(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱した素材をテーブル上に載置し、前記テーブルを上下方向に延びる中心軸線回りに回転させて前記素材を回転させつつ成形ロールで前記素材の上面に荷重を加え、ロール鍛造によって前記素材をディスク状に成形するインペラディスクの成形方法において、
保温手段を用いて成形中に前記素材の温度低下を抑止するようにし、
前記保温手段としてバーナを用い、回転する前記素材における前記成形ロールに対して回転方向上流側の一部の領域であって、該一部の領域における前記素材の上面の内周側及び外周側と外周を形成する側面とに向けて火炎を放射して前記素材を加熱しながら成形するようにしたことを特徴とするインペラディスクの成形方法。
加熱した素材をテーブル上に載置し、前記テーブルを上下方向に延びる中心軸線回りに回転させて前記素材を回転させつつ成形ロールで前記素材に荷重を加え、ロール鍛造によって前記素材をディスク状に成形するためのインペラディスクの成形装置であって、
成形中の前記素材の温度低下を抑止するための保温手段を備え、
前記保温手段は、バーナであって
前記バーナは、回転する前記素材における前記成形ロールに対して回転方向上流側の一部の領域であって、該一部の領域における前記素材の上面の内周側及び外周側と外周を形成する側面とに向けて火炎を放射することを特徴とするインペラディスクの成形装置。
【背景技術】
【0002】
従来、液体用ポンプや発電機等、各種の水力機械や空気機械が備えるインペラ(圧縮機インペラ)1は、
図11に示すように、ブレード2と、ブレード2を挟み込むように配設されるインペラディスク3及びインペラカバー4とを備えて構成されている。
【0003】
そして、インペラディスクやインペラカバーは、金型鍛造やロール鍛造などを用い、円錐台状(ディスク状)に成形される。
【0004】
具体的に、金型鍛造を用いてインペラディスクなどを成形する場合には、例えば、所定形状の金型の中央穴に炉出しした素材(荒地鍛造材)を挿入して叩き、低温化した素材を炉に入れる再加熱と金型への挿入・叩きとを繰り返し行って素材を半径方向に徐々に押し広げ、所望の形状に仕上げてゆく。
【0005】
ロール鍛造を用いる場合には、例えば、成形装置のテーブル上に炉出しした素材を載せ、成形ロールで素材を圧下するとともにテーブルを回転させて素材を半径方向に徐々に押し広げ、円錐台状に成形してゆく。また、成形ロールをテーブルに対して半径方向に相対移動させることにより、さらに低温化した素材を炉に入れる再加熱とロール鍛造とを繰り返し行って素材を所望の形状に仕上げてゆく(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、金型鍛造は、成形精度が高く、材料歩留まりが高いという大きな利点を有する反面、再加熱と叩きの繰り返し作業(ヒート回数)が多く、成形に時間を要し、また成形品の形状ごとにその形状に応じた金型が必要になる。
【0008】
これに対し、ロール鍛造は、成形精度が比較的高く、材料歩留まりも高い上、金型鍛造と比較しヒート回数が少なくて済み、成形時間が短い。
【0009】
一方で、ロール鍛造では、大気中への直接的な放熱に加え、テーブルへの伝熱によって素材の温度低下が生じやすい。このため、例えば外径1350mmを超えるような大型サイズのインペラディスクなどをロール鍛造で成形しようとすると、素材の温度低下によって、設備能力を超えるほど、テーブルの回転力(トルク)、ロールの圧下力が増大してしまう。また、テーブルへの伝熱によって素材の下面側が上面側よりも早期に低温化することで素材の上面側と下面側の変形量に大きな差が生じ、成形品の形状不良が発生しやすくなってしまう。
【0010】
すなわち、ロール鍛造の現有設備では、成形中の放冷により素材、特に素材の外周側と下面側の温度低下が生じることで鍛造可能な製品サイズに限界があり、この成形中の素材の温度低下に起因して設備容量を超える成形荷重(反力)が発生したり、形状不良(精度低下)が発生してしまう。
【0011】
このため、外径1350mmを超えるような大型サイズのインペラディスクなどは、その都度金型を製作して金型鍛造で成形しているのが現状であり、上記のように多くの利点を有するロール鍛造で大きなサイズの成形品を製造できるようにすることが強く望まれていた。
【0012】
なお、成形ロールによる素材への載荷重(圧下力)を大きくすれば、現有設備で大型サイズの成形品を製造することもでき得るが、より大きな載荷重を付加できるようにするには多額の設備投資が必要になってしまう。
このため、ロール鍛造の現有設備を使用して大きなサイズの製品にも対応できるようにすることが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のインペラディスクの成形方法は、加熱した素材をテーブル上に載置し、前記テーブルを上下方向に延びる中心軸線回りに回転させて前記素材を回転させつつ成形ロールで前記素材の上面に荷重を加え、ロール鍛造によって前記素材をディスク状に成形するインペラディスクの成形方法において、保温手段を用いて成形中に前記素材の温度低下を抑止するようにし、前記保温手段としてバーナを用い、回転する前記素材
における前記成形ロールに対して回転方向上流側の一部の領域であって、該一部の領域における前記素材の上面の内周側及び外周側と外周を形成する側面とに向けて火炎を放射して前記素材を加熱しながら成形するようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明のインペラディスクの成形装置は、加熱した素材をテーブル上に載置し、前記テーブルを上下方向に延びる中心軸線回りに回転させて前記素材を回転させつつ成形ロールで前記素材に荷重を加え、ロール鍛造によって前記素材をディスク状に成形するためのインペラディスクの成形装置であって、成形中の前記素材の温度低下を抑止するための保温手段を備え、前記保温手段は、バーナであって、前記バーナは、回転する前記素材
における前記成形ロールに対して回転方向上流側の一部の領域であって、該一部の領域における前記素材の上面の内周側及び外周側と外周を形成する側面とに向けて火炎を放射することを特徴とする。
【0015】
これらの発明においては、ロール鍛造で
インペラディスクを成形するあたり、回転する素材を保温手段によって加熱/断熱することで成形中の素材の温度低下を抑止することができる。これにより、素材の温度低下に起因した設備容量を超える成形荷重の発生や形状不良の発生を抑止/防止することが可能になる。
また、保温手段としてバーナを用い、素材に向けて火炎を放射することで成形中の素材の温度低下を抑止することができる。これにより、成形中に設備容量を超える成形荷重が発生したり、成形品の形状不良が発生することを確実に抑止/防止することができる。
さらに、素材の上面の内周側と、素材の上面の外周側と、素材の外周を形成する側面とを保温手段で加熱/断熱することにより、より確実に素材の温度低下を抑止することが可能になる。
【0020】
また、本発明のディスク状部品の成形方法においては、前記保温手段として
、前記バーナに加えて、断熱材及び/又は輻射材を用い、回転する前記素材の外側に前記断熱材及び/又は前記輻射材を配設して前記素材を成形するようにしてもよい。
【0021】
この発明においては、素材の外側に保温手段としての断熱材及び/又は輻射材を配設することで成形中の素材の温度低下を抑止することができる。この場合においても、成形中に設備容量を超える成形荷重が発生したり、成形品の形状不良が発生することを抑止/防止することができる。
【0022】
さらに、本発明のディスク状部品の成形方法においては、前記素材の回転軸線を中心とした周方向の20°〜180°の範囲に前記保温手段を配設し、回転する前記素材の前記周方向の20°〜180°の範囲を前記保温手段で加熱/断熱して前記素材の温度低下を抑止することが望ましい。
【0023】
この発明においては、回転する素材の周方向の20°〜180°の範囲を保温手段で加熱/断熱することによって、確実に成形ロールによる素材への載荷重に支障が生じることを防止しつつ、保温手段で素材の温度低下を好適に抑止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の
インペラディスクの成形方法及び
インペラディスクの成形装置においては、ロール鍛造で
インペラディスクを成形するあたり、回転する素材を保温手段によって加熱/断熱することで成形中の素材の温度低下を抑止することができる。これにより、素材の温度低下に起因した設備容量を超える成形荷重の発生や形状不良の発生を抑止/防止することが可能になる。
【0027】
よって、本発明の
インペラディスクの成形方法及び
インペラディスクの成形装置によれば、例えば、外径1350mmを超えるような大型サイズの成形への適用が困難であったロール鍛造の現有設備であっても、保温手段を付加するだけで大型サイズの成形品の製造に適用(対応)することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1から
図8、
図11を参照し、本発明の一実施形態に係るディスク状部品の成形方法及びディスク状部品の成形装置について説明する。
なお、本実施形態では、インペラディスクを成形するものとして説明を行うが、本発明のディスク状部品の成形方法及びディスク状部品の成形装置は、インペラディスクに限定せず、ロール鍛造を用いて成形可能なあらゆるディスク状の部品の製造に適用することが可能である。
【0030】
本実施形態のディスク状部品の成形装置(ディスクロール装置)Aは、
図1及び
図2に示すように、成形テーブル(テーブル)5と、クランプ6と、成形加工部7と備えている。
【0031】
成形テーブル5は、テーブルベース5a上に平面視円形のテーブル板5bを軸受を介して回転自在に取り付けて形成されている。また、テーブル板5bは、インペラディスク(ディスク状部品)3に成形する素材Sよりも硬質で且つ耐熱性が高い金属等からなり、その周縁部にリング状の歯車を備えて形成されている。
【0032】
そして、成形テーブル5は、この歯車に電動モータ等を駆動源とするテーブル駆動器10の出力歯車を噛合させて配設されている。これにより、テーブル板5bがテーブル駆動器10を駆動するとともに所望の速度で上下方向に延びる中心軸O1周りの一方向に回転する。
【0033】
次に、クランプ6は、成形テーブル5の上面と対向して成形テーブル5の上方に配設され、クランプ軸11と、ホルダ12と、クランプ軸昇降器13とを備えて構成されている。
【0034】
クランプ軸11は、成形テーブル5の中心軸O1と互いの軸線を同軸上に配して設けられている。また、このクランプ軸11は、固定のホルダ12を貫通し、このホルダ12によって上下方向に延びる軸線O1周りに回転自在、且つ軸線O1方向の上下方向に摺動自在に支持されている。また、クランプ軸昇降器13は、電動モータや油圧シリンダ等を駆動源とし、クランプ軸11の上部に連結され、その駆動によってクランプ軸11を上下に昇降させるように構成されている。
【0035】
成形加工部7は、成形テーブル5上に載置され、クランプ6によって保持された素材Sを圧下して塑性変形させ、所定のディスク形状に成形するためのものであり、成形ロール15と、成形ロール移動機構16と、制御部17とを備えて構成されている。
【0036】
成形ロール15は、素材Sより硬質な金属製で、略リング状に形成したものであり、素材Sに当接する外周面側に素材押さえ面としてのロール円周面15a、ロール端面15b、ロール肩面15cを有して形成されている。
【0037】
ロール円周面15aは、外周径に変化がない部分であり、成形するインペラディスク3の斜状面3aの成形時に、素材Sの周辺への広がり部及びインペラディスク3の外周部3bを圧下して成形テーブル5に押さえ付けるための部位である。また、このロール円周面15aは、素材Sの成形時の外周部拡張時に外周部3bに円周方向に沿って引張り応力が作用しないようにし、径方向に押し広げられつつある外周部3bを成形テーブル5に押さえ付けて圧縮応力を作用させることができる適当な幅寸法Fを備えて形成されている。
【0038】
ロール肩面15cは、成形テーブル5の中心側を向いて位置されるロール端面15bとロール円周面15aとを滑らかに繋ぐ曲面状の部位である。このロール肩面15cの曲率半径は、インペラディスク3の斜状面3aの曲率半径より小さくなるように設定されている。
【0039】
そして、上記のように構成した成形ロール15は、水平方向に延びる回転軸18の一端部に連結して設けられている。回転軸18は上下方向に延びる可動ロール支え19の先端(下端)部に軸受20を介して軸線O2周りに回転自在に支持されている。また、成形ロール15は、ロール端面15bを成形テーブル5の中心側に向けて回転軸18と一体に水平方向に延びる軸線O2回りに回転自在とされている。
【0040】
また、可動ロール支え19は、成形ロール移動機構16によって鉛直方向及び水平方向に移動可能に設けられている。成形ロール移動機構16は、可動ロール支え19を鉛直方向及び水平方向への移動を独立に案内するための鉛直方向ガイド及び水平方向ガイドと、サーボモータ等を駆動源としてガイドに沿って可動ロール支え19を移動させるための鉛直方向移動機構部及び水平方向移動機構部とを備えている。
【0041】
制御部17は、成形ロール移動機構16の駆動を制御するものであり、成形ロール15が素材Sに接しているときに、その接線速度が一定となる状態を保持しつつインペラディスク3の成形目標形状に沿って成形ロール15をテーブル5に対して相対移動させるようにサーボモータ等の駆動源を制御するものである。
【0042】
成形加工部7、テーブル駆動器10、及びクランプ軸昇降器13はそれぞれ、制御装置25によって制御される。この制御装置25にはキーボード等の入力装置26が接続されている。入力装置26により与えられるインペラディスク3の形状・大きさ等の仕様についての入力情報に従って、成形テーブル5の回転と停止とが制御されるとともに、クランプ軸11の昇降が制御され、且つ、成形ロール移動機構16による成形ロール15の移動が制御される。
【0043】
そして、上記構成からなる本実施形態のディスク状部品の成形装置Aを用いてインペラディスク3を成形目標形状に成形する際には、まず、鍛造用丸棒から適当寸法に切出された素材S1を用意し、これから所定形状の円柱状の素材S(S2)を造る。
【0044】
所定形状に作られた素材Sを所定温度に加熱し、この高温の素材Sを成形テーブル5のテーブル板5bの中央部に載置する。次に、クランプ軸昇降器13の駆動によってクランプ軸11を下降させ、押さえ端部11aを素材Sの中心部に上方から食い込むように押し付け、成形テーブル5とクランプ6との間で素材Sを挟持する。そして、上記のように素材Sをセットした状態で、成形テーブル5をテーブル駆動器10の駆動によって回転駆動させる。
【0045】
次に、成形ロール移動機構16の駆動によって、可動ロール支え19を介して成形ロール15が素材Sにその上方から押し付けられる。この押し付け(圧下、載荷)により自由回転可能な成形ロール15が素材Sの回転方向に従動して回転する。押付け状態下での成形ロール15による素材Sへの加圧は、成形ロール15の接線速度を一定に保持しつつ、成形ロール15を成形テーブル5に漸次近付けながら成形テーブル5の中央部から外周部に向けて移動させて行う。また、このとき、制御部17によって成形ロール15はインペラディスク3の成形目標形状に沿って二次元的に移動制御される。
【0046】
そして、成形ロール15による熱間での素材Sの塑性変形により、成形ロール15の移動軌跡Gに沿った包絡面、すなわち、素材Sに斜状面3aを形成してインペラディスク3が成形される。
【0047】
ここで、本実施形態のディスク状部品の成形装置Aは、成形中に、素材Sの温度が所定の温度より低下しないように素材を保温するための保温手段30を備えて構成されている。
【0048】
また、本実施形態では、
図3に示すように、保温手段30としてバーナ(ガスバーナ)31が用いられている。さらに、この保温手段30としてのバーナ31は、
図4に示すように、成形テーブル5とともに回転する素材Sの回転軸線O1を中心とした周方向の20°〜180°の角度範囲θ、好ましくは90°の角度範囲θに火炎を放射して加熱するように設けられている。また、本実施形態では、成形ロール15に対して回転方向上流側の部位に火炎を放射し、加熱した素材Sが早期に成形ロール15で圧下されるようにバーナ31が配設されている。
【0049】
さらに、本実施形態では、
図4に示すように、回転する素材Sの成形ロール15に対して回転方向上流側の部位を、上面の内周側((1)、(4))と外周側((2)、(5))、素材Sの外周を形成する側面(外周面)((3)、(6))に分け、さらに周方向に90°の角度範囲θを45°で2分割し、素材Sの90°の角度範囲θを計6区画((1)〜(6))に分割する。そして、このように分割した6区画((1)〜(6))のうち、例えば内周側(1)と外周側(5)と側面(3)の各1区画、計3か所を加熱するようにバーナ31を配設する。
【0050】
ここで、
図5は、最大載荷重が約600トンの成形装置Aを用い、上記のように保温手段30としてのバーナ31で素材Sを加熱(保温)しながら成形した場合と、保温手段30を用いずに成形した場合の素材Sの温度計測結果を示している。
なお、
図5中の(a)は素材Sの中心部の側面(インペレディスク3の斜状面3a)、(b)は素材Sの上面の外周側、(c)は素材Sの上面の外周縁部、(d)は素材Sの側面の温度計測結果を示している(
図6参照)。
【0051】
この
図5に示すように、素材Sを炉出しし、成形し始めてから成形が完了するまでの間に、従来の保温手段30を用いずに成形した場合には、大気中への放熱、テーブル5を通じての放熱などに起因し、成形中に、1050°程度の温度が900°以下、素材Sの側面においては700°程度まで低下することが確認された。
【0052】
これに対し、保温手段30としてのバーナ31を用いて素材Sを加熱しながら成形した場合には、成形開始から成形完了までの間、すなわち成形中に大きな温度低下が生じないことが確認された。
また、保温手段30としてのバーナ31を用いて素材Sを加熱しながら成形した場合には、保温手段30を用いずに成形した場合と比較し、成形途中の荷重(成形荷重、反力)が100〜150トンも低減することが確認されている。
【0053】
次に、表1に示すように、保温手段30としてのバーナ31を用いるとともに、成形ロール15やテーブル5、クランプ6の素材Sに対する熱伝達係数、素材Sの初期温度を変化させた各条件(Case1、Case2、Case3)でシミュレーションを行い、成形解析結果の比較検討を行った。
【0055】
また、このシミュレーションでは、素材SとしてSUS630を用い、外径1500mmのインペラディスク3を成形するものとした。さらに、初期の素材形状は直径660mm、厚さ320mmとした(
図7参照)。
【0056】
図8は、表1に示したCase1、Case2、Case3の成形解析結果であり、この図に示すように、保温手段30としてのバーナ31を用いた本実施形態のディスク状部品の成形方法を適用すると模擬した場合(Case2、Case3)、最大載荷重600tonに達することなく、1500mmのインペラディスク3を成形できることが確認された。なお、同条件で実機での試験を行い、成形解析結果が実機試験に対して荷重精度7.5%以内であることを確認している。
【0057】
このような結果から、保温手段30としてのバーナ31を用いて素材Sを加熱しながら成形することによって素材Sの温度低下が抑えられ、ひいては成形荷重を大幅に低減させることができ、外径1500mmの大型のインペラディスク3を好適にロール鍛造で製造できることが確認された。
【0058】
したがって、本実施形態のディスク状部品の成形方法及びディスク状部品の成形装置Aにおいては、ロール鍛造でインペラディスクなどのディスク状部品3を成形するあたり、回転する素材Sを保温手段30によって加熱(保温/断熱)することで成形中の素材Sの温度低下を抑止することができる。これにより、素材Sの温度低下に起因した設備容量を超える成形荷重の発生や形状不良の発生を抑止/防止することが可能になる。
【0059】
よって、例えば、最大載荷重が600トン程度で、外径1350mmを超えるような大型サイズの成形への適用が困難であったロール鍛造の現有設備であっても、保温手段30を付加するだけで、1350mmを超えるような大型サイズの成形品の製造に適用(対応)することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態のディスク状部品の成形方法においては、保温手段30としてバーナ31を用い、素材Sに向けて火炎を放射することで成形中の素材Sの温度低下を抑止することができる。これにより、成形中に設備容量を超える成形荷重が発生したり、成形品の形状不良が発生することを確実に抑止/防止することができる。
さらに、保温手段30としてのバーナ31で加熱することにより、素材Sの変形抵抗をロール鍛造に適した所定の値、例えば20kgf/mm
2以下にすることができる。これにより、素材Sを変形させやすくすることができ、効率的に成形を行うことが可能になる。
【0061】
さらに、回転する素材Sの周方向の20°〜90°の角度範囲θを保温手段30で加熱することによって、確実に成形ロール15による素材Sへの載荷重に支障が生じることを防止しつつ、保温手段30で素材Sの温度低下を好適に抑止することができる。
【0062】
また、素材Sの上面の内周側と、素材Sの上面の外周側と、素材Sの外周を形成する側面とを保温手段30で加熱することにより、より確実に素材Sの温度低下を抑止することが可能になる。
【0063】
以上、本発明に係るディスク状部品の成形方法及びディスク状部品の成形装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
例えば、本実施形態では、保温手段30としてバーナ31を用いるものとしたが、
図9に示すように、保温手段30として電気ヒーターあるいはIH(Induction Heating)ヒーター32を用い、回転する素材Sを外側からヒーター32で加熱しながら素材Sを成形するようにしてもよい。
また、
図9及び
図10に示すように、保温手段30として断熱材33及び/又は輻射材34を用い、回転する素材Sの外側に断熱材33及び/又は輻射材34を配設して素材Sを成形するようにしてもよい。
【0065】
そして、これらヒーター32や断熱材33、輻射材34を用いることによっても本実施形態と同様に成形中の素材Sの温度低下を抑止することができる。よって、成形中に設備容量を超える成形荷重が発生したり、成形品の形状不良が発生することを抑止/防止することができる。すなわち、最大載荷重が600トン程度で、外径1350mmを超えるような大型サイズの成形への適用が困難であったロール鍛造の現有設備であっても、これらヒーター32や断熱材33、輻射材34を保温手段30として付加することにより、1350mmを超えるような大型サイズの成形品の製造に適用(対応)することが可能になる。
【0066】
また、保温手段30として、バーナ31、ヒーター32、断熱材33、輻射材34を適宜選択的に複数設けて(使用して)成形を行うようにしても勿論構わない。
【0067】
さらに、本実施形態では、成形装置Aの最大載荷重が600トン程度で、外径1350mmを超えるサイズの成形品を製造するものとして説明を行ったが、最大載荷重が600トンより大きい成形装置A、600トンより小さい成形装置Aに本発明を適用しても勿論構わない。また、本発明を適用して成形するディスク状部品のサイズを限定する必要もない。