特許第6687243号(P6687243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687243
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/3827 20150101AFI20200413BHJP
   H04B 7/04 20170101ALI20200413BHJP
   H04B 7/10 20060101ALI20200413BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20200413BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20200413BHJP
   H01Q 3/24 20060101ALI20200413BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20200413BHJP
   H01Q 5/35 20150101ALI20200413BHJP
【FI】
   H04B1/3827 110
   H04B7/04
   H04B7/10 A
   H01Q1/24 Z
   H01Q21/28
   H01Q3/24
   H01Q5/371
   H01Q5/35
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-161492(P2016-161492)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-29313(P2018-29313A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】318012780
【氏名又は名称】富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100175190
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 裕明
(72)【発明者】
【氏名】森 雅朋
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−229636(JP,A)
【文献】 特開2005−117099(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/112279(WO,A1)
【文献】 特開2002−232224(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01895617(EP,A1)
【文献】 特開2015−162733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3827
H01Q 1/24
H01Q 3/24
H01Q 5/35
H01Q 5/371
H01Q 21/28
H04B 7/04
H04B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
前記無線通信装置が音声通話を行う際に、人体側を向く第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する基板と、
前記基板の第1端側に配設され、音声通話の通信、及び、データ通信のいずれかに用いられる、第1アンテナと、
前記基板の前記第1端とは反対の第2端側に配設され、データ通信に用いられる第2アンテナと、
前記第2アンテナの近傍に配置され、前記第2アンテナとは異なる通信方式によるデータ通信に用いられる第3アンテナと、
前記第2アンテナの給電点に接続される第1端子と、前記第1端子に切り替え的に接続される第2端子及び第3端子とを有するスイッチと、
前記第2端子に接続される整合回路であって、前記第2アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを接続すると、前記第2アンテナの共振周波数を前記第3アンテナの共振周波数とは異なる共振周波数に設定する、整合回路と、
前記第3端子に接続される調整回路であって、前記第3アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第3端子とを接続すると、前記第2アンテナが前記第3アンテナと共振するように前記第2アンテナのインピーダンスを調整するとともに、前記第3アンテナの指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整する調整回路と
を含む、無線通信装置。
【請求項2】
前記第3アンテナは、前記基板の前記第1面側にヌル点を有するとともに、前記第2面側にピークを有するように、前記調整回路によって前記指向性の分布が調整されることにより、前記指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整される、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記調整回路は、インダクタを有し、
前記第2アンテナは、前記インダクタによって前記インピーダンスが調整されることによって、前記第2アンテナの共振周波数の高調波の周波数が低下して前記第3アンテナの周波数と等しくされることによって、前記第3アンテナと共振する、請求項1又は2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2アンテナと前記第3アンテナは、所定の間隔で並列に配置される区間を有する、請求項1乃至3のいずれか一項記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1アンテナと前記第2アンテナは、データ通信を行うときに、MIMOアンテナを構築する、請求項1乃至4のいずれか一項記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第3アンテナは、無線LAN用のアンテナである、請求項1乃至5のいずれか一項記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンテナと、高周波回路と、前記アンテナおよび前記高周波回路に接続されると、前記アンテナおよび前記高周波回路が送信周波数にて共振するように整合を行う第1の整合回路とを具備することを特徴とする携帯端末装置がある。前記アンテナおよび前記高周波回路に接続されると、前記アンテナおよび前記高周波回路が受信周波数にて共振するように整合を行う第2の整合回路と、前記第1の整合回路または前記第2の整合回路のいずれか一方を前記アンテナおよび前記高周波回路に接続させるスイッチ回路とをさらに具備することを特徴とする。物体の検出を行う近接センサと、前記近接センサの検出結果に基づいて、前記スイッチ回路が前記第1の整合回路と前記第2の整合回路とのいずれを前記アンテナおよび前記高周波回路に接続するかを制御する制御手段とをさらに具備することを特徴とする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−239108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の携帯端末装置は、1つのアンテナが電波を放射する場合におけるSARを低減させることはできるが、複数のアンテナが同時に放射する場合におけるSARを低減することは想定しておらず、実現することはできない。
【0005】
そこで、複数のアンテナが同時に放射する場合におけるSARを低減できる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の無線通信装置は、前記無線通信装置が音声通話を行う際に、人体側を向く第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する基板と、前記基板の第1端側に配設され、音声通話の通信、及び、データ通信のいずれかに用いられる、第1アンテナと、前記基板の前記第1端とは反対の第2端側に配設され、データ通信に用いられる第2アンテナと、前記第2アンテナの近傍に配置され、前記第2アンテナとは異なる通信方式によるデータ通信に用いられる第3アンテナと、前記第2アンテナの給電点に接続される第1端子と、前記第1端子に切り替え的に接続される第2端子及び第3端子とを有するスイッチと、前記第2端子に接続される整合回路であって、前記第2アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを接続すると、前記第2アンテナの共振周波数を前記第3アンテナの共振周波数とは異なる共振周波数に設定する、整合回路と、前記第3端子に接続される調整回路であって、前記第3アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第3端子とを接続すると、前記第2アンテナが前記第3アンテナと共振するように前記第2アンテナのインピーダンスを調整するとともに、前記第3アンテナの指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整する調整回路とを含む。
【発明の効果】
【0007】
複数のアンテナが同時に放射する場合におけるSARを低減できる無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の無線通信装置を含む電子機器10を示す斜視図である。
図2】実施の形態の無線通信装置100を示す図である。
図3】無線通信装置100で音声通話及びWLAN方式によるデータ通信を行う場合の動作を説明する図である。
図4】無線通信装置100でLTE−MIMO方式でデータ通信を行う場合の動作を説明する図である。
図5】無線通信装置100の電磁界シミュレーションで用いたシミュレーションモデルを示す図である。
図6】サブアンテナ120及びWLANアンテナ130の一部と、スイッチ140、整合回路150、調整回路160、及び整合回路180とを示す図である。
図7】シミュレーションモデルで得た指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の無線通信装置を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の無線通信装置を含む電子機器10を示す斜視図である。本実施の形態では、図1に示すようにXYZ座標系を用いて説明する。以下で示す他の図面においても、共通のXYZ座標系を用いる。また、XY平面視を平面視と称す。
【0011】
電子機器10は、一例として、スマートフォン端末機、又は、携帯電話端末機である。電子機器10は、音声通話を行う機能を有する機器であればよい。
【0012】
電子機器10は、筐体11の一方の面(Z軸正方向側の面)側に配置されるタッチパネル12とディスプレイパネル13を有する。タッチパネル12は、ディスプレイパネル13よりもZ軸正方向側(表面側)に配設される。ディスプレイパネル13には、GUI(Graphic User Interface)による様々なボタン又はスライダー等が表示される。
【0013】
また、電子機器10は、筐体11の一方の面(Z軸正方向側の面)側に配置されるスピーカ14とマイク15を含む。電子機器10のスピーカ14とマイク15を利用して音声通話を行う利用者は、スピーカ14を耳に当て、マイク15を口の近くに配置する。
【0014】
図2は、実施の形態の無線通信装置100を示す図である。
【0015】
無線通信装置100は、基板50、メインアンテナ110、サブアンテナ120、WLANアンテナ130、スイッチ140、整合回路150、調整回路160、及び制御部170を含む。以下では、メインアンテナ110、サブアンテナ120、WLANアンテナ130に給電する電源を交流の記号で示す。
【0016】
基板50は、筐体11(図1参照)の内部に配設されており、一例として、FR4(Flame Retardant type4)規格の配線基板である。基板50は、グランドプレーン51を有する。グランドプレーン51は、基板50のZ軸正方向側の面に設けられているため、破線で示す。なお、グランドプレーン51は、基板50のZ軸負方向側の面に設けられていてもよく、また、基板50の内層面に設けられていてもよい。
【0017】
基板50のZ軸負方向側の面には、メインアンテナ110、サブアンテナ120、WLANアンテナ130、スイッチ140、整合回路150、及び調整回路160が設けられている。
【0018】
メインアンテナ110は、基板50のZ軸負方向側の面のうちのY軸負方向側の端部に設けられている。メインアンテナ110は、音声通話の通信、及び、データ通信のいずれかに用いられる第1アンテナの一例である。利用者がスピーカ14とマイク15(図1参照)を利用して音声通話を行う際には、電子機器10が利用者の頭部の側部に配置されるので、頭部へのSAR(Specific Absorption Rate:比吸収率)の影響を低く抑えるために、メインアンテナ110は、マイク15に近い側に配置される。
【0019】
メインアンテナ110は、T字型のアンテナであり、給電部111からY軸負方向に伸延し、分岐部112で分岐して、端部113及び114までX軸正方向及びX軸負方向に伸延している。給電部111は、平面視でグランドプレーン51のY軸負方向側の端辺の近傍に位置する。端部113及び114は、それぞれ、基板50のX軸正方向及びX軸負方向側の端辺の近傍に位置する。
【0020】
分岐部112から端部114までの長さは、分岐部112から端部113までの長さよりも長い。給電部111から分岐部112を経て端部114に至るまでのL字型の部分は、共振周波数がf1のモノポールアンテナとして機能する。f1は、一例として、800MHzである。
【0021】
給電部111から分岐部112を経て端部113に至るまでのL字型の部分は、共振周波数がf2のモノポールアンテナとして機能する。f2は、一例として、2GHzである。f1とf2のどちらを利用するかは、基地局側で決定される。
【0022】
メインアンテナ110は、音声通話の通信と、データを送信する通信を行う際には、単独で通信を行う。一例として、メインアンテナ110は、音声通話の通信と、データを送信する通信を行う際には、WCDMA(登録商標)(Wideband Code Division Multiple Access:3G(Generation))−SISO(Single‐Input‐Single‐Output)方式による通信を行う。
【0023】
また、メインアンテナ110は、データを受信する通信を行う際には、サブアンテナ120と協働して、LTE(Long Term Evolution)−MIMO(Multi‐Input Multi‐Output)方式で通信(データ受信)を行う。
【0024】
サブアンテナ120は、基板50のZ軸負方向側の面のうちのY軸正方向側の端部に設けられている。サブアンテナ120は、データ通信のうちの受信(データ受信)専用に用いられる第2アンテナの一例である。サブアンテナ120は、メインアンテナ110と協働して、LTE−MIMO方式で通信(データ受信)を行う。サブアンテナ120は、基板50のY軸方向において、メインアンテナ110とは反対側に配置される。
【0025】
サブアンテナ120は、T字型のアンテナであり、給電部121からY軸正方向に伸延し、分岐部122で分岐して、端部123及び124までX軸正方向及びX軸負方向に伸延している。給電部121は、平面視でグランドプレーン51のY軸正方向側の端辺の近傍に位置する。端部123及び124は、それぞれ、基板50のX軸正方向及びX軸負方向側の端辺の近傍に位置する。
【0026】
分岐部122から端部124までの長さは、分岐部122から端部123までの長さよりも長い。給電部121から分岐部122を経て端部124に至るまでのL字型の部分は、共振周波数がf1のモノポールアンテナとして機能する。f1は、一例として、800MHzである。
【0027】
給電部121から分岐部122を経て端部123に至るまでのL字型の部分は、共振周波数がf2のモノポールアンテナとして機能する。f2は、一例として、2GHzである。f1とf2のどちらを利用するかは、基地局側で決定される。
【0028】
WLANアンテナ130は、L字型のモノポールアンテナであり、第3アンテナの一例である。WLANアンテナ130は、WLAN(Wireless Local Area Network)の通信方式でデータ通信(送信及び受信)を行うアンテナである。WLANアンテナ130の通信周波数は、メインアンテナ110及び120の通信周波数f1及びf2とは異なるf3である。f3は、一例として、5GHzである。
【0029】
WLANアンテナ130は、給電部131からY軸正方向に伸延し、折り曲げ部132でX軸負方向側に折り曲げられて、端部133までX軸負方向に伸延している。給電部131は、平面視でグランドプレーン51のY軸正方向側の端辺の近傍に位置する。また、折り曲げ部132と端部133との間の区間は、所定間隔(例えば、5mm)を隔ててサブアンテナ120の分岐部122と端部124との間の区間と並行である。端部133は、基板50のX軸負方向側の端辺の近傍に位置する。
【0030】
スイッチ140は、3つの端子141、142、143を有するスイッチであり、端子141の接続先を端子142又は143のいずれか一方に切り替える。スイッチ140の切り替えは、制御部170によって行われる。端子141は第1端子の一例であり、端子142は第2端子の一例であり、端子143は第3端子の一例である。
【0031】
端子141は給電部121に接続され、端子142は、整合回路150に接続され、端子143は、調整回路160に接続される。このため、給電部121の接続先は、スイッチ140によって整合回路150又は調整回路160のいずれか一方に切り替えられる。
【0032】
整合回路150は、サブアンテナ120がデータ受信を行う際に、スイッチ140によってサブアンテナ120と接続され、サブアンテナ120の通信周波数をf1及びf2に整合させる。サブアンテナ120は、通信周波数f1及びf2で通信するときは、WLANアンテナ130とは結合していない。
【0033】
調整回路160は、WLANアンテナ130がデータ通信を行う際に、スイッチ140がサブアンテナ120と調整回路160とを接続すると、サブアンテナ120がWLANアンテナ130と共振するようにサブアンテナ120のインピーダンスを調整するとともに、WLANアンテナ130の指向性がZ軸負方向側を向くように調整する。
【0034】
調整回路160は、インダクタンス又はキャパシタンスを含み、スイッチ140によってサブアンテナ120と接続されると、サブアンテナ120の共振周波数をWLANアンテナ130の通信周波数f3にあわせる。このようにサブアンテナ120の共振周波数が調整回路160によってf3に調整されることにより、サブアンテナ120とWLANアンテナ130が結合して指向性を制御できるようになる。なお、サブアンテナ120の共振周波数を通信周波数f3にあわせるには、サブアンテナ120の共振周波数の基本波と高調波のどちらを通信周波数f3に合わせてもよい。このため、例えば、サブアンテナ120の高調波のうちの1つの周波数を5GHzに低下させることにより、サブアンテナ120とWLANアンテナ130を共振させることができる。
【0035】
また、Z軸負方向側とは、電子機器10(図1参照)のスピーカ14及びマイク15が存在する側とは反対側である。すなわち、電子機器10のタッチパネル12及びディスプレイパネル13が存在する側とは反対側(電子機器10の裏側)である。
【0036】
サブアンテナ120及びWLANアンテナ130の指向性がZ軸負方向側を向くとは、サブアンテナ120及びWLANアンテナ130の指向性の分布がZ軸負方向側に偏ること、又は、サブアンテナ120及びWLANアンテナ130の指向性がZ軸正方向側にヌル点を有することである。なお、指向性の分布の調整については後述する。
【0037】
制御部170は、一例として、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)によって実現される。例えば、制御部170は、電子機器10の高周波無線通信を制御するCPUの機能の一部として実現される。
【0038】
このため、制御部170には、無線通信装置100が音声通話を行うモードを表す信号と、LTE−MIMO方式でデータ通信を行うモードを表す信号とが入力される。制御部170は、これらの信号に基づいて、スイッチ140を切り替える。
【0039】
制御部170は、サブアンテナ120がデータ受信を行う際に、端子141と142を接続する。これにより、サブアンテナ120と整合回路150とが接続される。また、制御部170は、WLANアンテナ130がデータ通信を行う際に、端子141と143を接続する。これにより、サブアンテナ120と調整回路160とが接続される。
【0040】
図3は、無線通信装置100で音声通話及びWLAN方式によるデータ通信を行う場合の動作を説明する図である。図3(A)には、無線通信装置100におけるスイッチ140の接続状態を示し、図3(B)には、利用者が左手に電子機器10を持ってスピーカ14を左耳に当てた状態で、通話するとともにWLAN方式でデータ通信を行っている状態を示す。なお、図3(B)では、電子機器10、無線通信装置100、メインアンテナ110、サブアンテナ120、WLANアンテナ130を概略的に示す。
【0041】
音声通話は、メインアンテナ110による通信によって行われる。また、WLAN方式でデータ通信を行う際には、図3(A)に示すように、スイッチ140はサブアンテナ120の給電部121と調整回路160とを接続してサブアンテナ120をWLANアンテナ130の通信周波数f3で共振させて指向性を制御する。このため、図3(B)に示すように、WLANアンテナ130の指向性は(サブアンテナ120及び調整回路160を利用して)、楕円及び矢印で示すように、電子機器10の裏側を向くように調整されるので、頭部へのSARの影響は軽減される。
【0042】
ここで、メインアンテナ110による音声通話の通信を行うときには、頭部の下方(口よりも下の部分)に電波が放射される程度であることから、SARの影響は軽減されており、問題にはならない。なお、これは、メインアンテナ110を利用して音声通話の通信のみを行っているときも同様である。
【0043】
図4は、無線通信装置100でLTE−MIMO方式でデータ通信を行う場合の動作を説明する図である。図4(A)には、無線通信装置100におけるスイッチ140の接続状態を示し、図4(B)には、利用者が左手に電子機器10を持って、メインアンテナ110及び120を利用してLTE−MIMO方式でデータ通信を行っている状態を示す。図4(B)では、利用者は音声通話を行っていないので、電子機器10は耳に当てられておらず、頭部から離れて利用者の眼前(手元)にある。
【0044】
LTE−MIMO方式でデータ通信を行う際には、図4(A)に示すように、スイッチ140はサブアンテナ120の給電部121と整合回路150とを接続する。これにより、サブアンテナ120は、共振周波数f1、f2で通信可能な状態になる。LTE−MIMO方式でデータ通信は、メインアンテナ110及びサブアンテナ120によって実現される。
【0045】
利用者が電子機器10を手に持ってLTE−MIMO方式及びWLAN方式の複数の通信方式でデータ通信を行っている状態では、メインアンテナ110及びWLANアンテナ130から電波が放射されるが、電子機器10が人体から離れているため、SARの影響は、問題にならない程度である。
【0046】
図5は、無線通信装置100の電磁界シミュレーションで用いたシミュレーションモデルを示す図である。図6は、サブアンテナ120及びWLANアンテナ130の一部と、スイッチ140、整合回路150、調整回路160、及び整合回路180とを示す図である。図6は、図5に示すシミュレーションモデルのサブアンテナ120及びWLANアンテナ130の一部を拡大した図に、スイッチ140、整合回路150、調整回路160、及び整合回路180を書き足した図である。
【0047】
整合回路180は、WLANアンテナ130のインピーダンス整合をとるための回路であり、キャパシタ又はインダクタ等を含む。図2乃至図4では整合回路180を示していないが、図5に示すように、WLANアンテナ130の給電部131とグランドプレーン51Aとの間に整合回路180を適宜挿入すればよい。
【0048】
図5には、グランドプレーン51A、サブアンテナ120、WLANアンテナ130、及び調整回路160を示す。グランドプレーン51Aは、X軸方向の幅が50mm、Y軸方向の長さが100mmの導電体である。図5に示すシミュレーションモデルでは、グランドプレーン51Aは、XZ平面に平行な平板状の導体である。調整回路160は、グランドプレーン51Aと、サブアンテナ120との間に設けられている。
【0049】
図6に示すように、WLANアンテナ130の給電部131と折り曲げ部132との間の長さは5mmである。サブアンテナ120の分岐部122と端部124との間の区間と、WLANアンテナ130の折り曲げ部132と端部133との間の区間とがX軸方向に並行に伸延する区間の長さは13mmである。このため、WLANアンテナ130の長さは18mmである。端部124は、端部133よりもX軸負方向側に位置する。
【0050】
また、サブアンテナ120の分岐部122と端部124との間の区間と、WLANアンテナ130の折り曲げ部132と端部133との間の区間とのY軸方向の間隔は、5mmである。
【0051】
調整回路160はインダクタで構成し、スイッチ140によってサブアンテナ120と接続されると、サブアンテナ120の高調波のうちの1つの周波数を5GHzに低下させる
以上のようなシミュレーションモデルを用いて、スイッチ140でサブアンテナ120と調整回路160とを接続した状態で、WLANアンテナ130の指向性を求めたところ、図7に示すような指向性を得た。
【0052】
図7は、シミュレーションモデルで得た指向性を示す図である。図7には、スイッチ140でサブアンテナ120と調整回路160とを接続した状態におけるWLANアンテナ130の指向性を破線で示す。
【0053】
また、比較用に、スイッチ140でサブアンテナ120と整合回路150とを接続した状態におけるWLANアンテナ130の指向性を実線で示す。スイッチ140でサブアンテナ120と整合回路150とを接続した状態では、サブアンテナ120とWLANアンテナ130とは共振していない。
【0054】
図7に示すように、比較用に実線で示す指向性は、YZ平面でほぼ均等になっている。これに対して、破線で示す指向性は、実線で示す指向性よりもZ軸負方向側で利得が大きくなっており、Z軸正方向側にヌル点を有する。このため、WLANアンテナ130の指向性がZ軸負方向側を向いていることが確認できた。
【0055】
以上、実施の形態によれば、WLANアンテナ130がデータ通信を行う際に、スイッチ140がサブアンテナ120と調整回路160とを接続し、サブアンテナ120がWLANアンテナ130と共振するようにサブアンテナ120のインピーダンスを調整するとともに、WLANアンテナ130の指向性がZ軸負方向側を向くように調整する。
【0056】
このため、無線通信装置100が、メインアンテナ110で音声通話のデータ通信を行っているときに、WLANアンテナ130でWLAN方式によるデータ通信を行っても、WLANアンテナ130の指向性が無線通信装置100の裏側(頭部から離れる方向)を向くように切り替えられるので、SARを低減することができる。
【0057】
従って、複数のアンテナが同時に放射する場合におけるSARを低減できる無線通信装置100を提供することができる。
【0058】
また、従来は、SARを低減するために出力を落とすことが行われているケースがあるが、このような手法でSARを低減しても、放射特性が低下するため、問題の本質的な解決には至っていない。
【0059】
このようなケースに対して、実施の形態1の無線通信装置100は、WLANアンテナ130の指向性が無線通信装置100の裏側を向くように切り替えるので、出力を低下させることなく、SARを低減することができる。
【0060】
以上で説明したメインアンテナ110、サブアンテナ120、及びWLANアンテナ130の通信周波数は、一例であり、上述以外の通信周波数において通信する場合でも、メインアンテナ110、サブアンテナ120、及びWLANアンテナ130の各部の寸法等を変更することによって、対応可能である。
【0061】
なお、以上では、第3アンテナの一例としてWLANアンテナ130を示したが、WLANアンテナ130をWLAN以外の通信方式のアンテナとして用いてもよい。
【0062】
また、図6に示すサブアンテナ120とWLANアンテナ130の寸法は、一例である。サブアンテナ120の分岐部122と端部124との間の区間と、WLANアンテナ130の折り曲げ部132と端部133との間の区間とがX軸方向に並行に伸延する区間の長さは、13mmに限られない。WLANアンテナ130の通信周波数f3における波長をλとすると、並行に伸延する区間の長さは、例えば、λ×(2/3)以上、λ×(4/5)以下程度であればよい。また、並行に伸延する区間のY軸方向における間隔は、λ×(1/4)以上、λ×(1/3)以下程度であればよい。
【0063】
以上では、無線通信装置100がメインアンテナ110を含む形態について説明したが、メインアンテナ110を含まない装置を無線通信装置100として捉えてもよい。
【0064】
また、以上では、調整回路160がインダクタを含み、サブアンテナ120の高調波のうちの1つの周波数を5GHzに低下させて、サブアンテナ120とWLANアンテナ130が共振するようにする形態について説明した。
【0065】
しかしながら、調整回路160がサブアンテナ120の共振周波数を調整して、WLANアンテナ130の共振周波数と等しくなるようにしてもよい。このような場合に、調整回路160は、インダクタ又はキャパシタを含み、サブアンテナ120の共振周波数を適宜調整できるようにすればよい。
【0066】
以上、本発明の例示的な実施の形態の無線通信装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
無線通信装置であって、
前記無線通信装置が音声通話を行う際に、人体側を向く第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する基板と、
前記基板の第1端側に配設され、音声通話の通信、及び、データ通信のいずれかに用いられる、第1アンテナと、
前記基板の前記第1端とは反対の第2端側に配設され、データ通信に用いられる第2アンテナと、
前記第2アンテナの近傍に配置され、前記第2アンテナとは異なる通信方式によるデータ通信に用いられる第3アンテナと、
前記第2アンテナの給電点に接続される第1端子と、前記第1端子に切り替え的に接続される第2端子及び第3端子とを有するスイッチと、
前記第2端子に接続される整合回路であって、前記第2アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを接続すると、前記第2アンテナの共振周波数を前記第3アンテナの共振周波数とは異なる共振周波数に設定する、整合回路と、
前記第3端子に接続される調整回路であって、前記第3アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第3端子とを接続すると、前記第2アンテナが前記第3アンテナと共振するように前記第2アンテナのインピーダンスを調整するとともに、前記第3アンテナの指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整する調整回路と
を含む、無線通信装置。
(付記2)
前記第3アンテナは、前記基板の前記第1面側にヌル点を有するとともに、前記第2面側にピークを有するように、前記調整回路によって前記指向性の分布が調整されることにより、前記指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整される、付記1記載の無線通信装置。
(付記3)
前記調整回路は、インダクタを有し、
前記第2アンテナは、前記インダクタによって前記インピーダンスが調整されることによって、前記第2アンテナの共振周波数の高調波の周波数が低下して前記第3アンテナの周波数と等しくされることによって、前記第3アンテナと共振する、付記1又は2記載の無線通信装置。
(付記4)
前記第2アンテナと前記第3アンテナは、所定の間隔で並列に配置される区間を有する、付記1乃至3のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記5)
前記第1アンテナと前記第2アンテナは、データ通信を行うときに、MIMOアンテナを構築する、付記1乃至4のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記6)
前記第3アンテナは、無線LAN用のアンテナである、付記1乃至5のいずれか一項記載の無線通信装置。
(付記7)
無線通信装置であって、
前記無線通信装置が音声通話を行う際に、人体側を向く第1面と、前記第1面とは反対の第2面とを有する基板と、
前記基板に配設され、データ通信に用いられる第1アンテナと、
前記第1アンテナの近傍に配置され、前記第1アンテナとは異なる通信方式によるデータ通信に用いられる第2アンテナと、
前記第1アンテナの給電点に接続される第1端子と、前記第1端子に切り替え的に接続される第2端子及び第3端子とを有するスイッチと、
前記第2端子に接続される整合回路であって、前記第1アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第2端子とを接続すると、前記第1アンテナの共振周波数を前記第2アンテナの共振周波数とは異なる共振周波数に設定する、整合回路と、
前記第3端子に接続される調整回路であって、前記第2アンテナがデータ通信を行う際に前記スイッチが前記第1端子と前記第3端子とを接続すると、前記第1アンテナの共振周波数を前記第2アンテナの共振周波数と等しくなるように調整するとともに、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの指向性が前記基板の前記第2面側を向くように調整する調整回路と
を含む、無線通信装置。
【符号の説明】
【0067】
10 電子機器
50 基板
51 グランドプレーン
100 無線通信装置
110 メインアンテナ
111 給電部
112 分岐部
113、114 端部
120 サブアンテナ
121 給電部
122 分岐部
123、124 端部
130 WLANアンテナ
131 給電部
132 折り曲げ部
133 端部
140 スイッチ
141、142、143 端子
150 整合回路
160 調整回路
170 制御部
180 整合回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7