特許第6687342号(P6687342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6687342
(24)【登録日】2020年4月6日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】微粒化装置および微粒化方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 3/12 20060101AFI20200413BHJP
   B01F 5/02 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 15/00 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20200413BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B01F3/12
   B01F5/02 Z
   B01F15/00 D
   B01F15/02 A
   B01F15/00 Z
   B01F5/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-156713(P2015-156713)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-35647(P2017-35647A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】曽根 遥香
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−001079(JP,A)
【文献】 特開2009−050823(JP,A)
【文献】 特開2013−052326(JP,A)
【文献】 特開2013−017927(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/158209(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−15/06
B02C 19/06、23/00
B05B 15/50−15/555
B08B 3/00−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化装置において、
前記液体材料を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段で吐出された前記液体材料を一方側から他方側へ通過させることで、該液体材料に含まれている前記被微粒化物を微粒化する微粒化手段と、
前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路とを備え、
前記微粒化手段は、前記吐出手段によって吐出され前記逆洗液供給流路を通ってきた、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料が逆洗液として、前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであり、
前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された吐出液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該吐出液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第1回収流路とを備えたことを特徴とする微粒化装置。
【請求項2】
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化装置において、
前記液体材料を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段で吐出された前記液体材料を一方側から他方側へ通過させることで、該液体材料に含まれている前記被微粒化物を微粒化する微粒化手段と、
前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路とを備え、
前記微粒化手段は、前記吐出手段によって吐出され前記逆洗液供給流路を通ってきた、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料が逆洗液として、前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであり、
前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記逆洗用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記他方側から前記一方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第2回収流路とを備えたことを特徴とする微粒化装置。
【請求項3】
前記微粒化手段の閉塞を検出する閉塞検出手段を備え、
前記制御部は、前記閉塞検出手段によって前記微粒化手段の閉塞が検出されると前記逆洗用制御を実行するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の微粒化装置。
【請求項4】
前記吐出手段は、プランジャポンプであり、
前記閉塞検出手段は、前記プランジャポンプのストローク時間の長さに基づき前記微粒化手段の閉塞を検出するものであることを特徴とする請求項記載の微粒化装置。
【請求項5】
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化方法において、
前記液体材料を微粒化手段の一方側へ向けて吐出することで該液体材料を該微粒化手段の該一方側から他方側へ通過させ、該液体材料に含まれる被微粒化物を微粒化する微粒化工程と、
前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料を吐出手段によって吐出させ、該吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路を通ってきた、該吐出手段から吐出された液体を、逆洗液として該他方側から前記一方側へ向けて前記微粒化手段に送り込む逆洗工程と、
前記逆洗工程を実施した後に、液体を前記一方側から前記他方側へ向けて前記微粒化手段に送り込み、該微粒化手段を通過してきた液体を、前記液体材料が貯留されている材料タンクに戻す洗浄工程とを有することを特徴とする微粒化方法。
【請求項6】
前記洗浄工程を実施した後に、前記逆洗工程を再び実施することを特徴とする請求項5記載の微粒化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体材料における被微粒化物を微粒化する微粒化装置および微粒化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、化学素材、食品、医薬、自動車あるいは化粧品など様々な分野において、例えば金属粒子や植物繊維、カーボンブラック等の物質を微粒化する微粒化装置が用いられている。この微粒化装置は、プランジャポンプ等の吐出手段と微粒化ノズル等の微粒化手段とを備えたものであり、微粒化手段は、例えば、直径が百μm〜数百μm程度のごく小さい小孔や、この小孔に接続する空間や細い溝等により形成される微小な流路を有したものがある。金属粒子等の被微粒化物が分散媒に分散した液体材料は、吐出手段によって吐出され、吐出された液体材料が一方側から微粒化手段に送り込まれ他方側に通過する。液体材料に含まれている被微粒化物は、液体材料が微粒化手段を一方側から他方側に通過することで微粒化される(例えば、特許文献1および特許文献2等参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2記載の微粒化装置は、2枚のディスクを重ね合わせて構成された微粒化手段を備えている。それぞれのディスクには2つの小孔と、これら2つの小孔をつなぐ溝が設けられている。吐出手段から吐出され2つの小孔に送り込まれた液体材料は、高い圧力でそれぞれの小孔を通過した後、2つの小孔をつなぐ溝内で衝突する。特許文献1および特許文献2記載の微粒化装置では、2つの小孔や溝からなる微小流路において、キャビテーションの衝撃力やせん断力、衝突力等が作用することで、被微粒化物が微粒化されると考えられている。
【0004】
特許文献1や特許文献2記載の微粒化装置では、直径がごく小さい小孔や細い溝等の微小流路を液体材料が通過するため、液体材料に含まれる被微粒化物が微小流路につまって微粒化手段が閉塞してしまう場合がある。ここで、微粒化手段における小孔等を大きくすれば被微粒化物がつまりにくくなり微粒化手段の閉塞を抑えることができる。一方、小孔等を大きくすると液体材料が小孔等を通過する際の圧力を十分に確保できず、微粒化手段における微粒化効率が低下してしまう虞がある。このように、微粒化効率を低下させずに微粒化手段の閉塞を防ぐことは困難であり、一般的には、小孔等を微粒化効率が確保できる大きさにとどめ、微粒化手段が閉塞してしまった場合には、装置を分解して微小流路につまった被微粒化物を除去する作業で対応する場合がほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−132567号公報
【特許文献2】特開平02−261525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置を分解し微小流路につまった被微粒化物を除去する作業は煩雑であり、また、この作業をしている間は微粒化処理が中断してしまう。微粒化装置による量産運転を行う場合、微粒化処理の中断は生産効率の低下を意味するため、つまりによる微粒化処理の中断から短時間で復旧できることが求められており、装置を分解する作業の煩雑さや復旧にかかる時間が従来にも増して問題視されている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、装置を分解して洗浄する作業が不要になり、微粒化手段の閉塞を短時間で解消できる微粒化装置および微粒化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の第1の微粒化装置は、
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化装置において、
前記液体材料を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段で吐出された前記液体材料を一方側から他方側へ通過させることで、該液体材料に含まれている前記被微粒化物を微粒化する微粒化手段と、
前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路とを備え、
前記微粒化手段は、前記吐出手段によって吐出され前記逆洗液供給流路を通ってきた、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料が逆洗液として、前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであり、
前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された吐出液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該吐出液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第1回収流路とを備えたことを特徴とする。
上記目的を解決する本発明の第2の微粒化装置は、
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化装置において、
前記液体材料を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段で吐出された前記液体材料を一方側から他方側へ通過させることで、該液体材料に含まれている前記被微粒化物を微粒化する微粒化手段と、
前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路とを備え、
前記微粒化手段は、前記吐出手段によって吐出され前記逆洗液供給流路を通ってきた、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料が逆洗液として、前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであり、
前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記逆洗用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記他方側から前記一方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第2回収流路とを備えたことを特徴とする。
また、別態様の微粒化装置として、被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化装置において、
前記液体材料を吐出する吐出手段と、
前記吐出手段で吐出された前記液体材料を一方側から他方側へ通過させることで、該液体材料に含まれている前記被微粒化物を微粒化する微粒化手段とを備え、
前記微粒化手段は、逆洗液が前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであることを特徴としてもよい。
【0009】
ここで、前記微粒化手段は、前記液体材料を一方側から他方側へ向けて通過させることで、キャビテーションによる衝撃力、せん断力、衝突力のうちの少なくともいずれか一つを、該液体材料に含まれている前記被微粒化物に作用させ、該被微粒化物を微粒化するものであってもよい。またさらに、前記微粒化手段は、前記吐出手段で吐出された前記液体材料が、前記一方側から前記他方側へ貫通した微小流路を通過するものであってもよい。また、前記微小流路は、前記液体材料が一方側から微小流路へ流入する流入孔と、前記液体材料が微小流路から他方側へ流出する流出孔を、それぞれ複数備えたものであってもよい。これら複数の流入孔と複数の流出孔は、流路が分岐するものであってもよく、流路が合流するものであってもよい。
【0010】
上述したこれらの微粒化装置によれば、前記液体材料に含まれる前記被微粒化物がつまって前記微粒化手段が閉塞しても、前記逆洗液を送り込むことによって該微粒化手段の閉塞を解消することができる。これにより、装置を分解し前記微粒化手段の微小流路につまった前記被微粒化物を除去する、従来行っていた装置の分解作業が不要になり、該微粒化手段の閉塞を短時間で解消することができる。特に、前記他方側から前記一方側に向けて前記逆洗液を送り込むことで、該一方側から該他方側に通過しようとして前記微粒化手段の微小流路につまってしまう前記被微粒化物を効率的に除去することができる。
【0011】
上記別態様の微粒化装置において、前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間に配置された逆洗液供給流路を備え、
前記微粒化手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料が前記吐出手段によって吐出され、吐出された液体が、前記逆洗液供給流路を通って前記逆洗液として前記他方側から前記一方側へ向けて送り込まれるものであってもよい。
【0012】
前記逆洗液として、前記液体材料を用いれば、前記一方側から前記他方側へ向けて前記微粒化手段に送り込まれてきた前記液体材料に該逆洗液が混合しても成分や濃度を同一に保つことができる。また、前記逆洗液として前記分散媒と同じ媒体を用いれば、前記液体材料に混合しても濃度は変化するが成分は変化せず、濃度変化が許容できる場合には、該逆洗液が混合した該液体材料を、例えば材料タンクに戻し、再度微粒化する材料として用いることができる。
【0013】
また、上記別態様の微粒化装置において、前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された吐出液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該吐出液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第1回収流路とを備えたものも好ましい態様の一つである。
【0014】
前記逆洗液として前記液体材料を用いた場合には前記逆洗用制御の実行が終了した時点では、前記微粒化手段等に微粒化されていない被微粒化物が残存してしまう。そこで、前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を前記第1回収流路によって前記材料タンクに戻すことで、該微粒化手段等に残っていた微粒化されていない前記被微粒化物も該材料タンクに戻すことができる。これにより、処理済タンクに貯留された液体、すなわち被微粒化物が微粒化された微粒化済液体に、微粒化されていない前記被微粒化物が混合してしまうことを回避できる。
【0015】
さらに、上記別態様の微粒化装置において、前記吐出手段から吐出された、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料を前記微粒化手段の前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該吐出手段から吐出された液体を該微粒化手段の前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を廃棄する第1廃棄流路とを備えたものであってもよい。
【0016】
前記分散媒と同じ媒体を前記逆洗液に用いた場合には前記逆洗用制御の実行が終了した時点では、前記微粒化手段等に該媒体が残存している。ここで、前記媒体を前記材料タンクに戻すと、該材料タンク内に貯留された液体材料の濃度が変動してしまう場合がある。このため、前記洗浄用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を廃棄することで、前記材料タンク内に貯留された液体材料の濃度変化を避ける態様としてもよい。特に、前記材料タンク内に貯留された液体材料の濃度を厳密に管理する必要がある場合等に好ましい。
【0017】
また、上記別態様の微粒化装置において、前記吐出手段は、前記分散媒と同じ媒体あるいは材料タンクに貯留されていた前記液体材料を吐出するものであり、
前記吐出手段から吐出された液体を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記逆洗用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記他方側から前記一方側に通過してきた液体を前記材料タンクに戻す第2回収流路とを備えたものも好ましい。
【0018】
前記液体を前記材料タンクに戻すことで、前記逆洗液によって前記微粒化手段から取り除かれた前記被微粒化物を該材料タンクに戻し、微粒化する処理を再び実施することができる。
【0019】
さらに、上記別態様の微粒化装置において、前記吐出手段から吐出された、前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料を前記微粒化手段に前記他方側から送り込む逆洗用制御を実行した後で、該吐出手段から吐出された液体を該微粒化手段に前記一方側から送り込む洗浄用制御を実行する制御部と、
前記逆洗用制御の実行中に、前記微粒化手段を前記他方側から前記一方側に通過してきた液体を廃棄する第2廃棄流路とを備えたものであってもよい。
【0020】
前記液体を廃棄することで、前記逆洗液によって前記微粒化手段から取り除かれた前記被微粒化物が、再び該微粒化手段につまってしまうことを回避することができる。
【0021】
ここで、前記吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記一方側の端を結ぶ流路に設けられた第1開閉弁と、
前記吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端を結ぶ流路に設けられた第2開閉弁とを備え、
前記制御部は、前記逆洗用制御として、前記第1開閉弁を閉鎖するとともに前記第2開閉弁を開放する制御を実行し、前記洗浄用制御として、前記第1開閉弁を開放するとともに前記第2開閉弁を閉鎖する制御を実行するものであってもよい。
【0022】
また、前記液体材料に含まれていた前記被微粒化物が前記微粒化手段によって微粒化された微粒化済液体を貯留する処理済タンクを備え、
前記制御部は、前記吐出手段によって前記液体材料を前記微粒化手段の前記一方側に向けて吐出させ、前記微粒化手段を前記一方側から前記他方側に通過してきた液体を前記微粒化済液体として前記処理済タンクに貯留する微粒化制御を実行するものであってもよい。
【0023】
さらに、前記微粒化手段における前記他方側の端と前記処理済タンクを結ぶ処理済流路と、該微粒化手段における前記他方側の端と前記材料タンクを結ぶ第1回収流路との間で流路を切り換える流路切替弁を備え、
前記制御部は、前記微粒化制御として、前記第1開閉弁を開放するとともに前記第2開閉弁を閉鎖し、さらに前記流路切替弁を前記処理済流路に切り換える制御を実行してもよい。
【0024】
また、前記微粒化手段における前記一方側の端と前記材料タンクを結ぶ前記第2回収流路に設けられた第3開閉弁を備え、
前記逆洗用制御として、前記第1開閉弁を閉鎖し、前記第2開閉弁を開放し、前記流路切替弁を閉鎖するととに該第3開閉弁を開放する制御を実施し、前記洗浄用制御として、該第1開閉弁を開放し、該第2開閉弁を閉鎖し、該第3開閉弁を閉鎖するとともに該流路切替弁を前記第1回収流路に切り換える制御を実行するものであってもよい。
【0025】
さらに、上述したこれらの微粒化装置において、前記微粒化手段の閉塞を検出する閉塞検出手段を備え、
前記制御部は、前記閉塞検出手段によって前記微粒化手段の閉塞が検出されると前記逆洗用制御を実行するものであってもよい。
【0026】
前記閉塞検出手段によって前記微粒化手段の閉塞が検出されると前記逆洗用制御が実行されることで、該微粒化手段が閉塞していない場合の該逆洗用制御を不要とし、微粒化処理の中断時間をさらに短縮することが可能になる。
【0027】
なお、前記制御部は、前記閉塞検出手段によって前記微粒化手段の閉塞が検出されなくても、定期的に前記逆洗用制御を実行するものであってもよい。これにより、安定した長時間の連続運転が可能になる。
【0028】
また、上述したこれらの微粒化装置において、前記吐出手段は、プランジャポンプであり、
前記閉塞検出手段は、前記プランジャポンプのストローク時間の長さに基づき前記微粒化手段の閉塞を検出するものであることが好ましい。
【0029】
こうすることで、前記微粒化手段の閉塞を、簡易に検出することが可能になる。
【0030】
上記目的を解決する本発明の微粒化方法は、
被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化方法において、
前記液体材料を微粒化手段の一方側へ向けて吐出することで該液体材料を該微粒化手段の該一方側から他方側へ通過させ、該液体材料に含まれる被微粒化物を微粒化する微粒化工程と、
前記分散媒と同じ媒体あるいは前記液体材料を吐出手段によって吐出させ、該吐出手段の吐出口と前記微粒化手段における前記他方側の端との間を結ぶ逆洗液供給流路を通ってきた、該吐出手段から吐出された液体を、逆洗液として他方側から前記一方側へ向けて前記微粒化手段に送り込む逆洗工程と
前記逆洗工程を実施した後に、液体を前記一方側から前記他方側へ向けて前記微粒化手段に送り込み、該微粒化手段を通過してきた液体を、前記液体材料が貯留されている材料タンクに戻す洗浄工程とを有することを特徴とする。
また、別態様の微粒化方法として、被微粒化物が分散媒に分散した液体材料における該被微粒化物を微粒化する微粒化方法において、
前記液体材料を微粒化手段の一方側へ向けて吐出することで該液体材料を該微粒化手段の該一方側から他方側へ通過させ、該液体材料に含まれる被微粒化物を微粒化する微粒化工程と、
逆洗液を前記他方側から前記一方側へ向けて前記微粒化手段に送り込む逆洗工程とを有することを特徴としてもよい。
【0031】
上述したこれらの微粒化方法によれば、前記液体材料に含まれる前記被微粒化物がつまって前記微粒化手段が閉塞しても、前記逆洗液を前記他方側から前記一方側へ向けて送り込む逆洗工程によって該微粒化手段の閉塞を解消することができる。これにより、装置を分解し微小流路につまった前記被微粒化物を除去する作業が不要になり、前記微粒化手段の閉塞を短時間で解消することができる。
【0032】
また、上記別態様の微粒化方法において、前記逆洗工程を実施した後に、液体を前記一方側から前記他方側へ向けて前記微粒化手段に送り込み、該微粒化手段を通過してきた液体を、廃棄する、または、前記液体材料が貯留されている材料タンクに戻す洗浄工程を有することが好ましい。
【0033】
前記逆洗工程を実施した直後は、前記微粒化手段内等に微粒化されていない被微粒化物が残ってしまう場合がある。そこで、前記洗浄工程を実施することで、前記微粒化手段を通過してきた液体を、廃棄する、または、前記材料タンクに戻すことが好ましい。これにより、微粒化されていない前記被微粒化物が、処理済タンク等に貯留されている微粒化された被微粒化物に混合してしまうことを防止することができる。
【0034】
さらに、上述したこれらの微粒化方法において、前記洗浄工程を実施した後に、前記逆洗工程を再び実施してもよい。
【0035】
こうすることで、一度の前記逆洗工程によって前記微粒化手段の閉塞が解消しない場合であっても、前記洗浄工程を実施した後に、該逆洗工程を再び実施することで該微粒化手段の閉塞を解消することが可能になる。
【0036】
なお、前記逆洗工程は、前記洗浄工程を実施した後に一度繰り返す態様に限られず、該洗浄工程と該逆洗工程を複数回繰り返してもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、装置を分解して洗浄する作業が不要になり、微粒化手段の閉塞を短時間で解消できる微粒化装置および微粒化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】(a)は、本発明の一実施形態である微粒化装置を示す系統図である。(b)は、(a)に示す微粒化ノズルの内部構造を模式的に示す図である。
図2図1(a)に示す微粒化装置において、逆洗工程の液体の流れを示す系統図である。
図3図1(a)に示す微粒化装置において、洗浄工程の液体の流れを示す系統図である。
図4図1(a)に示す微粒化装置における回路構成の一例を表すブロック図である。
図5図1(a)に示す微粒化装置を用いた微粒化方法を表すフローチャートである。
図6】本発明の微粒化装置における第2実施形態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である微粒化装置は、液体材料における分散媒に分散した被微粒化物を微粒化するものである。微粒化装置は、半導体や電子デバイス、化粧品、食品、医薬品などの分野で用いられており、具体的な用途としては、酸化チタンや水酸化アルミニウム、カーボンブラックなどの粒子の微粒化および分散処理などを例示することができる。また、セルロースナノファイバーの製造にも、微粒化装置が用いられている。
【0040】
図1(a)は、本発明の一実施形態である微粒化装置10を示す系統図である。
【0041】
図1(a)に示すように、微粒化装置10は、材料タンク2、プランジャポンプ3、一方側マニホールド41、一対の微粒化ノズル5,5、他方側マニホールド42、熱交換器6および処理済タンク7を備えている。これらの部材は、配管からなる流路81〜86によって接続され、流路81〜86には、逆止弁CV,CV、開閉弁V1〜V3および切替弁SV等が設けられている。
【0042】
材料タンク2は、液体材料を貯留するものであり、第1供給流路81によってプランジャポンプ3に接続されている。材料タンク2に貯留された液体材料は、第1供給流路81を流れてプランジャポンプ3に送られる。第1供給流路81には逆止弁CVが設けられており、プランジャポンプ3から材料タンク2への逆流が防止されている。なお、材料タンク2に貯留された液体材料を送るための送液ポンプを第1供給流路81に設けてもよい。
【0043】
プランジャポンプ3として、油圧シリンダにより駆動されるプランジャポンプが使用できる。プランジャポンプ3は、シリンダ31と、このシリンダ31内を往復動するプランジャ32と、プランジャ32の位置を検出するリミットスイッチ33とを備え、シリンダ31は、液体材料を吐出する吐出口31aを有している。このプランジャポンプ3は、プランジャ32が引かれる(後退する)と、材料タンク2から第1供給流路81を流れてきた液体材料が吐出口31aからシリンダ31内に吸引され、図1(a)では上方を向く矢印で示すように、プランジャ32が押される(前進する)と、加圧された液体材料が吐出口31aから吐出される。すなわち、プランジャポンプ3は、吐出手段の一例に相当する。本実施形態のプランジャポンプ3では、限界(押し限度位置)までプランジャ32が押されると、リミットスイッチ33によって検出される。これにより、プランジャ32が前進を開始してから押し限度位置に到達するまでの時間の計測が可能になる。以下、プランジャ32が前進を開始してから押し限度位置に到達するまでの時間を、ストローク時間と称することがある。なお、図1(a)では、シリンダ31およびプランジャ32をそれぞれ1つ備えたプランジャポンプ3を示しているが、シリンダ31およびプランジャ32をそれぞれ複数備え、それぞれの吐出口31aから交互にあるいは順番に液体材料を吐出する態様を採用してもよい。
【0044】
第1供給流路81には第2供給流路82の上流側が接続し、第2供給流路82の下流側は、第3供給流路83に接続されており、この第3供給流路83は、分岐した、一方側供給流路831と他方側供給流路832とから構成されている。第2供給流路82には、逆止弁CVが設けられ、また、一方側供給流路831は、第1開閉弁V1を介して一方側マニホールド41に接続し、他方側供給流路832は、第2開閉弁V2を介して他方側マニホールド42に接続している。他方側供給流路832は、逆洗液供給流路の一例に相当する。本実施形態では、第1開閉弁V1および第2開閉弁V2には、アングル型の二方弁を用いている。なお、これら2つの二方弁に代えて、後述する切替弁SVのように三方弁を採用してもよい。
【0045】
一方側マニホールド41と他方側マニホールド42との間には、一対の微粒化ノズル5,5が配置されている。図1(a)、並びに、後述する、図1(b)、図2図3および図6では、上側が一方側になり、下側が他方側になる。微粒化ノズル5は、一方側マニホールド41から流れてきた液体材料を一方側から受け入れ、受け入れた液体材料に含まれている被微粒化物を微粒化するものである。詳しくは後述する。なお、本実施形態では、一対の微粒化ノズル5,5を有し、一方側マニホールド41および他方側マニホールド42を設けることで、供給される液体材料をこれら一対の微粒化ノズル5,5に分配する態様を採用している。もちろん、微粒化ノズル5を一つとし、一方側マニホールド41および他方側マニホールド42を省略する態様を採用してもよいし、微粒化ノズル5を3つ以上設けてもよい。
【0046】
他方側マニホールド42には、放出流路84を構成する他方側放出流路841の上流側が接続し、他方側放出流路841の下流側は切替弁SVに接続している。本実施形態の切替弁SVには、三方マニホールド弁を採用しており、この切替弁SVには、処理済タンク接続流路85と材料タンク接続流路86が接続している。処理済タンク接続流路85は、処理済タンク7に接続する流路であり途中に熱交換器6が設けられている。材料タンク接続流路86は、材料タンク2に接続している。微粒化ノズル5を一方側から他方側に向けて通過してきた液体は、切替弁SVにおいて処理済タンク接続流路85に切り換えられると熱交換器6を通って処理済タンク7に収容され、切替弁SVにおいて材料タンク接続流路86に切り換えられると材料タンク2に回収される。なお、切替弁SVは、上記した様に他方側放出流路841から処理済タンク接続流路85に液体を流す場合、他方側放出流路841から材料タンク接続流路86に液体を流す場合の他に、これらのいずれの流れも取り得ない状態を選択できる切替弁である。このいずれの流れも取り得ない状態を、切替弁SVの便宜的な意味で以後は全閉と称する。もちろんこれらの状態を取り得る様に、二方弁を組合せた接続流路を設け、切替弁SVの代わりにこれを用いることでも構わない。
【0047】
一方側マニホールド41には、放出流路84を構成する一方側放出流路842の上流側が接続し、一方側放出流路842の下流側は材料タンク接続流路86に接続している。また、一方側放出流路842には、ストレート型の二方弁からなる第3開閉弁V3が設けられている。詳しくは図2を用いて後述するように、切替弁SVが全閉である状態において、逆洗液が他方側マニホールド42から微粒化ノズル5の他方側に送り込まれ一方側に通過してきた液体は、第3開閉弁V3が開放されることで一方側放出流路842を流れて材料タンク接続流路86から材料タンク2に回収される。
【0048】
図1(a)では、被微粒化物を微粒化する微粒化工程における液体材料等の流れを矢印で示している。この微粒化工程では、詳しくは後述するように、制御手段によって微粒化制御がなされ、第1開閉弁V1が開放され、第2開閉弁V2が閉鎖され、切替弁SVが処理済タンク接続流路85に切り換えられる。これにより、プランジャポンプ3から吐出された液体材料は、第1供給流路81から第2供給流路82に流れ込み、一方側供給流路831を通って一方側マニホールド41から微粒化ノズル5に送り込まれる。
【0049】
図1(b)は、図1(a)に示す微粒化ノズル5の内部構造を模式的に示す図である。
【0050】
図1(b)に示すように、微粒化ノズル5は、一方側から他方側に向けて貫通した微小流路51を備えている。吐出手段であるプランジャポンプ3から吐出された液体材料は、微粒化ノズル5の一方側にある、微小流路51の流入孔51aに送り込まれ、送り込まれた液体材料は、微小流路51内を通過し、微小流路51の流出孔51bから流出する。
【0051】
この微小流路51を通過することで、キャビテーション、せん断、衝突等の作用により微粒化が行われる。すなわち、微粒化ノズル5は、吐出手段で吐出された液体材料を、一方側から他方側へ通過させることで被微粒化物を微粒化処理するものであり、微粒化手段の一例に相当する。以下、微粒化手段に対して液体材料を通過させて微粒化を促すことを微粒化処理と称することがあり、微粒化処理によって微粒化された被微粒化物を微粒化物と称することがあり、微粒化処理された液体材料を微粒化処理済液体と称することがある。
【0052】
微粒化ノズル5から他方側に放出された微粒化済液体は、図1(a)に示すように、他方側マニホールド42から他方側放出流路841を通って切替弁SVから処理済タンク接続流路85に流れ込む。微粒化済液体は、微粒化ノズル5において微粒化される際に生じる熱によって温度が上昇するため、処理済タンク接続流路85に設けられた熱交換器6によって冷却された後、処理済タンク7に収容される。すなわち、他方側放出流路841および処理済タンク接続流路85が、処理済流路の一例に相当する。
【0053】
被微粒化物を含む液体材料が微粒化ノズル5を通過していくうちに、微小流路51に被微粒化物がつまり、微粒化ノズル5が閉塞してしまう場合がある。微粒化ノズル5が閉塞してしまうと、液体材料の送り込みや通過がなくなり、あるいは、完全な閉塞を生じる前には流路が狭くなるために液体材料の送り込みや通過量が減少する。このために被微粒化物の微粒化処理が停止するか、もしくは非常に効率の悪いものとなる。このときのプランジャポンプ3では、プランジャポンプ3から液体を吐出することができない状態、あるいは吐出が低下することになり、プランジャ32の前進する動作が妨げられるため、後述するように、プランジャポンプ3のストローク時間の長さに基づき微粒化ノズル5の閉塞を検知することが可能になる。なお、以降においては、流路が狭くなり、プランジャポンプ3からの液体の吐出が充分ではなくなる状況も含めて閉塞と称することがある。
【0054】
微粒化ノズル5が閉塞した場合には、逆洗工程が実施される。詳しくは後述するように、微粒化ノズル5の閉塞が検出されると、制御手段によって逆洗制御が実行される。
【0055】
図2は、図1(a)に示す微粒化装置10において、逆洗工程の液体の流れを示す系統図である。
【0056】
制御手段によって逆洗制御が実行されると、第1開閉弁V1が閉鎖され、第2開閉弁V2が開放され、第3開閉弁V3が開放されるとともに切替弁SVが全閉される。これにより、プランジャポンプ3から吐出された液体材料は、第1供給流路81から第2供給流路82に流れ込み、今度は、他方側供給流路832を通って他方側マニホールド42から微粒化ノズル5の他方側に送り込まれる。微粒化ノズル5の他方側に送り込まれた液体材料は、逆洗液として他方側から一方側に向けて、微小流路51(図1(b)参照)を流れていく。この逆洗液によって、微小流路51につまった被微粒化物が微粒化ノズル5の一方側に向けて押し出され、微粒化ノズル5の閉塞を解消することができる。ここで、閉塞を生じさせていた被微粒化物は、図1(a)に示す、一方側から他方側に向かって通過する際につまったものであるため、その流れと反対に逆洗液を流すことで、微小流路51から被微粒化物を効果的に除去することができる。なお、逆洗液によっても微小流路51から除去されずに微小流路51に残ってしまう被微粒化物もあるが、このような被微粒化物は、後述する洗浄工程によって微小流路51から除去することができる。
【0057】
他方側から一方側に微粒化ノズル5を通過した逆洗液と、この逆洗液によって微小流路51から除去された被微粒化物は、一方側マニホールド41から一方側放出流路842を流れ、材料タンク接続流路86を通って材料タンク2に回収される。すなわち、一方側放出流路842および材料タンク接続流路86が、第2回収流路の一例に相当する。他方側から一方側に微粒化ノズル5を通過した液体が第2回収流路によって材料タンク2に回収されることで、微粒化処理されていない被微粒化物が、微粒化済液体に混合されてしまうことが回避され、再度、微粒化処理を行うことができる。
【0058】
被微粒化物の性状によっては分散した状態ではなく、閉塞したときの大きな塊のまま押し出されることもある。この場合は材料タンク接続流路86が材料タンク2と接続される直前などに、この大きな塊を捕集するフィルタを設けることで、材料タンク2に大きな塊が混入してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
逆洗工程に続いて洗浄工程が実施される。詳しくは後述するように、制御手段によって逆洗制御が実行された後、洗浄制御が実行される。
【0060】
図3は、図1(a)に示す微粒化装置10において、洗浄工程の液体の流れを示す系統図である。
【0061】
制御手段によって洗浄制御が実行されると、第1開閉弁V1が開放され、第2開閉弁V2が閉鎖され、第3開閉弁V3が閉鎖されるとともに切替弁SVが材料タンク接続流路86に切り換えられる。これにより、プランジャポンプ3から吐出された液体材料は、第1供給流路81から第2供給流路82に流れ込み、一方側供給流路831を通って一方側マニホールド41から微粒化ノズル5の一方側に送り込まれる。洗浄工程を開始した直後、すなわち逆洗工程を終了した直後は、逆洗液として送り込まれた液体材料に含まれている被微粒化物が微粒化されていない状態で他方側マニホールド42内に残っている。また、逆洗工程における液の流れの場合、用いる微粒化ノズル5の特性や、被微粒化物によっては微粒化の作用が充分に生じないことが起こりえるため、微粒化ノズル5内においても微粒化していない被微粒化物が残ることがある。同様に微粒化ノズル5を通過して一方側マニホールド41内に残る液も微粒化していない被微粒化物を多量に含む状態となっている。このため、図2に示す逆洗工程を実施した後に図1(a)に示す微粒化工程を実施すると、微小流路51内等に残っている微粒化されないままの被微粒化物が処理済タンク7に送られ処理済液体に混合してしまう。そこで、本実施形態では、液体材料を一方側から微粒化ノズル5に送り込むことで、微粒化ノズル5を一方側から他方側に通過させた液体が、微小流路51や他方側マニホールド42等に残っていた被微粒化物と一緒に、図3に示す他方側放出流路841を流れて切替弁SVから材料タンク接続流路86を通って材料タンク2に回収される。これにより、微粒化されていない被微粒化物が、微粒化済液体に混合されてしまうことを回避し、材料タンク2に回収して微粒化処理を行うことができる。すなわち、他方側放出流路841および材料タンク接続流路86が、第1回収流路の一例に相当する。
【0062】
洗浄工程を続け、微粒化ノズル5から、微粒化された微粒化物を含む微粒化処理済液体が放出され、この微粒化処理済液体により他方側マニホールド42や他方側放出流路841等に残っている被微粒化物を材料タンク2内に押し流し切った後、洗浄工程から微粒化工程に切り換える。これにより、微粒化された微粒化物が、処理済タンク7に収容される。
【0063】
図4は、図1(a)に示す微粒化装置10における回路構成の一例を表すブロック図である。
【0064】
本実施形態では、制御手段として、プログラマブルロジックコントローラ(以下PLCと略す)90を用いている。なお、PLC90は、内部にCPU、メモリおよびタイマ等を備えている。PLC90には、第1開閉弁制御回路91、第2開閉弁制御回路92、第3開閉弁制御回路93、切替弁制御回路94、プランジャポンプ制御回路95およびリミットスイッチ33それぞれが接続されている。
【0065】
第1開閉弁制御回路91、第2開閉弁制御回路92および第3開閉弁制御回路93は、PLC90からの出力信号に従い、それぞれの開閉弁のアクチュエータの動作を制御する回路である。切替弁制御回路94は、PLC90からの出力信号に従い、処理済タンク接続流路85と材料タンク接続流路86との間での流路を切り換え、あるいは全閉状態への流路を切り換える切替弁のアクチュエータの動作を制御する回路である。プランジャポンプ制御回路95は、PLC90からの出力信号に従い、プランジャ32を往復動させる駆動手段の動作を制御する回路である。リミットスイッチ33は、プランジャ32が押し限度位置に到達したか否かを検出し、プランジャ32が押し限度位置に到達したことを検出すると、PLC90に到達信号を送信するものである。
【0066】
続いて、本発明の一実施形態である微粒化方法を説明する。
【0067】
図5は、図1(a)に示す微粒化装置10を用いた微粒化方法を表すフローチャートである。本実施形態では、図5に示す、ステップS1〜ステップS5が微粒化工程の一例に相当し、ステップS6〜ステップS8が逆洗工程の一例に相当し、ステップS9〜ステップS13が洗浄工程の一例に相当する。
【0068】
微粒化装置10の電源が投入されると、PLC90は、微粒化制御を実行し、微粒化工程の初期処理を行う(ステップS1)。この初期処理では、PLC90は、第1開閉弁制御回路91、第2開閉弁制御回路92、第3開閉弁制御回路93および切替弁制御回路94に指令を出し、それぞれのアクチュエータを駆動させて、第1開閉弁V1を開放し、第2開閉弁V2を閉鎖し、第3開閉弁V3を閉鎖し、切替弁SVを処理済タンク接続流路85側を開放に切り換える。
【0069】
次いで、PLC90は、プランジャポンプ制御回路95に指令を出し、駆動手段を動作させてプランジャ32を引き(後退させ)、液体材料の吸引を開始する(ステップS2)。 プランジャポンプ3の吸引が完了すると、今度は駆動手段によってプランジャ32が押され(前進し)、吐出口31aから液体材料の吐出を開始するとともに、計時をスタートする(ステップS3)。これにより、図1(a)の矢印で流れを示すように、液体材料が微粒化ノズル5の一方側から送り込まれ、送り込まれた液体材料に含まれる被微粒化物は、微粒化ノズル5を一方側から他方側に通過することで微粒化物へと微粒化処理される。この微粒化物を含んだ液体は、処理済タンク7に収容される。
【0070】
PLC90には、プランジャポンプ3におけるプランジャ32の所定のストローク時間が設定時間として予め定められている。この設定時間には、例えば、微粒化ノズル5が閉塞していない状態における、プランジャ32の平均的なストローク時間(5秒程度)に、液体材料の成分や濃度のばらつき等を考慮した時間(1秒程度)を加算した時間(6秒程度)を採用することができる。すなわち、正常であれば、プランジャ32は設定時間が経過する前に押し限度位置に到達する。なお、外気温や装置の運転に伴い発生する熱により粘度が大きく変動し易い液体材料であれば、液体材料の粘度をセンシングして上記の設定時間を変更する手段を講じることができる。
【0071】
PLC90は、吐出を開始してから設定時間以上経過したか否かを判定し(ステップS4)、設定時間以上経過していない場合は、リミットスイッチ33から到達信号を受信したか否か、すなわちプランジャ32が押し限度位置に到達したか否かを判定する(ステップS5)。このステップS4とS5は、ステップS3をトリガーにしてPLC90内で極短時間に繰り返される判定のステップがループしていることを表している。計時スタートし、この経過時間が上記の予め定めた設定時間と比較して短く(ステップS4のN)、かつ、リミットスイッチ33からの到達信号を受信していれば(ステップS5のY)、ステップS2に戻り、初期処理(ステップS1)を除く微粒化工程が実施される。このように、設定時間以上経過する前にプランジャ32が押し限度位置に到達する状態、すなわちプランジャポンプ3のストローク時間の長さが設定時間未満の状態では、微粒化ノズル5は閉塞していないと判定し、微粒化工程が繰り返される。
【0072】
一方、プランジャポンプ3のストローク時間の長さが設定時間以上になり、ステップS4において設定時間以上経過した場合、微粒化ノズル5が閉塞したと判定し、PLC90は、逆洗制御を実行する。まず、PLC90は、逆洗工程の初期処理を行うことで、第1開閉弁V1を閉鎖し、第2開閉弁V2を開放し、第3開閉弁V3を開放し、切替弁SVを全閉とする(ステップS6)。
【0073】
次いで、PLC90は、プランジャポンプ制御回路95に指令を出し、駆動手段を動作させてプランジャ32を引き、液体材料を吸引した後(ステップS7)、プランジャ32を押し、吐出口31aから液体材料を吐出させる(ステップS8)。これにより、図2の矢印で流れを示すように、液体材料が微粒化ノズル5の他方側から送り込まれ、送り込まれた液体材料が微小流路51につまった被微粒化物に向かって流れる。この結果、微小流路51につまった被微粒化物が除去され、微粒化ノズル5の閉塞を解消することができる。除去された被微粒化物と他方側から一方側に通過してきた液体材料は、材料タンク2に回収される。なお、本実施形態の逆洗工程では、プランジャ32を一往復させる態様を採用しているが、プランジャ32を複数回往復させる態様を一セットとして逆洗工程を実施してもよい。すなわち、ステップS7とステップS8を複数回繰り返す処理である。
【0074】
次に、PLC90は、洗浄制御を実行する。まず、PLC90は、洗浄工程の初期処理を行うことで、第1開閉弁V1を開放し、第2開閉弁V2を閉鎖し、第3開閉弁V3を閉鎖し、切替弁SVを材料タンク接続流路86に切り換える(ステップS9)。
【0075】
次いで、PLC90は、プランジャポンプ制御回路95に指令を出し、駆動手段を動作させてプランジャ32を引き、液体材料を吸引した後(ステップS10)、プランジャ32を押し、吐出口31aから液体材料の吐出を開始するとともに、計時をスタートする(ステップS11)。これにより、図3の矢印で流れを示すように、液体材料が微粒化ノズル5の一方側から送り込まれ、送り込まれた液体材料が、微粒化ノズル5等に残っている被微粒化物とともに材料タンク2に回収される。
【0076】
この洗浄工程においても、PLC90は、設定時間以上経過したか否かを判定し(ステップS12)、設定時間以上経過していない場合は、リミットスイッチ33から到達信号を受信したか否か、すなわちプランジャ32が押し限度位置に到達したか否かを判定する(ステップS13)。なお、ステップS12における設定時間は、ステップS4における設定時間と同じ長さにしてもよいし、閉塞の解消が確実に行なわれたかを確認する意味で、ステップS4における設定時間よりもやや短い長さにしてもよい。計時スタートしてからステップS12とステップS13はPLC90内で繰り返しループしており、経過時間が上記の予め定めた設定時間と比較して短く、かつ、リミットスイッチ33からの到達信号を受信していれば、切替弁SVを処理済タンク接続流路85に切り換えた後(ステップS14)、ステップS2に戻り、初期処理(ステップS1)を除く微粒化工程が実施される。このように、設定時間以上経過する前にプランジャ32が押し限度位置に到達する状態、すなわちプランジャポンプ3のストローク時間の長さが設定時間未満の状態では、微粒化ノズル5の閉塞は解消したと判定して、微粒化工程に戻される。
【0077】
一方、プランジャポンプ3のストローク時間の長さが設定時間以上になり、ステップS12において設定時間以上経過した場合、微粒化ノズル5の閉塞は解消できなかったと判定し、アラームを報知した後(ステップS15)、微粒化装置10の運転を中止する。また、ステップS12において設定時間以上経過したと判定された場合に、ステップS6に戻り、逆洗工程と、洗浄工程のうちステップS9からステップS12までを1または複数回繰り返した後、ステップS15に進んでもよい。
【0078】
なお、図示は省略するが、ステップS1とステップS2、ステップS6とステップS7、ステップS9とステップS10、およびステップS14とステップS2は、実行順序が逆であってもよいし、同時であってもよい。また、逆洗工程のステップS8におけるプランジャポンプ3のストローク時間を計測し、このストローク時間が所定時間より短くなるまで逆洗工程を複数回繰り返す態様を採用してもよい。
【0079】
次に、本発明の微粒化装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、これまで説明してきた第1実施形態の微粒化装置10との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0080】
図6は、本発明の微粒化装置における第2実施形態を示す系統図である。また、図6(a)では、逆洗工程における液体の流れを示し、図6(b)では、洗浄工程における液体の流れを示している。
【0081】
図6(a)および同図(b)に示すように、第2実施形態の微粒化装置11では、第1供給流路81に、第2切替弁SV2が設けられ、この第2切替弁SV2に分散媒と同じ媒体を供給する供給流路が接続している。本実施形態では、液体材料の分散媒として水を例として用いており、以下の説明では、分散媒と同じ媒体を水として説明する。第2切替弁SV2を切り換えることで、プランジャポンプ3に供給される液体を、材料タンク2に貯留されている液体材料と水との間で切り換えることができ、これにより、プランジャポンプ3から吐出される液体が、液体材料と水との間で切り換えられる。
【0082】
切替弁SVには、材料タンク接続流路に代えて廃棄流路87の上流側が接続し、この廃棄流路87の下流側は、不図示の廃棄口等に接続されている。上流側が一方側マニホールド41に接続された一方側放出流路842の下流側は、廃棄流路87に接続されている。また、処理済タンク接続流路85には通過する液体の流量を計測する第1流量計F1が設けられ、廃棄流路87には通過する液体の流量を計測する第2流量計F2が設けられている。
【0083】
微粒化装置11の微粒化工程では、第2切替弁SV2が液体材料を通過させる状態とされ、図1(a)に示す微粒化装置10の微粒化工程の液体の流れと同じになる。ただし、第1実施形態の微粒化装置10ではプランジャポンプ3のストローク時間によって微粒化ノズル5の閉塞を検知するのに対し、第2実施形態の微粒化装置11では処理済タンク接続流路85を流れる液体の流量で微粒化ノズル5の閉塞を検知する。具体的には、第1流量計F1で検出される流量が予め設定された流量以下になった場合には、微粒化ノズル5が閉塞したと判定し、逆洗工程を実施する。
【0084】
微粒化装置11の逆洗工程では、第2切替弁SV2は、水が供給される状態に切り換えられ、第1開閉弁V1は閉鎖し、第2開閉弁V2は開放し、第3開閉弁V3は開放し、切替弁SVは全閉する。これにより、図6(a)に示すように、第2切替弁SV2から供給された水は、プランジャポンプ3から吐出され、微粒化ノズル5の他方側から一方側に通過する。この一方側に通過してきた液体には、微粒化ノズル5の微小流路51につまった被微粒化物が含まれており、この液体は一方側放出流路842から廃棄流路87を流れて廃棄される。
【0085】
続いて実施される洗浄工程では、第2切替弁SV2は、水が供給される状態に維持され、第1開閉弁V1は開放し、第2開閉弁V2は閉鎖し、第3開閉弁V3は閉鎖し、切替弁SVは廃棄流路87に切り換えられる。これにより、図6(b)に示すように、第2切替弁SV2から供給された水は、プランジャポンプ3から吐出され、微粒化ノズル5の一方側から他方側に通過する。この他方側に通過してきた液体には、微粒化が不十分な被微粒化物が含まれており、この液体は他方側放出流路841から廃棄流路87を流れて廃棄される。このとき、廃棄流路87を流れる液体の流量を第2流量計F2で測定し、測定される流量が予め設定された流量以下の場合には、微粒化ノズル5の閉塞が解消していないと判定し、再び逆洗工程を実施する。
【0086】
以上説明した微粒化装置10,11および微粒化方法によれば、装置を分解して洗浄する作業が不要になり、微粒化手段の閉塞を短時間で解消することができる。なお、液体材料中の被微粒化物の濃度が高くなると微粒化手段の閉塞が発生しやすくなる一方、閉塞がなければ単位時間あたりの被微粒化物の処理量は増大できる。上述した微粒化装置10,11および微粒化方法によれば、微粒化手段の閉塞から生じる、作業や復旧にかかる時間等といった弊害を大幅に軽減できる。このため、従来と比べて被微粒化物の濃度を低く抑えた液体材料を用いるというような微粒化手段の閉塞を回避する必要性が減少し、この結果、液体材料中の被微粒化物の濃度を高め、単位時間あたりの被微粒化物の処理量を増加させる運転も可能になる。
【0087】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、第1実施形態の微粒化装置10では、逆洗工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体も、洗浄工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体も、材料タンク2に回収する態様としているが、これら液体を回収せず廃棄流路から廃棄する態様としてもよい。また、第2実施形態の微粒化装置11では、逆洗工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体と、洗浄工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体のうち、少なくとも一方を材料タンク2に回収する態様としてもよい。さらに、逆洗工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体、および洗浄工程において微粒化ノズル5を通過してきた液体を、材料タンク2に回収する流路と廃棄する流路との間で切り換え可能な構成を採用してもよい。また、上述の実施形態ではプランジャポンプ3を油圧シリンダによって駆動していたが、空圧駆動式のプランジャポンプを使用することもできる。さらにモータによるボールねじ駆動あるいはクランク駆動によるプランジャポンプが適用できるが、この場合は一定以上の負荷トルクを検知した時に逆洗用制御を行うことができるようにモータの負荷トルクを監視する手段を備えることが好ましい。
【0088】
なお、以上説明した各実施形態の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10,11 微粒化装置
2 材料タンク
3 プランジャポンプ
32 プランジャ
33 リミットスイッチ
5 微粒化ノズル
51 微小流路
51a 流入孔
51b 流出孔
7 処理済タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6