特許第6687308号(P6687308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687308
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】被覆粒状農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/26 20060101AFI20200413BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20200413BHJP
   A01N 43/32 20060101ALI20200413BHJP
   A01P 7/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A01N25/26
   A01N25/00 101
   A01N43/32
   A01P7/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-44420(P2016-44420)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-160138(P2017-160138A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷垣内弘毅
(72)【発明者】
【氏名】米川努
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/051091(WO,A1)
【文献】 特開平11−005703(JP,A)
【文献】 特開2015−231987(JP,A)
【文献】 特開昭59−186903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/26
A01N 25/00
A01N 43/32
A01P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機鉱物質粒核表面に農薬活性成分及びフィラーを含む農薬活性成分の層を有し、その外殻に水性エマルション樹脂とフィラーを含む樹脂層を被覆層として有し、前記農薬活性成分の層と水性エマルション樹脂とフィラーを含む前記樹脂層の間に挟み込まれるフィラーを含む中間層を有し、農薬活性成分の層、中間層及び樹脂層が積層してなり、前記農薬活性成分がチオシクラムであり、前記樹脂層及び前記中間層におけるフィラーがヒマシ硬化油粉末であり、前記農薬活性成分の層は、水性エマルションを含む農薬活性成分の層、若しくはベントナイト、デンプン及び吸水性高分子からなる群から選択される膨潤剤を含む農薬活性成分の層であることを除く、持続的な放出制御がされる被覆粒状農薬組成物。
【請求項2】
水性エマルション樹脂の最低造膜温度(MFT)が40℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆粒状農薬組成物。
【請求項3】
無機鉱物質粒核の粒子径が0.5〜2mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆粒状農薬組成物。
【請求項4】
フィラーが平均粒径0.1〜100μm以下の粉末であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
【請求項5】
バインダーが農薬活性成分の層及び中間層に含まれており、バインダーとして常温液体で不揮発性の有機化合物を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農薬活性成分の環境中への放出を制御し、放出期間を長期化させることにより所望の期間の効力を発現させることができる被覆農薬粒剤組成物に関する。詳しくは、農薬活性成分、各種水性エマルション樹脂を無機鉱物質粒核に被覆して得られる被覆粒状農薬組成物に関し、水溶解度が高い又は蒸気圧の高い農薬活性成分の放出を制御して放出期間を長期化させ、散布回数を減らして省力化を可能にする農薬粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業従事者の高齢化が益々深刻になり、農作業の省力化が求められている。それに伴い農薬も省力散布製剤やその散布方法に関する技術が検討されている。さらに、環境負荷低減という面から農薬の使用量及び使用回数の減少と使用期間の早期化が望まれる。これらの要請を受け、農薬活性成分の溶出制御、溶出期間の長期化を目的とした農薬粒剤の開発が行われている。そこで、農薬活性成分の農薬製剤中から土壌中及び水中への放出速度を制御する製剤技術の開発が必要となるが、農薬活性成分の放出を制御する製剤としてはこれまでにも様々な基材を用いた農薬粒剤が開発されている。
このような放出制御粒剤として、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体や、各種樹脂等の疎水性材料を基材として用いて練り込み造粒するもの(特許文献1〜4)、農薬活性成分を含有する液体をマイクロカプセル化するもの(特許文献5)、農薬活性成分を含有する顆粒を被覆するもの(特許文献6〜8)、ワックスのエマルションと撥水性粉末をコーティング後、加熱乾燥するもの(特許文献9)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−178102号公報
【特許文献2】特開平11−292706号公報
【特許文献3】特開2000−351705号公報
【特許文献4】特開2011−6396号公報
【特許文献5】特開平11−314032号公報
【特許文献6】特開平11−005704号公報
【特許文献7】特開2007−119442号公報
【特許文献8】特公昭52−21059号公報
【特許文献9】特開2000−239105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は新たな技術により、粒剤に含有された農薬活性成分を初期の放出を抑えつつ長期間の放出を保つ徐放性粒剤を提供することを目的とする。特に水溶解度や蒸気圧が高く、加熱により分解や揮発が生じる農薬活性成分を安定に徐放性粒剤へと製剤化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)無機鉱物質粒核表面に農薬活性成分の層を形成し、その外殻に水性エマルション樹脂とフィラーによって形成された樹脂層を被覆層として有する被覆粒状農薬組成物。
(2)農薬活性成分が20℃における水溶解度が50ppm以上、または20℃における蒸気圧が0.5mPa以上であることを特徴とする(1)に記載の被覆粒状農薬組成物。
(3)水性エマルション樹脂の最低造膜温度(MFT)が40℃以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の被覆粒状農薬組成物。
(4)無機鉱物質粒核の粒子径が0.5〜2mmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
(5)フィラーが平均粒径0.1〜100μm以下の粉末であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
(6)農薬活性成分の層と、水性エマルション樹脂とフィラーを含む樹脂層の間にフィラーによって形成された中間層を有する(1)〜(5)のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
(7)バインダーとして不揮発性有機溶剤を含有する(1)〜(6)のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
(8)農薬活性成分がチオシクラムまたはダイアジノンである(1)〜(7)のいずれか一項に記載の被覆粒状農薬組成物。
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の被覆農薬粒剤組成物は、農薬活性成分の放出を所望の速度に制御できる農薬粒剤を容易に得られる。これにより初期の農薬活性成分の放出を抑え、長期間にわたって農薬活性成分を放出することを可能にし、農作業の省力化、農薬使用量及び使用回数の削減に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の被覆農薬粒剤組成物についてより詳しく説明する。
本発明の被覆農薬粒状組成物は無機鉱物質粒核の周囲に農薬活性成分の被覆層を有し、その外側に水性エマルション樹脂とフィラーを含む放出制御層を形成させた被覆農薬粒状組成物である。
【0009】
本発明の被覆農薬粒状組成物に用いられる農薬活性成分は、農薬殺虫活性成分、農薬殺菌活性成分、除草活性成分のいずれでもよく、またこれらに限定されるものではない。用いられる農薬活性成分は基本的には制限はないが、具体的には例えば次のようなものが挙げられる。
【0010】
農薬殺虫活性成分としては、例えば、フェニトロチオン、フェンチオン、ダイアジノン、アセフェート、シアノホス、ジメトエート、フェントエート、マラチオン、トリクロルホン、モノクロトホス、エチオン等の有機リン系化合物、BPMC、ベンフラカルブ、カルボスルファン、メソミル、アルジカルブ、オキサミル、フェノチオカルブ等のカーバメート系化合物、エトフェンプロックス、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、シペルメトリン、ペルメトリン、シハロトリン、デルタメトリン、シクロプロトリン、フルバリネート、ビフェンスリン、ハルフェンプロックス、トラロメトリン、シラフルオフェン、d―フェノトリン、シフェノトリン、d―レスメトリン、アクリナスリン、シフルトリン、テフルトリン、トランスフルスリン、テトラメトリン、アレトリン、プラレトリン、エンペントリン、イミプロスリン、d―フラメトリン等のピレスロイド系化合物、ブプロフェジン等のチアジアジン誘導体、ニトロイミダゾリジン誘導体、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ等のネライストキシン誘導体、N―シアノ―N―メチル―N′―6―クロロ―3―ピリジルメチル)アセトアミジン等のN―シアノアミジン誘導体、エンドスルファン、ジコホル等の塩素化炭化水素化合物、昆虫成長制御化合物であるクロルフルアズロン、テフルベンズロン、フルフェノクスロン等のベンゾイルフェニルウレア系化合物、アミトラズ、クロルジメホルム等のホルムアミジン誘導体、ジアフェンチウロン等のチオ尿素誘導体、N―フェニルピラゾール系化合物、イミダクロプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、チアメトキサム等のネオニコチノイド系化合物、テブフェノジド、クロマフェノジド等のジアシルヒドラジン系化合物、メタアルデヒド、メトキサジアゾン、ブロモプロピレート、テトラジホン、キノメチオネート、プロパルギット、フェンブタティンオキシド、ヘキシチアゾクス、クロフェンテジン、ピリダベン、フェンピロキシメート、デブフェンピラド、ポリナクチンコンプレックス、ピリミジフェン、ミルベメクチン、アバメクチン、イベルメクチン、アザジラクチン、スピノサド、スピネトラム、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール等を挙げることができ。
【0011】
農薬殺菌活性成分としては、例えば、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート系化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール系化合物;メタラキシル等のアシルアラニン系化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、イソチアニル、ボスカリド等のカルボキシアミド系化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン系化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン系化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール系化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、SSF−126等のメトキシアクリレート系化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、CGA245704、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等を挙げることができる。
【0012】
除草化合物としては、例えば、アトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6―ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;メソトリオン、テフリルトリオン等のトリケトン系化合物;フェノキサスルホン等のスルホニルイソキサゾリン系化合物;ビスピリバックNa塩、ビスチオバックNa塩、アシフルオルフェンNa塩、サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン等を挙げることができる。
【0013】
本発明に於いてはこれらの中でも、水溶解度や蒸気圧が高い農薬活性成分が好適である。具体的な一例としては水溶解度が高いものとしてチオシクラムシュウ酸塩やカルタップ塩酸塩などのネライストキシン系農薬活性成分が挙げられ、20℃における水溶解度が50ppm以上が、好ましい。また、蒸気圧の高いものとしてダイアジノン等の有機リン系活性成分が一例として挙げられ、20℃における蒸気圧が0.5mPa以上が、好ましい。これらの農薬活性成分はその水溶解度及び蒸気圧の高さから農薬粒状組成物の外に放出されやすく、技術的な工夫を施さなければ施用から程なく製剤から放出され、圃場環境の影響を受けて流亡及び分解されて速やかに効力を発現する濃度以下まで低下する。当然ながら本発明に置いて使用できる農薬活性成分はこれらに限らない。また、農薬活性成分を単独又は2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明の農薬粒剤組成物中の農薬活性成分の含有割合は、通常1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%である。粒剤中の含有量が1質量%に満たない場合は農薬活性成分の十分な効力発現が期待できず、30質量%を超えると農薬活性成分の水中への溶出が十分に制御し得ないために長期の残効を期待できない。
【0015】
本発明に使われる無機鉱物質粒核としては、例えば珪砂粒、ロウ石粒、炭酸カルシウム粒、セリサイト粒、ベントナイト粒、ゼオライト粒、珪藻土粒、軽石粒、アタパルジャイト粒、海砂粒、河川砂粒などを例示できるがこれらに限定されるものではない。本発明に用いられる農薬活性成分の性質に応じて物理化学的性質を勘案して使用する無機鉱物質粒核を選定する。
【0016】
本発明に使われる無機鉱物質粒核の粒度は、最終製剤もしくは次の段階の製造工程に要求される粒度の範囲の中で適切なものを適時選択すればよく、そのまま農薬製剤として利用する場合は0.1〜3mmの範囲であり、好ましくは0.5〜2mmである。本発明において散布及び製造条件の観点から、無機鉱物質粒核のグラム留数は通常100〜1500粒/g、好ましくは150〜1200粒/g、更に好ましくは200〜800粒/gである。グラム粒数とは、粒核1g中における平均粒数を意味し、例えば粒数を測定し、採取した粒核のグラム数で除することに求めることができる。また、当該無機鉱物質粒核は物理的な強度の観点から、実質的に均質で一体であるものが好ましい。
【0017】
本発明における樹脂層は、通常水性エマルション樹脂とフィラーにより形成される。また、使われる水性エマルション樹脂は水中に微小な樹脂の粒子を分散させたものの総称である。無機鉱物質粒核の表面に被覆した有効成分の上層に樹脂層を設けるため、水性エマルションの状態で樹脂を被覆する。その後、水分を除去し、樹脂の粒子同士がつなぎ目なく接着し合い、粒表面に樹脂層を形成する。この樹脂層形成は樹脂によって決まった温度以上で生じ、この温度を最低造膜温度(MFT)と呼ぶ。樹脂層形成のために加熱温度が高くなることで農薬活性成分の分解や、揮発による含量低下だけでなく、造膜が不完全になるおそれがあるため、使用する水性エマルション樹脂中の樹脂のMFTは40℃以下が推奨される。こうして形成された樹脂層が製剤中の有効成分と田面水や土壌などの外部環境とを隔てる役割を果たし、結果として農薬活性成分の放出が抑えられる。
【0018】
本発明に使われる水性エマルション樹脂は樹脂モノマーを水中に乳化分散させた状態で重合反応させる、または樹脂を水中で粉砕させて細かくして分散させるなどして作られる。樹脂は例えばポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとエチレンの共重合体、酢酸ビニルとエチレン、及び塩化ビニルの共重合体、ポリ塩化ビニリデン、酢酸ビニルとバーサチック酸ビニルの共重合体、ポリアクリル酸エステル、アクリル酸エステルとスチレンの共重合体、アクリル酸エステルとエチレンの共重合体、アクリル酸エステルとシリコーンの共重合体、ポリウレタン、ポリウレアなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種または2種以上併用してもよい。
【0019】
本発明中の水性エマルション樹脂の含有割合は、水性エマルション樹脂中の樹脂固形分として通常0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。1質量%を下回ると被覆粒状農薬組成物中の農薬活性成分の放出を制御できず、30質量%を上回るとエマルション中の水分が過多になるため、樹脂の被覆が困難となる。
【0020】
水性エマルション樹脂を無機鉱物質粒核の外層に保持させるため、水性エマルションを無機鉱物質粒核の外側に均一塗布した後、フィラーを添加することで樹脂層を無機鉱物質粒核の表面に保持させることができる。このフィラーによって樹脂層の厚さを調整することができ、被覆層を厚くすると農薬成分の溶出を遅くすることができる場合がある。また、無機鉱物質粒核表面に液体の農薬活性成分を被覆するため、フィラーに液体の農薬活性成分を吸着させて無機鉱物質粒核表面に被覆することができる。本発明に用いられるフィラーとなる粉体は農薬活性成分や水性エマルション樹脂を無機鉱物質粒核の表面にできるものであればよく、通常平均粒径は0.1〜100μmであり、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。本発明で用いられるフィラーとしては、例えばクレー、シルト、炭酸カルシウム、アッシュメント、珪藻土、ホワイトカーボン、カオリン、タルク、白土、硫酸バリウム、パーライト、ベントナイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、バーミキュライト、でんぷん、セルロース、小麦ふすま粉末、パルプ粉末、ヒマシ硬化油粉末、シクロデキストリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種または2種以上併用してもよい。
【0021】
また、これらのフィラーは農薬活性成分層と、水性エマルション樹脂とフィラーを含む樹脂層の間に挟み込まれる中間層を形成するために用いても良い。その際、フィラーを粒核表面に被覆するためにバインダーを用いることができる。バインダーは常温液体で不揮発性の有機化合物の中から選択でき、流動パラフィン、シリコーン、ポリエチレングリコール、動植物油などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明に用いられるフィラーの含有割合は被覆する水性エマルション樹脂の重量や、水性エマルション樹脂中に含まれる水分量や用いるフィラーの比重によって適宜調整が必要となるが、通常0.5〜50重量%であり、好ましくは1〜30重量%である。0.5%を下回ると樹脂がフィラーに対して過多となるため、被覆粒状農薬組成物表面の樹脂のタック性によって粒同士が接着し、団粒が生じる。また、50重量%を上回ると樹脂がフィラーに対して不足し、フィラーが余るだけでなく、樹脂層に多量のフィラーが含まれることで当該製剤内から農薬活性成分が外部へ放出されやすくなり、かえって放出が制御できなくなる。
【0023】
本発明の被覆粒状農薬組成物は農薬活性成分を粒核に被覆するためにバインダーを用いることができる。バインダーは常温液体で不揮発性の有機化合物の中から選択でき、流動パラフィン、シリコーン、ポリエチレングリコール、動植物油などが挙げられ、農薬活性成分との反応性を持たないことが条件となることから、中でも流動パラフィンはバインダーとして好ましい。
【0024】
本発明の被覆粒状農薬組成物は、無機鉱物質粒核表面に農薬活性成分層や樹脂層を形成する際、必要に応じて界面活性剤を含有しても良い。界面活性剤としては例えば、リグニンスルホン酸塩、(アルキル)ナフタレンスルホン酸塩、及びその縮合物、フェノールスルホン酸塩及びその縮合物、スチレンスルホン酸塩の縮合物、マレイン酸とスチレンスルホン酸との縮合物の塩、アクリル酸やマレイン酸などのカルボン酸縮合物の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ラウリルサルフェートの塩、ポリオキシエチレン(以下、POE)アルキルエーテルサルフェートの塩、POEアルキルアリールエーテルサルフェートの塩、POEアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩、POEアルキルアリールエーテルリン酸エステル及びその塩などのアニオン性界面活性剤や、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩、POEアルキルエーテル、POEアルキルアリールエーテル、POEラノリンアルコール、POEアルキルフェノールホルマリン縮合物、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン(POP)グリコールモノ脂肪酸エステル、POEソルビトール脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEヒマシ油誘導体、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE−POPブロックポリマー、POE脂肪酸アミド、アルキロールアミド、POEアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の被覆粒状農薬組成物に置いて、界面活性剤は通常0〜30質量%、好ましくは0〜15%であり、1種または2種以上の組み合わせで使用される。
【0025】
本発明の被覆農薬粒状組成物は上記各成分に加えて必要に応じて被覆層に安定剤、防腐剤、着色剤の添加物を適宜含有することができる。安定剤は農薬活性成分の分解を抑えられる知見のあるものであればよく、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。
【0026】
本発明の被覆粒状農薬組成物の製造において、無機鉱物質粒核の表面に被覆する工程に用いられる機械としては、特に装置に制限はなく、慣用の者を用いることができる。例えば、回転パン、回転ドラム、コンクリートミキサー、ナウターミキサー、リボンミキサー、ダブルコーンミキサー等が挙げられるが、この限りではない。
【0027】
被覆工程は通常一般に行われている被覆法を用いて行うことができる。例えば、液体の農薬活性成分の場合、無機鉱物質粒核に液体の農薬活性成分を加えて混合して均一に行き渡らせた後、ここにフィラーを加えて更に混合し、無機鉱物質粒核表面に農薬活性成分の層を形成する。また、固体の農薬活性成分の場合、無機鉱物質粒核にバインダーを加えて混合して均一に行き渡らせた後、ここに固体の農薬活性成分を加えて更に混合し、無機鉱物質粒核表面に農薬活性成分の層を形成する。こうして無機鉱物質粒核表面に形成した農薬活性成分の層の上に水性エマルション樹脂を加えて混合し、均一に行き渡らせた後、フィラーを加えて更に混合して樹脂層を形成する。一般的に水性エマルション樹脂中に水分が40〜70質量%含まれるため、一度に厚い樹脂層を形成することが困難な場合は、被覆回数を複数回に分けることができる。
【0028】
被覆完了後、樹脂を被覆した層に残存する水分を取り除くことで樹脂の粒子同士が密着してマトリックス状にフィラーが内在した樹脂層を形成する。水分の乾燥方法に特段制限はなく、樹脂層が形成できる温度以上で、農薬活性成分の安定性が十分に担保できる程度に水分を除去できればよい。乾燥方法の例としては、室温で風乾、流動層乾燥機、棚乾燥機、コニカルドライヤー、ナウターミキサーによる乾燥、恒温槽などが挙げられる。乾燥温度についても水分が除去でき、農薬活性成分が分解や揮発によって有意に低下しない条件であれば特段制限はない。
【0029】
本発明の被覆粒状農薬組成物は一般的に農薬粒剤を施用する方法によって使用することができる。例えば、直接手で散布する方法や、パイプ散粒機、空中散粒機、背負い式散粒機、動力散粒機、トラクター搭載型散粒機、育苗箱用散粒機、多口ホース散粒機、散粒機を搭載した田植機等を用いた施用にも活用できる。また、本発明の被覆粒状農薬組成物を水田や畑地において使用する場合には、その施用量は10アール当たり0.1〜40kg、好ましくは0.5〜20kgである。
【0030】
本発明の被覆粒状農薬組成物は例えば、水田、乾田、育苗箱、畑地、果樹園、桑畑、温室、露地等の農耕地、森林、芝生、ゴルフ場、街路樹、道路、路肩、湿地などの非農耕地、池、貯水池、川、水路、下水道などの水系等において、含有する農薬活性成分や使用目的に応じて使用することができる。また、本発明の被覆粒状農薬組成物の使用にあたっては、本発明の被覆粒状農薬組成物を単独で施用することもできるし、適宜その用途により他の製剤、例えば他の農薬粒剤、粒状肥料、粒状培土、粒状植物栄養剤、粒状植物調整制御剤、粒状ホルモン剤、種子等の粒状農薬資材等と混合して用いることができる。
【0031】
本発明の被覆粒状農薬組成物は農薬施用におけるあらゆる場面に適用可能であるが、本発明の被覆粒状農薬組成物は農薬活性成分の放出制御性能を活用できる場面での使用が特に好適である。特に通常農薬が施用される時期よりも早期の施用、例えば育苗箱施用(作物が発芽し生育している育苗箱に農薬粒剤を散粒する方法を指す)、田植時施用、育苗期施用、播種期施用、発芽期施用、移植期施用などは、本発明の被覆粒状農薬組成物は農薬活性成分が放出制御されたものであるという特性を活用できる場面としては好適である。
【実施例】
【0032】
以下実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0033】
実施例1
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号、竹折砿業所製)65.3g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80、MORESCO社製)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80、DSL.ジャパン社製)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF、伊藤製油社製)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールDB−314;固形分52.2%、サイデン化学社製)3.8g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050、東邦化学社製)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0034】
実施例2
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.3g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールDBA−163;固形分51.4%、サイデン化学社製)3.7g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0035】
実施例3
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.3g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールHSA−50;固形分51.6%、サイデン化学社製)3.7g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0036】
実施例4
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.4g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールFB−108;固形分50.1%、サイデン化学社製)3.6g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0037】
実施例5
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.2g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールAC−704;固形分52.8%、サイデン化学社製)3.8g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0038】
実施例6
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.0g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:モビニール6485;固形分55%、日本合成化学社製)4.0g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0039】
実施例7
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.4g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:モビニール831;固形分50%、日本合成化学社製)3.6g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0040】
実施例8
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.4g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:モビニール630;固形分50%、日本合成化学社製)3.6g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0041】
実施例9
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.7g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:ビニブラン1002;固形分44%、日信化学工業社製)3.2g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0042】
実施例10
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)65.7g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)8.3gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)2.5gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.1gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、中間層を形成した。更に水性エマルション樹脂(商品名:ポリゾールSH−502;固形分49%、昭和電工社製)3.5g加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)5.0gを加えて混合、被覆して樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを8.3%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0043】
実施例11
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630、日東粉化工業社製)77.9g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80;1.6g)及び(商品名:ニップシールNA;1.6g、東ソー・シリカ社製)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールEK−61、サイデン化学社製)3.5gを加えて混合し、そこへ珪藻土(商品名:セイコーライト、セイコー産業社製)3.1g加えて混合、被覆する操作を3回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、15分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0044】
実施例12
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)77.9g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80;1.6g)及び(商品名:ニップシールNA;1.6g)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールX−215−092E、サイデン化学社製)3.5gを加えて混合し、そこへ珪藻土(商品名:セイコーライト)3.1g加えて混合、被覆する操作を3回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、15分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0045】
実施例13
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)77.9g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80;1.6g)及び(商品名:ニップシールNA;1.6g)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールEC−2020、サイデン化学社製)6.0gを加えて混合し、そこへ珪藻土(商品名:セイコーライト)2.0g加えて混合、被覆する操作を3回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、15分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0046】
実施例14
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)77.9g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80;1.6g)及び(商品名:ニップシールNA;1.6g)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:サイビノールEK−834、サイデン化学社製)4.7gを加えて混合し、そこへ珪藻土(商品名:セイコーライト)1.6g加えて混合、被覆する操作を3回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、15分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0047】
実施例15
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)77.9g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80;1.6g)及び(商品名:ニップシールNA;1.6g)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:モビニール7320、日本合成化学社製)4.2gを加えて混合し、そこへ珪藻土(商品名:セイコーライト)2.8g加えて混合、被覆する操作を3回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、15分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0048】
実施例16
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)59.6g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:ニップシールNA)1.8gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:モビニール7901、日本合成化学社製)4.1gを加えて混合し、そこへホワイトカーボン(商品名:カープレックスBS−308N、DSL.ジャパン社製)1.8g加えて混合、被覆する操作を10回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、30分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0049】
実施例17
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)68.8g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:ニップシールNA)1.8gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:モビニール7901)2.9gを加えて混合し、そこへホワイトカーボン(商品名:カープレックスBS−308N)1.3g加えて混合、被覆する操作を10回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、30分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0050】
実施例18
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)78.6g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:ニップシールNA)1.8gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで水性エマルション樹脂(商品名:モビニール7901)2.8gを加えて混合し、そこへホワイトカーボン(商品名:カープレックスBS−308N)1.3g加えて混合、被覆する操作を6回行い、樹脂層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて室温、30分間送風乾燥し、ダイアジノンを5.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0051】
比較例1
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)92.1g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)1.9g、リン酸0.3gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)4.8gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)0.8gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成し、チオシクラムを4.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0052】
比較例2
容器に珪砂(商品名:竹折珪砂4号)79.5g、流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)2.2gを入れて均一になるまで混合した。次いでチオシクラム(純度89.1%)4.7gおよびホワイトカーボン(商品名:カープレックス#80)0.8gを加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成した。次いで流動パラフィン(商品名:モレスコホワイトMT−80)1.0gを加えて混合し、そこへヒマシ硬化油粉末(商品名:A−S−A T−20SF)を5.0g加えて混合、被覆する操作を2回行い、フィラーによる層を形成した。これを容器から取り出し、流動層乾燥機にて75℃で15分間加熱乾燥し、室温まで冷却後、再度容器に入れて界面活性剤(商品名:ソルポール5050)0.8gを加えて良く混合し、チオシクラムを4.2%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0053】
比較例3
容器に粒状炭酸カルシウム(商品名:寒水1630)92.2g、ダイアジノン(純度95.3%)5.4gを入れて均一になるまで混合した。次いでホワイトカーボン(商品名:ニップシールNA;1.6g)、及び(商品名:カープレックス#80;1.6g)を加えて混合、被覆して農薬活性成分層を形成し、ダイアジノンを5.1%含む被覆粒状農薬組成物を得た。
【0054】
試験例1(水中溶出試験)
実施例1〜10、及び比較例1〜2によって得られた被覆粒状農薬組成物を用いて、成分の水中溶出試験を実施した。
(試験方法)
試料の被覆粒状農薬組成物1gを各100mLの三角フラスコに入れ、100mLの水を加えて25℃恒温槽に静置し、経時時間毎に試料を残して水を取り出し、分析試料とした。分析試料はHPLCで測定し、水に溶出してきた成分量を算出した。試料が残った容器には新たに水100mLを加えて分析試料とした。同様の操作を繰り返し実施して累積溶出率(%)を算出した。その結果を表1に示す。
【0055】
試験例2(気中放出試験)
実施例11〜、及び比較例3によって得られた被覆粒状農薬組成物を用いて、成分の気中放出試験を実施した。
(試験方法)
試料の被覆粒状農薬組成物10gをシャーレに載せ、蓋をせずに54℃恒温槽に静置し、経時時間毎に試料を取り出し、シャーレ上の被覆粒状農薬組成物に含まれる農薬活性成分の含量を分析し、試料中の農薬活性成分残存率(%)を算出した。その結果を表2に示す。
【0056】
試験例1の結果を表1にまとめた。
【表1】
【0057】
試験例2の結果を表2にまとめた。
【表2】
表1に示したように本発明の被覆粒状農薬組成物は被覆する水性エマルション樹脂を種々調整することによって、さまざまな放出特性を持つ製剤に仕上げることが可能であり、製剤から放出される農薬活性成分の量を抑制するとともに、持続的な放出制御を達成し、所望の放出速度の製剤を得ることができた。一方、水性エマルション樹脂による樹脂層を設けていない比較例では製剤からの農薬活性成分の放出を抑制できず、試験開始直後よりチオシクラムシュウ酸塩が製剤内から速やかに水中に放出され、持続的な薬剤放出は得られなかった。
また、表2に示したように本発明の被覆粒状農薬組成物は被覆する水性エマルション樹脂の種類及び樹脂層の厚さや、樹脂層に混在させるフィラーの種類によってさまざまな放出特性を持つ製剤に仕上げることが可能であり、星座から放出される農薬活性成分の量を抑制するとともに、持続的な溶出制御を達成し、所望の放出速度の製剤を得ることができた。一方、水性エマルション樹脂による樹脂層を設けていない比較例では製剤からの農薬活性成分の放出を抑制できず、試験開始直後よりダイアジノンが製剤内から速やかに水中に放出され、持続的な薬剤放出は得られなかった。