【実施例】
【0080】
[実施例1]
この実施例は、本開示の方法による二重特異性抗体の合成を示す。
図4は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内の2個のCys残基への化学的コンジュゲーションによる二重特異性のモノクローナル抗体(mAb)を創出するためのスキームを示す。本開示の二重特異性mAbは、そのそれぞれのヒンジ領域で化学結合されている2種類の半抗体断片で構成されている。二重特異性mAbを合成するための方法は、
図5に示す3つの主要な工程を伴う。第1工程は、2種類の異なるmAb、それぞれAとBのヒンジ内のジスルフィドの選択的還元である。第2工程は、各mAbの同じ重鎖上の2つのシステイン間へのリンカーXまたはYによる鎖内結合の導入である。この鎖内結合過程により、2種類の化学的に固定されたmAb断片A’およびB’がもたらされる。最後の工程では、この2種類のmAb断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体ABを形成する。
【0081】
より詳しくは、本発明者らは、ヒンジ内変異(CP
SC
(配列番号1))を有するIgG1である抗体「A」と野生型IgG4である抗体「B」を入手した。第1工程は抗体の還元であった。条件1:抗体(10mg)を別々に、10モル当量の2−メルカプトエチル−アミン(2−MEA)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で37℃にて2時間処理した。過剰の2−MEAを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。タンパク質濃度は、1.0mg/mLの溶液で280nmにおいて1.58の吸光度値を用いて定量し、モル濃度は、150,000g/molの分子量を用いて測定した。
【0082】
条件2:抗体(10mg)を、3.0モル当量のジチオトレイトール(DTT)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。過剰のDTTを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。
【0083】
条件3:mAb(10mg)を、2.0モル当量のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)(0.1MのPBS(pH8.0)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。mAb濃度は8.0mMであった。精製せずに、部分還元mAbをコンジュゲーションに直接使用した。
【0084】
[実施例2]
この実施例は、実施例1で作製した二重特異性抗体が元の半Mabの両方の結合特性を保持していたことを示す。
【0085】
【化31】
1−(2−(2−アジドエトキシ)エチル)−3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオンの合成:
2.5gの3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオン(10mmol)と1gのNMM(60mLのTHF中)にMeOCOCl(10mmol、10mlのDCM中940mg)を滴下し、20分間撹拌し、次いで、反応溶液を6omLのDCMで希釈し、水で3回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムによって撹拌し、濃縮し、2.65gの3,4−ジブロモ−2,5−ジオキソ−2H−ピロール−1(5H)−カルボン酸メチルを得た。311mg(1mmol)のこの化合物に、2−(2−アジドエトキシ)エタンアミン(130mg、1mmol)と5mLのDCMを添加し、TLCにより反応が20分で終了したことが示され、次いでDCMとブラインによって抽出し、NH
4Cl溶液によって洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いでカラム精製のために濃縮し、2:1のヘキサンとエチルエチラートによりフラッシングし、230mgの1−(2−(2−アジドエトキシ)エチル)−3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオンを得た。
1HNMR:3.32ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.40ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.50ppm(q,J=5.0Hz,1H)、3.62ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.63−3.69ppm(m,3H)、3.84ppm(t,J=5Hz,1H).Fw:365.9、C
8H
8Br
2N
4O
3;質量ピーク(1:2:1):366.9、368.9、370.9。
【0086】
[実施例3]
この実施例は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内に存在する1個のCys残基を用いた二重特異性抗体の化学的創出を示す。本明細書に記載の出発mAbは改変ヒンジ領域を含むものであり、この改変ヒンジ領域では、各鎖上の同じ位置の1個のCysがSerに変異され、従ってヒンジはジスルフィドが1つだけになっている。二重特異性mAbの創出方法は3つの主要な工程を伴う(
図1)。第1工程は、2種類の異なるmAb、それぞれAとBのヒンジ内のジスルフィドの選択的還元である。第2工程は、システインベースでのコンジュゲーションによる官能性部分XまたはYの導入である。このCys連結工程により2種類の化学的に固定されたmAb断片A’およびB’がもたらされる。最後の工程では、この2種類のmAb断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体ABを形成する。この試験では、ヒンジ領域内変異(
SPPC
(配列番号3))を有するIgG1モノクローナル抗体を使用した。
【0087】
条件1:抗体(10mg)を、10モル当量の2−メルカプトエチル−アミン(2−MEA)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で37℃にて2時間処理した。過剰の2−MEAを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。タンパク質濃度は、1.0mg/mLの溶液で280nmにおいて1.58の吸光度値を用いて定量し、モル濃度は、150,000g/molの分子量を用いて測定した。
【0088】
条件2:抗体(10mg)を、3.0モル当量のジチオトレイトール(DTT)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。過剰のDTTを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。
【0089】
条件3:mAb(10mg)を、2.0モル当量のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)(0.1MのPBS(pH8.0)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。mAb濃度は8.0mMであった。精製せずに、部分還元mAbをコンジュゲーションに直接使用した。
【0090】
[実施例4]
この実施例は、本明細書に開示の方法による、本開示の化学連結構造体が各半抗体断片のヒンジ領域を互いに連結している二重特異性抗体の作製方法を示す。この抗体の骨格は:ヒンジ内変異(
SPSC
(配列番号4))を有するIgG4であった。
【0091】
本発明者らは、まず各Ig抗体を、半抗体を創出するために化学修飾により修飾した。具体的には、バッファー交換反応で抗体(0.5から3mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore、UFC903024)に添加し、適切な容量のpH8.0のPBS 1mMのDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。このチューブを3,000RPMで20分間、5℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度をNanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は5から8mg/mLの間であった。
【0092】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(1.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。本発明者らは以下の表を使用し、バッファー交換後に回収された抗体の当量数および結果としての質量に応じて抗体に添加する必要があるTCEP溶液の容量を計算した。
【0093】
【表1】
【0094】
適切な容量のTCEP溶液(上記の表によって計算)を抗体溶液に添加し、軽くボルテックスし、バイアルをカルーセル上に配置した。還元反応を室温で90分間行った。
【0095】
DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を、上記の表からの計算に基づいて調製した。このDBCO−マレイミドのDMSO溶液を抗体試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM,カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、5℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れた。
【0096】
IgG4抗体では、4.0当量のTCEPで大量の半抗体が得られた。IgG1抗体では、3.5当量のTCEPで大量の半抗体が得られた。どちらの型の抗体の場合も5.0当量のDBCOを使用した。
【0097】
DBCO−マレイミド(1.0mg、1.0当量)のDMSO(0.12mL)溶液にアジド−PEG4−アジド(2.5mg、5.0当量)(DMSO(0.6mL)中)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。反応はLC/MSによって示されたときに終了した。得られたアジド−マレイミドの分子量は627.65g/molであった。アジド−マレイミドの合成(スキーム1)
【0098】
【化32】
【0099】
スキーム1.アジド−マレイミドの合成
アジド−マレイミド(5.0当量)(DMSO中)を抗体試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。試料を先に記載のとおりに洗浄した。
【0100】
各半抗体断片を疎水性相互作用カラム(HIC)によって精製した。HICアッセイは、TOSOHブチル−NPRカラムを用いて40℃のカラム温度および0.6mL/分の流速で行った。溶出は、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中、30分間で塩濃度を低下させ(1.5から0Mまでの硫酸アンモニウム)、有機調整剤を増大させる(0%から25%までのイソプロピルアルコール)勾配で行った。半抗体断片をSDS PAGEによって分析した。具体的には、分析対象の各試料について0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。本発明者らは、SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った。
図9は、化学修飾半抗体断片の非還元SDS PAGE(レーン2および3)を示す。
【0101】
[実施例5]
この実施例は、クリック反応による二重特異性抗体の創出を示す。
図10は、2種類の半抗体断片間のクリックコンジュゲーションによる二重特異性抗体の創出を示す。2種類の半抗体断片間のクリック反応を
図10に示す。半抗体−アジド断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))に半抗体−DBCO断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))を添加した。反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。混合物をSDS PAGE分析(
図11)およびイオン交換クロマトグラフィーによる精製に供した。
【0102】
二重特異性抗体を、Thermo WCX−10カラムを使用したAgilent 1200 HPLCにて0.6mL/分の流速で精製した。溶出は、10mMのMESバッファー(pH5.7)中、30分間で塩濃度を増大させる(0から100mMまでのNaCl)勾配で行った。二重特異性抗体STI CBA−0710をIdeSプロテアーゼによって消化させ、Water Xevo G−2 QTOF質量分析で分析し、確認した(
図12)。
【0103】
二重特異性抗体STI CBA−0710の生物理学的特性を、二重特異性抗体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって調べた(
図13)。具体的には、二重特異性抗体を、TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したAgilent 1200 HPLCで分析した。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl(pH6.2)にした。
【0104】
【表2】
【0105】
図14は、BIAcoreでの二重特異性抗体CBA−0710の結合を示す。第1の抗原をCM5センサーチップ上におよそ1500RUまで、標準的なNHS/EDCカップリング方法論を用いて固定化した。ベースラインのためにバッファーを流した。二重特異性抗体、続いてバッファーを負荷し、次いで第2の抗原に対する結合を行った。
【0106】
[実施例6]
この実施例は、本明細書において作製した二重特異性抗体についての種々のアッセイ結果を示す。二重特異性抗体の細胞ベースの結合と機能がみられる。二重特異性抗体CBA−0710はMDA−MB−231(ヒト乳がん)細胞に結合した(
図15)(フローサイトメトリーによってアッセイ)。抗体のEC
50値を調べた。抗原−1と抗原−2の両方を発現しているMDA−MB−231トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞を、無酵素細胞解離バッファー(GIBCO)を用いて収集し、V字底96ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)に移した。細胞を氷上で45分間、二重特異性抗体CBA−0710、または親の単一特異性抗−抗原−1抗体もしくは抗−抗原−2抗体のいずれかの連続希釈物とともに、FACSバッファー(PBS+2%FBS)+NaN
3中でインキュベートした。FACSバッファー中で2回の洗浄後、フィコエリトリンコンジュゲート抗−ヒトIgG(γ−鎖特異的)の1:1000希釈物を添加し、30分間インキュベートした。最後の洗浄後、蛍光強度をIntellicyt High Throughput Flow Cytometer(HTFC)で測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアおよび非線形回帰フィットを用いて解析した。データ点を、陽性標識細胞の蛍光強度中央値(MFI)+/−標準誤差として示す。EC
50値は、細胞に対する最大結合の50%が達成される抗体濃度として報告する。
【0107】
結果を表3および
図15に示す。結果は、MDA−MB−231細胞に対する二重特異性抗体の結合が、親の型と比べて改善されたことを示し、抗−抗原−2抗体と同様のサブナノモルのEC50値および抗−抗原−1抗体と同程度に高い結合強度を示す。
【0108】
【表3】
【0109】
二重特異性抗体CBA−0710の拮抗的活性が示された。具体的には、二重特異性抗体CBA−0710によるc−METリン酸化の阻害を、PathScan(R)Phospho−Met(panTyr)Sandwich ELISA Kit #7333プロトコルに従って行った。簡単には、細胞ライセートを添加し、検出抗体を再構成し、インキュベートした後、再構成したHRP結合二次抗体を添加した。洗浄後、TMB基質を添加し、インキュベートした。停止溶液を添加した後、結果の読み取りを行った。
図16は、トリプルネガティブ乳がん細胞における二重特異性抗体CBA−0710の拮抗的活性を示す。STI−A0607は抗−抗原−1モノクローナル抗体であり、STI−A1010は抗−抗原2モノクローナル抗体である。HGFは抗原−1の天然リガンドである。
【0110】
二重特異性抗体CBA−0710の免役調節活性がみとめられた。二重特異性抗体CBA−0710がT細胞応答性を調節する能力を測定するため、精製CD4+細胞を同種異系樹状細胞(単球をGM−CSFおよびIL−4中で7日間培養することによって調製)とともに培養した。パラレルプレートを、3日目と5日目に上清みを収集して市販のELISAキットを用いてIL−2およびIFNγのそれぞれを測定することが可能なようにセットアップした。競合ヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)mAbを自社で作製して陽性対照IgG1として使用し、無関連のSTIヒトmAbを陰性対照IgG抗体として使用した。
図17は、二重特異性抗体CBA−0710に応答したIFN−γ放出の増大を示す。STI−A1010は抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。競合mAbはヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。
【0111】
[実施例7]
この実施例は、F(ab)’
2抗体A’とB’を用いて本開示の二重特異性抗体を合成するためのスキームを示す。本明細書に記載の二重特異性F(ab)’
2は、ヒンジ領域で化学結合された2種類のF(ab)’断片で構成されている(
図20)。出発抗体はIgG1またはIgG4アイソタイプのいずれかである。出発抗体は修飾ヒンジ領域を含むものであり、この修飾ヒンジ領域ではCys残基がSer残基に変異され、ヒンジ領域のジスルフィドが1つだけになっている。二重特異性F(ab)’
2の化学的に固定された二重特異性抗体の創出は4つの主要な工程を伴う。第1工程はFc断片の除去である。第2工程は、それぞれ抗体AとBの選択的還元である。第3工程は、システインベースでのコンジュゲーションによるヒンジ領域内への官能性部分XまたはYの導入により、それぞれ化学修飾された抗体断片A’とB’をもたらすことである。最後の工程では、2種類の抗体断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性F(ab)’
2を形成する。この合成のスキームを
図21に示す。
【0112】
具体的には、本発明者らは、F(ab)’
2の化学的に固定された二重特異性抗体の合成方法を、ヒンジ内変異(
SPPC
(配列番号3))を有するIgG1 A抗体とヒンジ内変異(
SPSC
(配列番号4))を有するIgG4 B抗体を用いて行った。酵素IdeS(これは、IgGのみをヒンジ領域より下の特定の1つの部位で切断する消化酵素である。)を使用し、抗体(1.5mg)をIdeS(A0−FR1−008)の各チューブに添加し、37℃で一晩、ヘッド・トゥ・ヘッド型スピナー内でインキュベートした。次いで、Fc断片を、プロテインA精製を用いて除去した。
【0113】
抗体(1から10mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)に添加し、適切な容量の50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーをチューブの50mLの印まで添加した。チューブを3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度を、Nanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は10mg/mLまでであった。
【0114】
1mLの50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーを、6mgの2−メルカプトエチルアミン・HClを入れた1つのバイアルに添加した(50mM 2−MEAになった。)。50mM 2−MEAをF(ab)’
2終濃度15mMまで添加し、充分に混合した。37℃で15分間インキュベートした。2−MEAを還元されたF(ab)’
2から、NAP−5(GE17−0853−02)脱塩カラムを用いて分離した。
【0115】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(1.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。プロテインA精製後に回収されたF(ab)’
2の当量数および結果としての質量にもよるが、5当量のTCEPを脱塩F(ab)’に添加して充分に振盪し、室温で5分間インキュベートした。
【0116】
DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドとアジド−マレイミドのコンジュゲーションのため、DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を調製し、20当量のDBCO−マレイミドのDMSO溶液をF(ab)’(A)試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。アジド−マレイミド(20当量)のDMSO溶液をF(ab)’(B)試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。
【0117】
洗浄工程のため、各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM、カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れるか、またはクリック工程に使用した。F(ab)’断片の分析のため、SDS PAGE手順を使用した。各試料を分析するためには、0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った(
図21)。
【0118】
2種類のF(ab)’断片間のクリック反応のスキームを
図23に示す。F(ab)’−アジド断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))にF(ab)’−DBCO断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))を添加した。反応を室温で一晩、カルーセルによる混合下で行った。混合物をSEC分析に供した(
図24)。
【0119】
この実施例で作製した二重特異性抗体の生物理学的特性をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて調べた。TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLCを使用し、F(ab)’_A、F(ab)’_Bおよび二重特異性Click_F(ab)’
2を分析した(
図24)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。
【0120】
二重特異性F(ab)’
2を質量分析によって確認した。二重特異性F(ab)’
2をWater Xevo G−2 QTOF9で分析した(
図25)。二重特異性F(ab)’
2をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて精製した。TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLCを使用し、二重特異性Click_F(ab)’
2を精製した(
図26)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。
【0121】
インビトロ親和性の測定はOctet Redを使用するものにした(
図27)。センサーAR2Gを使用し、二重特異性F(ab)’
2の抗原との相互作用をOctet Red(ForteBio,Inc.)で測定した。簡単には、測定スキームを以下のとおりにした:300秒間のベースライン;300秒間の10μg/mlの二重特異性F(ab)’
2の負荷、120秒間のベースライン;300秒間の抗原A;300秒間の解離;300秒間の抗原Bおよび300秒間の解離(
図27)。センサーの湿潤ならびにベースラインおよび解離の測定はPBS中で実施した。
【0122】
[実施例8]
この実施例は、IgG2抗体A’とB’を用いて本開示の二重特異性抗体を合成するためのスキームを示す。本明細書に記載の二重特異性IgG2は、ヒンジ領域で化学結合された2種類のIgG2断片で構成されている(
図29)。出発抗体はIgG2アイソタイプである。二重特異性IgG2の創出は3つの主要な工程を伴う。第1工程は、まだホモ二量体構造を維持しているIgG2抗体のヒンジ領域内の(4つのうちの)1つまたは2つのジスルフィド結合の還元である。第2工程は、システインベースでのコンジュゲーションによるヒンジ内への官能性部分XまたはYの導入により、それぞれ化学修飾された抗体断片A’とB’をもたらすことである。最後の工程では、この2種類の抗体をXとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性_IgG2を形成する。
【0123】
具体的には、本発明者らは、IgG2化学的に固定された二重特異性抗体の合成方法を行った。抗体(1から10mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)に添加し、適切な容量の50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーをチューブの50mLの印まで添加した。チューブを3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度を、Nanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は10mg/mLまでであった。
【0124】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(2.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。IgG2の当量数および結果としての質量にもよるが、2当量のTCEPをIgG2溶液に添加し、充分に振盪し、室温で90分間インキュベートした。
【0125】
DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドおよびアジド−マレイミド
コンジュゲーションのため、DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を調製し、5当量のDBCO−マレイミドのDMSO溶液をIgG2_A試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。アジド−マレイミド(5当量)のDMSO溶液をIgG2(B)試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。
【0126】
洗浄工程のため、各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM、カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れるか、またはクリック工程に使用した。
【0127】
各試料を分析するためには、0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った(
図29)。
【0128】
質量分析のため、TCEPで還元し、DBCOとコンジュゲートさせた抗体AをWater Xevo G−2 QTOFで分析した。このデータは、2つのDBCO(ジスルフィド結合を1つだけ還元)または4つのDBCO(2つのジスルフィド結合を還元)と本発明者らのIgG2とのコンジュゲーションを示す(
図30AからC)。
【0129】
この実施例で作製した二重特異性抗体の生物理学的特性をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて調べた。二重特異性IgG2を分析するための、TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLC(
図31)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。