10bが、本発明の「周方向他方側の第2の縁部」に対応し、縁部分11が、本発明の「第1の縁部を含む第1の縁部分」に対応し、中央部分12が、本発明の「第1の中央部分」に対応し、中央部分13が、本発明の「第2の中央部分」に対応し、縁部分14が、本発明の「第2の縁部を含む第2の縁部分」に対応する。
なお、縁部10bを「周方向一方側の第1の縁部」とし、縁部10aを「周方向他方側の第2の縁部」とすることもできる。
【0029】
第1の実施形態の絶縁部材10が絶縁体200とヨーク131との間に配置された状態が
図11に示されている。なお、
図11をXIII−XIII線から見た図が
図13に示されている。
絶縁部材10の縁部10a(周方向一方側の縁部)は、周方向に隣接する2つの絶縁体200(詳しくは、周方向に隣接する2つのティース121それぞれに装着された2つの絶縁体200)のうちの一方(周方向一方側)の絶縁体200の凹部290(周方向他方側の凹部)に配置される。この時、縁部10aを含む縁部分11の少なくとも一部も、凹部290に配置される。縁部10aが凹部290に配置されることにより、凹部290の壁面292および293によって、縁部10aの軸方向の移動(軸方向一方側への移動および軸方向他方側への移動)が規制され、凹部290の壁面294によって、縁部10aの貫通孔270側への移動(周方向一方側への移動)が規制される。
また、絶縁部材10の縁部10b(周方向他方側の縁部)は、他方(周方向他方側)の絶縁体200の凹部280(周方向一方側の凹部)に配置される。この時、縁部10bを含む縁部分14の少なくとも一部も、凹部280に配置される。縁部10bが凹部280に配置されることにより、凹部280の壁面282および283によって、縁部10bの軸方向の移動(軸方向一方側への移動および軸方向他方側への移動)が規制され、凹部280の壁面284によって、縁部10bの貫通孔270側への移動(周方向他方側への移動)が規制される。これにより、弾性部材10を、確実に保持することができる。
また、絶縁部材10の中央部分12および13は、一方(周方向一方側)の絶縁体200と他方(周方向他方側)の絶縁体との間に、径方向に沿って延在するように配置される。本実施形態では、絶縁部材10の中央部分12および13は、一方の絶縁体200および他方の絶縁体200それぞれに巻き付けられている異なる相の固定子巻線150の間に配置されている。これにより、絶縁部材10は、絶縁体200に巻き付けられた固定子巻線150とヨーク131とを絶縁する機能と、異なる相の固定子巻線間を絶縁する相間絶縁部材としての機能を持たせることができ、相間絶縁部材を別途設ける必要がない。
【0030】
絶縁部材の第2の実施形態20を、
図10を参照して説明する。
第2の実施形態の絶縁部材20は、縁部20a〜20dを有する四角形の絶縁フィルムにより形成されている。なお、絶縁部材20は、縁部20aおよび20bが周方向一方側および周方向他方側に配置されるように、絶縁体200とヨーク131との間に挿入される。
絶縁部材20は、第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付けた状態で、絶縁体200とヨーク131との間に挿入される。
絶縁部材20の縁部20aが、本発明の「周方向一方側の第1の縁部」に対応し、縁部20bが、本発明の「周方向他方側の第2の縁部」に対応する。
なお、縁部20bを「周方向一方側の第1の縁部」とし、縁部20aを「周方向他方側の第2の縁部」とすることもできる。
【0031】
第2の実施形態の絶縁部材20を絶縁体200とヨーク131との間に配置した状態が
図12に示されている。
絶縁部材20の縁部20a(周方向一方側の縁部)は、周方向に隣接する2つの絶縁体200のうちの一方(周方向一方側)の絶縁体200の凹部290(周方向他方側の凹部)に配置される。この時、縁部20aを含む縁部分も、凹部290に配置される。これにより、凹部290の壁面292および293によって、縁部20aの軸方向の移動が規制され、凹部290の壁面294によって、縁部20aの貫通孔270側への移動が規制される。
また、絶縁部材20の縁部20b(周方向他方側の縁部)は、他方(周方向他方側)の絶縁体200の凹部280(周方向一方側の凹部)に配置される。この時、縁部20bを含む縁部分も、凹部280に配置される。これにより、凹部280の壁面282および283によって、縁部20bの軸方向の移動が規制され、凹部280の壁面284によって、縁部20bの貫通孔270側への移動が規制される。
絶縁部材20を絶縁体200とヨーク131との間に挿入する動作は、前述した、絶縁部材10の挿入動作と同様である。なお、本実施形態の絶縁部材20は、第1の実施形態の絶縁部材10のように折り曲げていないため、相間絶縁部材の機能を有していない。
【0032】
第1の実施形態の絶縁体200では、絶縁部材10、20の周方向両側の縁部10a、20aおよび10b、20bが、絶縁体200の第1の鍔部210に形成されている凹部290および280に配置される。これにより、絶縁部材10、20の周方向両側の縁部10a、20aおよび10b、20bの軸方向の移動および周方向に沿った貫通孔270側への移動を、凹部280および290の壁面によって規制することができる。
したがって、絶縁部材10、20を確実に保持することができる。
また、絶縁体の構成を変更するだけでよいため、絶縁部材の移動を規制することができる絶縁体、固定子および電動機を容易に構成することができる。
【0033】
第1の実施形態の絶縁体200は、前述した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に突出する突部240および250を設け、凹部280の壁面282および壁面284の一部を突部240の外壁面により形成するとともに、凹部290の壁面292および壁面294の一部を突部250の外壁面により形成することで、凹部280の壁面282および壁面284の一部および凹部290の壁面292および壁面294の一部が、第1の鍔部210の外周面210Aから径方向外周側に飛び出すように構成したが、突部240および250の一方あるいは両方を省略することもできる。この場合、凹部280の壁面282〜284は、底面281の端部と外周面210Aとの間に形成され、凹部290の壁面292〜294は、底面291と外周面210Aとの間に形成される。
凹部280の底面281、壁面282〜284および凹部290の底面291、壁面292〜294は、好適には、平坦面(「略平坦面」を含む)に形成されるが、平坦面に限定されない。また、凹部280の壁面282〜234(凹部290の壁面292〜294)は、好適には、底面281(底面291)と直角(「略直角」を含む)な方向に延在するように形成されるが、底面281(底面291)と直角な方向に対して傾斜する方向に延在するように形成してもよい。
突部260は省略することもできる。
貫通孔270の内壁面271〜274の形状は、適宜変更可能である。
絶縁部材としては、種々の形状の絶縁部材を用いることができる。
【0034】
次に、本発明の電動機を構成する固定子の第2の実施形態300を、
図14を参照して説明する。なお、
図14は、第2の実施形態の固定子300の斜視図である。第1の実施形態の固定子100では、絶縁体200に、絶縁部材の周方向および軸方向に沿った移動を規制する凹部280および290を設けたが、第2の実施形態の固定子300では、固定子コアのヨークに、絶縁部材が軸方向に沿って移動可能な溝を設け、絶縁体に、絶縁部材の軸方向に沿った移動を規制する突部を設けている。
本実施形態の固定子300は、第1の実施形態の固定子100と同様に、固定子コア310、絶縁体400、固定子巻線(図示省略)により構成されている。
【0035】
固定子コア310は、軸方向両側にコア端面310Aおよび310Bを有している。また、固定子コア310は、分割構造の固定子コアとして構成されている。本実施形態では、固定子コア310は、
図15に示されているように、ティース321を有する第1のコア部材320と、ヨーク331を有する第2のコア部材330により構成されている。
第1のコア部材320は、第1の実施形態の第1のコア部材120と同様に、ティース基部322、ティース先端部323及びティース先端面324を有する複数のティース321が、連結部325によって連結された状態で周方向に沿って複数設けられている。
第2のコア部材330は、第1の実施形態の第2のコア部材130と同様に、ヨーク外周面332とヨーク内周面333を有するヨーク331が周方向に沿って延在している。また、第1のコア部材320のティース基部322の先端部が圧入される凹部334を形成する凹部形成面334aを有している。また、ヨーク内周面333は、周方向に隣接する2つの凹部334(凹部形成面334a)の間に形成されているヨーク内周面部分333aと333bを有している。ヨーク内周面部分333aおよび333bは、第1の実施形態のヨーク内周面部分133aおよび133bと同様に傾斜している。
本実施形態では、ヨーク331には、ヨーク内周面333から径方向外周側に窪んでいる溝形成面が形成されている。溝形成面は、ヨーク内周面部分333aおよび333bそれぞれから径方向外周側に窪んでいる溝形成面部分335aおよび335bを有している。溝形成面(溝形成面部分335a、335b)により、ヨーク内周面333から径方向外周側に窪んでいるとともに、コア端面310Aおよび310Bに開口している溝335が形成される。溝335(溝形成面)は、周方向に隣接する2つの凹部334の間(周方向に隣接する2つのティース321の間)に形成されている。
なお、溝335は、溝形成面部分335aによって形成される領域(周方向他方側の領域)と溝形成面部分335bによって形成される領域(周方向一方側の領域)を有している。絶縁部材の周方向一方側の縁部および周方向他方側の縁部は、同じ溝335に配置される。例えば、周方向一方側の縁部は、溝335内の、溝形成面部分335bにより形成される領域に配置され、周方向他方側の縁部は、溝形成面部分335aにより形成される領域に配置される。
【0036】
ティース321に装着される絶縁体の第2の実施形態400を、
図16〜
図20を参照して説明する。
図16は、第2の実施形態の絶縁体400の斜視図である。
図17は、
図16を矢印XVIIの方向から見た図であり、
図18は、
図16をXVIII−XVIII線から見た断面図であり、
図19は、
図16を矢印XIXの方向から見た図であり、
図20は、
図16を矢印XXの方向から見た図である。
絶縁体400は、第1の実施形態の絶縁体200と同様に、第1の鍔部410、第2の鍔部420、胴部430および貫通孔470を有している。
本実施形態の絶縁体400では、第1の実施形態の絶縁体200の凹部280および290が省略され、代わりに突部480および490が設けられている。すなわち、突部440、450、480および490以外は、第1の実施形態の絶縁体200と同様の構成である。したがって、以下では、突部440、450、480および490についてのみ説明する。
本実施形態では、第1の鍔部410の外周面410A、内周面410B、端面411、端面412、側面413および側面414が、それぞれ本発明の「第1の鍔部外周面」、「第1の鍔部内周面」、「第1の鍔部端面」、「第2の鍔部端面」、「第1の鍔部側面」および「第2の鍔部側面」に対応する。
また、第2の鍔部420の外周面420A、内周面420B、端面421、端面422、側面423および側面424が、それぞれ本発明の「第2の鍔部外周面」、「第2の鍔部内周面」、「第3の鍔部端面」、「第4の鍔部端面」、「第3の鍔部側面」および「第4の鍔部側面」に対応する。
【0037】
第1の鍔部410には、外周面410Aから径方向外周側に突出する突部440、450、460、480および490が設けられている。
突部440は、貫通孔470より端面411側で、側面413側の領域に設けられている。突部440は、径方向外周側に形成された外壁面441、軸方向他方側に形成された外壁面442、周方向他方側(突部450と対向する側)に形成された外壁面443を有している。なお、突部440の、軸方向一方側の外壁面は、第1の鍔部410の端面411により形成され、周方向一方側の外壁面は、第1の鍔部410の側面413により形成されている。
突部440は、第1の実施形態の突部240と同様に、切り欠き部444、溝445、係止突部446を有している。溝445および係止突部446は、第1の実施形態の溝245および係止突部246と同様の構成であるため、説明を省略する。
切り欠き部444は、外壁面442から軸方向に沿って延在する切り欠き面444aと、側面413から周方向に沿って延在する切り欠き面444bにより形成される。本実施形態では、切り欠き面444aおよび444bは、絶縁部材の移動を規制するために設けられている。詳細は、後述する。
【0038】
突部450は、貫通孔470より端面411側で、側面414側の領域に設けられている。突部450は、径方向外周側に形成された外壁面451、軸方向他方側に形成された外壁面452、周方向一方側(突部440と対向する側)に形成された外壁面453を有している。なお、突部450の、軸方向一方側の外壁面は、第1の鍔部410の端面411により形成され、周方向他方側の外壁面は、第1の鍔部410の側面414により形成されている。
突部450は、第1の実施形態の突部250と同様に、切り欠き部454、切り欠き部455を有している。切り欠き部455は、第1の実施形態の切り欠き部255と同様の構成であるため、説明を省略する。
切り欠き部454は、外壁面452から軸方向に沿って延在する切り欠き面454aと、側面414から周方向に沿って延在する切り欠き面454bにより形成される。本実施形態では、切り欠き面454aおよび454bは、絶縁部材の移動を規制するために設けられている。詳細は、後述する。
【0039】
突部480は、貫通孔470に対して端面412側で、側面413側の箇所に設けられている。また、突部480は、軸方向に沿って突部440(詳しくは、突部440の切り欠き面444b)と対向する箇所に、周方向に沿って延在するように設けられている。突部480は、突部440(切り欠き面444b)と対向する側に、径方向外周側および周方向に沿って延在する外壁面480aを有している。突部440の切り欠き面444bと突部480の外壁面480aとによって、突部440(切り欠き面444b)と突部480(外壁面480a)との間に配置される、絶縁部材の縁部が軸方向に沿って移動するのが規制される。なお、突部440の切り欠き面444aによって、絶縁部材の縁部が貫通孔470側(周方向他方側)に移動するのが規制される。
突部490は、貫通孔470に対して端面412側で、側面414側の箇所に設けられている。また、突部490は、軸方向に沿って突部450(詳しくは、突部450の切り欠き面454b)と対向する箇所に、周方向に沿って延在するように設けられている。突部490は、突部450(切り欠き面454b)と対向する側に、径方向外周側および周方向に沿って延在する外壁面490aを有している。突部450の切り欠き面454bと突部490の外壁面490aとによって、突部450(切り欠き面454b)と突部490(外壁面490a)との間に配置される、絶縁部材の縁部が軸方向に沿って移動するのが規制される。なお、突部450の切り欠き面454aによって、絶縁部材の縁部が貫通孔470側(周方向一方側)に移動するのが規制される。
好適には、突部440の切り欠き面444bおよび突部450の切り欠き面454bの、第1の鍔部410の外周面410Aからの高さは、突部480の外壁面480aおよび突部490の外壁面490aの、外周面410Aからの高さより大きく設定される。
【0040】
本実施形態では、突部440が、本発明の「第1の突部」に対応し、突部440の切り欠き面444bが、本発明の「第1の突部の規制面」に対応し、突部450が、本発明の「第2の突部」に対応し、突部450の切り欠き面454bが、本発明の「第2の突部の規制面」に対応する。また、突部480が、本発明の「第3の突部」に対応し、突部480の外壁面480aが、本発明の「第3の突部の規制面」に対応し、突部490が、本発明の「第4の突部」に対応し、突部490の外壁面490aが、本発明の「第4の突部の規制面」に対応する。
【0041】
第1のコア部材320と第2のコア部材330を組み付ける動作は、第1の実施形態の固定子100における第1のコア部材120と第2のコア部材130を組み付ける動作と同様である。すなわち、第1のコア部材320のティース基部322の端部を絶縁体400の貫通孔470に挿入し、絶縁体400の第1の鍔部410の外周面410Aから飛び出ているティース基部322の端部を、第2のコア部材330のヨーク331に形成されている凹部334に圧入する。
この時、第1のコア部材320のティース321に装着された絶縁体400の突部440の切り欠き面444bと突部480の外壁面480aが、絶縁体400とヨーク331との間に挿入される絶縁部材の周方向一方側の縁部が配置される領域、例えば、溝335の、溝形成面部分335bにより形成される領域に対向する位置に配置され、突部450の切り欠き面454bと突部490の外壁面490aが、絶縁部材の周方向他方側の縁部が配置される領域、例えば、溝335の、溝形成面部分335aにより形成される領域に対応する位置に配置されるように構成されている。すなわち、軸方向両側のコア端面に開口している溝335に配置された絶縁部材の、周方向一方側の縁部および周方向他方側の縁部の軸方向の移動を規制可能に構成される。
【0042】
第1の実施形態の絶縁部材10を絶縁体400とヨーク331との間に配置した状態が
図21に示されている。なお、
図21をXXIII−XXIII線から見た図が
図23に示されている。
絶縁部材10の縁部10a(周方向一方側の縁部)および縁部10b(周方向他方側の縁部)は、固定子コア300のヨーク331に形成されている同じ溝335の周方向一方側の領域(溝形成面部分335bにより形成される領域)および周方向他方側の領域(溝形成面部分335aにより形成される領域)に配置される。溝335は、軸方向両側のコア端面310Aおよび310Bに開口しているため、絶縁部材10の縁部10aおよび10bは軸方向に沿って移動可能である。
この時、溝335に対して周方向一方側のティース321に装着されている絶縁体400の突部450の切り欠き面454bと突部490の外壁面490aは、溝335に挿入されている絶縁部材10の周方向一方側の縁部10aに対応する位置、すなわち、溝形成面部分335bにより形成される領域に対応する位置に配置される。これにより、絶縁体400の突部450の切り欠き面454bと突部490の外壁面490aによって、絶縁部材10の周方向一方側の縁部10aの軸方向の移動が記載される。なお、絶縁体400の突部450の切り欠き面454aによって、絶縁部材10の周方向一方側の縁部10aが貫通孔470側に移動するのが規制される。
また、溝335に対して周方向他方側のティース321に装着されている絶縁体400の突部440の切り欠き面444bと突部480の外壁面480aは、溝335に挿入されている絶縁部材10の周方向他方側の縁部10bに対応する位置、すなわち、溝形成面部分335aにより形成される領域に対応する位置に配置される。これにより、絶縁体400の突部440の切り欠き面444bと突部480の外壁面480aによって、絶縁部材10の周方向他方側の縁部10bの軸方向の移動が記載される。なお、絶縁体400の突部440の切り欠き面444aによって、絶縁部材10の周方向他方側の縁部10bが貫通孔470側に移動するのが規制される。
絶縁部材10の中央部分12と13は、溝335に対して周方向両側のティース321に装着されている絶縁体400の間に、径方向に沿って延在するように配置され、異なる相の固定子巻線150を絶縁する。
【0043】
第2の実施形態の絶縁部材20を絶縁体400とヨーク331との間に配置した状態が
図22に示されている。
第2の実施形態の絶縁部材20を絶縁体400とヨーク331との間に配置する動作は、第1の実施形態の絶縁部材10の中央部分12と13を配置する動作を除いて、第1の実施形態の絶縁部材10を絶縁体400とヨーク331との間に配置する動作と同様であるため、説明は省略する。
【0044】
第2の実施形態の絶縁体400では、固定子コアのヨークに軸方向に連通するように形成した溝に絶縁部材を挿入し、ティースに装着される絶縁体に設けた突部あるいは規制面によって絶縁部材の軸方向に沿った移動を規制している。
これにより、絶縁部材を溝に挿入する作業が容易となり、また、簡単な構成で絶縁部材の移動を規制することができる。
【0045】
第2の実施形態の絶縁体400は、前述した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
突部440の切り欠き面444b、突部450の切り欠き面454b、突部480の規制面480a、突部490の規制面490aを絶縁部材10、20の縁部10a、20a、10b、20bの移動を規制する規制部材として用いたが、規制部材はこれに限定されない。例えば、突部を規制部材として用いることもできる。
切り欠き部455、溝445、係止突部446、突部460は、省略することもできる。
貫通孔470の内壁面471〜474の形状は、適宜変更可能である。
絶縁部材としては、種々の形状の絶縁部材を用いることができる。
溝335の形状は、適宜変更可能である。
【0046】
次に、固定子巻線の端部を固定する方法を、
図24を参照して説明する。
図24には、第1の実施形態の絶縁体200が示されている。第2の実施形態の絶縁体400においても、同様の方法で固定子巻線の端部を固定することができる。
絶縁体200が周方向に隣接して配置されている状態では、一方(周方向他方側)の絶縁体200の突部240と他方(周方向一方側)の絶縁体200の突部250が互いに対向する位置に配置される。
ここで、突部240は、端面211、外周面210Aおよび内周面210Bに開口しているとともに、端面211から軸方向に沿って延在する溝245と、外壁面242から径方向外周側に突出する係止突部246を有している。
また、突部250は、端面211側で、側面214側が切り欠かれた切り欠き部255を有している。すなわち、一方の絶縁体200と他方の絶縁体200との間に、一方の絶縁体200の側面213と他方の絶縁体200の突部250の切り欠き部255とにより空間が形成される。
このため、
図24に示されているように、絶縁体200に巻き付けられた固定子巻線150の端部を、突部240の溝245を通して巻き付ける作業や、固定子巻線150の端部を紐で縛って固定する作業を容易に行うことができる。
また、固定子巻線150の端部や紐160を、突部240の外壁面241から径方向外周側に突出している係止突部246の、軸方向他方側の係止面246aに係止させることにより、固定子巻線150の端部をより確実に固定することができる。なお、161は、紐160の結び目である。
【0047】
以上のように、本実施形態の絶縁体200は、端面211側(軸方向一方側)で、側面213側(周方向一方側)に突部240を有しているとともに、突部240に、端面211側(軸方向一方側)が開口している溝245および径方向外周側に突出している係止突部246を設けている。また、端面211側(軸方向一方側)で、側面214側(周方向他方側)に突部250を有しているとともに、突部250に、端面211側(軸方向一方側)および側面214側(周方向他方側)が切り欠かれている切り欠き部255を設けている。
これにより、絶縁体200に巻き付けられた固定子巻線150の端部を容易に固定することができる。
なお、側面213側(周方向一方側)に突部240を設け、側面214側(周方向他方側)に突部250を設けたが、側面214側(周方向他方側)に突部240を設け、側面213側(周方向一方側)突部250を設けることもできる。
また、外周面210Aから径方向外周側に突出する突部240と250を設け、突部240に溝245と係止突部246を設けるとともに、突部250に切り欠き部255を設けたが、突部240および250を省略することもできる。この場合、第1の鍔部210に溝245、係止突部246および切り欠き部255を設ける。
また、係止突部246を省略することもできる。
また、固定子巻線150の端部を縛る紐状部材は、紐に限定されない。
【0048】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
各実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
本発明の電動機は、空調機駆動用電動機、車両駆動用電動機、車載機器駆動用電動機等の種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。