特許第6687247号(P6687247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687247
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】化学的に固定された二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20200413BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20200413BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   A61K39/395 J
   A61K39/395 W
   A61K47/54
【請求項の数】12
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-567196(P2016-567196)
(86)(22)【出願日】2015年5月10日
(65)【公表番号】特表2017-518975(P2017-518975A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】US2015030054
(87)【国際公開番号】WO2015175357
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年4月25日
(31)【優先権主張番号】61/991,508
(32)【優先日】2014年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,イエンウェン
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,グンナー・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】タフィーリ,ラヘラ
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522701(JP,A)
【文献】 特表2013−512927(JP,A)
【文献】 特表2013−515509(JP,A)
【文献】 特表2012−519176(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/003555(WO,A1)
【文献】 J. American Chemical Society, 2012, Vol.134, pp.9918-9921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 39/00−39/44
A61K 47/00−47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)抗体A由来の1本の重鎖と軽鎖を含む第1の抗体断片A’、ここで、該1本の重鎖はヒンジ領域内に1個以上の反応性チオール基を有するものである;
(b)抗体B由来の1本の重鎖と軽鎖を含む第2の抗体断片B’、ここで、該1本の重鎖はヒンジ領域内に1個以上の反応性チオール基を有するものである、
を含む二重特異性抗体であり;
前記第1の抗体断片と第2の抗体断片は、リンカーを介して前記第1の抗体断片のヒンジ領域内の反応性チオールに結合しているアジドと、リンカーを介して前記第2の抗体断片のヒンジ領域内の反応性チオールに結合しているアルキンとの付加環化反応により形成された1,2,3−トリアゾールによって共有結合されており、
抗体Aおよび抗体Bは完全長の抗体であり、
アルキンと反応して1,2,3−トリアゾールを形成するアジドが、
【化1】
から選択され、ここで、MはNまたはCであり、M’はNまたはCであり、および、ZはBr、IまたはSPhであり、および
アジドと反応して1,2,3−トリアゾールを形成するアルキンが、
【化2】
から選択され、ここで、MはNまたはCであり、M’はNまたはCであり、および、ZはBr、IまたはSPhである、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記断片A’およびB’がIgG1またはIgG4免疫グロブリンに由来するものである、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
以下の構造:
【化3】
を有する、化学的に固定された二重特異性抗体AB。
【請求項4】
AおよびBがIgGクラスの抗体である、請求項に記載の化学的に固定された二重特異性抗体。
【請求項5】
AおよびBがIgG1またはIgG4免疫グロブリンである、請求項またはに記載の化学的に固定された二重特異性抗体。
【請求項6】
Aがヒンジ内変異(CPSC)を有するIgG1であり、Bが野生型IgG4である、請求項1からのいずれか一項に記載の化学的に固定された二重特異性抗体。
【請求項7】
Aが抗−cMet抗体であり、Bが抗−PD−L1抗体である、請求項1またはに記載の化学的に固定された二重特異性抗体。
【請求項8】
ヒトへの使用に適した水溶液中に請求項1からのいずれか一項に記載の二重特異性抗体の有効量を含む医薬製剤。
【請求項9】
第1の完全長抗体「A」と第2の完全長抗体「B」から二重特異性抗体「AB」または「BA」を作製するための方法であって:
(a)配列CPPC、CPSC、SPPCまたはSPSCを有するヒンジ領域を有する前記第1の抗体Aを、ヒンジ領域内の重鎖間の実質的にすべてのジスルフィド結合が切断されるのに充分な条件下で、還元剤と接触させ、各々が1本の重鎖に結合している1本の軽鎖を含むものである1対の第1の半抗体A’を得ること、ここで、該重鎖は、前記ジスルフィド結合の還元により形成された1個または2個の反応性チオール基をヒンジ領域内に有するものである;
(b)第1のヘテロ二官能性リンカーを前記第1の半抗体A’に結合させ(前記第1のヘテロ二官能性リンカーは(i)前記第1の半抗体の前記重鎖のヒンジ領域内の反応性チオール基との共有結合のための第1のチオール反応性官能基および(ii)アジドを含むものである。)、これにより、アジド官能基化された第1の半抗体を形成すること;
(c)配列CPPC、CPSC、SPPCまたはSPSCを有するヒンジ領域を有する前記第2の抗体Bを、ヒンジ領域内の重鎖間の実質的にすべてのジスルフィド結合が切断されるのに充分な条件下で、還元剤と接触させ、各々が1本の重鎖に結合している1本の軽鎖を含むものである1対の第2の半抗体B’を得ること、ここで、該重鎖は、前記ジスルフィド結合の該還元により形成された1個または2個の反応性チオール基をヒンジ領域内に有するものである;
(d)第2のヘテロ二官能性リンカーを前記第2の半抗体B’に結合させ(前記第2のヘテロ二官能性リンカーは:(i)前記第2の半抗体の前記重鎖のヒンジ領域内の反応性チオール基との共有結合のための第2のチオール反応性官能基および(ii)アルキンを含むものである。);これにより、アルキン官能基化された第2の半抗体を形成すること;ならびに
(e)前記アジド官能基化された第1の半抗体を前記アルキン官能基化された第2の半抗体と反応させて、前記アジドと前記アルキンとの付加環化によって前記第1の半抗体を前記第2の半抗体に共有結合させ、化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を形成することを含み、
ここで、半抗体A’は、
【化4】
からなる群より選択される構造に連結されており、ここで、Nは−N=N=Nであり、および、
半抗体B’は、
【化5】
からなる群より選択される構造に連結されている、方法。
【請求項10】
抗体Aまたは抗体BがIgG1免疫グロブリンである、第1の抗体「A」と第2の抗体「B」から二重特異性抗体「AB」または「BA」を作製するための請求項に記載の方法。
【請求項11】
抗体Aまたは抗体BがIgG4免疫グロブリンである、第1の抗体「A」と第2の抗体「B」から二重特異性抗体「AB」または「BA」を作製するための請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
【化6】
(Nは−N=N=Nである。)
に連結された連結部含有半抗体Aを含むものであり、該半抗体Aが;
【化7】
に連結された連結部含有抗体Bに連接されている、
化学的に固定された二重特異性抗体AB。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示により、高特異性であり、高い均質性を有する化学的に固定された(chemically−locked)二重特異性またはヘテロ二量体の抗体、好ましくはIgGクラスの抗体を形成するための方法を提供する。より詳しくは、本開示により、バイオオルソゴナルなクリックケミストリーにより連接された連結領域を有する化学的に固定された二重特異性IgGクラスの抗体を提供する。
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2014年5月10日に出願された米国特許仮出願第61/991,508号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ヒト免疫グロブリンGまたはIgG抗体には4つのサブクラスが存在し、各々は相違する構造的および機能的特性を有する。IgGは2つの重鎖−軽鎖ペア(半抗体)で構成されており、これらはヒンジ領域内のCys残基(EU−インデックスの番号付け:システイン残基226および229;カバットの番号付け:システイン残基239および242)を直接連結する重鎖間ジスルフィド結合によって連結されている。ヒトIgG4分子は、重鎖間ジスルフィド結合が無いかあるかで異なる種々の分子形態で存在している。
【0004】
多種多様な組換え抗体形式、例えば、IgG抗体形式と一本鎖ドメインの融合による四価の二重特異性抗体が開発されている(Coloman et al.,Nature Biotech 15(1997)159−163;WO2001/077342;およびMorrison,Nature Biotech 25(2007)1233−1234)。別の形式は、抗体のコア構造(IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)がもはや保持されていないもの、例えば、ダイアボディ、トリアボディまたはテトラボディ、ミニボディ、幾つかの一本鎖形式(scFv、Bis−scFv)である。しかしながら、かかる形式は2種類以上の抗原に結合し得るものである(Holliger et al.,Nature Biotech 23(2005)1126−1136;Fischer and Leger,Pathobiology 74(2007)3−14;Shen et al.,J.Immunological Methods 318(2007)65−74;およびWu et al.,Nature Biotech.25(2007)1290−1297)。
【0005】
少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合によって連結された二量体を優先的に合成するための方法、または該二量体を、少なくとも1つの鎖間ジスルフィド結合によって連結されたものでない二量体から(これらの2つの型のポリペプチド二量体を含む混合物から)分離するための方法がUS2005/0163782に報告されている。
【0006】
二重特異性抗体材料を、従来のハイブリッドハイブリドーマ法および化学的コンジュゲーション法を用いて充分な量と質で得ることは困難である。さらに、WO2005/062916および米国特許出願第2010/0105874号には、抗体「AA」と抗体「BB」を還元してジスルフィド結合を分離させ、1つの結合領域を有する1つの重鎖−軽鎖単位(AまたはB)(ここで、AとBはどちらも異なる標的に結合する。)にすることにより、どのようにして二重特異性抗体を形成するかが記載されている。このとき、該抗体ではジスルフィド結合の異性化が起こることが許容されており、そのため、抗体AB、BA、AAおよびBBが各々、約25%の確率で再形成される。しかしながら、ABとBAはどちらも同じ二重特異性抗体であり、従って、最大でも約50%の収率である。従って、これには、再構成された元の抗体から、形成された所望の二重特異性抗体を分離するためのさらなる工程が必要とされる。しかしながら、米国特許出願第2010/0105874号では、IgG4内のCPSC(配列番号1)の配列を有するヒンジ領域について言及され:「CPSC(配列番号1)配列により、より柔軟性のあるコアヒンジ、および鎖内ジスルフィド結合が形成される可能性がもたらされる…IgG4様コアヒンジ配列を有する抗体はジスルフィド結合の再構成に対して固有の活性を有しているかもしれないと考えられ、これを、本発明の方法で使用する条件によってシミュレーションする」と記載されている(段落0013)。また、抗体AとBの重鎖の配列を改変することにより作製された「ノブと穴(knob and hole)」構造を有する他の形態の二重特異性抗体も作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2001/077342号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0163782号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/062916号
【特許文献4】米国特許出願第2010/0105874号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Coloman et al.,Nature Biotech 15(1997)159−163
【非特許文献2】Morrison,Nature Biotech 25(2007)1233−1234
【非特許文献3】Holliger et al.,Nature Biotech 23(2005)1126−1136
【非特許文献4】Fischer and Leger,Pathobiology 74(2007)3−14
【非特許文献5】Shen et al.,J.Immunological Methods 318(2007)65−74
【非特許文献6】Wu et al.,Nature Biotech.25(2007)1290−1297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本開示により、抗体内の固定領域のアミノ酸配列を改変するノブホール(knob and hole)法よりもずっと高い二重特異性抗体の収率という当該技術分野における必要性に対処され、より良好な安定性を有する化学的に固定された二重特異性IgG抗体を作製するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示により、IgG1、IgG2もしくはIgG4クラスの抗体またはそのFab2断片「A」とIgG1、IgG2もしくはIgG4クラスの抗体またはそのFab2断片「B」から化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を創出するための方法を提供する。該方法は:
(a)第1の抗体「A」を、ヒンジ領域内の重鎖間の実質的にすべてのジスルフィド結合が切断されるのに充分な条件下で、還元剤と接触させ、各々が1本の重鎖に結合している1本の軽鎖を含むものである1対の第1の抗体断片A’を得ること、該重鎖は、前記ジスルフィド結合の該還元により形成された1個以上の反応性チオール基を有するものである;
(b)第1のヘテロ二官能性リンカーを第1の抗体断片A’に結合させ(ここで、第1のヘテロ二官能性リンカーは(i)第1の抗体断片A’の重鎖の反応性チオール基との共有結合のための第1のチオール反応性官能基および(ii)アジドを含むものである。)、アジド官能基化された第1の抗体断片を形成すること;
(c)第2の抗体「B」を、ヒンジ領域内の重鎖間の実質的にすべてのジスルフィド結合が切断されるのに充分な条件下で、還元剤と接触させ、各々が1本の重鎖に結合している1本の軽鎖を含むものである1対の第2の抗体断片B’を得ること、該重鎖は、前記ジスルフィド結合の該還元により形成された1個以上の反応性チオール基を有するものである;
(d)第2のヘテロ二官能性リンカーを前記第2の抗体断片B’に結合させ(前記第2のヘテロ二官能性リンカーは:(i)前記第2の抗体断片の前記重鎖の反応性チオール基との共有結合のための第2のチオール反応性官能基;および(ii)アルキンを含むものである。);アルキン官能基化された第2の抗体断片を形成すること;
(e)前記アジド官能基化された第1の抗体断片を前記アルキン官能基化された第2の抗体断片と反応させて、前記アジドと前記アルキンとの1,3−双極子付加環化によって前記第1の抗体断片を前記第2の抗体断片に共有結合させ、化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を形成すること
を含むものである。
【0011】
ヒンジ領域内のジスルフィド結合を還元する工程は好ましくは、重鎖と軽鎖間のジスルフィド結合が実質的に還元されることなく行われ、これにより、一部の実施形態では、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の切断後、かかる重鎖と軽鎖間のジスルフィド結合の少なくとも約90%または少なくとも約95%または少なくとも約99%がそのままで維持されていることを意図する。
【0012】
好ましくは、第1のヘテロ二官能性リンカーは形態Q−L−Nを有するものであり、ここで、Qはチオール反応性官能基であり、Lは炭化水素リンカーであり、Nはアジドである。好ましくは、チオール反応性官能基Qはアルキルハライド(例えば、アルキルクロライド、ブロミドもしくはアイオダイド)、ベンジルハライド、マレイミド、ハロ−マレアミド(ブロモマレイミド)またはジハロ−マレイミド(ジブロモマレイミド)である。好ましくは、Lは、QとN間に直結した鎖の3から60個(例えば、より典型的には6から50個)の原子を有する炭化水素リンカーである。より好ましくは、Lはポリアルキレンオキシド(PEF)基であるか、またはLは、各単量体単位が−(CHCH−O)−もしくは−(O−CHCH−(ここで、「n」は独立して1から20、より典型的には1から8の整数である。)であるポリマーである。
【0013】
好ましくは、第1のヘテロ二官能性リンカー(第1の抗体断片に結合)は:
【0014】
【化1】
であり、ここで、Qは、リンカーを抗体断片にライゲーションするのに適した任意の基であり得るが、好ましくは、重鎖のヒンジ領域内のシステイン残基のチオールと共有結合し得るものである。例示的なQ基は:
【0015】
【化2】
であり、ここで、Zは独立して、H、Br、IおよびSPhからなる群より選択される。好ましくは、少なくとも1つのZの存在はHではないが、マレイミドの場合、Zは各存在において水素であり得る。Mは独立してCRまたはNである。
【0016】
、X、X、X、XおよびXは独立して、結合(即ち、存在しない。)、−O−、−NR−、−N=C−、−C=N−、−N=N−、−CR=CR−(シスまたはトランス)、−C≡C−、−(C=O)−、−(C=O)−O−、−(C=O)−NR−、−(C=O)−(CH−、−(C=O)−O−(CH−、−(C=O)−NR−(CH−および−(C=O)−NR−(CHCH−O)−(ここで、「n」はゼロまたは1から10の整数のいずれかである。)からなる群より選択され;
、R、RおよびRは独立して、−O−、−NR−、−CH−、−(CH−、−(CR−、−(CHCH−O)−、−(CRCR−O)−、−(O−CHCH−、−(O−CRCR−、−CR=CR−(シスまたはトランス)、−N=C−、−C=N−、−N=N−、−C≡C−、−(C=O)−、−(CH−(C=O)−、−(C=O)−(CH−、−(CH−(C=O)−(CH−、−O−(C=O)−、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−O−、−(CH−(C=O)−O−、−O−(C=O)−(CH、−(C=O)−O−(CH−、−(CH−O−(C=O)−、−(CH−(C=O)−O−(CH−、−(CH−O−(C=O)−(CH−、−NR−(C=O)−、−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−O−、−O−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−NR−、−(CH−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−(CH、−(C=O)−NR−(CH−、−(CH−NR−(C=O)−、−(CH−(C=O)−NR−−(CH−、−(CH−NR−(C=O)−(CH−、−(C=O)−NR−(CHCH−O)−、−(CHCH−O)−(C=O)−NR−、−(CH−(C=O)−NR−(CHCH−O)−、−(CHCH−O)−(C=O)−NR−(CH−、および2から8員の環式炭化水素、複素環、アリール、またはヘテロアリール環;(ここで、「n」は独立してゼロまたは1から10の整数である。)からなる群より選択され;「l」、「p」、「q」および「r」は独立してゼロまたは1から10の整数であり;
Ωは結合(即ち、存在しない。)であるかまたは、C3−26の炭化水素環もしくは、場合により4個までの縮合環を含む縮合環系であるかのいずれかであり、各環は3から8個の構成員を有し、場合により各環内にO、SおよびNから選択される1から4個のヘテロ原子を含むものである。好ましくは、Ωは、シクロオクタン環に縮合しているか、または8員の複素環式の環もしくは環系に縮合している1,2,3−トリアゾール環であり;
およびRは独立して、各存在においてHであるか、またはC1−12炭化水素のいずれかであり、ハロゲン、O、SおよびNから選択される1から6個のヘテロ原子で場合により置換されており;ここで、任意の2つの基Rおよび/またはRは一体となって3から8員の環を形成していてもよい。
【0017】
第2のヘテロ二官能性リンカーは形態Q−L−Gを有するものであり、ここで、Qはチオール反応性官能基であり、Lは炭化水素リンカーであり、Gはアルキン含有基である。チオール反応性官能基Qは、アルキルハライド(例えば、アルキルクロライド、ブロミドもしくはアイオダイド)、ベンジルハライド、マレイミド、ハロ−マレアミド(ブロモマレイミドなど)およびジハロ−マレイミド(ジブロモマレイミドなど)からなる群より選択される。Lは、QとG間に直結した鎖の3から60個(例えば、好ましくは6から50個)の原子を有する炭化水素リンカーである。好ましくは、Lはポリアルキレンオキシド基(PEG)であり、好ましくは、Lは、単位−(CHCH−O)−または−(O−CHCH−(ここで、「n」は独立して1から20、より典型的には1から8の整数である。)のポリマーである。
【0018】
Gは、アジドとの付加環化を行い得る任意のアルキン含有基である。一部の実施形態では、Gは、−C≡CHなどの末端アルキンを含むものである。他の実施形態では、Gは、環内に−C≡C−結合を有する環または環系を含むものである。一実施形態では、Gは、−C≡C−結合を有するC8環を含むものである。一実施形態では、−C≡C−含有環はひずみを有するものである。
【0019】
第2のヘテロ二官能性リンカーは、形態:
【0020】
【化3】
を有するものである。
【0021】
Qは、第1のヘテロ二官能性リンカーのものと同じもの、または異なるものである。Qは典型的には、形態:
【0022】
【化4】
のチオール反応性基であり、
ここで、Zは独立して、各存在においてH、Br、IおよびSPhから選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つのZの存在はHではないが、マレイミドの場合、Zは各存在において水素であり得る。Mは独立して、各存在において、CRまたはNのいずれかである。
【0023】
Gは典型的には、アジドとの1,3双極子付加環化反応を行い得る−C≡C−結合を含むC8−20炭化水素基である。一部の実施形態では、Gは、形態−C≡C−Hを有するものである。他の実施形態では、Gは、−C≡C−結合を有する環を含むものである。特に、Gは、三重結合を有する8員環(例えば、シクロオクチン)を含むものであり得る。該環は場合により、1つ、2つまたはそれ以上のさらなる環に縮合しているものであってもよく、該さらなる環は典型的にはC3−6の環式炭化水素環、例えば、アリール、ヘテロアリールおよび複素環である。三重結合を含有している該8員環は、該環内に1個以上(例えば、1から4個)のヘテロ原子(窒素および酸素など)を含むものであってもよい。一実施形態では、該8員環は、該環内に窒素原子を含むものであり、これにより、以下:
【0024】
【化5】
に示す例示的な構造の場合のようなLとの結合点がもたらされる。
【0025】
好ましくは、Gは、形態:
【0026】
【化6】
を有するものであり、X、X、X、X、XおよびXは独立して、各存在において、結合(即ち、存在しない。)、−O−、−NR−、−N=C−、−C=N−、−N=N−、−CR=CR−(シスまたはトランス)、−C≡C−、−(C=O)−、−(C=O)−O−、−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−、−NR−(C=O)−O−、−(C=O)−(CH−、−(C=O)−O−(CH−、−(C=O)−NR−(CH−および−(C=O)−NR−(CHCH−O)−(「n」はゼロまたは1から10の整数のいずれかである。)からなる群より選択され;
、R、RおよびRは独立して、各存在において、−O−、−NR−、−CH−、−(CH−、−(CR−、−(CHCH−O)−、−(CRCR−O)−、−(O−CHCH−、−(O−CRCR−、−CR=CR−(シスもしくはトランス)、−N=C−、−C=N−、−N=N−、−C≡C−、−(C=O)−、−(CH−(C=O)−、−(C=O)−(CH−、−(CH−(C=O)−(CH−、−O−(C=O)−、−(C=O)−O−、−O−(C=O)−O−、−(CH−(C=O)−O−、−O−(C=O)−(CH、−(C=O)−O−(CH−、−(CH−O−(C=O)−、−(CH−(C=O)−O−(CH−、−(CH−O−(C=O)−(CH−、−NR−(C=O)−、−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−O−、−O−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−NR−、−(CH−(C=O)−NR−、−NR−(C=O)−(CH、−(C=O)−NR−(CH−、−(CH−NR−(C=O)−、−(CH−(C=O)−NR−−(CH−、−(CH−NR−(C=O)−(CH−、−(C=O)−NR−(CHCH−O)−、−(CHCH−O)−(C=O)−NR−、−(CH−(C=O)−NR−(CHCH−O)−、−(CHCH−O)−(C=O)−NR−(CH−、または2から8員の環式炭化水素、複素環、アリール、もしくはヘテロアリール環;(「n」は独立して、各存在において、ゼロまたは1から10の整数のいずれかである。)から選択され;「l」、「p」、「q」および「r」は独立して、ゼロまたは1から10の整数のいずれかであり;
Ωは結合(即ち、存在しない。)または、C3−26の炭化水素環もしくは、場合により4個までの縮合環を含む縮合環系であるかのいずれかであり、各環は3から8個の構成員を有し、場合により各環内にO、SおよびNから選択される1から4個のヘテロ原子を含むものである。一実施形態では、Ωは、シクロオクタン環に縮合しているか、または8員の複素環式の環もしくは環系に縮合している1,2,3−トリアゾール環を含むものである。
【0027】
およびRは独立して、各存在においてH、または、ハロゲン、O、SおよびNから選択される1から6個のヘテロ原子で場合により置換されているC1−12炭化水素のいずれかであり;ここで、2つの基Rおよび/またはRは一体となって3から8員の環を形成していてもよい。
【0028】
アジドとアルキン間の付加環化反応は1,3双極子付加環化反応によって進行し得る。該反応は銅イオンによって触媒され得る。一部の実施形態では、付加環化反応は中性pHまたは生理学的pHで行われる。
【0029】
本開示により、さらに、ヒンジ残基配列(EU−インデックスの番号付け:残基226から229;カバットの番号付け:残基239から242)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有する抗体「A」とヒンジ残基配列(残基226から229)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有する第2の抗体「B」を還元し、半抗体Aと半抗体Bを形成するための方法であって:
(a)各抗体Aと抗体Bを還元すること、ここで、還元条件は、ヒンジ残基配列(EU−インデックスの番号付け:残基226から229;カバットの番号付け:残基239から242)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有する各抗体のヒンジ領域内の任意の鎖間ジスルフィド結合または鎖内ジスルフィド結合を破壊するものである;
(b)
【0030】
【化7】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される化合物を;
半抗体Aのヒンジコア配列の一方または両方のCys残基(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ、連結部含有半抗体Aを形成すること;
(c)
【0031】
【化8】
からなる群より選択される化合物を、抗体Bのヒンジコア配列のCys残基226と229の一方または両方(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ、連結部含有抗体Bを形成すること;ならびに
(d)ほぼ等モル量の連結部含有抗体Aと連結部含有抗体Bを中性条件下でインキュベートし、連結された二重特異性抗体ABを形成すること
を含む方法を提供する。
【0032】
好ましくは、半抗体Aを形成するための抗体Aおよび半抗体Bを形成するための抗体Bの還元は還元剤中で行われ、該還元剤は、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、1個または2個のCys残基を有する抗体Aのヒンジ領域は:
【0033】
【化9】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有するA部分と連結させる。好ましくは、1個または2個のCys残基を有する抗体Bのヒンジ領域は:
【0034】
【化10】
からなる群より選択される構造を有するB部分と連結させ、連結部含有半抗体Bを形成させる。
【0035】
本開示により、さらに、連結部含有半抗体A
【0036】
【化11】
(Nは−N=N=Nである。)
が;
連結部含有抗体B
【0037】
【化12】
に連接されて図10に示す構造を有する二重特異性抗体ABを形成している、化学的に固定された二重特異性抗体ABを提供する。
【0038】
本開示により:
【0039】
【化13】
(Nは−N=N=Nであり、Zは脱離基である。)
からなる群より選択される構造を有する半抗体A;
と:
【0040】
【化14】
からなる群より選択される構造を有する半抗体B
を含むものである、IgGクラスの抗体「A」またはその断片とIgGクラスの抗体「B」に由来する化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を提供する。
【0041】
本開示により、さらに:
(a)抗体A由来の1本の重鎖と軽鎖を含む第1の抗体断片A’、該重鎖は1個以上の反応性チオール基を有するものである;
(b)1本の重鎖と軽鎖を含む第2の抗体断片B’、該重鎖は1個以上の反応性チオール基を有するものである、
を含むものであり;
前記第1の抗体断片と第2の抗体断片は、リンカーを介して前記第1の抗体断片の反応性チオールに結合しているアジドとリンカーを介して前記第2の抗体断片の反応性チオールに結合しているアルキンとの付加環化反応により形成された1,2,3−トリアゾールによって共有結合されている、二重特異性抗体を提供する。該リンカーは上記のものである。抗体断片A’およびB’は、IgG1、IgG2またはIgG4免疫グロブリンまたはそのFab2断片に由来するものである。
【0042】
本開示により、さらに、リンカーに共有結合された抗体断片であって、該リンカーが、アジドとの付加環化反応を行い得る−C≡C−結合を有するC8環を含むものである抗体断片を提供する。本開示により、さらに、リンカーに共有結合された抗体断片であって、該リンカーが、−C≡C−結合との付加環化反応を行い得るアジドを含むものである抗体断片を提供する。
【0043】
好ましくは、半抗体Aを形成するための抗体Aおよび半抗体Bを形成するための抗体Bの還元は還元剤中で行われ、該還元剤は、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、1個または2個のCys残基を有する抗体Aのヒンジ領域は:
【0044】
【化15】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有するA部分により;
半抗体Aのヒンジコア配列の一方または両方のCys残基(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ、連結部含有半抗体Aを形成する;
(c):
【0045】
【化16】
からなる群より選択される化合物を、抗体Bのヒンジコア配列のCys残基226と229の一方または両方(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ、連結部含有抗体Bを形成すること;ならびに
(d)ほぼ等モル量の連結部含有抗体Aと連結部含有抗体Bを中性条件下でインキュベートし、連結された二重特異性抗体ABを形成すること。
【0046】
好ましくは、半抗体Aを形成するための抗体Aおよび半抗体Bを形成するための抗体Bの還元は還元剤中で行われ、該還元剤は、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、1個または2個のCys残基を有する抗体Aのヒンジ領域を:
【0047】
【化17】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有するA部分と連結させる。好ましくは、1個または2個のCys残基を有する抗体Bのヒンジ領域を:
【0048】
【化18】
からなる群より選択される構造を有するB部分と連結させ、連結部含有半抗体Bを形成する。
【0049】
本開示により、さらに、連結部含有半抗体A
【0050】
【化19】
(Nは−N=N=Nである。)
が;
連結部含有抗体B
【0051】
【化20】
に連接されて図10に示す構造を有する二重特異性抗体ABを形成している、化学的に固定された二重特異性抗体ABを提供する。
【0052】
本開示により:
【0053】
【化21】
(Nは−N=N=Nであり、Zは脱離基である。)
からなる群より選択される構造を有する半抗体A、および該半抗体Aと結合させる;
【0054】
【化22】
からなる群より選択される構造を有する半抗体B
を含むものである、IgGクラスの抗体「A」とIgGクラスの抗体「B」に由来する化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内の1個のCys残基への化学的コンジュゲーションによる二重特異性mAbの創出のセットアップの概略図を示す。
図2図2は、本明細書における開示によるIgGクラスの抗体のヒンジ領域内の1個のCys残基への化学的コンジュゲーションによる鎖間架橋の概略表示を示す。
図3図3は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内の2個のCys残基との鎖内架橋の概略表示を示す。
図4図4は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内の2個のCys残基との鎖間架橋による二重特異性mAbの創出の概略表示(上および下)を示す。図4は、配列番号1として「CPSC」を開示する。
図5図5は、化学的に固定された半mAb断片のSDS PAGE分析を示す。
図6図6は、未加工の(naked)mAbのHC Fab(上)、アジドコンジュゲートmAb断片(中央)およびアルキンコンジュゲートmAb断片(下)のMS分析を示す。図6は、配列番号3として「SPPC」を開示する。
図7図7は、アジド結合半mAbとアルキン結合半mAb断片による架橋生成物のSDS PAGEを示す。図7は、配列番号4として「SPSC」を開示する。
図8図8は、出発mAbの(Fab)(上)および架橋生成物(下)のMS分析を示す。図8は、配列番号3として「SPPC」を開示する。
図9図9は、本明細書の実施例4で作製した化学修飾半抗体断片(レーン2および3)の非還元SDS PAGEを示す。
図10図10は、2種類の半抗体断片間のクリックコンジュゲーションによる二重特異性抗体の創出を示す。
図11図11は、半抗体断片(a)およびクリック生成物(b)の非還元SDS PAGEを示す。半抗体−アジドはゲル(a)のレーン2であり、半抗体−DBCOはゲル(a)のレーン3である。クリック生成物はゲル(b)のレーン2である。
図12図12は、二重特異性抗体CBA−0710の質量を示すIdeS消化クリック生成物の質量スペクトルを示す。
図13図13は、二重特異性抗体CBA−0710のSECサイズ排除クロマトグラフィーを示す。
図14図14は、BIAcoreでの二重特異性抗体CBA−0710の結合を示す。より詳しくは、図14は、BIAcoreでの二重特異性抗体CBA−0710の2種類の抗原との同時結合を示す2。
図15図15は、トリプルネガティブ乳がん細胞MDA−MB−231との二重特異性抗体CBA−0710の結合を示す。この細胞は抗原−1と抗原−2の両方を発現する。STI−A0607は抗−抗原−1モノクローナル抗体であり、STI−A1010は抗−抗原−2モノクローナル抗体である。
図16図16は、トリプルネガティブ乳がん細胞における二重特異性抗体CBA−0710の拮抗的活性を示す。STI−A0607は抗−抗原−1モノクローナル抗体であり、STI−A1010は抗−抗原2モノクローナル抗体である。HGFは抗原−1の天然リガンドである。
図17図17は、二重特異性抗体CBA−0710に応答したIFN−γ放出の増大を示す。STI−A1010は抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。競合mAbはヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。
図18図18は、二重特異性抗体CBA−0710に応答したIL−2放出の増大を示す。STI−A1010は抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。競合mAbはヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。
図19図19は、通常の抗−c−Met IgG1抗体および抗−PD−L1 IgG1抗体と比べてAの抗−c−Met抗体とBの抗−PD−L1抗体で構成された化学的に固定された二重特異性抗体での有効性の改善を示す。
図20図20は、化学的コンジュゲーションによる二重特異性F(ab)’の創出の概略図を示す。
図21図21は、F(ab)’2とF(ab)’のSDS_PAGEゲル分析を示す。1列目は、IdeSで消化した抗体Aである。2列目は、IdeSで消化した抗体Bである。3列目は、消化し、FCを除去した抗体Aである。4列目は、消化し、FCを除去した抗体Bである。5列目は、消化し、FCを除去し、2MEAとTCEPで還元し、DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Aである。6列目は、消化し、FCを除去し、2MEAとTCEPで還元し、アジド−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Bである。
図22図22は、2種類のF(ab)’断片間のクリックコンジュゲーションによるF(ab)’化学的に固定された二重特異性抗体の創出の模式図を示す。
図23図23は、本明細書の実施例7によるクリックF(ab)’2のSECを示す。
図24図24は、クリック二重特異性F(ab)’断片のSDS PAGE分析を示す。1列目は、消化し、FCを除去し、2MEAとTCEPで還元し、DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Aである。2列目は、消化し、FCを除去し、2MEAとTCEPで還元し、アジド−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Bである。3列目はクリック_二重特異性F(ab)’である。
図25図25は、二重特異性F(ab)’の質量を示すクリック生成物の質量スペクトルを示す。
図26図26は、クリックF(ab)’2のSECを示す。
図27図27は、Octet Redでの二重特異性F(ab)’の2種類の抗原との同時結合を示す。
図28図28は、化学的コンジュゲーションによる二重特異性IgG2の創出の概略図を示す。
図29図29は、IgG2断片のSDS PAGE分析を示す。1列目は抗体Aである。2列目は、TCEPで還元し、アジド−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Aである。3列目は抗体Bである。4列目は、TCEPで還元し、アジド−マレイミドとコンジュゲートさせた抗体Bである。
図30A図30Aは、リンカーとコンジュゲートさせたIgG2_Aの質量を示す質量スペクトルを示す。
図30B図30Bは、リンカーとコンジュゲートさせたIgG2_Bの質量を示す質量スペクトルを示す。
図30C図30Cは、IgG2_AとBで形成した二重特異性のIgG2の質量を示す質量スペクトルを示す。
図31図31は、IgG2_A、IgG2_Bおよびクリック生成物のSECを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
二重特異性抗体(BsAb)は、ヒンジ領域で化学結合された2種類の半抗体断片で構成されている(図1)。出発抗体はIgG1またはIgG4アイソタイプのいずれかである。出発抗体は、Cys残基をまずSerに変異させ、ヒンジのジスルフィドを1つだけにした修飾ヒンジ領域を含むものであってもよい。二重特異性抗体の創出は3つの主要な工程を伴う。第1工程は、半抗体断片を形成するための抗体AとBの両方の選択的還元である。第2工程は、それぞれ化学修飾された半抗体断片A’とB’がもたらされる、システインベースでのコンジュゲーションによる各半抗体断片のヒンジ領域内への官能性部分XまたはYの導入である。最後の工程では、この2種類の半抗体断片を、X部分とY部分間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体を形成する。
【0057】
本開示により、IgGクラスの抗体「A」とIgGクラスの抗体「B」に由来する化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を創出するための方法であって:
(a)ヒンジ残基配列(EU−インデックスの番号付け:残基226から229;カバットの番号付け:残基239から242)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有する第1の抗体「A」とヒンジ残基配列(EU−インデックスの番号付け:残基226から229;カバットの番号付け:残基239から242)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有する第2の抗体「B」を還元し、半抗体Aと半抗体Bを形成すること、ここで、抗体Aは第1の標的に結合するものであり、抗体Bは第2の標的に結合するものであり、還元条件は、ヒンジ残基配列(残基226から229)CPPC(配列番号2)またはCPSC(配列番号1)またはSPPC(配列番号3)またはSPSC(配列番号4)を有するクラスの抗体のヒンジ領域内の任意の鎖間ジスルフィド結合または鎖内ジスルフィド結合を破壊するものである;
(b)式Iの化合物を、半抗体Aのヒンジコア配列の1個または2個のCys残基(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ:
【0058】
【化23】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有する連結部含有半抗体Aを形成すること;
(c)式IIの化合物を、抗体Bのヒンジコア配列の1個または2個のCys残基(EU−インデックスの番号付け:残基226および229;カバットの番号付け:残基239および242)に連結させ:
【0059】
【化24】
からなる群より選択される構造を有する連結部含有抗体Bを形成すること;ならびに
(d)ほぼ等モル量の連結部含有抗体Aと連結部含有抗体Bを中性条件下でインキュベートし、連結された二重特異性抗体ABを形成すること
を含む方法を提供する。
【0060】
好ましくは、半抗体Aを形成するための抗体Aおよび半抗体Bを形成するための抗体Bの還元は還元剤中で、例えば、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせ中で行われる。好ましくは、2個のCys残基を有する抗体Aのヒンジ領域は:
【0061】
【化25】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有するA部分と連結させる。好ましくは、2個のCys残基を有する抗体Bのヒンジ領域は:
【0062】
【化26】
からなる群より選択される構造を有するB部分と連結させる。
【0063】
本開示により、さらに、連結部含有半抗体A
【0064】
【化27】
(Nは−N=N=Nである。)
が;
連結部含有抗体B
【0065】
【化28】
に連接されて図10に示す構造を有する二重特異性抗体ABを形成している、化学的に固定された二重特異性抗体ABを提供する。
【0066】
本開示により:
【0067】
【化29】
(Nは−N=N=Nである。)
からなる群より選択される構造を有する半抗体A;
と:
【0068】
【化30】
からなる群より選択される構造を有する半抗体B
を含むものである、IgGクラスの抗体「A」とIgGクラスの抗体「B」に由来する化学的に固定された二重特異性抗体「AB」または「BA」を提供する。好ましくは、半抗体Aを形成するための抗体Aおよび半抗体Bを形成するための抗体Bの還元は還元剤中で、例えば、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせ中で行われる。
【0069】
好ましくは、抗体AおよびBはモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって、または組換えDNA法とタンパク質発現法によって作製され得る。さらに、抗体AおよびBは完全長の抗体であるか、または抗体断片である。
【0070】
抗体AおよびBは、CPPC(配列番号2)コアヒンジ領域配列またはCPSC(配列番号1)コアヒンジ領域配列またはSPPC(配列番号3)コアヒンジ領域配列またはSPSC(配列番号4)コアヒンジ領域配列(EU−インデックスの番号付け:残基226から229;カバットの番号付け:残基239から242)を有するものである。さらに、インキュベートする工程(d)は還元剤を添加する工程をさらに含むものであり、この場合、還元剤は、L−システイン、ジチオトレイトール、β−メルカプトエタノール、システアミン、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)、2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)およびその組み合わせからなる群より選択される。
【0071】
得られた二重特異性抗体の品質と純度は、常套的な生化学的手法、例えば、吸光度の測定、HP−SEC、SDS−PAGE、非変性PAGEおよびRP−HPLCを用いて分析することができる。本開示の方法では一般的に、式Iのリンカーの式IIのリンカーに対する親和性の特異性のため、任意の精製工程が回避されることに注意されたい。しかしながら、種々の精製工程がUS2010/0105874に示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
本開示の方法はさらに、二重特異性抗体を治療的使用のために製剤化する工程を含むものである。この治療的使用は、ヒトへの使用に適した、特に非経口または静脈内投与に適した水溶液中に有効量の二重特異性抗体を含む製剤によってなされる。
【0073】
図2は、化学的コンジュゲーションによる二重特異性のモノクローナル抗体(mAb)を創出するためのスキームを示す。本明細書に記載の二重特異性mAbは、ヒンジ領域で化学結合された2種類の半抗体断片で構成されている。二重特異性mAbの創出方法は、3つの主要な工程を伴う(図2)。第1工程は、2種類の異なるmAb、それぞれAとBのヒンジ内のジスルフィドの選択的還元である。第2工程は、各mAbの同じ重鎖上の2つのシステイン間へのリンカーXまたはYによる鎖内結合の導入である。この鎖内結合過程により、2種類の化学的に固定されたmAb断片A’およびB’がもたらされる。最後の工程では、この2種類のmAb断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体ABを形成する。
【0074】
ヒンジ内変異(CPSC(配列番号1))を有するIgG1、wt IgG4およびヒンジ内変異(SPSC(配列番号4))を有するIgG4を本試験において使用した。
【0075】
第1工程は、抗体Aおよび抗体Bの各々を還元するためのものである。一実施形態において、抗体(10mg)を、10モル当量の2−メルカプトエチル−アミン(2−MEA)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で37℃にて2時間処理した。過剰の2−MEAを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。タンパク質濃度は、1.0mg/mLの溶液で280nmにおいて1.58の吸光度値を用いて定量し、モル濃度は、150,000g/molの分子量を用いて測定した。
【0076】
還元工程の別の実施形態では、抗体(10mg)を、3.0モル当量のジチオトレイトール(DTT)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。過剰のDTTを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。
【0077】
還元工程の別の実施形態では、mAb(10mg)を、2.0モル当量のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)(0.1MのPBS(pH8.0)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。mAb濃度は8.0mMであった。精製せずに、部分還元mAbをコンジュゲーション工程に直接使用した。
【0078】
第2工程はコンジュゲーション工程である。還元工程による部分還元mAbである「抗体A」(0.1MのPBS中)を2.5モル当量の架橋剤Z−X−Zに添加した(図2および図3)。架橋剤は、予備調製したストック溶液(DMSO中)(1mg/mL)で使用した。反応混合物中、部分還元抗体濃度は8.0mg/mLであり、DMSO含有量は5%(v/v)であった。コンジュゲーションは24℃で2時間行った。システイン(1mM終濃度)を使用し、任意の未反応の過剰の架橋剤をクエンチした。コンジュゲートmAbを、リン酸緩衝生理食塩水で平衡化したPD−10カラムを用いて精製した。コンジュゲートmAbの構造を図4に示す。同じ条件下で、第2のmAb(抗体B)を架橋剤Z−Y−Zとコンジュゲートさせ(図5および図6)、精製した。コンジュゲートmAbの構造を図7および図8に示す。
【0079】
第3工程は鎖間コンジュゲーション工程である。鎖間架橋のためのクリックコンジュゲーションを図9に示す。簡単には、アジド修飾抗体断片(3.0mg)(0.5mLのPBS(0.1M、pH7.4)中)に、3.0mgのアルキン修飾抗体断片(0.5mLのPBS(0.1M、pH7.4)中)を添加する。この混合物に50μLのアセトニトリルを添加し、アセトニトリルの最終含有量を5%(v/v)にする。室温で3時間の反応後、混合物を、100kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行う。)を用いて精製する。混合物をPBSで3回洗浄し、得られた生成物をインビトロ特性評価に供する。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
この実施例は、本開示の方法による二重特異性抗体の合成を示す。図4は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内の2個のCys残基への化学的コンジュゲーションによる二重特異性のモノクローナル抗体(mAb)を創出するためのスキームを示す。本開示の二重特異性mAbは、そのそれぞれのヒンジ領域で化学結合されている2種類の半抗体断片で構成されている。二重特異性mAbを合成するための方法は、図5に示す3つの主要な工程を伴う。第1工程は、2種類の異なるmAb、それぞれAとBのヒンジ内のジスルフィドの選択的還元である。第2工程は、各mAbの同じ重鎖上の2つのシステイン間へのリンカーXまたはYによる鎖内結合の導入である。この鎖内結合過程により、2種類の化学的に固定されたmAb断片A’およびB’がもたらされる。最後の工程では、この2種類のmAb断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体ABを形成する。
【0081】
より詳しくは、本発明者らは、ヒンジ内変異(CP(配列番号1))を有するIgG1である抗体「A」と野生型IgG4である抗体「B」を入手した。第1工程は抗体の還元であった。条件1:抗体(10mg)を別々に、10モル当量の2−メルカプトエチル−アミン(2−MEA)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で37℃にて2時間処理した。過剰の2−MEAを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。タンパク質濃度は、1.0mg/mLの溶液で280nmにおいて1.58の吸光度値を用いて定量し、モル濃度は、150,000g/molの分子量を用いて測定した。
【0082】
条件2:抗体(10mg)を、3.0モル当量のジチオトレイトール(DTT)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。過剰のDTTを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。
【0083】
条件3:mAb(10mg)を、2.0モル当量のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)(0.1MのPBS(pH8.0)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。mAb濃度は8.0mMであった。精製せずに、部分還元mAbをコンジュゲーションに直接使用した。
【0084】
[実施例2]
この実施例は、実施例1で作製した二重特異性抗体が元の半Mabの両方の結合特性を保持していたことを示す。
【0085】
【化31】
1−(2−(2−アジドエトキシ)エチル)−3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオンの合成:
2.5gの3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオン(10mmol)と1gのNMM(60mLのTHF中)にMeOCOCl(10mmol、10mlのDCM中940mg)を滴下し、20分間撹拌し、次いで、反応溶液を6omLのDCMで希釈し、水で3回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムによって撹拌し、濃縮し、2.65gの3,4−ジブロモ−2,5−ジオキソ−2H−ピロール−1(5H)−カルボン酸メチルを得た。311mg(1mmol)のこの化合物に、2−(2−アジドエトキシ)エタンアミン(130mg、1mmol)と5mLのDCMを添加し、TLCにより反応が20分で終了したことが示され、次いでDCMとブラインによって抽出し、NHCl溶液によって洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いでカラム精製のために濃縮し、2:1のヘキサンとエチルエチラートによりフラッシングし、230mgの1−(2−(2−アジドエトキシ)エチル)−3,4−ジブロモ−1H−ピロール−2,5−ジオンを得た。HNMR:3.32ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.40ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.50ppm(q,J=5.0Hz,1H)、3.62ppm(t,J=5.0Hz,1H)、3.63−3.69ppm(m,3H)、3.84ppm(t,J=5Hz,1H).Fw:365.9、CBr;質量ピーク(1:2:1):366.9、368.9、370.9。
【0086】
[実施例3]
この実施例は、IgGクラスの抗体のヒンジ領域内に存在する1個のCys残基を用いた二重特異性抗体の化学的創出を示す。本明細書に記載の出発mAbは改変ヒンジ領域を含むものであり、この改変ヒンジ領域では、各鎖上の同じ位置の1個のCysがSerに変異され、従ってヒンジはジスルフィドが1つだけになっている。二重特異性mAbの創出方法は3つの主要な工程を伴う(図1)。第1工程は、2種類の異なるmAb、それぞれAとBのヒンジ内のジスルフィドの選択的還元である。第2工程は、システインベースでのコンジュゲーションによる官能性部分XまたはYの導入である。このCys連結工程により2種類の化学的に固定されたmAb断片A’およびB’がもたらされる。最後の工程では、この2種類のmAb断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性抗体ABを形成する。この試験では、ヒンジ領域内変異(PPC(配列番号3))を有するIgG1モノクローナル抗体を使用した。
【0087】
条件1:抗体(10mg)を、10モル当量の2−メルカプトエチル−アミン(2−MEA)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で37℃にて2時間処理した。過剰の2−MEAを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。タンパク質濃度は、1.0mg/mLの溶液で280nmにおいて1.58の吸光度値を用いて定量し、モル濃度は、150,000g/molの分子量を用いて測定した。
【0088】
条件2:抗体(10mg)を、3.0モル当量のジチオトレイトール(DTT)(0.1MのPBS(pH7.4)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。過剰のDTTを部分還元mAbから、50kDa遠心濾過チューブ(遠心分離は3,000RPMで20分間行った。)を用いて精製して除去した。0.1MのPBSで合計3回の洗浄を行った。
【0089】
条件3:mAb(10mg)を、2.0モル当量のトリス(2−カルボキシエチル)−ホスフィン(TCEP)(0.1MのPBS(pH8.0)中)、1.0mMのジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)で24℃にて2時間処理した。mAb濃度は8.0mMであった。精製せずに、部分還元mAbをコンジュゲーションに直接使用した。
【0090】
[実施例4]
この実施例は、本明細書に開示の方法による、本開示の化学連結構造体が各半抗体断片のヒンジ領域を互いに連結している二重特異性抗体の作製方法を示す。この抗体の骨格は:ヒンジ内変異(PSC(配列番号4))を有するIgG4であった。
【0091】
本発明者らは、まず各Ig抗体を、半抗体を創出するために化学修飾により修飾した。具体的には、バッファー交換反応で抗体(0.5から3mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore、UFC903024)に添加し、適切な容量のpH8.0のPBS 1mMのDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。このチューブを3,000RPMで20分間、5℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度をNanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は5から8mg/mLの間であった。
【0092】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(1.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。本発明者らは以下の表を使用し、バッファー交換後に回収された抗体の当量数および結果としての質量に応じて抗体に添加する必要があるTCEP溶液の容量を計算した。
【0093】
【表1】
【0094】
適切な容量のTCEP溶液(上記の表によって計算)を抗体溶液に添加し、軽くボルテックスし、バイアルをカルーセル上に配置した。還元反応を室温で90分間行った。
【0095】
DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を、上記の表からの計算に基づいて調製した。このDBCO−マレイミドのDMSO溶液を抗体試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM,カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、5℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れた。
【0096】
IgG4抗体では、4.0当量のTCEPで大量の半抗体が得られた。IgG1抗体では、3.5当量のTCEPで大量の半抗体が得られた。どちらの型の抗体の場合も5.0当量のDBCOを使用した。
【0097】
DBCO−マレイミド(1.0mg、1.0当量)のDMSO(0.12mL)溶液にアジド−PEG4−アジド(2.5mg、5.0当量)(DMSO(0.6mL)中)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。反応はLC/MSによって示されたときに終了した。得られたアジド−マレイミドの分子量は627.65g/molであった。アジド−マレイミドの合成(スキーム1)
【0098】
【化32】
【0099】
スキーム1.アジド−マレイミドの合成
アジド−マレイミド(5.0当量)(DMSO中)を抗体試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。試料を先に記載のとおりに洗浄した。
【0100】
各半抗体断片を疎水性相互作用カラム(HIC)によって精製した。HICアッセイは、TOSOHブチル−NPRカラムを用いて40℃のカラム温度および0.6mL/分の流速で行った。溶出は、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)中、30分間で塩濃度を低下させ(1.5から0Mまでの硫酸アンモニウム)、有機調整剤を増大させる(0%から25%までのイソプロピルアルコール)勾配で行った。半抗体断片をSDS PAGEによって分析した。具体的には、分析対象の各試料について0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。本発明者らは、SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った。図9は、化学修飾半抗体断片の非還元SDS PAGE(レーン2および3)を示す。
【0101】
[実施例5]
この実施例は、クリック反応による二重特異性抗体の創出を示す。図10は、2種類の半抗体断片間のクリックコンジュゲーションによる二重特異性抗体の創出を示す。2種類の半抗体断片間のクリック反応を図10に示す。半抗体−アジド断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))に半抗体−DBCO断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))を添加した。反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。混合物をSDS PAGE分析(図11)およびイオン交換クロマトグラフィーによる精製に供した。
【0102】
二重特異性抗体を、Thermo WCX−10カラムを使用したAgilent 1200 HPLCにて0.6mL/分の流速で精製した。溶出は、10mMのMESバッファー(pH5.7)中、30分間で塩濃度を増大させる(0から100mMまでのNaCl)勾配で行った。二重特異性抗体STI CBA−0710をIdeSプロテアーゼによって消化させ、Water Xevo G−2 QTOF質量分析で分析し、確認した(図12)。
【0103】
二重特異性抗体STI CBA−0710の生物理学的特性を、二重特異性抗体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって調べた(図13)。具体的には、二重特異性抗体を、TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したAgilent 1200 HPLCで分析した。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl(pH6.2)にした。
【0104】
【表2】
【0105】
図14は、BIAcoreでの二重特異性抗体CBA−0710の結合を示す。第1の抗原をCM5センサーチップ上におよそ1500RUまで、標準的なNHS/EDCカップリング方法論を用いて固定化した。ベースラインのためにバッファーを流した。二重特異性抗体、続いてバッファーを負荷し、次いで第2の抗原に対する結合を行った。
【0106】
[実施例6]
この実施例は、本明細書において作製した二重特異性抗体についての種々のアッセイ結果を示す。二重特異性抗体の細胞ベースの結合と機能がみられる。二重特異性抗体CBA−0710はMDA−MB−231(ヒト乳がん)細胞に結合した(図15)(フローサイトメトリーによってアッセイ)。抗体のEC50値を調べた。抗原−1と抗原−2の両方を発現しているMDA−MB−231トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞を、無酵素細胞解離バッファー(GIBCO)を用いて収集し、V字底96ウェルプレート(50,000細胞/ウェル)に移した。細胞を氷上で45分間、二重特異性抗体CBA−0710、または親の単一特異性抗−抗原−1抗体もしくは抗−抗原−2抗体のいずれかの連続希釈物とともに、FACSバッファー(PBS+2%FBS)+NaN中でインキュベートした。FACSバッファー中で2回の洗浄後、フィコエリトリンコンジュゲート抗−ヒトIgG(γ−鎖特異的)の1:1000希釈物を添加し、30分間インキュベートした。最後の洗浄後、蛍光強度をIntellicyt High Throughput Flow Cytometer(HTFC)で測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアおよび非線形回帰フィットを用いて解析した。データ点を、陽性標識細胞の蛍光強度中央値(MFI)+/−標準誤差として示す。EC50値は、細胞に対する最大結合の50%が達成される抗体濃度として報告する。
【0107】
結果を表3および図15に示す。結果は、MDA−MB−231細胞に対する二重特異性抗体の結合が、親の型と比べて改善されたことを示し、抗−抗原−2抗体と同様のサブナノモルのEC50値および抗−抗原−1抗体と同程度に高い結合強度を示す。
【0108】
【表3】
【0109】
二重特異性抗体CBA−0710の拮抗的活性が示された。具体的には、二重特異性抗体CBA−0710によるc−METリン酸化の阻害を、PathScan(R)Phospho−Met(panTyr)Sandwich ELISA Kit #7333プロトコルに従って行った。簡単には、細胞ライセートを添加し、検出抗体を再構成し、インキュベートした後、再構成したHRP結合二次抗体を添加した。洗浄後、TMB基質を添加し、インキュベートした。停止溶液を添加した後、結果の読み取りを行った。図16は、トリプルネガティブ乳がん細胞における二重特異性抗体CBA−0710の拮抗的活性を示す。STI−A0607は抗−抗原−1モノクローナル抗体であり、STI−A1010は抗−抗原2モノクローナル抗体である。HGFは抗原−1の天然リガンドである。
【0110】
二重特異性抗体CBA−0710の免役調節活性がみとめられた。二重特異性抗体CBA−0710がT細胞応答性を調節する能力を測定するため、精製CD4+細胞を同種異系樹状細胞(単球をGM−CSFおよびIL−4中で7日間培養することによって調製)とともに培養した。パラレルプレートを、3日目と5日目に上清みを収集して市販のELISAキットを用いてIL−2およびIFNγのそれぞれを測定することが可能なようにセットアップした。競合ヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)mAbを自社で作製して陽性対照IgG1として使用し、無関連のSTIヒトmAbを陰性対照IgG抗体として使用した。図17は、二重特異性抗体CBA−0710に応答したIFN−γ放出の増大を示す。STI−A1010は抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。競合mAbはヒト化抗−抗原−2(免疫チェックポイント)モノクローナル抗体である。
【0111】
[実施例7]
この実施例は、F(ab)’抗体A’とB’を用いて本開示の二重特異性抗体を合成するためのスキームを示す。本明細書に記載の二重特異性F(ab)’は、ヒンジ領域で化学結合された2種類のF(ab)’断片で構成されている(図20)。出発抗体はIgG1またはIgG4アイソタイプのいずれかである。出発抗体は修飾ヒンジ領域を含むものであり、この修飾ヒンジ領域ではCys残基がSer残基に変異され、ヒンジ領域のジスルフィドが1つだけになっている。二重特異性F(ab)’の化学的に固定された二重特異性抗体の創出は4つの主要な工程を伴う。第1工程はFc断片の除去である。第2工程は、それぞれ抗体AとBの選択的還元である。第3工程は、システインベースでのコンジュゲーションによるヒンジ領域内への官能性部分XまたはYの導入により、それぞれ化学修飾された抗体断片A’とB’をもたらすことである。最後の工程では、2種類の抗体断片を、XとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性F(ab)’を形成する。この合成のスキームを図21に示す。
【0112】
具体的には、本発明者らは、F(ab)’の化学的に固定された二重特異性抗体の合成方法を、ヒンジ内変異(PPC(配列番号3))を有するIgG1 A抗体とヒンジ内変異(PSC(配列番号4))を有するIgG4 B抗体を用いて行った。酵素IdeS(これは、IgGのみをヒンジ領域より下の特定の1つの部位で切断する消化酵素である。)を使用し、抗体(1.5mg)をIdeS(A0−FR1−008)の各チューブに添加し、37℃で一晩、ヘッド・トゥ・ヘッド型スピナー内でインキュベートした。次いで、Fc断片を、プロテインA精製を用いて除去した。
【0113】
抗体(1から10mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)に添加し、適切な容量の50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーをチューブの50mLの印まで添加した。チューブを3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度を、Nanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は10mg/mLまでであった。
【0114】
1mLの50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーを、6mgの2−メルカプトエチルアミン・HClを入れた1つのバイアルに添加した(50mM 2−MEAになった。)。50mM 2−MEAをF(ab)’終濃度15mMまで添加し、充分に混合した。37℃で15分間インキュベートした。2−MEAを還元されたF(ab)’から、NAP−5(GE17−0853−02)脱塩カラムを用いて分離した。
【0115】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(1.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。プロテインA精製後に回収されたF(ab)’の当量数および結果としての質量にもよるが、5当量のTCEPを脱塩F(ab)’に添加して充分に振盪し、室温で5分間インキュベートした。
【0116】
DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドとアジド−マレイミドのコンジュゲーションのため、DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を調製し、20当量のDBCO−マレイミドのDMSO溶液をF(ab)’(A)試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。アジド−マレイミド(20当量)のDMSO溶液をF(ab)’(B)試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で2時間、カルーセルによる混合下で行った。
【0117】
洗浄工程のため、各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM、カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れるか、またはクリック工程に使用した。F(ab)’断片の分析のため、SDS PAGE手順を使用した。各試料を分析するためには、0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った(図21)。
【0118】
2種類のF(ab)’断片間のクリック反応のスキームを図23に示す。F(ab)’−アジド断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))にF(ab)’−DBCO断片(500μg)(PBS中(5.0mg/mL))を添加した。反応を室温で一晩、カルーセルによる混合下で行った。混合物をSEC分析に供した(図24)。
【0119】
この実施例で作製した二重特異性抗体の生物理学的特性をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて調べた。TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLCを使用し、F(ab)’_A、F(ab)’_Bおよび二重特異性Click_F(ab)’を分析した(図24)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。
【0120】
二重特異性F(ab)’を質量分析によって確認した。二重特異性F(ab)’をWater Xevo G−2 QTOF9で分析した(図25)。二重特異性F(ab)’をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて精製した。TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLCを使用し、二重特異性Click_F(ab)’を精製した(図26)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。
【0121】
インビトロ親和性の測定はOctet Redを使用するものにした(図27)。センサーAR2Gを使用し、二重特異性F(ab)’の抗原との相互作用をOctet Red(ForteBio,Inc.)で測定した。簡単には、測定スキームを以下のとおりにした:300秒間のベースライン;300秒間の10μg/mlの二重特異性F(ab)’の負荷、120秒間のベースライン;300秒間の抗原A;300秒間の解離;300秒間の抗原Bおよび300秒間の解離(図27)。センサーの湿潤ならびにベースラインおよび解離の測定はPBS中で実施した。
【0122】
[実施例8]
この実施例は、IgG2抗体A’とB’を用いて本開示の二重特異性抗体を合成するためのスキームを示す。本明細書に記載の二重特異性IgG2は、ヒンジ領域で化学結合された2種類のIgG2断片で構成されている(図29)。出発抗体はIgG2アイソタイプである。二重特異性IgG2の創出は3つの主要な工程を伴う。第1工程は、まだホモ二量体構造を維持しているIgG2抗体のヒンジ領域内の(4つのうちの)1つまたは2つのジスルフィド結合の還元である。第2工程は、システインベースでのコンジュゲーションによるヒンジ内への官能性部分XまたはYの導入により、それぞれ化学修飾された抗体断片A’とB’をもたらすことである。最後の工程では、この2種類の抗体をXとY間の化学ライゲーションによって一体に連結させ、二重特異性_IgG2を形成する。
【0123】
具体的には、本発明者らは、IgG2化学的に固定された二重特異性抗体の合成方法を行った。抗体(1から10mg)を15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)に添加し、適切な容量の50mMのリン酸ナトリウム、150mMのNaCl、5mMのEDTAのpH7.7のバッファーをチューブの50mLの印まで添加した。チューブを3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。抗体を1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、濃度を、Nanodrop(Fisher,ND−2000 UV−Vis分光光度計)を用いて確認した。最終抗体濃度は10mg/mLまでであった。
【0124】
1mg/mLのTCEP((トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン))、Sigma−Aldrich,C4706)のpH8.0のPBS(2.0mMのDTPA)バッファー中のストック溶液を調製した。IgG2の当量数および結果としての質量にもよるが、2当量のTCEPをIgG2溶液に添加し、充分に振盪し、室温で90分間インキュベートした。
【0125】
DBCO(ジベンゾシクロオクチル)−マレイミドおよびアジド−マレイミド
コンジュゲーションのため、DBCO−マレイミド(Click Chemistry Tools,A108−100)のDMSO(Sigma−Aldrich,472301)中のストック溶液を調製し、5当量のDBCO−マレイミドのDMSO溶液をIgG2_A試料(TCEPの精製なし)に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。アジド−マレイミド(5当量)のDMSO溶液をIgG2(B)試料に添加した。抗体試料中のDMSOの最終容量は約5%(v/v)であった。コンジュゲーション反応を室温で1時間、カルーセルによる混合下で行った。
【0126】
洗浄工程のため、各試料を別個の15mL容遠心濾過チューブ(Millipore,UFC903024)内に入れ、適切な容量の1×DPBS(Corning,21−031−CM、カルシウムまたはマグネシウムなし)バッファーをチューブの50mLの印まで添加した。試料を3,000RPMで20分間、22℃にて遠心分離した。洗浄工程をもう1回、繰り返した。洗浄後、試料を別々の1.5mL容プラスチックバイアル内に移し、冷蔵庫(5℃)に入れるか、またはクリック工程に使用した。
【0127】
各試料を分析するためには、0.6mg/mLの濃度の20μLが必要であった。SDS−PAGEゲル泳動のための確立されたプロトコル(RTP AD001−01およびAD002−01)に従った(図29)。
【0128】
質量分析のため、TCEPで還元し、DBCOとコンジュゲートさせた抗体AをWater Xevo G−2 QTOFで分析した。このデータは、2つのDBCO(ジスルフィド結合を1つだけ還元)または4つのDBCO(2つのジスルフィド結合を還元)と本発明者らのIgG2とのコンジュゲーションを示す(図30AからC)。
【0129】
この実施例で作製した二重特異性抗体の生物理学的特性をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて調べた。二重特異性IgG2を分析するための、TSKゲルSuperSW3000カラム(4.6mm ID×30cm、4μm)を使用したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)Agilent 1200 HPLC(図31)。バッファーは、0.2Mのリン酸カリウム、0.25MのKCl、pH6.2。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]