(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
まず、本実施形態に係る建築板1の構成について説明する。
【0013】
建築板1の形状は特に限定されないが、例えば、平面視矩形状である。
【0014】
建築板1は、
図1に示すように、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成されるコア層2と、コア層2を覆う水硬性無機質材料を含む成形材料から形成されるスキン層3とを備える。
【0015】
スキン層3の厚みは、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。この場合、スキン層3の外観、強度といったスキン層3に求められる機能及び性能をより確保しやすい。スキン層3の厚みの上限は、特に限定されないが、例えば、建築板1全体の厚みの1/3以下であることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、コア層2の絶乾比重とスキン層3の絶乾比重とを比較すると、スキン層3の絶乾比重の方がコア層2の絶乾比重よりも大きい。これにより、コア層2を軽量化して建築板1全体を軽量化することができると共に、スキン層3をコア層2よりも高密度化してスキン層3の強度をコア層2よりも高くすることができる。スキン層3の絶乾比重が0.8以上であることが好ましい。スキン層3の絶乾比重の上限値は、特に限定されないが、例えば2.0である。コア層2の絶乾比重は特に限定されず、例えば0.7〜1.9の範囲内である。
【0017】
本実施形態の建築板1は、スキン層3の強熱収縮率が10%以下である。ここでいうスキン層3の強熱収縮率とは、スキン層3の形成に用いる成形材料から所定寸法の試験体を作製して、高温で加熱した後、この試験体の加熱前後の寸法の変化を測定することによって求められる寸法変化率のことをいう。スキン層3の強熱収縮率は、8%以下であることがより好ましい。
【0018】
また本実施形態の建築板1は、コア層2の強熱収縮率が13%以下である。ここでいうコア層2の強熱収縮率とは、コア層2の形成に用いる成形材料から所定寸法の試験体を作製して、高温で加熱した後、この試験体の加熱前後の寸法の変化を測定することによって求められる寸法変化率のことをいう。コア層2の強熱収縮率は、10%以下であることがより好ましい。
【0019】
建築板1が複数並んで設置されている場合に、スキン層3及びコア層2に収縮が生じると、隣合う建築板1の間に隙間が生じて、この隙間から炎、高温の空気等が侵入することがある。特にスキン層3には、建築板1を胴縁等の構造材に固定するための金具が打ち込まれるため、スキン層3に収縮が生じると、スキン層3から金具が取れて、建築板1が構造材から落下することがある。
【0020】
しかしながら、本実施形態の建築板1では、スキン層3の強熱収縮率が10%以下であり、コア層2の強熱収縮率が13%以下であるため、建築板1が高温にさらされてもスキン層3及びコア層2が収縮しにくい。このため、スキン層3及びコア層2の収縮による、隣合う建築板1間の隙間の発生や、建築板1の落下を抑制することができる。特に本実施形態では、スキン層3の絶乾比重の方がコア層2の絶乾比重よりも大きく、スキン層3の強度が確保されているため、スキン層3から金具が取れにくく、建築板1の落下を特に抑制することができる。
【0021】
次に、建築板1について更に詳しく説明する。
【0022】
建築板1のコア層2は、上記の通り、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、コア層2の形成に用いる成形材料をコア材料という。このコア材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。
【0023】
無機質系主材は、ケイ素とカルシウムのうち少なくとも一方を含む化合物からなる。無機質系主材は、水硬性無機質材料であるセメントを主成分とする。無機質系主材は、更に、フライアッシュ、シリカヒューム、けい石粉からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0024】
無機質系混和材は、例えば、マイカ、けい酸ソーダ等が含まれる。
【0025】
有機質系混和材は、例えば、メチルセルロース、有機質系発泡粒子等が含まれる。有機系発泡粒子は、例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、及びアクリロニトリル系樹脂からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0026】
補強繊維は、例えば、パルプ、ポリプロピレン繊維等が含まれている。
【0027】
コア材料には、上記の原料以外に、更に無機質系発泡体が含まれていてもよい。無機質系発泡体は、例えば、パーライト、フライアッシュバルーン、及びバーミキュライトからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0028】
コア材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、コア材料に無機質系主材が73〜97重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5重量%の範囲内、補強繊維が1〜3.5重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0029】
建築板1のスキン層3は、上記の通り、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、スキン層3の形成に用いる成形材料をスキン材料という。このスキン材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。スキン材料は、更に添加剤を含んでもよい。
【0030】
スキン材料に含まれる無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、及び補強繊維は、例えば、コア材料に含まれる無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、及び補強繊維と同じである。
【0031】
スキン材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、スキン材料に無機質系主材が69.5〜97.5重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5重量%の範囲内、補強繊維が1〜7重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0032】
上記のコア材料及びスキン材料を成形することにより未硬化の成形体(グリーンシート)が作製される。この未硬化の成形体を養生して硬化させることにより、コア層2及びスキン層3を備える建築板1が得られる。
【0033】
この未硬化の成形体を養生する工程では、例えば、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生からなる群から選択される一種以上の養生を行う。本実施形態では特に、オートクレーブ養生を行うことが好ましい。
【0034】
このオートクレーブ養生では、例えば、温度が150〜180℃の範囲内、気圧が0.5〜1.0MPaの範囲内の条件で、2〜10時間の範囲内で、未硬化の成形体を養生することが好ましい。この場合、セメントの結晶が安定化して、品質も安定させることができる。
【0035】
成形体を養生した後、成形体を乾燥させる。乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、遠赤外線乾燥が挙げられる。成形体を乾燥させることにより、成形体に含まれる水の割合(含水率)を調節することができる。成形体の含水率は、3〜20%の範囲内であることが好ましい。この場合、成形体を軽く、且つ折れにくくすることができると共に、成形体の乾燥収縮による反り、収縮等の変形を小さくすることができる。
【0036】
本実施形態では、スキン材料に含まれる成分の選択、無機質系混和材、セメント原料等の成分の量の調節、スキン層3の含水率の調節等の適宜の手法により、スキン層3の強熱収縮率を10%以下に調節することができる。
【0037】
また本実施形態では、コア材料に含まれる成分の選択、無機質系混和材、セメント原料等の成分の量の調節、コア層2の含水率の調節等の適宜の手法により、コア層2の強熱収縮率を13%以下に調節することができる。
【0038】
尚、建築板1の構造は、
図1に示すものに限られない。例えば、コア層2とスキン層3との界面が凹凸形状を有していてもよい。この凹凸形状は、例えば、断面が四角形の凹凸が複数並んだ凹凸であってもよく、断面が三角形の凹凸が複数並んだジグザグ形状であってもよく、断面が円弧状の凹凸が複数並んだ波形状であってもよい。この場合、凍害現象によって、コア層2とスキン層3との層間剥離が生じることを抑制することができる。
【0039】
図2Aに示す建築板1のように、コア層2に複数の中空孔4が形成されていてもよい。すなわち、建築板1が中空構造を有していてもよい。建築板1が中空構造を有する場合、建築板1の更なる軽量化が可能となる。
【0040】
更に、
図2Bに示す建築板1のように、建築板1の対向する長辺にそれぞれ実部31及び実部32が設けられていてもよい。建築板1を複数並べて設置する場合、一方の建築板1の実部31と、他方の建築板1の実部32とを嵌合することにより、隣合う二つの建築板1を連結することができる。
【0041】
建築板1の表面、すなわちスキン層3の表面に、必要に応じて、表面仕上げのためのシーラー及び塗料が塗布されていてもよい。
【0042】
以下、本実施形態の建築板1の製造方法について詳しく説明する。
【0043】
図1に示す建築板1は、例えばコア材料及びスキン材料を、押出成形機10で押出成形することで製造される。
図3には、その押出成形機10の概略を示している。
【0044】
図3の押出成形機10は、第一押出機11及び第二押出機12を備える。第一押出機11はスキン材料を押出すものであり、第二押出機12はコア材料を押出すものである。第一押出機11及び第二押出機12は金型100に接続されている。
【0045】
図3に示すように、金型100は、その先端に流入口103を、後端に押出口104を備える。流入口103は第一押出機11と接続されている。このため、流入口103には第一押出機11からスキン材料が流れ込む。
【0046】
図4には、この金型100の概略の断面図が示されている。この金型100は上型101、下型102、中子105、流路106、流路107、及び流路108を備えている。上型101と下型102とは、上下に対向して重ねられている。
【0047】
金型100の内部には空洞が形成されている。この空洞内に中子105が設けられている。
図4の断面図に現れる上型101の下面と、中子105の上面との間が、流路106であり、下型102の上面と、中子105の下面との間が、流路107である。流路106及び流路107は、流入口103と繋がっている。このため、流路106及び流路107には、スキン材料が流れる。
【0048】
また
図4の断面図に現れるように、中子105は、その流入口103付近から流入口103に向かって厚みが徐々に小さくなっている。また、中子105の押出口104側の端部は、押出口104に向かって厚みが徐々に小さくなっている。中子105の押出口104側の先端は、押出口104と対向するように配置されている。中子105の先端部の上面は、先端に向かう平坦な傾斜面111として形成され、中子105の先端部の下面は先端に向かう平坦な傾斜面112として形成されている。
【0049】
図4の断面図に現れるように、中子105の内部に流路108が形成されている。この流路108は第二押出機12と接続されている。詳細には、中子105内の流路108は、第二押出機12とパイプ17を介して連結している。このため、流路108には、第二押出機12で混練されたコア材料が流れ込む。また、中子105の先端には、流路108に通じる矩形の開口部110が形成されている。
【0050】
これらの流路106、流路107、及び流路108は、
図4の断面図に現れるように、金型100内における流路106及び流路107に対して押出口104側に設けられた合流部109で合流している。このため、押出口104は、流路106、流路107、及び流路108と接続している。
【0051】
以下、上記の押出成形機10によって建築板1が製造される手順を説明する。
【0052】
まず、
図3に示す第一押出機11の投入口13にスキン材料を投入すると共に、
図3に示す第二押出機12の投入口15にコア材料を投入する。スキン材料及びコア材料は、それぞれ、第一押出機11内に設けられたスクリュー14、及び第二押出機12内に設けられたスクリュー16によって混練されながら搬送される。
【0053】
次に、コア材料は第二押出機12からパイプ17を介して流路108に流入する。また、スキン材料は第一押出機11から流入口103を通って流路106及び流路107に流入する。
【0054】
次に、流路108を通ったコア材料が開口部110に達する。開口部110から吐出されるコア材料は、開口部110の形状に合わせて板状に成形される。また、流路106を通ったスキン材料と流路107を通ったスキン材料とが合流部109において合流する。これにより、板状に成形されたコア材料の外側が、スキン材料によって包まれる。
【0055】
次に、コア材料がスキン材料によって包まれたまま、コア材料及びスキン材料が押出口104から押し出される。このコア材料及びスキン材料を任意の長さで切断することにより、未硬化の成形体(グリーンシート)が形成される。この未硬化の成形体を養生して硬化させることにより、コア層2とスキン層3とを備える建築板1が製造される。
【0056】
また、
図2に示されるような中空構造を有する建築板1を製造する場合には、例えば
図5A及び
図5Bに示す中空形成体200が使用される。中空形成体200は、本体部201と、複数の突出棒202とを備える。この複数の突出棒202は、所定の間隔をあけて一列に並ぶと共に、互いに平行に設けられている。複数の突出棒202の寸法はいずれも同じである。この中空形成体200は、流路108の内部に配置可能な寸法を有する。
【0057】
中空形成体200は、例えば、
図4に示す中子105の流路108内に設けられる。この場合、複数の突出棒202の一部が開口部110から突出する。中空形成体200を流路108内に設けた中子105を金型100内に設け、この金型100を使用して押出成形することで、
図2Aに示すような中空構造を有する建築板1が製造される。また、
図2Aに示す建築板1の対向する長辺に切削等の加工を施すことにより、
図2Bに示すように対向する長辺に沿ってそれぞれ実部31及び実部32が形成された建築板1が得られる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0059】
(実施例1〜4、比較例1、2)
無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を、下記の表1に示す割合で配合することで、コア材料及びスキン材料を調製した。尚、表1中の水含有量は、コア材料及びスキン材料の各々における全固形分に対する水の比率である。併せて、無機質系主材に含まれるセメント原料の割合を表1に示す。このコア材料及びスキン材料を、第一押出機11、第二押出機12、及び
図4に示す金型100を備える押出成形機10を使用して成形し、成形体を作製した。この成形体をオートクレーブ内で170℃、0.8MPa、7時間の条件で養生して硬化させた後、更に乾燥機によって含水率を10%に調節することにより、幅480mm、長さ3100mm、厚み16mmの寸法を有し、且つ
図1に示すようにコア層2とスキン層3とを備えた建築板1を製造した。この建築板1におけるスキン層3の厚みは2mmである。
【0060】
(評価)
<絶乾比重>
建築板1のコア層2及びスキン層3の絶乾比重を、アルキメデス法によって測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0061】
<強熱収縮率>
実施例1〜4、比較例1、2のスキン材料から、幅50mm、長さ50mm、厚み16mmの試験体を作製し、これを105℃、24時間の条件で乾燥した。この試験体を900℃で20分間加熱した後、各試験体の幅と長さを測定した。そして、加熱前の試験体の寸法に対する、加熱後の試験体の寸法の変化率から、スキン層の強熱収縮率を求めた。
【0062】
同様にして、実施例1〜4、比較例1、2のコア材料から試験体を作製した。この試験体を900℃で20分間加熱した後、各試験体の幅と長さを測定した。そして、加熱前の試験体の寸法に対する、加熱後の試験体の寸法の変化率から、コア層の強熱収縮率を求めた。
【0063】
コア層の強熱収縮率、及びスキン層の強熱収縮率を下記の表1に示す。
<防耐火試験>
図6Aに示すように、間柱5に、厚さ9.5mm及び12.5mmの2枚のせっこうボードを重ねた内壁6を設置すると共に、内壁6と対向するように建築板1を複数並べて設置することにより、試験体7を作製した。ここで建築板1に対して、内壁6が配置されている側を屋内側、反対側を屋外側とする。
【0064】
図6Bに示すように、試験体7の上下を反力フレーム81及びジャッキ82で固定することで加熱炉8に固定した後、加熱炉8の炎83によって試験体7を屋外側から加熱した。試験体7の加熱温度は、
図6Cに示す標準加熱温度曲線に沿うように調節した。そして、非加熱側へ10秒を超えて火炎の噴出がないものを合格、この条件を満たさないものを不合格と判定した。その結果を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、スキン層3の絶乾比重がコア層2の絶乾比重よりも大きく、且つスキン層3の強熱収縮率が10%以下であり、コア層2の強熱収縮率が13%以下である実施例1〜4は、防耐火試験において合格と判定されている。
【0067】
これに対して、スキン層3の強熱収縮率が10%より大きい比較例1の試験体は、防耐火試験において不合格と判定されている。また、コア層2の強熱収縮率が13%より大きい比較例2の試験体は、防耐火試験において不合格と判定されている。
【0068】
すなわち「スキン層3の絶乾比重がコア層2の絶乾比重よりも大きく、且つスキン層3の強熱収縮率が10%以下であり、コア層2の強熱収縮率が13%以下である」という条件を満たす建築板1は、高温にさらされてもスキン層3及びコア層2が収縮しにくい。このため、スキン層3及びコア層2の収縮による、隣合う建築板1間の隙間の発生を抑制することができ、この隙間から炎が侵入することを抑制することができる。一方、上記の条件を満たさない建築板1は、高温にさらされるとスキン層3及びコア層2が収縮して、隣合う建築板1間に隙間が生じてしまい、この隙間から炎が侵入してしまう。