特許第6687239号(P6687239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687239
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/70 20160101AFI20200413BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20200413BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H02J50/70
   H02J50/12
   H05K9/00 V
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-95678(P2016-95678)
(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公開番号】特開2017-204938(P2017-204938A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】512135274
【氏名又は名称】株式会社リューテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】川辺 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】粟井 郁雄
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132134(JP,A)
【文献】 特開2011−045189(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/006712(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/185490(WO,A1)
【文献】 特開2016−010168(JP,A)
【文献】 特開2000−077889(JP,A)
【文献】 特開平5−037178(JP,A)
【文献】 特開平5−243785(JP,A)
【文献】 特表2003−521814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを有する少なくとも1個の送電側共振器と、
該少なくとも1個の送電側共振器の励振を制御する送信側制御器と、
水が蓄えられており、前記少なくとも1個の送電側共振器の前記コイルの周りに配置されて前記コイルからの非放射電磁界の電界をシールドするシールド材と、
を備えてなることを特徴とするワイヤレス電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤレス電力供給装置において、
前記水は、水道水であることを特徴とするワイヤレス電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電側装置に無線で電力供給を行い得るワイヤレス電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界は、放射電磁界(電磁波)と非放射電磁界(エバネッセント場)に分類できる。非放射電磁界を用いて送電側装置から受電側装置に無線で電力を供給するワイヤレス電力供給システムには、結合共振器型、電磁誘導型、容量結合型などがある。この中で、結合共振器型のワイヤレス電力供給システムでは、送電側装置の送電側共振器と受電側装置の受電側共振器を非放射電磁界を介して共振させることにより電力を伝送することで、簡便な構成で伝送効率の高い電力供給を可能としている。
【0003】
特許文献1〜3は、本願発明者が発明者の一人であり、それらには結合共振器型のワイヤレス電力供給システムに関する技術が記載されている。特許文献1には、送電側装置において2個の送電側共振器が互いに対向し一方にだけ交流電流が供給されており、受電側装置の受電側共振器はそれらの間に配置されるものが開示されている。互いに対向する2個の送電側共振器を用いることで、伝送効率を更に高めて受電側装置に電力供給を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2には、送電側装置からの非放射電磁界を屈折させて受電側装置に向けて誘導する誘電体又は磁性体の誘導器を備えるワイヤレス電力供給システムが開示されている。誘導器を用いることで、伝送効率を更に高めて受電側装置に電力供給を行うことができる。
【0005】
また、特許文献3には、結合共振器型のワイヤレス電力供給システムを応用したものである遊泳体観賞装置が開示されている。この遊泳体観賞装置では、水槽に取り付けられた送電側装置から水槽内の受電側装置である遊泳体に非放射電磁界を用いて無線で電力を伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−039665号公報
【特許文献2】特開2014−195364号公報
【特許文献3】特開2014−223262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非放射電磁界は、人体への長期的な影響は未解明ではあるが、人体への影響の面からは小さくするのが望ましい。そのための対策として、送電側装置の周りの適宜箇所に非放射電磁界をシールドするシールド材を配置して、その外側の非放射電磁界が小さくなるようにすることが考えられる。そのシールド材としては、典型的には金属製の板が考えられるが、金属製の板は、その内側を隠してしまうことになり、また、接地しなければならない。
【0008】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤレス電力供給システムに用いられるワイヤレス電力供給装置(送電側装置)であって、内側を隠すことなく、接地しなくてもよいシールド材を備えるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のワイヤレス電力供給装置は、コイルを有する少なくとも1個の送電側共振器と、該少なくとも1個の送電側共振器の励振を制御する送信側制御器と、水が蓄えられており、前記少なくとも1個の送電側共振器の前記コイルの周りに配置されて前記コイルからの非放射電磁界の電界をシールドするシールド材と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のワイヤレス電力供給装置は、請求項1に記載のワイヤレス電力供給装置において、前記水は、水道水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワイヤレス電力供給装置によれば、それに用いられるシールド材がその内側を隠すことなく、接地しなくてもよいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るワイヤレス電力供給装置の構成を示す側面視断面図である。
図2】同上のワイヤレス電力供給装置の送電側共振器を示す平面図であって、(a)はコイルが円形状、(b)はコイルが矩形状である。
図3】同上のワイヤレス電力供給装置が適用される遊泳体観賞装置を示す側面視断面図であって、(a)は送電側共振器が1個のもの、(b)は送電側共振器が2個のものである。
図4】第1のシミュレーションの構成を示す図であって、(a)は側面視断面図、(b)は平面図である。
図5】第1のシミュレーションにおける反射係数(S11)を示す特性図である。
図6】第1のシミュレーションにおいてシールド材の厚さを変えたときの電界エネルギー量の変化を示す特性図である。
図7】第1のシミュレーションにおいて水槽とシールド材の間の距離を変えたときの電界エネルギー量の変化を示す特性図である。
図8】第1のシミュレーションにおいてシールド材の水の導電率を変えたときの電界エネルギー量の変化を示す特性図である。
図9】第2のシミュレーションの構成を示す側面視図であって、(a)はシールド材を水槽の短辺の側面側に配置したもの、(b)はシールド材を水槽の上面側に配置したものである。
図10】第2のシミュレーションにおける反射係数(S11)を示す特性図である。
図11】第2のシミュレーションにおいてシールド材を水槽の短辺の側面側に配置したときの電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
図12】第2のシミュレーションにおいてシールド材を水槽の上面側に配置したときの電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
図13】第2のシミュレーションにおいて水槽の近傍にシールド材を配置しない場合の電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
図14】実験においてシールド材を水槽の短辺の側面側に配置したときのシールド材より外側の電界強度を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
図15】実験においてシールド材を水槽の上面側に配置したときのシールド材より外側の電界強度を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
図16】実験においてシールド材を水槽の上面側に配置したときのシールド材より外側の磁界強度を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るワイヤレス電力供給装置1は、図1に示すように、送電側共振器2と送信側制御器3とシールド材4とを備えている。
【0014】
送電側共振器2は、図2(a)、(b)に示すように、コイル21を有している。コイル21は、絶縁膜で被覆した電気導線が平面的にスパイラル状に巻かれたスパイラルコイルとすることができる。コイル21は、図2(a)に示すような円形状、図2(b)に示すような矩形状、又はその他の多角形状(例えば、六角形状)に巻かれたもの或いは更に複雑な形状に巻かれたものにすることができる。また、コイル21には、両端(内端及び外端)の間にコンデンサ22を接続して共振周波数を調整することができる。また、コイル21は、絶縁膜で被覆した電気導線がソレノイド状に巻かれたソレノイドコイルとすることも可能である。
【0015】
送信側制御器3は、送電側共振器2の励振を制御するものである。送信側制御器3は、詳細には、高周波電源3aと結合ループ3bを有する(図1参照)。高周波電源3aは、インピーダンスの変換を行う結合ループ3bを介して送電側共振器2を励振する。つまり、高周波電源3aはその出力信号を結合ループ3bに出力し、結合ループ3bは送電側共振器2のコイル21に電磁誘導結合している。結合ループ3bは、それを変形したり、他の公知のインピーダンス変換手段で置き換えたりすることも可能である。
【0016】
このようなワイヤレス電力供給装置1では、送信側制御器3によって励振されたコイル21 は、周囲の領域に非放射電磁界を発生させる。
【0017】
シールド材4は、水41が蓄えられている。より詳細には、シールド材4は、透明樹脂製(例えば、アクリル樹脂製)のケース42に水41を封入するようにすればよい。また、シールド材4は、送電側共振器2のコイル21の周りの一部に配置されている。図1ではコイル21の右側にシールド材4を配置したものを示しているが、どのような場所にどのような形状のものを配置しても構わない。
【0018】
シールド材4は、後述するシミュレーション及び実験で示すように、コイル21からの非放射電磁界の電界をシールドすることができる。シールド材4は、非放射電磁界の磁界にはほぼ影響を及ぼさない。シールド材4は、非放射電磁界の磁界にはほぼ影響を及ぼさないが、電界をシールドすることができるので、シールド材4の外側(コイル21と反対側)のトータルの非放射電磁界の量を低下させることができる。また、シールド材4は、透明のケースを用いると、水も透明であるから、内側(コイル21側)が隠れることがないので、シールド材4の外側から内側を視認することができる。また、シールド材4は、接地しなくてもよいので、接地不十分のためにアンテナとなって電磁波を放射する心配もなく、また、接地を考慮することなく色々な場所に自由に配置することができる。
【0019】
以上説明した構成のワイヤレス電力供給装置1は、様々なワイヤレス電力供給システムに適用可能である。例えば、図3(a)に示すように、遊泳体観賞装置5に用いることができる。遊泳体観賞装置5では、ワイヤレス電力供給装置1の送電側共振器2は水槽6の底部に設けられている。水槽6内には水とともに、受電側共振器71を備える遊泳体(受電側装置)7が投入されることになる。遊泳体7には、ワイヤレス電力供給装置1から非放射電磁界を用いて無線で電力が供給される。シールド材4は、水槽6の側面などに配置される。
【0020】
遊泳体観賞装置5では、水槽6内を観賞する人と水槽6の間にシールド材4を配置すれば、観賞を阻害することなく、人体に当たる非放射電磁界の量を低下させることができる。シールド材4は、自由な形状で自由に配置することができる。
【0021】
また、遊泳体観賞装置5では、ワイヤレス電力供給装置1に、図3(b)に示すように、水槽6の蓋の中に、送電側共振器2と同様な構造の送電側共振器2’が設けられるようにすることができる。送電側共振器2’は、コイル21’を有し、また、その両端(内端及び外端)の間にコンデンサ22’を接続して共振周波数を調整することができる。
【0022】
水槽6の蓋の中の送電側共振器2’は、そこに到達して来た送電側共振器2からの非放射電磁界に結合して励振され、非放射電磁界を下方向に発生させる。それにより、遊泳体7の受電側共振器71は送電側共振器2からの非放射電磁界に加え送電側共振器2’からの非放射電磁界によっても電力が供給されるようになる。なお、送電側共振器2’はそれのみで動作し、そのための結合ループや高周波電源などは設けられない。
【0023】
次に、ワイヤレス電力供給装置1について行ったシミュレーションと実験について述べる。シミュレーションソフトは、ANSYS社のHFSSを使用した。シミュレーションは、第1のシミュレーションと第2のシミュレーションに分かれる。実験は、第2のシミュレーションに対応する。これらのシミュレーション及び実験では、ワイヤレス電力供給装置1の送電側共振器2が水槽6の底部に、送電側共振器2’が水槽6の蓋に、それぞれ設けられるようにした。水槽6内には、水が投入されているようにした。
【0024】
第1のシミュレーションを先ず説明する。第1のシミュレーションでは、水槽6は、直径15cm、高さ10cmの円柱状とした。シールド材4(水41)は、高さ10cmの円筒状として、図4(a)、(b)に示すように、水槽6の側面を取り囲んで配置した。なお、シールド材4のケース42の厚さは、0とした。図4(a)、(b)において、シールド材4の外側の符号Sで示す円筒状の空間(灰色の部分)は、厚さ5cm、高さ10cmであり、電界エネルギー又は磁界エネルギーを積分して後述する電界エネルギー量又は磁界エネルギー量を導出する範囲である。
【0025】
送電側共振器2のコイル21は、直径1mmの電気導線を円形状に巻き、巻き数15で直径15cmの大きさとした。コイル21には、4.7nFのコンデンサ22を接続し、共振周波数が700kHz近傍になるようにした。送電側共振器2’も、送電側共振器2と同じ構成にして、同じ値のコイル21’とコンデンサ22’を用いた。
【0026】
図5の曲線aは、第1のシミュレーションにおいて、送電側共振器2を送信側制御器3によって励振したときの反射係数(S11)を示すものである。曲線aは、700kHz近傍に2個の谷が有り、よって、2個の共振周波数が有ることが分かる。曲線aにおける左側の共振周波数の共振モードが、コイル21とコイル21’から発生する電界が互いに逆相である奇モードであり、右側の共振周波数の共振モードが、コイル21とコイル21’から発生する電界が互いに同相である偶モードである。第1のシミュレーションで用いた共振モードは、奇モードである。
【0027】
図6の曲線bは、シールド材4の厚さTを変えたときのシールド材4の周囲の電界エネルギー量の変化を示すものである。図6(及び後述する図7及び図8)における縦軸は、磁界エネルギー量で正規化した電界エネルギー量である。水槽6とシールド材4の間の距離Dは、5mmとした。シールド材4の水41の導電率は、0.02S/mとした。曲線bでは、シールド材4の厚さTが厚い程、電界をシールドする効果は大きくなって、シールド材4の外側の電界エネルギー量は小さくなる。なお、シールド材4の厚さTが0の電界エネルギー量は、シールド材4がない場合の電界エネルギー量である。
【0028】
図7の曲線cは、水槽6とシールド材4の間の距離Dを変えたときのシールド材4の周囲の電界エネルギー量の変化を示すものである。シールド材4の厚さTは、5mmとした。シールド材4の水41の導電率は、0.02S/mとした。曲線cでは、距離Dが5mmでは距離が0の場合よりも電界エネルギー量は増えているが、距離Dが5mmを超えると段々と電界エネルギー量は減って行っている。距離Dが15mm〜20mm以上ならば、電界エネルギー量は非常に小さくなっている。
【0029】
図8の曲線dは、シールド材4の水41の導電率を変えたときのシールド材4の周囲の電界エネルギー量の変化を示すものである。シールド材4の厚さTは、5mmとし、水槽6とシールド材4の間の距離Dは、20mmとした。曲線dより、導電率によっては、電界エネルギー量はほとんど変わらないことが分かる。
【0030】
水道水は、日本の全国27都道府県において測定した結果、導電率の最大値は0.06S/mであり、導電率0.02S/mのものが最も入手し易い平均的な値である。従って、シールド材4の水41には、通常、水道水を用いればよいことが分かる。
【0031】
次に、第2のシミュレーションを説明する。第2のシミュレーションでは、水槽6は、長辺22cm、短辺14cm、高さ16cmの直方体状とした。第2のシミュレーションでは、シールド材4を水槽6の短辺の側面側に配置(図9(a)参照)又は水槽6の上面側に配置(図9(b)参照)して、シールド材4を配置しないものと電界分布を比較した。水槽6からシールド材4までの距離は、1.8cmとした。シールド材4は、板状のものであり、全体の厚さは20mm、ケース42の厚さは5mmとした。水41の導電率は、0.02S/mとした。シールド材4は、シールド材4を水槽6の短辺の側面側に配置する場合は、長辺24.1cm、短辺19cmのものを用い、シールド材4を水槽6の上面側に配置する場合は、長辺35cm、短辺19cmのものを用いた。
【0032】
送電側共振器2のコイル21は、直径1mmの電気導線を矩形状に水槽6の底面の周辺部に巻き、巻き数9とした。コイル21には、238pF又は23nFのコンデンサ22を接続し、共振周波数が3MHz近傍又は300kHz近傍になるようにした。送電側共振器2’も、送電側共振器2と同じ構成にして、同じ値のコイル21’とコンデンサ22’を用いた。第2のシミュレーションで用いた共振モードは、第1のシミュレーションと同様に、奇モードである。
【0033】
図10の曲線e、fは、第2のシミュレーションにおいて、送電側共振器2を送信側制御器3によって励振したときの反射係数(S11)を示すものである。曲線eは、第2のシミュレーションでコンデンサ22(及び22’)が238pFのもの、曲線fは、第2のシミュレーションでコンデンサ22(及び22’)が23nFのものである。なお、曲線g、hについては後述する。
【0034】
図11は、第2のシミュレーションにおいてシールド材4を水槽6の短辺の側面側に配置したときの電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。図12は、第2のシミュレーションにおいてシールド材4を水槽6の上面側に配置したときの電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。図13は、第2のシミュレーションにおいて水槽6の近傍にシールド材4を配置しない場合の電界分布を示す図であって、(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。これらの図において、最も白色の領域の電界強度は、10000V/m以上で最も黒色の領域の電界強度は、1V/m以下であり、最も白色から最も黒色まで明度を対数的に10段階に分けている。
【0035】
図11(a)及び図12(a)の電界分布を図13(a)の電界分布と比較し、図11(b)及び図12(b)の電界分布を図13(b)の電界分布と比較すると、共振周波数が3MHz近傍であっても300kHz近傍であっても、シールド材4により電界に対して大きなシールド効果が得られることが分かる。なお、水槽6とシールド材4の隙間の電界強度が強くなっている傾向が見られることから、シールド材4は電界を大きく減衰させるとともに、その前に界面において電界を反射させてもいると考えられる。
【0036】
次に、実験を説明する。実験では、第2のシミュレーションと同じ形状及び大きさの水槽6、送電側共振器2、送電側共振器2’、シールド材4とした。実験では、シールド材4を水槽6の短辺の側面側に配置(図9(a)参照)又は水槽6の上面側に配置(図9(b)参照)して、シールド材4より外側の電界強度を測定した。また、シールド材4を水槽6の上面側に配置(図9(b)参照)して磁界強度を測定した。実験での電界強度及び磁界強度の測定には、Narda S.T.S.社製 EHP−200を使用した。また、水槽6からシールド材4までの距離は、1.8cmとした。従って、シールド材4の厚さは2cmであるから、電界強度及び磁界強度の測定は水槽6から3.8cmの地点から始まることになる。
【0037】
上述した図10の曲線g、hは、実験において、送電側共振器2を送信側制御器3によって励振したときの反射係数(S11)を示すものである。曲線gは、実験でコンデンサ22(及び22’)が238pFのもの、曲線hは、実験でコンデンサ22(及び22’)が23nFのものである。曲線gは上述した曲線eに、曲線hは上述した曲線fに、良く一致している。なお、実験で用いた共振モードは、第1のシミュレーション(及び第2のシミュレーション)と同様に、奇モードである。
【0038】
図14(a)の曲線iと図14(b)の曲線i’は、実験においてシールド材4を水槽の短辺の側面側に配置したときのシールド材4より外側の電界強度を示す図である。図14(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、図14(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。図14(a)と図14(b)には、比較のためにそれぞれ、シールド材4を除いた場合の電界強度の曲線j、曲線j’も示している。図15(a)の曲線kと図15(b)の曲線k’は、実験においてシールド材4を水槽の上面側に配置したときのシールド材4より外側(上側)の電界強度を示す図である。図15(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、図15(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。図15(a)と図15(b)には、比較のためにそれぞれ、シールド材4を除いた場合の電界強度の曲線l、曲線l’も示している。
【0039】
これらの図より、共振周波数が3MHz近傍であっても300kHz近傍であっても、シールド材4を設けると、シールド材4より外側では確実に電界強度が大きく下がっており、シールド材4により電界に対して大きなシールド効果が得られることが分かる。
【0040】
図16(a)の曲線mと図16(b)の曲線m’は、実験においてシールド材4を水槽の上面側に配置したときのシールド材4より外側(上側)の磁界強度を示す図である。図16(a)が共振周波数3MHz近傍のもの、図16(b)が共振周波数300kHz近傍のものである。図16(a)と図16(b)には、比較のためにそれぞれ、シールド材4を除いた場合の磁界強度の曲線n、曲線n’も示している。
【0041】
図16(a)、(b)より、曲線mは曲線nに、曲線m’は曲線n’にほとんど重なっている。よって、共振周波数が3MHz近傍であっても300kHz近傍であっても、シールド材4は、ほとんど磁界強度に影響を及ぼさないことが分かる。
【0042】
以上、本発明の実施形態に係るワイヤレス電力供給装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 ワイヤレス電力供給装置
2、2’ 送電側共振器
21、21’ コイル
22、22’ コンデンサ
3 送信側制御器
3a 高周波電源
3b 結合ループ
4 シールド材
41 水
42 ケース
5 遊泳体観賞装置
6 水槽
7 遊泳体(受電側装置)
71 受電側共振器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16