特許第6687275号(P6687275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6687275
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ヘッドホン装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20200413BHJP
   H04S 1/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H04R1/10 101Z
   H04S1/00 500
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-194836(P2019-194836)
(22)【出願日】2019年10月27日
【審査請求日】2019年12月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502098259
【氏名又は名称】小泉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100114269
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貞喜
(72)【発明者】
【氏名】小泉 勇
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−068299(JP,U)
【文献】 特開2017−103604(JP,A)
【文献】 特開2012−080440(JP,A)
【文献】 実開昭53−105701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04S 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハウジング内にそれぞれスピーカーを備えたヘッドホン装置であって、該ヘッドホン装置の左右のハウジング内にそれぞれ所定の長さの音導遅延管(以下「遅延管」という。)を備え、前記ヘッドホン装置の前記スピーカーから放射される音波の一部を前記遅延管の一端から前記遅延管の中に取り込み、該取り込まれた音波を前記遅延管の他端から放射するものであると共に、
該他端は、該他端から放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とするヘッドホン装置。
【請求項2】
前記ヘッドホン装置の一方のチャンネル(以下「Aチャンネル」という。)のスピーカーの音波の一部を集音して、該集音した音波を他方のチャンネル(以下「Bチャンネル」という。)のハウジング内にAチャンネルの間接音として導入するための第1の頭部跨ぎ遅延管と、前記Bチャンネルのスピーカーの音波の一部を集音して、該集音した音波を前記Aチャンネルのハウジング内に前記Bチャンネルの間接音として導入するための第2の頭部跨ぎ遅延管とをさらに備えるとともに、
前記Aチャンネルの前記スピーカーから放射される音波の一部を前記第1の頭部跨ぎ遅延管の一端から前記第1の頭部跨ぎ遅延管の中に取り込み、該取り込まれた音波を前記Bチャンネルのハウジング内に設置された前記第1の頭部跨ぎ遅延管の他端から放射し、
前記Bチャンネルの前記スピーカーから放射される音波の一部を前記第2の頭部跨ぎ遅延管の一端から前記第2の頭部跨ぎ遅延管の中に取り込み、該取り込まれた音波を前記Aチャンネルのハウジング内に設置された前記第2の頭部跨ぎ遅延管の他端から放射するものであると共に、
前記各頭部跨ぎ遅延管の各他端は、該他端から放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッドホン装置。
【請求項3】
前記遅延管は、一端に音波を集音するための集音機能を備えた集音器が形成され、かつ、他端には前記集音された音波を放射するための放射機能を備えた放射器が形成されているとともに、
前記集音器には、取り込んだ音波を効果的に前記遅延管内に導入するための反射器が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドホン装置。
【請求項4】
一対のハウジング内にそれぞれスピーカー(以下「主スピーカー」という。)を備えたヘッドホン装置であって、該ヘッドホン装置は、前記左右のハウジング内にそれぞれ副スピーカーと遅延信号生成部を備え、
前記遅延信号生成部は、1又は2以上の遅延回路を備えた信号遅延部と、該信号遅延部から出力された各遅延信号を混合して増幅出力するミキシングアンプと、それらを駆動する電源とを備え、さらに、
前記ヘッドホン装置の前記主スピーカーを駆動する信号の一部を前記主スピーカーと同じチャンネル側の前記遅延信号生成部で所定の時間遅延処理して、該遅延処理された信号で前記主スピーカーと同じチャンネル側の前記副スピーカーを駆動するとともに、
前記各主スピーカーは、前記各主スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介のF領域に到達するような位置に配置されており、かつ、前記各副スピーカーは、前記各副スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とするヘッドホン装置。
【請求項5】
一対のハウジング内にそれぞれ主スピーカーを備えたヘッドホン装置であって、該ヘッドホン装置は、前記左右のハウジング内にそれぞれ副スピーカーと遅延信号生成部を備え、
前記遅延信号生成部は、1又は2以上の遅延回路を備えた信号遅延部と、該信号遅延部から出力された各遅延信号を混合して増幅出力するミキシングアンプと、それらを駆動する電源とを備え、さらに、
前記ヘッドホン装置の前記主スピーカーを駆動する信号の一部を前記主スピーカーと逆のチャンネル側の前記遅延信号生成部で所定の時間遅延処理して、該遅延処理された信号で前記主スピーカーと逆のチャンネル側の前記副スピーカーを駆動するとともに、
前記各主スピーカーは、前記各主スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介のF領域に到達するような位置に配置されており、かつ、前記各副スピーカーは、前記各副スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とするヘッドホン装置。
【請求項6】
一対のハウジング内にそれぞれ主スピーカーを備えたヘッドホン装置であって、該ヘッドホン装置は、前記左右のハウジング内にそれぞれ副スピーカーと複合遅延信号生成部を備え、
前記複合遅延信号生成部は、1又は2以上の遅延回路を備えた第1の信号遅延部と、前記遅延回路よりも遅延時間の長い1又は2以上の遅延回路を備えた第2の信号遅延部と、前記第1の信号遅延部及び前記第2の信号遅延部から出力された各遅延信号を混合して増幅出力するミキシングアンプと、それらを駆動する電源とを備え、さらに、
前記ヘッドホン装置のAチャンネルの前記主スピーカーを駆動する信号の一部を前記Aチャンネル側の前記複合遅延信号生成部の前記第1の信号遅延部で遅延処理し、さらに、Bチャンネルの主スピーカーを駆動する信号の一部を前記Aチャンネル側の前記複合遅延信号生成部の前記第2の信号遅延部で遅延処理し、それらの各遅延処理された信号を混合増幅した信号で前記Aチャンネルの前記副スピーカーを駆動し、かつ、
前記ヘッドホン装置の前記Bチャンネルの前記主スピーカーを駆動する信号の一部を前記Bチャンネル側の前記複合遅延信号生成部の前記第1の信号遅延部で遅延処理し、さらに、前記Aチャンネルの主スピーカーを駆動する信号の一部を前記Bチャンネル側の前記複合遅延信号生成部の前記第2の信号遅延部で遅延処理し、それらの各遅延処理された信号を混合増幅した信号で前記Bチャンネルの前記副スピーカーを駆動するとともに、
前記各主スピーカーは、前記各主スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介のF領域に到達するような位置に配置されており、かつ、前記各副スピーカーは、前記各副スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とするヘッドホン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドホン装置に関し、特に、間接音を付加することにより音場の前方定位を可能にしたヘッドホン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホン装置全般において、前方定位した聴音が可能なヘッドホン装置は、例えば、下記特許文献1に示すものが知られている。
すなわち、特許文献1に記載のヘッドホン装置は、前方音専用の発音体(スピーカー)と後方音専用のスピーカーを一つのハウジング内に備え、前方音専用スピーカーの音波放射軸が耳珠方向から耳甲介腔の方向に向くように前方音専用スピーカー配置し、かつ、後方音専用スピーカーの音波放射軸が対輪方向から耳甲介腔の方向に向くように後方音専用スピーカー配置することにより、前方音を前方定位し、後方音を後方定位して聴音可能にしたものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1のヘッドホン装置は、前方音専用のスピーカーと後方音専用のスピーカーを独立して設けなければならず、また、音源も前方音と後方音を別々に用意する必要があり、コスト高は避けられなかった。さらに、使用するスピーカーの口径を大きくすると耳介全体に音波を放射することとなり、前方音と後方音を明確に分けることができなくなるという問題があった。
また、これを簡便な方法で解決したものとして、耳介の機能を利用して前方定位を実現したものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−117594号公報
【特許文献2】特開2017−103604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の方法でもまだ十分とは言えない。本発明は、上述のような事情に鑑み為されたものであり、耳介機能を活用して音場再生に適した間接音を有効に鼓膜へ伝達させることが可能なヘッドホン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一対のハウジングを備えたヘッドホン装置に関し、本発明の上記目的は、上記ヘッドホン装置の左右のハウジング内にそれぞれ所定の長さの音導遅延管(以下「遅延管」という。)を備え、上記ヘッドホン装置のスピーカーから放射される音波の一部を上記遅延管の一端から上記遅延管の中に取り込み、該取り込まれた音波を上記遅延管の他端から放射するものであると共に、該他端は、上記他端から放射される音波が、上記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とするヘッドホン装置によって達成される。
【0007】
また、本発明の他の発明は、一対のハウジング内にそれぞれスピーカー(以下「主スピーカー」という。)を備えたヘッドホン装置であって、該ヘッドホン装置は、前記左右のハウジング内にそれぞれ副スピーカーと遅延信号生成部を備え、前記遅延信号生成部は、1又は2以上の遅延回路を備えた信号遅延部と、該信号遅延部から出力された各遅延信号を混合して増幅出力するミキシングアンプと、それらを駆動する電源とを備え、さらに、前記ヘッドホン装置の前記スピーカーを駆動する信号の一部を前記スピーカーと同じチャンネル側の前記遅延信号生成部で所定の時間遅延処理して、該遅延処理された信号で前記スピーカーと同じチャンネル側の前記副スピーカーを駆動するとともに、前記各主スピーカーは、前記各主スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介のF領域に到達するような位置に配置されており、かつ、前記各副スピーカーは、前記各副スピーカーから放射される音波が、前記ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において、前記耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記構成のヘッドホン装置とすれば、前方定位可能で高音質なヘッドホン装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のヘッドホン装置の第1実施形態の例を示す図である。
図2】遅延管の構造を示す断面図である。
図3】ヘッドホン装置のスピーカーと遅延管と耳介の相対位置関係を示す図である。
図4】本発明のヘッドホン装置の第2実施形態の例を示す図である。
図5】スピーカーと頭部跨ぎ遅延管と耳介の相対位置関係を示す図である。
図6】前方定位される音像のおおよそのイメージ図である。
図7】人間の耳介の構造(A)とF領域とR領域の位置(B)を示す図である。
図8】立体音場における直接音と間接音を説明するための図である。
図9】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の例を示す図である。
図10】副スピーカーと耳介のR領域との相対的な位置関係を示す図である。
図11】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第1実施例のブロック図である。
図12】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第2実施例のブロック図である。
図13】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の遅延信号生成部のブロック図である。
図14】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第3実施例のブロック図である。
図15】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の複合遅延信号生成部のブロック図である。
図16】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第1実施例の変形例のブロック図である。
図17】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第2実施例の変形例のブロック図である。
図18】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第3実施例の変形例ブロック図である。
図19】本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の変形例において、信号遅延ユニットの代わりに既存のマルチチャンネル音源を用いた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る前方定位可能なヘッドホン装置について説明する。その前に、まず、本発明者が経験的に知得した前方定位のメカニズムについて説明するため、基本となる事項について説明する。
【0011】
図7は、人間の耳介の構造を示す図であり、図7(A)は各部の名称を示すものであり、図7(B)は、その中でも特に、人間が前方音か後方音かを聞き分けるのに重要な役割を果たす受音領域である耳甲介腔の領域について説明するための図である。
いま、耳甲介腔のうち、耳珠701に近い領域703を「R領域」、対輪702に近い領域704を「F領域」と称するものとする。
【0012】
本発明者は、R領域703が後方音を集音する領域であり、F領域704が前方音を集音する領域であることをこれまでの経験により知得し、かつ、実験によって確認した。
耳輪方向から対輪方向に向かって耳甲介へ(以下単に「対輪方向から耳甲介へ」という。)放射された音波は回り込みを考慮しなければ解剖学的な立体構造からして、主としてR領域に到達することになる。対輪にすぐ連なるF領域へは、音波が対輪によって遮られ、F領域は、いわば対輪の陰に入ってしまうからであると考えられる。
【0013】
次に、音源から発せられた音波が人間の耳に届くまでの経路を図8に基づいて説明する。
図8において、801は人間の頭を上方から見たものであり、鼻802の方向が前方である。今、ステレオ音源の左音源803(右音源は省略)から放射された音波804は、左耳に直接音として到達し耳甲介のF領域で集音される。一方、左音源803から放射された音波805は、壁805a、805b、805cで反射されて、左耳に間接音(遅延音)として到達し耳甲介のR領域に投射される。
【0014】
また、左音源803から放射された音波806は、壁806c、806b、806aで反射されて、右耳に(左音源の)間接音として到達し、右耳の耳甲介のR領域に投射される。同様に、図示していないが、図の人間の左耳のR領域で右音源(不図示)の間接音が集音される。
また、図示していないが、人間の右耳のF領域に右音源の直接音が集音され、R領域には右音源と左音源の間接音が集音される。
【0015】
間接音と直接音とによって前方定位感を知覚するのは、人間の脳が生まれてからその発達過程において、視覚からの情報と直接音と間接音の複合的な情報がその経験の記憶の積み重なりとなり脳の聴覚中枢で統合され、音からの情報による空間位置情報の知覚がデーターベース化されて認識されると考えられている。
上述した通り、直接音はF領域へ、間接音はR領域に放射すれば聴覚中枢で前方定位として認識されるのだと思われる。
従って、間接音がより多ければ、脳における音源の位置情報をより正確に引き出せると考えられる。
【0016】
次に、本発明に係るヘッドホン装置1について、図面を参照しつつ説明する。図1は第1実施形態を示すものであり、ヘッドバンド2を介して図示しないヘッドホンスピーカー(以下単に「スピーカー」という。)を格納するハウジング3が左右に設けられている。
ハウジング3には渦巻状の遅延管4が装着されており、さらに、遅延管4の一方の端部には集音部4aが形成されてスピーカーの上方の任意の空間に位置するように設置される。また、遅延管4の他端には、集音部4aで集音され遅延管4の中を通って遅延された音波が放射される放射部4bが形成されている。そして、放射部4bは、後述の図3に示すように、音波が対輪方向から耳甲介のR領域に放射されるような位置に配置される。この遅延管4を通って放射される音が間接音として作用し、スピーカーからの直接音と重畳されることによって、前方定位を可能にする。音波伝達時間を調節させるためには遅延管を渦巻き状に成型し、その長さを調整すれば遅延時間の調節が可能になる。
【0017】
図2は、遅延管4を説明上直線状としたときの断面図である。遅延管4の音波入力端として機能させる端に集音部4aを設ければ、より効果的に音波を集音し音波入力端として機能させることが出来る。集音部4aの形状は例えばパラボラ形として、その焦点に反射板4cを配置すれば、音波を反射させて遅延管の中に音波を効果的に導入することができる。こうすることにより音波放射部4bにまで有効に音波を伝達させることが可能となる。そして、もう一端を音波放射部4bとして機能させ、遅延された間接音を放射させることができる。
【0018】
図3は、スピーカー5と遅延管4と耳介の相対位置関係を示す図である。スピーカー5から放射された音波がスピーカーの上方の任意の空間に設けられた(遅延管4の)集音部4aに入り、遅延管の中を通って放射部4bから、左耳の対輪方向から耳甲介のR領域へ向けて放射される様な位置に放射部4bが設置されることを示している。なお、スピーカー5から放射された直接音は耳甲介のF領域に到達する。
【0019】
図4は、本発明に係るヘッドホン装置の第2実施形態を示すものであり、第1実施形態と異なる点は、図面の左側のチャンネル(「右チャンネル」という。)のスピーカーから放射された音波を集音して、それを図面の右側のチャンネル(「左チャンネル」という。)のハウジング3内に導入して放射するための遅延管7が設けられていることである。この遅延管7は、ヘッドバンド2の内部を通して頭部を跨いでいるので、「頭部跨ぎ遅延管」と称することにする。頭部跨ぎ遅延管7の構造は図2に示す遅延管と同じである。すなわち、図4に示すように、右チャンネルのスピーカー(不図示)から放射された音波を集音部7aで集音し、頭部跨ぎ遅延管7を通して左チャンネルのハウジング3内に導入し、放射部7bから放射するようになっている。
【0020】
同様に、左チャンネルのスピーカー(不図示)から放射された音波を集音部6aで集音し、頭部跨ぎ遅延管6を通して右チャンネルのハウジング3内に導入し、放射部6bから放射するようになっている。それ以外は第1実施形態と同じである。
この効果を図8と対照させて説明すると(左チャンネルについて説明する。)、図8における左音源からの直接音804が、図4における左チャンネルのスピーカーからの直接音であり、図8における左音源からの間接音805が、図4における左チャンネルの放射部4bから放射される間接音である。
【0021】
また、図8には図示していないが、右音源の間接音も後ろ側から左耳に到達するようになっており、この間接音が図4の放射部7bから放射される(右チャンネルの)間接音である。
なお、図8における左音源からの間接音806が、図4における右チャンネルの放射部6bから放射される左チャンネルの間接音である。
このように構成することにより、第1実施形態よりもさらに前方定位効果が増すことが実験で確認された。
また、図4では頭部跨ぎ遅延管6、7はヘッドバンド2の内部を通して他方のハウジングと繋がっているが、頭部跨ぎ遅延管は必ずしも頭部を跨ぐ必要はなく、例えば、顎の下又は首の後ろ側を跨ぐようにしても構わないことは言うまでもない。
【0022】
図5は、スピーカー5と遅延管4、6及び7と耳介の相対位置関係を示す図である。図3と共通する箇所の説明は省略する。
右チャンネルのスピーカー5から放射された音波が遅延管7の集音部7aに入り、頭部跨ぎ遅延管7の中を通って左チャンネルに入り、放射部7bから左耳の対輪方向から耳甲介のR領域へ向けて放射される様な位置に放射部7bが設置されることを示している。
同様に、左チャンネルのスピーカー5から放射された音波が遅延管6の集音部6aに入り、頭部跨ぎ遅延管6の中を通って右チャンネルに入り、放射部6bから右耳の対輪方向から耳甲介のR領域へ向けて放射される様な位置に放射部6bが設置されることを示している。
なお、スピーカー5から放射された直接音は耳甲介のF領域に到達する。
【0023】
図6は、本発明に係るヘッドホン装置を用いた場合の音場定位のイメージを表すものである。普通のヘッドホン装置では音場は頭内に定位されるが、本発明に係るヘッドホン装置では、経験的に、図に示すように頭の前方に定位されることが確かめられている。しかし、効果の度合いには個人差があり、耳介の形状が関係していることが経験的にわかっている。理想的には、個人の耳介の形状に合わせて、放射部4b、6b(左チャンネルにおいては、4b、7b)の設置位置を調整すればさらに良好な前方定位効果が得られる。
なお、本発明に係るヘッドホン装置は、ステレオ音源のみならず、モノラル音源においても前方定位効果が得られる。
【0024】
図9は、本発明に係るヘッドホン装置の第3実施形態を示すものであり、第1及び第2実施形態が遅延管を用いて間接音を作り出しているのに対して、第3実施形態は、遅延管の代わりに、ヘッドホン装置に入力された音声信号を電気的に遅延させる遅延信号生成部を備え、生成された遅延信号を間接音として放射する副スピーカー8をさらに備えている点が特徴である。第3実施形態には2つの変形例を含めて全部で3つのパターンがあり、遅延信号生成部の構成がそれぞれ異なっている。これについては後述する。
【0025】
図10は、ハッドホンを耳に装着した状態における副スピーカー8と耳介のR領域との相対的な位置関係を表したものである。ヘッドホンを装着した状態で副スピーカーから放射された音波が耳介のR領域に到達するような位置に、副スピーカーを設置すればよい。
【0026】
図11は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第1実施例のブロック図である。この第1実施例は、同じチャンネルの副スピーカー8には同じチャンネルの入力信号を遅延させた信号を入力させることが特徴である。
すなわち、左チャンネルの主スピーカー5には左チャンネルの入力信号を直接音として入力し、左チャンネルの副スピーカー8には左チャンネルの入力信号を遅延信号生成部9で遅延させ、左チャンネルの間接音として入力させる。右チャンネルについても同様である。なお、遅延信号生成部9については後述する。
この効果を、図8を用いて説明する。図8の804で示される音(直接音)が、左チャンネルの主スピーカー5から放射される音に対応し、図8の805で示される音(間接音)が左チャンネルの副スピーカー8から放射される音に対応する。
【0027】
図12は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第2実施例のブロック図である。この第2実施例は、一方のチャンネルの副スピーカー8には逆のチャンネルの入力信号を遅延させた信号を入力させることが特徴である。
すなわち、左チャンネルの主スピーカー5には左チャンネルの入力信号を直接音として入力し、左チャンネルの副スピーカー8には右チャンネルの入力信号を遅延信号生成部9で遅延させ、右チャンネルの間接音として入力させる。
【0028】
また、右チャンネルの主スピーカー5には右チャンネルの入力信号を直接音として入力し、右チャンネルの副スピーカー8には左チャンネルの入力信号を遅延信号生成部9で遅延させ、左チャンネルの間接音として入力させる。
この効果を、図8を用いて説明する。図8の804で示される音(直接音)が、左チャンネルの主スピーカー5から放射される音に対応し、図8の806で示される音(間接音)が右チャンネルの副スピーカー8から放射される音に対応する。
【0029】
図13は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の遅延信号生成部9の構成を示す図である。
遅延信号生成部9は、n個(n=1,2…,n)の遅延回路1_1〜1_nを含む信号遅延部9aと、各遅延回路の出力を混合して増幅するミキシングアンプ9b及びそれらを駆動する電源9cを備えている。
入力された音声信号は、信号遅延部9aで所定の時間分遅延処理され、ミキシングアンプ9bで混合増幅されて出力される。
【0030】
また、各遅延回路1_1〜1_nはそれぞれ遅延時間が異なるように設定される。遅延回路を複数設ける理由は次のとおりである。すなわち、通常の部屋やホール(残響音となる)では無数方向からの反射音が耳に入り、人間はこれを聞いて部屋の大きさやホールの響きの心地よさを感じているが、反射する場所によって人間の耳に届く時間にずれが生ずる。言い換えれば、遅延時間の異なる複数の間接音が耳に入ることになる。これを人工的に作り出すために、n個の遅延回路を設けて、その出力を混合して副スピーカーから出力することにより、模擬的な音響空間を作り出すことが可能になる。
さらには、世界の有名なホール、例えばカーネギーホールの残響音(遅延時間)を測定してその遅延時間に設定すれば、そのホールに近い音響で聞くことが出来ることになる。
なお、効果的な遅延時間は個体の耳の形状とは関係がない。遅延時間は脳内の聴覚中枢に蓄積されたデーターベースとの照合で空間知覚が生じるからである。
【0031】
信号の遅延処理には、例えばDSP(Digital Signal Processor)が利用可能である。また、専用の遅延回路を用いてもよい。n種類の遅延時間のnの数を増やせばより高音質となる。
電源9cは、ハウジング内に備えた一次電池や二次電池(リチウムイオン電池等)でもよいし、ヘッドホン装置を駆動する外部のアンプから音声信号のコードとは別コードでハウジング内の遅延信号生成部に電力を供給するようにしてもよい。
【0032】
なお、第2実施例における遅延信号生成部9における遅延時間は、第1実施例における遅延信号生成部9の遅延時間よりも長く設定するのが好ましい。すなわち、逆チャンネルの間接音は、同チャンネルの間接音と比較すると遅延時間が長くなると考えられるからである。
【0033】
図14は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第3実施例のブロック図である。
この第3実施例は、概念的には上述の第1実施例と第2実施例を合体したものである。
すなわち、一つのチャンネル内の副スピーカー8に、同じチャンネルの入力信号を遅延させた信号と逆チャンネルの入力信号を遅延させた信号を合成したものを入力させることが特徴である。
【0034】
すなわち、左チャンネルの主スピーカー5には左チャンネルの入力信号を直接音として入力し、左チャンネルの副スピーカー8には、左チャンネルの入力信号(入力1)と右チャンネルの入力信号(入力2)を複合遅延信号生成部10に入力してそれぞれ遅延信号を生成し、それを合成した信号を入力するものである。
また、右チャンネルの主スピーカー5には右チャンネルの入力信号を直接音として入力し、右チャンネルの副スピーカー8には、右チャンネルの入力信号(入力1)と左チャンネルの入力信号(入力2)を複合遅延信号生成部10に入力してそれぞれ遅延信号を生成し、それを合成した信号を入力するものである。
このように構成することにより、一つのチャンネル内に、同チャンネルの直接音、同チャンネルの間接音及び逆チャンネルの間接音が供給されることになり、音の厚みがさらに深まることになる。なお、複合遅延信号生成部10の構成については次に説明する。
【0035】
図15は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第3実施例の複合遅延信号生成部10のブロック図である。
複合遅延信号生成部10は、第1実施例における遅延信号生成部9と第2実施例における遅延信号生成部9の機能を併せ持つものである。すなわち、同チャンネルの入力信号(入力1)の遅延処理を行うための第1の信号遅延部9aと、逆チャンネルの入力信号(入力2)の遅延処理を行うための第2の信号遅延部9dとを備え、第1の信号遅延部9a及び第2の信号遅延部9dから出力される遅延信号を混合して増幅するミキシングアンプ9b、及びそれらを駆動する電源9cを備えている。
なお、第2の信号遅延部9dは、n個(n=1,2…,n)の遅延回路2_1〜2_nを含むものであるが、第1の信号遅延部9aとの違いは、遅延回路2_1〜2_nの遅延時間が第1の信号遅延部9aの遅延回路1_1〜1_nの遅延時間よりも長いという点のみである。その理由は上述のとおりである。
【0036】
図16は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第1実施例の変形例のブロック図である。図11の第1実施例と異なるのは、2つの遅延信号生成部9がハウジングの外に信号遅延ユニットとして設置されている点のみである。この信号遅延ユニットは、ヘッドホン装置と音源駆動アンプ(不図示)とを接続するケーブルに内蔵してもよいし、あるいは音源駆動アンプ内に内蔵させてもよい。こうすることにより、ヘッドホン本体の構造が簡単になる。
また、すでに遅延処理された音源がある場合は、信号遅延ユニットを介さずに直接その遅延された信号をヘッドホンに入力すれば同じ効果が得られるというメリットがある。
例えば、図19に示すようにマルチチャンネル音源の場合、左後方音信号(以下「LRS」と言う。)、右後方音信号(以下「RRS」と言う。)には、左前方音信号(LFS)や右前方音信号(RFS)の遅延信号音が多く含まれているので、信号遅延ユニットなしでLRSを左副スピーカー8へ、RRSを右副スピーカー8へ直接出力すれば同様な効果が得られる。
【0037】
図17は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第2実施例の変形例のブロック図である。図12の第2実施例と異なるのは、2つの遅延信号生成部9がハウジングの外に信号遅延ユニットとして設置されている点のみである。
また、図18は、本発明のヘッドホン装置の第3実施形態の第3実施例の変形例ブロック図である。図14の第3実施例と異なるのは、2つの複合遅延信号生成部10がハウジングの外に信号遅延ユニットとして設置されている点のみである。
【0038】
以上で実施形態の説明を終わるが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
さらに、以上説明した各実施形態、動作の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
1:ヘッドホン装置、2:ヘッドバンド、3:ハウジング、4:音導遅延管、4a:集音部、4b:放射部、4c:反射部、5:スピーカー、6:頭部跨ぎ遅延管、7:頭部跨ぎ遅延管、8:副スピーカー、9:遅延信号生成部、9a:第1の信号遅延部、9b:ミキシングアンプ、9c:電源、9d:第2の信号遅延部、10:複合遅延信号生成部、702:対輪、703:R領域、704:F領域

【要約】
【課題】耳介機能を活用して音場再生に適した間接音を有効に鼓膜へ伝達させることが可能なヘッドホン装置を提供する。
【解決手段】一対のハウジングを備えたヘッドホン装置であって、ヘッドホン装置のハウジング3内に所定の長さの音導遅延管4(以下「遅延管」という。)を備え、ヘッドホン装置のスピーカーから放射される音波の一部を遅延管4の一端4aから遅延管4の中に取り込み、取り込まれた音波を遅延管4の他端4bから放射するものであると共に、他端4bは、そこから放射される音波が、ヘッドホン装置が耳介に装着された状態において耳介の対輪方向から耳甲介のR領域に到達するような位置に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
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