特許第6687251号(P6687251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6687251ターゲット分析方法およびこれに用いるターゲット分析キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687251
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ターゲット分析方法およびこれに用いるターゲット分析キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20200413BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20200413BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20200413BHJP
【FI】
   C12Q1/6876 ZZNA
   C12Q1/68
   !C12N15/115 Z
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-562926(P2017-562926)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2017001958
(87)【国際公開番号】WO2017126669
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-11024(P2016-11024)
(32)【優先日】2016年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 嘉仁
(72)【発明者】
【氏名】堀井 克紀
(72)【発明者】
【氏名】秋冨 穣
(72)【発明者】
【氏名】金子 直人
(72)【発明者】
【氏名】清水 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智子
(72)【発明者】
【氏名】和賀 巌
【審査官】 清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/086403(WO,A1)
【文献】 特開2009−201406(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/083391(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/117701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68−1/6897
C12N 15/09−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
REGISTRY/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と、ターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを反応させる工程と、
前記担体の画分と、前記担体以外の画分とを分離する工程と、
前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方における前記標識化結合核酸分子の標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程とを含み、
前記標識化結合核酸分子が、下記(a)のポリヌクレオチドからなり、
前記ブロッキング核酸分子が、下記(b)のポリヌクレオチドからなることを特徴とする、ターゲット分析方法:
(a)下記(a1)のポリヌクレオチド;
(a1)配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)下記(b1)のポリヌクレオチド;
(b1)配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【請求項2】
前記試料と、前記標識化結合核酸分子とを反応させる工程と、
前記試料および前記標識化結合核酸分子の混合物と、前記担体とを反応させる工程とを含む、請求項1記載のターゲット分析方法。
【請求項3】
前記担体が、ビーズである、請求項1または2に記載のターゲット分析方法。
【請求項4】
前記ビーズが、ポリスチレン製ビーズである、請求項記載のターゲット分析方法。
【請求項5】
ターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを含み、
請求項1からのいずれか一項に記載のターゲット分析方法に使用し、
前記標識化結合核酸分子が、下記(a)のポリヌクレオチドからなり、
前記ブロッキング核酸分子が、下記(b)のポリヌクレオチドからなることを特徴とする、ターゲット分析キット
(a)下記(a1)のポリヌクレオチド;
(a1)配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチド:
(b)下記(b1)のポリヌクレオチド;
(b1)配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット分析方法およびこれに用いるターゲット分析キットに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療、食品、環境等の様々な分野において、ターゲット分析が行なわれている。前記ターゲットの分析方法としては、例えば、イムノクロマト法を用いた分析方法が知られている。しかしながら、イムノクロマト法による分析時間は、15−20分程度要するため、より迅速化が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、迅速にターゲットを分析できる新たなターゲット分析方法およびこれに用いるターゲット分析キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のターゲット分析方法(以下、「分析方法」ともいう。)は、試料と、ターゲットと結合する標識化結合核酸分子(以下、「結合核酸分子」ともいう。)と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを反応させる工程と、
前記担体の画分と、前記担体以外の画分とを分離する工程と、
前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方における前記標識化結合核酸分子の標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程を含むことを特徴とする。
【0005】
本発明のターゲット分析キット(以下、「分析キット」ともいう。)は、ターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを含み、
前記本発明のターゲット分析方法に使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のターゲット分析方法およびこれに用いる分析キットによれば、ターゲットを迅速に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1における発光量を示すグラフである。
図2図2は、実施例2における発光量を示すグラフである。
図3図3は、実施例3における発光量を示すグラフである。
図4図4は、実施例4における発光量を示すグラフである。
図5図5は、実施例5における発光量を示すグラフである。
図6図6は、実施例6における発光量を示すグラフである。
図7図7は、実施例7における発光量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の分析方法は、例えば、前記試料と、前記標識化結合核酸分子とを反応させる工程と、前記試料および前記標識化結合核酸分子の混合物と、前記担体とを反応させる工程とを含む。
【0009】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ブロッキング核酸分子が、前記標識化結合核酸分子に相補的な塩基配列を含む核酸分子である。
【0010】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ブロッキング核酸分子が、前記標識化結合核酸分子における前記ターゲットと結合する塩基配列に相補的な塩基配列を含む核酸分子である。
【0011】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ブロッキング核酸分子の塩基長が、前記標識化結合核酸分子の塩基長に対して、1/1〜1/20の範囲の塩基長である。
【0012】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ブロッキング核酸分子が、前記標識化結合核酸分子の塩基配列に対して、5〜100%の範囲の相補性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む核酸分子である。
【0013】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記標識化結合核酸分子が、下記(a)のポリヌクレオチドを含む。
(a)下記(a1)のポリヌクレオチド
(a1)配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0014】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ブロッキング核酸分子が、下記(b)のポリヌクレオチドを含む。
(b)下記(b1)のポリヌクレオチド
(b1)配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0015】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記担体が、ビーズであり、好ましくは、ポリスチレン製ビーズである。前記ビーズが、例えば、磁性ビーズである。
【0016】
本発明の分析方法は、例えば、磁性体により前記磁性ビーズを分離することで、前記磁性ビーズの画分と前記磁性ビーズ以外の画分とを分離する。
【0017】
本発明の分析方法は、例えば、前記標識が、酵素であり、
前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方における前記標識化結合核酸分子の酵素反応を検出し、好ましくは、前記酵素の基質の存在下、前記酵素反応を検出する。
【0018】
本発明の分析方法は、例えば、前記酵素が、ルシフェラーゼである。
【0019】
本発明の分析方法は、例えば、前記試料が、食品由来試料である。
【0020】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ターゲットが、ピーナッツアレルゲンである。前記ピーナッツアレルゲンが、例えば、コンアラキン(conarachin)またはそのサブユニットである。前記サブユニットが、例えば、Ara h1である。
【0021】
本発明の分析方法および分析キットは、例えば、前記ピーナッツアレルゲンが、未変性アレルゲンまたは加熱変性アレルゲンである。
【0022】
本発明の分析キットは、例えば、前記標識が、酵素であり、好ましくは、ルシフェラーゼである。
【0023】
本発明の分析キットは、例えば、さらに、前記酵素の基質を含む。
【0024】
<ターゲット分析方法>
本発明のターゲット分析方法は、前述のように、試料と、ターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを反応させる工程(反応工程)と、前記担体の画分と、前記担体以外の画分とを分離する工程(分離工程)と、前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方における前記標識化結合核酸分子の標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程(分析工程)とを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の分析方法は、前記標識化結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子が固定化された担体を用い、前記反応工程、前記分離工程、および前記分析工程を行うことが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の分析方法によれば、例えば、3分程度と極めて短時間で、且つ優れた分析感度でターゲットを分析できる。また、本発明の分析方法によれば、例えば、メカニズムは不明であるが、前記結合核酸分子の非特異的な結合を抑制できるため、例えば、優れた分析精度(特異性)でターゲットを分析できる。
【0026】
本発明の分析方法は、例えば、前記試料中のターゲットの有無を分析する定性分析であってもよいし、前記試料中のターゲットの程度(例えば、量)を分析する定量分析であってもよい。
【0027】
本発明の分析方法において、分析に供する試料は、特に制限されず、例えば、食品由来試料等があげられる。前記食品由来試料は、例えば、食品、食品原料、食品添加物、食品加工場または調理場等における付着物、洗浄後の洗浄液等があげられる。前記試料の形態は、特に制限されず、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを前記試料として使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。前記試料は、例えば、前記ターゲットを含む試料でもよいし、前記ターゲットを含まない試料でもよいし、ターゲットを含むか不明の試料であってもよい。
【0028】
前記ターゲットは、特に制限されず、任意のターゲットとできる。前記試料が食品由来試料の場合、前記ターゲットは、例えば、食物アレルゲンがあげられ、具体例として、ピーナッツアレルゲン、小麦アレルゲン、乳アレルゲン、卵アレルゲン、そばアレルゲン、エビアレルゲン、ダイズアレルゲン等があげられる。前記ピーナッツアレルゲンは、例えば、ピーナッツの主要アレルゲンである、コンアラキン(conarachin)またはそのサブユニット、またはそのドメインがあげられる。コンアラキンは、例えば、コンアラキンIおよびコンアラキンII(α−コンアラキン)である。前記コンアラキンのサブユニットは、例えば、Ara h1、Ara h2、Ara h6があげられる。前記小麦アレルゲンは、例えば、グルテニン、グルテン、グリアジン、グリアジンω5、これらのサブユニット、またはこれらのドメインがあげられる。前記乳アレルゲンは、例えば、カゼイン、αカゼイン、s1カゼイン、βラクトグロブリン、これらのサブユニット、またはこれらのドメインがあげられる。前記卵アレルゲンは、例えば、卵の主要アレルゲンである、オボムコイド、オボトランスフェリン(Ovotransferrin)、これらサブユニット、またはこれらドメインがあげられる。前記そばアレルゲンは、例えば、Fage 2、そのサブユニット、またはそのドメインがあげられる。前記エビアレルゲンは、例えば、エビの主要アレルゲンであるトロポミオシン、そのサブユニット、またはそのドメインがあげられる。具体例として、前記トロポミオシンは、例えば、Pen a 1、Pen i 1、Met e 1等があげられる。前記ダイズアレルゲンは、例えば、ダイズの主要アレルゲンである、β−コングリシニン(β-conglycinin)、そのサブユニット、またはそのドメインがあげられる。前記アレルゲンは、例えば、未変性アレルゲンでもよいし、加熱変性アレルゲンでもよい。
【0029】
前記標識化結合核酸分子は、ターゲットに結合し、且つ標識された核酸分子である。前記結合核酸分子は、特に制限されず、例えば、前記ターゲットに結合するアプタマー等があげられる。前記結合核酸分子と、前記ターゲットとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により確認できる。前記解析は、例えば、ProteON(商品名、BioRad社製)が使用できる。
【0030】
前記ターゲットがピーナッツアレルゲンである場合、前記結合核酸分子は、例えば、ダイズタンパク質と比較し、前記ピーナッツアレルゲンに対して有意に特異的に結合する核酸分子であることが好ましい。
【0031】
具体例として、前記ピーナッツアレルゲンと結合する結合核酸分子は、例えば、下記(a)のポリヌクレオチドを含む核酸分子があげられる。
(a)下記(a1)〜(a3)および(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチド
(a1)配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(a4)前記(a1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
【0032】
前記(a1)のポリヌクレオチドは、前記配列番号1または2の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
ピーナッツ結合核酸分子1(配列番号1)
5’-GGATATTGCCTCGCCACAGTTAAGTCAGGTGGTTGGTTATGGTTGGGACTGACTCTCTACAGGGAACGCTCGGATTATC-3’
ピーナッツ結合核酸分子2(配列番号2)
5’-GGTAAGGTCCTCAGTCCTCGATTAGCTATCCTCCCGTTTCCTCTACTTTCTGCGTGATCACGGCGGCTCTCATTAC-3’
【0033】
前記(a2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(a2)のポリヌクレオチドが、ピーナッツアレルゲンに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜5塩基」との記載は、「1、2、3、4、5塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0034】
前記(a3)において、「同一性」は、例えば、前記(a3)のポリヌクレオチドが、ピーナッツアレルゲンに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0035】
前記(a4)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0036】
前記(a4)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0037】
本発明において、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、例えば、両者間でアニーリングが生じ得る配列であることを意味する。前記(a4)において、相補的とは、例えば、2種類の配列をアラインメントした際の相補性が、例えば、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であり、好ましくは100%、すなわち完全相補である。また、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、一方の5’側から3’側に向かう配列と、他方の3’側から5’側に向かう配列とを対比させた際に、互いの塩基が相補的であることを意味する。
【0038】
前記結合核酸分子は、例えば、前記(a1)〜(a4)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの塩基配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドが連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記リンカーについては、後述する。前記ポリヌクレオチドは、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、同じでもよいし、異なってもよい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、同じであることが好ましい。前記ポリヌクレオチドを複数含む場合、前記ポリヌクレオチドの数は、特に制限されず、例えば、2以上であり、具体的には、例えば、2〜20、2〜10、2または3である。
【0039】
前記標識化結合核酸分子は、例えば、標識物質により標識されている。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、酵素、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記酵素は、特に制限されず、例えば、例えば、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ等があげられ、分析感度が向上することから、好ましくは、ルシフェラーゼである。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy(登録商標)3色素、Cy(登録商標)5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa(登録商標)488、Alexa(登録商標)647等のAlexa色素等があげられる。
【0040】
前記標識物質は、例えば、前記結合核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。前記標識物質は、例えば、前記結合核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。
【0041】
前記リンカーは、特に制限されず、例えば、非核酸分子または核酸分子があげられる。前者の場合、前記非核酸分子は、例えば、アビジン−ビオチン、アミノ基を有する分子−カルボキシル基を有する分子の組合せ等があげられる。後者の場合、前記リンカーの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長、1〜20塩基長、3〜12塩基長、5〜9塩基長である。
【0042】
前記ブロッキング核酸分子は、前記結合核酸分子に結合する核酸分子である。前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記ターゲットと前記結合核酸分子との結合を阻害する核酸分子である。前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記結合核酸分子に特異的に結合する核酸分子があげられ、具体例として、前記結合核酸分子に相補的な塩基配列を含む核酸分子があげられる。前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記結合核酸分子に完全または部分的に相補的である。具体的に、後者の場合、前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記結合核酸分子の塩基配列に対して、5〜100%、5〜50%、5〜20%の範囲の相補性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む核酸分子があげられる。
【0043】
前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記結合核酸分子の3’端側の塩基配列、5’端側の塩基配列、またはそれ以外の領域の塩基配列に対し、相補的な塩基配列があげられる。前記3’端側の塩基配列は、例えば、前記結合核酸分子の3’端の塩基から連続的または非連続的な塩基配列である。また、前記5’端側の塩基配列は、例えば、前記結合核酸分子の5’端の塩基から連続的または非連続的な塩基配列である。前記ブロッキング核酸分子の固定化方法は、特に制限されず、公知の核酸分子の固定化方法が使用できる。
【0044】
前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記標識化結合核酸分子における前記ターゲットと結合する塩基配列(結合配列)に相補的な塩基配列を含む核酸分子であることが好ましい。前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記結合配列に完全に相補的でもよいし、部分的に相補的でもよい。前記標識化結合核酸分子において、前記結合配列は、特に制限されず、前記結合核酸分子の塩基配列に応じて、適宜決定できる。前記結合核酸分子が配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドの場合、前記結合配列は、例えば、前記配列番号1の塩基配列における下線で示した塩基配列があげられる。前記結合核酸分子が配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドの場合、前記結合配列は、例えば、前記配列番号2の塩基配列における下線で示した塩基配列があげられる。
【0045】
前記結合核酸分子の塩基長と前記ブロッキング核酸分子との塩基長との比は、特に制限されない。前記ブロッキング核酸分子の塩基長が、前記標識化結合核酸分子の塩基長に対して、例えば、1/1〜1/20の範囲の塩基長である。
【0046】
具体例として、前記結合核酸分子が前記(a)のポリヌクレオチドを含む核酸分子の場合、前記ブロッキング核酸分子は、例えば、下記(b)のポリヌクレオチドを含む核酸分子があげられる。下記(b2)〜(b4)は、例えば、前記(a1)〜(a3)および(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドに結合する(ハイブリダイズする)ポリヌクレオチドである。
(b)下記(b1)〜(b3)および(b4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチド
(b1)配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b2)前記(b1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b3)前記(b1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b4)前記(b1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0047】
前記(b1)のポリヌクレオチドは、前記配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
相補鎖1(配列番号3)
5’-AAAAAAAAAAAAAAAAAAAATAGAGAGTCAGTCCCAACCA-3’
相補鎖2(配列番号4)
5’-AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGTAGAGGAAACGGGAGGAT-3’
【0048】
前記(b2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(b2)のポリヌクレオチドが、前記(a1)〜(a3)および(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(b1)のいずれかの塩基配列において、例えば、1〜10個、1〜7個、1〜5個、1〜3個、1または2個である。
【0049】
前記(b3)において、「同一性」は、例えば、前記(b3)のポリヌクレオチドが、前記(a1)〜(a3)および(a4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0050】
前記(b4)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(b1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズおよびストリンジェントな条件は、例えば、前述の説明を援用できる。
【0051】
前記ブロッキング核酸分子は、例えば、前記(b1)〜(b4)のいずれかのポリヌクレオチドの塩基配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの塩基配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドが連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記リンカーについては、例えば、前述の説明を援用できる。前記ポリヌクレオチドは、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、同じでもよいし、異なってもよい。前記複数のポリヌクレオチドは、例えば、同じであることが好ましい。前記ポリヌクレオチドを複数含む場合、前記ポリヌクレオチドの数は、特に制限されず、例えば、2以上であり、具体的には、例えば、2〜20、2〜10、2または3である。前記結合核酸分子が前記(a)のポリヌクレオチドを複数含む場合、前記ブロッキング核酸分子が含む(b)のポリヌクレオチドの数は、例えば、前記結合核酸分子が含む(a)のポリヌクレオチドの数と同じでもよいし、異なってもよいが、好ましくは、前者である。
【0052】
前記(a)のポリヌクレオチドと前記(b)のポリヌクレオチドとの組合せは、特に制限されず、例えば、下記(a1)および(b1)のポリヌクレオチドが下記組合せの場合の対応する(a)のポリヌクレオチドと(b)のポリヌクレオチドとの組合せがあげられる。
前記(a1)の配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
前記(a1)の配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
【0053】
前記担体は、前述のように、前記ブロッキング核酸分子が固定化されている。前記担体は、特に制限されず、例えば、ビーズ、プレート、容器等があげられる。前記担体の素材は、特に制限されない。前記担体は、例えば、ポリスチレン製担体、シリカ製担体、アガロース製担体、ガラス製担体、アクリル樹脂製担体、ポリビニルアルコール樹脂製担体、ポリカーボネート製担体等があげられ、分析感度が向上することから、好ましくは、ポリスチレン製担体である。前記担体の大きさは、特に制限されない。前記担体の形状は、特に制限されず、前記担体がビーズの場合、その形状は、例えば、楕円、真円等の球状があげられる。
【0054】
前記ブロッキング核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかで前記担体に固定化されてもよく、好ましくは、5’末端である。前記ブロッキング核酸分子は、例えば、直接的に前記担体に固定化してもよいし、間接的に前記担体に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記リンカーを介して前記担体に固定化することが好ましい。前記リンカーは、例えば、前述の説明を援用できる。
【0055】
つぎに、各工程について説明する。以下の各工程は、例えば、前記試料、前記結合核酸分子、前記担体等を含む反応系で実施できる。前記反応系は、例えば、液体中で反応が実施される液体系であることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0056】
前記反応工程は、前述のように、試料とターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを反応させる工程である。前記反応工程において、前記試料と、前記標識化結合核酸分子と、前記担体との反応順序は、特に制限されず、例えば、下記(x1)〜(x3)があげられる。
(x1)前記試料と前記標識化結合核酸分子とを反応させ、さらに、前記試料と前記標識化結合核酸分子との混合物を、前記担体と反応させる。
(x2)前記標識化結合核酸分子と前記担体とを反応させ、さらに、前記標識化結合核酸分子と前記担体との混合物を、前記試料と反応させる。
(x3)前記試料と、前記結合核酸分子と、前記担体とを一度に反応させる。
【0057】
前記反応工程において、反応条件は、特に制限されない。反応温度は、例えば、4〜37℃、18〜25℃であり、反応時間は、例えば、1〜30分、1〜5分である。前記反応工程が前記(x1)または前記(x2)の順序の場合、1回目の反応の反応時間は、例えば、0〜0.5分、0〜1分であり、2回目の反応の反応時間は、例えば、1〜30分、1〜3分である。
【0058】
つぎに、前記分離工程は、前記担体の画分と、前記担体以外の画分とを分離する工程である。前記担体の画分と、前記担体以外の画分との分離方法は、特に制限されず、例えば、公知の固液分離方法により実施できる。具体例として、前記分離方法は、例えば、ろ過処理、膜分離処理、遠心分離処理、沈殿処理等があげられる。前記ろ過処理および前記膜分離処理の場合、前記分離方法は、例えば、加圧することにより、前記ろ過処理および前記膜分離処理を促進してもよい。前記担体が磁性担体である場合、磁性体により前記磁性担体を分離することで、前記磁性担体の画分と前記磁性担体以外の画分とを分離してもよい。前記分離方法は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
本発明において、前記分離工程は、さらに、前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方の画分を回収する工程を含んでもよい。回収する画分は、例えば、後述する分析工程において、分析に供する画分に応じて適宜決定できる。
【0060】
前記分離工程において、前記ろ過処理または前記膜分離処理により分離する場合、例えば、ろ材または膜を通過させることにより、前記担体の画分と前記担体以外の画分とを分離でき、さらに、例えば、前記ろ材または膜を通過した画分を、前記担体以外の画分として、ろ材または膜を通過しなかった画分を、前記担体の画分として回収できる。前記ろ材および膜の孔径は、特に制限されず、例えば、前記担体の大きさに応じて適宜設定でき、具体的には、前記担体の画分と前記担体以外の画分とを分離できる孔径であればよい。また、前記遠心分離処理または沈殿処理により分離する場合、例えば、遠心処理または沈殿処理により、前記担体の画分と前記担体以外の画分とを分離でき、さらに、例えば、得られた沈殿物を、前記担体の画分として、前記沈殿物以外の画分を、前記担体以外の画分として回収できる。また、前記分離工程において、前記担体以外の画分を回収する場合、例えば、前記担体以外の画分の全てを回収してもよいし、その一部を回収してもよい。
【0061】
そして、前記分析工程は、前記担体の画分および前記担体以外の画分の少なくとも一方における前記標識化結合核酸分子の標識を検出することにより、前記試料中のターゲットを分析する工程である。前記分析工程において、分析に供する画分は、例えば、前記担体の画分または前記担体以外の画分でもよいし、両者でもよいが、分析感度が向上することから、前記担体以外の画分が好ましい。両者の場合、前記担体の画分および前記担体以外の画分を、それぞれ回収し、それぞれについて、分析に供することが好ましい。
【0062】
前記分析工程において前記標識の検出は、特に制限されず、例えば、前記標識の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、前記標識が酵素の場合、前記標識の検出は、例えば、酵素反応の検出であり、より具体的には、前記酵素反応により生じる光学シグナル、電気シグナル等の検出である。前記光学シグナルは、例えば、発光、蛍光、発色等を目視観察で検出してもよいし、発光強度、蛍光強度、吸光度、反射率等をシグナルとして、光学的手法で検出することもできる。前記電気シグナルは、例えば、電流等があげられる。前記電気シグナルは、例えば、電気的手法により検出できる。前記酵素反応は、特に制限されず、例えば、酸化還元反応等があげられる。前記標識が蛍光物質の場合、前記標識の検出は、例えば、前記蛍光物質に起因する蛍光の検出である。前記標識が同位体の場合、前記標識の検出は、例えば、前記同位体に起因する放射線シグナルの検出である。前記放射線シグナルは、例えば、α線、β線、γ線、陽電子線、X線等の蛍光作用、電離作用等を光学的または電気的手法により検出できる。
【0063】
前記分析工程において、前記酵素反応を検出する場合、前記分析工程は、前記酵素の基質の存在下、前記酵素反応を検出することが好ましい。前記基質は、特に制限されず、例えば、前記酵素の種類に応じて適宜決定できる。具体例として、前記酵素がルシフェラーゼの場合、前記基質は、例えば、ルシフェリン、セレンテラジン等があげられる。
【0064】
本発明の分析方法は、さらに、分析工程における検出結果から、前記試料中の前記ターゲットの濃度を算出する算出工程を含んでもよい。前記検出結果は、例えば、光学シグナル、電気シグナル等があげられる。前記算出工程において、前記ターゲットの濃度は、例えば、検出結果と、検出結果および試料中の前記ターゲットの濃度の相関関係とに基づき、算出できる。前記相関関係は、例えば、前記ターゲットの濃度が既知である標準試料について、前記本発明の分析方法により得られた検出結果と、前記標準試料の前記ターゲットの濃度とをプロットすることにより求めることができる。前記標準試料は、前記ターゲットの希釈系列が好ましい。このように算出を行うことによって、信頼性の高い定量が可能となる。
【0065】
本発明の分析方法において、前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。前記ポリヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基を含むDNAであり、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜91個、1〜30個、1〜15個、1〜7個、1〜3個、1または2個である。
【0066】
前記ポリヌクレオチドは、修飾塩基を含んでもよい。前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記天然塩基は、特に制限されず、例えば、プリン骨格を有するプリン塩基、ピリミジン骨格を有するピリミジン塩基等があげられる。前記プリン塩基は、特に制限されず、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)があげられる。前記ピリミジン塩基は、特に制限されず、例えば、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等があげられる。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位および8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位および6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「−CH」または「−H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシルまたは修飾チミンということができる。
【0067】
前記修飾塩基の修飾基は、特に制限されず、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基、下記式(1)のベンジルアミノカルボニル基(benzylaminocarbonyl)、下記式(2)のトリプタミノカルボニル基(tryptaminocarbonyl)およびイソブチルアミノカルボニル基(isobutylaminocarbonyl)等があげられる。
【0068】
【化1】
【化2】
【0069】
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、アデニンが修飾された修飾アデニン、チミンが修飾された修飾チミン、グアニンが修飾された修飾グアニン、シトシンが修飾された修飾シトシンおよびウラシルが修飾された修飾ウラシル等があげられ、前記修飾チミン、前記修飾ウラシルおよび前記修飾シトシンが好ましい。
【0070】
前記修飾アデニンの具体例としては、例えば、7’−デアザアデニン等があげられる。
【0071】
前記修飾グアニンの具体例としては、例えば、7’−デアザグアニン等があげられる。
【0072】
前記修飾チミンの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルチミン、5’−トリプタミノカルボニルチミン、5’−イソブチルアミノカルボニルチミン等があげられる。
【0073】
前記修飾ウラシルの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)、5’−トリプタミノカルボニルウラシル(TrpdU)および5’−イソブチルアミノカルボニルウラシル等があげられる。
【0074】
前記ポリヌクレオチドは、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
【0075】
前記修飾塩基の個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の個数は、特に制限されない。前記修飾塩基は、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個、1〜40個、1〜20個、1〜10個、1〜5個であり、また、全ての塩基が、前記修飾塩基でもよい。前記修飾塩基の個数は、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基の個数であってもよいし、2種類以上の前記修飾塩基の個数の合計であってもよい。
【0076】
前記ポリヌクレオチドが前記修飾塩基を含む場合、前記修飾塩基の割合は、特に制限されない。前記修飾塩基の割合は、前記ポリヌクレオチドの全塩基数のうち、例えば、1/100以上、1/40以上、1/20以上、1/10以上、1/4以上、1/3以上である。前記修飾塩基の割合を分数で示すが、これを満たす全塩基数と修飾塩基数とは、それぞれ正の整数である。
【0077】
前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子は、例えば、修飾ヌクレオチドを含んでもよい。前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖残基が修飾された修飾糖を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基および前記修飾糖を有するヌクレオチドでもよい。
【0078】
前記糖残基は、特に制限されず、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基があげられる。前記糖残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位または4’位があげられ、いずれか一方でも両方が修飾されてもよい。前記修飾糖の修飾基は、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。
【0079】
前記修飾ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基の2’位が修飾された、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
【0080】
前記修飾ヌクレオチドの個数は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子の全長における前記修飾ヌクレオチドも、特に制限されず、具体的には、例えば、前述の範囲と同様である。
【0081】
前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜100個、1〜50個、1〜30個、1〜10個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。
【0082】
前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記結合核酸分子の標識化されていない末端および前記ブロッキング核酸分子が固定化されていない末端の少なくとも一方に結合している。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長、1〜50塩基長、1〜25塩基長、18〜24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0083】
本発明の分析方法において、前記結合核酸分子および前記ブロッキング核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法等、遺伝子工学的手法、公知の方法により合成できる。また、前記結合核酸分子は、例えば、ターゲットを用い、いわゆるSELEX法によっても得ることができる。
【0084】
<ターゲット分析キット>
本発明のターゲット分析キットは、前述のように、ターゲットと結合する標識化結合核酸分子と、前記標識化結合核酸分子に結合するブロッキング核酸分子が固定化された担体とを含み、前記本発明のターゲット分析方法に使用することを特徴とする。本発明の分析キットは、前記標識化結合核酸分子と前記担体とを含み、前記本発明の分析方法に使用することが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の分析キットは、例えば、前記本発明の分析方法の説明を援用できる。本発明のターゲット分析キットによれば、例えば、前記本発明の分析方法を簡便に実施できる。また、本発明の分析キットによれば、例えば、3分程度と極めて短時間で、且つ優れた分析感度でターゲットを分析できる。本発明の分析キットによれば、例えば、前記結合核酸分子の非特異的な結合を抑制できるため、例えば、優れた分析精度でターゲットを分析できる。
【0085】
本発明の分析キットにおいて、前記結合核酸分子および前記担体は、例えば、それぞれ別個の容器に収容されてもよいし、同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。後者の場合、本発明の分析キットは、例えば、分析試薬ということもできる。
【0086】
前記本発明の分析キットは、例えば、さらに、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記基質、緩衝液等の試薬、使用説明書等があげられる。前記試薬は、例えば、前記結合核酸分子および前記担体と、別個の容器に収容されてもよいし、いずれかと同一の容器に混合または未混同で収容されてもよい。前記基質は、例えば、前記結合核酸分子および前記担体と、別個の容器に収容されている。
【0087】
<ピーナッツ結合核酸分子>
本発明のピーナッツ結合核酸分子は、下記(c1)〜(c3)および(c4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチド(以下、「(c)のポリヌクレオチド」ともいう。)を含むことを特徴とする。
(c1)配列番号1、2、5、および6のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチド
(c2)前記(c1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(c3)前記(c1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
(c4)前記(c1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、ピーナッツアレルゲンに結合するポリヌクレオチド
【0088】
本発明のピーナッツ結合核酸分子は、例えば、前記本発明のターゲットの分析方法の説明を援用できる。本発明のピーナッツ結合核酸分子によれば、例えば、ピーナッツアレルゲンを分析できる。
【0089】
前記(c1)のポリヌクレオチドは、前記配列番号1、2、5、および6のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
ピーナッツ結合核酸分子3(配列番号5)
5’-AGTTAAGTCAGGTGGTTGG-3’
ピーナッツ結合核酸分子4(配列番号6)
5’-ATCCTCCCGTTTCCTCTAC-3’
【0090】
前記(c1)〜(c4)は、例えば、前記(a1)〜(a4)の説明において、「(a1)」を「(c1)」、「(a2)」を「(c2)」、「(a3)」を「(c3)」、「(a4)」を「(c4)」に読み替えて、その説明を援用できる。
【0091】
本発明のピーナッツ結合核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(c1)〜(c3)および(c4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(c1)〜(c3)および(c4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドがあげられる。
【0092】
前記相補的な塩基配列は、例えば、下記(b)のポリヌクレオチドがあげられる。下記(b2)〜(b4)は、例えば、前記(c1)〜(c3)および(c4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチドに結合する(相補的な)ポリヌクレオチドである。
(b)下記(b1)〜(b3)および(b4)からなる群から選択された少なくとも1つのポリヌクレオチド
(b1)配列番号3または4の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b2)前記(b1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b3)前記(b1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b4)前記(b1)のいずれかの塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド
【0093】
前記(c)のポリヌクレオチドと前記(b)のポリヌクレオチドとの組合せは、特に制限されず、例えば、下記(c1)および(b1)のポリヌクレオチドが下記組合せの場合の対応する(c)のポリヌクレオチドと(b)のポリヌクレオチドとの組合せがあげられる。
前記(c1)の配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
前記(c1)の配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
前記(c1)の配列番号5の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号3の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
前記(c1)の配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記(b1)の配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組合せ
【実施例】
【0094】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0095】
[実施例1]
本発明の分析方法および分析キットにより、迅速にピーナッツ等のターゲットを分析できることを確認した。
【0096】
(1)試料
市販のピーナッツ(種子)について、ミルにより粉砕した。得られた粉末5gを20mLのSB1T緩衝液と混合後、振盪機を用い、室温(25℃前後、以下同様)、90−110rpmの条件で終夜(約16時間、以下同様)振盪した。前記SB1T緩衝液の組成は、40mmol/L HEPES(pH7.5)、125mmol/L NaCl、25mmol/L KCl、1mmol/L MgCl、0.05(v/v)% Tween(登録商標)20とした。
【0097】
前記振盪後の混合液について、10000g、室温の条件で、終夜遠心した。つぎに、上清を回収後、前記上清について、フィルター(孔径0.8μm)を用いてろ過し、ピーナッツ抽出液1を調製した。そして、前記ピーナッツ抽出液1について、タンパク質濃度測定キット(Protein Assay reagent、Bio-Rad社製)を用いて、ピーナッツタンパク質濃度を定量した。
【0098】
(2)分析
ピーナッツアレルゲンに結合する標識化結合核酸分子を含む結合核酸分子液は、5’末端がビオチン化された前記配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド(ピーナッツアプタマー)を含む溶液と、ストレプトアビジン標識されたルシフェラーゼ(Streptavidin-Lucia、Invivogen社製)を含む溶液とを混合することにより、調製した。前記標識化結合核酸分子は、前記ストレプトアビジン100pmolあたりに400pmolの前記結合核酸分子を固定化した。前記結合核酸分子液における前記結合核酸分子の濃度は、1pmol/Lとした。また、ブロッキング核酸分子が固定化された担体は、5’末端がビオチン化された前記配列番号3からなるポリヌクレオチドと、ストレプトアビジン標識ビーズ(Invitrogen社製)とを混合し、室温で30分間振盪後、前記SB1T緩衝液で洗浄することにより調製した。前記ブロッキング核酸分子が固定化された担体(固定化ブロッキング核酸分子)は、前記ビーズ1mgあたりに500pmolの前記ブロッキング核酸分子を固定化した。前記洗浄後、前記ビーズは、40mg/mLとなるように前記SB1T緩衝液に懸濁し、ビーズ液を調製した。なお、前記ビーズは、磁性ビーズである。
【0099】
つぎに、前記ピーナッツ抽出液1を、前記結合核酸分子および前記ビーズとの混合後の反応液におけるピーナッツタンパク質濃度が、所定濃度(0.0004、0.002、0.01、0.05、0.25、1.25、または6.25ppm)となるように、前記SB1T緩衝液で希釈し、ピーナッツ希釈液を調製した。つぎに、U底プレートの各wellに、4μLの前記ビーズ液および16μLの前記SB1T緩衝液を添加し、希釈ビーズ液を調製した。また、別のU底プレートの各ウェルに、25μLの前記結合核酸分子液を添加し、さらに、25μLの前記ピーナッツ希釈液を各ウェルに添加した。前記添加後、室温で、1分間インキュベートした。さらに、前記インキュベート後の各ウェルに、20μLの前記希釈ビーズ液を添加し、前記振盪機を用い、室温、1000rpmの条件で2分間振盪した。
【0100】
つぎに、前記プレートを磁性ビーズ分離プレートに設置し、前記磁性ビーズの画分と、前記磁性ビーズ以外の画分とに分離した。前記分離後、各ウェルから上清30μLを回収し、それぞれ、測定用プレート(white half plate、グライナー社製)の各ウェルに添加した。さらに、30μLの基質液を添加後ピペッティングし、プレートリーダー(Infinite M1000 Pro、TECAN社製)により、各ウェルの発光量を測定した。前記酵素がルシフェラーゼの場合、前記基質液は、Quanti-Luc(商品名、invivogen社製)を使用した。また、前記配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドに代えて、前記配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを用い、ストレプトアビジン標識されたルシフェラーゼに代えて、ストレプトアビジン標識アルカリフォスファターゼ(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、前記配列番号3からなるポリヌクレオチドに代えて、前記配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドを用い、前記所定濃度を、0、0.25、1、4、16、または64ppmとし、前記基質液として、CDP-star(Emerald II)(商品名、Roche社製)を用いた以外は、同様にして発光量を測定した。
【0101】
これらの結果を図1に示す。図1は、発光量を示すグラフである。図1において、(A)は、前記酵素がルシフェラーゼの場合の結果を示し、(B)は、前記酵素がアルカリフォスファターゼの場合の結果を示す。また、図1において、横軸は、ピーナッツタンパク質濃度であり、縦軸は、発光量を示す。図1に示すように、前記標識として、アルカリフォスファターゼおよびルシフェラーゼのいずれを用いた場合においても、ピーナッツタンパク質濃度依存的に発光量が増加した。また、前記標識としてルシフェラーゼを用いた場合、ピーナッツタンパク質濃度が0.001ppm程度でも分析でき、極めて分析感度が高いことが分かった。また、前記分析において合計3分のインキュベーション時間で分析ができたことから、本発明の分析方法および分析キットは、迅速にピーナッツアレルゲン等のターゲットを分析できることが分かった。
【0102】
[実施例2]
本発明の分析方法および分析キットにより、食品中のピーナッツを分析できることを確認した。
【0103】
(1)試料
前記ピーナッツに代えて、市販のクッキー(ミニバタークッキー、Ito Bicuits Co., LTD.社製)、チョコレート(DARSミルクチョコレート、森永製菓社製)、ビスケット(Sand Biscuit、East pigeon Co,.LTD.社製)を用い、前記SB1T緩衝液と混合後、1分間振盪した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、クッキー抽出液、チョコレート抽出液およびビスケット抽出液を調製した。そして、各抽出液について、前記実施例1(1)と同様にして、タンパク質濃度を定量した。
【0104】
(2)分析
前記ピーナッツ抽出液1に代えて、前記クッキー抽出液、前記チョコレート抽出液および前記ビスケット抽出液をそれぞれ用い、前記結合核酸分子および前記ビーズとの混合後の反応液における各抽出液由来のタンパク質濃度が10ppmとなるように添加し、さらに、前記反応液におけるピーナッツタンパク質の濃度が、所定濃度(0.01、0.05、0.25、1.25、または6.25ppm)となるように、前記ピーナッツ抽出液1を添加した以外は、前記実施例1(2)と同様にして、発光量を測定した。
【0105】
これらの結果を図2に示す。図2は、発光量を示すグラフである。図2において、(A)は、前記クッキー抽出液の場合の結果であり、(B)は、前記チョコレート抽出液の場合の結果であり、(C)は、前記ビスケット抽出液の場合の結果である。図2において、横軸は、ピーナッツタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図2に示すように、いずれの食品を用いた場合においても、ピーナッツタンパク質濃度依存的に発光量が増加した。これらの結果から、本発明の分析方法および分析キットによれば、夾雑物等が多い食品においても、食品中のピーナッツを分析できることが分かった。
【0106】
[実施例3]
異なる担体を用い、本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツを分析できることを確認した。
【0107】
(1)試料
前記実施例1(1)と同様にして、ピーナッツ抽出液1を調製した。
【0108】
(2)分析
前記ストレプトアビジン標識ビーズに代えて、ストレプトアビジン標識アガロースビーズ(Invitrogen社製)またはストレプトアビジン標識レジン(ポリスチレン)ビーズ(SA-resin beads、Bio-rad社製)を用い、前記酵素として、前記ルシフェラーゼを用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、発光量を測定した。
【0109】
これらの結果を図3に示す。図3は、発光量を示すグラフである。図3において、(A)は、アガロースビーズの場合の結果であり、(B)は、レジンビーズの場合の結果である。図3において、横軸は、ピーナッツタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図3に示すように、いずれのビーズを用いた場合においても、ピーナッツタンパク質濃度依存的に発光量が増加した。また、レジンビーズを用いた場合、より幅広い濃度でタンパク質を検出できることが分かった。これらの結果から、本発明の分析方法および分析キットによれば、いずれの担体を用いても、ピーナッツを分析できることが分かった。
【0110】
[実施例4]
本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツを分析でき、且つ非特異的な結合が低減されていることを確認した。
【0111】
(1)試料
前記実施例1(1)と同様にして、ピーナッツ抽出液1を調製し、タンパク質濃度を定量した。また、前記ピーナッツに代えて、市販のダイズ(種子)を用いた以外は、ダイズ抽出液を調製し、タンパク質濃度を定量した。なお、ダイズは、ピーナッツアレルゲンに相同性の高いタンパク質を含むことが知られている。
【0112】
(2)分析
前記結合核酸分子液は、前記実施例1(2)と同様にして調製した。また、前記ストレプトアビジン標識ビーズとして、前記ストレプトアビジン標識レジンビーズを用い、前記酵素として、前記ルシフェラーゼを用いた以外は、前記実施例1(2)と同様にして、ビーズ液を調製した。つぎに、前記ピーナッツ抽出液1を、前記結合核酸分子および前記ビーズとの混合後の反応液におけるタンパク質濃度が、所定濃度(0、1.25、5、20または80ppm)となるように、前記SB1T緩衝液で希釈し、ピーナッツ希釈液を調製した。つぎに、チューブに、40μLの前記ビーズ液および160μLの前記SB1T緩衝液を添加し、希釈ビーズ液を調製した。また、別のチューブに、250μLの前記結合核酸分子液を添加し、さらに、250μLの前記ピーナッツ希釈液をチューブに添加した。前記添加後、攪拌した。さらに、前記チューブに、200μLの前記希釈ビーズ液を添加後、攪拌し、室温で1分間インキュベートした。
【0113】
前記インキュベート後の反応液について、5mLのシリンジと、フィルター(孔径0.45μm)を用いてろ過し、800μLの前記基質液が予め添加された測定容器にろ液を回収した。前記回収後、前記測定容器を攪拌し、30秒〜1分インキュベートした。そして、ルミノメーター(Clean-Trace(商標)、3M社製)を用い、前記測定容器中の測定サンプルの発光量を測定した。また、前記ピーナッツ希釈液に代えて、前記ダイズ抽出液を、前記結合核酸分子および前記ビーズとの混合後の反応液におけるタンパク質濃度が、80ppmとなるように、前記SB1T緩衝液で希釈することで調製したダイズ希釈液を用いた以外は、同様にして、発光量を測定した。
【0114】
これらの結果を図4に示す。図4は、発光量を示すグラフである。図4において、横軸は、ピーナッツまたはダイズタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図4に示すように、前記結合核酸分子として、前記ピーナッツアプタマーを用いた場合、前記ピーナッツ抽出液1由来のピーナッツタンパク質濃度依存的に、発光量が増加した。他方、前記ダイズ抽出液を用いた場合、発光量は、バックグラウンドと同程度あり、ダイズタンパク質には結合しないことがわかった。以上のことから、本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツ等のターゲットを分析でき、且つ非特異的な結合が低減されていることがわかった。
【0115】
[実施例5]
本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツを分析できることを確認した。
【0116】
(1)試料
前記ピーナッツの粉末と前記SB1T緩衝液とを混合後、1分間振盪した以外は、前記実施例1(1)と同様にして、振盪後の混合液を調製した。前記振盪後の混合液について、10000g、室温の条件で、30分間遠心した。つぎに、上清を回収後、前記上清について、フィルター(孔径0.8μm)を用いてろ過し、ピーナッツ抽出液2を調製した。そして、前記ピーナッツ抽出液2について、前記実施例1(1)と同様にして、ピーナッツタンパク質濃度を定量した。
【0117】
ピーナッツタンパク質濃度が、所定濃度(0、1、10、100、1000、または7700ppm)となるように、前記ピーナッツ抽出液2を前記SB1T緩衝液で希釈し、サンプルを調製した。前記サンプル100μLをアルミ箔に塗布後、綿棒でアルミ箔をぬぐった。前記綿棒を前記SB1T緩衝液400μLと接触させ、室温で1分間インキュベートすることにより、前記綿棒に保持されているターゲットを抽出し、抽出液を得た。前記抽出液25μLに、前記標識化結合核酸分子由来の結合核酸分子量が1pmolとなるように前記結合核酸分子液25μLを添加し、これらを室温で1分、混合した。これにより、前記標識化結合核酸分子をターゲットのピーナッツアレルゲンに結合させた。この混合液に、さらに、前記標識化結合核酸分子由来の結合核酸分子量と同量のブロッキング核酸分子量(10μmol/L)となるように、前記ビーズ液4μL(前記ブロッキング核酸分子40pmol)を添加して、室温で4分、混合した。これにより、前記ターゲットと未結合の前記標識化結合核酸分子の結合核酸分子に、前記固定化ブロッキング核酸分子を結合させた。
【0118】
つぎに、得られた混合液を磁気ホルダーに設置し、前記磁性ビーズの画分と、前記磁性ビーズ以外の画分とに分離し、後者を回収した。そして、前記上清30μLに、基質液30μL(Quanti-Luc(商標)、Invivogen社製)を添加後ピペッティングし、プレートリーダー(Infinite M1000 Pro、TECAN社製)により、各サンプルの発光量を測定した。
【0119】
この結果を図5に示す。図5は、発光量を示すグラフである。図5において、横軸は、前記抽出液と前記結合核酸分子液とを混合後の混合液におけるピーナッツタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図5に示すように、ピーナッツタンパク質の濃度依存的に、発光量が増加した。これらのことから、本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツ等のターゲットを分析できることがわかった。
【0120】
[実施例6]
本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツを分析できることを確認した。
【0121】
まず、前記磁性ビーズに代えて、ストレプトアビジン標識レジンビーズ(Pierce(商標)Streptavidin Plus UltraLink(商標)Resin、PIERCE社製)を用いた以外は、前記実施例1または3と同様にして、ピーナッツ抽出液2、結合核酸分子液、およびビーズ液を調製した。
【0122】
ピーナッツタンパク質濃度が、所定濃度(0、0.002、0.01、0.05、0.25、1.25、または6.25ppm)となるように、前記ピーナッツ抽出液2を前記SB1T緩衝液で希釈し、サンプルを調製した。前記サンプル25μLに、前記標識化結合核酸分子由来の結合核酸分子量が1pmolとなるように前記結合核酸分子液25μLを添加し、これらを室温で1分、混合した。これにより、前記標識化結合核酸分子をターゲットのピーナッツアレルゲンに結合させた。この混合液に、さらに、前記標識化結合核酸分子由来の結合核酸分子量と同量のブロッキング核酸分子量(4μmol/L)となるように、前記ビーズ液10μL(前記ブロッキング核酸分子40pmol)を添加して、室温で4分、混合した。これにより、前記ターゲットタンパク質と未結合の前記標識化結合核酸分子の結合核酸分子に、前記固定化ブロッキング核酸分子を結合させた。得られた混合液について、フィルタープレート(孔径0.22μm、マルチスクリーン(登録商標)、ミリポア社製)を用いて遠心ろ過した。得られたろ液30μLに、前記基質液30μLを添加後ピペッティングし、前記プレートリーダーにより、各サンプルの発光量を測定した。
【0123】
この結果を図6に示す。図6は、発光量を示すグラフである。図6において、横軸は、ピーナッツタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図6に示すように、ピーナッツタンパク質の濃度依存的に、発光量が増加した。これらのことから、本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツ等のターゲットを分析できることがわかった。
【0124】
[実施例7]
本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツを分析できることを確認した。
【0125】
まず、前記実施例1または3と同様にして、ピーナッツ抽出液2、結合核酸分子液、およびビーズ液を調製した。
【0126】
ピーナッツタンパク質濃度が、所定濃度(0、0.002、0.01、0.05、0.25、1.25、6.25)となるように、前記ピーナッツ抽出液2を前記SB1T緩衝液で希釈し、サンプルを調製した。前記サンプル25μLに、前記固定化ブロッキング核酸分子由来のブロッキング核酸分子量が1pmolとなるように前記ビーズ液25μLを添加し、これらを室温で1分、混合した。この混合液に、さらに、前記固定化ブロッキング核酸分子由来のブロッキング核酸分子量と同量の結合核酸分子量(10μmol/L)となるように、前記結合核酸分子液4μL(前記結合核酸分子40pmol)を添加して、室温で4分、混合した。これにより、前記標識化結合核酸分子をターゲットのピーナッツアレルゲンに結合させ、また、前記ターゲットと未結合の前記標識化結合核酸分子の結合核酸分子に、前記固定化ブロッキング核酸分子を結合させた。
【0127】
つぎに、得られた混合液を磁気ホルダーに設置し、前記磁性ビーズの画分と、前記磁性ビーズ以外の画分とに分離し、後者を回収した。そして、前記上清3μLに、前記基質液30μLを添加後ピペッティングし、前記プレートリーダーにより、各サンプルの発光量を測定した。
【0128】
この結果を図7に示す。図7は、発光量を示すグラフである。図7において、横軸は、ピーナッツタンパク質濃度を示し、縦軸は、発光量を示す。図7に示すように、ピーナッツタンパク質の濃度依存的に、発光量が増加した。これらのことから、本発明の分析方法および分析キットにより、ピーナッツ等のターゲットを分析できることがわかった。
【0129】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0130】
この出願は、2016年1月22日に出願された日本出願特願2016−011024を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の分析方法によれば、例えば、3分程度と極めて短時間で、且つ優れた分析感度でターゲットを分析できる。また、本発明の分析方法によれば、例えば、メカニズムは不明であるが、前記結合核酸分子の非特異的な結合を抑制できるため、例えば、優れた分析精度(特異性)でターゲットを分析できる。このため、本発明は、例えば、臨床医療、食品、環境等の様々な分野における研究および検査に、極めて有用な技術といえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]