(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
(化粧セメント板の説明)
図1A及び
図1Bは本実施の形態の化粧セメント板10の一例を示している。この化粧セメント板10は、セメント基材11と化粧層12とを備え、さらにシーラー層13と保護層14とを備えて形成されている。
【0017】
セメント基材11は、セメントを主成分とし、この他に骨材、補強繊維などを含有する水硬性材料(セメント材料)に水を加えて硬化させた硬化物で板状に形成されている。セメントとしては、ポルトランドセメントやアルミナセメント等が用いられる。骨材としては、ブレーン値が3000〜5000の珪砂などが用いられる。補強繊維としては、例えば、平均繊維長2mmのパルプ繊維などが用いられる。セメント基材11を形成する水硬性材料は、例えば、セメント100質量部に対して、骨材を40〜60質量部、補強繊維を7〜15質量部の割合で配合することにより調製される。
【0018】
化粧層12は、セメントを主成分とし、この他に複数の粒状物16、顔料などを含有する水硬性材料に水を加えて硬化させた硬化物で、セメント基材11の表面に層状に形成されている。セメントとしては、セメント基材11のセメントと同様のものが使用可能である。粒状物16としては、細かい岩石の粒(コア)の表面に被膜を有して形成されている。被膜は黒色や茶色などの所望の色に着色されている。複数の粒状物16は粒状物16の集合物であって、このような複数の粒状物16として着色砂が用いられる。顔料としては、酸化鉄(黒色)、弁柄(赤色)、酸化クロム(緑色)、酸化チタン(白色)等を適宜に組み合わせて用いられる。化粧層12を形成する水硬性材料は、例えば、セメント100質量部に対して、粒状物16を10〜20質量部、顔料を0.5〜4.0質量部の割合で配合することにより調製される。
【0019】
ここで、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とは略同等である。化粧層12の層厚が、例えば、200〜450μmの範囲にあり、化粧層12の平均層厚が、例えば、310μmである場合、複数の粒状物16としては、平均粒子径が310μmのもの(例えば、6号の着色砂)が用いられる。化粧層12の平均層厚は(マイクロスコープ観察)により求められる。また複数の粒状物16の平均粒子径は(乾式篩法)により求められる。そして、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径との差が200μm以下の場合に、両者は略同等と扱うことができる。
【0020】
また、化粧層12の平面視(化粧層12を表面側(保護層14の方)から見た場合)において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して35%以上である。すなわち、
図1Bのように、化粧層12を平面視した場合、視認される複数の粒状物16の面積の合計が、化粧層12の全面積(粒状物16の面積も含む)に対して35%以上となっている。いいかえれば、化粧層12を平面視した場合に、粒状物16の部分の面積の合計が35%以上であり、粒状物16以外の部分の面積が65%以下となっている。また、複数の粒状物16は化粧層12の全体にわたってほぼ均等に分散していることが好ましい。また、粒状物16が真球(半径が一様な球体)と仮定した場合、理論上、複数の粒状物16の上記占有面積は最大で90.7%となり、これが上記占有面積の上限となる。但し、化粧セメント板10の製造時に、平均で15.4%の粒状物16が脱落することがあるので、実質上、複数の粒状物16の上記占有面積は76.7%(90.7×84.6%)となる。
【0021】
シーラー層13は化粧層12の表面に略全面にわたって設けられている。シーラー層13は化粧層12と保護層14との間に設けられ、化粧層12と保護層14との密着性を向上させるものである。シーラー層13は化粧層12が視認可能なように透明にすることができるが、化粧層12が視認可能であれば、着色されていても良い。シーラー層13は、例えば、アクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料などの塗膜で形成され、厚みは、例えば、8〜15μmとすることができる。
【0022】
シーラー層13を形成するためのアクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料(以下、下塗り塗料という)は、アクリルエマルション樹脂を含有することができる。このアクリルエマルション樹脂は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、飽和カルボン酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ブタジエン及びエチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせによる不飽和単量体の混合物を乳化剤の存在下で乳化重合する事によって得られる。
【0023】
アクリルエマルション樹脂は、ガラス転移温度(以下、Tgという)が20〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、ゲル分率が50%以上、好ましくは75〜80%、あるいはそれ以上のものを用いる。このようなアクリルエマルション樹脂は耐養生性に優れている。アクリルエマルション樹脂のTgが20℃未満である場合には、養生時の熱等により乾燥塗膜が溶融溶出したり、また、ブロッキング等の不具合が起こりやすくなり、逆に乳化重合体のTgが100℃を超える場合には、乾燥時の成膜不良を起こしやすくなるので好ましくない。また、アクリルエマルション樹脂のゲル分率が50%未満の場合には、養生時の熱等により乾燥塗膜が溶融溶出したり、また、下地からのアルカリによるエフロレッセンスが発生し易くなるため、好ましくない。
【0024】
またアクリルエマルション樹脂はシリル基を持っていることが好ましい。このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体と、アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、飽和カルボン酸ビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ブタジエン及びエチレンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせによる不飽和単量体の混合物に、更に、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のシリル基含有不飽和単量体及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン等のグリシジル基又はアミノ基を含有するシランカップリング剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を添加した混合物を乳化剤の存在下で乳化重合する事によって得られる。
【0025】
このシリル基含有アクリルエマルション樹脂についても、Tgが20〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、ゲル分率が50%以上、好ましくは75〜80%、あるいはそれ以上のものを用いる。このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂は耐養生性に優れており、また、このようなシリル基含有アクリルエマルション樹脂を用いることにより、本発明で用いる上塗り塗料との密着性が改善されるので好ましい。
【0026】
下塗り塗料は着色剤を含有することが可能である。この着色剤として、一般の無機質顔料を代表的なものとして挙げることができるが、色によっては、耐アルカリ性及び耐候性を有する有機顔料を用いても良い。例えば、黒く着色する場合にはカーボンブラック、酸化鉄等、赤色に着色する場合には弁柄等、緑色に着色する場合には酸化クロム等、青色に着色する場合にはフタロシアニンブルー等、白色に着色する場合には二酸化チタン等を用いることができる。着色顔料はこれらに限定されるものではなく、通常の塗料に配合される着色顔料が使用できる。着色顔料は、好ましくは、下塗り塗料中に0.1〜15質量%の割合で配合され、この範囲内での配合により充分に着色することができる。
【0027】
下塗り塗料は、上記のアクリルエマルション樹脂又はシリル基含有アクリルエマルション樹脂、上記着色剤の他に、有機溶媒、充填剤、染料、更には、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0028】
保護層14はシーラー層13の表面には略全面にわたって設けられている。保護層14は耐候性、撥水性、親水性、防汚性などの機能を有するものである。保護層14は化粧層12が視認可能なように透明にすることができるが、化粧層12が視認可能であれば、着色されていても良い。保護層14は、例えば、アクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料などの塗膜で形成され、厚みは、例えば、8〜15μmとすることができる。
【0029】
保護層14を形成するためのアクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料(以下、上塗り塗料という)は、
(A)(a)一般式R
1nSi(OR
2)
4−n(式中、R
1は炭素数1〜8の有機基であり、R
2は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部との加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られた有機無機複合樹脂水分散液、
(B)アミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシラン、及び
(C)上記(B)成分のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物を含有する。
【0030】
上記(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液は、
(a)一般式R
1nSi(OR
2)
4−n(式中、R
1は炭素数1〜8の有機基であり、R
2は炭素数1〜5のアルキル基であり、nは1又は2である。)で示されるオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部と
(b)加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有し、且つ酸価が20〜150mgKOH/gのシリル基含有ビニル系樹脂5〜200質量部との加水分解縮合反応物を中和剤で中和し、水を添加して得られる。
【0031】
上記(a)成分の一般式R
1nSi(OR
2)
4−nにおいて、R
1で示される有機基として、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ビニル基を挙げることができる。また、アルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n―プロピル基、i―プロピル基、n―ブチル基、i―ブチル基、s―ブチル基、t―ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜4個のものである。
【0032】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基を好適に挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。上記の各官能基は任意に置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フツ素原子)、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、脂環式基を挙げることができる。
【0033】
R
2で示されるアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、i―プロピル基、n―ブチル基、i―ブチル基、s―ブチル基、t―ブチル基、ペンチル基等を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜2個のものである。
【0034】
上記の一般式R
1nSi(OR
2)
4−nで示されるオルガノシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i―プロピルトリメトキシシラン、i―プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランを挙げることができる。好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランである。これらのオルガノシランは1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
【0035】
上記の(a)成分は上記のオルガノシランの部分加水分解縮合物であってもよい。該部分加水分解縮合物のポリスチレン換算質量平均分子量は、例えば、300〜5000、好ましくは500〜3000が適当である。このような分子量の縮合物を使用することにより、貯蔵安定性を悪化させることなく、密着性のよい塗膜を得ることができる。また、オルガノシランの部分加水分解縮合物は、ケイ素原子に結合した−OH基や−OR
2基を1個以上、好ましくは3〜30個有するものであることが適当である。このような縮合物の具体例としては、市販品である信越化学工業社製のKR−211、KR−212、KR−213、KR−214、KR−216、KR−218;東芝シリコーン社製のTSR−145、TSR−160、TSR−165、YR−3187等を挙げることができる。
【0036】
上記の(a)成分について、一般式R
1nSi(OR
2)
4−nのn値が1のオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、n値が2のオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物との、質量比が50:50〜100:0、好ましくは60:40〜95:5の混合物を用いると、加水分解縮合反応させる際に安定に反応し、また耐クラック性のよい塗膜が得られるので望ましい。
【0037】
上記(b)成分は、ビニル系樹脂の末端あるいは側鎖に加水分解性シリル基、又は水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を樹脂1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上有し、かつ酸価が20〜150mgKOH/gであり、好ましくは、分子量が例えば約1000〜50000のビニル系樹脂である。
【0038】
上記のシリル基は一般式−SiX
P(R
3)
(3−P)(式中、Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン基、ケトキシメート基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、フェノキシ基等の加水分解性基又は水酸基であり、R
3は水素又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価の炭化水素基であり、Pは1〜3の整数である。)で示されるものである。
【0039】
シリル基含有ビニル系樹脂は、例えば、一般式(X)
P(R
3)
(3−P)Si―H(式中、X、R
3及びPは上記と同じ意味である。)で示されるヒドロシラン化合物と、炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂とを常法に従って反応させることにより製造される。
【0040】
なお、上記のヒドロシラン化合物として、例えば、メチルジクロロヒドロシラン、メチルジエトキシヒドロシラン、メチルジアセトキシヒドロシラン等を代表的なものとして挙げることができる。シリル基含有ビニル系樹脂を製造する際のヒドロシラン化合物の使用量は、ビニル系樹脂中に含まれる炭素−炭素二重結合の数に対して0.5〜2倍となるモル量が適当である。
【0041】
上記のビニル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボン酸又は無水マレイン酸等の酸無水物を必須モノマー単位として含有し、更に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等からなる群から選ばれるビニル系モノマーをコモノマー単位として含有する共重合体であるが、共重合体製造時に(メタ)アクリル酸アリル、ジアリルフタレート等をラジカル共重合させることにより、ビニル系樹脂中にヒドロシリル化反応のための炭素−炭素二重結合を導入することが可能となる。
【0042】
なお、得られるビニル系樹脂の酸価が20〜150mgKOH/g、好ましくは50〜120mgKOH/gとなるように、共重合体の構成モノマー中に上記のカルボン酸又は酸無水物を含有させる必要がある。ビニル系樹脂の酸価が20mgKOH/gより小さいと、得られる水分散液の貯蔵安定性が悪くなり、逆にビニル系樹脂の酸価が150mgKOH/gを超えると、得られる塗膜の耐水性、耐熱水性が悪くなるので、いずれも好ましくない。
【0043】
また、上記のシリル基含有ビニル系樹脂のその他の製造方法としては、上記のカルボン酸又は酸無水物を含むビニル系モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル等の水酸基含有モノマーと、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のシリル基含有ビニル化合物とをラジカル重合させる方法もある。
【0044】
これらシリル基含有ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、市販品である鐘淵化学工業社製のカネカゼムラツク等を挙げることができる。
【0045】
次に、上記(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液の製造方法について説明する。
【0046】
まず、上記の(a)成分と(b)成分との混合物に更に水及び触媒を存在させて加水分解及び縮合反応を生じさせる。(a)成分と(b)成分との混合割合は、(a)成分100質量部に対し、(b)成分5〜200質量部、好ましくは10〜150質量部であることが適当である。
【0047】
なお、(b)成分が5質量部より少ないと、得られる塗膜の外観や耐クラック性、耐凍害性、耐アルカリ性等が悪くなり、逆に(b)成分の配合量が200質量部を超えると、得られる塗膜の耐候性、耐汚染性等が悪くなるので好ましくない。
【0048】
上記の(a)成分と(b)成分との混合物に添加する水の量は、(a)成分と(b)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の好ましくは45〜100%、より好ましくは50〜90%を加水分解及び縮合反応させるのに充分な量であり、具体的には上記の混合物中の加水分解性基の総数の0.45〜1.0倍、好ましくは0.5〜0.9倍のモル数となる量が適当である。なお、ここで45%以上が好ましいとする理由は、有機無機複合樹脂水分散液(エマルション)となった時の貯蔵安定性がよく、また、塗料に用いた時に透明性の高い膜形成が可能であるためである。
【0049】
上記の(a)成分と(b)成分との混合物に添加する触媒としては、硝酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、蟻酸、プロピオン酸等の有機酸を挙げることができる。触媒の添加量は、上記混合物のpHが3〜6になる量が適当である。加水分解反応については、(a)成分と(b)成分との混合物を、水及び触媒の存在下で、40〜80℃、好ましくは45〜65℃で、2〜10時間、撹拌しながら反応させる方法が適当であるが、この方法に限定されるものではない。
【0050】
なお、(a)成分と(b)成分との加水分解縮合反応を上記のように一段階で実施することが可能であるが、生成物の貯蔵安定性の観点から、次のような二段階で反応させることが好ましい。
【0051】
即ち、第一段階として、水及び触媒の存在下で、(a)成分と(b)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の40〜80%、好ましくは45〜70%が加水分解縮合反応するように、40〜80℃、好ましくは45〜65℃で1〜8時間、撹拌しながら反応させる。
【0052】
第二段階として、第一段階に続いて、更に水及びトリメトキシボラン、トリエトキシボラン等のトリアルコキシボラン、トリ−n−ブトキシエチルアセテートジルコニウム、ジn−ブトキシ(エチルアセテート)ジルコニウム、テトタラキス(エチルアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセテート)チタン等のチタンキレート化合物、モノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等の有機金属化合物触媒を添加し、加水分解及び縮合反応を生じさせる。なお、第二段階で用いるトリアルコキシボランや有機金属化合物触媒は縮合反応を促進し、塗膜の外観、耐候性、耐汚染性、耐熱水性等を向上させることができる。
【0053】
第二段階で添加する水の量は、(a)成分と(b)成分との混合物中に初期に存在していた加水分解性基の45〜100%、好ましくは50〜90%が加水分解及び縮合反応するのに充分な量である。
【0054】
第二段階で添加する触媒の量は、第一段階で得られた反応物と未反応で残っている上記(a)成分及び(b)成分との合計量100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは、0.005〜2質量部が適当である。第二段階における加水分解縮合反応は、第一段階と同様に40〜80℃で2〜5時間反応させるのが適当である。
【0055】
尚、加水分解縮合反応物は、その反応で生成するアルコール分により、又はそのアルコール分と必要に応じて添加した後記の有機溶媒とにより溶液状態となっている。
【0056】
このようにして得られた反応物である有機無機複合樹脂の溶液に中和剤を加えて均一に分散させ、中和した後、水を加えるか、もしくは中和剤と水とを同時に加え、撹拌することにより強制分散させて水分散液(エマルション)を得る。
【0057】
中和剤の量は、安定なエマルションが得られるように、反応物である有機無機複合樹脂中の酸基の50〜100%、好ましくは、70〜100%を中和する量が適当である。なお、中和剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン等が代表的なものとして挙げられる。
【0058】
また、中和後に加える水の量は塗料の塗装作業性等を考慮して任意に決定されるが、通常塗料組成物の固形分が10〜70質量%になる程度の量が適当である。
【0059】
なお、このようにして得られた有機無機複合樹脂水分散液中には上記の加水分解縮合反応により生成したアルコール分が残っている。従って、その水分散液をそのまま塗料組成物として使用すると、揮発性有機成分(VOC)が多くなるので、常法に従ってアルコール分を減圧下で除去することが好ましい。
【0060】
上記(B)成分は、分子内にアミノ基を有する加水分解縮合反応可能なアルコキシシランであり、具体的には、一般式
(R
6−NH−R
5−)
nSi(OR
4)
(4−n)
(式中、R
4は炭素数1〜5のアルキル基であり、R
5は炭素数1〜5のアルキレン基であり、R
6は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、又は置換若しくは未置換のアミノ基であり、nは1又は2である。)で示されるアミノ基含有アルコキシシランを好適に使用することができる。
【0061】
なお、R
4としてのアルキル基は直鎖でも分岐したものでもよく、その例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基を挙げることができる。好ましいアルキル基は炭素数が1〜2個のものである。R
5としてのアルキレン基は直鎖でも分岐したものでもよく、その例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を挙げることができる。R
6としてのアルキル基は上記のR
4の場合と同様である。また、R
6としてのシクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。またR
6としてのアリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。更にR
6としてのアミノ基としては、アミノ基中の水素原子の一方又は両方が、例えば、上記炭素数1〜5のアルキル基で置換されたものを挙げることができる。
【0062】
上記の一般式で示されるアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシルーγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0063】
(B)成分であるアルコキシシランの配合量は、前記(A)成分である有機無機複合樹脂水分散液の固形分(有機無機複合樹脂)100質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは2〜15質量部が適当である。なお、(B)成分の配合量が上記の範囲よりも少ないと、得られる塗膜の硬化性や耐汚染性が悪くなる傾向があり、逆に多過ぎると耐熱水性や耐クラック性が悪くなる傾向がある。
【0064】
上記(C)成分は前記(B)成分中のアミノ基との反応性を有するエポキシ基を分子内に有する化合物である。これら化合物としてはエポキシ基含有アルコキシシラン、アルキルグリシジルエーテル及びエステル、シクロエポキシ化合物、ビスフェノールAF系の低分子量エポキシ樹脂、あるいはこれらの乳化物等を用いることができる。
【0065】
具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロぺニルオキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイミノオキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−イソンアネートプロピルトリイソプロぺニルオキシシランとグリシドールとの付加物、ブチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリシジルエーテル、カージュラーE(シェル社製商品名)、ブチルフェニルグリシジルエーテル、エピコート815、828、834(油化シェルエポキシ社製商品名)等およびこれら乳化物が代表的なものとして挙げられる。上記のエポキシ基含有化合物の中でも加水分解性シリル基をもつエポキシ基含有アルコキシシラン化合物を用いた場合には塗膜の硬化性が向上し、耐熱性、耐アルカリ性等がよくなるので好ましい。
【0066】
(C)成分の配合量は、上記の(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物のアミノ基の活性水素の総数に対して、エポキシ基含有化合物のエポキシ基の総数が好ましくは0.1〜2.0倍、より好ましくは0.2〜1.2倍となる量が適当である。なお、(C)成分のエポキシ基含有化合物の量が上記の範囲より少ないと、得られる塗膜の耐熱水性等が悪くなる傾向があり、逆に上記の範囲より多過ぎると塗膜の耐候性、耐クラック性等が悪くなる傾向がある。
【0067】
上記の(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物及び(C)成分であるエポキシ基含有化合物は塗装直前に(A)成分の水分散液と混合し、分散させて使用する。
【0068】
上記の(B)成分及び(C)成分は硬化剤として作用し、(B)成分中のアミノ基は(C)成分中のエポキシ基と反応すると共に、(B)成分中のシリル基、更には、(C)成分中のシリル基(存在する場合のみ)が、(A)成分中の有機無機複合樹脂中に残存するシリル基と加水分解縮合反応し、耐熱水性、耐アルカリ性、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性等に優れた硬化塗膜を形成する。
【0069】
上塗り塗料は、以上に説明した、主剤成分となる(A)成分の有機無機複合樹脂水分散液とその硬化剤となる(B)成分であるアミノ基含有アルコキシシラン化合物及び(C)成分であるエポキシ基含有化合物とを主成分とし、更に、必要に応じて、塗料組成物の貯蔵安定性や塗装作業性を良くするための水、有機溶媒及び充填剤、染料、更には、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤などを配合したものから構成される。
【0070】
上記の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒やそれとトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の疎水性の各種塗料用有機溶媒との混合有機溶媒が使用可能である。
【0071】
これら有機溶媒は、上記の(A)成分である有機無機複合樹脂水分散液の製造時において、反応が均質に生じるように溶媒として配合することも可能である。有機溶媒の配合量は、塗料組成物の好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%が適当である。
【0072】
上記の充填材としては、通常の無機・有機染顔料を使用することができる。具体的には、酸化チタン、硫化亜鉛、亜鉛華、鉛白、リトポン、カーボンブラック、油煙、紺青、フタロシアニンブルー、群青、カーミンFB、黄鉛、亜鉛黄、ハンザイエロー、オーカー、ベンガラ、不活性含有アゾ染料等が代表的なものとして挙げられる。充填材の配合量は、塗料組成物の固形分の好ましくは0〜70質量%、より好ましくは0〜50質量%が適当である。
【0073】
なお、上塗り塗料はクリヤ塗料であってもエナメル塗料であっても良好な化粧セメント板を製造することができるが、上塗り塗料がカラークリヤ塗料であることが好ましい。カラークリヤ塗料とは上記の無機・有機染顔料を樹脂固形分に対して約0.01〜15質量%の割合で含むものである。この無機・有機染顔料の量が0.01質量%よりも少ないと、充分な色調の変化が得られず、逆に15質量%を超えると、形成される塗膜の透明度が低下するため深みのある色調の変化が得られなくなる傾向がある。特に、無機・有機染顔料の量が0.05〜10質量%程度のものが好ましい。
【0074】
本実施の形態の化粧セメント板の製造方法においては、前記した未養生セメント板10の表面に前記した下塗り塗料を刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピング等の通常の塗装方法に従って塗装し、通常の乾燥方法に従って塗膜(シーラー層13)を乾燥させた後、未養生セメント板10を蒸気養生させる。この蒸気養生の一例としては、初期養生として温度20℃/時間の昇温速度で温度60℃まで昇温させ、この状態で5時間保持し、その後、室温まで冷却する。その後、セメント板10のシーラー層13の表面に前記した上塗り塗料を刷毛、スプレー、ロールコーター、フローコーター、シャワーコーター、ディッピング等の通常の塗装方法に従って塗装し、通常の焼付方法に従って、例えば300℃以下の温度で焼付けて硬化塗膜(保護層14)を形成させる。
【0075】
尚、シーラー層13や保護層14には砂粒などの滑り止め粒子15が含有されていても良い。
【0076】
本実施の形態の化粧セメント板10は、化粧層12に複数の粒状物16が含有され、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であり、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して35%以上である。従って、本実施の形態の化粧セメント板10は、従来の化粧セメント板101に比べて、化粧層12に含有されている粒状物16がセメント基材11に食い込む部分が多くなり、アンカー効果によるセメント基材11と化粧層12との密着性を向上させることができる。
【0077】
本実施の形態の化粧セメント板10においても、
図2Aのように、従来と同様に、セメント基材11に含まれている水分が凍って氷となって複数の結氷17が発生することがある。結氷17が発生すると、水が氷になることに伴う体積増加で結氷17の周囲の圧力が高くなる結氷圧が発生する。従来では、結氷圧が化粧層102に加わって、セメント基材101と化粧層102との界面破壊が生じ、化粧層102がセメント基材101から剥離することがあった。しかし、本実施の形態の化粧セメント板10では、結氷圧が化粧層12に加わって、小さなセメント基材11と化粧層12との界面破壊が生じても、
図2Bのように、化粧層12の粒状物16がセメント基材11に食い込む箇所が多いため、そのアンカー効果により、界面破壊が大きく広がらないようにすることができる。従って、本実施の形態の化粧セメント板10では、セメント基材11からの化粧層12の剥離(脱落)が生じにくい。
【0078】
(化粧セメント板の製造方法の説明)
化粧セメント板10は、例えば、
図3に示すようにして、乾式成形により製造することができる。
【0079】
まず、セメント基材11用の水硬性材料211を混合調製し、これを落下供給装置212により回転駆動中の無端コンベヤ213の搬送面上に連続的に落下供給する。次に、無端コンベヤ213に落下供給された水硬性材料211は、邪魔板214でほぼ一定の厚さにならした後、加圧ローラ215で加圧される。次に、無端コンベヤ213上の水硬性材料211に散水装置216からセメント硬化用の水を散布した後、さらに、加圧ローラ217で加圧することにより、略一定の厚さ(例えば5mm程度)の未硬化のセメント基材11が成形される。
【0080】
次に、化粧層12用の水硬性材料221を混合調製し、これを落下供給装置222により、搬送中の未硬化のセメント基材11の上面に連続的に落下供給する。未硬化のセメント基材11の上面に落下供給された水硬性材料221は、邪魔板224でほぼ一定の厚さにならした後、加圧ローラ225で加圧される。次に、未硬化のセメント基材11上の水硬性材料221に散水装置226によりセメント硬化用の水を散布した後、さらに、加圧ローラ227で加圧することにより、略一定の厚さ(例えば厚さ0.5mm程度)の未硬化の化粧層12が成形される。この後、未硬化の化粧層12が表面に形成された未硬化のセメント基材11は、切断装置218により適当な寸法に切断され、矩形板状体219となる。
【0081】
そして、上記のようにして得られる矩形板状体219を数日間自然養生332をした後、無端コンベヤ223で所定の位置まで搬送してからパンチプレス220で打ち抜くことによって、所定の寸法形状の板材228を得ることができる。板材228は、数日間自然養生により、未硬化のセメント基材11の硬化と未硬化の化粧層12の硬化とが進む。次に、板材228を加熱装置229により60〜70℃に予熱し、次に、塗装装置330を用い、この板材228の化粧層12の表面にシーラー層13の塗料を塗布する。この工程で化粧層12の表面に塗布される塗料の塗布量は、例えば、100〜200g/m
2に設定することができる。このようにシーラー層13の塗料の下塗りを行なってから、板材228をオートクレーブ230に入れて、蒸気養生する。この蒸気養生は、例えば、155〜185℃、5〜15時間の条件で行なうことができる。板材228は、蒸気養生により、セメント基材11の硬化と化粧層12の硬化とがさらに進んで最終的な硬化状態となる。その後、塗装装置331を用い、シーラー層13の表面に上塗りとして保護層14の塗料を塗布して硬化することによって、保護層14を形成する。このようにして化粧セメント板10を得ることができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0083】
(実施例1)
セメントと骨材と補強繊維とを混合してセメント基材用の水硬性材料を調製した。セメントとしては普通ポルトランドセメントを用いた。骨材としては珪石粉を用いた。補強繊維としてはパルプ繊維を用いた。また、セメント62質量部、骨材30質量部、補強繊維8質量部の割合で混合した。
【0084】
セメントと複数の粒状物と顔料とを混合して化粧層用の水硬性材料を調製した。セメントとしては普通ポルトランドセメントを用いた。粒状物としては平均粒子径310μmの着色珪砂を用いた。顔料としては酸化鉄を用いた。また、セメント40質量部、複数の粒状物57質量部、顔料3質量部の割合で混合した。
【0085】
そして、セメント基材11用の水硬性材料211を落下供給装置212により回転駆動中の無端コンベヤ213の搬送面上に連続的に落下供給した。次に、無端コンベヤ213に落下供給された水硬性材料211を邪魔板214でほぼ一定の厚さにならした後、加圧ローラ215で加圧した。次に、無端コンベヤ213上の水硬性材料211に散水装置216からセメント硬化用の水を400g/m
2の量で散布した後、さらに、加圧ローラ217で加圧することにより、厚さ5mmの未硬化のセメント基材11を成形した。
【0086】
次に、化粧層12用の水硬性材料221を落下供給装置222により、搬送中の未硬化のセメント基材11の上面に連続的に落下供給した。未硬化のセメント基材11の上面に落下供給された水硬性材料221を邪魔板224でほぼ一定の厚さにならした後、加圧ローラ225で加圧した。次に、未硬化のセメント基材11上の水硬性材料221に散水装置226によりセメント硬化用の水を400g/m
2の量で散布した後、さらに、加圧ローラ227で線圧600kg/cm〜1000kg/cmで加圧することにより、厚さ0.5mmの未硬化の化粧層12を成形した。この後、未硬化の化粧層12が表面に形成された未硬化のセメント基材11を切断装置218により適当な寸法に切断して矩形板状体219を形成した。
【0087】
そして、上記のようにして得られる矩形板状体219を2日間自然養生した後、無端コンベヤ223で所定の位置まで搬送してからパンチプレス220で打ち抜くことによって、所定の寸法形状の板材228を得た。次に、板材228を加熱装置229により70℃に予熱し、次に、塗装装置330を用い、この板材228の化粧層12の表面にシーラー層13の塗料(アクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料)を塗布する。この工程で化粧層12の表面に塗布される塗料の塗布量は、150g/m
2に設定した。このようにシーラー層13の塗料の下塗りを行なってから、板材228をオートクレーブ230に入れて、蒸気養生する。この蒸気養生は、180℃、10時間の条件で行なった。その後、塗装装置331を用い、シーラー層13の表面に上塗りとして保護層14の塗料(アクリル系樹脂組成分を主成分とする塗料)を塗布して硬化することによって、保護層14を形成した。
【0088】
シーラー層13の塗料は次のようにして調製した。ガラス転移温度75℃、ゲル分率80%のアクリルエマルション樹脂80部を撹拌しながらその中に成膜助剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)2部、水12.4部、中和剤(ジメチルアミノエタノールの50%水溶液)0.5部、増粘剤(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社から入手できるアルカリ膨潤型増粘剤であるプライマルASE−60)水溶液5部及び消泡剤(サンノプコ株式会社から入手できるシリカシリコーン系消泡剤であるフォーマスターVL)0.1部を添加し、30分間撹拌し、これに着色剤を1%の割合で添加した。
【0089】
保護層14の塗料は次のようにして調製した。還流冷却器及び攪拌機を備えた反応器に、(a)成分であるメチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物23部、メチルトリメトキシシラン8部、ジメチルジメトキシシラン1.7部、上記のシリル基含有ビニル系樹脂溶液の調製で得た(b)成分であるシリル基含有ビニル系樹脂溶液25部、及びイソプルパノール10部を加え、混合した後、イオン交換水3.0部及び1規定塩酸0.05部を加え、60℃で3時間反応させた。次いでモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム0.3部及びイオン交換水0.8部を加え、更に60℃で3時間反応させた。次いでジメチルアミノエタノール0.55部及び水37部を加え、50℃で1時間撹拌したのち、減圧(1.3×104 Pa)下で脱溶剤を行った後、水で固形分濃度35%になるよう希釈調整を行った。
【0090】
このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して56.6%であった。
【0091】
(実施例2)
化粧層用の水硬性材料の複数の粒状物の配合割合を54質量部した以外は、実施例1と同様にして化粧セメント板10を製造した。このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して41.3%であった。
【0092】
(比較例1)
化粧層用の水硬性材料の複数の粒状物の配合割合を53質量部した以外は、実施例1と同様にして化粧セメント板10を製造した。このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して34.9%であった。
【0093】
(比較例2)
化粧層用の水硬性材料の複数の粒状物の配合割合を52質量部した以外は、実施例1と同様にして化粧セメント板10を製造した。このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して27.9%であった。
【0094】
(比較例3)
化粧層用の水硬性材料の複数の粒状物の配合割合を51質量部した以外は、実施例1と同様にして化粧セメント板10を製造した。このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して23.3%であった。
【0095】
(比較例4)
化粧層用の水硬性材料の複数の粒状物の配合割合を50質量部し、粒状物として平均粒子径480μmの着色珪砂を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧セメント板10を製造した。このようにして化粧セメント板10は、化粧層12の平均層厚が400μmであり、化粧層12の平均層厚と複数の粒状物16の平均粒子径とが略同等であった。また、化粧層12の平面視において、複数の粒状物16の占有面積が化粧層12の全面積に対して13.7%であった。
【0096】
実施例及び比較例について、暴露試験の前と暴露試験の後での外観の変化を評価した。暴露試験は、秋田県秋田市で期間2年7ヶ月屋外で放置した。外観の変化の評価は以下の基準で行った。
【0097】
5点…変化なし。
【0098】
4点…暴露試験の前にはチッピングが見られず、暴露試験の後に僅かに(数個)チッピングが見られるもの。
【0099】
3点…暴露試験の前にはチッピングが見られず、暴露試験の後に少し(100個以内)チッピングが見られるもの。
【0100】
2点…暴露試験の前にはチッピングが見られず、暴露試験の後に多少(化粧層の剥離面積が10%未満)チッピングが見られるもの。
【0101】
1点…暴露試験の前にはチッピングが見られず、暴露試験の後に多く(化粧層の剥離面積が10%以上)チッピングが見られるもの。
【0102】
この評価は、実施例及び比較例それぞれ2個ずつで行い、平均値を算出した。結果を表1と
図4のグラフで示す。
【0103】
【表1】