特許第6687309号(P6687309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687309
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20200413BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20200413BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20200413BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H01G9/035
   H01G9/145
   H01G9/15
   H01G9/028 E
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-108190(P2016-108190)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-69537(P2017-69537A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2019年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-192861(P2015-192861)
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石北 義人
(72)【発明者】
【氏名】金本 和之
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/017947(WO,A1)
【文献】 特開平09−171943(JP,A)
【文献】 特開平01−103821(JP,A)
【文献】 特開平07−240350(JP,A)
【文献】 特開2012−109635(JP,A)
【文献】 特開2013−191897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/028
H01G 9/145
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回させたコンデンサ素子と、電解液と共に前記コンデンサ素子を収納した金属ケースからなる電解コンデンサにおいて、
該コンデンサ素子に、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体が付着しており、
電解液が、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩と、有機溶媒と、を含有し、
酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることを特徴とする電解コンデンサであって、
前記酸成分が、
フタル酸と、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸及びジメチロールペンタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
からなる混合物であることを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記酸成分が、フタル酸と、リン酸トリn−ブチル、リン酸トリi−ブチル及びリン酸トリt−ブチルからなる群より選ばれる一種と、からなる混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等価直列抵抗が小さく、かつ 等価直列抵抗の耐熱性に優れた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、アルミニウム等の金属表面を陽極酸化処理等によって絶縁性の酸化皮膜を誘電体として形成したものを陽極電極として用いる。この陽極電極に対向させて陰極電極を配置し、陽極電極と陰極電極の間にセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を、電解液に保持させることで巻回型の電解コンデンサを得ることができる。電解コンデンサに要求される性能としては、優れた等価直列抵抗(以下、「ESR」と略記する。)が求められる。
【0003】
近年、優れたESRを有する電解コンデンサを得る方法として、コンデンサ素子に導電性固体層を形成させた巻回型の電解コンデンサが開示されている(特許文献1)。該電解コンデンサは、漏れ電流の小さく、かつ、ESRにも優れているが、まだ十分なESRにおける耐熱性が得られていない問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、駆動用電解液に含まれている酸成分と塩基成分において、塩基成分よりも酸成分を過剰にして用いた電解コンデンサが開示されている。実施例には酸/塩基モル比率1.50まで行われているが、該モル比率ではまだ十分なESRにおける耐熱性を有する電解コンデンサが得られない問題があった。
【0005】
以上より、ESRが小さく、かつ、ESRにおける耐熱性に優れた電解コンデンサが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−111174号公報
【特許文献2】特開2012−109635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ESRが小さく、かつ、ESRにおける耐熱性に優れた電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回させたコンデンサ素子と、電解液と共に前記コンデンサ素子を収納した金属ケースからなる電解コンデンサにおいて、該コンデンサ素子の表面に、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体が付着しており、電解液が、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩と、有機溶媒と、を含有し、酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることを特徴とする電解コンデンサが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0010】
第一の発明は、誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回させたコンデンサ素子と、電解液と共に前記コンデンサ素子を収納した金属ケースからなる電解コンデンサにおいて、該コンデンサ素子に、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体が付着しており、電解液が、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩と、有機溶媒と、を含有し、酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることを特徴とする電解コンデンサである。
【0011】
第二の発明は、酸成分が、フタル酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする第一の発明に記載の電解コンデンサである。
【0012】
第三の発明は、酸成分が、フタル酸、マレイン酸、サリチル酸、グリコール酸、安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、からなる混合物であることを特徴とする第一の発明に記載の電解コンデンサである。
【0013】
第四の発明は、酸成分が、フタル酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、リン酸化合物又はホウ酸化合物と、からなる混合物であることを特徴とする第一の発明に記載の電解コンデンサである。
【0014】
第五の発明は、リン酸化合物が、リン酸トリn−ブチル、リン酸トリi−ブチル、リン酸トリt−ブチルからなる群より選ばれる一種であることを特徴とする第四の発明に記載の電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ESRが小さく、かつ、ESRにおける耐熱性に優れた電解コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明は、誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回させたコンデンサ素子と、電解液と共に前記コンデンサ素子を収納した金属ケースからなる電解コンデンサにおいて、該コンデンサ素子の表面に、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体が付着しており、電解液が、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩と、有機溶媒と、を含有し、酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることを特徴とする電解コンデンサである。
【0017】
上述した構成の電解コンデンサであれば、いかなる製造方法で製造してもよいが、一例として該電解コンデンサの製造方法を説明する。
【0018】
<電解コンデンサ>
電解コンデンサの製造方法を以下に詳細に説明する。
【0019】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回されてなるコンデンサ素子を作製する。
導電性高分子分散液を前記コンデンサ素子に接触させた後、乾燥させることで、導電性高分子を付着させることができる。次に、導電性高分子を付着させたコンデンサ素子を、電解液と共に金属ケースに収納することで電解コンデンサを作製することができる。
該接触させる方法は、任意の方法でよいが、浸漬させる方法が好ましく挙げられる。
【0020】
(導電性高分子分散液)
上述した導電性高分子分散液は、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体と、分散媒と、を少なくとも含有することを特徴とする導電性高分子分散液である。
【0021】
本発明に用いるドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体を説明する。ポリチオフェン誘導体を製造するのに用いるモノマー化合物は、下記一般式(I)で表されるチオフェン誘導体である。
【0022】
【化1】
【0023】
上記一般式(I)中、Xはそれぞれ同一であっても異なっていても良い酸素原子又は硫黄原子を示す。Rは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。
【0024】
上記一般式(I)で表される化合物として、具体的には、3,4−エチレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、プロピル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、プロピル−3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジチアチオフェン、メチル−3,4−エチレンジチアチオフェン、エチル−3,4−エチレンジチアチオフェン、プロピル−3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−プロピレンジチアチオフェン、メチル−3,4−プロピレンジチアチオフェン、エチル−3,4−プロピレンジチアチオフェン、プロピル−3,4−プロピレンジチアチオフェン等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、より分散性に優れる導電性高分子分散液を得ることができ、該導電性高分子分散液を用いて作製した電解コンデンサが電気特性に優れる点より、3,4−エチレンジオキシチオフェン、メチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェンが特に好ましく挙げられる。
【0026】
本発明に用いる導電性高分子は、上記一般式(I)で表されるチオフェン誘導体を、上記ドーパント成分の存在下で化学酸化重合又は電解酸化重合することによって得ることができる。
【0027】
該ドーパント成分としては、高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基を有していればよく、硫酸エステル基、リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が置換しているアニオンが好ましく挙げられる。これらの中でも、ドープ効果の点より、硫酸エステル基、カルボキシル基、スルホ基が置換しているアニオンがより好ましく挙げられ、スルホ基が置換しているアニオンが特に好ましく挙げられる。
【0028】
ドーパント成分として、具体的には、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独の重合体であっても、2種類以上の共重合体であってもよい。
これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましく挙げられる。
【0029】
ドーパント成分がドープしたチオフェン誘導体として、特に好ましくは、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(メチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(エチル−3,4−エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
【0030】
上記分散媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。
【0031】
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
【0032】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−オクタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0033】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等が挙げられる。
【0034】
エステル類としては、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、蟻酸イソブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、フタル酸エチル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル、γ−ブチロラクトン、マロン酸エチル、マロン酸メチル等が挙げられる。
【0035】
セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。
【0036】
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0037】
脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0038】
分散媒の中でも特に、水が好ましく挙げられる。
【0039】
本発明に用いる導電性高分子分散液には、高沸点有機溶媒を含有させてもよい。高沸点有機溶媒の中でも、特に沸点が150〜250℃である高沸点有機溶媒が好ましく挙げられる。該高沸点有機溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、スルホラン(沸点285℃)、ジメチルスルホン(沸点233℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、ポリエチレングリコール(沸点250℃)、ジエチレングリコール(沸点244℃)等が挙げられる。これらの中でも特にエチレングリコール、ポリエチレングリコール、γ−ブチロラクトンが、コンデンサ素子の表面に均一に導電性高分子を付着させることができる点より好ましく挙げられる。
【0040】
導電性高分子分散液に高沸点有機溶媒を含有させて用いる場合、導電性高分子分散液における高沸点有機溶媒の含有量は、1〜20質量%が好ましく挙げられ、5〜15質量%が特に好ましく挙げられる。1質量%未満の場合、導電性高分子が弁作用金属に付着しにくくなる問題があり、20質量%超の場合、乾燥工程に時間を要する問題がある。
【0041】
また、導電性高分子分散液には、成膜性、膜強度を調整するために、バインダ樹脂、界面活性剤、アルカリ化合物を含有させてもよい。
バインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が好ましく挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0042】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、第三級アミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等が挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0043】
なお、導電性高分子分散液は、導電性高分子であるドーパント成分がドープしたポリチオフェン誘導体が分散媒に分散しているものであり、ドーパント成分がドープしたポリチオフェン誘導体の一部が分散媒に溶解していてもよい。
【0044】
本発明に用いる弁作用金属としては、アルミニウム箔を用いることができる。
【0045】
表面に誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属と陰極箔とがその間にセパレータを介在させて巻回されたコンデンサ素子を作製する。該コンデンサ素子を、上記導電性高分子分散液に接触させ、乾燥する工程を複数回繰り返してもよい。好ましい回数としては、1〜6回が好ましく挙げられ、2〜5回が特に好ましく挙げられる。
【0046】
乾燥は室温での自然乾燥又は加熱乾燥のいずれでもよいが、導電性高分子分散液に高沸点有機溶媒を含有させている場合には、150℃以上に加熱して乾燥させるのが好ましく挙げられる。
【0047】
上記方法により、ドーパント成分がドープしたポリチオフェン誘導体を付着させたコンデンサ素子を製造することができる。
【0048】
(電解液)
本発明に用いる電解液について説明する。本発明に用いる電解液は、有機溶媒と電解質塩とを少なくとも含有するものである。
【0049】
電解液に用いる有機溶媒は、プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0050】
プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)などが挙げられる。
【0051】
非プロトン性の極性溶媒としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アミド系(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、スルホラン系(スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等)、鎖状スルホン系(ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン)、環状アミド系(N−メチル−2−ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2−イミダゾリジノン系〔1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(n−プロピル)−2−イミダゾリジノン等)、1,3,4−トリアルキル−2−イミダゾリジノン(1,3,4−トリメチル−2−イミダゾリジノン等)〕等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも特に、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコール、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく挙げられる。
【0053】
本発明に用いる電解質塩は、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩である。電解質塩としては、いかなるものでもよいが、特にアンモニウム塩又はアミジン塩を用いることが好ましく挙げられる。アンモニウム塩又はアミジン塩は、下記一般式(1)〜(5)で表される。
【0054】
【化2】
【0055】
上記一般式(1)は有機基で置換されたアンモニウム塩であり、一般式(2)及び(3)は有機基で置換されたアミジン塩の例である。
【0056】
一般式(1)〜(5)中、基R〜R25は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は水酸基であり、R〜R25のうち隣接する基同士は連結して炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは酸成分である。
【0057】
一般式(1)で表される化合物の塩基成分の具体例としては、アンモニウムカチオン;テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトライソプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシエチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムカチオン、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウムカチオン等の4級アンモニウムカチオン;トリメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオン、トリプロピルアミンカチオン、トリイソプロピルアミンカチオン、トリブチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメトキシアミンカチオン、ジメチルメトキシアミンカチオン、ジメチルエトキシアミンカチオン、ジエチルエトキシアミンカチオン、メチルエチルメトキシアミンカチオン、N−メチルピロリジンカチオン、N−エチルピロリジンカチオン、N−プロピルピロリジンカチオン、N−イソプロピルピロリジンカチオン、N−ブチルピロリジンカチオン、N−メチルピペリジンカチオン、N−エチルピペリジンカチオン、N−プロピルピペリジンカチオン、N−イソプロピルピペリジンカチオン、N−ブチルピペリジンカチオン等の3級アンモニウムカチオン;ジメチルアミンカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジイソプロピルアミンカチオン、ジプロピルアミンカチオン、ジブチルアミンカチオン、メチルエチルアミンカチオン、メチルプロピルアミンカチオン、メチルイソプロピルアミンカチオン、メチルブチルアミンカチオン、エチルイソプロピルアミンカチオン、エチルプロピルアミンカチオン、エチルブチルアミンカチオン、イソプロピルブチルアミンカチオン、ピロリジンカチオン等の2級アンモニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、高い電導度を示し、耐熱性向上効果に優れることから、アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムカチオン、N−メチルピロリジンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、トリメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオン、ジエチルアミンカチオン等が好適に用いられる。
【0058】
一般式(2)で表される化合物の塩基成分の具体例としては、テトラメチルイミダゾリウムカチオン、テトラエチルイミダゾリウムカチオン、テトラプロピルイミダゾリウムカチオン、テトライソプロピルイミダゾリウムカチオン、テトラブチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジブチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルイミダゾリウムカチオン、1,2,3−トリブチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、高い電導度を示し、耐熱性向上効果に優れるため、テトラメチルイミダゾリウムカチオン、テトラエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0059】
一般式(3)で表される化合物の塩基成分の具体例としては、テトラメチルイミダゾリニウムカチオン、テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、テトラプロピルイミダゾリニウムカチオン、テトライソプロピルイミダゾリニウムカチオン、テトラブチルイミダゾリニウムカチオン、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウムカチオン、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリプロピルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリブチルイミダゾリニウムカチオン、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、高い電導度を示し、耐熱性向上効果に優れることからテトラメチルイミダゾリニウムカチオン、テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0060】
一般式(4)で表される化合物の塩基成分の具体例としては、テトラメチルピラゾリウムカチオン、テトラエチルピラゾリウムカチオン、テトラプロピルピラゾリウムカチオン、テトライソプロピルピラゾリウムカチオン、テトラブチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジメチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−エチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジエチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジプロピルピラゾリウムカチオン、1,2−ジブチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−プロピルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ブチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ヘキシルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−オクチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−ドデシルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリメチルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリエチルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリプロピルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリイソプロピルピラゾリウムカチオン、1,2,3−トリブチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−3−メトキシ−2,5−ジメチルピラゾリウムカチオン、3−フェニル−1,2,5−トリメチルピラゾリウムカチオン、3−メトキシ−5−フェニル−1−エチル−2−エチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3,5−ジメチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3−フェニル−5−メチルピラゾリウムカチオン、1,2−テトラメチレン−3−メトキシ−5−メチルピラゾリウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、高い電導度を示し、耐熱性向上効果に優れることから、テトラメチルピラゾリウムカチオン、テトラエチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジメチルピラゾリウムカチオン、1,2−ジエチルピラゾリウムカチオン、1−メチル−2−エチルピラゾリウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0061】
一般式(5)で表される化合物の塩基成分の具体例としては、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−プロピルピリジニウムカチオン、N−イソプロピルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−オクチルピリジニウムカチオン、N−ドデシルピリジニウムカチオン、N−メチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−エチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−プロピル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−4−エチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。これらの中でも、高い電導度を示し、耐熱性向上効果に優れることから、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン等が好ましく用いられる。
【0062】
アミジン塩は、アミジンカチオン(H−C(=NH)−NH)(塩基成分)とアニオン(酸成分)との塩である。アミジンカチオンの1以上の水素原子は有機基に置換されていてもよく、そのように置換されていてもよいアミジンカチオンの具体例として、ホルムアミジンカチオン、ジメチルホルムアミジンカチオン、ピリジルアミジンカチオン、ブチルアセトアミジンカチオン、ジメチルバレロアミジンカチオン等が挙げられる。
【0063】
酸成分としては、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、リン酸化合物、ホウ酸化合物等が挙げられ、カルボン酸化合物を含有する酸成分を用いることが好ましく挙げられる。カルボン酸化合物としては、カルボン酸が置換している有機化合物であり、芳香族カルボン酸、脂肪族カルボン酸等の有機カルボン酸である。具体的には、芳香族カルボン酸:(例えばフタル酸、サリチル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、安息香酸、レゾルシン酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、マンデル酸)、脂肪族カルボン酸:([飽和カルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、3−tert−ブチルアジピン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−メチルアジピン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデカン酸、ボロジグリコール酸、ボロジシュウ酸、ボロジサリチル酸、イタコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸]、[不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸])等が挙げられる。
【0064】
スルホン酸化合物としては、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0065】
リン酸化合物としては、リン酸、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル等が挙げられる。リン酸モノエステルとしては、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸n−プロピル、リン酸i−プロピル、リン酸n−ブチル、リン酸i−ブチル、リン酸t−ブチル、リン酸ネオペンチル、リン酸n−ヘキシル、リン酸n−オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸フェニル、リン酸ナフチル、リン酸2−ブトキシエチル、リン酸2−アクリロイルオキシエチル、リン酸2−メタクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。リン酸ジエステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジn−プロピル、リン酸ジi−プロピル、リン酸ジn−ブチル、リン酸ジi−ブチル、リン酸ジt−ブチル、リン酸ジネオペンチル、リン酸ジn−ヘキシル、リン酸ジn−オクチル、リン酸ジ2−エチルヘキシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジナフチル、リン酸ジ(2−ブトキシエチル)、リン酸ジ(2−アクリロイルオキシエチル)、リン酸ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)、リン酸トリエステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル(リン酸トリn−プロピル、リン酸トリi−プロピル)、リン酸トリブチル(リン酸トリn−ブチル、リン酸トリi−ブチル、リン酸トリt−ブチル)、リン酸トリネオペンチル、リン酸トリn−ヘキシル、リン酸トリn−オクチル、リン酸トリ2−エチルヘキシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリフェニル、リン酸トリナフチル、リン酸トリ(2−ブトキシエチル)、リン酸トリ(2−アクリロイルオキシエチル)、リン酸トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)等が挙げられる。
これらの中でも、リン酸トリn−ブチル、リン酸トリi−ブチル、リン酸トリt−ブチルから選ばれる一種がより好ましく、リン酸トリn−ブチルが特に好ましく挙げられる。
【0066】
ホウ酸化合物としては、ホウ酸、ボロジアゼライン酸、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸、ボロジ乳酸、ボロジシュウ酸等が挙げられる。これらの中でも、電解コンデンサの電気特性に優れる点より、ホウ酸、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸等が好ましく用いられる。
【0067】
これらの中でも、電導度が高く熱的にも安定な点から、フタル酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸が好ましく挙げられ、フタル酸、マレイン酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸が特に好ましく挙げられる。
【0068】
これらは単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。2種類以上混合させて用いることで、より一層ESRにおける耐熱性を向上させることができる。
【0069】
酸成分を2種類以上組み合わせる場合の組み合わせとしては、骨格に芳香族基を有するフタル酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族であるジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を混合させて用いることが好ましく挙げられる。または、フタル酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種と、リン酸化合物又はホウ酸化合物と、を混合させて用いることが好ましく挙げられる。
上述したように酸成分を混合して用いることで、電解液中のアミンの遊離を抑制する効果があるので、よりESRにおける耐熱性に優れた電解コンデンサを得ることができる。
【0070】
得られる電解コンデンサのESR低減の点より、上記一般式(1)〜(5)の中で、一般式(1)〜(3)が好ましく、一般式(1)が特に好ましく挙げられる。
【0071】
本発明に用いる電解液は、酸成分と塩基成分とを含む電解質塩と、有機溶媒と、を含有した電解液であり、酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることを特徴としている。
酸成分と塩基成分とのモル比が、200:1〜2:1であることが好ましく、100:1〜5:1であることがより好ましく挙げられ、20:1〜5:1であることが特に好ましく挙げられる。該モル比にすることで、初期のESRが小さく、かつ、より優れたESRにおける耐熱性を有する電解コンデンサを得ることができる。
【0072】
電解液における上記電解質塩の含有量は、1.0〜60質量%が好ましく、5.0〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましく挙げられる。
1.0質量%未満の場合、十分な電気特性が得られない欠点があり、60質量%超の場合、比抵抗が上昇する欠点がある。
【0073】
また、本発明に用いる電解液には、添加剤を含有させて用いてもよい。添加剤としては、ポリビニルアルコール、コロイダルシリカ、エチレングリコール、ニトロ化合物(o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール)等が挙げられる。
【0074】
これらの添加剤の中でも特にコロイダルシリカを用いることが、得られる電解コンデンサの耐電圧を向上させる点より好ましく挙げられる。
【0075】
添加量は0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく挙げられる。0.1質量%未満の場合、十分な効果が得られない欠点があり、10質量%超の場合、電導度が低下する欠点がある。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明は本実施例によりなんら限定されない。実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0077】
比較例1)
<電解液の製造>
77.1gのサリチル酸(酸成分)と、22.9gの1−メチルイミダゾール(塩基成分)をγ−ブチルラクトン1000mlに加え、80℃で溶解し減圧濃縮し水を留去して、電解液を得た。
【0078】
<導電性高分子分散液の製造>
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、42.6gのポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量:75,000)を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合して混合溶液を得た。
得られた混合溶液を20℃に保ち、撹拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.6gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、3時間撹拌して反応させた。
【0079】
反応後、強酸性陽イオン交換樹脂(三菱樹脂社製、PK−216)を添加し、アンモニウム塩を除去した後、イオン交換樹脂を取り除いた。次に、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱樹脂社製、PA−418)を添加して硫酸塩を除去した後、イオン交換樹脂を取り除いて、1.5%ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水分散液を得た。
【0080】
1.5%ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水分散液100mlに、エチレングリコール20mlを含有させて、導電性高分子分散液を得た。
【0081】
<コンデンサ素子の製造>
陽極に用いる弁作用金属として、表面をエッチングし、粗面化処理を施したエッチドアルミニウム箔(縦2mm×横300mm)を用い、該アルミニウム箔に、アジピン酸アンモニウム水溶液中、電圧90Vで化成処理を行って誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して対向させることにより、コンデンサ素子を作製した。
【0082】
次に、上記で得られた導電性高分子分散液に、上記コンデンサ素子を5分浸漬し、150℃5分乾燥させる工程を3回繰り返して、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸を付着させたコンデンサ素子を作製した。
【0083】
<電解コンデンサの製造>
該コンデンサ素子を上記電解液に含浸させた。この電解液を含浸したコンデンサ素子を、筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部にリード線を導出する貫通孔を有するブチルゴムの封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を加締めることにより電解コンデンサの封口を行い、定格電圧35V、静電容量150μFの電解コンデンサを作製した。
【0084】
<電解コンデンサのESRの評価>
電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)は周波数100kHzで測定した。初期状態及び125℃で500時間負荷試験を行ない、電解コンデンサのESRを評価した。
【0085】
比較例1〜11
表1に対応するように、酸成分・塩基成分の量を調整した以外は、比較例1と同様にして電解コンデンサを作製し、ESRの評価を行った。比較例1〜11の測定結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1より、比較例10では電解コンデンサの初期のESRには優れているが、ESRの耐熱性には劣ることがわかり、比較例11では電解コンデンサのESRの耐熱性に優れているが、初期のESRが30mΩ以上となり、初期のESRに劣ることがわかる。
比較例11よりも比較例1〜8の方が、初期のESRが23mΩ以下と小さく、かつ、ESRにおける優れた耐熱性を有していることがわかる。特に比較例2〜6の二次電池は、変化率が8.5%以下であり、ESRにおける耐熱性に優れていることがわかる。
【0088】
比較例12、13、酸成分2種類混合した実施例)
塩基成分と酸成分とのモル比は1:10に統一し、2種類の酸成分を用いた場合は、酸成分中におけるそれぞれの酸成分のモル数を変えて評価した。なお、電解液に用いた塩基成分は、1−メチルイミダゾールであり、0.068mol/Lである。比較例1と同様にして電解コンデンサのESRの評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
比較例12、13及び実施例1〜5中で、実施例のように酸を2種含有した方がESRの耐熱性に優れていることがわかる。実施例に記載の電解コンデンサの初期のESR及び耐熱性に優れているのがわかり、特に実施例のリン酸トリn−ブチルを含有させた電解コンデンサが初期のESR及び耐熱性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の電解コンデンサは、ESRにおける優れた耐熱性を有するため、高周波数のデジタル機器等に適用できる。