(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陰イオンクロマトグラフィーにおける塩基性溶離液生成および不純物陽イオン除去用として請求項1に記載の電気再生式イオン生成除去一体型装置を組み込んだイオンクロマトグラフ装置。
陽イオンクロマトグラフィーにおける酸性溶離液生成および不純物陰イオン除去用として請求項2に記載の電気再生式イオン生成除去一体型装置を組み込んだイオンクロマトグラフ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決すべき課題の第一は、一体型装置全体に高電流を流し、イオンの生成能力や脱イオンの能力を飛躍的に高め、高感度なイオン分析を安定して実施できる耐高電流構造を有することを目指す。すなわち、高感度分析を支える2大柱である高純度な電解質溶液の生成と超希薄濃度のバックグラウンドを形成し得る大きな脱イオンを達成するには高電流を安定して流せる装置であることが必須である。
【0008】
次いで、第二の課題は、一体型装置はイオン生成機能と脱イオン機能のいずれも互いに独立していて相互に生成対象イオンの移動が伴わない構造である。
すなわち、イオン生成機能はその目的に応じて目標とするイオン濃度に調整したイオン生成溶液を供給することこができる機能のことでイオン生成のみを単独で一体型装置を運転することも可能とすることである。また、脱イオン機能もまた同様である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第一の課題を解決するため、一体型装置の両電極間に高電流を長時間かけたときに膜焼けの原因になる電極界面やバイポーラ界面を形成するイオン交換膜に代えて、耐熱性、耐薬品性、化学的安定性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を使用することで解決を図ろうとするものである。
【0010】
電極界面ではいわゆる電極反応による酸化、還元作用から電極に接触する材料の劣化問題が生ずるから耐久性のあるフッ素系陽イオン交換膜を使用する。
そして電極まわりの構造的な問題、すなわち電極反応で生成する水素ガス、酸素ガス、副生成物の系内の侵入を阻止するために、系内から通水孔付膜を介して、溶液を外部に洗い出すことで解決する。そのために、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜を好適に使用する。
【0011】
さらに、バイポーラ界面の中でも水の解離イオンを生成する界面では電気化学的反応が極めて激しく、強酸性または強塩基性の強い環境になり、界面を構成するイオン交換膜の耐久性の向上が要求される。かかるイオン交換膜としてフッ素系陽イオン交換膜を好適に使用する。
なお、各種のイオン交換膜、イオン交換樹脂を使ってバイポーラ界面を形成し、そこに高電流をかけて耐久性の比較実験をしているので後述する実験例で示すことする。
また、後述する実験例では装置内径6mmΦの円筒で最大電流密度が1A/cm
2の能力を有する装置であるが、その70%レべルの700mA/cm
2で、常時、200mAを流し比較実験を行っている。
しかし、本発明の実施例では電流変化を見るため、0から100mAまでとしているがこの電流は最大250mAまで流すことが可能である。これは既設の装置の約100倍以上の高電流を流せる能力を有することとなる。
【0012】
上記第二の課題を解決するため、一体型装置におけるイオン生成機能部分と脱イオン機能部分の間をバイポーラ界面で接続し、生成対象イオンの脱イオン側への移動を遮断し、脱イオン側へ再生用にH
+イオンないしOH
-イオンを供給する構造とする。
上記手段を取り入れた本発明の電気再生式イオン形成除去一体型装置を、以下に示すこととする。
【0013】
<基本構造1>
本発明の電気再生式陽イオン生成除去一体型装置(
図1)である陰イオンクロマト分析用一体型装置(又は略称してアニオンクロ用一体型装置という)の基本構造について
図1を参照して説明する。
電気再生式イオン生成除去一体型装置であって
(a)陽極部と
(a1)前記陽極部が陽極電極を備え、
(a2)前記陽極電極の陰極側に、接する通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1で仕切られて
(a3)前記陽極部に排出口を備える
(b)陽イオン供給部と
(b1)前記陽イオン供給部が前記陽極部の陰極側に隣接し、前記通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1に接して陽イオン交換体C1の充填された部屋と
(b2)前記陽イオン交換体C1の充填された部屋の他端が陽イオン交換膜M2で仕切られ、
(b3)前記陽イオン交換体C1の充填された部屋の一部に陽イオン供給用溶液入口を備える
(c)陽イオン生成部と
(c1)前記陽イオン生成部が前記陽イオン供給部の陰極側に隣接し、前記陽イオン交換膜M2に接して陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋と
(c2)陰イオン交換体A2の充填された部屋を備え、他端にフッ素系陽イオン交換膜M3で仕切られ
(c3)前記陰イオン交換体A2の充填された部屋の一部に陽イオン生成溶液注入口又は陽イオン生成溶液出口を備え、
(c4)前記陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陽イオン生成溶液出口又は陽イオン生成溶液注入口を備える
(d)陽イオン除去部と
(d1)前記陽イオン除去部が前記陽イオン生成部の陰極側に隣接し、前記フッ素系陽イオン交換膜M3に接して陽イオン交換体C3を充填した部屋と
(d2)前記陽イオン交換体C3の充填された部屋の他端を陽イオン交換膜M4で仕切られ、
(d3)前記陽イオン交換体C3の充填された部屋の一部に陽イオン除去用溶液入口を備え、同部屋の他部位に陽イオン除去用溶液出口を備える
(e)陽イオン排出部と
(e1)前記陽イオン排出部が前記陽イオン除去部の陰極側に隣接し、前記陽イオン交換膜M4に接して陽イオン交換体C4の充填された部屋を備え、他端に通水孔付陽イオン交換膜M5で仕切られる
(e2)前記陽イオン交換体C4の充填された部屋の一部に陽イオン排出用溶液を注入する陽イオン排出用溶液入口を備える
(f)陰極部と
(f1)前記陰極部が陰極電極を備え、
(f2)前記陰極電極の陽極側に、接する通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5で仕切られて
(f3)前記陰極部に排出口を備える
を備える高純度塩基性溶液生成および不純物陽イオン除去一体型装置である。
【0014】
この一体型装置では陽極側に陽イオン生成部分を、陰極側に陽イオン除去部分を備え、両部分の境目にバイポーラ界面(陰イオン交換体A2とフッ素系陽イオン交換膜M3)を形成しており、耐久性のあるフッ素系陽イオン交換膜が使われている。また、両電極部分には電極に接触して通水孔付フッ素系陽イオン交換膜が備えられている。
上記(c)陽イオン生成部で、(c3)前記陰イオン交換体A2の充填された部屋の一部に陽イオン生成溶液注入口を備えた場合は(c4)前記陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陽イオン生成溶液出口を備えることとなるが、(c3)前記陰イオン交換体A2の充填された部屋の一部に陽イオン生成溶液出口を備えた場合は(c4)前記陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陽イオン生成溶液注入口を備えることとなる。これは陽イオン生成溶液の流れが両部屋の界面を介して対称形をなし得るからである。
なお、
図1には陽イオン除去部2にもう一つの陽イオン交換膜MMが描かれているが本発明には必須ではない。例えば、スペーサーとしてイオンの流れに影響がない中立なイオン交換膜が装着される場合などである。
【0015】
<基本構造2>
本発明の電気再生式陰イオン生成除去一体型装置(
図2)である陽イオンクロマト分析用一体型装置(又は略称としてカチオンクロ一体型装置という)の基本構造について
図2を参照して説明する。
電気再生式イオン生成除去一体型装置であって
(a)陰極部と
(a1)前記陰極部が陰極電極を備え、
(a2)前記陰極電極の陽極側に接する通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1で仕切られて
(a3)前記陰極部に排出口を備える
(b)陰イオン供給部と
(b1)前記陰イオン供給部が前記陰極部の陽極側に隣接し、前記通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1に接して陰イオン交換体A1の充填された部屋と
(b2)前記陰イオン交換体A1の充填された部屋の他端が陰イオン交換膜M2で仕切られ、
(b3)前記陰イオン交換体A1の充填された部屋の一部に陰イオン供給用溶液入口を備える
(c)陰イオン生成部と
(c1)前記陰イオン生成部が前記陰イオン供給部の陽極側に隣接し、前記陰イオン交換膜M2に接して陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋と
(c2)陽イオン交換体C2の充填された部屋を備え、他端にフッ素系陽イオン交換膜M3で仕切られ、
(c3)前記陽イオン交換体C2の充填された部屋の一部に陰イオン生成溶液注入口又は陰イオン生成溶液出口を備え、
(c4)前記陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陰イオン生成溶液出口又は陰イオン生成溶液注入口を備える
(d)陰イオン除去部と
(d1)前記陰イオン除去部が前記陰イオン生成部の陽極側に隣接し、前記フッ素系陽イオン交換膜M3に接して陰イオン交換体A3を充填した部屋と
(d2)前記陰イオン交換体A3の充填された部屋の他端を陰イオン交換膜M4で仕切られ、
(d3)前記陰イオン交換体A3の充填された部屋の一部に陰イオン除去用溶液入口を備え、同部屋の他部位に陰イオン除去用溶液出口を備える
(e)陰イオン排出部と
(e1)前記陰イオン排出部が前記陰イオン除去部の陽極側に隣接し、前記陰イオン交換膜M4に接して陰イオン交換体A4の充填された部屋を備え、他端に通水孔付陽イオン交換膜M5で仕切られる
(e2)前記陰イオン交換体A4の充填された部屋の一部に陰イオン排出用溶液を注入する陰イオン排出用溶液入口を備える
(f)陽極部と
(f1)前記陽極部が陽極電極を備え、
(f2)前記陽極電極の陰極側に接する
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M5で仕切られて、
(f3)前記陽極部に排出口を備える
を備える高純度酸性溶液生成および不純物陰イオン除去一体型装置である。
【0016】
この一体型装置では陰極側に陰イオン生成部分を、陽極側に陰イオン除去部分を備え、両部分の境目にバイポーラ界面(フッ素系陽イオン交換膜M3と陰イオン交換体A3)を形成しており、耐久性のあるフッ素系陽イオン交換膜が使われている。また、両電極部分には電極に接触して通水孔付フッ素系陽イオン交換膜が備えられている。
上記(c)陰イオン生成部で、(c3)前記陽イオン交換体C2の充填された部屋の一部に陰イオン生成溶液注入口を備えた場合は(c4)前記陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陰イオン生成溶液出口を備えることとなるが、(c3)前記陽イオン交換体C2の充填された部屋の一部に陰イオン生成溶液出口を備えた場合は(c4)前記陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陰イオン生成溶液注入口を備えることとなる。これは陰イオン生成溶液の流れが両部屋の界面を介して対称形をなし得るからである。
なお、
図2には陰イオン生成部25にもう一つの陽イオン交換膜MMが描かれているが本発明には必須ではない。例えば、スペーサーとしてイオンの流れに影響がない中立なイオン交換膜が装着される場合などである。
【0017】
<基本構造1のイオンクロ用利用態様>
そして、上記基本構造1の陽イオン生成除去一体型装置(
図1)は、陰イオンクロマトグラフィーにおける塩基性溶離液生成および不純物陽イオン除去用として組み込まれて使用される。イオンクロマトグラフ装置は主たる構成として、陽イオン源、基本構造1の陽イオン生成除去一体型装置(
図1)、分離カラム、電気伝導度検出器とそれらを結ぶポンプ、配管からなる。
【0018】
<基本構造2のイオンクロ用利用態様>
さらに、上記基本構造2の陰イオン生成除去一体型装置(
図2)は陽イオンクロマトグラフィーにおける酸性溶離液生成および不純物陰イオン除去用として組み込まれて使用される。イオンクロマトグラフ装置は主たる構成として、陰イオン源、基本構造2の陰イオン生成除去一体型装置(
図1)、分離カラム、電気伝導度検出器とそれらを結ぶポンプ、配管からなる。
【0019】
<装置の単独機能運転>
基本構造1の陽イオン生成除去一体型装置(
図1)にあっても、また基本構造2の陰イオン生成除去一体型装置(
図2)であっても、いずれもイオン生成機能の単独運転するときはイオン除去装置に除去対象イオン溶液として純水を使い運転すればよい。
同様にイオン除去機能の単独運転するときはイオン生成装置にイオン源溶液として純水を使い運転すればよい。
【発明の効果】
【0020】
高電流下で安定して大きなイオン生成能力と除去能力を発揮し、簡易な操作で運転が可能な電気再生式イオン生成除去一体型装置である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明について、最良の実施形態を示し、ついで実施例、実験例を詳述する。
[基本構造1の実施形態]
本発明の基本構造1の実施形態は
図1に示す。
本発明の電気再生式陽イオン生成除去一体型装置の実施形態である陰イオンクロマト分析用一体型装置についてその構成と作用を、
図1を参照して説明する。
電気再生式イオン生成除去一体型装置であって
(a)陽極部と
(a1)前記陽極部が陽極電極を備え、
(a2)前記陽極電極の陰極側に、接する通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1で仕切られて
(a3)前記陽極部に排出口を備える
(b)陽イオン供給部と
(b1)前記陽イオン供給部が前記陽極部の陰極側に隣接し、前記
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M1に接して陽イオン交換体C1、好ましくは陽イオン交換樹脂C1の充填された部屋と
(b2)前記陽イオン交換体C1、好ましくは陽イオン交換樹脂C1の充填された部屋の他端が陽イオン交換膜M2で仕切られ、
(b3)前記陽イオン交換体C1、好ましくは陽イオン交換樹脂C1の充填された部屋の一部に陽イオン供給用溶液入口を備える
(c)陽イオン生成部と
(c1)前記陽イオン生成部が前記陽イオン供給部の陰極側に隣接し、前記陽イオン交換膜M2に接して陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋と
(c2)陰イオン交換体A2、好ましくは陰イオン交換樹脂A2の充填された部屋を備え、他端にフッ素系陽イオン交換膜M3で仕切られ
(c3)前記陰イオン交換体A2、好ましくは陰イオン交換樹脂A2の充填された部屋の一部に陽イオン生成溶液注入口又は陽イオン生成溶液出口を備え、
(c4)前記陽イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陽イオン生成溶液出口又は陽イオン生成溶液注入口を備える
(d)陽イオン除去部と
(d1)前記陽イオン除去部が前記陽イオン生成部の陰極側に隣接し、前記フッ素系陽イオン交換膜M3に接して陽イオン交換体C3、好ましくは陽イオン交換樹脂C3を充填した部屋と
(d2)前記陽イオン交換体C3、好ましくは陽イオン交換樹脂C3の充填された部屋の他端を陽イオン交換膜M4で仕切られ、
(d3)前記陽イオン交換体C3、好ましくは陽イオン交換樹脂C3の充填された部屋の一部に陽イオン除去用溶液入口を備え、同部屋の他部位に陽イオン除去用溶液出口を備える
(e)陽イオン排出部と
(e1)前記陽イオン排出部が前記陽イオン除去部の陰極側に隣接し、前記陽イオン交換膜M4に接して陽イオン交換体C4、好ましくは陽イオン交換樹脂C4の充填された部屋を備え、他端に通水孔付陽イオン交換膜M5で仕切られる
(e2)前記陽イオン交換体C4、好ましくは陽イオン交換樹脂C4の充填された部屋の一部に陽イオン排出用溶液を注入する陽イオン排出用溶液入口を備える
(f)陰極部と
(f1)前記陰極部が陰極電極を備え、
(f2)前記陰極電極の陽極側に、接する通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M5で仕切られて
(f3)前記陰極部に排出口を備える
を備える高純度塩基性溶液生成および不純物陽イオン除去一体型装置である。
図1に示す一体型装置は、塩基性溶離液の生成装置と不純物陽イオン除去装置を有する装置である。
【0027】
装置の左側に陽極、右側に陰極を配置しているが左右いずれでもよく、便宜的にこの配置で示しているだけである。
装置全体はその機能によって陽極部、陽イオン供給部、陽イオン生成部、陽イオン除去部、陽イオン排出部、陰極部からなっており、図示していないが樹脂製容器に収納されている。その装置は両電極板を挟んで、陽イオン交換体充填層、陰イオン交換体充填層、陽イオン交換膜積層体、陽イオン交換膜、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜を使って組み立てられている。樹脂製容器は例えば内径6mmΦの筒状をなし、内部が前記機能別部位間で連通しており、また、外部から溶液を注入する入口と出口を適宜に備え、全体がPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PP(ポリプロピレン)等の絶縁性の材質で構成されている。
【0028】
<フッ素系陽イオン交換膜>
ポリフッ化ビニルにスルホン基を末端に有するテトラフルオロエチレンを結合させたフッ素系陽イオン交換膜である登録商標Nafion膜(デュポン社製)をはじめ、登録商標セレミオンCMF膜(旭硝子社製)があげられる。
また、前記登録商標Nafion膜にはいくつかの種類が発表されているNRE-212、115、117、324、424、551のいずれも好適に用いることができる。
ポリマーの基本骨格がフッ素系化合物でなることから耐酸、耐塩基、耐熱、化学的安定性といった性状を有し、これにイオン交換基としてスルホン基を組み込んで陽イオン交換膜にしたものである。本発明ではこの性状に着目して、最も過酷な状態を来す部位に使用するものである。
【0029】
<通水孔付フッ素系陽イオン交換膜>
フッ素系陽イオン交換膜の全面にスリット加工等を施し、小さな通水孔を開けたものである。膜は、通常、液体を透過させにくい程に表面が緻密であるため、膜に通水孔を設けて水溶液を流せるようにしたものである。電極板に生成するガス、副反応物等を系外に排出しつつ、通水孔を経由して系内に侵入することを防ぐために、通水するのである。
【0030】
<イオン交換膜>
陰・陽イオン交換膜は液体の透過性が小さく、透過率は1/100-1/1000程度のものが使用される。この程度の透過率であれば、下限域で電気泳動によるイオンの移動にともない電気浸透流(イオンの周囲にある水分子がイオンと共に移動する)といわれる水の透過がみられるからである。すなわち、下限域以下では水が透過せずイオンの移動が困難になるからである。さらに上限域でイオンの選択透過性が発現する上限であり、陰イオン交換膜では陰イオンを透過させるが陽イオンを透過させない。陽イオン交換膜ではその逆の性質を有する。今日、多くの種類が開発されており、その多くが使用できる。好ましくは、耐酸化性、耐塩基性、耐熱性にすぐれたイオン交換膜である。陰イオン交換膜としては例えばネオセプタ(登録商標)AHA、AMX、ACS,AFN、AFX(トクヤマ社製)、セレミオン(登録商標) AMV,AMT,DS V,AAV,ASV,AHO,AHT,APS4(旭硝子社製)などを用いることができる。また、陽イオン交換膜としては前記フッ素系陽イオン交換膜のほかスチレン系のセレミオン(登録商標) CMV,CMD、HSF,CSO(旭硝子社製)、ネオセプタ(登録商標)C66(トクヤマ社製)などを用いることができる。
【0031】
<イオン交換体>
イオン交換体はイオン交換機能を有する物質を指し、イオン交換樹脂、モノリス状有機多孔質イオン交換体などがあり、これらの単体でも混合体でもよい。またそれらが成形加工されたビーズ状、繊維状、不織布状、膜状ほかのものが扱いやすい。イオン交換体相全体として陽または陰イオンのイオン交換能を有すればこれら二種以上のイオン交換体を適宜、交互に積層しても混相してもよい。陽イオン交換樹脂としては特に制限はないが例えばアンバライト(登録商標) IR120B,DOWEX(登録商標)50WX2,50WX4,50WX8(ダウ・ケミカル社製)などを用いることができる。これらの中でも強酸性で高交換容量のイオン交換基を有するアンバライト(登録商標)IR120B、DOWEX(登録商標)50WX8が好ましい。陰イオン交換樹脂としては強塩基性で高交換容量のイオン交換基を有するアンバライト(登録商標) IRA402BL、DOWEX(登録商標)1X8、2X8等を用いることができる。
【0032】
<電極>
電極としては電界分布が均一で接触する通水孔フッ素系陽イオン交換膜から排出される液の通過を妨げない形状が好ましく、棒状や、網目状や、環状のものを用いることができる。材質は特に限定されるものではないが、耐腐食性のある白金が好ましい。
電源は装置本体に組み込んで内装化してもよく、外部電源を用いてもよく、直流電源が好ましいが正にバイアス変換された交流電源でもよい。なお通常運転状態で許容される電圧、電流は装置の大きさによるがおおよそ0.1-150 V,0.1-250 mAである。
【0033】
<陽イオン供給溶液>
アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニウム基(アミン基)の水酸化物等の水溶性で塩基性示す物質の総称であるアルカリ、そのほかアルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属リン酸塩、アンモニア、アミン等である。
また、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合は純水である。
<陽イオン生成溶液>
溶離液の性状として分離カラム中の溶出展開過程で、カラム充填物固有の酸や塩基からの影響を緩和してpH環境を安定にしたものとするべく緩衝液が必要な場合がある。その場合、塩基pH域ではホウ酸、炭酸等弱酸性溶液が使用されることになる。また、緩衝液を必要としない場合は純水が使用される。
さらに、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合は純水である。
<陽イオン除去溶液>
脱イオンの対象イオンが陽イオンで、通常は、塩基性溶離液を使用して分離カラムから溶出された溶液である。また、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合はその目的対象溶液である。さらに、本一体型装置の溶離液生成機能のみで運転する場合は純水を使用する。
<陽イオン排出用溶液>
通常は、純水が使用されるが電気伝導度測定後のプロセスリサイクル液を使用してもよい。
<純水>
通常では電気伝導度が1 μS/cm以下の純水である。
【0034】
(a)陽極部
陽極部は陽極電極とこれに接する通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1で仕切られ、その陽極電極の反対側に陽イオン供給溶液出口,すなわち陽極部排出口が設けられている。
陽極電極は電源とつなぎ、通電すると通水孔付陽イオン交換膜M1を介して隣接する陽イオン供給部の陽イオン交換体C1、好ましくは陽イオン交換樹脂C1充填層に電流が伝わり、その後、陰極電極にいたるまで装置内のイオン移動、水の解離にその枢動源として機能していく。なお、通電する前に、本装置のすべてに水溶液の存在が必須であり、本体に備える溶液ないし水の注入口から水溶液が注入され、本体内部を通ってそれぞれ排出口より排出されている状態が作られている必要がある。通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1は、他のイオン交換樹脂と同様にイオン交換能を有することから水溶液の存在下で固体電解質として働き、通電性を示す。ついで電極反応で生ずる酸化作用から周辺のイオン交換樹脂を守るため、耐酸化性のあるバリアとして機能し、あわせて生成する酸素ガスや副生成物が系内に侵入するのを防ぐため、系内から通水孔を経由して水溶液を放出させる。
【0035】
(b)陽イオン供給部
陽イオン供給用溶液入口より、目標の濃度を有する溶離液を生成するために陽イオン源、例えばNa
2CO
3水溶液を濃度調整して、系外から陽イオン交換樹脂C1充填層に注入する。陽イオン交換樹脂C1充填層は陽極側に通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1で、陰極側に陽イオン交換膜M2で仕切られている。系外から注入されたNa
2CO
3水溶液は、Na
+が陽イオン交換樹脂C1充填層にイオン交換しながら移動していき、水が通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1の通水孔から系外に排出していく。
他方、陽極の電極反応で生じたH
+は通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1を介して陽イオン交換樹脂C1充填層に向けて移動する。
Na
+は陽イオン交換樹脂C1のイオン交換基に取り込まれながら、次いでH
+によって置換されて移動を繰り返す、界面動電現象により陰極に向け移動していくことになる。陽イオン交換樹脂C2はこのようにしてイオン交換しながら自動的に再生されていく。
そして、陽イオン(Na
+)は陽イオン交換膜M2を経て、隣接する陽イオン生成部へと移動していく。
【0036】
(c)陽イオン生成部
容器断面に平行とは、両電極をつなぐ軸に垂直な断面であり、これに平行に陽イオン交換膜で積層した充填層が
図1の示す上下に開けた隙間を設けた構造となっている。
この隙間には隣接する陰イオン交換樹脂A2層に注入された陽イオン生成溶液で通常、純水が流れ込み、上部隙間から下部の陽イオン生成用溶液出口に向けて積層充填層の中を通る。下部隙間には隣接する陰イオン交換樹脂A2層との界面に濃縮してくる陽イオンを洗い流した溶液が流れ込み、陽イオン生成用溶液出口から系外に送り出される。
陽イオン生成溶液の流れは界面を介して上記の流れに対称形をなす流れでもよい。すなわち、上部隙間に注入された陽イオン生成溶液で通常、純水が積層充填層の中を通り、さらに隣接する陽イオン交換樹脂A2層との界面に濃縮してくる陽イオンを洗い流した溶液が下部隙間に隣接する陰イオン交換樹脂A2層の下部に備えた陽イオン生成用溶液出口から系外に送り出される。
陽イオン交換膜で積層した充填層には隣接する陽イオン交換膜M2を経て、移動してきたNa
+イオンが電気泳動し、隣接する陰イオン交換樹脂A2層で移動を阻まれ、界面に濃縮していく。そこに前記した純水が流れ込み、洗い流されて行くのである。陽イオン生成用溶液出口に移動してきたNa
+は塩基性溶離液として系外に送り出され、H
+は積層した陽イオン交換膜で選択透過されて、Na
+を置換しながら再生していく。しかし、隣接の陰イオン交換樹脂A2層への移動は阻まれていくが、陽イオン除去部との境目である陽イオン交換膜M3と陰イオン交換樹脂A2層に形成したバイポーラ界面で水の解離から生成したOH
−が移動してきて先のH
+と水を生成する。
陰イオン交換樹脂A2層での電荷移動の担い手はOH
-である。
【0037】
(d)陽イオン除去部
バイポーラ界面を形成する陽イオン交換膜M3で生成したH
+が陽イオン除去部の中核を形成する陽イオン交換樹脂C3の中を移動する。この陽イオン交換樹脂C3充填層には脱イオン処理する対象液である陽イオンを含む溶液、例えばNaOH水溶液で、主として陰イオンクロの分離カラムで溶出した分析対象の陰イオンが微量に混入する塩基性溶液が陽イオン除去用溶液入口から注入される。
陽イオン交換樹脂C3のイオン交換基によってNa
+は取り込まれ、前記したバイポーラ界面を形成する陽イオン交換膜M3を介して移動してきたH
+によって置換されて、陽イオン交換膜M4を介して隣接する陽イオン排出部に界面動電現象で移動させられる。ここでNa
+が全量、陽イオン排出部に移動されなければ処理水にNa
+が混入することになり、高感度の微量イオンのイオンクロマト分析が不可能になる。そのための大前提として前記した生成する溶離液の濃度を脱イオンする能力以下に抑える必要がある。
陽イオン交換樹脂C3充填層を流れて陽イオンを脱イオンされた処理水(HClを含む水)が、陽イオン交換膜M3、M4に行く手を阻まれながら同充填層の下部に備えた陽イオン除去用溶液出口から系外に排出される。
陰イオンクロマト分析ではこの処理水中の陰イオンを電気伝導率測定器にかけることにより、イオンクロマトグラムとして分析結果を示すことになる。
【0038】
(e)陽イオン排出部
陽イオン除去部で脱イオンされた陽イオン(Na
+)は陽イオン交換樹脂C4充填層に移動し、イオン交換されて陽イオン交換樹脂C4に取り込まれながら、バイポーラ界面由来のH
+に更に、置換されながら通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M7の近辺に集積してくる。そこに陽イオン交換樹脂C4充填層の上部に備えられた陽イオン排出用溶液入口から純水が注入され、洗い流されて通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5の通水孔から陰極部に排出される。
【0039】
(f)陰極部
陰極部は陰極電極とこれに接する
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M5で仕切られ、その反対側に陽イオン排出用溶液出口、すなわち陰極部排出口が設けられている。
通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5の役割は、前述のとおり、通電性を示し、ついで電極反応で生ずる還元作用から周辺のイオン交換樹脂を守るため、耐塩基性のあるバリアとして機能し、あわせて生成する水素ガスや副生成物(NaOHほか)が系内に侵入するのを防ぐため、系内から通水孔を経由して水溶液を陽イオン排出用溶液出口より系外に排出させる。
以上
【0040】
[基本構造2の実施形態]
本発明の基本構造2の実施形態は
図2に示す。
本発明の電気再生式陰イオン生成除去一体型装置の実施形態である陽イオンクロマト分析用一体型装置についてその構成と作用を、
図2を参照して説明する。
電気再生式イオン生成除去一体型装置であって
(a)陰極部と
(a1)前記陰極部が陰極電極を備え、
(a2)前記陰極電極の陽極側に接する
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M1で仕切られて
(a3)前記陰極部に排出口を備える
(b)陰イオン供給部と
(b1)前記陰イオン供給部が前記陰極部の陽極側に隣接し、前記
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M1に接して陰イオン交換体A1、好ましくは陰イオン交換樹脂A1の充填された部屋と
(b2)前記陰イオン交換体A1、好ましくは陰イオン交換樹脂A1の充填された部屋の他端に陰イオン交換膜M2で仕切られ、
(b3)前記陰イオン交換体A1、好ましくは陰イオン交換樹脂A1の充填された部屋の一部に陰イオン供給用溶液入口を備える
(c)陰イオン生成部と
(c1)前記陰イオン生成部が前記陰イオン供給部の陽極側に隣接し、前記陰イオン交換膜M2に接して陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋と
(c2)陽イオン交換体C2、好ましくは陽イオン交換樹脂C2の充填された部屋を備え、他端にフッ素系陽イオン交換膜M3で仕切られ、
(c3)前記陽イオン交換体C2、好ましくは陽イオン交換樹脂C2の充填された部屋の一部に陰イオン生成溶液注入口又は陰イオン生成溶液出口を備え、
(c4)前記陰イオン交換膜で容器断面に平行に積層した部屋の空間の一部から陰イオン生成溶液出口又は陰イオン生成溶液注入口を備える
(d)陰イオン除去部と
(d1)前記陰イオン除去部が前記陰イオン生成部の陽極側に隣接し、前記フッ素系陽イオン交換膜M3に接して陰イオン交換体A3、好ましくは陰イオン交換樹脂A3の充填した部屋と
(d2)前記陰イオン交換体A3、好ましくは陰イオン交換樹脂A3の充填された部屋の他端を陰イオン交換膜M4で仕切られ、
(d3)前記陰イオン交換体A3、好ましくは陰イオン交換樹脂A3の充填された部屋の一部に陰イオン除去用溶液入口を備え、同部屋の他部位に陰イオン除去用溶液出口を備える
(e)陰イオン排出部と
(e1)前記陰イオン排出部が前記陰イオン除去部の陽極側に隣接し、前記陰イオン交換膜M4に接して陰イオン交換体A4、好ましくは陰イオン交換樹脂A4の充填された部屋を備え、他端に通水孔付陽イオン交換膜M5で仕切られる
(e2)前記陰イオン交換体A4、好ましくは陰イオン交換樹脂A4の充填された部屋の一部に陰イオン排出用溶液を注入する陰イオン排出用溶液入口を備える
(f)陽極部と
(f1)前記陽極部が陽極電極を備え、
(f2)前記陽極電極の陰極側に接する
通水孔付きフッ素系陽イオン交換膜M5で仕切られて、
(f3)前記陽極部に排出口を備える
を備える高純度酸性溶液生成および不純物陰イオン除去一体型装置である。
【0041】
本装置は
図2に示すように左側に陰極、右側に陽極を示し、陰イオン溶離液の生成と脱陰イオンを目指した一体型装置である。
装置全体はその機能によって陰極部、陰イオン供給部、陰イオン生成部、陰イオン除去部、陰イオン排出部、陽極部からなっており、図示していないが樹脂製容器に収納されている。その装置は両電極板を挟んで、陽イオン交換体充填層、陰イオン交換体充填層、陰イオン交換膜積層体、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜を使って組み立てられている。これら部材の詳細は前記したものと同じであり、省略する。
前記した陰イオンクロマト分析用一体型装置の構造に較べ、イオン交換体、イオン交換膜積層体は中心部の一部を除いて、多く、反対極性のものを使用して、注目する移動イオンの挙動も似ている。
従って、本装置について簡潔に説明をする。
【0042】
<陰イオン供給溶液>
水溶液にしたとき陰イオンを解離するものとして塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、リン酸、シュウ酸など各種酸、NaCl,KCl,KI、UF
4等金属ハロゲン化物水溶液である。陰イオンを含む水溶液で、具体的に各イオンを列挙すれば、重複するが単原子イオンとして塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンとのハロゲン化物イオンであり、代表的な多原子イオンまたは分子イオンとして次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオンといった塩素のオキソアニオンや酢酸イオン、ギ酸イオン、メタアクリル酸イオン、安息香酸イオン、シアン化イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸二水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、硫化水素イオンである。
また、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合は純水である。
【0043】
<陰イオン生成溶液>
溶離液の性状として分離カラム中の溶出展開過程で、カラム充填物固有の酸や塩基からの影響を緩和してpH環境を安定にしたものとするべく緩衝液が必要な場合がある。その場合、酸性pH域ではNa、K、NH
3、アミン溶液等が使用される。また、緩衝液を必要としない場合は純水が使用される。
また、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合は純水である。
<陰イオン除去溶液>
脱イオンの対象イオンが陰イオンで、通常は、酸性溶離液を使用して分離カラムから溶出された溶液である。また、本一体型装置の脱イオン機能のみで運転する場合はその目的対象溶液である。
さらに、本一体型装置の溶離液生成機能のみで運転する場合は純水である。
<陰イオン排出用溶液>
通常は、純水が使用されるが電気伝導度測定後のプロセスリサイクル液を使用してもよい。
<純水>
通常では電気伝導度が1 μS/cm以下の純水である。
【0044】
陰イオン供給部において供給される陰イオン源として、例えば高濃度のフッ化物イオン(F
-),塩化物イオン(CL
−),亜硝酸イオン(NO
2-),硝酸イオン(NO3
-),臭化物イオン(Br
-),リン酸イオン(PO
43-),硫酸イオン(SO
42-)などの陰イオンを含んだ電解質溶液が陰イオン交換樹脂A1充填層に注入されと、陰イオンは陰イオン交換樹脂A1の交換基に取り込まれていく。例えば、NaCl水溶液を注入したとするとCl
−が陰イオン交換樹脂A1の交換基に取り込まれる。
他方、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1は陰イオン交換樹脂A1層とバイポーラ界面を形成し、水の解離により生成するOH
-で、陰イオン交換樹脂A1充填層の陰イオンCl
−を置換しながら陰イオンCl
−を陽極方向に界面動電現象で電気泳動させる。
陰イオン交換樹脂A1充填層に遊離するNa
+は通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M1に沿って濃縮していくが、注入水が洗い流して通水孔から陰極部へ排出する。OH
-で生成するNaOHと未解離分NaClが陽極部排出口より排出される。
この後、陰イオンは陰イオン交換膜M2を通過し、陰イオン交換膜層で集積される。
隣接の陽イオン交換樹脂C2層に注入され、あるいは陰イオン交換膜層の上部隙間に注入された陰イオン生成溶液、通常は純水によって洗い流されて酸性溶離液として系外へ送られる。
【0045】
陰イオン生成部分の端部である陽イオン交換樹脂C2層と陰イオン除去部分の
端部である陰イオン交換樹脂A3層の間をフッ素系陽イオン交換膜M3でつないでいる。フッ素系陽イオン交換膜M3と隣接する陰イオン交換樹脂A3充填層の界面がバイポーラ界面を形成し、水の解離により陽イオン交換樹脂C2側にH
+を、陰イオン交換樹脂A3側にOH
-を生じさせる。
これらH
+は前記した陰イオン交換膜層で集積された陰イオンと共に酸を形成する。OH
-は陰イオン除去部の陰イオン交換樹脂A3層に移動していく。
陰イオン除去部の陰イオン交換樹脂A3充填層に微量の陽イオンを含む酸性溶離液(例えばHCl水溶液)を流し、不純物イオンとして、CL
-は陰イオン交換樹脂A3のイオン交換基に取り込まれつつ、前記したOH
-に置換されながら陽極方向に電気泳動していく。微量の陽イオンを含む水溶液は陰イオン交換樹脂A3層をフッ素系陽イオン交換膜M3,陰イオン交換膜M4に阻まれながら、
陰イオン除去用溶液出口から取り出される。次いで、電気伝導度検出器にかけ、イオンクロマトグラムとして分析結果を示す。
陰イオンは陰イオン交換樹脂A3充填層を移動して陰イオン交換膜M4を通過し、陰イオン交換樹脂A4層へ移動していく。
陰イオン交換樹脂A4層に外部から陰イオン排出用溶液、通常は純水が注入され、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5の通水孔を経て陽極部に排出される。
陰イオン交換樹脂A4層と通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5との界面はバイポーラ界面を形成し、外部から注入された水の解離により、H
+とOH
-を生成し、陰イオン交換樹脂A4充填層に移動してきたCl
−の一部がH
+と反応してHClを生成し、通水孔付フッ素系陽イオン交換膜M5の通水孔を経由して、陽極部に排出される。
陽極部では発生するO
2、HClが陽極部排出口より排出される。
【実施例1】
【0046】
(1)アニオンクロ用一体型装置の陽イオン生成機能を使用してNaOHの生成量の確認。
アニオンクロ用一体型装置(
図1)の陽イオン供給部3を使用したNaOH溶液生成システムのフローチャートを
図3に示す。
このシステムは、アニオンクロ用一体型装置(
図1)のほか4つのポンプ(Pump1: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump2: LC-10AD、島津、Pump3: LC-10AD、島津、Pump4: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用)と、電気伝導度検出器(iSC8010の検出器のみを使用、日理工業)からなっている。
Pump1(0.5 mL/min)を使用し、10-100 mM Na
2CO
3溶液を陽イオン供給部分3に供給する。Pump2(1 mL/min)を使用し、純水を陽イオン生成部分1に供給する。
さらに、陽イオン除去部分、陽イオン排出部分についても水溶液を流しておく必要があるので、Pump3、Pump4を使って純水を1 mL/minで陽イオン除去用溶液入口、陽イオン排出用溶液入口にそれぞれ供給する。そして供給された溶液は陽イオン除去用溶液出口、陽イオン排出用溶液出口から排出される。
陽イオン供給部から10 mM Na
2CO
3、20 mM Na
2CO
3、50 mM Na
2CO
3、100 mM Na
2CO
3の各濃度で供給し、NaOHを生成させるが通電する電流の大きさによって生成されるNaイオン量が異なるのでさらに、電極間に印加する電流を調整することで、陽イオン供給部分3から陽イオン生成部分1に向けて移動するNaイオン量を調整する。陽イオン生成部分1に移動したNaイオンは、Pump2から供給した純水と一緒にNaOH溶液となり溶出する。陽イオン生成部分1から溶出したNaOH溶液は、検出用の電気伝導度検出器に流れ、溶出液の電気伝導度を測定する。
【0047】
図1のアニオンクロ用一体型装置に、陽イオン供給部から10 mM Na
2CO
3、20 mM Na
2CO
3、50 mM Na
2CO
3、100 mM Na
2CO
3の各濃度で供給し、印加する電流を20mA,40mA,60mA,80mA、100mAに変化した時に、生成するNaOH溶液の電気伝導度の変化(Na+濃度)を
図4に示す。
図4に示す記号は以下に示すとおりである。
◆:陽イオン供給部分3に10 mM Na
2CO
3を供給、
●:陽イオン供給部分3に20 mM Na
2CO
3を供給、
▲:陽イオン供給部分3に50 mM Na
2CO
3を供給、
×:陽イオン供給部分3に100 mM Na
2CO
3を供給、
【0048】
(2) アニオンクロ用一体型装置の脱陽イオン機能を使用してNaOH溶液の除去能力の確認。
アニオンクロ用一体型装置(
図1)の陽イオン除去部分2を使用した陽イオン除去システムのフローチャートを
図5に示す。
このシステムは、アニオンクロ用一体型装置(
図1)のほか4つのポンプ(Pump1: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump2: LC-10AD、島津、Pump3: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump4: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用)と、電気伝導度検出器(DX120の検出器のみ使用、Dionex)からなっている。
Pump1と3と4(1 mL/min)を使用し、純水を陽イオン供給部分3 と陽イオン生成部分1および陽イオン排出部分4に供給する。Pump2(1 mL/min)を使用し、50 mM NaOH溶液を陽イオン除去部分2に供給する。陽イオン除去部分2では、電場下において、陽イオン除去部分2から陽イオン排出部分4へ陽イオンの移動が起こっている。そのため、陽イオン除去部分2に流れ込んだNaOH溶液中に含まれる陽イオンは、陽イオン排出部分4に移動し除去される。そのため、陽イオン除去部分2からの溶出液は、脱陽イオン水となる。陽イオン除去部分2からの溶出液は、検出用の電気伝導度検出器に流れ、溶出液の電気伝導度を測定する。この電気伝導度からNa
+濃度を求め、電流を変化させて電流0の時の
Na
+濃度からの差を脱イオン能力として、各電流値に対する脱イオン濃度(
Na
+濃度)を
図6に示す。
【0049】
(3) アニオンクロ一体型装置(
図1)をアニオンクロマトグラフィーにおける塩基性溶離液生成および不純物陽イオン除去用として組み込んだイオンクロマグラフ装置。
上記(1)のアニオンクロ一体型装置(
図1)で生成するNaOH濃度が上記(2)のアニオンクロ一体型装置(
図1)で除去できるNa
+量より低くなることが必須である。このことは、溶離液のイオンの大半をカラム分離した後に脱イオン装置で除いてから残る検査対象イオンを電気伝導度で測定するイオンクロマトグラフィーの原理から明らかである。
従って、
図4に
図6を組み込んだ
図7を見れば、アニオンクロ用一体型装置(
図1)のNaOH溶液の生成量は、陽イオン供給部3に供給するNa
2CO
3溶液の濃度を低くすることで、陽イオン除去部分2で除去できるNaイオンの除去量よりも低くなることが分かる。
図7に追加された記号は以下に示す。
〇:陽イオン除去部分2のNaイオンの除去濃度
すなわち、アニオンクロ用一体型装置(
図1)は、陽イオン供給部分3に供給するNa
2CO
3溶液の濃度と印加する電流を調整することで、アニオンクロマトグラフ用装置として利用できるようになる。
【0050】
(4)アニオンクロ用一体型装置をアニオンクロマトグラフ装置に組み込んで標準アニオンサンプルを用いてイオンクロマトグラムを得る。
アニオンクロ用一体型装置(
図1)に印加する電流と、陽イオン供給部分3に供給するNa
2CO
3溶液の濃度を調整することにより、
図1のアニオンクロ用一体型装置のNaOH溶液の生成量は、陽イオン除去部分2の陽イオン除去量よりも少なくなり、そして、
図1のアニオンクロ用一体型装置の陽イオン生成部分1で生成したNaOH溶液中のNaイオンは、陽イオン除去部分2で除去され、電気伝導度検出器で陰イオンを高感度に検出できることを確認した。測定に用いたアニオンクロマトグラフのフローチャートを
図8に示す。
図1のアニオンクロ用一体型装置の陽イオン供給部分には、15 mM Na
2CO
3溶液(0.5 mL/min)を供給している。約2800 μS/cm (約12.5 mM) NaOH溶液を安定に生成するため、印加電流を100 mA (40 V)に設定した。
陽イオン生成部分1で生成した約2800 μS/cm NaOH溶液は、溶離液として標準アニオンサンプルと共に分離カラムに注入し、その溶出液を陽イオン除去部分2に投入してNaイオンは除去され、陽イオン除去部分2からの溶出液の電気伝導度は4 μS/cm以下となった。これは、陽イオン生成部分1で生成したNaOH溶液中のNaイオンがほとんど完全に除去されたことを意味する。
また、得られたアニオンクロマトグラムを
図9に示す。
図9に示すアニオンクロマトグラムから分かるように、ベースラインは非常に安定していて、陰イオンの高感度検出が可能であることが確認できた。
使用したサンプルは次に示す。
1: water dip、2: F (0.5 mg/L)、3: Cl (1 mg/L)、4: NO
2 (1.5 mg/L)、5: Br (1 mg/L)、6: NO
3 (3 mg/L)、7: CO
3 (unknown)、8: SO
4 (4 mg/L)、9: PO
4 (3 mg/L)、サンプル注入量(20 μL)。
【実施例2】
【0051】
アニオンクロ用一体型装置(
図1)を使用してホウ酸Na溶液を溶離液として生成し、併せて、アニオンクロマトグラフ装置に組み込んで標準アニオンサンプルを用いてイオンクロマトグラムを得る。
アニオンクロ用一体型装置(
図1)を使用し、イオン生成部分1でホウ酸Na溶液を生成した時の、アニオンクロマトグラフのフローチャートを
図10に示す。
このシステムは、アニオンクロ一体型装置(
図1)のほか2つのポンプ(Pump1: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump2: LC-10AD、島津)と、インジェクター(20 uL、RHeodyne)と、分離カラム(Shim-Pack IC-SA2, 島津)と、電気伝導度検出器(ICA2000、東亜DKK)からなっている。
Pump1(0.5 mL/min)を使用し、15 mM Na
2CO
3溶液を陽イオン供給部分3に供給する。Pump2(1 mL/min)を使用し、20 mMホウ酸溶液を陽イオン生成部分1に供給する。
また、同時に脱イオン部を立ち上げる必要があることから陽イオン除去部分、陽イオン排出部分のそれぞれの注入口より純水各1 mLを注入する。
電極間に電圧を印加することで、陽イオン供給部分3から陽イオン生成部分1に向けてNaイオンは移動する。陽イオン生成部分1に移動したNaイオンは、Pump2から供給したホウ酸溶液と一緒にホウ酸Na溶液となり溶出する。印加電流100 mA (約41 V)下において、使用した分離カラムの最適の約1050 μS/cmホウ酸Na溶液を陽イオン生成部分1で生成した。
生成したホウ酸Na溶液は、インジェクターに流れる。ホウ酸Na溶液とともに、インジェクターにより注入されたサンプル陰イオンは、分離カラムに流れる。サンプル陰イオンは、分離カラムでホウ酸Na溶液により分離・溶出され、陽イオン除去部分2に流れる。陽イオン除去部分2では、電場下において、陽イオン除去部分2から陽イオン排出部分4へ陽イオンの移動が起こっている。そのため、陽イオン除去部分2に流れ込んだ分離カラムの溶出液中に含まれる陽イオンは、陽イオン排出部分4に移動し除去される。そのため、陽イオン除去部分2からの溶出液は、ホウ酸と酸型のサンプル陰イオンとなる。
陽イオン除去部分2からの溶出液は、検出用の電気伝導度検出器に流れ、溶出液の電気伝導度を測定する。陽イオン除去部分2からの溶出液の電気伝導度は4 μS/cm以下となった。これは、陽イオン生成部分1で生成したホウ酸Na溶液中のNaイオンがほとんど完全に除去されたことを意味する。
【0052】
さらに、得られたアニオンクロマトグラムを
図11に示す。
図11に示すアニオンクロマトグラムから分かるように、ベースラインは非常に安定していて、陰イオンの高感度検出が可能であることが確認できた。
使用したサンプルを次に示す。
1: water dip、2: F (0.5 mg/L)、3: Cl (1 mg/L)、4: NO
2 (1.5 mg/L)、5: Br (1 mg/L)、6: NO
3 (3 mg/L)、7: PO
4 (3 mg/L)、8: SO
4 (4 mg/L)、サンプル注入量(20 μL)。
【実施例3】
【0053】
(1)カチオンクロ用一体型装置(
図2)を使用してHClの生成量の確認
カチオンクロ用一体型装置(
図2)を使用したHCl溶液生成システムのフローチャートを
図12に示す。
このシステムはカチオンクロ用一体型装置(
図2)ほか4つのポンプ(Pump1: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump2: LC-10AD、島津、Pump3: LC-10AD、島津Pump4: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用)と、電気伝導度検出器(iSC8010の検出器のみを使用、日理工業)からなっている。
Pump1(0.5 mL/min)を使用し、10-100 mM NaCl溶液を陰イオン供給部分27に供給する。Pump2(1 mL/min)を使用し、純水を陰イオン生成部分25に供給する。
さらに、陰イオン除去部分、陰イオン排出部分についても水溶液を流しておく必要があるので、Pump3、Pump4を使って純水を1 mL/minで陰イオン除去用溶液入口、陰イオン排出用溶液入口にそれぞれ供給する。そして供給された溶液は陰イオン除去用溶液出口、陰イオン排出用溶液出口から排出される。
図2のカチオンクロ用一体型装置に、陰イオン供給部から10 mM NaCl
、20 mM NaCl
、50 mM NaCl
、100 mM NaClの各濃度で供給し、印加する電流を20mA,40mA,60mA,80mA,100mAに変化したときに、生成するHCL溶液の電気伝導度の変化(Cl
−濃度)を
図13に示す。
図13に示す記号は以下に示す通りである。
◆:陰イオン供給部分27に10 mM NaClを供給、
■:陰イオン供給部分27に20 mM NaClを供給、
▲:陰イオン供給部分27に50 mM NaClを供給、
×:陰イオン供給部分27に100 mM NaClを供給、
【0054】
(2)カチオンクロ用一体型装置の脱陰イオン機能を使用してHCl溶液の除去能力の確認。
カチオンクロ用一体型装置(
図2)の陰イオン除去部分26を使用した陰イオン除去システムのフローチャートを
図14に示す。
このシステムは、カチオンクロ用一体型装置(
図2)のほか4つのポンプ(Pump1: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump2: LC-10AD、島津、Pump3: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用、Pump4: ペリスタリックポンプ、日理工業製の制御装置を使用)と、電気伝導度検出器(DX120の検出器のみ使用、Dionex)からなっている。
Pump1と3と4(1 mL/min)を使用し、純水を陰イオン供給部分27 と陰イオン生成部分25および陰イオン排出部分20に供給する。Pump2(1 mL/min)を使用し、50 mM HCl溶液を陰イオン除去部分26に供給する。陰イオン除去部分26では、電場下において、陰イオン除去部分26から陰イオン排出部分20へ陰イオンの移動が起こっている。そのため、陰イオン除去部分26に流れ込んだHCl溶液中に含まれる陰イオンは、陰イオン排出部分20に移動し除去される。そのため、陰イオン除去部分26からの溶出液は、脱陰イオン水となる。陰イオン除去部分26からの溶出液は、検出用の電気伝導度検出器に流れ、溶出液の電気伝導度を測定する。この電気伝導度からCl
−濃度を求め、電流を変化させて電流0の時のCl
−濃度からの差を脱イオン能力として、各電流値に対する脱イオン濃度(Cl
−濃度)を
図15に示す。
【0055】
(3)カチオンクロ一体型装置(
図2)をカチオンクロマトグラフィーにおける酸性溶離液生成および不純物陰イオン除去用として組み込んだイオンクロマグラフ装置。
上記(1)のカチオンクロ一体型装置(
図2)で生成するHCl濃度が上記(2)のカチオンクロ一体型装置(
図2)で除去できるCl
−量より低くなることが必須である。このことは、溶離液のイオンの大半をカラム分離した後に脱イオン装置で除いてから残る検査対象イオンを電気伝導度で測定するイオンクロマトグラフィーの原理から明らかである。
従って、
図13に
図15を組み込んだ
図16を見れば、カチオンクロ用一体型装置(
図2)のHCl溶液の生成量は、陰イオン供給部27に供給するHCl溶液の濃度を低くすることで、陰イオン除去部分26で除去できるClイオンの除去量よりも低くなることが分かる。
図16に追加された記号は以下に示す。
〇:陰イオン除去部分26のClイオンの除去濃度
すなわち、カチオンクロ用一体型装置(
図2)は、陰イオン供給部分27に供給するHCl溶液の濃度と印加する電流を調整することで、カチオンクロマトグラフ用装置として利用できるようになる。
【0056】
(4)カチオンクロ用一体型装置をカチオンクロマトグラフ装置に組み込んで標準カチオンサンプルを用いてイオンクロマトグラムを得る。
カチオンクロ用一体型装置(
図2)に印加する電流と、陰イオン供給部分27に供給するNaCl溶液の濃度を調整することにより、
図2のカチオンクロ用一体型装置のHCl溶液の生成量は、陰イオン除去部分26の陰イオン除去量よりも少なくなり、そして、
図2のカチオンクロ用一体型装置の陰イオン生成部分25で生成したHCl溶液中のClイオンは、陰イオン除去部分26で除去され、電気伝導度検出器で陽イオンを高感度に検出できることを確認した。測定に用いたカチオンクロマトグラフのフローチャーを
図17に示す。
図2のカチオンクロ用一体型装置の陰イオン供給部分には、20 mMNaCl溶液(0.5 mL/min)を供給している。約3300 μS/cm (約8.5 mM) HCl溶液を安定に生成するため、印加電流を100 mA (43.7 V)に設定した。
陰イオン生成部分25で生成した約3300 μS/cm HCl溶液は、溶離液として標準カチオンサンプルと共に分離カラムに注入し、その溶出液を陰イオン除去部分26に投入してClイオンは除去され、陰イオン除去部分26からの溶出液の電気伝導度は0.37 μS/cm以下となった。これは、陰イオン生成部分26で生成したHCl溶液中のClイオンがほとんど完全に除去されたことを意味する。
また、得られたカチオンクロマトグラムを
図18に示す。
図18に示すカチオンクロマトグラムから分かるように、ベースラインは非常に安定していて、陽イオンの高感度検出が可能であることが確認できた。
使用したサンプルを次に示す。
1: Li (50 μg/L)、2: Na (200 μg/L)、3: NH
3 (200 μg/L)、4: K (500 μg/L)、5: Mg (500 μg/L)、6: Ca (500 μg/L)、サンプル注入量(20 μL)。
[実験例]
【0057】
電気再生式脱イオン装置を使用して各種のイオン交換膜等で形成したバイポーラ界面の高電流耐久性を示す比較実験を行った。
実験に用いた電気再生式脱イオン装置の概略図を
図19に示す。
使用した装置は、ポンプ1と3(peristaltic pump,1 mL/min で流量コントロール)、ポンプ2(1 mL/min, DP-8020, Tosoh, Tokyo, Japan)、イオン除去装置(200 mA, Nichiri, Chiba, Japan,
図20〜23に使用した装置を示す)から成る。
陽イオン交換体として陽イオン交換樹脂、陰イオン交換体として陰イオン交換樹脂、脱イオン室のバイポーラ界面として
図20の装置では陰イオン交換樹脂と通水孔付フッ素系陽イオン交換膜(CMF),
図21の装置で通水孔付陰イオン交換膜(AHA)と陽イオン交換樹脂、
図22の装置で通水孔付陽イオン交換膜(C66)と陰イオン交換樹脂、
図23の装置で陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂
で構成された。
【0058】
図20〜23の図中に用いた用語、記号は下記のとおりである。
陰イオン交換膜 (AHA, 株式会社アストム)、
通水孔付陽イオン交換膜(C66, 株式会社アストム)、
フッ素系陽イオン交換膜 (CMF, 旭硝子)、
通水孔付フッ素系陽イオン交換膜 (CMF, 旭硝子)、
D
OH; OH
−、
水の解離で生成したイオン、D
H; H
+、水の解離で生成したイオン、陰イオン交換樹脂(登録商標Amberlite, IRA402BL, 0.6−0.8 mm, L, 0.6 meq/mL, Organo, Tokyo, Japan)、
陽イオン交換樹脂(登録商標Amberlite, IR120BL, 0.6−0.8 mm, 2.0 meq/mL以上, Organo, Tokyo, Japan)。
【0059】
図19に示すように微量のイオンを含んだ純水溶液は、ポンプ 2によりイオン除去装置へ送られる。陽イオン交換樹脂が充填してある脱イオン室2では陽イオンが除去され、陰イオン交換樹脂が充填してある脱イオン室1では陰イオンが除去される。プロセス水として純水(電気伝導 1 μS/cm以下)がポンプ1と3によりイオン除去装置へ送られる。電極で発生する泡もプロセス水とともに系外へ排出される。
【0060】
図20に示す装置を使用し、印加電流200 mAにおいて、イオン除去装置の耐久試験を行った。
図20〜23の装置は内径6 mmΦの円筒であり、印加電流密度は700 mA/cm
2である。最大許容電流は1000 mA/cm
2であるから70 %レベルの稼働で行った。
図20〜23の装置に200 mAの電流を印加し、その時の測定した電圧の変化を
図24に示す。
【0061】
図24中の記号で
×は中央部のバイポーラ界面である陰イオン交換樹脂と通水孔付フッ素系陽イオン交換膜で形成した装置であり、
□は中央部のバイポーラ界面である陰イオン交換樹脂と通水孔付陽イオン交換膜(C66)(13)で、
〇は中央部のバイポーラ界面である陽イオン交換樹脂と通水孔付陰イオン交換膜(AHA)(12)で、
△は中央部のバイポーラ界面である陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂で形成した装置である。
【0062】
図24から分かるように、中央部のバイポーラ界面である陰イオン交換樹脂と通水孔付フッ素系陽イオン交換膜で形成した装置の電圧の変化は一定で、装置は壊れていないことが分かる。しかし、その他の3つの装置では、中央部のバイポーラ界面が陰イオン交換樹脂と通水孔付陽イオン交換膜(C66),通水孔付陰イオン交換膜(AHA)と陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂で構成され、いずれも電圧が上昇し装置が壊れることが分かる。また、前記界面部分の故障を試験終了後分解して目視で確認している。通水孔付陽イオン交換膜(C66)は黒変しており、通水孔付陰イオン交換膜(AHA)は膜表面に陽イオン交換樹脂がびっしり付着していた。陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とはびっしりとくっ付いていた。いずれも組織が壊れ、イオン交換機能が損なわれているものと推察される。
この結果は、中央部のバイポーラ界面が陰イオン交換樹脂と通水孔付フッ素系陽イオン交換膜で形成したものの優位性が明らかになった。また、上記の実験では通水孔付のタイプで確認したものだが上記の結果は材質の耐久性が比較されたものであるから通水孔のないものでもまったく同様の耐久性が示されるものとみなされる。